(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】導電性複合材料
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20250407BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20250407BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20250407BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/08 ZNM
C08K5/00
H01B1/22 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020136254
(22)【出願日】2020-08-12
【審査請求日】2023-08-01
(32)【優先日】2019-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【氏名又は名称】崔 允辰
(72)【発明者】
【氏名】アシュリー・エム・ダスティン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ピー・ノワク
(72)【発明者】
【氏名】シン・エヌ・グアン
(72)【発明者】
【氏名】アダム・エフ・グロス
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・イー・シャープ
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-112615(JP,A)
【文献】国際公開第2009/123186(WO,A1)
【文献】特開平10-130125(JP,A)
【文献】特開平02-086064(JP,A)
【文献】特開平02-087464(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0198190(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0246245(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107452436(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリマーと、
(b
)60℃未満の溶融温度を有す
る金属合金から選択される導体と、
(c)相溶化剤と
を含
み、
前記導体が、少なくとも50重量%のガリウム、ビスマス、水銀またはそれらの組合せを含有する合金であり、
前記相溶化剤が、非イオン性両親媒性化合物を含む、
導電性複合材料。
【請求項2】
前記相溶化剤が
、イオン性両親媒性化合物、金属ナノ粒子またはそれらの混合物を
さらに含
み、
前記金属ナノ粒子が、線寸法で100nm未満の粒径を有し、銅、ニッケル、ステンレス鋼、スズ、チタン、タングステン、それらの混合物、またはそれらの合金を含む、請求項1に記載の導電性複合材料。
【請求項3】
前記非イオン性両親媒性化合物が、脂肪アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、脂肪酸エトキシレート、エトキシ化アミン、脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体、ポリヒドロキシ化合物の脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪アミンオキシド、スルホキシド、オルガノホスフィンオキシド、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項
1に記載の導電性複合材料。
【請求項4】
前記ポリマーが熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーを含む、請求項1に記載の導電性複合材料。
【請求項5】
増粘剤をさらに含
み、
前記増粘剤が、平均粒径が0.1~500μmの無機増粘剤の実質的に球状の粒子、アスペクト比が2より大きく、長さが0.01~10mmの無機増粘剤の棒状粒子または線状粒子、平均粒径が0.1~500μmの有機増粘剤の実質的に球状の粒子、またはそれらの混合物である、請求項1に記載の導電性複合材料。
【請求項6】
前記増粘剤が有機増粘剤である、請求項
5に記載の導電性複合材料。
【請求項7】
前記増粘剤が無機増粘剤である、請求項
5に記載の導電性複合材料。
【請求項8】
増粘剤をさらに含み、
前記増粘剤が、棒状粒子、線状粒子、実質的に球状の粒子またはそれらの混合物を含み、かつ、ニッケル、チタン、タングステン、ステンレス鋼、銅およびスズから選択される金属、ニッケル、チタン、タングステン、ステンレス鋼、銅、スズもしくは亜鉛の金属酸化物、セラミックス、またはそれらの組合せを含み、前記実質的に球状の粒子の平均粒径
が0.1~500μmであり、前記棒状粒子および前記線状粒子の長さが0.01~10mmである、請求項
1に記載の導電性複合材料。
【請求項9】
0.1~50体積%の前記導体を含む、請求項1に記載の導電性複合材料。
【請求項10】
積層体である、請求項1に記載の導電性複合材料。
【請求項11】
前記導体と前記相溶化剤が、実質的に均一に混合されており、前記積層体の層を形成している、請求項
10に記載の導電性複合材料。
【請求項12】
前記導体と前記相溶化剤が、前記ポリマー全体に実質的に均一に分散されている、請求項1に記載の導電性複合材料。
【請求項13】
20℃
で5×10
5S/m以下のバルク導電率と、50%以上の伸びと、3MPa以上の引張強度とを有する、請求項1に記載の導電性複合材料。
【請求項14】
熱酸化安定性を向上させる添加剤をさらに含む、請求項1に記載の導電性複合材料。
【請求項15】
60℃未満の溶融温度を有す
る金属合金
から選択される導体と、相溶化剤とを含
み、
前記導体が、少なくとも50重量%のガリウム、ビスマス、水銀またはそれらの組合せを含有する合金であり、
前記相溶化剤が、非イオン性両親媒性化合物を含む、組成物。
【請求項16】
増粘剤をさらに含み、
前記増粘剤が、平均粒径が0.1~500μmの無機増粘剤の実質的に球状の粒子、アスペクト比が2より大きく、長さが0.01~10mmの無機増粘剤の棒状粒子または線状粒子、平均粒径が0.1~500μmの有機増粘剤の実質的に球状の粒子、またはそれらの混合物である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
モノマー混合物もしくはポリマー組成物を(a
)60℃未満の溶融温度を有す
る金属合金から選択される導体、および(b)相溶化剤と混合するステップ、または(a
)60℃未満の溶融温度を有す
る金属合金から選択される導体と、(b)相溶化剤とを含む導電性ペーストを第1のポリマーの表面に層形成するステップ
を含
み、
前記導体が、少なくとも50重量%のガリウム、ビスマス、水銀またはそれらの組合せを含有する合金であり、
前記相溶化剤が、非イオン性両親媒性化合物を含む、導電性複合材料の作製方法。
【請求項18】
請求項1に記載の導電性複合材料の層を担持した基板。
【請求項19】
導電性複合材料の層を担持した基板を作製する方法であって、請求項1に記載の導電性複合材料を加熱するステップと、前記導電性複合材料を基板に塗布するステップとを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電性複合材料に関し、特に、導電性ポリマー複合材料ならびに導電性ポリマー複合材料を作製するために有用な方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
広義の導電性複合材料は、大きな導電性または熱伝導性を有するあらゆる複合材料である。そのような複合材料は、ポリマー樹脂中に分散された導電相を含んでいる。そのような複合材料の独特な特性により、複合材料は、様々な用途において、代替材料よりも技術的に優れたものまたは費用対効果の高いものになっている。結果として、導電性複合材料は、遠隔通信、発電および送電、防衛、航空宇宙、医療などの分野において広い範囲で使用されている。
【0003】
導電性複合材料を使用する中で、導電性は、大きいことはもちろんであるが、通常、複合材料の一次的な特性である。導電性複合材料の導電性は用途によって異なる。特定の用途の場合、実効シート抵抗が100オーム/スクエア未満の複合材料が重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
導電性複合材料は、一般的に、ポリマー材料と固体導電性粒子を組み合わせることによって製造されるか、および/またはその特性が達成される。十分な導電性を達成するためには、すなわち、パーコレーションに到達するためには、高い粒子充填率、通常は45体積%を超える粒子充填率が必要となる場合が多い。このような粒子充填度で使用されるポリマーは、通常、硬質材料である。結果として、このような粒子充填度では、導電膜やコーティングが、使用するには不適切または困難になる、破断点伸び、引張強度、熱安定性などの特性を有したものになる。この問題に対する解決策として液体金属を採用した場合、ポリマーマトリクスから金属の漏出が生じることになる。
【0005】
使用温度範囲が広い導電性ポリマーコーティングや膜も必要とされている。
