(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】照明光学系及びレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/064 20140101AFI20250407BHJP
B23K 26/066 20140101ALI20250407BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20250407BHJP
G02B 13/00 20060101ALI20250407BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
B23K26/064 N
B23K26/066
B23K26/073
G02B13/00
G02B3/00 A
(21)【出願番号】P 2021177224
(22)【出願日】2021-10-29
【審査請求日】2024-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003236
【氏名又は名称】弁理士法人杉浦特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【氏名又は名称】杉浦 正知
(72)【発明者】
【氏名】山賀 勝
(72)【発明者】
【氏名】鷲山 裕之
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-175412(JP,A)
【文献】特開2003-090959(JP,A)
【文献】特開平10-104545(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0021497(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を照射面へ導く照射光学系であって、
レーザ光を均一化する光量均一化部を有し、
前記光量均一化部が光軸に沿って順に配列された第1のレンズアレイと、第2のレンズアレイと、第3のレンズアレイを有し、
前記第1のレンズアレイの焦点より後の位置に前記第2のレンズアレイが設置され、
前記第2のレンズアレイ以降、前記照射面までの間の光路に集光点が存在しないようになされ、
前記第1のレンズアレイ及び前記第3のレンズアレイが正のパワーを有し、前記第2のレンズアレイが負のパワーを有する照明光学系。
【請求項2】
前記第1及び第3のレンズアレイが凸レンズの集合であり、前記第2のレンズアレイが凹レンズの集合である請求項1に記載の照明光学系。
【請求項3】
レーザ光を照射面へ導く照射光学系であって、
レーザ光を均一化する光量均一化部を有し、
z軸を光軸方向とし、z軸及びy軸と直交する方向をx軸とし、z軸及びx軸と直交する方向をy軸とし、
前記光量均一化部が前記x軸方向及びy軸方向の一方の方向にレンズ作用を有する第1のレンズアレイ部と、前記x軸方向及び前記y軸方向の他方の方向にレンズ作用を有する第2のレンズアレイ部が前記z軸に沿って順に配列された構成とされ、
前記第1のレンズアレイ部は、光軸に沿って順に配列された第1のシリンドカルレンズアレイと、第2のシリンドカルレンズアレイと、第3のシリンドカルレンズアレイを有し、
前記第1のシリンドカルレンズアレイの焦点より後の位置に前記第2のシリンドカルレンズアレイが設置され、
前記第2のシリンドカルレンズアレイ以降、前記照射面までの間の光路に集光点が存在しないようになされ、
前記第1のシリンドカルレンズアレイ及び前記第3のシリンドカルレンズアレイが正のパワーを有し、前記第2のシリンドカルレンズアレイが負のパワーを有する照明光学系。
【請求項4】
前記第1及び第3のシリンドカルレンズアレイがシリンドカル凸レンズの集合であり、前記第
2の
シリンドリカルレンズアレイがシリンドカル凹レンズの集合である請求項3に記載の照明光学系。
【請求項5】
前記z軸に沿って、ビーム成形部、前記光量均一化部及びコリメートレンズ部が順に配列された請求項
3に記載の照明光学系。
【請求項6】
レーザ光を出射する光源と、
前記レーザ光を断面がライン状のレーザ光にしてフォトマスクに照射すると共に、走査機構によって前記フォトマスクを走査する照明光学系と、
前記フォトマスクを介されたレーザ光を被加工物に照射する投影光学系と、
前記被加工物が載置されると共に、x-y方向に前記被加工物を移動させる被加工物載置テーブルとを備え、
