(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】発破情報処理装置、発破情報処理方法、および学習済みモデル
(51)【国際特許分類】
E21D 9/00 20060101AFI20250407BHJP
F42D 1/00 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
E21D9/00 C
F42D1/00
(21)【出願番号】P 2021151359
(22)【出願日】2021-09-16
【審査請求日】2024-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】辻川 泰人
(72)【発明者】
【氏名】杉山 崇
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-208060(JP,A)
【文献】特開平11-081855(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0084071(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/00
F42D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切羽に複数配置された穿孔の各々に装填された爆薬を爆発させ一回の発破を行う発破工法に用いる発破情報処理装置であって、
前記穿孔のうち切羽の外周縁部に配置される第1の穿孔が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および前記第1の穿孔に装填された爆薬の量を各穿孔ごとに第1の入力データとして取得する第1の入力データ取得部と、
前記発破後の地山形状から設定され、前記第1の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される第1の領域の軸方向に垂直な断面の大きさを各穿孔ごとに第1の出力データとして取得する第1の出力データ取得部と、
前記第1の入力データおよび前記第1の出力データに基づいて機械学習を実行し、前記第1の穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および前記第1の穿孔に装填された爆薬の量と、前記第1の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す学習済みモデルを生成するモデル生成部と、
を備える発破情報処理装置。
【請求項2】
前記第1の出力データ取得部は、さらに前記発破後の地山形状から設定され、前記第1の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される第1の領域の軸方向の長さを各穿孔ごとに第1の出力データとして取得し、
前記穿孔のうち、前記第1の穿孔とは異なる第2の穿孔が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および前記第2の穿孔に装填された爆薬の量を各穿孔ごとに第2の入力データとして取得する第2の入力データ取得部と、
前記発破後の地山形状から設定され、前記第2の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成された第2の領域の軸方向の長さ、および前記第1の領域の前記軸方向に垂直な断面の大きさと前記軸方向の長さとの比に基づいて算出された前記第2の領域の前記軸方向に垂直な断面の大きさを各穿孔ごとに第2の出力データとして取得する第2の出力データ取得部と、をさらに備え、
前記モデル生成部は、さらに、前記第2の入力データおよび前記第2の出力データに基づいて機械学習を実行し、前記第2の穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および前記第2の穿孔に装填された爆薬の量と、前記第2の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す学習済みモデルを生成する請求項1に記載の発破情報処理装置。
【請求項3】
切羽に複数配置された穿孔の各々に装填された爆薬を爆発させ一回の発破を行う発破工法に用いる発破情報処理方法であって、
前記穿孔のうち切羽の外周縁部に配置される第1の穿孔が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および前記第1の穿孔に装填された爆薬の量を各穿孔ごとに第1の入力データとして取得することと、
前記発破後の地山形状から設定され、前記第1の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成された第1の領域の軸方向に垂直な断面の大きさを各穿孔ごとに第1の出力データとして取得することと、
前記第1の入力データおよび前記第1の出力データに基づいて機械学習を実行し、前記第1の穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および前記第1の穿孔に装填された爆薬の量と、前記第1の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す学習済みモデルを生成することと、
を含む発破情報処理方法。
【請求項4】
前記第1の出力データとして,さらに前記発破後の地山形状から設定され、前記第1の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される第1の領域の軸方向の長さを各穿孔ごとに取得することと、
前記穿孔のうち、前記第1の穿孔とは異なる第2の穿孔が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および前記第2の穿孔に装填された爆薬の量を各穿孔ごとに第2の入力データとして取得することと、
前記発破後の地山形状から設定され、前記第2の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成された第2の領域の軸方向の長さ、および前記第1の領域の前記軸方向に垂直な断面の大きさと前記軸方向の長さとの比に基づいて算出された前記第2の領域の前記軸方向に垂直な断面の大きさを各穿孔ごとに第2の出力データとして取得することと、をさらに含み、
さらに、前記第2の入力データおよび前記第2の出力データに基づいて機械学習を実行し、前記第2の穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および前記第2の穿孔に装填された爆薬の量と、前記第2の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す学習済みモデルを生成する請求項3に記載の発破情報処理方法。
【請求項5】
切羽に複数配置された穿孔の各々に装填された爆薬を爆発させ一回の発破を行う発破工法に用いる発破情報処理装置において、第1の入力データおよび第1の出力データに基づいて生成された学習済みモデルであって、