【0006】
したがって、導電性を有し、ポリマーからの金属の漏出がなく、かつ様々な環境条件下で幅広い用途を可能にする特性、すなわち、伸び、引張強度および熱安定性を有する複合材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、上記に特定された問題に対する好都合の解決策を提供する。広い局面では、本開示は、ポリマーと、低融点導体、すなわち、約60℃未満の溶融温度を有する金属および金属合金から選択される導体と、相溶化剤とを含む導電性複合材料を提供する。低融点導体および相溶化剤は、通常、ペースト状である。
【0008】
ペーストは、(1)硬質を伴わない導電性と、(2)複合材料からの低融点導体の漏出を防ぐための粘性の増加および流れ特性の向上をもたらす。
【0009】
本開示は、導電性を有し、かつ高分子弾性可能な複合材料を提供する。これら両方の特性を単一の複合材料で得ることは、一般的な導電性導入方法を採用しても困難であり、達成不可能である場合が多い。
【0010】
高分子弾性と導電性を有する複合材料は、不要な電磁的干渉を低減または除去したい用途において特に有用である。
【0011】
別の局面では、本開示は、ポリマーと、低融点導体と、相溶化剤と、任意選択の増粘剤とを含む導電性複合材料を提供する。
【0012】
本開示の導電性複合材料は、高い金属含有量を保有することが可能で、それでも優れた弾性を示す。
【0013】
さらに、導電性複合材料は、少量の低融点導体を用いて高レベルの導電率をもたらすことが可能である。
【0014】
別の局面では、本開示の導電性複合材料は積層体の形状である。積層体導電性複合材料は、低融点導体と相溶化剤とを含む導電性組成物、通常はペースト、の連続層を含んでいる。
【0015】
別の局面では、導電性複合材料は、ポリマーマトリクス内に安定的および均質かつ/または連続的に捕捉された導電性ネットワークを備えている。ネットワークは、低融点導体と、相溶化剤とを含んでいる。この局面では、導体は、ポリマーマトリクス全体に均一または均質に分布している。
【0016】
別の局面では、本開示は、約60℃未満の溶融温度を有する金属または金属合金と、相溶化剤とを含む、通常ペースト状の組成物を提供する。
【0017】
本開示のさらに別の局面は、エラストマーと、約60℃未満の溶融温度を有する金属および金属合金から選択される導体と、相溶化剤とを含み、20℃で約5×105S/mの最大バルク導電率、50%以上の伸び、および3MPa以上の引張強度を有するか、または示す導電性複合材料を提供する。
【0018】
さらに、本開示は、エラストマーと、約60℃未満の溶融温度を有する金属および金属合金から選択される導体と、相溶化剤とを含む導電性複合材料を提供する。
【0019】
また、本開示は、ポリマーと、約60℃未満の溶融温度を有する金属および金属合金から選択される導体と、相溶化剤とを含む導電性複合材料の層を担持した基板を提供する。
【0020】
本開示は、導電性複合材料層を担持した基板を作製する方法であって、本明細書に開示の導電性複合材料を加熱するステップと、導電性複合材料を基板に塗布するステップとを含む方法を提供する。
【0021】
別の局面では、本開示は、電気部品を電磁放射線または電磁干渉からシールドする方法であって、本開示の導電性複合材料を電磁放射線源と電気部品との間に設けるステップを含む方法を提供する。
【0022】
本明細書に開示の導電性複合材料は、硬質であっても軟質であってもよい。特定の例では、導電性複合材料は、高分子弾性を有する、すなわち、エラストマーである。
【0023】
本開示の導電性複合材料は、通常ペースト状の液体金属、例えば、ガリウム合金をポリマーまたはプレポリマーと混合し、必要に応じてプレポリマーまたはポリマーを硬化させることによって製造されてもよい。
【0024】
導電性複合材料は、モノマー混合物またはポリマー組成物を、約60℃未満の溶融温度を有する金属および金属合金から選択される導体と、相溶化剤とを含む組成物と混合するステップを含む方法によって製造されてもよい。この方法は、導電性複合材料を形成するために混合物を硬化させるステップをさらに任意選択で含んでいてもよい。
【0025】
別の局面では、本開示の導電性複合材料は、(a)約60℃未満の溶融温度を有する金属および金属合金から選択される導体と、(b)相溶化剤とを含む導電性ペーストを硬化または一部硬化された第1のポリマーの表面に層形成することによって製造されてもよい。
【0026】
さらに別の局面では、本開示の導電性複合材料は、導電性ペーストを非粘着性表面に塗布し、未硬化ポリマーをペースト上に重ねて塗布した後、ポリマーを硬化させることによって製造されてもよい。複合材料は、その後、非粘着性表面から引き剥がすことによって非粘着性表面から便利に取り外すことができる。非粘着性表面から取り外した後、必要に応じて、または所望により、導電性ペースト上に硬化後または未硬化のポリマーの追加層を加えてもよく、必要に応じて、サンドイッチ構造または積層構造を作るために硬化されてもよい。
【0027】
本明細書に開示の導電性複合材料において、ペーストは、以下の機能、すなわち、不要な硬質を伴わない導電性をもたらす機能、および製造中または使用中の漏出を防止するために導体の粘性と流れ特性を向上させる機能を有している。
【0028】
また、本開示は、貯蔵弾性率より高い損失弾性率を示す、すなわち、1より高いタンデルタを有する液体金属ペーストであって、通常、ガリウム合金と相溶化剤とを含むペーストを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】剥離フィルム上に塗布された、実施例2に従って製造されたペーストの写真である。このペーストは、ガリウム61.0重量%、インジウム25.0重量%、スズ13.0重量%、亜鉛1.0重量%を含有するガリウム合金と、ポリエチレングリコールp-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニルエーテル(トリトン(Triton(商標))X100)と、ステンレス鋼粉末(増粘剤として)と、ステンレス鋼線(増粘剤として)とを使用して製造される。
【
図2】実施例2の積層体複合材料の写真である。この導電性複合材料は、ポリメチルシロキサン(シルガード(Sylgard(商標))184)の層間にペーストの層を含んだ積層体である。
【
図3】ガリウム合金が充填されたシリコーンスポンジに対する圧縮の影響を矢印方向に示す一連の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書において、「低融点導体」とは、約60℃未満の溶融温度を有する金属、金属合金およびそれらの混合物から選択される導体をいう。
【0031】
本明細書において、「導電性」とは、電気を伝導可能であること、または電流を伝達可能であることを意味する。「導電率」とは、特定の材料が電気を伝導する度合いをいう。本明細書において「導体」とは、導電性を有する、すなわち、電気を伝導する材料を意味する。
【0032】
本明細書において「実質的に漏出しない」とは、50%伸び時に複合材料から導体の約10体積%未満しか漏出しないことを意味する。
【0033】
本明細書において「導電性ネットワーク」とは、複合材料の異なる領域間で電子を移動させること、すなわち、電流を生成することが可能な相互接続系を意味する。
【0034】
本明細書において「軟質」とは、硬質ではない材料、すなわち、破断するのではなく曲がる材料、より具体的には、約10ギガパスカル(GPa)未満のヤング率(E)を有する材料をいう。特定の例では、本明細書における「軟質」とは、約2GPa未満のヤング率を意味する。他の例では、本明細書における「軟質」とは、約1GPa未満のヤング率を意味する。
【0035】
「導電性混合物」、「ペースト」および「ペースト層」は本明細書中で置き換え可能に使用される。
【0036】
したがって、本明細書において「ポリマー内に安定的かつ均質に捕捉される」とは、導体および相溶化剤ならびに任意選択の増粘剤がポリマーマトリクス内に永久に保持されて、複合材料の使用時に複合材料内を移動したり、漏出したりしないことを意味する。この点に関して、複合材料は、ポリマー、相溶化剤および任意選択の増粘剤の実質的に均一なブレンドまたは混合物である。複合材料の導電率は長期間にわたって減衰しない。
【0037】
したがって、本明細書において「ポリマー層間に安定的かつ均質に捕捉される」とは、導体および相溶化剤ならびに任意選択の増粘剤が積層体導電性複合材料内におけるポリマー層間の層として永久に保持されて、複合材料の使用時に複合材料内を移動したり、漏出したりしないことを意味する。積層体複合材料の導電率は長期間にわたって減衰しない。
【0038】
上記のように、本開示は、導電性複合材料を製造する際に従来遭遇した問題に対する解決策を提供する。本明細書に開示の導電性複合材料は、ポリマーと、低融点導体と、相溶化剤とを含んでいる。これら導電性複合材料は、所望の用途に応じて軟質または硬質に製造することができる。重要なこととして、導体は、複合材料の屈曲時、さもなくば操作時に複合材料から漏出しないか、または実質的に漏出しない。
【0039】
本明細書における導電性複合材料は、材料の積層体またはブレンドの形状である。積層体において、低融点導体および相溶化剤は、ポリマー層上またはポリマー層間に担持された、通常ペースト状の混合物である。各層のポリマーは、単一のポリマー材料であっても、ポリマー材料の混合物であってもよい。本明細書において「導電性混合物層」とは、積層体のうち、低融点導体と相溶化剤とを含む層をいう。
