IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 愛三工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-燃料電池システム 図1
  • 特許-燃料電池システム 図2
  • 特許-燃料電池システム 図3
  • 特許-燃料電池システム 図4
  • 特許-燃料電池システム 図5
  • 特許-燃料電池システム 図6
  • 特許-燃料電池システム 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0662 20160101AFI20250407BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20250407BHJP
   H01M 8/0444 20160101ALI20250407BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20250407BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20250407BHJP
   H01M 8/0606 20160101ALI20250407BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20250407BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20250407BHJP
【FI】
H01M8/0662
H01M8/0432
H01M8/0444
H01M8/04701
H01M8/0438
H01M8/0606
H01M8/12 101
H01M8/10 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021200335
(22)【出願日】2021-12-09
(65)【公開番号】P2023085982
(43)【公開日】2023-06-21
【審査請求日】2024-02-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 智紀
(72)【発明者】
【氏名】永滝 文宏
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/246197(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/158495(WO,A1)
【文献】特開2015-157732(JP,A)
【文献】特開2008-37731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを改質することにより改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器において前記原料ガスを加熱する加熱部と、
前記改質器により生成された前記改質ガスが通過するガス通路と、
前記ガス通路を通過する前記改質ガスの温度を検出する温度センサと、
前記ガス通路を通過する前記改質ガスの圧力を検出する圧力センサと、
前記ガス通路を通過した前記改質ガスからアンモニアが除去されることにより生成される燃料ガスを用いて発電する燃料電池と、
前記温度センサの検出温度および前記圧力センサの検出圧力から推定される前記改質ガスに含まれるアンモニアの濃度に応じて前記加熱部による加熱量を制御する制御部と、を備える燃料電池システム。
【請求項2】
原料ガスを改質することにより改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器において前記原料ガスを加熱する加熱部と、
前記改質器により生成された前記改質ガスが通過するガス通路と、
前記ガス通路を通過する前記改質ガスの温度を検出する温度センサと、
前記ガス通路を通過した前記改質ガスからアンモニアが除去されることにより生成される燃料ガスを用いて発電する燃料電池と、
前記温度センサの検出温度から推定される前記改質ガスに含まれるアンモニアの濃度に応じて前記加熱部による加熱量を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記改質ガスに含まれるアンモニアの濃度が所定の第1閾値以上であると推定される場合に、前記加熱部による加熱量を増量する、燃料電池システム。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料電池システムであって、
前記制御部は、前記改質ガスに含まれるアンモニアの濃度が所定の第2閾値未満であると推定される場合に、前記加熱部による加熱量を減量する、燃料電池システム。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料電池システムであって、
