(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20250407BHJP
【FI】
A47J27/00 103Z
(21)【出願番号】P 2021081108
(22)【出願日】2021-05-12
【審査請求日】2024-03-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】平川 功
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0027319(US,A1)
【文献】特開2016-179282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌調理モードと、低温調理モードとを切替えて実行可能な加熱調理器であって、
内鍋を有する調理器本体と、
前記内鍋を加熱する加熱部と、
前記調理器本体に対して開閉し、閉状態において前記内鍋を覆う蓋体と、
前記蓋体に設けられ、低温調理時に、前記内鍋に収容された加熱対象物の周囲の液体を撹拌する撹拌装置と、を備え
、
前記撹拌装置は、
前記内鍋の開口部の中心を回転中心として回転する回転体と、
前記回転体の両端のうち、少なくとも一端に設けられた撹拌翼と、を含み、
前記撹拌翼の回転範囲より内側に、前記加熱対象物が前記内鍋に収容される領域が設定されており、
前記撹拌装置として、前記蓋体に着脱可能で択一的に取り付けられる第1撹拌装置および第2撹拌装置を備え、
前記第1撹拌装置は、撹拌調理時に、前記内鍋に収容された加熱対処物を撹拌し、
前記第2撹拌装置における前記撹拌翼の回転範囲を前記内鍋の底面に投影した領域の内側のラインは、前記第1撹拌装置における前記撹拌翼の回転範囲を前記内鍋の底面に投影した領域の内側のラインよりも前記内鍋の内壁に近い、加熱調理器。
【請求項2】
加熱調理器
であって、
内鍋を有する調理器本体と、
前記内鍋を加熱する加熱部と、
前記調理器本体に対して開閉し、閉状態において前記内鍋を覆う蓋体と、
前記蓋体に設けられ、低温調理時に、前記内鍋に収容された加熱対象物の周囲の液体を撹拌する撹拌装置と、を備え、
前記撹拌装置は、
前記内鍋の開口部の中心を回転中心として回転する回転体と、
前記回転体の両端のうち、少なくとも一端に設けられた撹拌翼と、を含み、
前記撹拌翼の回転範囲より内側に、前記加熱対象物が前記内鍋に収容される領域が設定され、
当該加熱調理器は、
前記内鍋に収容され、前記加熱対象物を収容する収容部材を有し、
前記撹拌翼は、前記内鍋と前記収容部材との間に形成される隙間に入り込むように形成されている
、加熱調理器。
【請求項3】
前記収容部材の底部に、当該収容部材を少なくとも前記内鍋の底面に接触しないように固定する固定部材が設けられている、請求項
2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記撹拌翼は、前記回転体に対して垂直になる角度から当該回転体の回転中心に向かって回動自在に設けられている、請求項
1~3の何れか1項に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記撹拌翼は、短手方向の断面形状が略直角三角形状であり、当該断面形状の斜辺が前記回転体の回転中心側に向くように形成されている、請求項
4に記載の加熱調理器。
【請求項6】
内鍋を有する調理器本体と、
前記内鍋を加熱する加熱部と、
前記調理器本体に対して開閉し、閉状態において前記内鍋を覆う蓋体と、
前記蓋体に設けられ、低温調理時に、前記内鍋に収容された加熱対象物の周囲の液体を撹拌する撹拌装置と、を備え、
前記撹拌装置は、
前記内鍋内に満たされた液体を吸い上げるポンプ部と、
前記ポンプ部が汲み上げた液体を、前記内鍋内に満たされた液体の液面に向かって斜め下方に吐出する排水管と、を含む
、加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温調理機能を有する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