【0040】
積層体中の各層、すなわち、ポリマー層および導電性積層体層の各層の厚さは、最終複合材料の所望の特性を達成するために、必要に応じて調整されてもよい。本明細書において積層体複合材料は、複数のポリマー層と、複数の導電性層とを備えていてもよい。例えば、積層体が計五層を含み、3つのポリマー層のそれぞれが導電性混合物を挟持している、すなわち、3つのポリマー層が、ポリマー層同士が互いに接触している複合材料の縁部を除き、導電性混合物層(ペースト層)によって分離されていてもよい。三層の積層体、すなわち、導電性混合物層が2つのポリマー層間に挟持されている複合材料の例では、各ポリマー層の厚さが約1mmで、積層体全体の厚さが5mmであってもよい。そのような構成の導電性混合物層の厚さは、約3mmである。三層の積層体の別の例では、各ポリマー層の厚さが約2mmであり、導電性混合物層の厚さが約1mmであってもよい。軽量化が重要である場合、複合材料はより少数の層を含むことになり、各層は、所望のレベルの導電率をもたらしながら、できる限り薄くされる。
【0041】
導電性複合材料を導電性組成物が連続層をなす積層体として形成することにより、所望のレベルの導電率を得るためにより少量の低融点導体と相溶化剤とを使用することが可能になる。
【0042】
シールドするために使用する際、積層体として製造される本開示の導電性複合材料は、平坦な部品と共に使用する場合や、例えばシリンダなど、一本の曲率軸を有する部品と共に使用する場合に好ましい。積層体は、複雑な表面形状をもつ部品をシールドするために使用可能であるが、複雑な表面に貼り付けられたり、巻かれた場合に崩れる傾向があるため、そのような状況ではあまり使用されない。
【0043】
他の例では、導電性複合材料は、導体と相溶化剤とを含むブレンドまたは混合物であり、ポリマー全体に実質的に均一に分布している。そのような複合材料の製造は、モノマー混合物またはポリマー組成物を低融点導体および相溶化剤と混合し、任意選択でポリマーを硬化させるか、またはモノマー混合物を重合化することによって行うことができる。そのような導電性複合材料において、低融点導体および相溶化剤は、ポリマー全体に実質的に均一に分散される。
【0044】
ブレンドまたは混合物状の、本明細書に開示の導電性複合材料は、ポリマー内に安定的および均質かつ/または連続的に捕捉された導電性ネットワークを備えている。ネットワークは、低融点導体、すなわち、約60℃未満の溶融温度を有する導体と、相溶化剤とを含んでいる。相溶化剤は、複合材料中に存在する際、または製造時に導体と合金化しない化合物または金属である。
【0045】
また、理論に縛られることは望まないが、低融点導体とポリマーとのブレンドである(すなわち、積層体以外の)複合材料においては、金属と相溶化剤が、硬化の過程でポリマー内で生成される細孔(自由体積)の内部で導電性ネットワークを形成すると考えられる。さらに、理論に縛られることは望まないが、ポリマーの細孔構造は開放しているとみなすことができ、それにより、複合材料の異なる領域間の連結性が可能になると考えられる。相溶化剤は、細孔内に導体を保持するために、低融点導体および任意選択の増粘剤と協働する。相溶化剤と導体との組合せは、ペーストとみなすことができる。後述するように、ペーストは、固体よりも液体に似た振舞いをして、複合材料を軟質にすること、例えば、曲がることを可能にする。約60℃未満の溶融温度を有する導体を使用することにより、ペーストの形成および導電性ネットワークの形成が可能になる。
【0046】
ポリマー、低融点導体、相溶化剤および任意選択の増粘剤のブレンドとして製造される本開示の導電性複合材料は、例えば、様々な表面や材料用の導電性シールやコーティングとして使用することができる。
【0047】
ポリマー、低融点導体、相溶化剤および任意選択の増粘剤のブレンドとして製造される本開示の導電性複合材料は、複雑な表面形状を有する部品のシールドとしての使用に特に適している。そのような複合材料は、崩れを起こさずに複雑な表面形状に沿うことが可能である。
【0048】
特定の例では、本開示の導電性複合材料は、豊富な導電パスを含むように製造することが可能である。「豊富な導電パス」とは、三次元の電気的接続を有する電気経路を意味する。本明細書の他の個所で述べるように、ポリマー、低融点導体、相溶化剤および任意選択の増粘剤のブレンドとして製造される本開示の導電性複合材料は、ポリマーマトリクス内に安定的および均質かつ/または連続的に捕捉された、低融点導体および相溶化剤のネットワークを含んでいる。結果として、導体は、ポリマーマトリクス全体に三次元で均一または均質に分布しており、それにより豊富な導電パスが形成される。ブレンド状の導電性複合材料を曲げたり折ったりしても、通常は、曲げや折れによって生じる圧縮点の周辺に別の電気経路が残っているので、曲げや折れを横断する導電率の損失は生じない。
【0049】
上述したように、本開示は、ポリマーと、低融点導体と、相溶化剤とを含む導電性複合材料を提供する。低融点導体および相溶化剤は、通常、ペースト状であり、すなわち、これら成分の粘性混合物である。
【0050】
ポリマーは硬質ポリマーであってもよし、エラストマー(高分子弾性ポリマー)であってもよい。本明細書における高分子弾性ポリマーは、熱硬化性エラストマーであっても、熱可塑性エラストマーであってもよい。導電性複合材料を製造するために選択されるポリマーが硬質であるか高分子弾性であるかは、通常、最終用途または複合材料を基板に塗布する塗布方法に左右される。例えば、最終用途が軟質を要求している場合には、ポリマーは、導電性複合材料が軟質になるようにエラストマーである。そのような状況では、複合材料は、軟質導電性複合材料と称される。熱可塑性エラストマーは、導電性複合材料を所望の形状構成に成型または成形すること、または基板に塗布することを必要とする製造方式にとって有用である。
【0051】
本明細書に開示の導電性複合材料を製造するために有用な熱硬化性エラストマーとしては、アクリル樹脂、ポリエステルおよびビニルエステル、フェノール樹脂、アミン官能樹脂、ナイロンなどのポリアミド、ポリ乳酸、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリウレタン、ポリ尿素/ポリウレタンハイブリッド、ポリイミド、ポリ硫化物、フラン樹脂、それらの共重合体、それらの混合物などが挙げられる。
【0052】
熱硬化性エラストマーは、エポキシ官能樹脂からも製造可能であり、アニオン触媒またはカチオン触媒と熱を用いて単独重合されたり、硬化剤としても知られる多機能架橋剤との求核付加反応によって共重合されたりすることができる。
【0053】
特定の例では、導電性複合材料は、任意選択により軟質とされ、熱可塑性ポリマー、例えば、熱可塑性エラストマーから形成される。本明細書に開示の導電性複合材料に有用な熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ナイロンなどのポリアミド、ポリ乳酸、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルファイド、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、ポリシロキサン、ポリフルオロシロキサンなどのシリコーン、ペルフルオロポリエーテル、ポリブタジエン、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリ尿素/ポリウレタンハイブリッド、熱可塑性加硫物、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))、ポリエポキシド、ポリイミド、シアン酸エステル、ポリシアヌレート、ポリ硫化物、それらの共重合体、それらの混合物などが挙げられる。
【0054】
本明細書に開示の導電性複合材料を製造する際に使用される好適な熱可塑性エラストマーの粘度は、一般的な処理条件下において、約1000から約100,000cP、約1000から約25,000cP、約25,000から約50,000cP、約50,000から約75,000cP、または約75,000から約100,000cPである。特定の例では、本明細書で使用される好適な熱可塑性エラストマーの粘度は、一般的な処理条件下で約1000から約50,000cPである。本明細書において、「一般的な処理条件」には、室温程度(約25℃)から約200℃や、室温程度から約100℃が含まれる。そのような熱可塑性エラストマーは、軟質材料を製造するのに都合がよい。
【0055】
本明細書に開示の組成物および方法は、低融点導体を採用する。好適な低融点導体は、約60℃未満の溶融温度を有する金属および金属合金である。特定の例では、低融点導体の融点は、約50℃未満、約40℃未満、約30℃未満、約25℃未満、または約20℃未満である。特定の例では、融点は、合金が相溶化剤との混合当初に液体であるのに十分低く、かつ相溶化剤と完全に混合された際に塗布可能なペーストを形成するのに十分に低い。
【0056】
特定の例では、低融点導体は、少なくとも約50重量%のガリウム、ビスマス、水銀またはそれらの組合せを含む合金である。好適なガリウム合金は、インジウム、スズ、ビスマス、リン、鉛、亜鉛、カドミウム、アンチモンまたはそれらの組合せをさらに含む。インジウム、スズ、ビスマス、リン、鉛、亜鉛、カドミウム、アンチモンまたはそれらの組合せは、所望により、合金の溶融温度を変更するために含有されてもよい。
