IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライオン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-歯ブラシ 図1
  • 特許-歯ブラシ 図2
  • 特許-歯ブラシ 図3
  • 特許-歯ブラシ 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A46B 5/00 20060101AFI20250407BHJP
【FI】
A46B5/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021567123
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2020044832
(87)【国際公開番号】W WO2021131553
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-07-03
(31)【優先権主張番号】P 2019237178
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】川崎 静香
(72)【発明者】
【氏名】蜂須賀 良祐
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】意匠登録第1596198(JP,S)
【文献】国際公開第2018/079114(WO,A1)
【文献】特開平09-182625(JP,A)
【文献】特開2002-199937(JP,A)
【文献】国際公開第2017/155039(WO,A1)
【文献】特表平11-511998(JP,A)
【文献】特表平04-505563(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2016-0003092(KR,U)
【文献】実開昭61-196631(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A46B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長軸方向に沿ってハンドル部と、前記ハンドル部の先端から延長されたネック部と、前記ネック部の先端に位置するヘッド部とが設けられたブラシ本体を備え、
前記ヘッド部の植毛面に形成された複数の植毛穴に毛束が植設された歯ブラシであって、
前記ブラシ本体は、前記ヘッド部から前記ハンドル部に向かって前記ネック部の厚みが連続的に増加する形状を有し、
前記ヘッド部の最大厚さは、2.0mm以上、4mm未満であり、
前記ブラシ本体を側面視したときの前記植毛面側に、前記植毛面から連続して後端側に直線状に延びる第1直線領域と、前記植毛面側に曲率中心を有し前記第1直線領域の後端に位置する第1変曲点から前記後端側に円弧状に延びる第1曲線領域と、前記植毛面側とは逆側の背面側に曲率中心を有し前記第1曲線領域の後端に位置する第2変曲点から前記後端側に円弧状に延びる第2曲線領域とを有し、
前記側面視における前記背面側において、前記ヘッド部の背面から連続して後端側に直線状に延びる第2直線領域と、
前記植毛面側に曲率中心を有し前記第2直線領域の後端に位置する第3変曲点から前記後端側に円弧状に延びる第3曲線領域とを有し、
前記背面側に曲率中心を有し前記第3曲線領域の後端に位置する第4変曲点から前記後端側に円弧状に延びる第4曲線領域を有し、
前記第1曲線領域の曲率半径をR1とし、前記第2曲線領域の曲率半径をR2とし、前記第3曲線領域の曲率半径をR3とし、前記第4曲線領域の曲率半径をR4としたときに、R1<R3、R2<R4の関係を満足し、
前記第2曲線領域の曲率半径の曲率中心は、前記第4曲線領域の曲率半径の曲率中心よりも前記ヘッド部側に位置し、
前記複数の植毛穴のうち、前記側面視において、最も後端側に位置する前記植毛穴の後端側縁部と、二番目に後端側に位置する前記植毛穴の後端側縁部とを通る仮想線に対して、前記側面視における最も後端側に位置する前記植毛穴の後端側縁部と前記第2変曲点とを通る直線とが交差する角度で表される前記ネック部の傾斜角度は、9°以上、25 °以下であり、
前記側面視における前記植毛面側の前記ハンドル部と前記仮想線との距離が最も長い前記長軸方向の位置は、前記ハンドル部の前記長軸方向の中央よりも先端側に位置し、
前記ハンドル部が最大厚さとなる前記長軸方向の位置は、前記ハンドル部の前記長軸方向の中央よりも先端側に、前記第2曲線領域と前記第4曲線領域に跨って存在することを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記ネック部の最小厚が3.0~4.0mmの前記長軸方向の長さは5mm以上である、
請求項1に記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記ネック部と前記ハンドル部との境界における断面形状は楕円形状である、
請求項1または2に記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記ネック部の前記長軸方向の長さは、25mm以上、45mm以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記ヘッド部と前記ネック部との境界付近で一旦背面側に反る形状を有しないことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項の歯ブラシ。
【請求項6】
前記ヘッド部の先端側は、前記側面視において前記仮想線に対して前記植毛面側に5°以上、15°以下の角度で傾斜している、
請求項1から5のいずれか一項に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯ブラシに関する。
