(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】ラップフィルム巻回体、収納容器、ラップフィルム巻回体入り収納容器の製造方法、および、収納容器の輸送方法
(51)【国際特許分類】
B65D 85/672 20060101AFI20250407BHJP
B65D 5/72 20060101ALI20250407BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20250407BHJP
B65D 25/52 20060101ALN20250407BHJP
【FI】
B65D85/672
B65D5/72 A
B65D65/02 F
B65D25/52 E
(21)【出願番号】P 2021141315
(22)【出願日】2021-08-31
【審査請求日】2024-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001100
【氏名又は名称】株式会社クレハ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 敏正
(72)【発明者】
【氏名】関 孝幸
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-128228(JP,A)
【文献】特開2011-162231(JP,A)
【文献】特開2010-132348(JP,A)
【文献】特開2019-001502(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0076219(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0272294(US,A1)
【文献】特開2000-062848(JP,A)
【文献】特開2002-128180(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/672
B65D 5/72
B65D 65/02
B65D 25/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラップフィルムが巻回されたラップフィルム巻回体であって、
前記ラップフィルム巻回体の軸方向における相対する両端において、前記ラップフィルム巻回体の内側の層をなす前記ラップフィルムに対して次の外側の層をなす前記ラップフィルムが直に巻かれており、
未使用の前記ラップフィルム巻回体の
前記軸方向における相対する双方の端面のうちの一方の端面に
のみ、最外層を構成する前記ラップフィルムの最外層フィルム端のうちの少なくとも一部が、前記最外層よりも内側の層の中で、フィルム端が前記軸方向における最も中央側に位置する層の中央側内層フィルム端よりも外側に突出し、
前記最外層を構成する前記ラップフィルムにおいて、前記中央側内層フィルム端よりも外側に突出した部分が前記一方の端面の内側方向に折曲可能な状態、または、折曲状態とされた
ラップフィルム巻回体。
【請求項2】
前記最外層フィルム端は、前記軸方向において、前記中央側内層フィルム端に対して最も外側にまで突出している
請求項1に記載のラップフィルム巻回体。
【請求項3】
前記最外層フィルム端を含む、前記中央側内層フィルム端よりも外側に突出しているフィルム端の中で最も外側に突出しているフィルム端までの突出量をX(mm)、前記中央側内層フィルム端よりも外側に突出しているフィルム端の厚みを突出厚みY(mm)、としたときに、以下の関係式(1)および(2)を満たす
請求項1
または2に記載のラップフィルム巻回体。
(1)Y≦1.25X (2)X>0
【請求項4】
前記最外層フィルム端を含む、前記中央側内層フィルム端よりも外側に突出しているフィルム端は、前記中央側内層フィルム端から0mmより大きく突出し、かつ、芯材の端を超えない位置に位置する
請求項1ないし
3のうち何れか1項に記載のラップフィルム巻回体。
【請求項5】
前記ラップフィルムの主成分は、塩化ビニリデン系樹脂である
請求項1ないし
4のうち何れか1項に記載のラップフィルム巻回体。
【請求項6】
請求項1ないし
5のうち何れか1項に記載のラップフィルム巻回体と、前記ラップフィルム巻回体を収納する容器本体と
、を備える
収納容器。
【請求項7】
請求項1ないし
5のうち何れか1項に記載のラップフィルム巻回体入り収納容器の製造方法であって、
前記ラップフィルム巻回体を収容する容器本体は、
前記ラップフィルム巻回体の周方向における複数の側面のうちの1つの側面に前記ラップフィルム巻回体を出し入れ可能な開口を備えるとともに、前記軸方向に相対する側面を塞ぐ一対の側板を備え、
前記容器本体に回転可能に設けられる蓋体は、前記開口を開閉する上蓋板と、前記上蓋板の短辺に連接される一対の蓋側板とを備え、
前記上蓋板が前記開口を塞ぎ、かつ、前記容器本体の一方の側面を、一方の側板および一方の蓋側板が塞ぎ、他方の側面を、他方の側板および他方の蓋側板が開いた状態において、前記ラップフィルム巻回体を、前記最外層フィルム端が前記中央側内層フィルム端よりも外側に突出している端面を挿入端として、前記他方の側面の開口から前記容器本体内に挿入し、
次いで、前記他方の側面を、他方の側板および他方の蓋側板で塞ぐ
ラップフィルム巻回体入り収納容器の製造方法。
【請求項8】
請求項
6に記載の収納容器の輸送方法であって、
前記ラップフィルム巻回体における、前記最外層フィルム端が前記中央側内層フィルム端よりも外側に突出している側の端面を上側にして前記収納容器を輸送する
輸送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラップフィルムが巻回されたラップフィルム巻回体、収納容器、ラップフィルム巻回体入り収納容器の製造方法、および、収納容器の輸送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニリデン系樹脂などを主成分としたラップフィルムは、高密着力、良好なカット性などの性質を有する。ラップフィルムは、ラップフィルム巻回体を収納した収納容器から引き出され、収納容器に備えられた切断刃によって切断される。ラップフィルムは、10μm程度と極薄のため、切断の際に、使用者の意図しない方向に裂けてしまうことがある。以下、このような現象を「切断トラブル」という。
【0003】
切断トラブルは、最外層を構成するラップフィルムの最外層フィルム端に形成される傷が一因となる。切断トラブルは、この傷を起点としてラップフィルムが使用者の意図しない方向に裂けてしまうことによって生じる。ラップフィルム巻回体の最外層は、収納容器の内面に直接接触する層であり、そのため、この傷は、収納容器にラップフィルム巻回体を収納する際、最外層のラップフィルム端が収納容器の内面に擦れることで形成されることがある。また、ラップフィルム巻回体を収納した収納容器の輸送時における振動など、ラップフィルム巻回体の使用開始までの間に加わる振動によって、最外層のラップフィルム端が収納容器の内面と擦れることで形成されることがある。
【0004】
特許文献1では、ラップフィルム巻回体を、最外周に向うに連れて、ラップフィルムの幅方向の幅を狭くするように構成している。これにより、ラップフィルム巻回体を収納した収納容器の輸送時における振動など、ラップフィルム巻回体の使用開始までの間に加わる振動によるフィルム端と収納容器の内面との擦れによって、フィルム端に傷が形成されることを抑え、切断トラブルの発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のラップフィルム巻回体は、最外周に向うに連れて、ラップフィルムの幅方向の幅を狭くするように構成している。このため、ラップフィルムを巻き芯に巻回する際、ラップフィルムの幅方向の幅管理が必要となる。このため、製造方法が煩雑となり、製造効率の低下を招くおそれがある。