低温調理機能を有する調理器として、例えば特許文献1に開示された加熱調理器や特許文献2に開示された炊飯器が知られている。これらの調理器では、調理器本体に収容される内鍋に食材を入れて蓋をした状態で低温調理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-65855号公報
【文献】特開2019-181051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、低温調理では、食材全体をムラ無く均一に加熱する必要があるため、内鍋内の水の温度を適切に制御する必要がある。しかしながら、調理器では、一般的に内鍋を底部から加熱することで対流を生じさせて、内鍋内の水の温度を均一化するようになっているため、内鍋内の水温が均一になるまで時間を要する。このため、内鍋内の水に浸した食材が内鍋の底側から温められることになり、当該食材の全体をムラ無く均一に加熱するのが難しいという問題がある。
【0005】
本発明の一態様は、低温調理時に、迅速に内鍋内の水温を均一にすることで、食材全体をムラ無く均一に加熱できる加熱調理器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る加熱調理器は、撹拌調理モードと、低温調理モードとを切替えて実行可能な加熱調理器であって、内鍋を有する調理器本体と、前記内鍋を加熱する加熱部と、前記調理器本体に対して開閉し、閉状態において前記内鍋を覆う蓋体と、前記蓋体に設けられ、低温調理時に、前記内鍋に加熱対象物と共に収容される液体を撹拌する撹拌装置と、を備え、前記撹拌装置は、前記内鍋の開口部の中心を回転中心として回転する回転体と、前記回転体の両端のうち、少なくとも一端に設けられた撹拌翼と、を含み、前記撹拌翼の回転範囲より内側に、前記加熱対象物が前記内鍋に収容される領域が設定されており、前記撹拌装置として、前記蓋体に着脱可能で択一的に取り付けられる第1撹拌装置および第2撹拌装置を備え、前記第1撹拌装置は、撹拌調理時に、前記内鍋に収容された加熱対処物を撹拌し、前記第2撹拌装置における前記撹拌翼の回転範囲を前記内鍋の底面に投影した領域の内側のラインは、前記第1撹拌装置における前記撹拌翼の回転範囲を前記内鍋の底面に投影した領域の内側のラインよりも前記内鍋の内壁に近い。
本発明の別の一態様に係る加熱調理器は、加熱調理機であって、内鍋を有する調理器本体と、前記内鍋を加熱する加熱部と、前記調理器本体に対して開閉し、閉状態において前記内鍋を覆う蓋体と、前記蓋体に設けられ、低温調理時に、前記内鍋に収容された加熱対象物の周囲の液体を撹拌する撹拌装置と、を備え、前記撹拌装置は、前記内鍋の開口部の中心を回転中心として回転する回転体と、前記回転体の両端のうち、少なくとも一端に設けられた撹拌翼と、を含み、前記撹拌翼の回転範囲より内側に、前記加熱対象物が前記内鍋に収容される領域が設定され、当該加熱調理器は、前記内鍋に収容され、前記加熱対象物を収容する収容部材を有し、前記撹拌翼は、前記内鍋と前記収容部材との間に形成される隙間に入り込むように形成されている。
本発明のさらに別の一態様に係る加熱調理器は、内鍋を有する調理器本体と、前記内鍋を加熱する加熱部と、前記調理器本体に対して開閉し、閉状態において前記内鍋を覆う蓋体と、前記蓋体に設けられ、低温調理時に、前記内鍋に収容された加熱対象物の周囲の液体を撹拌する撹拌装置と、を備え、前記撹拌装置は、前記内鍋内に満たされた液体を吸い上げるポンプ部と、前記ポンプ部が汲み上げた液体を、前記内鍋内に満たされた液体の液面に向かって斜め下方に吐出する排水管と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、低温調理時に、迅速に内鍋内の水温を均一にすることで、食材全体をムラ無く均一に加熱できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態1に係る加熱調理器の概略断面図である。
【
図2】低温調理を行う場合の
図1に示す加熱調理器の概略断面図である。
【
図3】
