(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】コネクタ、基板組立体
(51)【国際特許分類】
H01R 13/46 20060101AFI20250407BHJP
H01R 12/57 20110101ALI20250407BHJP
H01R 43/18 20060101ALI20250407BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
H01R13/46 B
H01R13/46 301B
H01R12/57
H01R43/18
B29C45/00
(21)【出願番号】P 2023005312
(22)【出願日】2023-01-17
【審査請求日】2024-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】高村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】横山 大悟
(72)【発明者】
【氏名】手塚 優太
(72)【発明者】
【氏名】岸端 裕矢
【審査官】山下 寿信
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-068976(JP,A)
【文献】特開2015-207520(JP,A)
【文献】特開2000-323858(JP,A)
【文献】特開2014-004761(JP,A)
【文献】特開2004-178425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/46
H01R 12/57
H01R 43/18
B29C 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端子と、これら複数の端子を保持したハウジングと、を備え、
前記ハウジングは、強化繊維を含んだ絶縁性の合成樹脂で構成されており、
前記ハウジングは、底壁、上壁、一対の側壁、後壁、及び、前面に形成された開口部を備えた箱状に形成され、
前記底壁、前記上壁、前記一対の側壁の少なくとも一つの外面に肉抜き凹部が形成され、
前記肉抜き凹部は、前記ハウジングの前後方向に延びてその後端部が前記後壁に達し、かつ、その前端部が前記前面に達しておらず、前記前端部が先細りテーパ形状となっている
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記底壁の外面に前記肉抜き凹部が複数形成され、これら複数の肉抜き凹部が平行に並べられている
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記上壁の内面に、相手コネクタに係止する係止突起が形成され、
前記肉抜き凹部は前記上壁の外面には形成されておらず、
前記上壁の外面に、第二肉抜き凹部が複数形成され、
前記複数の第二肉抜き凹部は、ハニカム形状の凹部と部分ハニカム形状の凹部とで構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記上壁が、前記ハウジングの前後方向を短手方向、前記一対の側壁の対向方向を長手方向とする長方形状であり、
前記一対の側壁の一方の外面が成形時のゲート位置とされている
ことを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載のコネクタと、プリント基板と、を備え、
前記コネクタが前記プリント基板に表面実装されている
ことを特徴とする基板組立体。
【請求項6】
前記肉抜き凹部の前端部が前記プリント基板の端よりも外側に位置付けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の基板組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ、及びコネクタがプリント基板に表面実装された基板組立体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一方向に開口した箱状のハウジングと、該ハウジングに保持された端子と、を備えたコネクタが知られている。このハウジングは、溶融樹脂が金型のキャビティ内に射出される射出成形により得られるものであり、射出成形時の収縮差や端子はんだ付け時の高温環境などによって反り・ヒケ等の変形が生じることがあった。
【0003】
このようなハウジングの変形を抑制する技術として、特許文献1には、箱状のハウジングの開口部周囲にフランジを形成することや、フランジに溶融樹脂の先走りを抑制する湯留めを形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された技術においては、フランジや湯留めを形成することでハウジングのサイズが大きくなってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、箱状のハウジングを備えたコネクタにおいて、ハウジングの大型化を抑制しつつ変形を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコネクタは、複数の端子と、これら複数の端子を保持したハウジングと、を備え、前記ハウジングは、強化繊維を含んだ絶縁性の合成樹脂で構成されており、前記ハウジングは、底壁、上壁、一対の側壁、後壁、及び、前面に形成された開口部を備えた箱状に形成され、前記底壁、前記上壁、前記一対の側壁の少なくとも一つの外面に肉抜き凹部が形成され、前記肉抜き凹部は、前記ハウジングの前後方向に延びてその後端部が前記後壁に達し、かつ、その前端部が前記前面に達しておらず、前記前端部が先細りテーパ形状となっていることを特徴とする。
【0008】
本発明の基板組立体は、前記コネクタと、プリント基板と、を備え、前記コネクタが前記プリント基板に表面実装されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ハウジングの大型化を抑制しつつ変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態にかかるコネクタを備えた基板組立体の分解図である。
【
図3】
図1のハウジングを示す図であり、(a)は前面及び上壁を示す斜視図、(b)は底壁及び後壁を示す斜視図である。
【
図4】肉抜き凹部が形成されていないハウジングと、肉抜き凹部が形成された本発明のハウジングとの違いを説明した説明図である。
【
図5】
図3に示したハウジングの第1変形例を示す底面図である。
【
図6】