前記第1の入力データは、前記穿孔のうち切羽の外周縁部に配置される第1の穿孔が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および前記第1の穿孔に装填された爆薬の量を各穿孔ごとに取得されたものであって、
前記第1の出力データは、前記発破後の地山形状から設定され、前記第1の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成された第1の領域の軸方向に垂直な断面の大きさを各穿孔ごとに取得されたものであって、
前記第1の入力データおよび前記第1の出力データに基づいて機械学習を実行することによって生成された、前記第1の穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および前記第1の穿孔に装填された爆薬の量と、前記第1の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す学習済みモデル。
【請求項6】
さらに第2の入力データおよび第2の出力データに基づいて生成され、
前記第1の出力データは、さらに前記発破後の地山形状から設定され、前記第1の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される第1の領域の軸方向の長さを各穿孔ごとに取得されたものであって、
前記第2の入力データは、前記穿孔のうち、前記第1の穿孔とは異なる第2の穿孔が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および前記第2の穿孔に装填された爆薬の量を各穿孔ごとに取得されたものであって、
前記第2の出力データは、前記発破後の地山形状から設定され、前記第2の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成された第2の領域の軸方向の長さ、および前記第1の領域の前記軸方向に垂直な断面の大きさと前記軸方向の長さとの比に基づいて算出された前記第2の領域の前記軸方向に垂直な断面の大きさを各穿孔ごとに取得されたものであって、
さらに、前記第2の入力データおよび前記第2の出力データに基づいて機械学習を実行することによって生成された、前記第2の穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および前記第2の穿孔に装填された爆薬の量と、前記第2の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す請求項5に記載の学習済みモデル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発破情報処理装置、発破情報処理装置において実行される発破情報処理方法、および発破情報処理装置によって生成される学習済みモデルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、山岳トンネルの建設において中硬質岩の地山を掘削する場合、一般に、発破によって地盤の掘削が行われる。発破に際し、爆薬などが装填される穿孔の位置および穿孔に装填される爆薬の量などは、熟練技術者の経験に基づいて決定される。
【0003】
ところが、熟練技術者であっても発破後の地山形状を設計通りにすることは困難である。熟練工の技能や経験、判断に頼らず、三次元形状計測のよる発破後のズリの飛散・堆積状態及び切羽の掘削状況に基づいた発破状況を指標値として発破熟練工の発破の良否判断を機械学習する試みがなされている。この学習済みモデルを利用すれば、最適な発破パターンを設定できる可能性がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の技術では、ズリの飛散・堆積状態の計測及び入力が必要となることで複雑化する。また、学習には熟練工の判断も必要となる。さらに、1回の発破における発破状況の指標と発破の良否を示すデータが機械学習の教師データとして利用されているため、1回の発破で1組の教師データしか得られず、教師データの収集には多くの時間とコストがかかる。
【0006】
本発明は、発破パターンを設定するために利用される学習モデルを生成するための教師データを容易に収集し、収集された教師データを利用して機械学習を実行することが可能な発破情報処理装置、発破情報処理装置において実行される発破情報処理方法、および発破情報処理装置によって生成される学習済みモデルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に係る発明は、切羽に複数配置された穿孔の各々に装填された爆薬を爆発させ一回の発破を行う発破工法に用いる発破情報処理装置であって、前記穿孔のうち切羽の外周縁部に配置される第1の穿孔が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および前記第1の穿孔に装填された爆薬の量を各穿孔ごとに第1の入力データとして取得する第1の入力データ取得部と、前記発破後の断面から設定され、前記第1の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される第1の領域の軸方向に垂直な断面の大きさを各穿孔ごとに第1の出力データとして取得する第1の出力データ取得部と、前記第1の入力データおよび前記第1の出力データに基づいて機械学習を実行し、前記第1の穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および前記第1の穿孔に装填された爆薬の量と、前記第1の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す学習済みモデルを生成するモデル生成部と、を備える発破情報処理装置である。
【0008】
本願請求項2に係る発明は、前記第1の出力データ取得部は、さらに前記発破後の断面から設定され、前記第1の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される第1の領域の軸方向の長さを各穿孔ごとに第1の出力データとして取得し、前記穿孔のうち、前記第1の穿孔とは異なる第2の穿孔が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および前記第2の穿孔に装填された爆薬の量を各穿孔ごとに第2の入力データとして取得する第2の入力データ取得部と、前記発破後の断面から設定され、前記第2の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成された第2の領域の軸方向の長さ、および前記第1の領域の前記軸方向に垂直な断面の大きさと前記軸方向の長さとの比に基づいて算出された前記第2の領域の前記軸方向に垂直な断面の大きさを各穿孔ごとに第2の出力データとして取得する第2の出力データ取得部と、をさらに備え、前記モデル生成部は、さらに、前記第2の入力データおよび前記第2の出力データに基づいて機械学習を実行し、前記第2の穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および前記第2の穿孔に装填された爆薬の量と、前記第2の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す学習済みモデルを生成する請求項1に記載の発破情報処理装置である。