前記第2閾値は、前記第1閾値未満の値である、燃料電池システム。
【請求項5】
原料ガスを改質することにより改質ガスを生成する改質器と、
前記改質器において前記原料ガスを加熱する加熱部と、
前記改質器により生成された前記改質ガスが通過するガス通路と、
前記ガス通路を通過する前記改質ガスの温度を検出する温度センサと、
前記ガス通路を通過した前記改質ガスからアンモニアが除去されることにより生成される燃料ガスを用いて発電する燃料電池と、
前記温度センサの検出温度から推定される前記改質ガスに含まれるアンモニアの濃度に応じて前記加熱部による加熱量を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記改質ガスに含まれるアンモニアの濃度が所定の第2閾値未満であると推定される場合に、前記加熱部による加熱量を減量する、燃料電池システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の燃料電池システムであって、
前記加熱部は、ジュール熱により前記原料ガスを加熱する第1加熱器を備える、燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の燃料電池システムであって、
前記加熱部は、前記改質器により生成された前記改質ガスの熱により前記原料ガスを加熱する第2加熱器を備える、燃料電池システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の燃料電池システムであって、
前記加熱部は、前記燃料電池から排出された排ガスの熱により前記原料ガスを加熱する第3加熱器を備える、燃料電池システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の燃料電池システムであって、
前記ガス通路を通過した前記改質ガスからアンモニアを除去することにより前記燃料ガスを生成する除去器を更に備える、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に燃料電池システムが開示されている。特許文献1の燃料電池システムは、原料ガスを改質することにより改質ガス(水素含有ガス)を生成する改質器と、改質器を加熱する燃焼器と、改質器により生成された改質ガスに含まれるアンモニアを除去するアンモニア除去器と、アンモニア除去器から排出される改質ガスを用いて発電する燃料電池と、アンモニア除去器によりアンモニアを除去した後の改質ガスの温度を検出する温度検知器センサとを備えている。燃焼器は、アンモニア除去器から排出されるガス及び燃料電池から排出されるオフガスを燃焼させて改質器を加熱する。特許文献1の燃料電池システムでは、制御器が、温度センサにより検出された改質ガスの温度が所定の閾値以上であるときに、改質器から燃料電池への改質ガスの供給を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2011/158495号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池システムでは、改質ガスに含まれるアンモニアの濃度が高いと、燃料電池の発電効率が低下することがある。また、改質器における加熱量が大きいと、エネルギー消費が大きくなり、システム全体の効率が低下することがある。そこで本明細書は、改質器における加熱量を抑制しつつ改質ガスに含まれるアンモニアの濃度を抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する燃料電池システムは、原料ガスを改質することにより改質ガスを生成する改質器と、前記改質器において前記原料ガスを加熱する加熱部と、前記改質器により生成された前記改質ガスが通過するガス通路と、前記ガス通路を通過する前記改質ガスの温度を検出する温度センサと、前記ガス通路を通過した前記改質ガスからアンモニアが除去されることにより生成される燃料ガスを用いて発電する燃料電池と、前記温度センサの検出温度から推定される前記改質ガスに含まれるアンモニアの濃度に応じて前記加熱部による加熱量を制御する制御部とを備えている。
【0006】
上記の構成によれば、改質器における加熱量を抑制しつつ改質ガスに含まれるアンモニアの濃度を抑制することができる。例えば、温度センサの検出温度から推定されるアンモニアの濃度が高い場合は、改質器においてアンモニアの分解が促進されていない状況であると推定される。この場合は、加熱部による加熱量を増量することにより、アンモニアの分解を促進することができ、改質ガスに含まれるアンモニアの濃度を抑制することができる。また、温度センサの検出温度から推定されるアンモニアの濃度が低い場合は、改質器においてアンモニアの分解が促進されている状況であると推定される。この場合は、加熱部による加熱量を減量することができる。アンモニアの分解が促進されていないときだけ加熱量を増量すればよいので、改質器における加熱量を抑制することができる。