本願は、2019年12月26日に、日本に出願された特願2019-237178号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
う蝕、歯周病の予防には、歯ブラシを使用したブラッシングによる口腔内のプラーク除去が重要である。通常の歯ブラシでは届きにくい奥歯の奥(奥歯の咽喉側)まで用毛を届かせることができる歯ブラシとしては、例えば、ヘッド部の先端側の植毛部にタフト部を設けることで奥歯に毛先が届きやすいものが市販されている。
【0003】
また、特許文献1には、円弧中心が植毛面側に位置し、側面視で植毛面側が凹となる円弧輪郭の曲面が、植毛面側および背面側の双方に形成されたネック部を有する歯ブラシが開示されている。特許文献1に開示された歯ブラシは、上記曲面を有することにより、最後臼歯への挿入性や操作性が高められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/079114号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した先端側の植毛部にタフト部を設けた市販の歯ブラシでは、歯面をブラッシングする際にタフト部のみが当たってしまうことから、歯面の広い領域をブラッシングしづらいという問題があった。
【0006】
特許文献1に開示された歯ブラシは、背面側のネック部の形状が、ヘッド部とネック部の境界付近で一旦背面側に反った後に植毛面側に反るS字形状の歯ブラシであることから、口腔内の奥歯の奥に挿入した時にネック部の背面側が頬に当接して使用感を低下するおそれがあり、より使用感に優れた歯ブラシが求められた。また、ヘッド部から延在するネック部が太いと口腔内に挿入する際に唇を大きく開く必要が生じてしまい操作性が低下する。
【0007】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、挿入性および操作性に優れた歯ブラシを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に従えば、長軸方向に沿ってハンドル部と、前記ハンドル部の先端から延長されたネック部と、前記ネック部の先端に位置するヘッド部とが設けられたブラシ本体を備え、前記ヘッド部の植毛面に形成された複数の植毛穴に毛束が植設された歯ブラシであって、前記ブラシ本体は、前記ヘッド部から前記ハンドル部に向かって前記ネック部の厚みが連続的に増加する形状を有し、前記ヘッド部の最大厚さは、2.0mm以上、4mm未満であり、前記ブラシ本体を側面視したときの前記植毛面側に、前記植毛面から連続して後端側に直線状に延びる第1直線領域と、前記植毛面側に曲率中心を有し前記第1直線領域の後端に位置する第1変曲点から前記後端側に円弧状に延びる第1曲線領域と、前記植毛面側とは逆側の背面側に曲率中心を有し前記第1曲線領域の後端に位置する第2変曲点から前記後端側に円弧状に延びる第2曲線領域とを有し、前記複数の植毛穴のうち、前記側面視において、最も後端側に位置する前記植毛穴の後端側縁部と、二番目に後端側に位置する前記植毛穴の後端側縁部とを通る仮想線に対して、前記側面視における最も後端側に位置する前記植毛穴の後端側縁部と前記第2変曲点とを通る直線とが交差する角度で表される前記ネック部の傾斜角度は、8°以上、25 °以下であることを特徴とする歯ブラシが提供される。
【0009】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記側面視における前記背面側において、前記ヘッド部の背面から連続して後端側に直線状に延びる第2直線領域と、前記植毛面側に曲率中心を有し前記第2直線領域の後端に位置する第3変曲点から前記後端側に円弧状に延びる第3曲線領域とを有することを特徴とする。
【0010】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記側面視における前記背面側において、前記背面側に曲率中心を有し前記第3曲線領域の後端に位置する第4変曲点から前記後端側に円弧状に延びる第4曲線領域を有することを特徴とする。
【0011】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記ネック部の最小厚が3.0~4.0mmの前記長軸方向の長さは5mm以上であることを特徴とする。
【0012】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記ネック部と前記ハンドル部との境界における断面形状は楕円形状であることを特徴とする。
【0013】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記ネック部の前記長軸方向の長さは、25mm以上、45mm以下であることを特徴とする。
【0014】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記側面視における前記植毛面側の前記ハンドル部と前記仮想線との距離が最も長い前記長軸方向の位置は、前記ハンドル部の前記長軸方向の中央よりも先端側に位置することを特徴とする。
【0015】
また、上記本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記ヘッド部の先端側は、前記側面視において前記仮想線に対して前記植毛面側に5°以上、15°以下の角度で傾斜していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、挿入性、操作性に優れた歯ブラシを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態を示す図であって、歯ブラシ1の構成を示す側面図である。
