(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】地盤改良方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20250407BHJP
C09K 17/10 20060101ALI20250407BHJP
C09K 17/18 20060101ALI20250407BHJP
C09K 17/44 20060101ALI20250407BHJP
C09K 103/00 20060101ALN20250407BHJP
【FI】
E02D3/12 102
C09K17/10 P
C09K17/18 P
C09K17/44 P
C09K103:00
(21)【出願番号】P 2021210266
(22)【出願日】2021-12-24
【審査請求日】2024-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】長澤 浩司
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-043754(JP,A)
【文献】特開2017-057101(JP,A)
【文献】特開2001-079600(JP,A)
【文献】特開平11-158466(JP,A)
【文献】特開2015-024949(JP,A)
【文献】特開2021-127446(JP,A)
【文献】特開2021-127392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
C09K 17/10
C09K 17/18
C09K 17/44
C09K 103/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強熱減量法によって求められる有機質分量が10%以上90%以下である有機物を含む土壌に、
セメントを含有する水硬性粉体、水、及び(A)下記一般式(A)で表される構成単位を有する重合体又はその塩〔以下、(A)成分という〕を混合する、地盤改良方法。
【化1】
[式中、R
1、R
2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。]
【請求項2】
前記土壌の混合量が、
前記水硬性粉体100質量部に対して、5質量部以上65質量部以下である、請求項1に記載の地盤改良方法。
【請求項3】
(A)成分の重量平均分子量が800以上30,000以下である、請求項1又は2に記載の地盤改良方法。
【請求項4】
前記水硬性粉体と水と(A)成分とを混合して水硬性スラリーを得る工程と、
前記土壌と水硬性スラリーとを混合し、前記土壌と水硬性スラリーとの混合物を得る工程と、
前記土壌と水硬性スラリーとの混合物を養生する工程と、
を有する、請求項1~3のいずれかに記載の地盤改良方法。
【請求項5】
(A)成分を、
前記水硬性粉体100質量部に対して0.05質量部以上3質量部以下の割合で混合する、請求項1~4のいずれかに記載の地盤改良方法。
【請求項6】
下記一般式(A)で表される構成単位を有する重合体又はその塩を含み、
強熱減量法によって求められる有機質分量が10%以上90%以下である有機物を含む土壌と
セメントを含有する水硬性粉体及び水とを混合し、該土壌を固化する地盤改良方法に用いられる、地盤改良用添加剤。
【化2】
[式中、R
1、R
2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良方法及び地盤改良用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物を建設する基礎を地盤改良する方法として、コンクリート製又は鋼管製の地盤改良コラムを地盤に打ち込む地盤改良工法や、地盤を掘削しながらセメントミルクなどのセメント系固化材を注入し、掘削土と前記セメントミルクとが混じり合って形成されるコラム状の地盤改良体を地盤中に直接形成する地盤改良工法が知られている。
【0003】
セメント系固化材を土と添加混合により地盤の改質を行う地盤改良では、混合する土壌の性質、地盤改良を行う工法の種類などを考慮して、適切な固化材、配合比、添加剤などを選定することが望まれる。特に混合する土壌が、有機質土壌などの有機物を多く含む土壌の場合、有機物がセメント表面に吸着することでセメントの水和反応が阻害されるために、セメント系固化材を用いても望ましい強度が得られず、地盤改良が困難な場合がある。
【0004】