【0007】
燃料電池システムは、前記ガス通路を通過する前記改質ガスの圧力を検出する圧力センサを更に備えてもよい。前記制御部は、前記温度センサの検出温度および前記圧力センサの検出圧力から推定される前記改質ガスに含まれるアンモニアの濃度に応じて前記加熱部による加熱量を制御してもよい。
【0008】
この構成によれば、改質ガスに含まれるアンモニアの濃度が温度センサの検出温度および圧力センサの検出圧力から推定されるので推定精度が向上する。これにより、加熱部による加熱量を精度良く制御することができる。
【0009】
前記制御部は、前記改質ガスに含まれるアンモニアの濃度が所定の第1閾値以上であると推定される場合に、前記加熱部による加熱量を増量してもよい。
【0010】
この構成によれば、アンモニアの濃度が高いときに加熱量を増量することにより、アンモニアの分解を促進することができ、アンモニアの濃度を低下させることができる。
【0011】
前記制御部は、前記改質ガスに含まれるアンモニアの濃度が所定の第2閾値未満であると推定される場合に、前記加熱部による加熱量を減量してもよい。前記第2閾値は、前記第1閾値未満の値であってもよい。
【0012】
この構成によれば、アンモニアの濃度が低いときに加熱量を減量することにより、不要な加熱を抑制することができる。
【0013】
前記加熱部は、ジュール熱により前記原料ガスを加熱する第1加熱器を備えてもよい。この構成によれば、加熱部による加熱量を精度良く制御することができる。
【0014】
前記加熱部は、前記改質器により生成された前記改質ガスの熱により前記原料ガスを加熱する第2加熱器を備えてもよい。この構成によれば、改質ガスの熱を有効利用することにより、原料ガスを加熱することができる。
【0015】
前記加熱部は、前記燃料電池から排出された排ガスの熱により前記原料ガスを加熱する第3加熱器を備えてもよい。この構成によれば、燃料電池の排ガスの熱を有効利用することにより、原料ガスを加熱することができる。
【0016】
燃料電池システムは、前記ガス通路を通過した前記改質ガスからアンモニアを除去することにより前記燃料ガスを生成する除去器を更に備えてもよい。
【0017】
この構成によれば、アンモニアの濃度が低い良質な燃料ガスを燃料電池に供給することができる。また、改質ガスに含まれるアンモニアの濃度を抑制することができる構成であれば、除去器が除去するアンモニアの量を抑制することができるので、除去器の負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例1の燃料電池システムを模式的に示す図。
図2】実施例1のアンモニア濃度関係情報を示すテーブル。
図3】実施例1の加熱量制御処理のフローチャート。
図4】実施例1の加熱量制御処理のタイムチャート。
図5】実施例2の燃料電池システムを模式的に示す図。
図6】実施例2の加熱量制御処理のフローチャート。
図7】変形例のアンモニア濃度関係情報を示すテーブル。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施例1)
実施例1の燃料電池システム2について図面を参照して説明する。図1に示すように、実施例1の燃料電池システム2は、原料タンク10と、気化器20と、改質器12と、除去器14と、燃料電池16と、制御部50とを備えている。
【0020】
原料タンク10は、原料としての液体アンモニアを貯蔵している。原料タンク10には、液体アンモニアが流通する液体供給路70が接続されている。液体供給路70は、上流端が原料タンク10に接続されており、下流端が気化器20に接続されている。液体供給路70を通じて原料タンク10から気化器20に液体アンモニアが供給される。液体供給路70には、液体供給路70の上流側から下流側へ液体アンモニアを圧送するポンプ72が設けられている。
【0021】
気化器20は、液体供給路70により供給される液体アンモニアを加熱することにより気化させる。これにより、原料ガスとしての気体アンモニアが生成される。気化器20には、原料ガス(気体アンモニア)が流通する原料ガス供給路60が接続されている。原料ガス供給路60は、上流端が気化器20に接続されており、下流端が改質器12に接続されている。原料ガス供給路60を通じて気化器20から改質器12に原料ガスが供給される。
【0022】
改質器12は、原料ガス供給路60により供給される原料ガス(気体アンモニア)を改質することにより改質ガスを生成する。原料ガスの改質のために用いられる触媒は、例えば、銅、ニッケル、ルテニウム等である。改質ガスには、原料ガスの改質により生成される水素が含まれる。また、改質ガスには、未分解のアンモニアが含まれる。改質ガスに含まれるアンモニアの濃度は、改質の進行状態によって変動する。
