IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 鹿島建設株式会社の特許一覧 ▶ ケミカルグラウト株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-地中変位計設置方法 図1
  • 特許-地中変位計設置方法 図2
  • 特許-地中変位計設置方法 図3
  • 特許-地中変位計設置方法 図4
  • 特許-地中変位計設置方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】地中変位計設置方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/00 20060101AFI20250407BHJP
【FI】
E21D9/00 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021170396
(22)【出願日】2021-10-18
(65)【公開番号】P2023060676
(43)【公開日】2023-04-28
【審査請求日】2024-02-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 学会名:令和3年度土木学会全国大会第76回年次学術講演会、掲載アドレス:https://confit.atlas.jp/guide/event/jsce2021/subject/VI-375/tables?cryptoId=(第VI部門 シールドトンネル(2) [VI-375]シールド工事における地中変位リアルタイム可視化技術の適用事例―水平ボーリング削孔の施工実績―)、掲載日:令和3年8月2日、学会名:令和3年度土木学会全国大会第76回年次学術講演会、掲載アドレス:https://confit.atlas.jp/guide/event/jsce2021/subject/VI-376/tables?cryptoId=(第VI部門 シールドトンネル(2) [VI-376]シールド工事における地中変位リアルタイム可視化技術の適用事例―光ファイバを用いた地中変位計測実績―)、掲載日:令和3年8月2日、学会名:令和3年度土木学会全国大会第76回年次学術講演会(Web会議システム「Zoom」を使用したライブ形式(リアルタイムでの発表)で実施。第VI部門 シールドトンネル(2) 2021年9月9日(木)11:10~12:30 VI-6(Room31)[VI-375]シールド工事における地中変位リアルタイム可視化技術の適用事例―水平ボーリング削孔の施工実績―)、開催日:令和3年9月9日 学会名:令和3年度土木学会全国大会第76回年次学術講演会(Web会議システム「Zoom」を使用したライブ形式(リアルタイムでの発表)で実施。第VI部門 シールドトンネル(2) 2021年9月9日(木)11:10~12:30 VI-6(Room31)[VI-376]シールド工事における地中変位リアルタイム可視化技術の適用事例―光ファイバを用いた地中変位計測実績―)、開催日:令和3年9月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390002233
【氏名又は名称】ケミカルグラウト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永谷 英基
(72)【発明者】
【氏名】吉迫 和生
(72)【発明者】
【氏名】釘本 幹生
(72)【発明者】
【氏名】小池 遼太郎
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-113572(JP,A)
【文献】特開2017-048586(JP,A)
【文献】特開2001-323452(JP,A)
【文献】特開平04-128492(JP,A)
【文献】実開昭60-076191(JP,U)
【文献】特開2021-130942(JP,A)
【文献】特開2018-123471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に形成された地中孔内に線状の地中変位計を設置する地中変位計設置方法であって、
先端に削孔ロッドが取り付けられた管状のロッド部材によって前記地中孔を削孔する削孔工程と、
前記ロッド部材内に管状部材を挿入し、前記ロッド部材を前記地中孔から抜き出すことにより、前記地中孔内に前記管状部材を配置する配置工程と、
前記地中孔内に配置された前記管状部材の外周面と前記地中孔の内壁面との間に充填材を注入する注入工程と、
前記管状部材内に前記地中変位計を挿入する挿入工程と、を含む、
地中変位計設置方法。
【請求項2】