図1に示す加熱調理器で使用する撹拌ユニットを上面から見た概略構成図である。
【
図4】
図3に示す撹拌ユニットを装着した場合の
図1に示す加熱調理器の概略断面図である。
【
図5】本発明の実施形態2に係る加熱調理器の概略断面図である。
【
図6】
図5に示す加熱調理器の要部を拡大した概略断面図である。
【
図7】
図5に示す加熱調理器の蓋を閉じた状態を示す概略断面図である。
【
図8】
図5に示す加熱調理器の蓋を開けた状態を示す概略断面図である。
【
図9】
図5に示す加熱調理器の撹拌ユニットの撹拌翼の動きを説明するための図である。
【
図10】
図5に示す加熱調理器の撹拌ユニットの撹拌翼の構造を説明するための図である。
【
図11】本発明の実施形態3に係る加熱調理器の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。本実施形態では、本発明の加熱調理器として、内鍋に収容した食材を加熱しながら撹拌して調理する撹拌調理モードと、内鍋に収容した食材を所定の温度(例えば40℃~60℃)を維持しながら加熱を行う低温調理する低温調理モードとを切替えて実行できる加熱調理器について説明する。
【0010】
(加熱調理器の概要)
図1は、加熱調理器1の概略構成断面図である。加熱調理器1は、
図1に示すように、調理器本体部11と蓋体12とを備えている。調理器本体部11と蓋体12とは後部の回転支持部(図示せず)によって連結されている。
【0011】
調理器本体部11は食材を収容する内鍋21を有する。内鍋21は、調理器本体部11の内部の凹部に出し入れ自在に収納されている。
【0012】
蓋体12は、外蓋31と内蓋32とを有する。外蓋31は、蓋体12の筐体部となっており、主として樹脂にて形成されている。内蓋32は、例えばアルミニウムやステンレス等の金属材料にて形成され、蓋体12を閉じたときに、内鍋21の蓋となり、内鍋21の上面を塞ぐようになっている。
【0013】
蓋体12には、外蓋31と内蓋32を連通した蒸気排出口12aが形成されている。蒸気排出口12aから蒸気を排出することで、内鍋21内の圧力を一定に保つようになっている。
【0014】
加熱調理器1は、内鍋21を収納する収納部底面側に当該内鍋21を加熱するためのヒータ(加熱部)22と、当該内鍋21の温度を検出する温度センサ23とが設けられている。
【0015】
さらに、加熱調理器1は、内鍋21に収容された食材を撹拌するための撹拌ユニット13を備えている。撹拌ユニット13は、蓋体12の内蓋32に着脱自在である。撹拌ユニット13は、内蓋32に装着する際に、外蓋31に設けられたモータ24の回転軸25に接続される。撹拌ユニット13は、蓋体12に設けられたプランジャ26が回転体13aの所定位置に挿入されることで、回転停止状態となり、内蓋32に固定される。
【0016】
撹拌ユニット13は、上述のように、モータ24の回転力が回転軸25を介して伝わることで回転し、調理中に内鍋21内の食材を適宜撹拌する。撹拌ユニット13は、内蓋32における内鍋21との対向面側に着脱可能に取り付けられた回転体13aと、2本の撹拌翼13bを有する。撹拌翼13bは、回転体13aに取り付けられている。
【0017】
加熱調理器1は、撹拌調理モードと、低温調理モードとを切替えて実行可能である。ここで、撹拌調理モード時には、撹拌ユニット13を内蓋32に取り付け、低温調理モード時には、撹拌ユニット13を内蓋32に取り付けない。但し、調理対象となる食材の大きさによっては、低温調理モードであっても撹拌ユニット13を内蓋32に取り付けてもよい。
【0018】
(低温調理)
図2は、加熱調理器1が低温調理モードに設定された状態の概略構成断面図である。低温調理では、
図2に示すように、撹拌ユニット13を取りはずし、所定量の水(液体)43が満たされた内鍋21内に袋41に入れた食材42を投入した状態で、ヒータ22によって内鍋21を加熱する。加熱後の加熱調理器1の温度制御は、内鍋21の底面側に設けられた温度センサ23によって検出される内鍋21の温度によって行われる。このようにして、内鍋21内の水43の温度を制御することで、水43は沸騰することなく所定温度(例えば40℃~60℃)で所定時間維持される。このようにして、低温調理では、所定温度で所定時間維持された水43によって袋41に入れた食材42を加熱対象物として加熱調理する。なお、食材42を入れた袋41は密封するが、この場合、真空状態にしてもよい。真空状態にすれば、袋41の中の食材42に熱を伝え易くなる。