【0009】
本願請求項3に係る発明は、切羽に複数配置された穿孔の各々に装填された爆薬を爆発させ一回の発破を行う発破工法に用いる発破情報処理方法であって、前記穿孔のうち切羽の外周縁部に配置される第1の穿孔が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および前記第1の穿孔に装填された爆薬の量を各穿孔ごとに第1の入力データとして取得することと、前記発破後の断面から設定され、前記第1の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成された第1の領域の軸方向に垂直な断面の大きさを各穿孔ごとに第1の出力データとして取得することと、前記第1の入力データおよび前記第1の出力データに基づいて機械学習を実行し、前記第1の穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および前記第1の穿孔に装填された爆薬の量と、前記第1の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す学習済みモデルを生成することと、を含む発破情報処理方法である。
【0010】
本願請求項4に係る発明は、前記第1の出力データとして,さらに前記発破後の断面から設定され、前記第1の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される第1の領域の軸方向の長さを各穿孔ごとに取得することと、前記穿孔のうち、前記第1の穿孔とは異なる第2の穿孔が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および前記第2の穿孔に装填された爆薬の量を各穿孔ごとに第2の入力データとして取得することと、前記発破後の断面から設定され、前記第2の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成された第2の領域の軸方向の長さ、および前記第1の領域の前記軸方向に垂直な断面の大きさと前記軸方向の長さとの比に基づいて算出された前記第2の領域の前記軸方向に垂直な断面の大きさを各穿孔ごとに第2の出力データとして取得することと、をさらに含み、さらに、前記第2の入力データおよび前記第2の出力データに基づいて機械学習を実行し、前記第2の穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および前記第2の穿孔に装填された爆薬の量と、前記第2の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す学習済みモデルを生成する請求項3に記載の発破情報処理方法である。
【0011】
本願請求項5に係る発明は、切羽に複数配置された穿孔の各々に装填された爆薬を爆発させ一回の発破を行う発破工法に用いる発破情報処理装置において、第1の入力データおよび第1の出力データに基づいて生成された学習済みモデルであって、前記第1の入力データは、前記穿孔のうち切羽の外周縁部に配置される第1の穿孔が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および前記第1の穿孔に装填された爆薬の量を各穿孔ごとに取得されたものであって、前記第1の出力データは、前記発破後の断面から設定され、前記第1の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成された第1の領域の軸方向に垂直な断面の大きさを各穿孔ごとに取得されたものであって、前記第1の入力データおよび前記第1の出力データに基づいて機械学習を実行することによって生成された、前記第1の穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および前記第1の穿孔に装填された爆薬の量と、前記第1の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す学習済みモデルである。
【0012】
本願請求項6に係る発明は、さらに第2の入力データおよび第2の出力データに基づいて生成され、前記第1の出力データは、さらに前記発破後の断面から設定され、前記第1の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される第1の領域の軸方向の長さを各穿孔ごとに取得されたものであって、前記第2の入力データは、前記穿孔のうち、前記第1の穿孔とは異なる第2の穿孔が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および前記第2の穿孔に装填された爆薬の量を各穿孔ごとに取得されたものであって、前記第2の出力データは、前記発破後の断面から設定され、前記第2の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成された第2の領域の軸方向の長さ、および前記第1の領域の前記軸方向に垂直な断面の大きさと前記軸方向の長さとの比に基づいて算出された前記第2の領域の前記軸方向に垂直な断面の大きさを各穿孔ごとに取得されたものであって、さらに、前記第2の入力データおよび前記第2の出力データに基づいて機械学習を実行することによって生成された、前記第2の穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および前記第2の穿孔に装填された爆薬の量と、前記第2の穿孔に装填された前記爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す請求項5に記載の学習済みモデルである。
【発明の効果】
【0013】
本開示により、発破パターンを設定するために利用される学習モデルを生成するための教師データを容易に収集することができる。
また、従来の技術では、トンネルの形状や断面積が異なるごとに、学習などの対応を行う必要があったが、本開示では各穿孔ごとに学習ごとを行うため、様々な形状や断面積のトンネルに容易に対応ができ汎用性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】発破工法における作業の一例について説明する図である。
【
図2】トンネルを掘削するために用いられる装置の一例を示す図である。
【
図3】発破パターンが示す穿孔位置の一例を説明する図である。
【
図4】発破情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図5】発破情報処理装置の機能の一例について説明する図である。
【
図6】第1の領域の軸方向に垂直な断面の大きさの取得方法について説明する図である。
【