図2】歯ブラシ1を植毛面5a側から見た正面図である。
図3】ヘッド部5を拡大した正面図である。
図4】ヘッド部5を拡大した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の歯ブラシの実施の形態を、図1乃至図4を参照して説明する。
なお、以下の実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせている。
【0019】
また、以下の説明では、後述するヘッド部5の植毛面5aが設けられた側を歯ブラシ1の正面側とし、ヘッド部5の植毛面5aが臨む側とは反対側を歯ブラシ1の背面側とする。加えて、植毛面5aと平行且つブラシ本体2の長さ方向に直交する方向を歯ブラシ1の幅方向とし、植毛面5aに直交する方向を歯ブラシ1の厚さ方向として説明する。また、ヘッド部5が設けられる側を先端側とし、ハンドル部3が設けられる側を後端側として説明する。
【0020】
図1は、歯ブラシ1の構成を示す側面図である。図2は、歯ブラシ1を植毛面5a側から見た正面図である。図3は、ヘッド部5を拡大した正面図である。図4は、ヘッド部5を拡大した側面図である。図2乃至図4においては、ブラシ40の図示を省略している。
【0021】
図1および図2に示すように、本実施形態の歯ブラシ1は、全体として長尺状に形成された樹脂成形体からなるブラシ本体2とブラシ40とを備えている。
【0022】
ブラシ本体2は、長軸方向に沿ってハンドル部3と、ハンドル部3の先端から延長されたネック部4と、ネック部4の先端に設けられたヘッド部5とが設けられている。長軸方向とは、後述する仮想線50が延びる方向である。歯ブラシ1では、ヘッド部5の植毛面5a~5dに植設された複数の毛束41により口腔内を清掃することが可能となっている。
【0023】
ブラシ本体2を構成する樹脂には、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂や、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂などを用いることが好ましい。その中でも、本発明における応力分散性と強度面でバランスの良いPP樹脂を用いることが好ましい。
【0024】
また、ブラシ本体2を構成する樹脂の曲げ弾性率(JIS K 7171)は、1000~2800MPaであることが好ましく、1200~2500MPaであることがより好ましく、1500~2000MPaであることが更に好ましい。
【0025】
(ブラシ本体の正面側の形状)
本実施形態の歯ブラシ1は、ブラシ本体2を側面視したときに、ブラシ本体2の正面側において、ヘッド部5の後端側(「ヘッド部5の後端側」については後述する)からハンドル部3側に向けて、ヘッド部5の植毛面5aから連続して後端側に直線状に延びる第1直線領域S1と、正面側に曲率中心を有し第1直線領域S1の後端に位置する第1変曲点P1から後端側に円弧状に延びる第1曲線領域E1と、背面側に曲率中心を有し第1曲線領域E1の後端に位置する第2変曲点P2から後端側に円弧状に延びる第2曲線領域E2とを有している。
【0026】
第1の変曲点P1は、ヘッド部5に位置している。第2の変曲点P2は、ネック部4とハンドル部3との境界を形成している。すなわち、第2の変曲点P2よりも後端側は、ハンドル部3である。ネック部4とハンドル部3との境界の第2の変曲点P2の詳細については後述する。
【0027】
(ブラシ本体の背面側の形状)
本実施形態の歯ブラシ1は、ブラシ本体2を側面視したときに、ブラシ本体2の背面側において、ヘッド部5の後端側からハンドル部3側に向けて、ヘッド部5の背面から連続して後端側に直線状に延びる第2の略直線領域S2と、正面側に曲率中心を有し第2直線領域S2の後端に位置する第3変曲点P3から後端側に円弧状に延びる第3曲線領域E3と、背面側に曲率中心を有し第3曲線領域E3の後端に位置する第4変曲点P4から後端側に円弧状に延びる第4曲線領域E4とを有している。第3の変曲点P3は、ヘッド部5に位置している。
【0028】
第4曲線領域E4は、ハンドル部3を把持した際に指が触れる部分である。第4曲線領域E4は、背面側に曲率中心を有する円弧状であり、背面側で凹形状に湾曲するため、指がハンドル部3にフィットするため、持ちやすさが向上し、奥歯の磨きやすさが向上する。
【0029】
第1曲線領域E1の曲率半径をR1とし、第2曲線領域E2の曲率半径をR2とし、第3曲線領域E3の曲率半径をR3とし、第4曲線領域E4の曲率半径をR4とすると、R1<R3、R2<R4の関係を満足することが好ましい。曲率半径R1としては、60mm以上、150mm以下であることが好ましい。曲率半径R2としては、50mm以上、100mm以下であることが好ましい。曲率半径R3としては、80mm以上、400mm以下であることが好ましい。曲率半径R4としては、70mm以上、200mm以下であることが好ましい。
【0030】
曲率半径R1としては、50~250mmが好ましく、60~200mmがより好ましく、60~150mmがさらに好ましい。
曲率半径R2としては、50~250mmが好ましく、60~200mmがより好ましく、50~100mmがさらに好ましい。
曲率半径R3としては、50~600mmが好ましく、60~500mmがより好ましく、80~400mmがさらに好ましい。
曲率半径R4としては、50~400mmが好ましく、60~300mmがより好ましく、70~200mmがさらに好ましい。
【0031】
ネック部4とハンドル部3との境界(P2)おける断面形状としては、略四角形、略多角形、真円形、楕円形であることが好ましく、楕円形状であることがさらに好ましい。上記形状であることで持ち替えやすさが低下して奥歯を磨く際の操作性が低下することになってしまう。
【0032】