特許文献1には、土壌の団粒構造の形成と維持および透水性の確保を課題として、高分子土壌改良材を用いた土壌改良方法であって、土壌にセメント系固化材を混合し撹拌する工程、土壌改良材としての高分子化合物を含む水溶液を土壌に散布して撹拌する工程、敷き均しおよび転圧を行う工程、前記転圧後、前記高分子化合物を含む水溶液を散布する工程を含み、高分子化合物が、アクリル酸・メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合物のマグネシウム塩とポリエチレンイミンとの複合体からなる高分子化合物である、土壌改良方法が開示されている。
また、特許文献2には、地盤中への硬化用薬液の注入作業に用いる機材の酸による腐食を抑えてその寿命を長くした地盤硬化方法を提供することを課題として、地盤中へ水溶液硬化用薬液を注入して該地盤を硬化させる方法において、硬化用薬液と共に腐食抑制剤を用い、水溶液硬化用薬液が、酸性シリカゾルとアルカリ性剤の水溶液であり、腐食抑制剤が、分子中に2個以上のアミノ基を有する重量平均分子量300~150000のポリアミン系化合物又はその塩である、地盤硬化方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-13102号公報
【文献】特開2002-155279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、有機物を含む土壌を用いた場合でも、ソイルセメントの圧縮強度を高めることができる、地盤の改良方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、有機物を含む土壌に、水硬性粉体、水、及び(A)下記一般式(A)で表される構成単位を有する重合体又はその塩〔以下、(A)成分という〕を混合する、地盤改良方法に関する。
【0008】
【化1】
[式中、R
1、R
2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基を表す。]
【0009】
また、本発明は、上記一般式(A)で表される構成単位を有する重合体又はその塩を含み、有機物を含む土壌と水硬性粉体及び水とを混合し、該土壌を固化する地盤改良方法に用いられる、地盤改良用添加剤に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、有機物を含む土壌を用いた場合でもソイルセメントの圧縮強度を高めることができる、地盤の改良方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
有機質土壌といった有機物を含む土壌を、セメントなどの水硬性粉体で改良する場合、土中に存在する有機物の一部が水硬性粉体に吸着してその水和反応を阻害し、著しい強度発現の低下を引き起こす場合がある。例えば、セメントなどの水硬性粉体、水、有機物を含む土壌が混合されたスラリー中では、有機物を含む土壌中の有機物はカルボン酸基等のアニオン性官能基を介して水硬性粉体表面のカルシウムイオンに吸着する。
上記(A)成分は、有機物を含む土壌中の有機物のアニオン性官能基と電気的に結合・封鎖し、さらに高分子鎖の絡まりによって有機物を凝集させ、水硬性粉体への接触面積を低下させることで、水硬性粉体表面への有機物の吸着を抑制すると考えられる。
一方で、ポリエチレンイミンなど、シスジアミン基などをもつカチオン性高分子はキレート作用によって水硬性粉体にも吸着してしまい、水硬性粉体の水和反応が抑制され圧縮強度が低下する。そこで、シスジアミン基がなく、セメントに吸着し難い構造を有するカチオン性高分子である(A)成分を用いることで、水硬性粉体の水和反応を抑制することなく、圧縮強度の高い硬化体が得られるものと考えられる。なお、本発明は、当該作用機構に限定されるものではない。
【0012】
<地盤改良方法>
本発明は、有機物を含む土壌に、水硬性粉体、水、及び(A)上記一般式(A)で表される構成単位を有する重合体又はその塩〔以下、(A)成分という〕を混合する、地盤改良方法を提供する。一般式(A)で表される構成単位は、窒素原子がカチオン化しアニオンと塩を形成しても良い。塩としては、塩酸塩、酢酸塩、アミド硫酸塩などが挙げられる。すなわち、(A)成分は、上記一般式(A)で表される構成単位を有する重合体〔以下、(A)成分という〕又はその塩であってよい。
本発明の地盤改良方法は、地中に硬化体を形成して、地盤を強化する地盤改良方法であってよい。
【0013】