前記ロッド部材内に前記管状部材が挿入される前に前記削孔ロッドの一部が撤去され、前記管状部材が挿通可能な開口部が前記削孔ロッドに形成される、
請求項1に記載の地中変位計設置方法。
【請求項3】
前記削孔ロッドに前記開口部が形成された後、前記開口部から前記ロッド部材内への流体の流入を阻止する遮断弁が閉鎖される、
請求項2に記載の地中変位計設置方法。
【請求項4】
前記注入工程では、前記充填材が内部を流通する充填ホースが前記管状部材内に挿入される、
請求項1から3の何れか1つに記載の地中変位計設置方法。
【請求項5】
前記管状部材は、前記管状部材の内側と外側とを連通する注入孔を有し、
前記充填材は、前記注入孔を通じて前記管状部材の外周面と前記地中孔の内壁面との間に注入される、
請求項4に記載の地中変位計設置方法。
【請求項6】
前記充填ホースは、前記充填材を吐出する吐出口と、前記吐出口から吐出された前記充填材が前記管状部材の内周面と前記充填ホースの外周面との間の空間へ流入することを阻止する封止部と、を有し、
前記吐出口から前記注入孔へと向かう前記充填材が流通する流通路の一部は、前記封止部によって画定される、
請求項5に記載の地中変位計設置方法。
【請求項7】
前記管状部材は、生分解性を有する材料によって形成される、
請求項1から6の何れか1つに記載の地中変位計設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤内に線状の地中変位計を設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルや地下空洞を構築する際に、線状の地中変位計を地盤内に設置し、地中変位計を用いてトンネルや地下空洞の周囲の地盤の状態を検出することがある。特許文献1及び特許文献2には、地盤の変位を測定可能な線状の地中変位計を地盤内に設置する方法が開示されている。
【0003】
特許文献1及び特許文献2に開示された方法では、地中変位計は、地中孔内に設置されたパイプ材の内部に挿入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-208991号公報
【文献】特開2020-41994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2に記載のように、地中孔内にパイプ材を単に設置した場合、地中孔の内壁面とパイプ材の外周面との間には隙間が形成される。このように地盤と地中変位計との間に隙間が形成されると、地盤の変位が地中変位計に伝達されにくくなり、結果として、地中変位計によって地盤の変位を正確に検出することが困難となる。
【0006】
本発明は、地中変位計による地盤の変位の検出精度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、地盤に形成された地中孔内に線状の地中変位計を設置する地中変位計設置方法であって、先端に削孔ロッドが取り付けられた管状のロッド部材によって前記地中孔を削孔する削孔工程と、前記ロッド部材内に前記管状部材を挿入し、前記ロッド部材を前記地中孔から抜き出すことにより、前記地中孔内に前記管状部材を配置する配置工程と、前記地中孔内に配置された管状部材の外周面と前記地中孔の内壁面との間に充填材を注入する注入工程と、前記管状部材内に前記地中変位計を挿入する挿入工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、地中変位計による地盤の変位の検出精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る地中変位計設置方法により孔内に設置された地中変位計を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る地中変位計設置方法を時系列に沿って示す図である。
図3図2に続く本発明の実施形態に係る地中変位計設置方法を時系列に沿って示す図である。
図4図3に続く本発明の実施形態に係る地中変位計設置方法を時系列に沿って示す図である。
図5図4のA部を拡大して示した拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る地中変位計設置方法について説明する。
【0012】
図1から図5を参照して、本発明の実施形態に係る地中変位計設置方法によって地盤内に形成された地中孔内に地中変位計を設置する工程及び地中変位計設置方法において用いられる部材について説明する。ここでは、地中変位計が、トンネル等の地下空間を地盤内に構築する工事に伴う地盤の変位を、地下空間の直上において計測する変位計測器として用いられる場合について説明する。
【0013】