ネック部4とハンドル部3との境界おける断面積は、20~80mmが好ましく、25~55mmがより好ましく、25~45mm以下であることがさらに好ましい。上記範囲内であることで、耐久性を確保することが可能になる。
【0033】
(ヘッド部)
ヘッド部5は、複数の毛束41により口腔内を刷掃する部分であり、略直方体状を為すと共に、角部が丸みを帯びた形状を有している。図1図4の本実施形態では、ヘッド部5は、後端側に位置し正面側に基準面となる植毛面5aを有する平板部51と、平板部51の先端側に位置する傾斜板部52とを有している。平板部51は、植毛面5aと、それとは反対側の背面とが互いに平坦な面を形成している。平板部51は、側面視において後述する仮想線50と略平行である。図1図4の本実施形態では、傾斜板部52を有しているが、傾斜板部52を有せずに平板部51のみで構成されていてもよい。
【0034】
傾斜板部52を有する場合、先端側に向かうに従って正面側(すなわち、植毛面側)に向かう方向に傾斜していることが好ましい。傾斜板部52が平板部51(側面視において仮想線50)に対して傾斜する角度としては、5°以上、15°以下の角度であることが好ましい。図1図4の本実施形態では、傾斜板部52が平板部51に対して傾斜する角度は、一例として、10°である。
【0035】
傾斜板部52が平板部51に対して傾斜することにより、ヘッド部5の先端の毛束41の毛丈が短くなり、ヘッド部5の後端の毛束40と比較して毛束が撓みにくくなることで毛腰が向上するため、奥歯の高い清掃実感が得られる。傾斜板部52の傾斜角度が5°~15°の範囲であることで奥歯の清掃実感に優れる。
【0036】
図3および図4に示すように、傾斜板部52は、高さの異なる三つの植毛面5b~5dを有している。各植毛面5b~5dは、植毛面5aと平行である。植毛面5b~5dは、傾斜板部52の傾斜に応じて、先端側に向けて順次高くなっている。また、図1に示すように、植毛面5b~5dに植設された毛束41の毛丈は、植毛面5aに植設された毛束40の毛丈と同等の高さである。
なお、植毛面5b~5dに植設された毛束41の毛丈は、植毛面5aに植設された毛束40の毛丈よりも低くても、または、高くてもよい。
【0037】
植毛面5a~5dには、同一径の植毛穴6が千鳥状に複数並んで配置されている。植毛穴6は、長軸方向で隣り合う列で半ピッチずれて配列される位置に設けられている。毛束は、複数本の刷毛(フィラメント)を束ねて二つ折りにし、その間に平線と呼ばれる金属製の抜止め具(図示せず)を挟んで植毛穴6に打ち込むことによって、各植毛穴6に植設されている。
【0038】
なお、植毛穴6は、格子状に複数並んで配置された構成に限らず、千鳥状に複数並んで配置された構成とすることも可能である。また、植毛穴6の内径は、植毛される毛束の本数と相関があるので、毛束の硬さや使用感に影響するが、植毛する際に用いる毛束の太さや毛丈によって使用感はある程度調整可能ではあるが、一般に、1.0~3.0mmの範囲が好ましい。
【0039】
植毛面5aに設けられた植毛穴6は、植毛面5aの法線方向に形成されている。植毛面5b~5dに設けられた植毛穴6は、それぞれ植毛面5b~5dの法線方向に対して、開口部が後端側に向く方向に、一例として、5°傾斜して形成されている。
【0040】
平線を用いて毛束41を折りたたんだ状態で植毛穴に打ち込んで植毛する際に、打ち込み方向に対して植毛面5a~5dが直交して配置されているため、安定して植毛することができる。また、打ち込み方向に対して植毛穴6が大きく傾斜している場合(傾斜板部52と直交する方向に傾斜している場合等)は、毛束41の打ち込みが不安定になる可能性があるが、植毛面5b~5dに設けられた植毛穴6は開口部が後端側に向く方向に5°傾斜する程度であるため、支障なく毛束41を打ち込むことができる。
【0041】
毛束41は、その刷毛の材質について特に限定されないものの、例えば、ポリアミド(例:6-12ナイロン、6-10ナイロン)、ポリエステル(例:ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート)、ポリオレフィン(例:ポリプロピレン)、エラストマー(例:オレフィン系、スチレン系)などの合成樹脂材料を挙げることができる。また、これらの樹脂材料を複数組み合わせて用いてもよく、例えば芯鞘構造などのように、芯部と鞘部で異なる樹脂材料を用いることもできる。
【0042】
また、毛束41を構成する刷毛としては、例えば、毛先に向かって漸次その径が小さくなり、毛先が先鋭化された用毛(テーパー毛)、植毛面5aから毛先に向かいその径がほぼ同一である用毛(ストレート毛)等が挙げられる。ストレート毛としては、毛先が植毛面5aに略平行な平面とされたものや、毛先が半球状に丸められたものが挙げられる。
植毛面5b~5dに植設された毛束41を構成する刷毛は、テーパー毛またはストレート毛が好ましい。
植毛面5aに植設された毛束40を構成する刷毛は、テーパー毛またはストレート毛が好ましい。
植毛面5a~5dのいずれかは、先端が毛切りカットされていてもよい。
【0043】
刷毛の横断面形状は、通常は円形であるが、そのような形状に限定されるものではなく、例えば、楕円形、三角形、四角形、六角形、星形、三つ葉のクローバー形、四つ葉のクローバー形など任意の形状とすることができる。
【0044】
毛束41の毛丈は、ヘッド部5の植毛面5aから、大人用で8mm~13mm、子供用で6mm~9mmとすることが好ましい。刷毛の太さ(最大径)は、口腔内の使用性や使用感の点から、0.12mm~0.26mmであることが好ましい。また、使用感や、刷掃感、清掃効果、耐久性など考慮して、太さの異なる複数本の刷毛を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0045】