【0019】
低温調理では、食材42全体を所定温度の水43で所定時間加熱することになるため、内鍋21内の水43の温度制御は重要である。ところで、内鍋21を底面からヒータ22によって加熱して、内鍋21内の水43を所定温度で維持する場合、内鍋21内の水43全体の温度が均一であることが好ましい。これは、内鍋21の底面の温度と内鍋21内の水43との温度差が小さい程、内鍋21内の水43の温度制御を精度よく行うことができるためである。内鍋21内の水43全体の温度を均一にするために、内鍋21内の水43を撹拌することが考えられる。この場合、撹拌ユニット13を内蓋32に装着して、内鍋21内の水43を撹拌することになる。
【0020】
(撹拌ユニットの撹拌範囲)
図3は、加熱調理器1に装着できる2種類の撹拌ユニットの撹拌翼の回転範囲、すなわち、撹拌ユニットの撹拌範囲と、食材の載置面積との関係を示す図である。
図4は、撹拌ユニット14を装着したときの低温調理時の加熱調理器1の概略断面図である。
【0021】
図3の符号1031は、撹拌ユニット13を用いた場合の食材42の載置可能面積Aを示している。ここで、載置可能面積Aは、内鍋21の中心を含むように食材42を載置したときに、撹拌翼13aによって食材42の周囲の水43を撹拌可能な面積とする。元々、撹拌ユニット13は、食材42を撹拌するためのものであるため、撹拌翼13bの回転範囲を内鍋21の底面に投影した面積は一般に狭い。この撹拌ユニット13を用いて低温調理を行う場合には、撹拌翼13bの回転範囲を内鍋21の底面に投影した面積よりも小さい載置可能面積Aの食材42を使用すればよい。
【0022】
図3の符号1032は、撹拌ユニット13よりも撹拌翼13bの間隔が長い撹拌ユニット14を用いた場合の食材42の載置可能面積Aを示している。撹拌ユニット14の場合、回転範囲を内鍋21の底面に投影した面積が、撹拌ユニット13の回転範囲を内鍋21の底面に投影した面積よりも広くなるので、撹拌ユニット13を用いた場合の載置可能面積Aよりも大きな食材42の周囲の水43を撹拌することができる。このように、内鍋21に収容された食材42の周囲の水43を撹拌するには、撹拌翼14bの回転範囲より内側に、食材42が内鍋21に収容される領域が設定されている必要がある。
【0023】
撹拌ユニット14は、基本的に撹拌ユニット13と同じ構造であり、外蓋31に設けられたモータ24の回転軸25に接続される回転体14aと、回転体14aの両端に設けられた撹拌翼14bとを備えている。この撹拌ユニット14を装着した加熱調理器1は、
図4に示すように、内鍋21に収容された袋41に入った食材42の周囲の水43を撹拌する。食材42を撹拌する撹拌ユニット13の撹拌翼13bは、ある程度固い材質で形成する必要があるが、水43を撹拌する撹拌ユニット14の撹拌翼14bは、撹拌翼13bのようにそれほど固い材質でなくてもよい。
【0024】
つまり、撹拌ユニット13および撹拌ユニット14は、低温調理時に、内鍋21に袋41に入れられた食材42の周囲の水43を撹拌する撹拌装置として機能する。
【0025】
また、撹拌ユニット13および撹拌ユニット14は、何れも一つの撹拌翼があればよい。そして、撹拌翼の回転範囲より内側に、食材42が内鍋21に収容される領域が設定されているので、食材42の大きさに合わせて撹拌ユニット13、撹拌ユニット14の何れかを使用する。
【0026】
ところで、