【0023】
改質器12は、原料ガスの改質中に原料ガスを加熱する第1加熱器40(加熱部の一例)を備えている。第1加熱器40は、改質器12において原料ガスの温度を上昇させる。第1加熱器40は、例えば、電気式またはガス式の構成である。本実施例の第1加熱器40は、通電により発熱する電気ヒーターである。第1加熱器40(電気ヒーター)は、電源がオンのときにジュール熱により加熱対象を加熱し、電源がオフのときに加熱対象を加熱しない。第1加熱器40による加熱量は、制御部50により制御される。変形例では、第1加熱器40は、ガスの燃焼熱により加熱対象を加熱するガスバーナーであってもよい。
【0024】
改質器12には、改質ガスが流通する改質ガス供給路62(ガス通路の一例)が接続されている。改質ガス供給路62は、上流端が改質器12に接続されており、下流端が除去器14に接続されている。改質ガス供給路62を通じて改質器12から除去器14に改質ガスが供給される。
【0025】
改質ガス供給路62には熱交換器22が設けられている。改質器12と除去器14の間に熱交換器22が設けられている。熱交換器22は、改質ガス供給路62を通過する改質ガスと外部の流体との熱交換により改質ガスを冷却する。熱交換器22は、改質器12から除去器14に供給される改質ガスの温度を低下させる。熱交換器22の構造は特に限定されないが、例えば、熱交換用のフィン等を備えていてもよい。
【0026】
改質ガス供給路62には温度センサ30設けられている。温度センサ30は、改質器12と熱交換器22の間に設けられている。温度センサ30は、改質器12から排出される改質ガスの温度を検出する。温度センサ30は、熱交換器22よりも上流側において、改質ガス供給路62を通過する改質ガスの温度を検出する。温度センサ30は、除去器14によりアンモニアが除去される前、かつ、熱交換器22より熱交換される前の改質ガスの温度を検出する。温度センサ30の検出温度の情報は、制御部50に送信される。
【0027】
また、改質ガス供給路62には圧力センサ32が設けられている。圧力センサ32は、改質器12と熱交換器22の間に設けられている。圧力センサ32は、改質器12から排出される改質ガスの圧力を検出する。圧力センサ32は、熱交換器22よりも上流側において、改質ガス供給路62を通過する改質ガスの圧力を検出する。圧力センサ32は、除去器14によりアンモニアが除去される前、かつ、熱交換器22より熱交換される前の改質ガスの圧力を検出する。圧力センサ32の検出圧力の情報は、制御部50に送信される。
【0028】
除去器14は、改質ガス供給路62により供給される改質ガスに含まれるアンモニアを吸着剤によって吸着することにより、改質ガスからアンモニアを除去する。これにより、アンモニアの濃度が低くされた燃料ガスが生成される。アンモニアの吸着のために用いられる吸着剤は、例えば、活性炭、ゼオライト、MOF(Metal Organic Framework)等である。例えば、除去器14の容器の内部に吸着剤が充填されている。
【0029】
除去器14には、燃料ガスが流通する燃料ガス供給路64が接続されている。燃料ガス供給路64は、上流端が除去器14に接続されており、下流端が燃料電池16に接続されている。燃料ガス供給路64を通じて除去器14から燃料電池16に燃料ガスが供給される。
【0030】
燃料電池16には、燃料ガス供給路64の他に、空気が流通する空気供給路68が接続されている。空気供給路68は、上流端が空気供給源(図示省略)に接続されており、下流端が燃料電池16に接続されている。空気供給路68を通じて空気供給源から燃料電池16に空気が供給される。なお、空気供給路68の上流端は外気に開放されていてもよい。
【0031】
燃料電池16は、燃料ガス供給路64により供給される燃料ガスと、空気供給路68により供給される空気とを用いて発電する。燃料電池16は、例えば、容器の内部に積み重ねられた複数の電池セル(図示省略)を備えており、各電池セルが、燃料ガスに含まれる水素と、空気に含まれる酸素との化学反応により発電する。電池セルは、例えば、固体酸化物形燃料電池(SOFC(Solid Oxide Fuel Cell))や固体高分子形燃料電池(PEFC(Polymer Electrolyte Fuel Cell))であるが、これらに限定されない。燃料ガスを用いて発電する燃料電池16では、発電の際に未反応の燃料ガスが排ガスとして排出される。
【0032】
燃料電池16には、排ガスが流通する排ガス路66が接続されている。排ガス路66は、上流端が燃料電池16に接続されており、下流端が外部の排出先(図示省略)に接続されている。排ガス路66を通じて燃料電池16から排出先に排ガスが排出される。
【0033】
制御部50は、例えば、CPU(図示省略)と、記憶部52(例えば、ROMやRAM)とを備えており、記憶部52に記憶されているプログラムに従って、燃料電池システム2に関する様々な制御や処理を実行する。