毛束41の植毛方法としては、上述した刷毛の毛束を二つ折りにし、その間に平線を挟んで植毛穴6に植設する平線植毛法以外にも、毛束の下端をヘッド部5となる溶融樹脂中に圧入して固定する熱融着法や、毛束の下端を加熱して溶融塊を形成した後に、金型のキャビティ内に溶融樹脂を充填してヘッド部5と一体に成形するインモールド法などを用いることができる。
【0046】
ヘッド部5は、正面視において4つの頂部が曲線で隅切りされた略四角形の平板状の形状を有している。本実施形態において、ヘッド部5とネック部4との境界Oは、ヘッド部5の正面視形状における、ネック部4よりの隅切を形成する曲線の終点、すなわち、隅切を形成する曲線の曲がり方向が変化する位置である。したがって、ヘッド部5とネック部4との境界Oは、平面視でのヘッド部5におけるネック部4よりの隅切部分の幅が狭くなる両縁を形成する曲線又は直線から、幅が広がる曲線に変化する位置である。
【0047】
なお、ヘッド部5は、口腔内を刷掃し易い形状や大きさであればよく、その形状について特に限定されるものではなく、例えば、その基端側から先端側に向かって漸次幅が狭くなる形状としてもよい。また、ヘッド部5は、その基端側から先端側に向かって漸次厚みが薄くなるテーパー形状であってもよく、ヘッド部5の背面側の中央部が盛り上がった丸みのある形状であってもよい。
【0048】
ヘッド部5における厚さは、2mm以上、4mm未満であることが好ましく、2.5~3.5mmであることがより好ましい。なお、ヘッド部5の厚さが一定でない場合、ヘッド部5の厚さは、ヘッド部5の最大厚さとして定義する。
ヘッド部5の厚さが2mm未満の場合、耐久性が低下する可能性がある。ヘッド部5の厚さが4mm以上の場合、奥歯への挿入性や操作性が低下する可能性がある。ヘッド部5の厚さを2mm以上、4mm未満とすることにより、耐久性が低下することなく、奥歯への挿入性や操作性を向上させることができる。
【0049】
(ネック部)
ネック部4は、ハンドル部3とヘッド部5との間を連結する部分である。
本実施形態では、正面視及び側面視におけるネック部4とハンドル部3との外形形状は、ヘッド部5とネック部4の境界Oからハンドル部3側に向けて緩やかな曲線が複数繋がった形状である。そして、側面視において、緩やかな曲線の曲がり方向が逆転する位置をネック部4とハンドル部3との境界とする。すなわち、図1の側面視において、正面側のネック部4の曲線が境界Oからハンドル部3側に向かい、正面側に曲率中心を有する第1直線領域S1の曲率中心が、背面側へ変化が開始する位置(第2変曲点P2)を、ネック部4とハンドル部3との境界とする。
【0050】
ネック部4の長軸方向の長さは、側面視における変曲点P2の位置と境界Oとの最短距離と定義する。
ネック部4の長さは25~45mmであることが好ましく、25~40mmであることがさらに好ましい。
ネック部4の長さを上記範囲とすることで、奥歯への挿入性および奥歯の清掃時の操作性を向上させることができる。
【0051】
ネック部4の断面形状は、略四角形、略多角形、真円形、楕円形であることが好ましく、楕円形状であることがさらに好ましい。厚さ方向が長径となる楕円状であることがより好ましい。
ネック部4の厚さは、先端側から後端側に向かって連続的に増加する。ネック部4の厚さが連続的に増加することにより、ネック部4の厚さが一定である場合と比較してネック部4の強度を大きくすることができる。また、ネック部4の厚さが先端側から後端側に向かって連続的に増加することにより、口腔内に挿入した際に口唇の開きが大きくならず、口腔内における操作性を確保することができる。加えて、歯磨時にネック部4に加わる応力集中の位置がヘッド部5側に設けられるため、後述するハンドル部3方向に応力を分散させる距離を十分に確保でき、ネック部4の撓み過ぎを抑制することができる。
【0052】
ネック部の最小厚さとしては3.0~4.0mmが好ましく、3.0~3.6mmがより好ましい。
ネック部の最小幅としては3.0~4.5mmが好ましく、3.5~4.2mmがより好ましい。
ネック部4の最小径としては、3.0~4.0mmが好ましく、3.0~3.6mmがより好ましい。
ネック部の最小厚さ、ネック部の最小幅およびネック部4の最小径が3.0mm未満の場合、ネック部4が撓みやすくなり、操作性が低下する可能性がある。ネック部の最小厚さ、ネック部の最小幅およびネック部4の最小径が4.0mmを超えると、口腔内での操作性が低下する可能性がある。
ネック部の最小厚さ、ネック部の最小幅およびネック部4の最小径を3.0mm以上、4.0mm以下とすることにより、操作性を確保することができる。
また、ネック部の最小厚さが3.0~4.0mmの長さは、5mm以上が好ましく、6mm以上がより好ましく7mm以上がさらに好ましい。
ネック部の最小幅が3.0~4.5mmの長さは、5mm以上が好ましく、6mm以上がより好ましく7mm以上がさらに好ましい。
ネック部の最小径が3.0~4.0mmの長さは、5mm以上が好ましく、6mm以上がより好ましく7mm以上がさらに好ましい。
上記範囲であることで、奥歯の奥への挿入性と操作性を向上させることができる。
【0053】
上述のように、側面視におけるネック部4の正面側を形成する第1曲線領域E1と、側面視におけるネック部4の背面側を形成する第3曲線領域E3とがいずれも正面側に曲率中心を有する円弧状であるため、歯列の曲線に沿うことになり奥歯の頬側を磨く際の挿入性を向上させることができる。
【0054】
ネック部4の傾斜角度θは、側面視における最も後端側に位置する植毛穴6の後端側縁部と第2変曲点P2とを通る直線と、図1に示す仮想線50とが交差する角度で表される。仮想線50は、側面視において、最も後端側に位置する植毛穴6の後端側縁部Q1と、二番目に後端側に位置する植毛穴6の後端側縁部Q2とを通る直線である。Q1とQ2は一般的な歯ブラシではヘッド部の後端側の植毛面と平行になる。
ネック部4の傾斜角度としては、8°以上、25°以下であることが好ましい。