図4に示す加熱調理器1の場合、袋41に入れた食材42は内鍋21の底面に接触するようになっているため、温められた水43による加熱の他に、ヒータ22の熱が内鍋21の底面を介して伝わる熱によって食材42が加熱される。このように、内鍋21内の食材42が水43以外の熱源(加熱された内鍋21の底面)によって加熱された場合、食材42全体を均一に加熱し難い。ここで、温度センサ23は、内鍋21の底面の温度を測定することになっている。しかしながら、内鍋21の底面に食材42が接触していれば、温度センサ23は、食材42の温度に影響されるため、内鍋21の温度、内鍋21内の水43の温度との差が大きくなり、内鍋21内の水43の温度を正確に制御できない可能性がある。
【0027】
以下の実施形態2では、内鍋21の底面に食材42が接触しないようにして、内鍋21の底面の温度が食材42の温度に影響を受けずに、内鍋21内の水43の温度を適切に制御する例について説明する。
【0028】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0029】
(加熱調理器の概要)
図5は、加熱調理器2の概略構成断面図である。加熱調理器2は、
図5に示すように、前記実施形態1の
図4に示す加熱調理器1と殆ど同じ構成であるが、内鍋21内に食材42を袋41ごと収容する籠(収容部材)15を備えている点で異なる。
【0030】
ここで、撹拌ユニット14の撹拌翼14bは、内鍋21の内面と籠15の外面と間に挿入できるように、回転体14aに取り付けられている。これにより、撹拌ユニット14の撹拌翼14bは、回転中に食材42を入れた袋41に接触することなく、水43を撹拌することができる。また、籠15は、複数の穴が形成されており、内鍋21内の水43が自由に出入りできるような構造となっている。これにより、内鍋21内に籠15が収容された状態であっても、撹拌ユニット14の撹拌翼14bによって水43を十分に撹拌することができる。
【0031】
(籠15の固定)
図6は、内鍋21内での籠15の固定について説明する図である。籠15は、
図6に示すように、内鍋21の底面に接触する部分に、3個の固定部材16が設けられている。固定部材16は、ゴム等の弾性を有する部材からなり、籠15を内鍋21に収容したときに内鍋21の底面から所定の高さのところで固定できる大きさに設けられている。
【0032】
固定部材16を用いて籠15を内鍋21内に固定した場合、撹拌ユニット14の撹拌翼14bによって内鍋21内の水43を撹拌しても、当該籠15は内鍋21内で動かない。しかも、籠15は、内鍋21に収容された状態であれば、内鍋21の底面から固定部材16で固定した分離れていることになる。従って、内鍋21の底面に食材42が接触することがないので、内鍋21の底面の温度が食材42の温度に影響されることはなく、内鍋21内の水43の温度を正確に制御できる。
【0033】
(撹拌翼14bの長さ)
図7は、撹拌ユニット14を装着した状態で蓋体12を閉じた加熱調理器2の概略断面図である。
図8は、撹拌ユニット14を装着した状態で蓋体12を開放した加熱調理器2の概略断面図である。
【0034】
撹拌ユニット14において、撹拌翼14bは、撹拌可能な状態で回転体14aに対して固定されている。この場合、撹拌ユニット14を蓋体12の内蓋32に装着した状態で、蓋体12を開放しようとすれば、撹拌ユニット14の撹拌翼14bが停止する位置によっては、撹拌翼14bが内鍋21に引っかかり蓋体12が開放できない。これを解消するためには、撹拌ユニット14の撹拌翼14bが、蓋体12の開放時に内鍋21に当接しない位置で、撹拌ユニット14の回転を停止させることが考えられる。この場合、撹拌翼14bが正面から見て真横になる状態になる位置で撹拌ユニット14の回転を停止させることで、撹拌翼14bが内鍋21に当接しない状態となる。これを実現するために、蓋体12に設けられたプランジャ26を内蓋32側に下ろして、
図7に示すように、撹拌翼14bが正面から見て真横になる状態になる位置で固定する。このときの撹拌翼14bの長さは、蓋体12を開放する際には、
図8に示すように、撹拌翼14bが内鍋21に当接しない長さに設定されている。一方で、撹拌翼14bを撹拌ユニット14の回転体14aに対して回動自在に設けることにより、蓋体12を開放する際に、撹拌翼14bが内鍋21に引っかかることを防止することも考えられる。具体的には以下のようになる。
【0035】