【0034】
制御部50の記憶部52には、アンモニア濃度関係情報が記憶されている。図2は、アンモニア濃度関係情報の一例を示すテーブルである。図2に示すように、アンモニア濃度関係情報は、温度(横軸)および圧力(縦軸)と、アンモニアの濃度(例えば、80%、25%、・・・)との関係を示す。アンモニア濃度関係情報における温度(横軸(例えば、100℃、200℃、・・・))は、改質ガス供給路62に設けられた温度センサ30によって検出される改質ガスの温度に対応する。アンモニア濃度関係情報における圧力(縦軸(例えば、0kPa、100kPa、・・・))は、改質ガス供給路62に設けられた圧力センサ32によって検出される改質ガスの圧力に対応する。アンモニア濃度関係情報におけるアンモニア濃度(例えば、80%、25%、・・・)は、改質ガス供給路62を通過する改質ガスに含まれるアンモニアの濃度に対応する。アンモニア濃度関係情報は、例えば、予め実験や解析に基づいて作成されている。アンモニア濃度関係情報は、図2に示すテーブルに限られず、例えば、グラフや関数で示されていてもよい。制御部50は、温度センサ30の検出温度と、圧力センサ32の検出圧力と、アンモニア濃度関係情報とに基づいて、改質ガス供給路62を通過する改質ガスに含まれるアンモニアの濃度を推定する。例えば、温度センサ30の検出温度が100℃であり、圧力センサ32の検出圧力が0kPaである場合、制御部50は、アンモニア濃度関係情報に基づいて、改質ガスに含まれるアンモニアの濃度を80%と推定する。
【0035】
(加熱量制御処理;図3図4
次に、実施例1の加熱量制御処理について説明する。加熱量制御処理は、例えば、改質器12の始動指示がある場合に開始される。加熱量制御処理が開始される時点では、改質器12に設けられている第1加熱器40(電気ヒーター)はオフの状態である。図3に示すように、加熱量制御処理のS10では、制御部50が、アンモニア濃度関係情報(図2参照)により推定される改質ガスに含まれるアンモニアの濃度が所定の第1閾値Th1(例えば、50%)以上であるか否かを判断する。S10でのアンモニア濃度は、温度センサ30の検出温度と、圧力センサ32の検出圧力と、アンモニア濃度関係情報(図2参照)とに基づいて特定される。所定の第1閾値Th1は、所定の濃度許容値Ta(例えば、60%)未満の値である(図4参照)。所定の濃度許容値Taは、例えば、除去器14のアンモニア除去能力に応じて設定される。S10でアンモニアの濃度が第1閾値Th1以上であると判断される場合(YESの場合)、処理はS12に進む。S10でアンモニアの濃度が第1閾値Th1未満であると判断される場合(NOの場合)、処理は待機する。
【0036】
S10でYESの後のS12では、制御部50が、改質器12に設けられている第1加熱器40(電気ヒーター)の電源をオンにする(図4参照)。第1加熱器40の電源がオンになると、第1加熱器40が発熱し、改質器12の内部の原料ガスが加熱される。これにより、原料ガスの温度が上昇し、原料ガスの改質が促進される。その結果、アンモニアの分解が促進され、改質ガスに含まれるアンモニアの濃度が低下する。改質ガスの温度は上昇する。
【0037】
続くS14では、制御部50が、アンモニア濃度関係情報(図2参照)により推定される改質ガスに含まれるアンモニア濃度が所定の第2閾値Th2(例えば、10%)未満であるか否かを判断する。S14でのアンモニア濃度は、温度センサ30の検出温度と、圧力センサ32の検出圧力と、アンモニア濃度関係情報(図2参照)とに基づいて特定される。所定の第2閾値Th2は、上記の第1閾値Th1未満の値である(図4参照)。S14でアンモニアの濃度が第2閾値Th2未満であると判断される場合(YESの場合)、処理はS16に進む。S14でアンモニアの濃度が第2閾値Th2以上であると判断される場合(NOの場合)、処理はS12に戻る。S12では、第1加熱器40(電気ヒーター)の電源がオンに維持され、第1加熱器40による原料ガスの加熱が維持される。
【0038】
S14でYESの後のS16では、制御部50が、第1加熱器40(電気ヒーター)の電源をオフにする(図4参照)。第1加熱器40の電源がオフになると、第1加熱器40による原料ガスの加熱が停止する。その結果、改質ガスに含まれるアンモニアの濃度が上昇すると共に、改質ガスの温度が低下する。
【0039】
続くS18では、制御部50が、改質器12の停止指示があるか否かを判断する。改質器12の停止指示があると判断される場合(YESの場合)、加熱量制御処理が終了する。改質器12の停止指示がないと判断される場合(NOの場合)、処理はS10に戻る。制御部50が上記の処理を繰り返す。
【0040】
(効果)