【0055】
ネック部4の傾斜角度が8°未満の場合、奥歯の頬側を磨く際に、口唇を横に大きく開く必要があり挿入性や操作性が低下する可能性がある。ネック部4の傾斜角度が25°を超える場合、磨く箇所を変更する際に、手首を大きく曲げる動作が必要なため奥歯を磨く際の操作性が低下する可能性がある。ネック部4の傾斜角度を8°以上、25°以下とすることにより、奥歯の頬側を磨く際の挿入性や操作性と、磨く箇所を変更する際の操作性とを確保することができる。
【0056】
側面視における第2の変曲点P2と仮想線50との最短距離としては、5mm以上、15mm以下であることが好ましく、8mm以上、12mm以下であることがより好ましい。これにより、S字形状を確保することができ、口腔内挿入性と使用感を向上することができる。
側面視における第2の変曲点P2と対向する「背面側のP2’」と仮想線50との最短距離としては、1mm以上、3mm以下であることが好ましく、1.5mm以上、3mm以下であることがより好ましい。これにより、S字形状を確保することができ、口腔内挿入性と使用感を向上することができる。
【0057】
前述の通り、特許文献1に開示された歯ブラシは、背面側のネック部の形状が、ヘッド部とネック部の境界付近で一旦背面側に反った後に植毛面側に反るS字形状の歯ブラシであることから、口腔内に挿入した時にネック部の背面側が頬に当接して使用感を低下するおそれがあった。一方、本実施形態では、図1に示すように、側面視におけるヘッド部とネック部の背面側の形状は、第3変曲点から正面側に湾曲して、正面側に曲率中心を有する第3の曲線領域E3を形成している。すなわち、ヘッド部とネック部の境界付近で一旦背面側に反る形状を有していない。そのため、口腔内に挿入した時に、ネック部の背面側の頬への当接を軽減し、使用感を向上させることができる。
さらに、ヘッド部5の厚さを2~4mmと薄くするとともに、ネック部の厚さ、幅、径を3.0~4.5mmと細くして、その長軸方向の長さを5mm以上とすることで、挿入性と使用感と操作性をより一層向上することができる。
加えて、ネック部4の長さを25~45mmと短くしても、第1直線領域S1と、正面側に曲率中心を有する第1曲線領域E1と、背面側に曲率中心を有する第2曲線領域E2が、変曲点P1、P2により緩やかな曲線で繋がることで、さらに使用感と操作性を向上させることができる。
【0058】
(ハンドル部)
ハンドル部3は、使用者が把持する部分であり、長尺柱状に形成されている。このハンドル部3を把持して使用するのに十分な長さを確保するため、正面視における境界Oからハンドル部3の後端までの長さを100~200mmとすることが好ましい。
【0059】
本実施形態において、ハンドル部3は、ブラシ本体2を側面視したときに、その先端側(第2変曲点P2側)から後端側に向かって厚さ(第2曲線領域E2と第4曲線領域E4との距離)が連続的に増加し、最大厚さに至った後に、その後端側に向かうに従い厚さが減少する形状を有している。
【0060】
なお、ハンドル部3において、最大厚さとなる箇所が複数存在する場合は、最もネック部4側に位置する箇所をハンドル部3の最大厚さとなる箇所と一義的に定義するものとする。図1において、ハンドル部3の最大厚さとなる箇所はハンドル部3Amaxである。
【0061】
ハンドル部3は、側面視における正面側の面と、仮想線50との距離が最も長い長軸方向の位置P11(すなわち、側面視において仮想線50に対して位置P11は最大の高さとなる)は、ハンドル部3の長軸方向の中央よりも先端側のハンドル部3Aに位置する。すなわち、ハンドル部3の長軸方向の長さの中央位置よりも、ヘッド部先端側の位置に位置P11を有する。側面視において位置P11を境界に、ヘッド部先端側をハンドル部3A,ハンドル部後端側をハンドル部3Bとする。ハンドル部3においては、側面視における正面側の面の位置が毛束41の先端の位置に近いことが、毛先の細かな制御のために好ましい。
【0062】
ここで、位置P11は、仮想線50との距離が毛束41の先端よりも長い。一方、ハンドル部3(ハンドル部3A)の先端となる第2変曲点P2は、仮想線50との距離が毛束41の先端よりも短い。また、ハンドル部3(ハンドル部3B)の後端は、仮想線50との距離が毛束41の先端よりも長い。すなわち、ハンドル部3の正面側の面は、位置P11と第2変曲点P2との間の領域が、毛束41の先端の位置に対する変化が大きいのに対して、位置P11と後端との間の領域は、毛束41の先端の位置に対する変化が小さく毛先の細かな制御に適している。そのため、位置P11がハンドル部3Aに位置することにより、毛先の細かな制御に適した領域が長くなり、ハンドル部3の後端側を把持した場合でも奥歯を容易に磨くことができる。
【0063】
側面視におけるハンドル部3の正面側の面の位置P11と仮想線50との最短距離としては、20mm以上、32mm以下であることが好ましく、22mm以上、26mm以下であることがより好ましい。
位置P11と仮想線50との距離が20mm未満の場合、または、位置P11と仮想線50との距離が32mmを超えた場合、ハンドル部3の後端において、側面視における正面側の面の位置が毛束41の先端から大きく離れてしまい毛先の制御性が低下する可能性がある。
側面視におけるハンドル部3の正面側の面の位置P11において、仮想線50と垂直方向に延在して位置P11と対向する背面側面との交点である位置P11’と、仮想線50との最短距離としては、8mm以上、12mm以下であることが好ましく、10mm以上、12mm以下であることがより好ましい。これにより、S字形状を確保することができ、口腔内挿入性と使用感を向上することができる。
【0064】
また、ハンドル部3の背面側は、ハンドル部の末端部まで仮想線50と交わらない形状であることが好ましい。