(撹拌翼14bが回動自在)
図9は、撹拌翼14bが回転体14aに対して回動自在に設けられた場合の撹拌ユニット14の回転動作を説明するための図である。この場合、撹拌翼14bは、回転体14aに対して、矢印方向(垂直から内側)、すなわち内鍋21の底面方向から回転軸25に向かって折れ曲がるように回動自在に支持されている。なお、撹拌翼14bは、回転体14aに対して垂直な位置から外側に回動せず、内側にのみ回動する構造となっている。このように、撹拌ユニット14が回転体14aに対して回動自在に支持されていることで、撹拌翼14bは、どの位置で停止しても蓋体12を開放する際に、内鍋21に当接するが引っ掛かることはない。このように、撹拌翼14bは、内鍋21に引っ掛かることがないが、内鍋21の内面に当接するため、硬質ゴム等の軟らかい材質で形成するのが好ましい。
【0036】
(撹拌翼14bの断面形状)
図10は、撹拌ユニット14を内鍋21の底面側から見た図である。撹拌ユニット14の撹拌翼14bの短手方向の断面は、
図10に示すように、略直角三角形状である。具体的には、撹拌翼14bは、断面形状である略直角三角形の斜辺が回転体14aの回転中心側(内側)に向くように設けられている。撹拌翼14bの斜辺は、回転体14aが矢印X方向に回転するとき、受けた水を内側(回転軸25側)に押し曲げるように形成されている。従って、撹拌ユニット14の回転体14aを矢印X方向に回転させると、撹拌翼14bの斜辺が水を受けて、受けた水を内側に押し曲げることで、当該撹拌翼14bの外側に応力が働くようになる。これにより、撹拌翼14bは、回転体14aが矢印X方向に回転している時には、内側(白矢印方向の反対側)に回動しない。ここで、撹拌翼14bの回動する角度は、90°よりも大きければ、当該撹拌翼14bが回転中に内鍋21に当接する恐れがあり、90°よりも小さければ、当該撹拌翼14bが回転中に籠15(籠15を用いない場合、食材42を入れた袋41)に当接する恐れがあるため、90°が好ましい。
【0037】
前記2つの実施形態では、撹拌ユニット13および撹拌ユニット14の撹拌翼が2つの場合について説明したが、これに限定されるものではなく、撹拌翼が1つであってもよいし、2つよりも多くてもよい。
【0038】
また、前記2つの実施形態では、何れも、低温調理時に撹拌翼を用いて内鍋21内の水43を撹拌する例について説明したが、以下の実施形態3では、低温調理時に、撹拌翼ではなく、水流によって内鍋21内の水43を撹拌する例について説明する。
【0039】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0040】
(加熱調理器の概要)
図11は、加熱調理器3の概略構成断面図である。
図11では、説明の便宜上、調理器本体部11、蓋体12を省略している。加熱調理器3は、
図11に示すように、基本的に前記実施形態1の加熱調理器1と同じであるが、撹拌ユニット13の代わりに、水流発生装置(撹拌装置)50を備えている点で異なる。
【0041】
水流発生装置50は、ケーシング51と、ケーシング51内に収容されたインペラー52と、ケーシング51に給水された水を排出する排水管53と、インペラー52に設けられた軸54とを備えている。軸54は、蓋体12内のモータ24の駆動力を伝達する回転軸25に接続される。
【0042】
ケーシング51は、給水口51a、排水口51b、接続穴51cを有している。給水口51aは、収容したインペラー52が回転することにより、内鍋21内の水43を給水する。排水口51bは、給水口51aからケーシング51内に給水され、ケーシング51に貯まった水を排出する。接続穴51cは、インペラー52を駆動するための軸54をモータ24の回転軸25側に露出させるための開口である。インペラー52は、内鍋21内に満たされた水43を吸い上げて排出するポンプ部として機能する。
【0043】
給水口51aは、筒状であり、水流発生装置50を蓋体に装着した状態で、蓋によって内鍋21に閉塞されたとき、内鍋21に満たされた水43の表面(水面)から所定の長さ潜り込こむようになっている。
【0044】