一般式(A)中、R1、R2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1以上3以下のアルキル基である。R1、R2は、それぞれ、圧縮強度が高い硬化体を得る観点から、水素原子又は炭素数1以上2以下のアルキル基が好ましく、水素原子又は炭素数1のアルキル基がより好ましく、水素原子が更に好ましい。
一般式(A)中、R1、R2の組み合わせは、上記のR1、R2から選択される任意の組み合わせであってよいが、圧縮強度が高い硬化体を得る観点から、水素原子と水素原子の組み合わせ、水素原子と炭素数1のアルキル基の組み合わせ又は炭素数1のアルキル基と炭素数1のアルキル基の組み合わせが好ましく、水素原子と水素原子の組み合わせがより好ましい。
【0014】
(A)成分は、一般式(A)で表される構成単位以外の構成単位(X)(以下、その他の構成単位(X)という)を有してもよい。
その他の構成単位(X)としては、下記の一般式(X1)、一般式(X2)、一般式(X3)及び一般式(X4)から選ばれる1種以上が挙げられる。
(A)成分の全構成単位中、一般式(A)で表される構成単位の割合は、土壌中の有機物をより少ない添加量で凝集させる観点から、例えば、85モル%以上、更には90モル%以上、更には95モル%以上であってよく、そして、100モル%以下であってよい。(A)成分の全構成単位中、一般式(A)で表される構成単位の割合は、100モル%であってよい。
【0015】
【0016】
【化3】
[式中、R
3、R
4、R
5は、それぞれ独立に、炭素数1~3のアルキル基を表す。X
-は、塩素イオン、酢酸イオン及びアミド硫酸イオンから選択される1種以上の陰イオンである。]
【0017】
【化4】
[式中、R
6は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。]
【0018】
【化5】
[式中、R
7は、水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表す。X
-は、塩素イオン、酢酸イオン及びアミド硫酸イオンから選択される1種以上の陰イオンである。]
【0019】
(A)成分の重量平均分子量は、土壌中の有機物をより少ない添加量で凝集させる観点から、重量平均分子量が、好ましくは800以上、より好ましくは1,000以上、更に好ましくは3,000以上であり、そして、有機物を含む土壌、水硬性粉体、水が混合されたスラリーの流動性を確保する観点から、好ましくは30,000以下、より好ましくは20,000以下、更に好ましくは15,000以下である。(A)成分の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定された値である。
【0020】
(A)成分の重量平均分子量は、下記条件におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定される。
<GPC条件>
・カラム:G4000PWXL+G2500PWXL(東ソー(株)製)
・溶離液:0.2Mリン酸緩衝液/アセトニトリル=7/3(体積比)
・標準物質:分子量既知の単分散ポリエチレングリコール
【0021】
(A)成分は、有機物を含む土壌、水硬性粉体、水が混合された改良体の強度を向上する観点からポリアリルアミン又はその塩が好ましい。(A)成分のポリアリルアミン又はその塩は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、ニットーボーメディカル株式会社製「PAA(登録商標)-HCL」シリーズ等が挙げられる。
【0022】
水硬性粉体は、水和反応により硬化する物性を有する粉体のことであり、例えば、セメント、石膏等が挙げられる。
水硬性粉体は、セメントが好ましい。セメントは、例えば、普通ポルトランドセメント等のポルトランドセメント、ビーライトセメント、高炉スラグセメント、中庸熱セメント、早強セメント、超早強セメント、耐硫酸塩セメント等のセメントである。水硬性粉体には、セメント、好ましくはポルトランドセメントを、水硬性粉体中、好ましくは25質量%以上、より好ましくは35質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは92質量%以下、更に好ましくは90質量%以下、より更に好ましくは85質量%以下含有することができる。
【0023】