【0007】
また、特許文献1のラップフィルム巻回体は、収納容器にラップフィルム巻回体を収納する際、ラップフィルム端が収納容器の内面に擦れるため、フィルム端に傷が形成され易く、切断トラブルを充分に抑制することができないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためのラップフィルム巻回体は、ラップフィルムが巻回されたラップフィルム巻回体であって、前記ラップフィルム巻回体の軸方向における相対する両端において、前記ラップフィルム巻回体の内側の層をなす前記ラップフィルムに対して次の外側の層をなす前記ラップフィルムが直に巻かれており、未使用の前記ラップフィルム巻回体の前記軸方向における相対する双方の端面のうちの一方の端面にのみ、最外層を構成する前記ラップフィルムの最外層フィルム端のうちの少なくとも一部が、前記最外層よりも内側の層の中で、フィルム端が前記軸方向における最も中央側に位置する層の中央側内層フィルム端よりも外側に突出し、前記最外層を構成する前記ラップフィルムにおいて、前記中央側内層フィルム端よりも外側に突出した部分が前記一方の端面の内側方向に折曲可能な状態、または、折曲状態とされている。
【0009】
上記構成によれば、最外層のラップフィルムにおける中央側内層フィルム端よりも外側に突出した部分が、一方の端面の内側方向に折れ曲がることで、収納容器の内面との擦れなどによって、最外層フィルム端に傷が付くことを抑制できる。傷は、最外層フィルム端ではなく、それより若干軸方向中央寄りに形成されることになる。これにより、最外層フィルム端が傷つくことに起因する切断トラブルの発生を抑えることができる。最外層フィルム端は、芯材にラップフィルムを巻回する工程において、ラップフィルムに対して巻回方向にかかるテンションを緩める方法、軸方向における一方向にずらすなどの容易な方法で、中央側内層フィルム端よりも外側に突出させることができる。
【0010】
上記ラップフィルム巻回体において、前記最外層フィルム端は、前記軸方向において、前記中央側内層フィルム端に対して最も外側にまで突出している構成としてもよい。上記構成によれば、最外層フィルム端が中央側内層フィルム端に対して最も外側まで突出していることによって、収納容器の内面との擦れなどによって、最外層フィルム端に傷が付くことをより効果的に抑制できる。
【0012】
上記ラップフィルム巻回体において、前記最外層フィルム端を含む、前記中央側内層フィルム端よりも外側に突出しているフィルム端の中で最も外側に突出しているフィルム端までの突出量をX(mm)、前記中央側内層フィルム端よりも外側に突出しているフィルム端の厚みを突出厚みY(mm)、としたときに、以下の関係式(1)および(2)を満たす構成としてもよい。
(1)Y≦1.25X (2)X>0
上記構成によれば、最外層以外の層においても、中央側内層フィルム端よりも外側に突出した部分が、端面の内側方向に折れ曲がることができる。複数の層が端面の内側方向に折れ曲がるため、折れ曲がる部分は柔軟性を持ち、より衝撃を和らげることができる。このため、最外層フィルム端に傷が付くことをさらに抑制できる。また、折れ曲がる部分の弾性によって収納容器の内面と擦れる際の衝撃を和らげることができる。
【0013】
上記ラップフィルム巻回体において、前記最外層フィルム端を含む、前記中央側内層フィルム端よりも外側に突出しているフィルム端は、前記中央側内層フィルム端から0mmより大きく突出し、かつ、芯材の端を超えない位置に位置する構成としてもよい。
【0014】
上記構成によれば、中央側内層フィルム端よりも外側に突出している部分は、端面の内側方向に折曲可能となり、最外層フィルム端に傷を付けにくくできる。また、芯材の端を超えない位置に位置することで、当該部分が芯材の端と収納容器の内面とに挟まれ、傷つくことを抑制できる。
【0015】
上記ラップフィルム巻回体において、前記ラップフィルムの主成分は、塩化ビニリデン系樹脂としてもよい。上記構成によれば、塩化ビニリデン系樹脂を主成分としたラップフィルムについて、最外層フィルム端が傷つくことを抑制できる。
【0016】
上記課題を解決するための収納容器は、以上のようなラップフィルム巻回体と、前記ラップフィルム巻回体を収納する容器本体とを備える。上記構成によれば、輸送時における振動など、ラップフィルム巻回体の使用開始までの間に加わる振動によって、最外層フィルム端が包装容器の内面との擦れなどによって傷つくことを抑制できる。
【0017】
上記課題を解決するためのラップフィルム巻回体入り収納容器の製造方法は、以上のようなラップフィルム巻回体入り収納容器の製造方法であって、前記ラップフィルム巻回体を収容する容器本体は、前記ラップフィルム巻回体の周方向における複数の側面のうちの1つの側面に前記ラップフィルム巻回体を出し入れ可能な開口を備えるとともに、前記軸方向に相対する側面を塞ぐ一対の側板を備え、前記容器本体に回転可能に設けられる蓋体は、前記開口を開閉する上蓋板と、前記上蓋板の短辺に連接される一対の蓋側板とを備え、前記上蓋板が前記開口を塞ぎ、かつ、前記容器本体の一方の側面を、一方の側板および一方の蓋側板が塞ぎ、他方の側面を、他方の側板および他方の蓋側板が開いた状態において、前記ラップフィルム巻回体を、前記最外層フィルム端が前記中央側内層フィルム端よりも外側に突出している端面を挿入端として、前記他方の側面の開口から前記容器本体内に挿入し、次いで、前記他方の側面を、他方の側板および他方の蓋側板で塞ぐ。
【0018】
上記構成によれば、収納容器へラップフィルム巻回体を収納し、ラップフィルム巻回体入り収納容器を製造する工程において、最外層フィルム端が収納容器の内面との擦れなどによって、傷つくことを抑制できる。
【0019】
上記課題を解決するための収納容器の輸送方法は、以上のような収納容器の輸送方法であって、前記ラップフィルム巻回体における、前記最外層フィルム端が前記中央側内層フィルム端よりも外側に突出している側の端面を上側にして前記収納容器を輸送する。
【0020】
収納容器は、輸送箱に立てた状態で輸送される。収納容器内のラップフィルム巻回体は、輸送時の振動によって、上側に位置する最外層フィルム端の方が下側よりも、傷が多くなる傾向にある。これは、収納容器内において、ラップフィルム巻回体の上側の方が下側よりも揺れが大きくなるためである。上記構成によれば、収納容器は、ラップフィルム巻回体の最外層フィルム端が中央側内層フィルム端よりも外側に突出している端面を上側にして輸送される。したがって、輸送時に揺れが大きくなる上側の最外層フィルム端に、収納容器の内面との擦れなどによって傷が付くことを抑制できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、最外層フィルム端に傷が形成されることを抑えた製造容易なラップフィルム巻回体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】巻回体入り収納容器の一実施形態であって未開封の状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1の巻回体入り収納容器であって蓋体が開いた状態を示す斜視図である。
【
図3】容器本体を製造するため中間体の構造を示す平面図である。
【
図4】巻回体を収納容器に収納する状態を示す要部斜視図である。
【
図5】
図1に示す収納容器に用いられる巻回体の右側端面を模式的に示す要部正面図である。
【
図6】
図5に示す巻回体の右側端面の別例を模式的に示す要部正面図である。
【
図7】
図5に示す巻回体の右側端面の別例を模式的に示す要部正面図である。
【
図8】
図5に示す巻回体の右側端面において、最外層における内層フィルム端からの突出部分が端面の内側方向に折れ曲がった状態を示す要部正面図である。
【
図9】
図1に示す収納容器が輸送箱に収容された状態を模式的に示す斜視図である。
【