【0057】
低融点導体は、少量の不純物、すなわち、ペーストの流動学的特性または最終導電性複合材料の導電的および機械的特性を実質的に変えない量の不純物を含んでいてもよい。
【0058】
一例では、本明細書に開示の導電性複合材料に使用される低融点導体は、インジウムと、50~97重量%のガリウムを含有する合金である。
【0059】
別の例では、本明細書に開示の導電性複合材料を形成するために使用される低融点導体は、約15~30重量%のインジウムと、約55~80重量%のガリウムと、スズおよび亜鉛から選択される少なくとも一種類の金属とを含有する合金である。好適なガリウム合金は、インジウムコーポレーション(Indium Corporation)社から市販されている。
【0060】
開示の組成物で使用される代表的なガリウム合金としては、以下の組成と特性を有する合金が挙げられる。
【0061】
【0062】
低融点導体は、複合材料を製造するために使用されるペースト組成物の適切な特性を実現するために選択されてもよい。ペースト組成物は、均質であること、かつ低融点導体と相溶化剤とを用いて製造されることが好ましい。ペーストは、通常、無水である。水は不要であり、通常、ペーストを製造する際は避けられる。
【0063】
本明細書において導電性複合材料に使用される相溶化剤としては、非イオン性両親媒性化合物、イオン性両親媒性化合物、金属ナノ粒子、それらの混合物などが挙げられる。
【0064】
ペーストの調製は、例えば、遠心遊星ミキサを用いて低融点導体、相溶化剤および任意選択の成分を混合することによって行うことができる。結果として得られるペーストは、今後の利用のために貯蔵されてもよい。
【0065】
本明細書において使用される相溶化剤は、ペーストの加工性(例えば、流動性、塗布容易性など)を予想外に向上させる。理論に縛られることは望まないが、相溶化剤と低融点導体との混合は、低融点導体の粒子または液滴の表面に相溶化剤の被膜を形成し、結果として、低融点導体の表面エネルギーを低下させると考えられる。さらに、再び理論に縛られることは望まないが、相溶化剤は、低融点導体の液滴上に単一層または複数層を形成して導体の酸化を低減または防止するが、酸を使用することで得られる種類の殻は生成しないと考えられる。
【0066】
特定の例では、本明細書において使用される相溶化剤は、ペーストを増粘させるために、すなわち、ペーストの粘性を高めるために使用されてもよい。
【0067】
さらに、相溶化剤は、金属表面に酸化が生じる場合に、ペーストを再活性化させるために添加されてもよい。本明細書において「再活性化させる」とは、相溶化剤と低融点導体の分離した混合物に対して追加の相溶化剤を導入し、混合物を以下に記載する適切なせん断条件にかけることによって均一なペースト状に戻し得ることを意味する。
【0068】
ペーストが増粘剤の粒子を含んでいる例では、本明細書の他の個所でも記載するように、開示の相溶化剤は、増粘剤の粒子間に形成された細孔または空隙内への浸透を可能にすると考えられる。理論に縛られないが、相溶化剤は、ペースト中の液体材料の粘度を低下させることによって浸透を促進させると考えられる。細孔内への浸透は、それほど低融点ではない導体の使用を可能にし、ペーストに均質性をもたらすと考えられる。
【0069】
特定の例では、導電性複合材料を形成するために使用されるペーストは、低融点導体と相溶化剤を、約5:1から50:1、約10:1から30:1、約15:1から25:1、または約20:1から25:1の低融点導体対相溶化剤の重量比で含有している。したがって、低融点導体の百分率としての相溶化剤の量は、約2重量%から約20重量%の範囲である。低融点導体の百分率としての相溶化剤の特に有用な量は、約4重量%から10重量%の範囲である。相分離は回避されるべきである。より高濃度の相溶化剤の場合、相分離が生じるおそれがあり、この相分離は、本明細書の他の個所に開示された種類の増粘剤を使用することで対処することができる。
【0070】
特定の例では、相溶化剤は、線寸法で粒径が100nm未満、約90nm未満、約80nm未満、約70nm未満、約60nm未満、約50nm未満、約40nm未満、約30nm未満、または約20nm未満の無機ナノ粒子、例えば金属のナノ粒子を含む。好適なナノ粒子は、低融点導体に不溶の、すなわち、溶解しない金属を含む。ナノ粒子として使用される好適な金属は、室温時におけるその金属へのガリウムの溶解度が5モル%未満である金属である。本明細書におけるナノ粒子相溶化剤として使用される好適な金属の例としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、スズ、チタン、タングステン、それらの混合物、それらの合金などが挙げられる。
【0071】
特定の例では、相溶化剤は、非イオン性両親媒性化合物または非イオン性両親媒性化合物の混合物である。好適な非イオン性両親媒性化合物の例としては、脂肪アルコールエトキシレートなどの脂肪アルコールアルコキシレート、アルキルフェノールエトキシレートなどのアルキルフェノールアルコキシレート、脂肪酸エトキシレートなどの脂肪酸アルコキシレート、エトキシ化アミンなどのアルコシキ化アミン、脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体、ポリヒドロキシ化合物の脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪アミンオキシド、スルホキシド、有機ホスフィンオキシド、それらの混合物などが挙げられる。
【0072】
特定の例では、相溶化剤はイオン性化合物である。好適なイオン性両親媒性化合物としては、陰イオン性化合物や陽イオン性化合物が挙げられる。代表的な陰イオン性化合物は、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、およびアルキルカルボン酸塩である。代表的な陽イオン性化合物は、第4級アンモニウム化合物、モノアルキルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、およびトリアルキルアルミニウム塩である。
【0073】
導電性ペーストを形成するために使用される特定の陰イオン性化合物(もしくはそれらの混合物)または陽イオン性化合物(もしくはそれらの混合物)の選択および量は、導電性複合材料を製造するために使用される特定のポリマーによって決まる。陰イオン性または陽イオン性化合物の種類と量は、ポリマーの劣化または解重合を回避するために選択される。
【0074】
特定の例では、相溶化剤は界面活性剤である。
【0075】
特定の例では、相溶化剤は、非イオン性両親媒性化合物または非イオン性両親媒性化合物の混合物である。特に有用な非イオン性両親媒性化合物はアルキルフェノールエトキシレートである。代表的なアルキルフェノールエトキシレートは、トリトン(Triton(商標))X-100(平均9.5エチレンオキシド単位のポリエチレングリコールp-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェニルエーテル)などのオクトフェノールエトキシレートや、ノニフェノールエトキシレートである。
【0076】
その他の特に有用な非イオン性両親媒性化合物は、ポリ(エチレンオキシド)・ポリ(プロピレンオキシド)・ポリ(エチレンオキシド)のトリブロック共重合体(PEO-PPO-PEO)であるポロクサマーである。
【0077】
特定の例では、導電性複合材料は任意選択の増粘剤も含んでいる。使用時、通常、増粘剤は、低融点導体および相溶化剤と混合され、その結果、ペーストまたは導電性混合物層の成分となる。
【0078】
本明細書で使用される増粘剤は、粘度調整剤として機能し、ペースト内での低融点導体の流れの抑制または最小化を促進することができる。本明細書で使用される増粘剤は無機材料であっても有機材料であってもよい。増粘剤は、導体を溶解しないか、さもなくば、導体とともに溶液を形成せず、導体と混合された時に固体のままであり、導体に濡らされない。増粘剤は、通常、粒子、例えば、棒状、線状、実質的に球状の粒子またはそれらの混合物として使用され、その粒径は、ペーストを形成するために粉末が導体と均質化する容易度を決定する。通常、表面積がより大きい増粘剤は、表面積がより小さい増粘剤よりも優れた増粘剤である。増粘剤と導体、例えば、ガリウム合金との組合せは、増粘剤の適切な濡れと、ペーストの適切な流動性または弾性率を実現するために選択される。粒子の径と量は、1より高いタンデルタ値を有するペースト組成物、すなわち、固体よりも液体に似た振舞いをして、結果得られる複合材料を軟質にするペーストを製造するために選択される。
【0079】
特定の例では、増粘剤は、2より大きいアスペクト比、すなわち、長さが幅の少なくとも2倍ある無機増粘剤の粒子、例えば、棒状粒子や線状粒子を含む。アスペクト比は、顕微鏡を用いて測定することができる。
【0080】
特定の例では、増粘剤は、平均粒径が約0.1~500μm(100~500,000nm)の無機増粘剤の実質的に球状の粒子を含む。この粒径範囲の粒子は、導体とともにペーストを形成するために増粘剤として機能するのに十分な表面積を有する。特定の例では、増粘剤は、平均粒径が約1~25μm、約25~50μm、約50~75μm、約75~100μm、約100~150μm、約150~200μm、約200~250μm、約250~300μm、約300~350μm、約350~400μm、または約450~500μmの無機増粘剤の実質的に球状の粒子を含む。他の例では、増粘剤は、平均粒径が約50~150μmの無機増粘剤の実質的に球状の粒子を含む。特定の例では、平均粒径が約0.1~5μmの無機増粘剤の粒子である。