また、水硬性粉体は、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカフュームなどのポゾラン作用及び/又は潜在水硬性を有する粉体や、石粉(炭酸カルシウム粉末)を含有することができる。セメントに、これらが添加された高炉スラグセメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等でもよい。水硬性粉体は、水和生成物であるエトリンガイトのアルミニウムイオン供給源の観点から、高炉スラグを含有することが好ましい。水硬性粉体が高炉スラグを含有する場合、その含有量は、水硬性粉体中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%未満である。
【0024】
なお、本発明では、水硬性粉体の量は、水和反応により硬化する物性を有する粉体の量、例えばセメントや石膏の量であるが、水硬性粉体が、ポゾラン作用を有する粉体、潜在水硬性を有する粉体、及び石粉(炭酸カルシウム粉末)から選ばれる粉体を含む場合、本発明では、それらの量も水硬性粉体の量に算入する。
【0025】
水は、水道水、湖沼水、河川水、地下水などを用いることができる。
【0026】
有機物を含む土壌としては、例えば、黒ボク土、泥炭土などが挙げられる。有機物は、腐植、フミン酸、フルボ酸、ヒューミン、ビチューメンの他、植物由来のセルロースやリグニンであってよい。
有機物を含む土壌は、強熱減量法によって求められる有機質分量が、本発明の効果を顕著に発揮させる観点から、土壌中、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは35%以上、より更に好ましくは40%以上、そして、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下であるものが挙げられる。ここで、強熱減量法とは日本工学規格JIS A 1226:2009で規定される方法である。
【0027】
本発明の地盤改良方法について、詳細に説明する。なお、本発明の地盤改良方法は、下記の態様に限定されるものではない。
【0028】
本発明の地盤改良方法は、水硬性粉体と水と(A)成分とを混合し水硬性スラリーを得る工程1と、有機物を含む土壌と水硬性スラリーとを混合し、前記土壌と水硬性スラリーとの混合物を得る工程2と、前記土壌と水硬性スラリーとの混合物を養生する工程3と、を有する。前記土壌と水硬性スラリーとの混合物は、ソイルセメントであってよい。
【0029】
工程1では、土壌中の有機物の凝集を強固にする観点から、(A)成分を、水硬性スラリーの混合成分中、好ましくは0.0125質量%以上、より好ましくは0.025質量%以上、更に好ましくは0.04質量%以上、そして、スラリーの増粘、すなわち施工性の低下を防ぐ観点から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、より更に好ましくは0.8質量%以下混合することができる。(A)成分が塩の場合の質量は、未中和品(塩を形成していない)に換算する。
【0030】
また、ソイルセメントの硬化体の強度を確保する観点から、水硬性粉体を、水硬性スラリーの混合成分中、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、スラリーの粘性を施工可能な範囲内に維持する観点から、好ましくは75質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下混合することができる。
【0031】
(A)成分は、有機物の凝集を強固にする観点から、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、そして、ソイルセメントの硬化体の強度を確保する観点から、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1.2質量部以下、より更に好ましくは1質量部以下混合することができる。
【0032】
水硬性スラリーの水(W)の混合量と水硬性粉体(C)の混合量の質量比率〔(W)/(C)〕は、スラリーの粘性を低く維持し、施工性を確保する観点から、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.55以上、そして、ソイルセメントの硬化体の強度を確保する観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下、更に好ましくは2以下、更に好ましくは0.8以下である。
【0033】
工程2では、水硬性スラリーと有機物を含む土壌とを混合する。