例えば、シールド掘進機によって地盤内にトンネル等の地下空間を構築する際、シールド掘進機の直上の地盤の変位を把握することは、地盤の沈下や隆起を防止するために重要である。このため、図1に示すように、地盤1内にトンネルTを構築するシールド掘進機4の予定進路3の直上に、地盤の変位を検出可能な地中変位計10を設置することがある。
【0014】
地中変位計10が挿入される地中孔20は、シールド掘進機4が発進する立坑2から水平方向及び垂直方向において予定進路3と同じ方向に曲がる曲線部を有するように、シールド掘進機4の予定進路3に対して略平行に予め削孔される。地中孔20に挿入される地中変位計10としては、例えば、光ファイバケーブルが用いられる。
【0015】
光ファイバケーブルは、地中の歪みや地盤の緩みに応じて歪みを生じることから、光ファイバケーブルの歪みを計測することにより地中の歪みや地盤の緩みを計測することが可能である。
【0016】
具体的には、光ファイバケーブルには入射されたパルス光を僅かに後方に散乱させる性質があり、この性質を利用することにより、光ファイバケーブルにおける複数位置での歪みを計測することが可能である。散乱光の周波数は光ファイバケーブルの歪みに依存するため、パルス光を光ファイバケーブルに入射し、散乱光の周波数を計測することにより光ファイバケーブルの歪みを計測することができる。また、光ファイバケーブルにパルス光を入射してから光ファイバケーブル内で発生した散乱光が入射位置に戻るまでの時間を測定することにより、散乱光が発生した位置、すなわち光ファイバケーブルに歪みが生じた位置を計測することができる。
【0017】
したがって、シールド掘進機4の予定進路3の直上に削孔された地中孔20内に光ファイバケーブルを挿入しておくことにより、シールド掘進機4の掘進による地盤の変位を、光ファイバケーブルに生じた歪みを計測することによって把握することができる。
【0018】
なお、地中変位計10は、光ファイバケーブルに限定されず、地盤の変位を測定することができればどのような形式の変位計であってもよく、例えば、加速度センサや圧力センサ、歪みセンサ、傾斜センサが取り付けられた検出ユニットを長手方向において複数連結することにより線状に形成されたものであってもよい。
【0019】
ここで、光ファイバケーブル等の地中変位計10を地中孔20内に円滑に挿入するために、地中孔20内には、図1に示すように、パイプ材(管状部材)30が設置される。
【0020】
しかしながら、地中孔20内にパイプ材30を単に設置した場合、地中孔20の内壁面とパイプ材30の外周面との間には隙間が形成されてしまう。このように地盤1と地中変位計10との間に隙間が形成されると、地盤1の変位が地中変位計10に伝達されにくくなり、結果として、地中変位計10によって地盤1の変位を正確に検出することが困難となる。
【0021】
このような課題を解決するために、本実施形態に係る地中変位計設置方法では、図2図4に示される工程を経て、地中孔20の内壁面とパイプ材30の外周面との間に隙間がない状態とすることによって、地中変位計10による地盤1の変位の検出精度を向上させている。図2の(a)~(c)、図3の(a)~(c)及び図4の(a)~(c)は、本実施形態に係る地中変位計設置方法を時系列に沿って示した図であり、図5は、図4のA部を拡大して示した拡大図である。
【0022】
以下に、図1に示されるように地中孔20内にパイプ材30及び地中変位計10を設置する方法について、図2図5を参照して説明する。
【0023】
まず、図2(a)に示すように、立坑2内に設置された図示しない削孔機から延びる削孔ロッドアッシー(ロッド部材)22によって、立坑2から地盤1に向けて地中孔20を削孔する削孔工程が行われる。
【0024】
削孔ロッドアッシー22は、一端に削孔ビットが設けられた削孔ロッド23と、削孔機が生じる回転力や打撃力を削孔ロッド23へと伝達する複数の中継ロッド28と、により構成される。なお、削孔機としては、曲線施工を行うことが可能な削孔機が用いられる。
【0025】
削孔ロッド23は、中空の管状部材であり、地中孔20の削孔面20aに臨む開口端は、注水孔24aが貫通して形成された閉塞部材24によって閉塞されている。また、削孔ロッド23の内周面には、削孔ロッド23内に形成される通路を遮断可能なピンチ弁(遮断弁)25が設けられている。なお、削孔面20aに臨む削孔ロッド23の端面は、削孔方向に対して垂直に形成されていてもよいし、削孔方向に対して傾斜して形成されていてもよい。
【0026】
中継ロッド28は、削孔ロッド23と同等の内外径を有する中空の管状部材であり、その両端部は、削孔ロッド23や他の中継ロッド28と連結可能な構成となっている。中継ロッド28の筒部には、ピンチ弁25を閉じる際に供給される圧縮空気や窒素ガスが流通可能な図示しない流通孔が軸方向に沿って形成されている。