【0081】
一例では、増粘剤は、アスペクト比が2より大きく、長さが約0.01~10mmの棒状粒子または線状粒子を含む無機増粘剤である。特定の例では、無機増粘剤の棒状粒子の長さは、約0.01~0.5mm、約0.05~10mm、約0.01~10mm、約0.01~0.1mm、約0.1~1mm、約1~5mm、または約5~10mmである。棒状粒子または線状粒子を使用することは、最終複合材料の導電性に対して、ほぼ球状の粒子よりも大きな貢献になる。その結果、一定の導電性を実現するのに必要なペーストの量を低減させることができる。複合材料を製造するために使用されるペースト量の低減は、導体量または増粘剤量のどちらかを減らすことによって実現することができる。
【0082】
特定の例では、無機増粘剤は、棒状粒子もしくは線状粒子と実質的に球状の粒子との混合物、または棒状粒子と、線状粒子と、実質的に球状の粒子との混合物を含む。
【0083】
特定の例では、増粘剤は、平均粒径が約0.1~500μmの有機増粘剤の粒子を含む。特定の例では、増粘剤は、平均粒径が約1~25μm、約25~50μm、約50~75μm、約75~100μm、約100~150μm、約150~200μm、約200~250μm、約250~300μm、約300~350μm、約350~400μm、または約450~500μmの有機増粘剤の粒子を含む。特定の例では、増粘剤は、平均粒径が約50~150μmの有機増粘剤の粒子を含む。特定の例では、平均粒径が約0.1~5μmの有機増粘剤の粒子である。
【0084】
ペーストが増粘剤をさらに含んでいる例において、増粘剤は、適切な粘性を生じる量で、かつ/またはペーストおよび結果得られる複合材料の導電特性を調節するために使用されてもよい。ペースト中の無機増粘剤の好適な濃度は、ペースト組成物の重量%で、約0.1%から20%の範囲である。ペースト中の有機増粘剤の好適な濃度は、ペースト組成物の重量%で、約0.1%から40%の範囲である。
【0085】
ペースト組成物中の増粘剤の好適な体積基準の量は、ペーストの体積%で、約5~50%の範囲である。特定の例では、増粘剤の量は、ペースト組成物の体積%で、約5%から約10%、約5から約15%、約10から約20%、約15から約25%、約20から約30%、約25から約35%、または約30から約45%である。そのような量は、タンデルタ値が1より高いペースト組成物、すなわち、固体よりも液体に似た振舞いをして、結果得られる複合材料を軟質にするペーストを製造するのに都合がよい。
【0086】
上述したように、増粘剤の量は、増粘剤として棒状粒子または線状粒子を使用した場合に低減させることができる。ペースト中の棒状粒子または線状粒子増粘剤の好適な量は、ペーストの体積%で、約2~40%の範囲である。特定の例では、増粘剤の量は、ペースト組成物の体積%で、約2%から約5%、約5から約10%、約10から約15%、約15から約20%、約20から約25%、約25から約30%、または約30から約40%である。
【0087】
好適な導電性は、本明細書に開示の導電性複合材料において、ペースト中に大量の固体導電性粒子を採用することなく、すなわち、約45体積%を超える固体導電性粒子を充填することなく、達成することができる。しかしながら、特定の例では、金属粒子間で所望のレベルの電気的接続を形成するには不十分な金属しか液相中に存在しない場合には、ペースト中への45体積%を超える金属粒子の充填が採用されてもよい。したがって、必要な場合には、ペーストにおいて、45体積%超の、例えば、約45体積%と80体積%の間の粒子充填度が使用されてもよい。
【0088】
特定の例では、導電性複合材料を製造するために使用される増粘剤は、有機増粘剤である。好適な有機増粘剤としては、60℃超、すなわち、複合材料の製造前または製造中に増粘剤を合金と融着させない温度の融点を有する化合物が挙げられる。そのような化合物の例としては、マルトール、フェノール、ナフタレン、1-ナフトール、2-ナフトール、4-ピリドンや、例えば、黒鉛、カーボンブラックなどの炭素が挙げられる。有機増粘剤がフェノール性水酸基を有する化合物の場合、化合物が水酸基を介してジイソシアネートまたはポリイソシアネートのイソシアネート基と反応する可能性があるが、その反応は、ウレタン形成反応または尿素形成反応よりもゆるやかになるであろう。適切に使用すれば、そのような化合物は、結果得られるポリマーの特性を変えるために使用することができる。あるいは、有機増粘剤は、黒鉛粒子または炭素粒子であってもよい。
【0089】
特定の例では、増粘剤は、無機増粘剤または無機増粘剤の組合せである。好適な無機増粘剤としては、二酸化チタン、酸化亜鉛などの金属酸化物、融点が60℃を超える金属、セラミック材料が挙げられる。金属の場合は、複合材料の製造前または製造中に増粘剤が溶融しないようにするために、60℃を超える融点を有するものが選択される。好適な金属としては、ニッケル;ニッケル、チタン、タングステン、ステンレス鋼、銅、スズおよび亜鉛の金属酸化物;セラミックス;それらの組合せが挙げられる。
【0090】
本明細書に開示の導電性複合材料は、約0.1から約50体積%の導体を含んでいる。導体の量は、複合材料の予定される用途、および複合材料中の他の導体の種類と量によって決まる。通常、他の導体が含まれない場合、導電性を高めるためには、導体の割合を高めることが必要になる。当然ながら、導体が相対的に高い導電性を有する場合には、より少ない導体体積が採用されてもよい。特定の例では、導電性複合材料は、体積%で、約0.1から約30%、約0.1から約20%、または約0.1から約10%の導体を含んでいる。他の例では、導電性複合材料は、体積%で、約0.5から約30%、約0.5から約20%、または約0.5から約10%の導体を含んでいる。さらに他の例では、導電性複合材料は、体積%で、約1から約30%、約1から約20%、または約1から約10%の導体を含んでいる。さらに他の例では、導電性複合材料は、体積%で、約5から約30%、約5から約20%、または約5から約10%の導体を含んでいる。特定の例では、増粘剤の量は、複合材料の体積%で、約2%から約10%、約1%から約5%、約2%から約5%、約5から約15%、約10から約20%、約15から約25%、約20から約30%、約25から約35%、または約30から約45%である。
【0091】
増粘剤は、少なくとも一種類の有機増粘剤と少なくとも一種類の無機増粘剤との混合物であってもよい。有機増粘剤と無機増粘剤の混合物は、ペーストの流動性または弾性率を変えるために使用することができる。
【0092】
特定の例では、増粘剤は、棒状粒子、線状粒子、実質的に球状の粒子またはそれらの混合物を含み、棒状粒子、線状粒子および実質的に球状の粒子は、ニッケル、チタン、タングステン、ステンレス鋼、銅およびスズから選択される金属、ニッケルまたは亜鉛の金属酸化物、セラミックス、またはそれらの組合せを含み、実質的に球状の粒子の平均粒径は約0.1~500μm(100~500,000nm)であり、棒状粒子および線状粒子の長さは0.01~10mmである。
【0093】
本開示は、60℃未満の溶融温度を有する金属または金属合金、例えば、低融点導体と、相溶化剤と、任意選択の一種類または複数種類の増粘剤とを含むペースト組成物を提供する。別の例では、ペースト組成物は、60℃未満の溶融温度を有する金属または金属合金と、相溶化剤と、有機増粘剤および無機増粘剤から選択される少なくとも一種類の増粘剤とを含んでいる。
【0094】
特定の例では、本明細書に開示され、導電性複合材料を作製するために有用なペースト組成物は、貯蔵弾性率(G’)より高い損失弾性率(G’’)を有していてもよく、すなわち、1より高いタンデルタ値を有していてもよい。したがって、本開示のペースト組成物は、固体よりも液体に似た振舞いをする。本開示のペースト組成物は、ASTM D7175に従った動的せん断レオメータを用いた測定において、1Hzで500~100,000Pa.sの粘度を有する。
【0095】
本明細書に開示の導電性複合材料は、中間組成物を形成するために
(i)低融点導体と、相溶化剤と、任意選択の増粘剤とを含むペーストと、
(ii)モノマー混合物と
を混合することによって製造することができる。
【0096】
これらの材料を混合した後に、複合材料を形成するために、結果得られる中間組成物が硬化されてもよい。出発材料の選択に応じて、複合材料が硬質か、または軟質になる。複合材料は、熱可塑性、すなわち、加熱されると軟質であってもよい。
【0097】
あるいは、本明細書に開示の導電性複合材料は、
(i)低融点導体と、相溶化剤と、任意選択の増粘剤とを含むペーストと、
(ii)ポリマーまたはポリマー混合物と
を混合することによって製造することができる。
【0098】
必要に応じて、これらの材料を混合した後に、複合材料を形成するために、ポリマーが硬化される。出発材料の選択に応じて、複合材料が硬質か、または軟質になる。複合材料は、熱可塑性、すなわち、加熱されると軟質であってもよい。
【0099】