排水口51bは、内鍋21に満たされた水43の水面に対して平行に水を排出するようにケーシング51に形成されている。この排水口51bには、排水管53が接続されている。排水管53は、排水の排出側に設けられた排出口53aから、排水の排出方向を内鍋21に満たされた水43における当該内鍋21の内面に接触している水面に向かって斜め方向に排水を排出する。
【0045】
接続穴51cは、インペラー52の回転軸である軸54を回動自在に支持し、ケーシング51内の水が当該接続穴51cから漏れないようにシール加工されている。
【0046】
水流発生装置50を使用する場合、図示しない蓋体の内蓋に装着するが、その際、モータ24の駆動力を伝える回転軸25にケーシング51から突出した軸54を接続する。さらに、蓋体に設けられたプランジャ26を水流発生装置50のケーシング51の所定の位置に下ろすことにより、当該ケーシング51がインペラー52の回転に伴い回転するのを止める。この状態で、ケーシング51内のインペラー52を回転させることで、給水口51aから水43を吸い込み、排水口51bを介して排水管53の排出口53aから内鍋21に向かって吐き出す。このようにして、水流発生装置50から吐き出された水によって、内鍋21内に水流を生じさせて、当該内鍋21内の水43の温度の均一化が行われる。
【0047】
水流発生装置50から排出される水は、内鍋21に満たされた水43のできるだけ深い位置まで届くようにするのが好ましい。このため、水流発生装置50の排水管53は、排出口53aが内鍋21に満たされた水43に潜り込むような形状にするのが好ましい。
【0048】
上記構成の水流発生装置50を用いて内鍋21内の水43を撹拌すれば、前記実施形態1,2で説明した撹拌ユニット13、撹拌ユニット14を用いる場合のように、加熱対象物である食材42の載置面積を特に考慮する必要がない。つまり、内鍋21に収容可能な大きさの食材42であれば、水43を撹拌しながら低温調理を行うことが可能となる。
【0049】
また、水流発生装置50を用いる場合であっても、内鍋21内の水43の温度制御を精度よく行うには、前記実施形態2で説明した籠15に食材42を収容して、当該内鍋21の底面の温度を検知する温度センサ23が食材42の影響を受けにくくするのが好ましい。
【0050】
また、本実施形態では、水流発生装置50としてインペラー52を用いたポンプの例について説明したが、これに限定されるものではなく、内鍋21内の水43を撹拌させるための水流を発生させるためであれば、他のポンプを使用してもよい。さらに、水流発生装置50では、水の排出口を一つとしていたが、これに限定されるものではなく、内鍋21内の水43を撹拌させるためであれば、排出口は2つ以上あってもよい。
【0051】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る加熱調理器は、内鍋(21)を有する調理器本体(11)と、前記内鍋(21)を加熱する加熱部(ヒータ22)と、前記調理器本体(11)に対して開閉し、閉状態において前記内鍋(21)を覆う蓋体(12)と、前記蓋体(12)に設けられ、低温調理時に、前記内鍋(21)に収容された加熱対象物(食材42)の周囲の液体(水43)を撹拌する撹拌装置(撹拌ユニット13、撹拌ユニット14、水流発生装置50)と、を備えている。
【0052】
上記構成によれば、低温調理時に、内鍋に加熱対象物と共に収容される液体(水)が撹拌されるので、迅速に内鍋内で加熱された液体の温度分布を均一にすることが可能となる。これにより、内鍋内の加熱対象物は、均一に温められた液体によって全体が均一に加熱されることになる。しかも、内鍋内の液体の温度が迅速に均一になるので、内鍋の温度から液体の温度を正確に知ることができ、低温調理時における内鍋内の液体(水)の温度制御を精度よく行うことができる。
【0053】
本発明の態様2に係る加熱調理器は、上記態様1において、前記撹拌装置(撹拌ユニット13、撹拌ユニット14)は、前記内鍋(21)の開口部の中心を回転中心として回転する回転体(13a,14a)と、前記回転体(13a,14a)の両端のうち、少なくとも一端に設けられた撹拌翼(13b,14b)と、を含み、前記撹拌翼(13b,14b)の回転範囲より内側に、前記加熱対象物(食材42)が前記内鍋(21)に収容される領域が設定されてもよい。