図7】ニューラルネットワークを用いた機械学習の一例を説明する図である。
【
図8】発破情報処理装置が実行する処理の流れの一例について説明する図である。
【
図9】発破情報処理装置の機能の一例について説明するブロック図である。
【
図10】第1の領域の軸方向の長さを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態で説明する特徴のすべての組み合わせが課題解決に必ずしも必要であるとは限らない。また、必要以上の詳細な説明を省略する場合がある。また、以下の実施形態の説明、および図面は、当業者が本発明を十分に理解するために提供されるものであり、特許請求の範囲を限定することを意図していない。
【0016】
<第1の実施形態>
山岳トンネルの建設において中硬質岩などの岩盤の地山を掘削する場合、一般に、発破工法が採用される。発破工法とは岩盤を穿孔して爆薬を内部で爆発させて岩盤を破砕するものである。
【0017】
図1は、発破工法における作業の一例について説明する図である。トンネルの切羽Rには、穿孔機1によって一掘進長Sを掘削するために必要な穿孔(不図示)が複数あけられる。穿孔機1は、あらかじめ定められた発破パターンに基づいて決定された位置に穿孔する。
【0018】
穿孔には爆薬が装填される。穿孔の各々に装填される爆薬の量もあらかじめ定められた発破パターンに基づいて決定される。
【0019】
発破パターンで規定された位置に穿孔された穿孔に爆薬が装填されると、発破が行われる。発破が行われると、図示しないホイールローダなどでずりの搬出作業が行われる。なお、必要に応じてずり搬出前や搬出後にコソクやアタリ取りが行われる。
【0020】
ずりの搬出作業後は、地山を補強するため壁面に図示しない吹付機などによってコンクリートが吹き付けられる。壁面に吹き付けられたコンクリートが固まると、ロックボルトの打ち込みが行われる。
【0021】
ロックボルトの打ち込みが行われると、再び一掘進長Sを掘削するため、切羽Rに穿孔が設けられ、穿孔の各々に爆薬が装填され、発破が行われる。これらの作業が繰り返し行われることにより、トンネルが掘削される。
【0022】
次に、トンネルを掘削するために用いられる装置について説明する。
【0023】
図2は、トンネルを掘削するため利用される装置の一例を示す図である。トンネルを掘削するために利用される装置には、例えば、上述した穿孔機1、さらに、発破パターン管理装置2、通信回線3、および形状測定器4が含まれる。
【0024】
発破パターン管理装置2は、一掘進長Sにおける発破パターンを管理する装置である。発破パターンは、切羽Rの穿孔位置と、穿孔に装填される爆薬の量との組み合わせの情報を含む。発破パターンは、例えば、熟練した作業者の経験に基づいてあらかじめ定められたものや公知のものの他、現場の特性に応じてアレンジされたものも含まれる。
【0025】
図3は、発破パターンが示す穿孔位置の一例を説明する図である。発破パターンは、切羽Rに穿孔される穿孔の位置を示す情報が含まる。穿孔の位置を示す情報は、例えば、所定の位置を原点とする座標値で表される。トンネルの断面形状が馬蹄形でその一部が楕円の一部分の形状に一致する場合、原点は、例えば、楕円の長軸と短軸との交点である。
【0026】
各穿孔については、切羽の外周縁部に配置される第1の穿孔H1と第1の穿孔H1とは異なる第2の穿孔H2とに分類することができる。
【0027】
第1の穿孔H1は、
図3において破線で囲まれて示されており、切羽Rにおけるトンネル断面形状の外周縁部に形成される穿孔である。トンネルの断面形状が馬蹄形で一部が楕円形状に一致する場合、第1の穿孔H1は、楕円の外周縁部に形成される穿孔である。つまり、第1の穿孔H1は切羽Rの最も外側に形成される穿孔であり、第1の穿孔H1の外側に他の穿孔は形成されていない。したがって、第1の穿孔H1に装填された爆薬は、切羽Rの最も外側の領域を爆破する。なお、本実施形態では、第1の穿孔H1はインバートに近い部分の領域を爆破するものを含んでいないが、トンネル断面形状の外周縁部に形成させる穿孔として含むようにしても良い。
【0028】
第2の穿孔H2は、第1の穿孔H1とは異なる穿孔である。すなわち、第2の穿孔H2は、楕円の外周縁部よりも内側に形成される穿孔である。したがって、切羽Sにおいて第2の穿孔の周囲には、第1の穿孔H1または他の第2の穿孔H2が形成される。第2の穿孔H2に装填された爆薬は、第1の穿孔H1に装填された爆薬よりも切羽Rの内側の領域を爆破する。なお、第1の穿孔H1がインバートに近い部分の領域を爆破するものを含むようにした場合には、その内側のものが第2の穿孔H2となる。
【0029】
発破パターンは、切羽Rに対する穿孔のそれぞれの角度、穿孔の直径、および穿孔の深さなどのデータを含んでいてもよい。
【0030】
発破パターン管理装置2は、複数の発破パターンを管理してもよい。すなわち、発破パターン管理装置2は、掘削するトンネルの大きさ、岩盤の硬さなどに応じて、複数の発破パターンを管理してもよい。
【0031】
発破パターン管理装置2は、例えば、PC(Personal Computer)によって構成される。発破パターン管理装置2は、発破パターンを示すデータを通信回線3を介して穿孔機1に送信する。
【0032】
通信回線3は、発破パターン管理装置2と、穿孔機1と、形状測定器4とを互いに接続する。通信回線3は、有線回線であっても無線回線であってもよい。通信回線3は、例えば、インターネット回線である。
【0033】
穿孔機1は、切羽Rに穿孔する装置である。穿孔機1は、例えば、ドリルを用いて穿孔する。穿孔機1は、発破パターン管理装置2から発破パターンを受信する。穿孔機1は、発破パターンが示す穿孔位置に基づいて穿孔する。穿孔機1は、例えば、フルオートコンピュータジャンボ、セミオートコンピュータジャンボである。
【0034】
穿孔機1は、例えば、プロジェクタを備え、プロジェクタが、発破パターンに基づいて、切羽Rに穿孔位置、各穿孔位置における爆薬の装填量などを示す画像を映し出す。穿孔機1は、切羽Rに映し出された穿孔位置にドリルで穿孔する。また、作業員は、切羽Rに映し出された爆薬の量を目安に爆薬を所定の穿孔に装填する。各穿孔に装填される爆薬の量は実測され、実測された爆薬量が穿孔位置と関連付けられて、例えば、発破パターン管理装置2に入力される。
【0035】
穿孔機1は複数のガイドシェルを備え、各ガイドシェルは穿孔方向にスライドする油圧ドリフタを有している。各油圧ドリフタが穿孔方向にスライドすることによって切羽Rの穿孔が行われる。穿孔機1は、穿孔を行う際に所定の物理量を検出する複数のセンサを備えている。
【0036】
各センサは、例えば、それぞれ、油圧ドリフタにかかる油圧、油圧ドリフタのスライド速度、油圧ドリフタのスライド距離を検出する。穿孔機1は、各センサが検知した物理量を用いて、各穿孔を穿孔する際に消費される穿孔エネルギーを取得する。
【0037】