側面視における、ハンドル部の末端部側のハンドル部3Bの背面側の面と仮想線50との最短距離は8mm以上、20mm以下が好ましく、10mm以上、15mm以下が好ましい。
側面視における、ハンドル部の最末端部と仮想線50との最短距離は8mm以上、20mm以下が好ましく、12mm以上、18mm以下が好ましい。
これにより、S字形状を確保することができ、口腔内挿入性と使用感を向上することができる。
また、側面視における、境界Oと位置P11を結ぶ線分の最短距離は、70~110mmが好ましく、80~110mmがより好ましく、80~100mmがさらに好ましく、90~100mmが特に好ましい。
また、側面視における、変曲点P2と位置P11を結ぶ線分の最短距離は、40~80mmが好ましく、50~70mmがより好ましい。
【0065】
ハンドル部3の断面形状は、略四角形、略多角形、真円形、楕円形であることが好ましく、楕円形状であることがさらに好ましい。さらに幅方向を長径とする楕円状であることがより好ましい。
ハンドル部3における厚さは、ハンドル部3Aにおいて最大となる。ハンドル部3Aにおける最大厚さは、9mm以上、14mm以下であることが好ましく、10.5mm以上、12.5mm以下であることがより好ましい。
【0066】
また、ハンドル部3における幅は、ハンドル部3Aにおいて最大となる。ハンドル部3Aにおける最大幅は、11mm以上、16mm以下であることが好ましく、12.5mm以上、14.5mm以下であることがより好ましい。
これにより、ハンドル部3の把持性を良好なものとし、パームグリップなどによる優れた操作性を得ることができる。
ハンドル部3Aにおいて最大厚さおよび最大幅を有することが好ましい。これにより、S字形状を確保して口腔内挿入性と使用感を向上するとともに、ハンドル部3の把持性を良好なものとし、パームグリップなどによる優れた操作性を得ることができる。
側面視におけるハンドル部3の最大厚さとなる位置(ハンドル部3Amax)と仮想線50との最短距離としては、20mm以上、32mm以下であることが好ましく、22mm以上、26mm以下であることがより好ましい。
側面視におけるハンドル部3の最大厚さとなる位置(ハンドル部3Amax)において、仮想線50と垂直方向に延在してハンドル部3Amaxと対向する背面側の面との交点であるハンドル部3Amax‘と、仮想線50との最短距離としては、8mm以上、12mm以下であることが好ましく、10mm以上、12mm以下であることがより好ましい。これにより、S字形状を確保して口腔内挿入性と使用感を向上するとともに、ハンドル部3の把持性を良好なものとし、パームグリップなどによる優れた操作性を得ることができる。
【0067】
ハンドル部3の最大幅に対するハンドル部3の最大厚さの比率(ハンドル部3の最大厚さ/ハンドル部3の最大幅)は、0.6以上、1.3以下であることが好ましく、0.7以上、1.0以下であることがより好ましい。
【0068】
ヘッド部5の最大厚さに対するハンドル部3の最大厚さの比率(ハンドル部3の最大厚さ/ヘッド部5の最大厚さ)は、2.3以上、7.0以下であることが好ましく、2.8以上、4.2以下であることがより好ましい。
【0069】
ネック部4の最小厚さに対するハンドル部3の最大厚さの比率(ハンドル部3の最大厚さ/ネック部4の最小厚さ)は、2.0以上、5.6以下であることが好ましく、2.6以上、4.8以下であることがより好ましい。
【0070】
ハンドル部3における断面積は、ハンドル部3Aにおいて最大となる。ハンドル部3における断面積は、70mm以上、200mm以下であることが好ましく、90mm以上、150mm以下であることがより好ましい。
【0071】
本実施形態の歯ブラシ1では、第1の変曲点P1がヘッド部5に位置し、その後端側に第2の変曲点P2を有している。ブラシ本体2の側面視(図1)において、第1の変曲点P1と第2の変曲点P2を正面側(図2)でみたときの変曲点P1と変曲点P2を結ぶ最短距離は、28mm以上、40mm以下であることが好ましく、30mm以上、35mm以下であることがより好ましい。これにより、ヘッド部5からハンドル部3に向かってネック部4の厚みが連続的に増加する形状において、ヘッド部5とハンドル部3との間の表面を、ネック部4を介して滑らかな曲線で連続的に繋げることができる。また、ネック部4を全長に亘ってより細くした形状とすることができる。
【0072】
本実施形態の歯ブラシ1では、第1の変曲点P1がヘッド部5に位置し、その後端側に第2の変曲点P2を有している。ブラシ本体2の正面視において、第1の変曲点P1と第2の変曲点P2との間の距離は、28mm以上、45mm以下であることが好ましく、28mm以上、41mm以下がより好ましく、30mm以上、40mm以下であることがより好ましい。
これにより、ヘッド部5からハンドル部3に向かってネック部4の厚みが連続的に増加する形状において、ヘッド部5とハンドル部3との間の表面をネック部4を介して滑らかな曲線で連続的に繋げることができる。また、ネック部4を全長に亘ってより細くした形状とすることができる。
【0073】
本実施形態の歯ブラシ1では、薄いヘッド部5、細いネック部4及び太いハンドル部3を有するため、歯磨時にヘッド部5に負荷がかかると、先ず、正面側の第1の略直線領域S1を介して第1の変曲点P1に応力が集中する。第1の変曲点P1は、背面側の第2の略直線領域S2内に対向する位置にある。このため、第2の略直線領域S2では、この第1の変曲点P1において背面方向に受けた応力を分散しようと正面方向へ抗力(反発力)が働く。
【0074】
第1の変曲点P1で背面方向の応力集中が働いた場合、第1の変曲点P1と対向する領域が略直線形状(第2の略直線領域S2)であると、第2の略直線領域S2では、正面側に抗力が働く。そして、この抗力は第2の略直線領域S2と対向する正面側の第1の曲線領域E1に伝わる。
【0075】