以上、実施例1の燃料電池システム2について説明した。以上のように、燃料電池システム2は、原料ガスを改質することにより改質ガスを生成する改質器12と、改質器12において原料ガスを加熱する第1加熱器40と、改質器12により生成された改質ガスが通過する改質ガス供給路62と、改質ガス供給路62を通過する改質ガスの温度を検出する温度センサ30と、改質ガス供給路62を通過した改質ガスからアンモニアが除去されることにより生成される燃料ガスを用いて発電する燃料電池16と、温度センサ30の検出温度から推定される改質ガスに含まれるアンモニアの濃度に応じて第1加熱器40による加熱量を制御する制御部50とを備えている。
【0041】
上記の構成によれば、改質器12における加熱量を抑制しつつ改質ガスに含まれるアンモニアの濃度を抑制することができる。例えば、温度センサ30の検出温度から推定されるアンモニアの濃度が高い場合は、改質器12においてアンモニアの分解が促進されていない状況であると推定される。この場合は、第1加熱器40による加熱量を増量することにより、アンモニアの分解を促進することができ、改質ガスに含まれるアンモニアの濃度を抑制することができる。また、温度センサ30の検出温度から推定されるアンモニアの濃度が低い場合は、改質器12においてアンモニアの分解が促進されている状況であると推定される。この場合は、第1加熱器40による加熱量を減量することができる。アンモニアの分解が促進されていないときだけ加熱量を増量すればよいので、改質器12における加熱量を抑制することができる。
【0042】
また、燃料電池システム2は、改質ガス供給路62を通過する改質ガスの圧力を検出する圧力センサ32を備えている。制御部50は、温度センサ30の検出温度および圧力センサ32の検出圧力から推定される改質ガスに含まれるアンモニアの濃度に応じて第1加熱器40による加熱量を制御する。この構成によれば、改質ガスに含まれるアンモニアの濃度が温度センサ30の検出温度および圧力センサ32の検出圧力から推定されるので推定精度が向上する。これにより、第1加熱器40による加熱量を精度良く制御することができる。
【0043】
制御部50は、改質ガスに含まれるアンモニアの濃度が所定の第1閾値Th1以上であると推定される場合に、第1加熱器40による加熱量を増量する。この構成によれば、アンモニアの濃度が高いときに加熱量を増量することにより、アンモニアの分解を促進することができ、アンモニアの濃度を低下させることができる。
【0044】
制御部50は、改質ガスに含まれるアンモニアの濃度が第1閾値Th1未満の所定の第2閾値Th2未満であると推定される場合に、第1加熱器40による加熱量を減量する。この構成によれば、アンモニアの濃度が低いときに加熱量を減量することにより、不要な加熱を抑制することができる。
【0045】
第1加熱器40は、ジュール熱により原料ガスを加熱する。この構成によれば、第1加熱器40による加熱量を精度良く制御することができる。
【0046】
燃料電池システム2は、改質ガス供給路62を通過した改質ガスからアンモニアを除去することにより燃料ガスを生成する除去器14を備えている。この構成によれば、アンモニアの濃度が低い良質な燃料ガスを燃料電池16に供給することができる。また、改質ガスに含まれるアンモニアの濃度を抑制することができる構成であれば、除去器14が除去するアンモニアの量を抑制することができるので、除去器14の負荷を軽減することができる。
【0047】
(実施例2)
次に、実施例2の燃料電池システム2について説明する。以下では、上記の実施例1と同様の構成については説明を省略する場合がある。図5に示すように、実施例2の燃料電池システム2は、改質器12に設けられている第2加熱器42(加熱部の他の一例)および第3加熱器44(加熱部の他の一例)を備えている。また、実施例2の燃料電池システム2は、改質ガス供給路62に接続されている改質ガス分岐路80と、排ガス路66に接続されている排ガス分岐路90とを備えている。
【0048】
改質ガス分岐路80の上流端は、温度センサ30および圧力センサ32よりも下流側、かつ、熱交換器22よりも上流側の改質ガス供給路62に接続されている。変形例では、改質ガス分岐路80の上流端は、温度センサ30および圧力センサ32よりも上流側の改質ガス供給路62に接続されていてもよい。改質ガス分岐路80の下流端は、改質器12に設けられている第2加熱器42に接続されている。改質ガス分岐路80を通じて改質ガス供給路62から第2加熱器42に改質ガスが供給される。改質器12から排出される改質ガスが第2加熱器42に供給される。
【0049】
改質ガス分岐路80には、改質ガス分岐路80を開閉する改質ガスバルブ82が設けられている。改質ガスバルブ82が開弁すると、第2加熱器42に改質ガスが供給され、改質ガスバルブ82が閉弁すると、第2加熱器42に改質ガスが供給されなくなる。
【0050】