【0027】
削孔ロッド23に設けられたピンチ弁25は、中継ロッド28内に形成された流通孔を通じて圧縮空気が供給されると、弾性部材で形成された弁体に作用する圧力が上昇することによって弁体が径方向内側へと変位し、削孔ロッド23内の通路を閉鎖する一方、圧縮空気の供給が停止し中継ロッド28内に形成された流通孔が大気開放状態になると、復元力によって弁体が径方向外側へと変位し、削孔ロッド23内の通路を開放するように作動する。
【0028】
図2(a)に示すように、削孔ロッドアッシー22の先端に取り付けられた削孔ロッド23によって地中孔20を削孔する際には、削孔ロッドアッシー22の内部及び閉塞部材24の注水孔24aを通じて削孔面20aに加圧水が供給される。削孔によって生じた土砂は、加圧水と共に地中孔20の内壁面と削孔ロッドアッシー22の外周面22bとの間の隙間を通じて地中孔20外へと排出される。
【0029】
そして、削孔ロッド23による削孔と、中継ロッド28の継ぎ足しと、を繰り返し、図2(b)に示すように、地中孔20の長さが予め設定された長さとなった段階で削孔工程が完了する。
【0030】
なお、削孔ロッドアッシー22は、立坑2の地中壁5に設けられた図示しない止水箱(例えば、ソイルセメント造の地中壁5内に芯材として埋設されたH形鋼に溶接固定された止水箱)を介して地中孔20へと挿入されている。このため、削孔によって生じた土砂が立坑2内に漏れ出ることは防止される。
【0031】
削孔工程が完了すると、続いて、削孔ロッド23に設けられた閉塞部材24を撤去し、削孔ロッド23の先端を開放する削孔ロッド開放工程が行われる。
【0032】
この工程では、まず、図2(c)に示すように、削孔ロッドアッシー22を地中孔20から所定の長さだけ引き出して削孔ロッド23と削孔面20aとの間に空間を生じさせるとともに、閉塞部材24に形成された注水孔24aを封止可能な形状を有する開放治具27を削孔ロッドアッシー22内に挿入する。
【0033】
そして、注水孔24aが開放治具27によって封止された状態で削孔ロッドアッシー22内に削孔時よりも圧力が高い加圧水が供給され、削孔ロッドアッシー22内の圧力が高められる。
【0034】
このように高められた削孔ロッドアッシー22内の圧力によって、閉塞部材24は開放治具27とともに押圧され、図3(a)に示すように、削孔面20a側の空間に向かって削孔ロッド23の端部から抜け出る。
【0035】
これにより削孔ロッド23の先端が開放された状態、すなわち、パイプ材30が挿通可能な開口部が削孔ロッド23に設けられた状態となり、削孔ロッド開放工程が完了する。なお、削孔ロッドアッシー22内の圧力を高めるために、加圧水に代えて圧縮空気が供給されてもよい。
【0036】
ここで、削孔ロッド23の先端が開放された状態のままでは、削孔ロッドアッシー22内に地下水等が流れ込んでしまう。このため、図3(b)に示すように、削孔ロッド開放工程が完了した後にピンチ弁25を閉鎖する。
【0037】
続いて、削孔ロッド23内の通路がピンチ弁25によって閉鎖された状態において、削孔ロッドアッシー22内には、図3(b)に示すように、パイプ材(管状部材)30が挿入される。
【0038】
パイプ材30は、時間の経過とともに土中の微生物によって水と二酸化炭素に分解される生分解性プラスチックで形成された中空の管状部材であり、削孔ロッドアッシー22内に挿入される先端側は、閉塞端30aとなっている。なお、パイプ材30は、ポリ塩化ビニル等の樹脂で形成されていてもよい。
【0039】
上述のように、閉塞部材24が撤去されたことによって削孔ロッド23の先端が開放された状態となっているため、図3(c)に示すように、削孔ロッド23の先端を超えてパイプ材30を地盤1中に削孔ロッドアッシー22内に挿入することが可能である。このようにパイプ材30を挿入する際、ピンチ弁25は閉鎖状態から開放状態へと切り換えられる。
【0040】
続いて、図4(a)に示すように、地中孔20内から削孔ロッドアッシー22を抜き出すことにより、削孔ロッドアッシー22内に挿入されたパイプ材30を地中孔20内に残す工程、すなわち、削孔ロッドアッシー22内を通してパイプ材30を地中孔20内に配置する配置工程が行われる。
【0041】
なお、図3(c)及び図4(a)に示される状態では、削孔ロッドアッシー22の内周面22aとパイプ材30の外周面30cとの間の隙間を通じて、地下水等が立坑2内に流出するおそれがある。このため、ピンチ弁25が閉鎖状態から開放状態へと切り換えられる前に、削孔ロッドアッシー22の内周面22aとパイプ材30の外周面30cとの間には加圧水が供給される。また、立坑2の地中壁5に設けた止水箱により立坑2内へ流出する地下水を止水する。