また、ブラシ本体2の正面側に曲率中心を有する第1の曲線領域E1を設けると、第1の変曲点P1で背面方向の応力集中が働いた場合、その曲形状の性質から、正面側に抗力が働きやすい性質がある。加えて、第1の曲線領域E1の曲率半径が大きいほど、抗力が分散して伝わりやすくなる。
【0076】
また、ブラシ本体2の背面側に、正面側に曲率中心を有する第3の曲線領域E3を設けると、第3の変曲点P3に背面方向の応力が伝わった場合、その曲形状の性質から、第3の曲線領域E3では、正面側に抗力が働きやすくなる。加えて、第3の曲線領域E3の曲率半径が大きいほど、抗力が分散して伝わりやすくなる。
【0077】
ブラシ本体2の側面視において、第2の変曲点P2は、第3の曲線領域E3内に対向する位置にある。また、第1の曲線領域E1と第3の曲線領域E3とが、ブラシ本体2の正面側に曲率中心を有する形状から、第2の変曲点P2における抗力方向は正面側となる。ここで、正面側にブラシ本体2の背面側に曲率中心を有する第2の曲線領域E2を設けると、第2の変曲点P2で正面方向の抗力が働いた場合、その曲形状の性質から、背面側に抗力が働きやすい性質がある。加えて、第2の曲線領域E2の曲率半径が大きいほど、抗力が分散して伝わりやすくなる。
【0078】
本実施形態では、第2の変曲点P2で正面方向の抗力が働いた場合に、第2の曲線領域E2による背面方向の抗力が、より働きやすくなり、且つ、ハンドル部3の方向へ伝わり、応力分散ができる。加えて、第2の曲線領域E2では、第3の曲線領域E3からの正面方向の効力も伝わるので、働く抗力が正面側と背面側で打ち消し合い、より応力を分散できることも期待できる。本実施形態の歯ブラシ1では、ブラシ本体2の側面視における正面側と背面側の特徴的な形状によって、ネック部4への応力集中を回避し、ヘッド部5からハンドル部3までのブラシ本体2の全体で応力を分散させ、ネック部4の撓みを抑制することができる。
【0079】
ハンドル部3は、外周面の一部に被覆材8が設けられている。被覆材8は、軟質樹脂で形成されている。被覆材8は、後端側に向かうに従って、反時計回りに螺線状に設けられている。被覆材8は、ハンドル部3の外周面の全体を覆う構成であってもよい。
軟質樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー等のエラストマー樹脂、又はシリコーン樹脂等を用いることができる。
【0080】
ハンドル部3の外周面の一部に被覆材8が設けられていることにより、歯ブラシ1では、ハンドル部3を把持する際のグリップ性が向上し、奥歯を磨く際の操作性が向上する。
【0081】
以上のように、本実施形態の歯ブラシ1では、奥歯をブラッシングする際にも、挿入性、操作性および耐久性に優れた歯ブラシを提供することが可能になる。
【0082】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【実施例
【0083】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0084】
(実施例1~4、比較例1~3)
本実施例では、下記表1に示す仕様に従って、実施例1~4、比較例1~3の歯ブラシを作製した。
図1及び図1と同様の歯ブラシを作製した。
各例の歯ブラシのハンドル体の全長は180mmであり、各部位は表1に示す寸法とした。
ヘッド部には、用毛(PBT製:7.5mil)23本を束ねて毛束とし、この毛束を図2に示す植毛パターンで植設して、植毛部を設けた。
【0085】
[口腔内での奥歯清掃時の操作性]
10人のモニターが口腔内を清掃し、各例の歯ブラシの操作性について評価した。
操作性の評価は、1点~7点の7段階とされ、操作性が良好であると感じたものほど、高い点数となっている。10人のモニターの平均点を下記判定基準に分類し、口腔内での操作性を判定した。
<判定基準>
◎◎(twin double-circle mark):平均点が6点以上。
◎(double-circle mark):平均点が5点以上6点未満。
〇(circle mark):平均点が4点以上5点未満。
△(triangle mark):平均点が3点以上4点未満。
×(cross mark):平均点が2点以上3点未満。
【0086】
[口腔内での奥歯清掃時の使用性]
10人のモニターが口腔内を清掃し、各例の歯ブラシを口腔内に挿入した時のネック部の背面側の頬への当接した感じの使用感について評価した。
操作性の評価は、1点~7点の7段階とされ、口腔内に挿入した時のネック部の背面側の頬への当接した感じが無く、挿入性が良好であると感じたものほど、高い点数となっている。
10人のモニターの平均点を下記判定基準に分類し、口腔内での操作性を判定した。
<判定基準>
◎◎:平均点が6点以上。
◎:平均点が5点以上6点未満。
〇:平均点が4点以上5点未満。
△:平均点が3点以上4点未満。
×:平均点が2点以上3点未満。
【0087】
【表1】
【0088】
[表1]に示されるように、ヘッド部の最大厚さが、2.0mm以上、4mm未満であり、ネック部の傾斜角度が、8°以上、25 °以下である実施例1~4の歯ブラシでは、奥歯清掃時の操作性および奥歯清掃時の使用感の両方で良好な結果が得られた。
【0089】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、歯ブラシに適用できる。
【符号の説明】
【0091】
1…歯ブラシ、 2…ブラシ本体、 3…ハンドル部、 4…ネック部、 5…ヘッド部、 5a~5d…植毛面、 6…植毛穴、 41…毛束、 50…仮想線、 E1…第1曲線領域、 E2…第2曲線領域、 E3…第3曲線領域、 E4…第4曲線領域、 P1…第1変曲点、 P2…第2変曲点、 P3…第3変曲点、 P4…第4変曲点、 S1…第1直線領域、 S2…第2直線領域、 θ…傾斜角度
図1
図2
図3
図4