工程2では、様々な種類・物性の土壌の影響を受けつつも所望の改良強度を得る観点から、水硬性粉体を、土壌1m3に対して、好ましくは100kg以上、より好ましくは200kg以上、更に好ましくは300kg以上、そして、好ましくは800kg以下、より好ましくは700kg以下、更に好ましくは600kg以下で用いることができる。
工程2では、土壌1m3に対する水硬性粉体の質量が、上記範囲となるように、土壌と水硬性スラリーとを混合することが好ましい。
また、工程2における、有機物を含む土壌の混合量は、改良強度の向上効果を得る観点から、水硬性粉体100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは25質量部以上であり、そして、所望の改良強度を得る観点から、好ましくは65質量部以下、より好ましくは55質量部以下、更に好ましくは45質量部以下である。水硬性粉体100質量部に対する有機物を含む土壌の混合量が上記範囲となるように、土壌と水硬性スラリーとを混合することができる。
なお、本発明において改良強度とは、水硬性スラリーと土壌との混合物の硬化体の強度であってよい(以下、同様である。)。
【0034】
また、工程2では、土壌中の有機物をより凝集させる観点から、土壌100質量部に対する(A)成分の混合量が、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは1.0質量部以上、そして、セメントの水和反応を良好に行う観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下となるように、土壌と水硬性スラリーとを混合することができる。
【0035】
工程3では、有機物を含む土壌と水硬性スラリーとの混合物を養生し、有機物を含む土壌と水硬性スラリーとの混合物の硬化体を得る。
養生温度は、所望の改良強度を得る観点から、好ましくは15℃以上、より好ましくは18℃以上、そして、好ましくは40℃以下、より好ましくは30℃以下である。養生期間は、前記硬化体が容易に変形しない強度を得る観点から、1日以上が好ましく、3日以上がより好ましく、前記観点に加えて所望の改良強度を得る観点から、7日以上が更に好ましく、28日以上が更に好ましい。
【0036】
本発明の地盤改良方法は、例えば、セメント系固化材を用いた各種浅層、中層、深層混合処理工法に好ましく適用することができ、安定した地盤強化を行うことができる。具体的な工法としては、DCS工法、CDM工法、ジェットグラウト工法、パワーブレンダー工法などが挙げられる。
【0037】
<地盤改良添加剤>
本発明は、上記一般式(A)で表される構成単位を有する重合体〔(A)成分である。〕を含み、有機物を含む土壌と水硬性粉体及び水とを混合し、該土壌を固化する地盤改良方法に用いられる、地盤改良用添加剤を提供する。
本発明の地盤改良用添加剤は、前記土壌と水硬性組成物と水を混合した混合物を固化させ、土壌改良体を形成する際に、該混合物に混合される、土壌改良体用の地盤改良用添加剤であってよい。
(A)成分は、上記地盤改良方法で説明した(A)成分と同様である。
本発明の地盤改良用添加剤は、有機物を含む土壌と水硬性粉体及び水とを混合し、該土壌を固化する地盤改良方法に用いられる地盤改良用添加剤であってよい。また、本発明の地盤改良用添加剤は、水硬性粉体と水とを混合した水硬性スラリーであって、有機物を含む土壌と混合される地盤改良用水硬性スラリー用添加剤であってよい。
【0038】
<水硬性組成物用粉末組成物>
本発明は、上記一般式(A)で表される構成単位を有する重合体〔(A)成分である。〕、及び水硬性粉体を含有する、水硬性組成物用粉末組成物を提供する。本発明の水硬性組成物用粉末組成物は、土壌改良用固化材であってよい。
また、本発明の水硬性組成物用粉末組成物は、水硬性組成物用プレミックスであってよい。
本発明の水硬性組成物用粉末組成物は、有機物を含む土壌に混合され、該土壌を硬化させる地盤改良方法に用いられる組成物であってよい。すなわち、本発明の水硬性組成物用粉末組成物は、土壌改良体用の水硬性組成物用粉末組成物であってよい。
本発明の水硬性組成物用粉末組成物における、(A)成分及び水硬性粉体の好ましい態様は、上記本発明の地盤改良方法で述べたものと同じである。
【0039】
<水硬性組成物用粉末組成物の組成及びその他成分>
本発明の水硬性組成物用粉末組成物は、(A)成分を、有機物を強固に凝集させる観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上、そして、セメントの水和反応を良好に行う観点から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.2質量%以下、更により好ましくは1質量%以下含有することができる。