形状測定器4は、発破によって堆積したずりが搬出された後、一掘進長Sに相当する部分の形状を測定する。形状測定器4は、例えば、3次元形状測定器である。3次元形状測定器は、例えば、3次元レーザスキャナである。形状測定器4は、発破前と発破後の形状に基づいて、発破によって破砕された領域を特定する。形状測定器4は、例えば、切羽に所定の座標系を設定し、発破前後の地山形状を、所定の座標系における座標値を用いて特定する。なお、形状測定器4は、ずり搬出前に形状を測定しても良く、また、コソクやアタリ取りの作業を控除して測定をする。すなわち、発破によって掘削された形状を測定するようにする。
【0038】
次に、発破情報処理装置5について説明する。発破情報処理装置5は、少なくとも切羽Rに穿孔が穿孔されるときに消費される穿孔エネルギー、および穿孔に装填された爆薬の量と、穿孔に装填された爆薬が爆発することよって形成される領域の大きさとの相関を学習する。発破情報処理装置5は、
図2に示す通信回線3に接続され、発破パターン管理装置2、穿孔機1および形状測定器4から各種データを取得する。発破情報処理装置5は、例えば、PCで構成される。発破情報処理装置5は、発破パターン管理装置2を実装するPCに実装されているが別に設けても良い。
【0039】
図4は、発破情報処理装置5のハードウェア構成の一例を示す図である。発破情報処理装置5は、CPU(Central Processing Unit)51と、バス52と、ROM(Read Only Memory)53と、RAM(Random Access Memory)54と、不揮発性メモリ55と、入出力インタフェース56とを備える。
【0040】
CPU51は、システムプログラムに従って発破情報処理装置5全体を制御するプロセッサである。CPU51は、バス52を介してROM53に格納されたシステムプログラムなどを読み出し、システムプログラムに基づいて各種処理を行う。
【0041】
バス52は、発破情報処理装置5内の各ハードウェアを互いに接続する通信路である。発破情報処理装置5内の各ハードウェアはバス52を介してデータをやり取りする。
【0042】
ROM53は、発破情報処理装置5全体を制御するためのシステムプログラムなどを記憶する記憶装置である。ROM53は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。
【0043】
RAM54は、各種データを一時的に格納する記憶装置である。RAM54は、CPU51が各種データを処理するための作業領域として機能する。
【0044】
不揮発性メモリ55は、発破情報処理装置5の電源が切られた状態でもデータを保持する記憶装置である。不揮発性メモリ55は、機械学習プログラム、学習済みモデルなど各種情報を記憶する。不揮発性メモリ55は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。不揮発性メモリ55は、例えば、SSD(Solid State Drive)で構成される。
【0045】
入出力インタフェース56は、外部機器(不図示)とバス52とを接続する通信路である。発破情報処理装置5は、入出力インタフェース56を介して、通信回線3に接続する。
【0046】
次に、発破情報処理装置5の機能について説明する。
【0047】
図5は、発破情報処理装置5の機能の一例について説明する図である。発破情報処理装置5は、少なくとも切羽Rに穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および穿孔に装填された爆薬の量と、穿孔に装填された爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を学習する。
【0048】
発破情報処理装置5は、受付部501と、第1の入力データ取得部502と、第1の出力データ取得部503と、モデル生成部504と、モデル記憶部505と、出力部506とを備える。
【0049】
受付部501、および出力部506は、入出力インタフェース56が、通信回線3を介して各種データをやり取りすることによって実現される。第1の入力データ取得部502、第1の出力データ取得部503、およびモデル生成部504は、CPU51が、ROM53に記憶されているシステムプログラムならびに不揮発性メモリ55に記憶されている機械学習プログラム、および各種データを用いて演算処理を実行することにより実現される。モデル記憶部505は、CPU51による演算処理の演算結果が、RAM54、または不揮発性メモリ55に記憶されることにより実現される。
【0050】
受付部501は、各種データの入力を受け付ける。受付部501は、例えば、発破パターン管理装置2から通信回線3を介して、発破パターンを示すデータ、および各穿孔に装填された爆薬の量の実測値を示す情報を受け付ける。また、受付部501は、穿孔機1から、各穿孔をあける際に消費される穿孔エネルギーを示すデータを受け付ける。また、受付部501は、形状測定器4から発破後の形状を示すデータを受け付ける。
【0051】
第1の入力データ取得部502は、受付部501が受け付けたデータから、切羽Rの外周縁部に形成される第1の穿孔H1が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および第1の穿孔H1に装填された爆薬の量を各穿孔ごとに第1の入力データとして取得する。第1の穿孔H1に装填された爆薬の量とは、第1の穿孔H1に実際に装填された爆薬の量である。つまり、第1の穿孔H1に装填された爆薬の量は、実測された値である。ただし、第1の穿孔H1に装填された爆薬の量は、実測された値ではなく、発破パターンで規定される量であってもよい。
【0052】
第1の入力データは、一の第1の穿孔H1が穿孔されるときに消費される穿孔エネルギーを示すデータと、一の第1の穿孔H1に装填された爆薬の量を示すデータとのデータセットである。第1の入力データには、複数の第1の穿孔H1のそれぞれに対応する複数のデータセットが含まれる。
【0053】
第1の出力データ取得部503は、第1の穿孔H1に装填された爆薬が爆発することによって形成された第1の領域の軸方向に垂直な断面の大きさを各穿孔ごとに第1の出力データとして取得する。ここで、軸方向とは、トンネルが延びる方向であり、切羽Rの面に垂直な方向である。
【0054】
図6は、第1の領域の軸方向に垂直な断面の大きさの取得方法について説明する図である。仮に、切羽Rに、穿孔が1つのみ形成され、この1つの穿孔に装填された爆薬が爆発した場合、爆発によって形成された領域の軸方向に垂直な断面の大きさは、実測することができる。
【0055】
一方、切羽Rには穿孔が複数穿孔され、それぞれの穿孔に装填された爆薬が一回の発破で爆発するので、切羽Rの発破後の破砕形状から、1つの穿孔に装填された爆薬によって破砕される領域を設定する必要がある。
【0056】