本開示の積層体複合材料は、(a)約60℃未満の溶融温度を有する金属および金属合金から選択される導体と、(b)相溶化剤とを含む導電性ペーストを第1のポリマーの表面に層形成し、さらに任意で第2のポリマーの層を導電性ペースト上に塗布することによって製造することができる。第2のポリマーは、第1のポリマーと同じ種類であっても異なる種類であってもよい。第2のポリマー層を付加することにより、導電性ペーストが封入される。
【0100】
本開示の積層体導電性複合材料は、導電性ペーストを非粘着性表面に塗布し、未硬化ポリマーをペースト上に塗り重ねた後、ポリマーを硬化させることによっても製造することができる。複合材料は、その後、非粘着性表面から引き剥がすことによって非粘着性表面から便利に取り外すことができる。必要に応じて、第2のポリマー(第1のポリマーと同じ種類でも別の種類でもよい)を導電性ペースト上に任意で塗布してもよい。第2のポリマー層を付加することにより、導電性ペーストが封入される。
【0101】
非粘着性表面は、好適な非粘着性材料であればよい。好適な非粘着性材料の例としては、ポリテトラフルオロエチレン、陽極酸化アルミニウム、セラミックス、エナメル加工鋳鉄が挙げられる。
【0102】
本明細書に開示の導電性複合材料は、複合材料に他の特性を付与するために、追加の材料をさらに含んでいてもよい。例えば、複合材料を形成する前に、熱酸化安定剤(熱酸化安定性を向上させる材料または添加剤)をポリオール、ジイソシアネートもしくはポリイソシアネート、またはペースト組成物のいずれかに含ませてもよい。複合材料に必要な特性および複合材料が使用される環境に応じて、熱酸化安定剤は、リン、酸化鉄、フェノール系酸化防止剤、金属不動態化剤またはそれらの組合せであってもよい。熱酸化安定剤を本明細書に開示の導電性複合材料に添加することにより、複合材料の作用温度範囲が拡大する。
【0103】
好適な金属不動態化剤としては、硝酸などの硝酸塩、クエン酸などのクエン酸塩、タングステン酸塩、モリブデン酸塩、クロム酸塩、それらの混合物などが挙げられる。
【0104】
特定の導電性複合材料のシート抵抗は最終用途によって決まる。例えば、電気部品を電磁放射線からシールドするために、例えば、高感度電子機器に乱れや障害を発生させるおそれがある電磁干渉を最小限に抑制するために、複合材料が使用される場合には、100オーム/スクエア未満の最小シート抵抗が好ましい。
【0105】
特定の例では、本明細書に開示の導電性複合材料は、20℃で約5×105S/mの最大バルク導電率を示す。
【0106】
特定の例では、本明細書に開示の導電性複合材料は、50%以上の伸びを示す。
【0107】
他の例では、本明細書に開示の導電性複合材料は、3MPa以上の引張強度を示す。
【0108】
特定の例では、本明細書に開示の導電性複合材料は、20℃で約5×105S/mの最大バルク導電率と、50%以上の伸びと、3MPa以上の引張強度とを示す。
【0109】
特定の例では、本明細書に開示の導電性複合材料は、
エラストマーと、
低融点導体と、
相溶化剤とを備え、
20℃で約5×105S/mの最大バルク導電率と、50%以上の伸びと、3MPa以上の引張強度を有する。
【0110】
シート抵抗は、標準的測定であり、四点プローブを用いて求めることができる。
【0111】
特定の例では、導電性複合材料は、軟質であり、約50%を超える伸びを有する。他の例では、導電性複合材料は、軟質であり、約10%超、約20%超、約30%超、または約40%超の伸びを有する。本開示の軟質導電性複合材料は、熱可塑性エラストマーを含んでいることが好ましい。一例では、熱可塑性エラストマーは熱可塑性ポリウレタンである。
【0112】
特定の例では、導電性複合材料は、約50%を超える伸びを有する。他の例では、導電性複合材料は、約10%超、約20%超、約30%超、または約40%超の伸びを有する。
【0113】
特定の例では、導電性複合材料は、軟質であり、3MPa以上の引張強度を有する。特定の例では、導電性複合材料は軟質である。特定の例では、導電性複合材料は、3MPa以上の引張強度を有する。
【0114】
特定の例では、導電性複合材料は、約2~10g/mLの密度を有する。他の例では、導電性複合材料は、約10~20g/mLの密度を有する。さらに他の例では、導電性複合材料は、約1~5g/mLまたは約3~8g/mLの密度を有する。一例では、導電性複合材料は、7g/mL未満の密度を有する。このパラメータは、既知の体積の質量を求めること、または既知の質量に置換された水の体積を測定することによって容易に測定することができる。
【0115】
本開示は、さらに、本明細書に開示の導電性複合材料、特定の例では、本明細書に開示の軟質導電性複合材料の層を担持した基板を備える製品、商品、および構造を提供する。そのような製品、商品および構造は、本明細書に開示の熱可塑性または熱硬化性導電性複合材料を加熱し、基板に塗布することによって製造することができる。
【0116】
本明細書に開示の導電性複合材料は、以下のようにして製造することができる。
【0117】
低融点導体と相溶化剤を混ぜ合わせ、結果得られる混合物を均一なペーストを形成するために十分に混錬することにより、ペースト組成物を調製する。混錬は、約25~2500rpmでせん断ミキサを用いて行うことができる。特定の例では、ペースト組成物を形成するためのせん断混錬は、約25~125rpm、約125~250rpm、約250~400rpm、約400~700rpm、約700~1500rpm、または約1500~2500rpmで実行される。あるいは、混錬は、遠心遊星ミキサを用いて行うことができる。結果として得られるペーストは、今後の利用のために貯蔵されてもよい。
【0118】
特定の例では、本開示の導電性複合材料は、(a)約60℃未満の溶融温度を有する金属および金属合金から選択される導体と、(b)相溶化剤とを含む導電性ペーストを第1のポリマーの表面に層形成することによって製造することができる。第2のポリマーは、第1のポリマーと同じ種類であっても異なる種類であってもよい。
【0119】
実施例
材料源
クレイソール(Krasol(登録商標))LBH-P2000はクレイバレー(Cray Valley)社から入手され、未処理のまま使用される。デスモーヘン(Desmophen(登録商標))NH-1220はコベストロ(Covestro)社から購入され、未処理のまま使用される。ガリウム合金(インダロイ(Indalloy)46L)は、インジウムコーポレーション(Indium Corporation)社から購入され、未処理のまま使用される。マルトール、チタン粉末(粒径約100メッシュ)、4,4’-メチレンビス(シクロへキシルイソシアネート)、異性体(HMDI)混合物およびジブチルスズジラウレート(DBTDL)は、シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)社から購入され、未処理のまま使用される。ステンレス鋼線(3mm×2μm)は、イントラマイクロン(Intramicron)社から購入され、未処理のまま使用される。ポリジメチルシロキサン(シルガード(Sylgard(商標))184)は、ダウコーニング(Dow Corning)社から購入され、未処理のまま使用される。ステンレス鋼粉末(種類316、325メッシュ(44μm))は、アトランティック・イクイップメント・エンジニアーズ(Atlantic Equipment Engineers)社から購入され、使用前にアセトンで洗浄された。
【0120】
低融点導体であるガリウムの体積%は、試料製造後に複合材料中のガリウム合金割合を逆算することによって求められた。
【0121】
実施例A:ポリウレタンプレポリマー(部分A)の調製
窒素導入口を有し、オーバーヘッド撹拌器(テフロン(登録商標)製シャフトおよびブレード)を備えた丸底フラスコ内に、水酸基末端ポリブタジエン(クレイソール(Krasol(登録商標))LBH-P2000、Mn=2100g/mol、50.00g、23.8mmol)と、HMDI(19.65g、74.89mmol)を入れる。このフラスコを100℃の油浴に漬け、175rpmで10分間撹拌する。その後、溶液中にマイクロピペットを用いてDBTDL(500ppm)触媒を加え、2時間反応を進行させてプレポリマー(部分A)を形成する。ガラス瓶に原液の部分A(溶媒含まず)を注入し、今後の使用のために保存する。
【0122】
比較例C-1
ペーストの調製
ガリウム合金(インダロイ(Indalloy(登録商標))46L)18.51gと、マルトール(増粘剤)3.02gとをせん断ミキサを用いて100rpm以下の回転数で約5分間混合する。
【0123】
ガリウム合金21.8体積%(ペースト)を含有する複合材料の作製:部分A(7.64g)と、ガリウム合金・マルトールペースト(21.53g)とをせん断ミキサを用いて100rpm以下の回転数で約5分間混合する。得られた均質混合物にNH1220(2.56g)を加え、へらを用いて1分間手練りする。その後、混合物をテフロン(登録商標)製の型に移し、ブレードアプリケータを用いて薄膜を流延成形する。
【0124】
比較例C-2
ペーストの調製
ガリウム合金(インダロイ(Indalloy(登録商標))46L)27.23gと、チタン粉末(増粘剤、約100メッシュ)5.86gとをせん断ミキサを用いて100rpm以下の回転数で約5分間混合する。
【0125】
ガリウム合金27.8体積%(ペースト)を含有する複合材料の作製