前記照明光学系の光量均一化部が請求項3に記載の構成とされたレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライン状のレーザ光をフォトマスクに対して照射するために使用される照明光学系、並びに照明光学系を備えたレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂、シリコン等の非金属材料である被加工物(ワークピース、例えばプリント基板の樹脂層)を、フォトフォトマスクを透過したレーザ光が走査することによって、被加工物をフォトフォトマスクのパターンの形状(例えばビア)にアブレーション加工(ablation:融解、蒸発による除去加工)することが知られている。精密な加工を要する場合、エキシマレーザ(KrFレーザ、波長248nm)を用いたアブレーションによる加工がなされる。
【0003】
エキシマレーザによるアブレーション加工は非常に高いエネルギーの光を被加工対象物に照射する必要があり、高フルーエンスのビームが照明光学系を通過する。そのため、レンズ等の光学素子のガラス材料やコーティング膜等が熱によってダメージを受けることが問題となる。また、光学素子が高温とならないために光学素子上に集光点を作らない配置にすると、集光点を避けて光学素子を配置することになり、光路長が長くなる、すなわち装置が大型化するという課題があった。
【0004】
例えば特許文献1に記載されている照明光学系は、ホログラム素子12,シリンドカルレンズアレイ13a及びシリンドカルレンズアレイ13bを光軸に沿って順に配列した構成である。
【0005】
特許文献2には、照射領域を長尺化かつ細線化することができるビームホモジナイザが記載去れている。特許文献2の構成では、シリンダアレイ1A,2B,1Bを光軸に沿って順に配列した構成とされており、シリンダアレイ1Bの後に集光部がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003―090959号公報
【文献】特開平10-153746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の照明光学系では、シリンドカルレンズアレイ13bのレンズ面近傍に集光部が存在しているために、シリンドカルレンズアレイ13bの発熱の問題がある。また、特許文献2の構成では、光学素子上に集光部が無いが、光学素子の配置に制限を受けており光路が長くなり、装置が大型化する。
【0008】
したがって、本発明の目的は、光学素子に集光部が存在せず、且つ光路が長くなることが防止できる照明光学系及びレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、レーザ光を照射面へ導く照射光学系であって、
レーザ光を均一化する光量均一化部を有し、
光量均一化部が光軸に沿って順に配列された第1のレンズアレイと、第2のレンズアレイと、第3のレンズアレイを有し、
第1のレンズアレイの焦点より後の位置に第2のレンズアレイが設置され、
第2のレンズアレイ以降、照射面までの間の光路に集光点が存在しないようになされ、
第1のレンズアレイ及び第3のレンズアレイが正のパワーを有し、第2のレンズアレイが負のパワーを有する照明光学系である。
また、本発明は、レーザ光を照射面へ導く照射光学系であって、
レーザ光を均一化する光量均一化部を有し、
z軸を光軸方向とし、z軸及びy軸と直交する方向をx軸とし、z軸及びx軸と直交する方向をy軸とし、
光量均一化部がx軸方向及びy軸方向の一方の方向にレンズ作用を有する第1のレンズアレイ部と、x軸方向及びy軸方向の他方の方向にレンズ作用を有する第2のレンズアレイ部がz軸に沿って順に配列された構成とされ、
第1のレンズアレイ部は、光軸に沿って順に配列された第1のシリンドカルレンズアレイと、第2のシリンドカルレンズアレイと、第3のシリンドカルレンズアレイを有し、
第1のシリンドカルレンズアレイの焦点より後の位置に第2のシリンドカルレンズアレイが設置され、
第2のシリンドカルレンズアレイ以降、照射面までの間の光路に集光点が存在しないようになされ、
第1のシリンドカルレンズアレイ及び第3のシリンドカルレンズアレイが正のパワーを有し、第2のシリンドカルレンズアレイが負のパワーを有する照明光学系である。
さらに、本発明は、レーザ光を出射する光源と、
レーザ光を断面がライン状のレーザ光にしてフォトマスクに照射すると共に、走査機構によってフォトマスクを走査する照明光学系と、
フォトマスクを介されたレーザ光を被加工物に照射する投影光学系と、
被加工物が載置されると共に、x-y方向に被加工物を移動させる被加工物載置テーブルとを備え、
照明光学系の光量均一化部が上述した構成とされたレーザ加工装置である。
【発明の効果】
【0010】