そこで、第1の出力データ取得部503は、各第1の穿孔H1の中心から発破後の地山の掘削線Y1までの距離を半径rとする各円の大きさを第1の領域A1の軸方向に垂直な断面の大きさとして取得する。半径rは、例えば、各第1の穿孔H1の中心からトンネル外形線(設計上あらかじめ定められた掘削ラインL)の法線方向に延長して発破後の地山の掘削線Y1に交わる点までの距離を設定する。また、各第1の穿孔H1の中心から発破後の地山の掘削線Y1上の点のうち最短距離のものまでを設定するようにしても良い。なお、各第1の領域A1の軸方向に垂直な断面の大きさを、設定した半径rでなく、直径で表しても良く、さらに当該半径rとする円の面積で表しても良い。また、円の半径rを求めるにあたって掘削ラインLの法線と掘削線Y1との交点と、掘削線Y1との最短距離との平均値を半径rとしても良い。さらに、第1の領域A1は円でなくても矩形や多角形などに設定しても良い。
【0057】
なお、発破後の地山の掘削線Y1が、設計上あらかじめ定められた掘削ラインLから外側に位置する場合には、余分に掘削された部分、すなわち余掘が発生している。他方、発破後の地山の掘削線Y1が、設計上あらかじめ定められた掘削ラインLから内側に位置する場合には、掘削が足りなかった部分、すなわちアタリが発生した部分となる。
図5の説明に戻る。
【0058】
モデル生成部504は、第1の入力データおよび第1の出力データ基づいて機械学習を実行し、少なくとも切羽Rに穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および穿孔に装填された爆薬の量と、穿孔に装填された爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す学習済みモデルを生成する。モデル生成部504は、例えば、ニューラルネットワークを用いた教師あり学習を実行する。
【0059】
図7は、ニューラルネットワークを用いた機械学習の一例を説明する図である。ニューラルネットワークNNは、入力層と、中間層と、出力層とを備えている。入力層、中間層、および出力層はそれぞれ、複数のニューロンNを備えている。
図7に示す例では、中間層は、単層構造となっているが、中間層は多層構造であってもよい。
【0060】
入力層のニューロンNには、第1の入力データが入力される。また、入力層のニューロンNから出力される出力値には、重みが乗算されて中間層のニューロンNに入力される。中間層のニューロンNには伝達関数が設定されており、中間層からは伝達関数を通した出力値が出力される。中間層から出力される出力値にはさらに重みが乗算されて出力層のニューロンNに入力される。出力層の各ニューロンNからは出力結果が出力される。
【0061】
出力層の各ニューロンNから出力された出力結果は、第1の出力データに近づくように、例えば、誤差逆伝播法により中間層の重みが調整される。すなわち、各ニューロンNに入力されるデータに乗算される各重みを最適解に近づけるように機械学習が行われる。
【0062】
モデル記憶部505は、モデル生成部504によって生成された学習済みモデルを記憶する。
【0063】
出力部506は、モデル記憶部505に記憶された学習済みモデルを出力する。出力部506は、例えば、通信回線3を介して発破パターン管理装置2に学習済みモデルを送信する。
【0064】
次に、発破情報処理装置5で実行される処理の流れについて説明する。
【0065】
図8は、発破情報処理装置5が実行する処理の流れの一例について説明する図である。まず、受付部501が各種データを受け付ける(ステップS1)。上述したように、各種データには、発破パターンを示すデータ、穿孔エネルギーを示すデータ、および発破後の地山の形状を示すデータが含まれる。
【0066】
次に、第1の入力データ取得部502が第1の入力データを取得する(ステップS2)。第1の入力データとは、少なくとも切羽Rの外周縁部に形成される第1の穿孔H1が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および第1の穿孔H1に装填された爆薬の量を示すデータである。
【0067】
次に、第1の出力データ取得部503が第1の出力データを取得する(ステップS3)。第1の出力データは、第1の穿孔H1に装填された爆薬が爆発することによって形成された第1の領域A1の軸方向に垂直な断面の大きさを示すデータである。
【0068】
次に、モデル生成部504が機械学習を実行することにより学習済みモデルを生成する(ステップS4)。学習済みモデルは、少なくとも切羽Rに第1の穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および第1の穿孔に装填された爆薬の量と、第1の穿孔に装填された爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す。
【0069】
次に、モデル記憶部505が学習済みモデルを記憶する(ステップS5)。
【0070】
最後に、出力部506がモデル記憶部505に記憶された学習済みモデルを出力し(ステップS6)、処理を終了する。
【0071】
以上説明したように、発破情報処理装置5が、少なくとも切羽Rの外周縁部に形成される第1の穿孔H1が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および第1の穿孔H1に装填された爆薬の量を各穿孔ごとに第1の入力データとして取得する第1の入力データ取得部502と、第1の穿孔H1に装填された爆薬が爆発することによって形成された第1の領域A1の軸方向に垂直な断面の大きさを各穿孔ごとに第1の出力データとして取得する第1の出力データ取得部503と、第1の入力データおよび第1の出力データ基づいて機械学習を実行し、第1の穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および第1の穿孔に装填された爆薬の量と、第1の穿孔に装填された爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す学習済みモデルを生成するモデル生成部504と、を備える。
【0072】
したがって、発破情報処理装置5は、切羽全体ではなく穿孔ごとに入力データを出力データが得られるため、発破パターンを設定するために利用される学習モデルを生成するための教師データを容易にかつ多数収集することが可能となり、収集された教師データを利用して機械学習を実行することができる。その結果、発破情報処理装置5は、少なくとも切羽Rに第1の穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および第1の穿孔に装填された爆薬の量と、第1の穿孔に装填された爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す学習済みモデルを容易に生成することができる。
【0073】
なお、出力部506によって出力された学習済みモデルは、例えば、発破パターン管理装置2において、発破パターンの最適設計に用いられる。例えば、切羽Rに穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および穿孔に装填された爆薬の量と、穿孔に装填された爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関に基づいて、穿孔位置および爆薬の装填量の最適化を図ることができる。その結果、掘削に係るコストの削減を図ることができる。さらに、発破後の切羽形状を設計形状に近づけることができる。