部分A(8.15g)と、ガリウム合金・チタンペースト(33.09g)とをせん断ミキサを用いて100rpm以下の回転数で数分間混合する。得られた均質混合物にNH1220(2.73g)を加え、へらを用いて1分間手練りする。その後、混合物をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の型(例えば、テフロン(登録商標)という商標のPTFE)に移し、ブレードアプリケータを用いて薄膜を流延成形する。
【0126】
比較例C-3
ペーストの調製
ガリウム合金(インダロイ(Indalloy(登録商標))46L)29gと、チタン粉末(増粘剤、約100メッシュ)5.17gとをせん断ミキサを用いて100rpm以下の回転数で約5分間混合する。その後、ペーストにステンレス鋼線(0.52g、3mm×2μm)を加え、同じ条件で混合する。
【0127】
ガリウム合金29.1体積%(ペースト)を含有する複合材料の作製:部分A(8.13g)と、ガリウム合金ベースのペースト(34.69g)とをせん断ミキサを用いて100rpm以下の回転数で数分間混合する。得られた均質混合物にNH1220(2.73g)を加え、へらを用いて1分間手練りする。その後、混合物をテフロン(登録商標)の型に移し、ブレードアプリケータを用いて薄い、すなわち、1~2mm厚の膜を流延成形する。
【0128】
比較例C-4
ガリウム合金含有シリコーンスポンジ
シリコーンスポンジの作製
LiangらによるJ.Mater.Chem.C,2017,5(7),1586~1590頁に記載の手順に基本的に従って以下の通りにシリコーンスポンジを作製する。
【0129】
シルガード(Sylgard(登録商標))の部分Aを20g、および部分Bを2gを遠心ミキサを用いて2300rpmで30秒間混合した後、4個の角砂糖を浸漬させる。その後、ポリジメチルシロキサン(PDMS)混合物を含有する角砂糖をデシケータに入れ、真空下で約2時間脱気する。その後、PDMS混合物含有角砂糖を65℃で3時間硬化させる。その後、砂糖を露出させるために、表面上のPDMSを拭き取る。砂糖を60℃の水に浸け、撹拌しながら溶解させる。100℃で2時間乾燥させることにより、PDMSスポンジが得られる。
【0130】
ガリウム合金約53体積%を含有するスポンジの作製
シリコーンスポンジ1個を半分に切り、ガリウム合金15gに浸漬する。その後、その容器をデシケータに入れる。真空を利用して、PDMSスポンジにガリウム合金液体金属を約60分間充填する。
【0131】
図3は、ガリウム合金充填シリコーンスポンジに対する圧縮の影響を示す。
図3に示すように、圧縮時には、シリコーンスポンジからガリウム合金が液体金属の液滴として漏出し、圧縮後には、約23体積%のガリウム合金のみがシリコーンスポンジ内に残存する。この量は、圧縮の前後でスポンジの重量を量ることで求められる。
【0132】
比較例C-5
Nusil(商標)LSR-5860液状シリコーンゴム対照
膜の作製
Nusil(商標)LSR-5860液状シリコーンゴム部分Aを10g、およびNusil(商標)LSR-5860液状シリコーンゴム部分Bを10gをFlackTek(登録商標)遠心遊星ミキサを用いて2300rpmで1分間混合した。混合物にテトラヒドロフラン(THF)10gを加え、混合物がTHFに完全に溶解するまでへらで数分間手練りした後、混合物をFlackTek(登録商標)ミキサを用いて2300rpmで1分間再度混合した。得られた均質混合物を剥離フィルムの上に流し、ガラス棒で流延させた。その後、大部分のTHF溶媒が蒸発した後(約18時間/夜通し)に、薄膜を100℃で2時間熱硬化させた。
【0133】
比較例C-6
シルガード(Sylgard(商標))対照
膜の作製シルガード(Sylgard(商標))184の部分Aを10g、およびシルガード(Sylgard(商標))184の部分Bを1gをFlackTek(登録商標)遠心遊星ミキサを用いて2300rpmで1分間混合した。混合物を剥離フィルムの上に流し、ガラス棒で流延させた。薄膜を100℃で45分間熱硬化させた。
【0134】
実施例1
ペーストの調製
ガリウム合金(インダロイ(Indalloy(登録商標))46L)60.13gと、トリトン(Triton(商標))X100の3gをFlackTek遠心遊星ミキサを用いて2300rpmで1分間混合した。ペーストにステンレス鋼粉末(増粘剤、325メッシュ(44μm))6.63gを加え、同じ条件で混合した。
【0135】
ガリウム合金15.5体積%(ペースト)を含む積層体複合材料の作製
比較例C-5に記載の膜作製手順を用いてNusil5860薄膜を製造した。膜を硬化させると、本実施例において上記調製したガリウムベースのペースト1gが1.5インチ×1.5インチ硬化膜上に均一に塗布された。比較例C-5の膜作製を再度行った後、Nusil5860部分Aと部分Bの混合物5gをTHF5gに溶解させた。得られたポリマー溶液をガリウムベースのペースト上に流延させ、大部分のTHF溶媒が蒸発した後(約18時間/夜通し)100℃で2時間熱硬化させた。得られた生成物は、1.5インチ×1.5インチの積層膜複合材料である。
【0136】
実施例2
ペーストの調製
ガリウム合金(インダロイ(Indalloy(登録商標))46L)75.21gと、トリトン(Triton(商標))X100の3.21gをFlackTek遠心遊星ミキサを用いて2300rpmで1分間混合した。ペーストにステンレス鋼粉末(増粘剤、325メッシュ(44μm))5.45gを加え、同じ条件で混合した。最後に、ペーストにステンレス鋼線(3mm×2μm、増粘剤)4.73gを加え、1分間へらで手練りした後、FlackTek(登録商標)ミキサ内で2300rpmで1分間混合した。
【0137】
ガリウム合金7.7体積%(ペースト)を含有する複合材料の作製
比較例C-6に記載の膜作製手順を用いてシルガード(Sylgard(商標))184薄膜を製造した。膜を硬化させると、本実施例において上記調製したガリウムベースのペースト1.82gが1.5インチ×1.5インチ硬化膜上に均一に塗布された。積層体複合材料を完全に封入するために、ガリウムベースのペースト上にさらにシルガード(Sylgard(商標))部分Aと部分Bの混合物3gを流延させ、100℃で45分間熱硬化させた。得られた生成物は、1.5インチ×1.5インチの積層膜複合材料である。
【0138】
実施例3
ペーストの調製
ガリウム合金(インダロイ(Indalloy(登録商標))46L)25.83gと、トリトン(Triton(商標))X100の1.07gをFlackTek遠心遊星ミキサを用いて2300rpmで1分間混合した。
【0139】
ガリウム合金14.1体積%(ペースト)を含む積層体複合材料の作製
比較例C-5に記載の膜作製手順を用いてNusil5860薄膜を製造した。膜を硬化させると、本実施例において上記調製したガリウムベースのペースト0.59gが1.5インチ×1.5インチ硬化膜上に均一に塗布された。比較例C-5の膜作製を再度行った後、Nusil5860部分Aと部分Bの混合物5gをTHF5gに溶解させた。得られたポリマー溶液をガリウムベースのペースト上に流延させ、大部分のTHF溶媒が蒸発した後(約18時間/夜通し)100℃で2時間熱硬化させた。得られた生成物は、1.5インチ×1.5インチの積層膜複合材料である。
【0140】
実施例4
熱エージング
比較例C-5膜および実施例1から実施例3で製造された積層膜を100℃のオーブン内に10日間置いて、導電性能および/または伸びを評価した。
【0141】
硬化後、比較例C-1、比較例C-2および比較例C-3に記載の複合材料は、容易に取り扱うことができ、機械的試験用のドッグボーン状に切り分けることができた。
【0142】
下記の表1は、熱可塑性ポリウレタン対照と、ガリウムベースのペーストを含有する複合材料の引張特性(伸びおよび即時破壊応力)をまとめたものである。これらの特性を測定するための好適な装置は、アメリカ合衆国マサチューセッツ州ノーウッドのインストロン(Instron)社から市販されている。
【0143】
これらの複合材料は、ガリウム合金充填度に対する高分子弾性組成物の敏感さを明らかに示しており、本明細書に開示の方法および組成物が高い金属含有量と相まって優れた弾性を示す複合材料をもたらすことを明らかに示している。
【0144】
【0145】
表1は、比較例C-5の膜がエージングによって機械的特性の劣化を示さないことを明らかに示している。
【0146】
表2は、比較例C-1、比較例C-2、比較例C-3、実施例1、実施例2および実施例3に従って製造された複合材料の、dB/mmの減衰として求められる、導電率値をまとめたものである。報告された全ての減衰結果は、試料の厚さを変数として除外するために正規化されている。
【0147】
減衰を求めるために、8~12GHzをカバーするX帯域導波管のフル2ポート測定が使用されている。複合材料試料は、導波管-同軸ケーブルトランジションを介してキーサイト(Keysight)社のN5245Aネットワークアナライザに接続された2個のX帯域導波管の間で圧縮される。空の導波管をスルースタンダードとして、フル2ポート較正が行われる。空の導波管の測定値は、後処理時の導波管損失を除去するために保存される。一部の試料は、まず、適正な電気シールを確保し、高周波漏出による損失量を求めるために、導波管の開口部と同一の中心切抜きが測定され、その後、完全方形の試料でもう一度測定が行われる。他の試料はそのまま測定される。
【0148】
有機増粘剤から無機増粘剤に移行すると、減衰が向上した。無機粒子と異方性金属線とを組み合わせた結果、非積層状の複合材料間で最高の導電率(-16dB/mm)が得られた。
【0149】