図10】最外層において、内層フィルム端からの突出部分に損傷痕が形成された状態を模式的に示す要部平面図である。
【
図11】
図1に示す収納容器に用いられる巻回体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明が適用されたラップフィルム巻回体、ラップフィルム巻回体入り収納容器、ラップフィルム巻回体入り収納容器の製造方法、および、収納容器の輸送方法について図面を参照して説明する。
【0024】
[巻回体入り収納容器]
図1および
図2に示すように、収納容器は、収納容器10と、ラップフィルム巻回体(以下、単に巻回体)50Rとを備えている。
【0025】
収納容器10は、一方向に延びる直方体状を有する。収納容器10は、例えば、コートボール紙などの1枚の厚紙からなる中間体を折り曲げて接着することによって製造される。巻回体50Rは、芯材となる紙製の筒体50Cを備えている。長尺物の一例であるラップフィルム50は、筒体50Cに巻き付けられている。
【0026】
[収納容器]
収納容器10は、容器本体20と蓋体30とを備えている。
容器本体20は、上面が開口した細長い箱形状を有する。容器本体20は、前板21、後板22、右側板23、左側板24、および、底板25を備えている。前板21、後板22、右側板23、および、左側板24は、底板25から立設し、1つの周壁を構成する。このうち、前板21、後板22、底板25、および、開口は、巻回体の周方向における側面に位置する。また、右側板23と左側板24は、左右方向に相対する側面に位置する。以下、右側板23と左側板24とは、本体側板とも言う。
【0027】
容器本体20および蓋体30の材質は、特に限定されず、例えば、プラスチック、金属、ダンボール、または複数の厚紙が積層された積層板として構成してもよいし、1枚の厚紙から構成してもよい。使い勝手がよい点から、コートボール紙などの板紙が特に好ましい。容器本体20の開口20T(
図2を参照)は、周壁の上辺によって区画されている。開口20Tからは、巻回体50Rが出し入れ可能である。
【0028】
巻回体50Rの軸方向Aは、収納容器10が延在する方向とほぼ平行である。ラップフィルム50は、塩化ビニリデン系樹脂を主成分としたラップフィルムであれば、特に最外層フィルム端の傷抑制の効果が高いが、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリメチルペンテンからなる群から選択されるいずれか1種類を原材料とするフィルム、もしくは、これらを組み合わせた多層フィルムであり、これらに限定されるものではない。本実施形態では、ポリ塩化ビニリデン樹脂を用いている。塩化ビニリデン系樹脂は、塩化ビニリデン単位を含むものであればよい。
【0029】
図1および
図2では、底板25に対する開口20Tの側を上側、開口20Tに対する底板25の側を下側として説明する。また、前板21から後板22に向けた方向を後方、後板22から前板21に向けた方向を前方として説明する。右側板23から左側板24に向けた方向、および、左側板24から右側板23に向けた方向を、左右方向として説明する。また、底板25から開口20Tに向けた方向を上方、開口20Tから底板25に向けた方向を下方、あるいは高さ方向として説明する。
【0030】
[容器本体20]
前板21、後板22、および、底板25は、左右方向に延びる矩形板状を有する。
前板21と後板22とは、前後方向に向かい合う。底板25の前辺は、前板21の下辺であり、底板25の後辺は、後板22の下辺である。また、前板21において高さ方向に延びる辺は前板短辺であり、後板22の高さ方向に延びる辺は後板短辺である。
【0031】
右側板23、および、左側板24は、矩形板状を有し、左右方向に向かい合う。右側板23の下辺は、前板21の下辺、後板22の下辺、および、底板25の右辺に繋がる。左側板24の下辺もまた、前板21の下辺、後板22の下辺、および、底板25の左辺に繋がる。
【0032】
前板21は、補助前板21A(
図3参照)と主前板21B(
図3参照)を備えている。
補助前板21Aは、容器本体20の内表面を構成する。主前板21Bは、前板21の外表面を構成する。補助前板21Aは、主前板21Bの上辺21Tで主前板21Bに連接する。主前板21Bの外表面は、ラップフィルム50を仮止めするための仮止め部21Sを備えている(
図2参照)。
【0033】
主前板21Bは、左右で一対の前板フラップ21Fを備えている。
前板フラップ21Fは、主前板21Bのなかの高さ方向の中央よりも主前板21Bの上辺寄りで、仮止め部21Sを左右方向で挟むように位置する。
【0034】
前板フラップ21Fは、主前板21Bの上辺21Tのなかの一部分(
図3参照)と、当該一部分に両端を有した曲線状の切断線21FCとによって囲まれる。切断線21FCは、主前板21Bの上辺21Tから下方に向けて凸となる波状を有する。前板フラップ21Fは、主前板21Bを切断線21FCに沿って切り込むことで形成され、主前板21Bの上辺21Tのなかの一部分を回動軸にして前方に回動する。前板フラップ21Fは、容器本体20の前方に回動して浮き上がるので、容器本体20の開口20Tから引き出されて切断されたラップフィルム50の切断端は、前板フラップ21Fよりも下方の主前板21Bから浮き上がる。
【0035】
仮止め部21Sは、左右方向に並ぶ複数の四角形状を有した仮止め要素を備えている。
仮止め部21Sの位置は、主前板21Bの外表面のなかで高さ方向の中央よりも上辺寄りであり、かつ、左右方向の中央を含む。仮止め部21Sは、主前板21Bに塗られたUVニスなどから形成される。仮止め部21Sは、容器本体20の開口20Tから引き出されて前板21の上辺から垂れ下がるラップフィルム50を前板21の外表面に仮止めする。
【0036】
補助前板21Aの上部は、前後方向に延びる規制片3R,4R(
図2参照)を備える。
規制片3R,4Rは、補助前板21Aの上辺の左右両端部に位置する。規制片3R,4Rは、補助前板21Aの上辺から罫線LR(
図3参照)で折り曲げられている。規制片3R,4Rは、筒体50Cの左右両端部に配置され、ラップフィルム50を容器本体20から引き出すときに筒体50Cと当たり接することにより、巻回体50Rが容器本体20から飛び出すことを抑える。
【0037】
右側板23は、3枚のフラップ13F,23F,53F(
図3参照)を備えている。
左側板24は、3枚のフラップ14F,24F,54F(
図3参照)を備えている。
各フラップ13F、14F、23F、24Fは、容器本体20の内表面を構成する。各フラップ53F,54Fは、容器本体20の外表面を構成する。各フラップ23F,24Fは、フラップ13Fの内側とフラップ14Fの内側とに位置する。右側板23と左側板24とは、本体側板の一例である。
【0038】
右側板23は、前後方向に延びる蓋係止片3T(
図2参照)を備えている。
左側板24は、前後方向に延びる蓋係止片4T(
図2参照)を備えている。
蓋係止片3Tは、右側板23を構成するフラップ53F(
図3参照)の上辺3Eに接続されている。蓋係止片3Tは、フラップ53Fの上辺3Eで容器本体20の外側(右側)に折り曲げられて、容器本体20の右側に突き出ている。蓋係止片3Tは、前後方向に延在している。
【0039】
蓋係止片4Tは、左側板24を構成するフラップ54F(
図3参照)の上辺4Eに接続されている。蓋係止片4Tは、フラップ54Fの上辺4Eで容器本体20の外側(左側)に折り曲げられて、容器本体20の左側に突き出ている。蓋係止片4Tは、前後方向に延在している。
【0040】
[蓋体30]
図1に戻り、蓋体30は、上蓋板31、前蓋板32、蓋体右側板33、および、蓋体左側板34を備えている。上蓋板31は、後板22の上辺に回転可能に連接されている。上蓋板31は、後板22の上辺を軸として、容器本体20に対して回転し、容器本体20の開口20Tを開閉する。以下、蓋体右側板33と蓋体左側板34とは、蓋体側板とも言う。
【0041】