【0074】
上述した実施形態では、第1の入力データ取得部は、第1の穿孔が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および第1の穿孔に装填された爆薬の量を第1の入力データとして取得するがこれに限られない。第1の入力データ取得部は、さらに、第1の穿孔の深さ(穿孔長)を示す情報を第1の入力データとして取得してもよい。この場合、一掘進長を変更した場合にも対応することができ、モデル生成部は、切羽に穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、穿孔の深さ、および穿孔に装填された爆薬の量と、穿孔に装填された爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す学習済みモデルを生成する。
【0075】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態を
図9及び
図10と共に説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0076】
第2の実施形態では、発破情報処理装置5が、さらに、他の入力データおよび他の出力データを利用して機械学習を実行する。
【0077】
図9は、発破情報処理装置5の機能の一例について説明するブロック図である。
図9に示す発破情報処理装置5は、
図5に示す発破情報処理装置5が備える機能に加え、さらに、第2の入力データ取得部511、算出部512および第2の出力データ取得部513を備える。第2の入力データ取得部511、算出部512および第2の出力データ取得部513は、CPU51が、ROM53に記憶されているシステムプログラムならびに不揮発性メモリ55に記憶されている機械学習プログラム、および各種データを用いて演算処理を実行することにより実現される。
【0078】
受付部501は、例えば、発破パターン管理装置2から通信回線3を介して、発破パターンを示すデータ、および各穿孔に装填された爆薬の量の実測値を示す情報を受け付ける。また、受付部501は、穿孔機1から、各穿孔をあける際に消費される穿孔エネルギーを示すデータを受け付ける。また、受付部501は、形状測定器4から発破後の形状を示すデータを受け付ける。
【0079】
第1の入力データ取得部502は、受付部501が受け付けたデータから、少なくとも切羽Rの外周縁部に形成される第1の穿孔H1が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および第1の穿孔H1に装填された爆薬の量を各穿孔ごとに第1の入力データとして取得する。第1の穿孔H1に装填された爆薬の量とは、第1の穿孔H1に装填された爆薬の量の実測値である。
【0080】
第1の入力データは、少なくとも一の第1の穿孔H1が穿孔されるときに消費される穿孔エネルギーを示すデータと、一の第1の穿孔H1に装填された爆薬の量を示すデータとのデータセットである。第1の入力データには、複数の第1の穿孔H1のそれぞれに対応する複数のデータセットが含まれる。
【0081】
第2の入力データ取得部511は、切羽Rに形成される、第1の穿孔H1とは異なる第2の穿孔H2が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および第2の穿孔H2に装填された爆薬の量を各穿孔ごとに第2の入力データとして取得する。第2の穿孔H2に装填された爆薬の量とは、第2の穿孔H2に装填された爆薬の量の実測値である。
【0082】
第2の入力データは、少なくとも一の第2の穿孔H2が穿孔されるときに消費される穿孔エネルギーを示すデータと、一の第2の穿孔H2に装填された爆薬の量を示すデータとのデータセットである。第2の入力データには、複数の第2の穿孔H2のそれぞれに対応する複数のデータセットが含まれる。
【0083】
第1の出力データ取得部503は、第1の実施形態と同様に、第1の穿孔H1に装填された爆薬が爆発することによって形成された第1の領域A1の軸方向に垂直な断面の大きさを各穿孔ごとに第1の出力データとして取得する。
【0084】
算出部512は、受付部501が受け付けた発破後の地山の形状を示すデータに基づいて、第1の領域A1の軸方向に垂直な断面の大きさと第1の領域A1の軸方向の長さとの比を算出する。ここで、第1の領域A1の軸方向に垂直な断面の大きさは、第1の実施形態と同様に、第1の穿孔H1の中心から発破後の地山の掘削線Y1までの距離を半径rとする円の大きさである。また、第1の領域A1の軸方向の長さについては以下に詳述する。
【0085】
図10は、第1の領域A1の軸方向の長さを説明する図である。
図10の上の図は発破後の地山の平面図、
図10の下の図は発破後の地山の正面図である。破線は一掘進長における設計上あらかじめ定められた掘削ラインLを示している。斜線のハッチングが施された部分は、発破によって掘削された領域を示している。発破によって掘削された領域において、側面を形成する掘削線をY1、新たな切羽Rを形成した掘削線をY2で示している。斜線が交差するハッチングが施された部分は、複数の第1の領域A1のうちの一の第1の領域A1を示している。
【0086】
一の第1の領域A1の軸方向の長さは、発破前の切羽Rの第1の穿孔H1の開口部の位置P1と、第1の穿孔H1の中心軸と発破後の地山の掘削線Y2(切羽R)とが交わる位置P2との間の距離で表すことができる。この第1の領域A1の軸方向の長さのうち第1の穿孔H1内の先端P0まで爆薬が装薬されているので開口部の位置P1から先端P0までの領域については、先の第1の領域A1の軸方向に垂直な断面の大きさに係る発破による掘削された部分といえるので、第1の領域A1の軸方向の長さの発破による掘削は、開口部の位置P1から先端P0までの領域を控除して、第1の穿孔H1の先端P0から発破後の地山の掘削線Y2とまで行われたといえる。
この第1の穿孔H1の先端P0から発破後の地山の掘削線Y2まで距離を、第1の領域A1の軸方向の長さとして、第1の領域A1の軸方向に垂直な断面の大きさとの比の算出に用いる。なお、先端P0の位置は、例えば、穿孔の位置と穿孔長さから把握することができる。
【0087】
具体的な、第1の穿孔H1の先端P0から発破後の地山の掘削線Y2までの距離は、第1の穿孔H1の先端P0から第1の穿孔H1の中心軸と発破後の地山の掘削線Y2(切羽R)とが交わる位置P2までの距離としている。しかしながら、これに限られず、例えば、第1の穿孔H1の先端0から発破後の地山の掘削線Y2(切羽R)上の点のうち最短距離のものまでを第1の領域A1の軸方向の長さとして、算出に用いるようにしても良い。
【0088】
第1の穿孔H1が複数ある場合、算出部512は、各穿孔ごとに、第1の領域A1の軸方向に垂直な断面の大きさと第1の領域A1の軸方向の長さとの比を算出する。なお、算出部512は、各第1の穿孔H1について算出された比の平均値を算出してもよい。
【0089】