第2加熱器42は、熱交換器であり、改質ガス分岐路80から供給される改質ガスと改質器12の内部の原料ガスとの熱交換により、原料ガスを加熱すると共に改質ガスを冷却する。第2加熱器42(熱交換器)は、改質器12から排出される改質ガスの熱により原料ガスの温度を上昇させる。
【0051】
第2加熱器42には改質ガス戻り路84の上流端が接続されている。改質ガス戻り路84の下流端は、温度センサ30および圧力センサ32よりも下流側、かつ、熱交換器22よりも上流側の改質ガス供給路62に接続されている。変形例では、改質ガス戻り路84の下流端は、熱交換器22よりも下流側の改質ガス供給路62に接続されていてもよい。改質ガス戻り路84を通じて第2加熱器42から改質ガス供給路62に改質ガスが供給される(戻される)。
【0052】
排ガス分岐路90は、上流端が排ガス路66に接続されており、下流端が第3加熱器44に接続されている。排ガス分岐路90を通じて排ガス路66から第3加熱器44に排ガスが供給される。燃料電池16から排出される排ガスが第3加熱器44に供給される。
【0053】
排ガス分岐路90には、排ガス分岐路90を開閉する排ガスバルブ92が設けられている。排ガスバルブ92が開弁すると、第3加熱器44に排ガスが供給され、排ガスバルブ92が閉弁すると、第3加熱器44に排ガスが供給されなくなる。
【0054】
第3加熱器44は、熱交換器であり、排ガス分岐路90から供給される排ガスと改質器12の内部の原料ガスとの熱交換により、原料ガスを加熱すると共に排ガスを冷却する。第3加熱器44(熱交換器)は、燃料電池16から排出される排ガスの熱により原料ガスの温度を上昇させる。
【0055】
第3加熱器44には第2排ガス路94の上流端が接続されている。第2排ガス路94の下流端は外部の排出先(図示省略)に接続されており、第2排ガス路94を通じて排出先に排ガスが排出される。
【0056】
(加熱量制御処理;図6
次に、実施例2の加熱量制御処理について説明する。実施例2の加熱量制御処理が開始される時点では、改質器12に設けられている第1加熱器40(電気ヒーター)がオフの状態である。また、実施例2の加熱量制御処理が開始される時点では、改質ガス分岐路80に設けられている改質ガスバルブ82が閉弁していると共に、排ガス分岐路90に設けられている排ガスバルブ92が閉弁している状態である。
【0057】
図6に示すように、実施例2の加熱量制御処理のS12では、制御部50が、第1加熱器40(電気ヒーター)の電源をオンにする。また、S12では、制御部50が、改質ガス分岐路80に設けられている改質ガスバルブ82を開弁すると共に、排ガス分岐路90に設けられている排ガスバルブ92を開弁する。
【0058】
第1加熱器40の電源がオンになると、第1加熱器40が発熱し、改質器12の内部の原料ガスが加熱される。また、改質ガスバルブ82が開弁すると、改質ガス分岐路80を通じて第2加熱器42に改質ガスが供給され、改質ガスの熱により改質器12の内部の原料ガスが加熱される。また、排ガスバルブ92が開弁すると、排ガス分岐路90を通じて第2加熱器42に排ガスが供給され、排ガスの熱により改質器12の内部の原料ガスが加熱される。これにより、原料ガスの温度が上昇し、原料ガスの改質が促進される。その結果、アンモニアの分解が促進され、改質ガスに含まれるアンモニアの濃度が低下する。
【0059】
図6に示すように、実施例2の加熱量制御処理のS16では、制御部50が、第1加熱器40(電気ヒーター)の電源をオフにする。また、S16では、制御部50が、改質ガス分岐路80に設けられている改質ガスバルブ82を閉弁すると共に、排ガス分岐路90に設けられている排ガスバルブ92を閉弁する。
【0060】
第1加熱器40の電源がオフになると、第1加熱器40による原料ガスの加熱が停止する。また、改質ガスバルブ82が閉弁すると、第2加熱器42に改質ガスが供給されなくなり、改質ガスの熱による原料ガスの加熱が停止する。また、排ガスバルブ92が閉弁すると、第2加熱器42に排ガスが供給されなくなり、排ガスの熱による原料ガスの加熱が停止する。これにより、第2加熱器42による原料ガスの加熱が停止する。
【0061】
(効果)
以上、実施例2の燃料電池システム2について説明した。以上のように、燃料電池システム2は、改質器12により生成された改質ガスの熱により原料ガスを加熱する第2加熱器42を備えている。また、燃料電池システム2は、燃料電池16から排出される排ガスの熱により原料ガスを加熱する第3加熱器44を備えている。制御部50は、改質ガス分岐路80に設けられている改質ガスバルブ82を開閉制御することにより、改質器12における加熱量を制御する。また、制御部50は、排ガス分岐路90に設けられている排ガスバルブ92を開閉制御することにより、改質器12における加熱量を制御する。
【0062】