前蓋板32と前板21とは、相互にほぼ同形の矩形板状を有する。前蓋板32の上辺は、上蓋板31の前辺である。前蓋板32は、蓋体30が開口20Tを塞いだ状態で、前板21の外表面全体を覆う。前蓋板32は、高さ方向の中間よりも下方に、半円状を有した複数の切り込み部32Cを備えている。
【0042】
切り込み部32Cの内面は、前板21の外表面と接着されている。前蓋板32における高さ方向のほぼ中央は、左右方向の全幅にわたるミシン目線32Mを備えている。ミシン目線32Mは、頂部を下方に向けた略V字状を有する。ミシン目線32Mの右端は、ミシン目線32Mに沿って前蓋板32を上下に分割するための開封端32Nである。
【0043】
開封端32Nが前方に引っ張られるとき、前蓋板32はミシン目線32Mで切断される。また、前板21と前蓋板32との接着は、切り込み部32Cで引き剥がされて、前蓋板32の左右方向の全幅が、ミシン目線32Mを境にして、下側と上側とに分割される。
【0044】
前蓋板32のなかでミシン目線32Mに区画された上側は、掩蓋板32Pである。前蓋板32のなかでミシン目線32Mに区画された下側は、切り取り片32Kであり、ラップフィルム50の使用の開始に際して、容器本体20から切り離される。切り取り片32Kが蓋体30から切り離されると、掩蓋板32Pの下端辺から、切断刃35(
図2参照)の刃先全体が露出する。そして、蓋体30が後板22の上辺で回転することによって、容器本体20の開口20Tが開けられる。
【0045】
掩蓋板32Pは、蓋体30が開口20Tを塞いだ状態で、上蓋板31の前辺から下方に向けて延びる板状を有し、前板21の外表面上部を覆う。掩蓋板32Pの高さ方向での幅は、左右方向の両端部を除き、左右方向の中央部で最も大きく、左右方向の中央部からそれぞれの端部に移動するにつれて、高さ方向の幅が短くなる。収納容器10の製造に際して、掩蓋板32Pは、上蓋板31に対して罫線L(
図3参照)で折り曲げられる。
【0046】
掩蓋板32Pの内面には、切断刃35が接合されている。切断刃35は、左右方向に並ぶ刃先を有した鋸刃状を有する。切断刃35は、蓋体30が開口20Tを塞いだ状態で、複数の刃先が掩蓋板32Pから下方に突出するように、掩蓋板32Pに接合されている。掩蓋板32Pに切断刃35を接合する方法は、例えば、掩蓋板32Pと切断刃35との間にシーラント材や接着層を介在させて、超音波接着によって行われる。また、切断刃35を構成する刃材樹脂層にシーラント層をラミネートした構成とすることもできる。
【0047】
切断刃35を構成する材料は、特に限定されず、例えば、樹脂、あるいは、金属である。切断刃35は、例えば、樹脂と添加剤とを含み、添加剤の種類や、その添加量によって、切断刃35の剛性や、掩蓋板32Pに対する切断刃35の接着性を調整することができる。
【0048】
切断刃35を構成する樹脂は、例えば、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PES(ポリエーテルサルフォン)樹脂である。切断刃35を構成する添加剤は、例えば、オレフィン系樹脂などの樹脂や、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、タルクなどの無機材料である。シーラント層を構成する樹脂は、例えば、官能基をポリオレフィンに導入して接着性を付与した変性ポリオレフィンなどが使用される。
【0049】
蓋体右側板33は、蓋右側板33F,接合片323(
図2参照)を備えている。
蓋体左側板34は、蓋左側板34F,接合片324(
図2参照)を備えている。
蓋右側板33Fは、上蓋板31と蓋右側板33Fとの交線である短辺で上蓋板31に連接されている。蓋左側板34Fは、上蓋板31と蓋左側板34Fとの交線である短辺で上蓋板31に連接されている。
【0050】
蓋体右側板33と蓋体左側板34とにおいて、各蓋側板33F,34Fは、蓋体30の外表面を構成し、各接合片323,324は、蓋体30の内表面を構成する。蓋体右側板33と蓋体左側板34とは、蓋体30が開口20Tを塞いだ状態で、右側板23の外表面上部を覆い、また、左側板24の外表面上部を覆う。
【0051】
接合片323は、上蓋板31と蓋右側板33Fとの交線である短辺と接合片323との間に隙間を空けて位置する。接合片324もまた、上蓋板31と蓋左側板34Fとの交線である短辺と接合片324との間に隙間を空けて位置する。これにより、接合片323,324は、上蓋板31との間に隙間を空けて位置し、蓋体右側板33、蓋体左側板34の内表面に、段部33S,34Sを形成する。上述した各蓋係止片3T,4Tは、蓋体30が開口20Tを塞ぐとき、段部33S,34Sに嵌まり込み、クリック音を発生させて、段部33S,34Sと係合する。各蓋係止片3T,4Tは、段部33S,34Sとの係合を通じ、閉塞状態で上蓋板31が浮き上がることを抑える。
【0052】
[巻回体入り収納容器の組立]
図3のような展開状態の箱体は、まず、補助前板21Aが、主前板21Bよりも容器本体20の内側に位置するように、主前板21Bと補助前板21Aとの境界である罫線で折り曲げられ、主前板21Bの内側に貼り付けられる。次いで、底板25と後板22との境界である罫線Lおよび上蓋板31と前蓋板32との境界である罫線Lが折り曲げられ、主前板21Bの上に前蓋板32が重なるように折り畳まれる。次いで、主前板21Bの下部と切り取り片32Kが使用時に剥離可能になるように接着される。
【0053】
次いで、主前板21Bと底板25の境界である罫線L、後板22と上蓋板31の境界である罫線Lが折り曲げられて四角の筒体が形成される。そして、左右何れか一方の本体側板(右側板23:23F、13F、53F、左側板24:24F、14F、54F)および蓋体側板(蓋体右側板33:323、33F、蓋体左側板34:324、34F)が、カッコ内に記載の順に折り畳まれて、一方の本体側板および蓋体側板を形成する。すなわち、収納容器10の一方の側面を塞ぐ。次いで、ラップフィルム巻回体50Rを開口している側面から挿入する。次いで、挿入した側の本体側板を形成するとともに、蓋体30における蓋体側板(蓋体右側板33:323、33F、蓋体左側板34:324、34F)を折り畳み、その後接着して蓋体側板を形成する。これにより、収納容器10の両側面が塞がれる。
【0054】
図4の例では、まず、左側板24で構成される本体左側板を形成するとともに、蓋体左側板34で構成される蓋体左側板を形成する。
具体的に、内側から順に、まず、後板22に対して罫線LT(
図3参照)でフラップ24Fが折り曲げられる。次いで、前板21に対して罫線LTでフラップ14Fが折り曲げられる。続いて、底板25に対して罫線LT(
図3参照)でフラップ54Fが折り曲げられる。続いて、フラップ24F,14Fと54Fとの間が、ホットメルトなどの糊剤で接着される。最後に、蓋係止片4Tが、フラップ54Fの上辺で容器本体20の外側に折り曲げられる。
【0055】
また、掩蓋板32Pに対して罫線LT(
図3参照)で接合片324が折り曲げられ、次いで、上蓋板31に対して罫線LT(
図3参照)で蓋左側板34Fが折り曲げられる。最後に、蓋左側板34Fと接合片324との間が、ホットメルトなどの糊剤で接着される。これにより、蓋体左側板34は、蓋体30が開口20Tを塞いだ状態で、左側板24の外表面上部を覆う。これにより、収納容器10は、左側面が閉塞された状態となる。
【0056】
次いで、巻回体50Rは、筒体50Cの一端である左端を挿入端として、開放された状態の右側面から収納容器10の内部に挿入される。通常、巻回体50Rにおいて、挿入端側の最外層のラップフィルム50のフィルム端は、収納容器10の内面と擦れながら挿入される。
【0057】
次いで、右側板23で構成される本体右側板を形成するとともに、蓋体右側板33で構成される蓋体右側板を形成する。
具体的に、内側から順に、後板22に対して罫線LT(
図3参照)でフラップ23Fが折り曲げられる。続いて、次いで、前板21に対して罫線LTでフラップ13Fが折り曲げられる。続いて、底板25に対して罫線LT(