【0054】
上記の構成によれば、撹拌装置の撹拌翼による撹拌時に、内鍋内の加熱対象物に撹拌翼が当たらない。
【0055】
本発明の態様3に係る加熱調理器は、上記態様2において、前記内鍋(21)に収容され、前記加熱対象物(食材42)を収容する収容部材(籠15)を有し、前記撹拌翼(14b)は、前記内鍋(21)と前記収容部材(籠15)との間に形成される隙間に入り込む構成であってもよい。
【0056】
上記構成によれば、加熱対象物を収容部材に収容した状態で液体(水)を撹拌することになるので、撹拌翼が加熱対象物に直接当たる恐れがない。これにより、撹拌翼による液体の撹拌を効率良く行うことが可能となるので、液体の温度の均一化を迅速にできる。
【0057】
本発明の態様4に係る加熱調理器は、上記態様3において、前記収容部材(籠15)の底部に、当該収容部材(籠15)を少なくとも前記内鍋(21)の底面に接触しないように固定する固定部材(16)が設けられてもよい。
【0058】
上記構成によれば、収容部材の底部に設けられた固定部材によって、当該収容部材は少なくとも内鍋に直接接触することがない。これにより、加熱対象物には、内鍋の熱が直接伝わるのではなく、液体を介して伝わることになる。このため、加熱対象物は、迅速に所定温度で維持された液体によって加熱されるので、全体を均一に加熱されることになる。
【0059】
本発明の態様5に係る加熱調理器は、上記態様2~4の何れか1態様において、前記撹拌翼(14b)は、前記回転体(14a)に対して垂直になる角度から当該回転体(14a)の回転中心に向かって回動自在に設けられてもよい。
【0060】
上記構成によれば、撹拌装置を取り付けた蓋体を開放する際に、撹拌翼がどの位置で停止していても、当該撹拌翼は内鍋に当接するものの、回転体の回転中心側に回動することになるので、内鍋に引っ掛かることはない。
【0061】
本発明の態様6に係る加熱調理器は、上記態様5において、前記撹拌翼(14b)は、短手方向の断面形状が略直角三角形状であり、当該断面形状の斜辺が前記回転体(14a)の回転中心側に向くように形成されていてもよい。
【0062】
上記構成によれば、撹拌装置の回転体を回転させると、撹拌翼の斜辺が水を受けて、受けた水を内側に押し曲げることができる。これにより、撹拌翼の外側に応力が働くようになるので、撹拌翼は、回転体が回転している時には、回転体の内側に回動しない。
【0063】
本発明の態様7に係る加熱調理器は、上記態様1において、前記撹拌装置(水流発生装置50)は、前記内鍋(21)内に満たされた液体(水43)を吸い上げるポンプ部(インペラー52)と、前記ポンプ部(インペラー52)が汲み上げた液体(水43)を、前記内鍋(21)内に満たされた液体(水43)の液面に向かって斜め下方に吐出する排水管(53)と、を含んでいてもよい。
【0064】
上記構成によれば、低温調理時に、内鍋に加熱対象物と共に収容される液体(水)が水流によって撹拌されるので、迅速に内鍋内で加熱された液体の温度分布を均一にすることが可能となる。しかも、内鍋内の液体を水流によって撹拌するため、加熱対象物に撹拌部材が当たる恐れがない。
【0065】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0066】
1~3 加熱調理器
11 調理器本体部
12 蓋体
12a 蒸気排出口
13、14 撹拌ユニット(撹拌装置)
13a、14a 回転体
13b、14b 撹拌翼
15 籠(収容部材)
16 固定部材
21 内鍋
22 ヒータ(加熱部)
23 温度センサ
24 モータ
25 回転軸
26 プランジャ
31 外蓋
32 内蓋
41 袋
42 食材(加熱対象物)
43 水(液体)
50 水流発生装置(撹拌装置)
51 ケーシング
51a 給水口
51b 排水口
51c 接続穴
52 インペラー(ポンプ部)
53 排水管
53a 排出口
A 載置可能面積