少なくとも一つの実施形態によれば、本発明は光学素子が高温となることを防止でき、且つ光路長が長くなり、装置が大型化することを防止することができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本明細書に記載されたいずれかの効果又はそれらと異質な効果であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明を適用できるレーザ加工装置の概略的構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態の正面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態におけるフォトマスクとライン状ビームの関係を示す平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に使用する基板の一例の拡大平面図である。
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態における光学系を示すブロック図である。
【
図6】
図6Aは、照明光学系の一例の構成の側面図であり、
図6Bは、照明光学系の一例の構成の上面図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態の一部の構成の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態等について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態等は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容がこれらの実施形態等に限定されるものではない。
【0013】
図1は本発明が適用可能な加工装置例えばレーザ加工装置の一例の概略構成図である。レーザ加工装置は、レーザ光源11を有する。レーザ光源11は、例えば波長248nmのKrFエキシマレーザ光をパルス照射するエキシマレーザ光源である。レーザ光がライン状レーザ走査機構12に供給される。
【0014】
ライン状レーザ走査機構12は、レーザ光束を長方形状(ライン状)に整形する照明光学系と、レーザ光LBがフォトマスク13を走査するための走査機構(直動機構)を有している。
【0015】
フォトマスク13には、被加工物(以下、基板Wと適宜称する)に対してアブレーションによって形成する加工パターンに対応したマスクパターンが形成されている。すなわち、KrFエキシマレーザを透過する基材(例えば石英ガラス)に、KrFエキシマレーザを遮断する遮光膜 (例えばCr膜)によるパターンが描画されている。加工パターンとしては、貫通ビア、非貫通ビア、配線パターン用の溝(トレンチ)などである。アブレーション加工によって加工パターンが形成された後に、銅などの導体が充填される。
【0016】
フォトマスク13を通過したレーザ光LBが投影光学系14に入射される。投影光学系14から出射されたレーザ光が基板Wの表面に照射される。投影光学系14は、フォトマスク面と基板Wの表面とに焦点面を有する。基板Wは、例えばエポキシ樹脂などの基板に銅配線層が形成され、その上に絶縁層が形成された樹脂基板である。
【0017】
基板Wは、複数のパターン領域WAが設けられており、被加工物載置用の載置テーブル15上に固定されている。載置テーブル15が2次元方向に変位し、また、回転することによってパターン領域WAをフォトマスク13に対してそれぞれ位置決めすることが可能とされている。また、基板Wの全体にわたって被加工領域を加工可能とするために、載置テーブル15が走査方向に基板Wをステップ移動させるようになされている。
【0018】
図2を参照してレーザ加工装置の一実施形態について説明する。レーザ加工装置が支持体を構成するベース部21及び上部フレーム22に対して取り付けられる。上部フレーム22は、ベース部21上に固定されている。ベース部21及び上部フレーム22は、剛性が高く、振動を減衰させる特性の材料からなる。
【0019】
上部フレーム22に対して、走査機構16及び照明光学系17からなるライン状レーザ走査機構と、フォトマスク13が載置されるマスクステージ18(フォトマスクの支持部)と、投影光学系14が固定される。ベース部21上に載置テーブル15が固定される。すなわち、これらの走査機構16、照明光学系17、マスクステージ18、投影光学系14及び載置テーブル15が所定の光学的関係(レーザ光が照明光学系17に対して正しく入射する関係)を満たすように位置決めされ、位置決め後、照明光学系17の走査動作及び載置テーブル15の変位動作による振動などによって、ベース部21及び上部フレーム22が揺動した場合に、一体で変位するようになされる。ビーム位置補正部27によって照明光学系17に対するレーザ光の入射位置及び入射角度が補正される。