図3参照)でフラップ53Fが折り曲げられる。続いて、フラップ23F,13Fと53Fとの間が、ホットメルトなどの糊剤で接着される。最後に、蓋係止片3Tが、フラップ53Fの上辺で容器本体20の外側に折り曲げられる。
【0058】
また、掩蓋板32Pに対して罫線LT(
図3参照)で接合片323が折り曲げられる。次いで、上蓋板31に対して罫線LT(
図3参照)で蓋右側板33Fが折り曲げられる。最後に、蓋右側板33Fと接合片323との間が、ホットメルトなどの糊剤で接着される。これにより、収納容器10は、右側面も閉塞された状態となる。
【0059】
[巻回体]
筒体50Cには、ラップフィルム50が巻き付けられている。筒体50Cの軸方向Aの長さは、ラップフィルム50の左右方向(幅方向)における長さよりも長く、筒体50Cの軸方向Aの両端は、巻回されたラップフィルム50のフィルム端より突出している。
【0060】
図5に示すように、未使用の巻回体50Rの軸方向Aにおける相対する双方の端面のうち右端面52において、最外層61を構成するラップフィルム50の最外層フィルム端61Eは、最外層61よりも内側の層62の中で、フィルム端が軸方向Aにおける最も中央側に位置する層63の中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出している。
【0061】
ここで、端面とは、巻回体50Rを構成するラップフィルムが筒体50Cの周方向に巻き付けられると、ラップフィルムの左右方向(幅方向)の末端が層を成す。このラップフィルム末端の層の集まりを端面という。また、フィルム端とは、巻回体50Rを構成するラップフィルムのうち、軸方向Aにおけるラップフィルムの末端をいう。また、最外層フィルム端61Eとは、巻回体50Rの最外層(最外周)となるラップフィルムの軸方向Aにおけるフィルム端をいう。中央側内層フィルム端63Eとは、最外層よりも内側の層の中で、フィルム端が軸方向Aにおける最も中央側に位置する層を構成するラップフィルムのフィルム端をいう。また、外側とは、軸方向Aにおいて筒体50Cの端部方向をいう。
【0062】
最外層61において、中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出した部分64が右端面52の内側方向に折曲可能な状態、または、折曲状態とされている。右端面52の内側方向とは、筒体50Cに近づく方向をいい、折曲可能な状態、または、折曲状態とは、中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出した部分64が、右端面52に被さることが可能な状態、または右端面52に被さっている状態をいう。なお、以下に説明する突出量Xが0mmより大きければ、折曲可能な状態、または、折曲状態に含まれる。
【0063】
一例として、中央側内層フィルム端63Eからの突出量Xは、0mmより大きく突出し、かつ、フィルム端が筒体50Cの端53を超えない位置に位置する。すなわち、中央側内層フィルム端63Eからの最外層フィルム端61Eの突出量Xは、右端面52から筒体50Cの端53との間に位置する長さになる。突出量Xは、中央側内層フィルム端63Eから最も外側に突出したフィルム端までの距離である。
図5の場合、突出量Xは、中央側内層フィルム端63Eから最外層フィルム端61Eまでの距離である。後述の
図6の場合、突出量Xは、中央側内層フィルム端63Eから最も外側に突出した3層目66のフィルム端66Eまでの距離である。
図7の場合も、突出量Xは、中央側内層フィルム端63Eから最外層フィルム端61Eまでの距離である。なお、いずれの場合も、最外層フィルム端61Eが0mmより大きく突出している必要がある。
【0064】
突出量Xは、中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出しているフィルム端の厚みである突出厚みにもよるが、好ましくは、0.5mm以上2.5mm以下、さらに好ましくは0.5mm以上2.0mm以下である。突出量Xが0.5mm以上2.5mm以下であると、最外層フィルム端が端面の内側方向に折れ曲がるため、最外層フィルム端61Eが収納容器の内面に接触しにくくなり、傷がつきにくくなる。また、0.5mm以上2.0mm以下であると、巻回体50Rの外観も向上するためさらに好ましい。さらに好ましくは、0.5mm以上1.5mm未満である。
【0065】
最外層61において、中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出した部分64が右端面52の内側方向に折曲可能な状態、または、折曲状態とされていることで、外側に突出した部分64が右端面52に被さる。外側に突出した部分64が右端面52に被さると右端面52は外側に突出した部分64で覆われるため、右端面52に傷がつくことを抑制することができる。また、最外層フィルム端61Eは、外側に突出した部分64が右端面52の内側方向に折曲がり、最外層フィルム端61Eが収納容器の内面に接触することを抑制することができるため、最外層フィルム端61Eに傷がつきにくくなる。
【0066】
なお、ラップフィルムは、その特性上伸縮性があるため、突出部分64が形成されると巻回体50Rの巻き取り時に自然と端面内側に向かって折れ曲がる状態となりやすい。
最外層フィルム端61Eを中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出させる方法には、ラップフィルムに対して巻回方向にかかるテンションを緩める方法、軸方向Aにおける一方向にずらすなどの方法がある。本実施形態では、軸方向Aにおける右側にずらす方法が採用されている。軸方向Aにおける一方向にずらす方法では、一方の端面が軸方向Aにおける外側に突出したフィルム端を有しており、もう一方の端面は逆に軸方向Aにおける中央側に位置するフィルム端を有する。中央側に位置するフィルム端で形成される角部は、なだらかなカーブを有する。もう一方の端面の角部がなだらかなカーブを有することで、容器内壁などに接触した場合に最も応力が集中しやすい端面角部の応力が分散するため、表層のフィルム端に傷がつきにくくなる。また、ラップフィルムに対して巻回方向にかかるテンションを緩める方法によれば、軸方向Aにおける右側および左側の双方の端面に中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出させた部分を形成することができる。双方の端面で最外層フィルム端61Eが中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出しているため、双方の最外層フィルム端61Eに傷がつきにくくなる。
【0067】
図5ないし
図7においては、巻回体50Rの右端を示している。
図5では、最外層フィルム端61Eは、軸方向Aにおいて、中央側内層フィルム端63Eに対して最も外側にまで突出している。言い換えれば、最外層フィルム端61Eは、最外層61よりも内側の層62のフィルム端よりも外側に突出している。最外層フィルム端61Eが、軸方向Aにおいて、中央側内層フィルム端63Eに対して最も外側にまで突出していると、最外層フィルム端61Eが傷つくことをより効果的に抑制することができる。また、右端面52側のフィルム端は、
図6および
図7のように構成されることもある。
【0068】
図6の例では、最外層フィルム端61Eが、フィルム端が軸方向Aにおける最も中央側に位置する層63(5層目以降の複数層)の中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出している。そして、2層目65のフィルム端65Eの方が最外層フィルム端61Eよりもさらに突出している。さらに、3層目66のフィルム端66Eの方が2層目65のフィルム端65Eよりもさらに突出している。すなわち、3層目66のフィルム端66Eが最も外側に突出している。4層目67のフィルム端67Eは、最外層フィルム端61Eと同じだけ突出し、かつ、フィルム端66Eほど突出していない。