【0042】
このように削孔ロッドアッシー22が地中孔20内から引き抜かれると、地中孔20内に残されたパイプ材30の外周面と地中孔20の内壁面との間には隙間が生じる。次の工程では、この隙間にセメントベントナイト等のグラウト(充填材)50を注入する注入工程が行われる。
【0043】
注入工程では、図4(b)に示すように、まず、グラウト(充填材)50が内部を流れる充填ホース40がパイプ材30内に挿入される。
【0044】
充填ホース40は、可撓性を有するホースであり、パイプ材30内に挿入される先端側は、閉塞端40aとなっている。また、充填ホース40の先端側には、図4(b)及び図5に示すように、径方向に貫通して形成された吐出口41が周方向に沿って複数設けられているとともに、軸方向において吐出口41を挟んで一対のパッカー部(封止部)42が設けられている。
【0045】
パッカー部42は、充填ホース40に沿って設けられた図示しないエアホースを通じて圧縮空気が供給されることによって径方向外側へと環状に膨らむ構造となっている。
【0046】
上記構成の充填ホース40がパイプ材30内に挿入され、充填ホース40の閉塞端40aがパイプ材30の閉塞端30aに当接または近接した状態になると、一対のパッカー部42に圧縮空気が供給される。
【0047】
一対のパッカー部42が径方向外側へと膨らむことによって、パイプ材30に対して充填ホース40が固定される。
【0048】
パイプ材30には、図4(b)及び図5に示すように、充填ホース40に設けられた吐出口41に対向する位置に、パイプ材30の内側と外側とを連通する注入孔31が形成されている。
【0049】
このため、充填ホース40の内部を流れ、吐出口41から吐出されたグラウト50は、図4(b)及び図5に矢印で示されるように、一対のパッカー部42の間を通過し、注入孔31を通じてパイプ材30の外周面30cと地中孔20の内壁面との間に注入されることになる。
【0050】
このように一対のパッカー部42は、吐出口41から注入孔31へと向かうグラウト50が流通する流通路の一部を画定している。換言すれば、一対のパッカー部42は、吐出口41から吐出されたグラウト50が、パイプ材30の内周面30bと充填ホース40の外周面40cとの間の隙間へ流入してしまうことを阻止する封止部として機能している。
【0051】
なお、パイプ材30に形成された注入孔31が常時開放されていると、パイプ材30を地中孔20内に配置する際や地中孔20内にパイプ材30が配置された後に、注入孔31を通じてパイプ材30内に地下水等が流入し、パイプ材30内に充填ホース40を挿入することができなくなってしまう。このため、注入孔31には、図5に示すように、パイプ材30の内側から外側へと向かう流れのみを許容する逆止弁32が設けられている。
【0052】
逆止弁32は、注入孔31を封止可能な封止部32aが一端側に設けられ、パイプ材30の外周面30cに固定される固定部32bが他端側に設けられた板状部材であり、パイプ材30の外側から内側へと向かう流れを遮断する一方、パイプ材30の内側から外側へと向かう流れを許容するようにパイプ材30に取り付けられている。
【0053】
このように機能する逆止弁32が設けられることにより、注入孔31は、充填ホース40の吐出口41からグラウト50が吐出されている間のみ開放されることになる。なお、逆止弁32は、上記形式のものに限定されず、注入孔31において一方向のみの流れを許容することが可能であればどのような形式のものであってもよい。
【0054】
パイプ材30の注入孔31を通じてパイプ材30の外周面30cと地中孔20の内壁面との間に注入されたグラウト50は、パイプ材30と地中孔20との間の隙間を地中孔20の先端側から徐々に埋めるように充填され、やがて立坑2側の地中孔20の開口端へと至る。立坑2側にグラウト50が至ったことが確認されると、充填ホース40を通じたグラウト50の圧送が停止される。
【0055】
そして、充填ホース40は、パッカー部42への圧縮空気の供給が停止された後、パイプ材30内から引き抜かれる。このようにパイプ材30内から充填ホース40が引き抜かれ、パイプ材30内が空洞となった状態で注入工程が完了する。
【0056】
注入工程が完了すると、続いて、パイプ材30内に線状の地中変位計10を挿入する挿入工程が行われる。
【0057】
注入工程が完了した段階でパイプ材30内は空洞となっていることから、図4(c)に示すように、線状の地中変位計10をパイプ材30内へと容易に挿入することが可能である。特にパイプ材30の内部は比較的滑かになっていることから、地中孔20が曲がりくねっている場合であっても、地中変位計10を容易に挿入することができる。