算出部512は、算出された比、及び第2の穿孔H2に装填された爆薬が爆発することによって形成された第2の領域の軸方向の長さと基づいて第2の領域の軸方向に垂直な断面の大きさを算出する。
【0090】
ここで、第2の領域A2の軸方向に垂直な断面の大きさの算出方法について説明する。第2の領域A2の大きさについては、トンネル外周縁部ではないので、軸方向の長さ(第1の穿孔H1と同様に、第2の穿孔H2の先端P0から第2の穿孔H2の中心軸と発破後の地山の掘削線Y2(切羽R)とが交わる位置P2までの距離)については測定から把握できるが、軸方向に垂直な断面の大きさについては、第1の領域A1の大きさとは異なり把握することが難しい。一方、穿孔に装填された爆薬の爆発力は穿孔の軸方向の各点において全方向にほぼ均等に及ぶと想定すると、爆薬が爆発することによって形成される領域の軸方向の長さ(穿孔の先端P0から穿孔の中心軸と発破後の地山の掘削線Y2とが交わる位置P2までの距離)と軸に垂直な方向の長さと相関性があると想定される。すなわち、軸方向の切羽Rが爆発によって大きく掘削されているのであれば、軸に垂直な方向の地山も大きく掘削されると考えられる。
【0091】
したがって、第2の領域A2の軸方向に垂直な断面の大きさは、第2の領域A2の軸方向の長さ(第2の穿孔H2の先端P0から発破後の地山の掘削線Y2までの距離)と、先に述べた第1の領域A1の軸方向に垂直な断面の大きさ(第1の穿孔H1の中心から発破後の地山の掘削線Y1までの距離)と軸方向の長さ(第1の穿孔H1の先端P0から発破後の地山の掘削線Y2まで距離)との比に基づいて算出することができる。つまり、算出部512によって取得される第2の領域A2の軸方向に垂直な断面の大きさは、実際の計測値ではなく、第2の領域A2の軸方向の長さと、第1の領域A1の軸方向に垂直な断面の大きさと軸方向の長さとの比に基づいて算出される推定値である。なお、第2の領域A2の軸方向に垂直な断面の大きさを算出するにあたって、採用する第1の領域A1の軸方向に垂直な断面の大きさと軸方向の長さ比は、例えば、当該第2の領域A2にもっとも近い第1の領域A1のものを用いても良いし、当該第2の領域A2から所定の範囲内に含まれる複数の第1の領域A1のものを平均したものを用いても良いし、全ての複数の第1の領域A1のものを平均したものを用いても良い。
【0092】
第2の出力データ取得部513は、第2の穿孔H2に装填された爆薬が爆発することによって形成された第2の領域の軸方向の長さ、および第1の領域A1の軸方向に垂直な断面の大きさと軸方向の長さとの比に基づいて算出された第2の領域A2の軸方向に垂直な断面の大きさを第2の出力データとして取得する。
【0093】
モデル生成部504は、第1の入力データおよび第1の出力データと、さらに、第2の入力データおよび第2の出力データに基づいて機械学習を実行し、切羽Rに穿孔される穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および穿孔に装填された爆薬の量と、穿孔に装填された爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す、すなわち、第1の穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および第1の穿孔に装填された爆薬の量と、第1の穿孔に装填された爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関に加えて、第2の穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および第2の穿孔に装填された爆薬の量と、第2の穿孔に装填された爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す学習済みモデルを生成する。
【0094】
以上説明したように、発破情報処理装置5は、切羽Rに形成される、第1の穿孔H1とは異なる第2の穿孔H2が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および第2の穿孔H2に装填された爆薬の量を第2の入力データとして取得する第2の入力データ取得部511と、第2の穿孔H2に装填された爆薬が爆発することによって形成された第2の領域の軸方向の長さ、および第1の領域A1の軸方向に垂直な断面の大きさと軸方向の長さとの比に基づいて算出された第2の領域A2の軸方向に垂直な断面の大きさを第2の出力データとして取得する第2の出力データ取得部513と、をさらに備え、モデル生成部504は、さらに、第2の入力データおよび第2の出力データに基づいて機械学習を実行し、切羽Rに穿孔を穿孔したときに消費される穿孔エネルギー、および穿孔に装填された爆薬の量と、穿孔に装填された爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す学習済みモデルを生成する。
【0095】
したがって、発破情報処理装置5は、発破パターンを設定するために利用される学習モデルを生成するための教師データをさらに容易に収集することができ、穿孔に装填された爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関に基づいて、穿孔位置および爆薬の装填量の最適化を図ることができる。
【0096】
〔その他の変形例〕
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0097】
本実施形態では、入力データ取得部は、穿孔が穿孔されたときに消費される穿孔エネルギー、および穿孔に装填された爆薬の量を入力データとして取得する。しかし、これに限られず、入力データ取得部は、さらに、穿孔の深さ(穿孔長さ)を示す情報を入力データとして取得してもよい。また、他のデータとして爆薬の種類や穿孔の径などの情報を入力データとして取得するようにしても良い。この場合、モデル生成部は、これらを含んだ情報と、穿孔に装填された爆薬が爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す学習済みモデルを生成する。また、さらに他の入力データとして、穿孔位置の岩質、亀裂密度、湧水圧などの情報を取得するようにし、これらを含んだ情報と、爆発することによって形成される領域の大きさとの相関を示す学習済みモデルを生成するようにしても良い。
【0098】
本実施形態では、全断面の発破工法であったが、これに限られず補助ベンチ付き全断面工法や上部半団円工法などにも適用しても良い。
【0099】
いずれの実施形態における各技術的事項を組み合わせて実施例としても良い。
【符号の説明】
【0100】
1 穿孔機
2 発破パターン管理装置
3 通信回線
4 形状測定器
5 発破情報処理装置
51 CPU
52 バス
53 ROM
54 RAM
55 不揮発性メモリ
56 入出力インタフェース
501 受付部
502 第1の入力データ取得部
503 第1の出力データ取得部
504 モデル生成部
505 モデル記憶部
506 出力部
511 第2の入力データ取得部
512 算出部
513 第2の出力データ取得部