【0020】
レーザ光源11は、ベース部21及び上部フレーム22とは、別個に設けられた筐体24内に収納されている。レーザ光源11は、波長248nmのKrFエキシマレーザ(レーザ光と称する)L1をパルス照射する。レーザ光L1及びガイド用レーザ光(不図示)がビーム位置補正部(ビームステアリング機構と称される)27に入射される。
【0021】
ビーム位置補正部27は、レーザ光L1の位置決め(位置及び入射角)をリアルタイムで行なうための機構である。ビーム位置補正部27によって、レーザ加工装置のベース部21及び上部フレーム22の傾きにかかわらず、照明光学系17に対してレーザ光L1が常に正しい位置及び角度でもって入射するように調整される。なお、ガイド用レーザ光の波長は、例えば400nm~700nmとされている。ビーム位置補正部27に含まれるミラーは、波長が相違しているレーザ光L1とガイド用レーザ光の波長をそれぞれ反射する2つの反射膜を有する。各反射膜に各レーザ光が入射されるようにするためのビーム成形部がビーム位置補正部27に設けられている。
【0022】
ビーム位置補正部27から出射されたレーザ光L1がミラー28で反射されて照明光学系17に対して入射される。照明光学系17は、レーザ光源の出射した光の強度分布を均一化するとともにライン状の加工用レーザ光に成形する。照明光学系17は、ライン状レーザ光を成形するためのレンズアレイ(フライアイレンズアレイとも称される)を有する。レンズアレイは、レーザ光を拡大する方向に複数の凸レンズが配列されたレンズアレイである。照明光学系17からのライン状レーザ光LBがマスク13を照射する。なお、照明光学系17の具体例については後述する。
【0023】
走査機構16は、照明光学系17の一部であって、照明光学系17の全体を移動させる。走査機構16によってレーザ光LBがフォトマスク13に対して移動し、マスクステージ18及び載置テーブル15にそれぞれ固定されているフォトマスク13及び基板Wがレーザ光で走査される。
【0024】
図3は、レーザ光LBとフォトマスク13の大きさの関係を示す。例えばレーザ光LBは、(長さ×幅)が(100×0.1(mm))、(35×0.3(mm))などとされる。レーザ光LBの長さ方向と直交する幅方向が走査方向とされている。
【0025】
フォトマスク13は、KrFエキシマレーザ光を透過する基材(例えば石英ガラス)に対してKrFエキシマレーザ光を遮断する遮断膜(クロム膜、アルミニウム膜など)を形成することによって、マスクパターンが描画されている。フォトマスク13には、基板Wに繰り返し現れるパターンを描画してもよく、又は基板W全体にわたるパターンを描画するようにしてもよい。
【0026】
マスクステージ18は、フォトマスク13を保持し、フォトマスクの位置決めが可能なxyθステージを備える。フォトマスク13に設けられたアライメントマークを読み取りフォトマスク13の位置決めを行うためのカメラ(不図示)が備えられている。
【0027】
フォトマスク13を通ったレーザ光が投影光学系14に入射される。投影光学系14は、フォトマスク13の表面と基板Wの表面に焦点を持つ投影光学系であり、フォトマスク13を透過した光を基板Wに投影する。ここでは、投影光学系14は縮小投影光学系として構成される(例えば1/4倍)。
【0028】
載置テーブル15は、基板Wを真空吸着などによって固定すると共に、テーブル移動機構によってx-y方向への移動及び回転によってフォトマスク13に対して基板Wを位置決めする。また、基板W全体にわたってアプレーション加工できるように、走査方向に沿ってステップ移動可能である。載置テーブル15の傍には、基板Wに設けられているアライメントマークを撮像するアライメントカメラ(不図示)が設置されている。さらには、焦点調整用のz機構等を設けてもよい。
【0029】
基板W(ワークピース)は、例えばプリント配線板用の有機基板であり、表面にレーザ加工をする被加工層が形成されている。被加工層は例えば、樹脂膜や金属箔であり、レーザ光によってビア形成等の加工処理が可能な材料によって形成されている。レーザ加工機によってビアや配線パターンを形成し、その後の工程で加工部分に銅などの導体を充填する。
【0030】
図4は、基板Wの一例を拡大して示す。基板Wは、多面取り基板であって、基板Wには、フォトマスク13のパターンと対応するパターン領域WAが(8×8)のマトリクス状に繰り返し設けられている。