相溶化剤に加えて、ステンレス鋼の粉末増粘剤とミクロンサイズの線状添加物の両方を含有した積層体である実施例2は、たった約7.7体積%のガリウム合金で-29dB/mmの減衰を生じた。このことは、相対的に低充填度の低融点導体を用いた開示の導電性複合材料により、高い導電性が達成されることを明示している。
【0150】
実施例1および実施例2の積層体複合材料は、100℃の大気中で10日間熱エージング処理されたが、導電性の損失を示さなかった。
【0151】
【0152】
導電性複合材料および導電性複合材料を用いた作製方法について特定の実施例に基づき詳細に説明したが、添付の請求の範囲に規定された範囲を逸脱しない限りにおいて変更および変形が可能であることは明らかである。より具体的には、本開示の一部の局面は特に有利なものであるとして本明細書においてみなされているが、本開示は、これら特定の局面に必ずしも限定されるものではないと考えられる。
【0153】
さらに、本開示は、以下の条項にかかる例を含む。
【0154】
条項1.(a)ポリマーと、
(b)約60℃未満の溶融温度を有する金属および金属合金から選択される導体と、
(c)相溶化剤と
を含む、導電性複合材料。
【0155】
条項2.相溶化剤が、非イオン性両親媒性化合物、イオン性両親媒性化合物、金属ナノ粒子またはそれらの混合物を含む、条項1に記載の導電性複合材料。
【0156】
条項3.金属ナノ粒子が、線寸法で100nm未満の粒径を有し、銅、ニッケル、ステンレス鋼、スズ、チタン、タングステン、それらの混合物、またはそれらの合金を含む、条項2に記載の導電性複合材料。
【0157】
条項4.非イオン性両親媒性化合物が、脂肪アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、脂肪酸エトキシレート、エトキシ化アミン、脂肪酸アミド、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体、ポリヒドロキシ化合物の脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪アミンオキシド、スルホキシド、オルガノホスフィンオキシド、およびそれらの混合物からなる群から選択される、条項2または3に記載の導電性複合材料。
【0158】
条項5.非イオン性両親媒性化合物が界面活性剤である、条項2から4のいずれか一項に記載の導電性複合材料。
【0159】
条項6.ポリマーが熱硬化性ポリマーまたは熱可塑性ポリマーを含む、条項1から5のいずれか一項に記載の導電性複合材料。
【0160】
条項7.ポリマーが、ポリアミド、ポリ乳酸、ポリスチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、ポリベンゾイミダゾール、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリアリールエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルファイド、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン、シリコーン、ペルフルオロポリエーテル、ポリブタジエン、ポリアクリレート、ポリエーテルイミド、ポリウレタン、ポリ尿素/ポリウレタンハイブリッド、熱可塑性加硫物、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエポキシド、ポリイミド、シアン酸エステル、ポリシアヌレート、ポリ硫化物、またはそれらの共重合体もしくは混合物を含む、条項1から5のいずれか一項に記載の導電性複合材料。
【0161】
条項8.導体が、少なくとも約50重量%のガリウム、ビスマス、水銀またはそれらの組合せを含有する合金である、条項1から5のいずれか一項に記載の導電性複合材料。
【0162】
条項9.合金が、インジウム、スズ、リン、鉛、亜鉛、カドミウム、アンチモンまたはそれらの組合せをさらに含有する、条項8に記載の導電性複合材料。
【0163】
条項10.導体が、インジウムと、50~97重量%のガリウムとを含有する合金である、条項1から9のいずれか一項に記載の導電性複合材料。
【0164】
条項11.導体が、約15~30重量%のインジウムと、約55~80重量%のガリウムと、スズおよび亜鉛から選択される少なくとも一種類の金属とを含有する合金である、条項1から10のいずれか一項に記載の導電性複合材料。
【0165】
条項12.増粘剤をさらに含む、条項1から11のいずれか一項に記載の導電性複合材料。
【0166】
条項13.増粘剤が有機増粘剤である、条項12に記載の導電性複合材料。
【0167】
条項14.増粘剤が、マルトール、炭素、フェノール、ナフタレン、1-ナフトール、2-ナフトールまたは4-ピリドンである、条項12に記載の導電性複合材料。
【0168】
条項15.増粘剤が無機増粘剤である、条項12に記載の導電性複合材料。
【0169】
条項16.増粘剤が、棒状粒子、線状粒子、実質的に球状の粒子またはそれらの混合物を含み、かつ、ニッケル、チタン、タングステン、ステンレス鋼、銅およびスズから選択される金属、ニッケル、チタン、タングステン、ステンレス鋼、銅、スズもしくは亜鉛の金属酸化物、セラミックス、またはそれらの組合せを含み、
実質的に球状の粒子の平均粒径が約0.1~500μmであり、棒状粒子および線状粒子の長さが0.01~10mmである、条項12に記載の導電性複合材料。
【0170】
条項17.約0.1~50体積%の導体を含む、条項1から16のいずれか一項に記載の導電性複合材料。
【0171】
条項18.積層体である、条項1から17のいずれか一項に記載の導電性複合材料。
【0172】
条項19.導体と相溶化剤が実質的に均一に混合されており、積層体の層を形成している、条項18に記載の導電性複合材料。
【0173】
条項20.導体と相溶化剤が、ポリマー全体に実質的に均一に分散されている、条項1から17のいずれか一項に記載の導電性複合材料。
【0174】
条項21.導体が、導体と相溶化剤とを含むネットワークの形でポリマー内に連続的に捕捉されている、条項20に記載の導電性複合材料。
【0175】
条項22.20℃で約5×105S/m以下のバルク導電率と、50%以上の伸びと、3MPa以上の引張強度とを有する、条項1から21のいずれか一項に記載の導電性複合材料。
【0176】
条項23.密度が約1から30g/ccである、条項1から22のいずれか一項に記載の導電性複合材料。
【0177】
条項24.密度が7g/cc未満である、条項1から23のいずれか一項に記載の導電性複合材料。
【0178】
条項25.熱酸化安定性を向上させる添加剤をさらに含む、条項1から24のいずれか一項に記載の導電性複合材料。
【0179】
条項26.添加剤が、リン、酸化鉄、フェノール系酸化防止剤、金属不動態化剤またはそれらの組合せである、条項25に記載の導電性複合材料。
【0180】
条項27.60℃未満の溶融温度を有する金属または金属合金と、相溶化剤とを含む、組成物。
【0181】
条項28.相溶化剤が、非イオン性両親媒性化合物、イオン性両親媒性化合物、金属ナノ粒子またはそれらの混合物を含む、条項27に記載の組成物。
【0182】
条項29.無機増粘剤または有機増粘剤をさらに含む、条項27または28に記載の組成物。
【0183】
条項30.無機増粘剤が、実質的に球状であるか、またはアスペクト比が約2より大きい無機増粘剤の粒子である、条項29に記載の組成物。
【0184】
条項31.無機増粘剤の粒子が、実質的に球状であり、約0.1~500μmの直径を有する、条項30に記載の組成物。
【0185】
条項32.無機増粘剤が、アスペクト比が約2より大きく、長さが約0.01から10mmの無機増粘剤の粒子である、条項29に記載の組成物。
【0186】
条項33.貯蔵弾性率(G’)より大きい損失弾性率(G’’)を有するペーストである、条項27から32のいずれか一項に記載の組成物。
【0187】
条項34.モノマー混合物またはポリマー組成物を、(a)約60℃未満の溶融温度を有する金属および金属合金から選択される導体、および(b)相溶化剤と混合するステップを含む、導電性複合材料の作製方法。
【0188】
条項35.導電性複合材料を形成するためにモノマー混合物を硬化させるステップをさらに含む、条項34に記載の方法。
【0189】
条項36.(a)約60℃未満の溶融温度を有する金属および金属合金から選択される導体と、(b)相溶化剤とを含む導電性ペーストを第1のポリマーの表面に層形成するステップを含む、導電性複合材料の作製方法。
【0190】
条項37.導電性ペーストを有する第1のポリマーの表面に第2のポリマーの層を加えるステップをさらに含む、条項36に記載の方法。
【0191】
条項38.第2のポリマーが第1のポリマーと同じ種類または異なる種類である、条項37に記載の方法。
【0192】
条項39.エラストマーと、
60℃未満の溶融温度を有する金属および金属合金から選択される導体と、
相溶化剤とを含み、
20℃で約5×105S/m以下のバルク導電率、50%以上の伸び、および3MPa以上の引張強度を有する、
導電性複合材料。
【0193】
条項40.条項1から26または39のいずれか一項に記載の導電性複合材料の層を担持した基板。
【0194】
条項41.導電性複合材料の層を担持した基板を作製する方法であって、条項1から26または39のいずれか一項に記載の導電性複合材料を加熱するステップと、導電性複合材料を基板に塗布するステップとを含む、方法。