図7の例では、最外層61よりも2層目65および3層目66の突出量が大きく、最外層フィルム端61Eよりもフィルム端65E,66Eの方が突出している。
図6の例では、5層目以降のフィルム端が軸方向Aにおける最も中央側に位置する層63であり、これに対して、最外層~4層目61,65,66,67までは庇のような形状を有している。なお、
図6では、最外層~4層目までが庇のような形状を有しているが、最外層から内側の層の複数層までの突出量が同じであってもよい。複数層において、中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出している部分を備えていることで、当該部分が折れ曲がる際の弾性で収納容器10の内面と擦れる際の衝撃を吸収できるため、傷の発生をより抑制することができる。
【0069】
図7の例では、最外層フィルム端61Eが最も外側にまで突出している。かつ、最外層フィルム端61Eよりも突出量が小さいながらも、2層目65のフィルム端65Eおよび3層目66のフィルム端66Eが軸方向Aにおける最も中央側に位置する層63(4層目から複数層)の中央側内層フィルム端63Eよりも突出している。ここで、突出量は、2層目65のフィルム端65Eの方が3層目66のフィルム端66Eよりも大きい。さらに、フィルム端が軸方向Aにおける最も中央側に位置する層63の下側の複数層である第1下層68のフィルム端68Eおよびその下層の第2下層69のフィルム端69Eも中央側内層フィルム端63Eより突出している。突出量は、第1下層68のフィルム端68Eよりも第2下層69のフィルム端69Eの方が大きい。
図7の例では、フィルム端が軸方向Aにおける最も中央側に位置する層63に対して、上下に、当該層63より突出する層が設けられ、層63の中央側内層フィルム端63Eの部分が谷部分に位置するように構成されている。
【0070】
図8に示すように、以上のような巻回体50Rは、最外層61における、最外層フィルム端61Eを含む中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出した部分64が、右端面52の内側方向である筒体50Cの方向に折れ曲がる。突出した部分64が折れ曲がった状態で収納容器10に巻回体50Rを挿入すると、最外層フィルム端61Eが収納容器10の内面に接触しにくくなり、最外層フィルム端61Eに傷がつくことを抑制することができる。また、突出部分64が右端面52に被さるため、フィルム端を含む内層フィルムに傷がつくことを抑制することができる。また、図示しないが、
図6および
図7に示すように、中央側内層フィルム端63Eよりも突出した各フィルム端65E,66E,67Eを含む突出部分も筒体50Cの方向に折れ曲がる。
【0071】
ただし、
図7において、中央側内層フィルム端63Eよりも内側の層であるフィルム端68E、69Eは、中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出していても折曲がらないため、フィルム端傷防止効果には寄与しない。
【0072】
[収納容器の輸送方法]
図9に示すように、巻回体50Rを収容した収納容器10は、段ボール箱など直方体形状を有した輸送箱70に立てた状態で輸送される。収納容器10は、輸送箱70内に互いに隣接する収納容器10同士が密着するように整列されて収納される。したがって、収納容器10は、輸送箱70内でがたつくことはほとんどない。しかしながら、各収納容器10内に収納されている巻回体50Rは、収納容器10と巻回体50Rとの間に多少の隙間が存在するため各収納容器10内でがたついてしまう。このため、収納容器10内の巻回体50Rは、輸送時の振動によって、最外層61のラップフィルム50が収納容器10の内面と繰り返し接触する。中央側内層フィルム端63Eから外側に突出した部分は、筒体50Cの方向に折れ曲がり、折曲部71となる。
【0073】
折曲部71は、中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出している部分に形成されている。すると、振動などによって、収納容器10の内面と最も接触する部分は、最外層フィルム端61Eではなく、最外層フィルム端61Eよりも若干軸方向Aの中央寄りの位置となり、ここに傷や擦れなどの損傷痕72が形成されることになる。
【0074】
図10は、未使用の収納容器10から巻回体50Rを取り出し、最外層61を捲った状態を模式的に示す平面図である。最外層61では、損傷痕72が最外層フィルム端61Eよりも若干軸方向Aの中央寄りの位置に形成される。
【0075】
ラップフィルム50は、収納容器10からラップフィルム50を摘み出す際、収納容器10が備えた切断刃35によって切断される。切断の際に、ラップフィルム50は、使用者の意図しない方向に切断されてしまう切断トラブルが生じることがある。切断トラブルの主たる原因は、フィルム端に形成された損傷痕である。この点、ラップフィルム50では、折曲部71を備えていることで、最外層フィルム端61Eよりも若干軸方向Aの中央寄りの位置に損傷痕72が形成され、かつ、最外層フィルム端61Eには、損傷痕72は形成されない。このため、切断トラブルの発生を抑えることができる。
【0076】
収納容器10内の巻回体50Rは、輸送時の振動によって、上側になる上端の方が下側になる下端よりも、最外層61に傷が多くなる傾向にある。これは、収納容器10内において、巻回体50Rの上側の方が下側よりも揺れが大きくなるためである。そこで、収納容器10は、折曲部71が形成された巻回体50Rの端部が上側となるように輸送箱70に収納され、輸送される。これにより、最外層フィルム端61Eに損傷痕72が形成されにくくできる。
【0077】
なお、中央側内層フィルム端63Eからの突出量Xは、0mmより大きく突出し、フィルム端61E,65E,66E,67Eが筒体50Cの端53を超えない位置に位置する長さであることが好ましい。すなわち、フィルム端61E,65E,66E,67Eの突出量Xは、これらフィルム端61E,65E,66E,67Eが巻回体50Rの端面から筒体50Cの端53との間に位置する長さであることが好ましい。
【0078】
フィルム端61E,65E,66E,67Eが中央側内層フィルム端63Eから少しでも突出していれば、中央側内層フィルム端63Eよりも突出した部分64には、折曲部71が形成される。この結果、損傷痕72は、最外層61において、最外層フィルム端61Eよりも若干軸方向Aの中央寄りの位置に形成される。一方で、フィルム端61E,65E,66E,67Eが筒体50Cの端53からはみ出すほどに突出していると、当該部分が筒体50Cの端53と収納容器10の内面とに挟まれ、損傷するおそれがある。
【0079】
また、
図11に示すように、中央側内層フィルム端63Eより突出するフィルム端61E,65E,66E,67Eは、筒体50Cの外周面に接する最内層75の最内層フィルム端75Eから最外層フィルム端61Eまでを全体厚みT1として、中央側内層フィルム端よりも外側に突出しているフィルム端の厚みを突出厚みYとしたときに、(1)Y≦1.25X および(2)X>0を満たすことが好ましい。ここで、Xの最大値は、中央側内層フィルム端63Eから筒体50Cの端53までの距離である。上記(1)および(2)の関係式を満たす範囲内であれば、XおよびYは適宜選択することができる。この程度の範囲にフィルム端61E,65E,66E,67Eが位置する程度であれば、フィルム端61E,65E,66E,67Eを含む層61,65,66,67は、折曲部71が形成される程度に筒体50Cの方向に折れ曲げ可能である。そして、折れ曲がる部分の弾性によって収納容器10の内面と擦れる際の衝撃を和らげることができる。したがって、最外層61における、中央側内層フィルム端63Eよりも突出した部分64には、折曲部71が形成されることになり、最外層フィルム端61Eに損傷痕72が形成されにくくなる。