図4において横方向が副ステップ方向で、縦方向が主ステップ方向とされている。あるパターン領域WAが走査されると、次のパターン領域が走査される。なお、図示されている走査の方向(矢印)は、一例である。
【0031】
なお、本発明の一実施形態においては、図示しないが搬送機構が設けられており、搬送機構によって、被加工物の載置テーブルへの載置や取出しが行なわれる。例えばスカラロボット等を用いることができる。また、加工装置とレーザ光源の筐体とを覆う図示しない空調チャンバーを備えている。
【0032】
上述した本発明の一実施形態においては、装置全体を制御するための制振装置(不図示)が備えられている。制御装置は、レーザ光源11の制御、駆動部各部の制御、フォトマスク、基板Wのアライメント、生産情報の管理やレシピ管理、等を行う。
【0033】
上述したレーザ加工装置における光学系をブロック図として表すと
図5に示すものとなる。
図5における
図1及び
図2と対応する部分には同一参照符号を付して示す。レーザ光源11からのレーザ光がビーム成形部30に供給される。ビーム成形部30からのレーザ光がビーム位置補正部27に供給される。ビーム位置補正部27によって、照明光学系17に対してレーザ光が常に正しい位置及び角度でもって入射するようにレーザ光が調整される。ビーム成形部30は、上述したように、レーザ光源11からのレーザ光とガイド用レーザ光をミラーと異なる反射膜に入射させるためにレーザ光を成形するものである。
【0034】
照明光学系17は、ビーム成形部31、光量均一化部としてのレンズアレイ部32及びコリメートレンズ部33が光軸に沿って順番に配置された構成を有する。ビーム成形部31によって、所定の長さ及び幅を有する長方形のレーザ光が形成され、レンズアレイ部32によってレーザ光の分布が均一とされるとともにライン状のレーザ光とされる。レンズアレイ部32は、光軸方向に沿って配列された3枚の第1のシリンドカルレンズアレイ(
図5ではSLAと表記する)36a,第2のシリンドカルレンズアレイ36b,第3のシリンドカルレンズアレイ36cからなるx方向レンズアレイ部34と、光軸方向に沿って配列された2枚のシリンドカルレンズアレイ37a,37bからなるy方向レンズアレイ部35とによって構成される。
【0035】
レンズアレイ部32からのレーザ光がコリメートレンズ部33によってほぼ平行光とされる。照明光学系17のコリメートレンズ部33からのレーザ光がフォトマスク13に対して照射される。フォトマスク13を通ったレーザ光が投影光学系14に入射される。投影光学系14は、フォトマスク13を透過した光を基板Wに投影する。
【0036】
照明光学系17の一例について
図6を参照して説明する。照明光学系17の光軸の方向と平行な方向をz軸とし、z軸及びy軸と直交する方向をx軸とし、z軸及びx軸と直交する方向をy軸とする。すなわち、z軸と垂直で、互いに直交する軸をx軸及びy軸とする。
図6Aは、照明光学系17の側面図であり、
図6Bは、照明光学系17の上面図である。さらに、ライン状レーザ光の幅方向がx軸方向とされ、ライン状レーザ光の長さ方向がy軸方向とされている。また、
図17は、x方向レンズアレイ部34の部分を拡大して示す側面図である。
【0037】
図6Aの側面図において、太線で示すシリンドカルレンズ31a、シリンドカルレンズアレイ36a,36b,36c、シリンドカルレンズ33aがx軸方向にレンズ作用を有する要素である。また、
図6Bの側面図において、太線で示すシリンドカルレンズ31b、シリンドカルレンズアレイ37a,37b、シリンドカルレンズ33bがy軸方向にレンズ作用を有する要素である。
【0038】
ビーム成形部31は、x軸方向にレンズ作用を有する(言い換えると、x軸方向にパワーを有する)シリンドカルレンズ31aと、y軸方向(言い換えると、y軸方向にパワーを有する)にレンズ作用を有するシリンドカルレンズ31bがz軸方向に順番に配列された構成を有する。光源からのレーザ光がシリンドカルレンズ31aに入射されると、シリンドカルレンズ31aからx軸方向(幅方向)に拡がりを持つレーザ光が発生する。さらに、レーザ光がシリンドカルレンズ31bに入射されると、シリンドカルレンズ31bからy軸方向(長さ方向)に拡がりを持つレーザ光が発生する。シリンドカルレンズ31bからのレーザ光がビーム成形部31から出射される。ビーム成形部31は、レンズアレイ部32のシリンドカルレンズアレイの入射面の大きさに合わせてレーザ光を拡大すると共に、レンズアレイ部32に対してレーザ光が平行に入射するようになされる。なお、フライアイレンズに入射するレーザ光は、ガウシアンカーブ等の強度の偏りを持っている。
【0039】
ビーム成形部31から出射されたレーザ光がレンズアレイ部32のx方向レンズアレイ部34(