【0040】
本発明の水硬性組成物用粉末組成物は、ソイルセメントの硬化体の強度を確保する観点から、水硬性粉体を、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、そして、水硬性組成物用粉末組成物をスラリー化した際の粘性調整用に水硬性粉体以外の粉体が添加される観点から、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下含有することができる。
【0041】
本発明の水硬性組成物用粉末組成物中、(A)成分の含有量は、有機物を強固に凝集させる観点から、水硬性粉体100質量部に対し、好ましくは0.05質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上、そして、セメントの水和反応を良好に行う観点から、好ましくは3質量部以下、より好ましくは2質量部以下、更に好ましくは1.2質量部以下、更に好ましくは1質量部以下である。
【0042】
本発明の水硬性組成物用粉末組成物は、任意に、セメント分散剤、遅延剤、消泡剤を含有することができる。
【0043】
<水硬性スラリー>
本発明は、上記一般式(A)で表される構成単位を有する重合体〔(A)成分である。〕、水硬性粉体及び水を含有する、水硬性スラリーを提供する。
本発明の水硬性スラリーは、前記本発明の水硬性組成物用粉末組成物と、水とを含む水硬性スラリーであってよい。
本発明の水硬性スラリーは、当該水硬性スラリーと土壌とを混合した混合物(ソイルセメント)を固化させ、土壌改良体を形成する、土壌改良体用の水硬性スラリーであってよい。
本発明の水硬性スラリーの好ましい態様は、前記地盤改良方法で述べた水硬性スラリーと同じである。また、水硬性スラリーは、上記本発明の水硬性組成物用粉末組成物で述べた任意成分を含有することができる。
【実施例】
【0044】
<実施例1~3、比較例1、3及び基準>
(1)水硬性スラリーの調製
表1~3に示す割合で、表1~3に示す(A)成分(ポリアリルアミン塩酸塩、ニットーボーメディカル社製)と水とを混合し、更に普通セメント(太平洋セメント社製の普通セメントと住友大阪セメント社製の普通セメントを質量比で50/50の割合で配合した配合品)を混合して水硬性スラリーを調製した。(A)成分と水は、目視で均一透明になるまでガラス棒にて攪拌した。また、(A)成分を含む水と普通セメントとの混合物は、ハンドミキサーで30秒攪拌した。水硬性スラリーは、普通セメント(C)100質量部に対する(A)成分の質量部が、表1~3に示す質量部となるように調製した。なお、表1の地盤改良用添加剤には、便宜上、(A)成分の比較成分であるポリエチレンイミンも同じ欄に記載されている。また、表3では、泥炭の混合量が同じソイルセメントをそれぞれ試験群A~Dとして調整した。そして、各試験群A~Dでは、(A)成分を混合した実施例3-1~3-4と、(A)成分を混合しない比較例3-1~3-4を調整した。表3の参考例は、泥炭の混合量が0の場合、すなわち、水硬性スラリーのみでの評価である。
【0045】
(2)圧縮強度の測定
(2-1)供試体の作製
有機物を含む土壌(北海道石狩市で採取した泥炭土(有機物含量は66.4%))に、上記(1)で調製した水硬性スラリーを混合し、ソイルセメントを作製した。ソイルセメントの混合は、モルタルホバートミキサーを使用し30秒の条件で行った。その際、水硬性スラリーは、普通セメント(C)100質量部に対する泥炭の質量部が表に示す質量部となるように用いた。
ソイルセメントを、直ちに型枠(直径50mm×高さ100mm)に充填した。充填は、テーブルバイブレータで15秒の2層詰めとした。供試体は2本作製した。
(2-2)硬化体の強度の測定
ソイルセメントを充填した型枠を、養生するために20±2℃で静置し、28日後に脱型し、得られた硬化体(地盤改良体)の強度を、JIS A 1216 土の一軸圧縮試験方法に準じて測定した。圧縮強度の測定結果を表1~3に示す。また、表3では、各試験群A~Dにおいて、実施例の硬化体の強度と比較例の硬化体の強度の強度比(実施例/比較例)を算出した。この強度比より(A)成分を含むソイルセメントの硬化体は、(A)を含まないソイルセメントの硬化体と比較して、強度がより向上することがわかる。
【0046】
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