【0080】
[実施例]
<実験1>
実験1では、巻回体50Rを収納容器10に収納する際の再現実験を行い、巻回体50Rの最外層61における、中央側内層フィルム端63Eより突出した部分64の損傷痕72の発生を検証した。実験1は、フィルム端に傷がつき易い状況を想定して行った試験である。
【0081】
図12に示すように、実験装置80は、オレフィン系樹脂マット81(商品名:コクヨ カッティングマット 品番マ-44N)と、マット81に載置される台座82とを備えている。そして、巻回体50Rを、マット81上であって、かつ、台座82を使って傾けて載置した。具体的には、30cm×50m巻きの巻回体50R(商品名「ニュークレラップ」:株式会社クレハ製)の中央を10mmの高さの台座82に載置した。この後、手動で、巻回体50Rを30mm/秒の速度で5秒移動し、最外層61における中央側内層フィルム端63Eより突出した部分64がマット81に擦れるように押す。この後、最外層61のフィルム端における傷発生状態を観察した。
【0082】
実験1は、150mmを30mm/秒の速度で5秒押すのは、製造時の巻回体50Rの挿入速度を想定している。巻回体50Rを押すときは、巻回体50Rの自重(約400g)がかかっている状態である。また、結果が〇の巻回体50Rの端面形状は、
図7に近い形状をしている。その結果を表1に示す。評価基準は、〇:最外層フィルム端に捲れまたは切れがない、×:最外層フィルム端に捲れ(切れの原因)または切れがある、とした。
【0083】
【表1】
ここで、突出量は、
図5に示すように、最外層フィルム端61Eの中央側内層フィルム端63Eからの突出量Xである。そして、プラスは、最外層フィルム端61Eが中央側内層フィルム端63Eに対して外側に突出している状態を示し、マイナスは、最外層フィルム端61Eが中央側内層フィルム端63Eに対して内側(軸方向Aの中央側)に位置している状態を示す。また、0は、軸方向Aに対し、最外層フィルム端61Eが中央側内層フィルム端63Eと同じ位置にあることを示す。
【0084】
突出量がマイナスや0の場合、最外層フィルム端61Eには、損傷痕72となる捲れが形成された(No.1,No.2,No.3)。
これに対して、少しでも突出量がプラスの場合、最外層フィルム端61Eには、捲れや擦れ痕などの損傷痕72が形成されない。すなわち、損傷痕72は、最外層フィルム端61Eには形成されず、最外層フィルム端61Eよりも若干軸方向Aの中央寄りの位置に形成される。
【0085】
また、No.1からNo.22までの巻回体50Rをコートボール紙で作製した収納容器10に収納し、収納容器10からラップフィルム50を引き出して、収納容器10に設けられている切断刃35で切断し、切断トラブルの発生状況を確認した。その結果、No.4からNo.22は、切断トラブルが発生しなかった。一方、No.1からNo.3は、フィルム端の捲れによる傷を起点とし、ラップフィルム50が意図しない方向に裂けてしまい、切断トラブルの発生がみられた。
【0086】
<実験2>
30cm×50m巻きの巻回体50R(商品名「ニュークレラップ」:株式会社クレハ製)において、実験1と同様に、最外層フィルム端61Eがマット81に擦れるように押す。この後、端面の傷発生状態を観察した。ここでの突出量は、2mmである。また、結果が〇の巻回体50Rの端面形状は、
図6に近い形状をしている。
【0087】
ここで、突出量が2mmの部分の突出厚みは、最外層フィルム端61Eから最内層フィルム端75Eの方向への厚みであり、最外層フィルム端61Eと、中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出しているフィルム端とを含んだ厚みである。(
図11参照)。その結果を表2に示す。評価基準は、実験1と同様である。
【0088】
【表2】
突出量が2mmの場合において、突出厚みが上記(1)および(2)の関係式を満たす範囲では、最外層フィルム端61Eには、捲れや擦れ痕などの損傷痕72が形成されず、損傷痕72は、最外層フィルム端61Eよりも若干軸方向Aの中央寄りの位置に形成される。
【0089】
突出厚みが0.05mm(No.31)では、損傷痕72が最外層フィルム端61Eには形成されず、最外層フィルム端61Eより若干軸方向A中央寄りに形成された。突出厚みが3.0mm(No.39)では、最外層フィルム端61Eに捲れが確認された。突出厚みが3.0mmで最外層フィルム端61Eに捲れが確認されるのは、中央側内層フィルム端63Eよりも突出した部分を備える層が多くなり厚くなることで、最外層61における、折曲部71の端面に対する折曲の程度が小さくなり、最外層フィルム端61Eが設置面に接触してしまうためと考えられる。
【0090】
また、突出量が1mmとした場合の結果を表3に示す。
【0091】
【表3】
突出量が1mmの場合において、突出厚みが1.25mmまでは、最外層フィルム端61Eには、捲れや擦れ痕などの損傷痕72が形成されないことが確認できる。すなわち、損傷痕72は、最外層フィルム端61Eよりも若干軸方向Aの中央寄りの位置に形成されることが確認できる。突出厚みが1,5mmで最外層フィルム端61Eに捲れが確認されるのは、中央側内層フィルム端63Eよりも突出した部分を備える層が多くなり厚くなることで、曲がりにくくなり、最外層61における、折曲部71の端面に対する折曲の程度が小さくなり、最外層フィルム端61Eが設置面に接触してしまうためと考えられる。そして、折曲の程度も、2mmの場合より1mmの場合の方が突出量が小さくなる分、折曲部71が曲がりにくくなる。このため、1mmの場合では、2mmの場合のように3.0mmからではなく、1.5mmから最外層フィルム端61Eに捲れが確認されるようになる。このため、突出量と突出厚さは、上記(1)および(2)の関係式を満たすように設定すればよい。
【0092】
No.31からNo.47までの巻回体50Rをコートボール紙で作製した収納容器10に収納し、収納容器10からラップフィルム50を引き出して、収納容器10に設けられている切断刃35で切断し、切断トラブルの発生状況を確認した。その結果、No.39およびNo.47以外では、切断トラブルが発生しなかった。一方、No.39およびNo.47は、フィルム端の捲れによる傷を起点とし、ラップフィルム50が意図しない方向に裂けてしまい、切断トラブルの発生がみられた。
【0093】
<実験3>
収納容器10は、輸送箱70に立てた状態で輸送され、この状態で振動が加わる。そこで、実験3では、輸送時における振動を再現する輸送実験を行い、巻回体50Rの上端と下端において、最外層フィルム端61Eに形成される損傷痕72を確認した。
【0094】
具体的に、30cm×50m巻きの巻回体50R(商品名「ニュークレラップ」:株式会社クレハ製)を収納容器10に収納した。収納容器10は、1枚のコートボール紙から作製した直方体状の容器とした。サンプルの巻回体50Rは、最外層フィルム端61Eと最内層フィルム端75Eの軸方向Aにおける位置が同じである巻回体50R(コントロール品)、突出量が1mmの巻回体50R、突出量が2mmの巻回体50Rである。突出量が1mmおよび2mmの巻回体50Rは、巻回体50Rの軸方向における双方の端面のうち一方でフィルム端が突出している。最外層フィルム端を含むフィルム端が突出している端面を有する側から収納容器10に挿入し巻回体入り収納容器を作製した。これらの巻回体入り収納容器30個を、フィルム端が突出している端面を有する方を上側にして、隙間ができないように段ボール箱(内寸:23cm×28cm×32cm)に収容し、巻回体の軸方向Aが輸送実験装置に対し垂直になるように配置して輸送実験装置(「輸送包装試験機BF-50FT」アイデックス社製)で振動を加えた。実験3では、振動方向の異なる動きを5分間×4パターン(合計20分で1000km走行と同等)で実施した。そして、上端(上側)の最外層フィルム端61Eの損傷痕72の有無を確認した。なお、損傷痕72は、フィルム端から内側に0.2mm以内に発生する傷とした。0.3mm以上軸方向Aの中央側にできた傷は対象外とした。