【0058】
このように上記各工程を経て、地中孔20の内壁面とパイプ材30の外周面との間の隙間がグラウト50によって埋められた状態、すなわち、地中孔20の内壁面とパイプ材30の外周面との間に隙間がない状態になるとともに、地中孔20内に配置されたパイプ材30内に地中変位計10が設置される。なお、パイプ材30内に光ファイバケーブル等の地中変位計10を挿入した後、例えば、パイプ材30内に強度の低い充填材(グラウト材)を充填して、地中変位計10をパイプ材30内に固定してもよい。
【0059】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0060】
本実施形態に係る地中変位計設置方法によれば、線状の地中変位計10が挿入されるパイプ材30は、グラウト50を介して地中孔20内に配置される。このように地中孔20の内壁面とパイプ材30の外周面30cとの間にグラウト50を充填することによって、地盤1の変位は、グラウト50及びパイプ材30を介して地中変位計10へと伝達されやすくなる。この結果、地中変位計10によって地盤1の変位を精度よく検出することが可能となる。
【0061】
また、本実施形態に係る地中変位計設置方法によれば、地中孔20内への地中変位計10の設置は、パイプ材30内に地中変位計10を挿入するだけで容易に行うことができる。また、地中変位計10がパイプ材30内に充填材等を介して固定されていない場合には、地盤1の変位の検出が終了した後、パイプ材30内から地中変位計10を取り出すことによって、別の場所で再利用することが可能である。
【0062】
また、本実施形態に係る地中変位計設置方法によれば、パイプ材30は、削孔ロッドアッシー22内を通して地中孔20内に配置される。このように掘削面が露出した地中孔20内にパイプ材30を直接挿入するのではなく、内部が比較的滑かに形成された削孔ロッドアッシー22を通してパイプ材30を地中孔20内に配置することにより、設置時にパイプ材30が地盤1に接触することで破損してしまうことを防止することができる。また、比較的長い距離であってもパイプ材30を容易に配置することができる。特に地中孔20に曲線部が多い場合であってもパイプ材30を容易に配置することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る地中変位計設置方法によれば、グラウト50は、地中変位計10が挿入されるパイプ材30に形成された注入孔31を通じてパイプ材30の内側から地中孔20とパイプ材30との間の隙間へと注入される。つまり、地中孔20とパイプ材30との間の隙間にグラウト50を注入するために、地中孔20とパイプ材30との間にグラウト注入用のホースを別途這わせたりする必要がない。したがって、グラウト50を注入するための構成が簡素化されるとともに、グラウト50を注入する作業が容易となる。
【0064】
また、本実施形態に係る地中変位計設置方法によれば、パイプ材30は、生分解性を有する材料によって形成される。このため、地盤1の変位の検出が終了し、地中変位計10がパイプ材30から引き抜かれ、地盤1内にパイプ材30が残された場合であっても、パイプ材30は、時間の経過とともに土中の微生物によって水と二酸化炭素に分解されることから、パイプ材30を除去する作業が不要となる。なお、地中変位計10がパイプ材30から引き抜かれた後、パイプ材30内にはグラウトが注入される。
【0065】
なお、次のような変形例も本発明の範囲内である。
【0066】
上記実施形態では、吐出口41は、充填ホース40の外周面40cにおいて開口するように形成されている。これに代えて、吐出口41は、充填ホース40の閉塞端40aやその周辺に設けられていてもよい。この場合、吐出口41から吐出されたグラウト50が、パイプ材30の内周面30bと充填ホース40の外周面40cとの間の隙間へ流入してしまうことを阻止するために、一つのパッカー部が充填ホース40の外周面40cに設けられる。なお、この場合、パイプ材30の注入孔31は、閉塞端30aに設けられていてもよい。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0068】
1・・・地盤
10・・・地中変位計
20・・・地中孔
22・・・削孔ロッドアッシー(ロッド部材)
23・・・削孔ロッド
24・・・閉塞部材
25・・・ピンチ弁(遮断弁)
28・・・中継ロッド
30・・・パイプ材(管状部材)
31・・・注入孔
32・・・逆止弁
40・・・充填ホース
41・・・吐出口
42・・・パッカー部(封止部)
50・・・グラウト(充填材)
図1
図2
図3
図4
図5