図7に拡大側面図を示す)の光源側の第1のシリンドカルレンズアレイ36aに入射される。z軸方向に沿ってシリンドカルレンズアレイ36aと平行に第2のシリンドカルレンズアレイ36b及び第3のシリンドカルレンズアレイ36cが配列されている。シリンドカルレンズアレイ36a及び36cは、x軸方向に複数の小径のシリンドカルレンズ(凸レンズ)が配列されたものである。したがって、シリンドカルレンズアレイ36a及び36cが正のレンズパワーを有している。シリンドカルレンズアレイ36aの入射側のレンズ面が凸状とされており、出射側のレンズ面が平面とされている。シリンドカルレンズアレイ36cの入射側のレンズ面が平面とされており、出射側のレンズ面が凸状ときれている。シリンドカルレンズアレイ36bは、x軸方向に複数の小径のシリンドカルレンズ(凹レンズ)が配列されたものである。したがって、シリンドカルレンズアレイ36bが負のレンズパワーを有している。シリンドカルレンズアレイ36a,36b及び36cによってレーザ光の均一化がなされる。
【0040】
x方向レンズアレイ部34から出射されたレーザ光がレンズアレイ部32のy方向レンズアレイ部35の光源側のシリンドカルレンズアレイ37aに入射される。z軸方向に沿ってシリンドカルレンズアレイ37aと平行にシリンドカルレンズアレイ37bが配列されている。シリンドカルレンズアレイ37a及び37bは、y軸方向に複数の小径のシリンドカルレンズ(凸レンズ)が配列されたものである。シリンドカルレンズアレイ37a及び37bによってレーザ光の均一化がなされる。
【0041】
レンズアレイ部32のy方向レンズアレイ部35のシリンドカルレンズアレイ37bから出射されたレーザ光がコリメートレンズ部33の第1のシリンドカルレンズ33aに入射される。シリンドカルレンズ33aは、x軸方向にレンズ作用を有する。シリンドカルレンズ33aと平行に第2のシリンドカルレンズ33bが配列されている。シリンドカルレンズ33bは、y軸方向にレンズ作用を有する。コリメートレンズ部33は、分割されたレーザ光を平行光にするとともに、照射面上で重畳させ均一化する。
【0042】
本発明の一実施形態では、
図6A及び
図7に示すように、光源側のx方向レンズアレイ
部34の第1のシリンドカルレンズアレイ36aの焦点より後の位置に第2のシリンドカルレンズアレイ36bが設置され、第2のシリンドカルレンズアレイ36b以降、照射面までの間の光路に集光点が存在しないようになされている。
【0043】
上述した一実施形態では、レンズアレイ部32がx方向レンズアレイ部33及びy方向レンズアレイ部34から構成されているが、一方のレンズアレイ部を有する構成としてもよい。また、一つのレンズアレイ部がx方向及びy方向の両方向にレンズ作用を有する構成であってもよい。
【0044】
例えば
図8に示すように、ビーム成形用レンズ41、レンズアレイ部42及びコリメートレンズ43が光源から照射面までに順番に配列され、レンズアレイ部42がレンズアレイ43a、レンズアレイ43b及びレンズアレイ43cが順番に配列された構成としてもよい。レンズアレイ43a及び43cが凸レンズアレイであり、レンズアレイ43bが凹レンズアレイであり、レンズアレイ43aの焦点より後の位置にレンズアレイ43bが設置され、レンズアレイ43b以降、照射面までの間の光路に集光点が存在しないようになされている。
【0045】
上述した本発明の一実施形態は、光学素子上に集光点を作らない配置のために、光学素子が高温となることを防止でき、且つ光路長が長くなり、装置が大型化することを防止することができる。
【0046】
以上、本技術の一実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えばx方向レンズアレイ部34とy方向レンズアレイ部35の順番は、上述した一実施形態と逆の順序であってもよい。また、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料及び数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料及び数値などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0047】
W・・・被加工物(基板)、11・・・レーザ光源、12・・・ライン状レーザ走査機構、13・・・フォトマスク、14・・・投影光学系、15・・・載置テーブル、16・・・走査機構、17・・・照明光学系、18・・・マスクステージ、30,31・・・ビーム成形部、32・・・レンズアレイ部、33・・・コリメートレンズ部,36a、36b,36c・・・シリンドカルレンズアレイ