【0095】
その結果を
図13に示す。
図13において、「挿入側」は、巻回体50Rを収納容器10に挿入する際、最初に収納容器10に挿入される側を示す。挿入側は、輸送時上側に位置する。
【0096】
コントロール品の結果を見ると、巻回体50Rの最外層61は、輸送時の振動によって、挿入側に損傷痕72が形成されることが確認できる。
そして、突出量が1mmの巻回体50R、2mmの巻回体50Rは何れも、挿入側の最外層フィルム端61Eに損傷痕72は形成されず、または、極めて少なくなることが確認できる。
【0097】
<実施形態の効果>
以上のような収納容器10は、以下のように列挙する効果を得ることができる。
(1)最外層61の中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出した部分が、端面52の内側方向に折れ曲がることで、収納容器10の内面との擦れなどによって、最外層フィルム端61Eに損傷痕72が形成されることを抑制できる。損傷痕72は、最外層フィルム端61Eではなく、それより若干軸方向Aの中央寄りに形成されることになる。これにより、最外層フィルム端61Eが傷つくことに起因する切断トラブルの発生を抑えることができる。
【0098】
(2)最外層フィルム端61Eが中央側内層フィルム端63Eに対して最も外側まで突出していることによって、収納容器10の内面との擦れなどによって、最外層フィルム端61Eに損傷痕72が形成されることをより効果的に抑制できる。
【0099】
(3)外側に最も突出しているフィルム端までの突出量をX(mm)、最外層フィルム端61Eから最内層フィルム端75Eの方向を厚み方向とし、中央側内層フィルム端よりも外側に突出しているフィルム端の厚さをY(mm)としたときに、フィルム端61E,65E,66E,67Eは、(1)Y≦1.25X および(2)x>0の関係式を満たすように位置する。この程度の範囲にフィルム端61E,65E,66E,67Eが位置すれば、最外層フィルム端61Eを含む最外層61に折曲部71を形成できる。
【0100】
(4)中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出しているフィルム端61E,65E,66E,67Eは、中央側内層フィルム端63Eから0mmより大きく突出している。したがって、中央側内層フィルム端63Eより突出している部分は、端面に被さるように筒体50Cの方向に折曲可能であり、最外層61の中央側内層フィルム端63Eよりも突出した部分64に折曲部71が形成される。したがって、最外層フィルム端61Eに損傷痕72が形成されることを抑制できる。
【0101】
(5)また、中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出しているフィルム端61E,65E,66E,67Eは、筒体50Cの端53を超えない位置に位置する。これにより、フィルム端61E,65E,66E,67Eは、筒体50Cの端53と収納容器10の内面とに挟まり、損傷することを抑えることができる。
【0102】
(6)塩化ビニリデン系樹脂を主成分としたラップフィルム50について、最外層フィルム端61Eに損傷痕72が形成されることを抑制できる。
(7)使用開始までの間に加わる振動などによって、最外層フィルム端61Eに、収納容器10の内面との擦れなどによる損傷痕72が形成されることを抑制できる。
【0103】
(8)収納容器10へ巻回体50Rを収納し、巻回体入り収納容器を製造する工程において、最外層フィルム端61Eに、収納容器10の内面との擦れなどによって、損傷痕72が形成されることを抑制できる。
【0104】
(9)収納容器10は、輸送箱70に立てた状態で輸送される。収納容器10内の巻回体50Rは、輸送時の振動によって、最外層フィルム端61Eの上側の方が下側よりも、損傷痕72が形成され易い。この点、収納容器10は、最外層61の折曲部71を有する方を上側にして輸送される。したがって、上側に位置する最外層フィルム端61Eに、収納容器10の内面との擦れなどによって、損傷痕72が形成されることを抑制できる。
【0105】
なお、収納容器10は、さらに、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・中央側内層フィルム端63Eより突出する最外層フィルム端61Eは、右端面52だけでなく、左端面にも設けてもよい。左右の両端面に中央側内層フィルム端63Eより突出する最外層フィルム端61Eを設ける場合、ラップフィルム50に対して巻回方向にかかるテンションを緩める方法で筒体50Cにラップフィルム50を巻回することが好ましい。左右の両端面に中央側内層フィルム端63Eより突出する最外層フィルム端61Eを設けることで、巻回体50Rの左右両端において、損傷痕72の発生を抑制できる。
【0106】
巻回体50Rの左右両端に中央側内層フィルム端63Eよりも突出した最外層フィルム端61Eを形成することで、巻回体50Rの左端、右端を管理することなく、収納容器10に収納することができる。また、輸送箱70には、収納容器10を収納するに際して、上下を管理することなく収納することができる。さらに、輸送時において、巻回体50Rの上端および下端の何れにおいても、最外層フィルム端61Eに損傷痕72が形成されることを抑制できる。
【0107】
・輸送箱70には、収納容器10を立てて収納するのではなく、寝かせた状態で収納するようにしてもよい。
・中央側内層フィルム端63Eから突出する最外層フィルム端61Eを設けるにあたっては、ラップフィルム50に対して巻回方向にかかるテンションを緩める方法、軸方向における一方向にずらすなどの容易な方法以外の方法であってもよい。例えば、最外層61を構成する部分において、ラップフィルム50の軸方向Aの幅を広くするようなトリミングを行うようにしてもよい。
【0108】
・中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出しているフィルム端の径方向の厚さは、最外層フィルム端61Eに折曲部71が形成される厚さであれば特に限定されるものではない。
【0109】
・中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出しているフィルム端61E,65E,66E,67Eは、当該部分が端53と収納容器10の内面とに挟まりにくい構成であれば、筒体50Cの端53よりも長くしてもよい。
【0110】
・中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出している最外層フィルム端61Eは、周方向に少なくとも一部において突出していればよい。この場合、最外層フィルム端61Eが、好ましくは周方向のうち半周以上、より好ましくは全周に亘って外側に突出していることが好ましい。巻回体50Rを収納容器10に挿入する際、収納容器10の内面と突出部が触れるように挿入すればよい。また、一例として、中央側内層フィルム端63Eよりも外側に突出している最外層フィルム端61Eは、周方向に少なくとも一部において突出し、2層目または2層目以降の層では、全周に亘って内層フィルム端が中央側内層フィルム端63Eより突出しているなどの構成であってもよい。
【符号の説明】
【0111】
10…収納容器
20…容器本体
20T…開口
30…蓋体
35…切断刃
50…ラップフィルム
50C…筒体
50R…ラップフィルム巻回体
52…右端面
53…端
61…最外層
61E…最外層フィルム端
63E…中央側内層フィルム端
64…突出部分
65,66,67…層
65E,66E,67E…フィルム端
70…輸送箱
71…折曲部
72…損傷痕
75…最内層
75E…最内層フィルム端