この構成によれば、改質ガスの熱を有効利用することにより、原料ガスを加熱することができる。また、燃料電池16の排ガスの熱を有効利用することにより、原料ガスを加熱することができる。この構成によっても、上記の実施例1と同様に、改質器12における加熱量を抑制しつつ改質ガスに含まれるアンモニアの濃度を抑制することができる。
【0063】
また、上記の構成によれば、原料ガスの温度を上昇させることと利用して改質ガスの温度を低下させることができる。これにより、除去器14に供給される改質ガスの温度を低下させることができ、除去器14でのアンモニアの除去を促進することができる。また、原料ガスの温度を上昇させることと利用して排ガスの温度を低下させることができる。これにより、外部に排出される排ガスの温度を低下させることができ、排ガスを安全に排出することができる。
【0064】
(変形例)
(1)上記の実施例1、2では、改質ガスに含まれるアンモニアの濃度を推定するためのアンモニア濃度関係情報(図2参照)が、温度および圧力と、アンモニアの濃度との関係を示す情報であったが、これに限定されない。変形例では、図7に示すように、アンモニア濃度関係情報が、温度とアンモニアの濃度との関係を示す情報であってもよい。変形例のアンモニア濃度関係情報における温度(横軸(例えば、100℃、200℃、・・・))は、改質ガス供給路62に設けられた温度センサ30によって検出される改質ガスの温度に対応する。アンモニア濃度関係情報におけるアンモニア濃度(例えば、80%、25%、・・・)は、改質ガス供給路62を通過する改質ガスに含まれるアンモニアの濃度に対応する。制御部50は、温度センサ30の検出温度と、アンモニア濃度関係情報とに基づいて、改質ガス供給路62を通過する改質ガスに含まれるアンモニアの濃度を推定する。変形例では、圧力センサ32を省略することができる。
【0065】
(2)変形例では、制御部50が、第1加熱器40(電気ヒーター)の通電量を調整することにより加熱量を制御する構成であってもよい。例えば、制御部50が、第1加熱器40の通電量を小さくすることにより加熱量を小さくし、通電量を大きくすることにより加熱量を大きくしてもよい。制御部50は、必ずしも第1加熱器40の電源をオン/オフしなくてもよい。
【0066】
(3)変形例では、制御部50が、改質ガス分岐路80に設けられている改質ガスバルブ82の開度を調整することにより加熱量を制御する構成であってもよい。例えば、制御部50が、改質ガスバルブ82の開度を小さくすることにより加熱量を小さくし、改質ガスバルブ82の開度を大きくすることにより加熱量を大きくしてもよい。制御部50は、必ずしも改質ガスバルブ82を開状態/閉状態にしなくてもよい。
【0067】
(4)変形例では、制御部50が、排ガス分岐路90に設けられている排ガスバルブ92の開度を調整することにより加熱量を制御する構成であってもよい。例えば、制御部50が、排ガスバルブ92の開度を小さくすることにより加熱量を小さくし、排ガスバルブ92の開度を大きくすることにより加熱量を大きくしてもよい。制御部50は、必ずしも排ガスバルブ92を開状態/閉状態にしなくてもよい。
【0068】
(5)変形例では、燃料電池システム2が、第1加熱器40、第2加熱器42および第3加熱器44のいずれか1つまたは2つの加熱器を備える構成であってもよい。第1加熱器40、第2加熱器42および第3加熱器44のいずれか1つまたは2つの加熱器を省略してもよい。
【0069】
(6)変形例では、制御部50が、燃料電池16が発電する電力により第1加熱器40(電気ヒーター)に通電してもよい。
【0070】
(7)変形例では、気化器20を省略してもよい。この場合、燃料電池システム2は、原料タンク10に代えてガスボンベ(図示省略)を備えていてもよい。ガスボンベは、原料ガス(例えば、アンモニアガス、炭化水素ガス、ギ酸ガス、ヒドラジンガス等)を貯蔵している。ガスボンベには、原料ガス供給路60が接続されている。なお、アンモニアガス以外の原料ガスが用いられる場合は、改質器12において副生物としてアンモニアが生成される。
【0071】
(8)変形例では、除去器14が、改質ガスを水中を通過させることによりアンモニアを除去する構成であってもよい。
【0072】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0073】
2:燃料電池システム、10:原料タンク、12:改質器、14:除去器、16:燃料電池、20:気化器、22:熱交換器、30:温度センサ、32:圧力センサ、40:第1加熱器、42:第2加熱器、44:第3加熱器、50:制御部、52:記憶部、60:原料ガス供給路、62:改質ガス供給路、64:燃料ガス供給路、66:排ガス路、68:空気供給路、70:液体供給路、72:ポンプ、80:改質ガス分岐路、82:改質ガスバルブ、84:改質ガス戻り路、90:排ガス分岐路、92:排ガスバルブ、94:第2排ガス路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7