図3に示したハウジングの第2変形例を示す底面図である。
【
図7】
図3に示したハウジングの第3変形例を示す底面図である。
【
図8】
図3に示したハウジングの第4変形例を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態にかかる「コネクタ」及び「基板組立体」について、
図1~4を参照して説明する。
【0012】
図1,2に示す基板組立体10は、プリント基板1と、プリント基板1に表面実装されたコネクタ2と、一対のペグ7と、を備えている。
【0013】
プリント基板1には、不図示の回路パターンと、コネクタ2の端子3がはんだ付けされたパッド13と、ペグ7がはんだ付けされたペグ用パッド14と、が設けられている。また、端子3及びペグ7のはんだ付けについては、パッド13及びペグ用パッド14の上にはんだが印刷され、これらの上に端子3、ペグ7が載せられた状態でプリント基板1がリフロー炉を通されることではんだ付けされている。
【0014】
一対のペグ7は、金属で構成されており、コネクタ2のハウジング4に圧入保持された状態でペグ用パッド14にはんだ付けされている。ペグ7は、ハウジング4をプリント基板1に機械的に固定するためのものであり、プリント基板1の回路には電気接続されていない。
【0015】
コネクタ2は、複数の端子3と、これら複数の端子3を保持したハウジング4と、を備えている。
【0016】
各端子3は、金属板にプレス加工等が施されて得られた雄端子である。各端子3は、基板接続部31と、雄タブ32と、屈曲部33と、被保持部34と、を備えている。基板接続部31は、端子3の一端部であり、パッド13にはんだ付けされた部分である。雄タブ32は、端子3の他端部であり、ハウジング4内に位置付けられて相手コネクタの雌端子に嵌合する部分である。屈曲部33は、端子3の中間部であり、直角に曲げられている。被保持部34は、端子3の雄タブ32と屈曲部33との間の部分であり、ハウジング4に保持された部分である。
【0017】
ハウジング4は、金型を用いた射出成形により得られたものであり、強化繊維を含んだ絶縁性の合成樹脂で構成されている。本例では、強化繊維としてガラス繊維を含んでいるが、これ以外に炭素繊維などの繊維を含んでいてもよい。ハウジング4は、底壁41、上壁42、一対の側壁43,44、後壁45、及び、前面に形成された開口部46を備えた箱状に形成されている。
【0018】
底壁41は、プリント基板1に重ねられている。上壁42は、底壁41とプリント基板1の厚み方向に対向している。一対の側壁43,44は、底壁41と上壁42とを繋いでいる。各側壁43,44には、ペグ7が圧入されたペグ保持部48が設けられている。後壁45は、底壁41と上壁42とを繋いでいるとともに一対の側壁43,44同士を繋いでいる。後壁45には、端子3の被保持部34が圧入された端子圧入部49が貫通形成されている。端子圧入部49は、端子3の数と同数形成されている。
【0019】
開口部46には、不図示の相手コネクタが挿入される。相手コネクタは、開口部46からハウジング4内に挿入されてハウジング4と嵌合するハウジングと、端子3と嵌合する複数の雌端子と、を備えている。上壁42の内面かつ前端部には、相手コネクタに係止することでコネクタ同士の嵌合状態を維持する係止突起47が形成されている。
【0020】
本明細書においては、コネクタ2に関して、相手コネクタとの嵌合方向における相手コネクタに近い側を前とし、嵌合方向における相手コネクタから離れた側を後ろとしている。また、プリント基板1に重ねられる側を下とし、プリント基板1から離れた側を上としている。
【0021】
ハウジング4は、前後方向が短手方向となっており、一対の側壁43,44の対向方向が長手方向となっている。また、底壁41及び上壁42は、ハウジング4の前後方向を短手方向、一対の側壁43,44の対向方向を長手方向とする長方形状である。開口部46は、ハウジング4の長手方向に2つ形成されている。上述した係止突起47も、ハウジング4の長手方向に2つ形成されている。各係止突起47は、各開口部46の中央に形成されている。
【0022】
図3中の矢印Gは、ハウジング4の射出成形時のゲート(金型キャビティへの樹脂注入口)位置を示している。
図3に示すように、ハウジング4においては側壁44の外面がゲート位置とされている。側壁44の外面にはゲート跡が形成されている。ゲートから金型キャビティに射出された溶融樹脂は、
図4に示すように、キャビティの側壁44を形成する部位に流れ、そこから上壁42を形成する部位及び底壁41を形成する部位に流れ、側壁43側に向かいつつ前後方向にも広がり、後壁45を形成する部位に回り込む。
【0023】
射出成形において寸法精度が高いハウジング4を得るためには、金型キャビティを流れる溶融樹脂の流動方向の調節と流れるスピードの調節が重要である。本例においては、これらを調節するために、底壁41の外面に第一肉抜き凹部6(肉抜き凹部に相当)が複数形成されており、上壁42の外面に第二肉抜き凹部51~57が複数形成されている。
【0024】
各第一肉抜き凹部6は、ハウジング4の前後方向(短手方向)に延びた等幅部61と、先細りテーパ形状の前端部62と、で構成されている。即ち、長方形の等幅部61の前端に三角形の前端部62が合体した形状となっている。等幅部61の後端部は後壁45に達している。前端部62はハウジング4の前面に達していない。このように、各肉抜き凹部6は、金型キャビティの底壁41を形成する部位を流れる溶融樹脂の流動方向(ハウジング4の長手方向)と直交する方向(ハウジング4の短手方向)に延びている。また、底壁41においては、これら複数の肉抜き凹部6が平行に並べられている。
【0025】
複数の第二肉抜き凹部51~57は、ハニカム形状(正六角形)の凹部51と部分ハニカム形状の凹部52~57とで構成されており、これらが一定間隔をあけて規則的に配置されている。これら複数の第二肉抜き凹部51~57は、上壁42の前端部を避けて形成されている。
【0026】
第一肉抜き凹部6及び第二肉抜き凹部51~57がハウジング4の前端部を避けて形成されているのは、ハウジング4の前端部、即ち開口部46の周囲の肉厚を確保して強度を確保するためである。また、第一肉抜き凹部6は、前端部62のテーパ形状によって溶融樹脂の流動方向を、ハウジング4の前後方向から斜め方向に変える。
【0027】
上述した第一肉抜き凹部6及び第二肉抜き凹部51~57が形成されることで、、金型キャビティの上下の流動タイミングが均一化され、寸法精度が高いハウジング4を得ることができる。また、流動方向が一定方向ではなくなることで、
図4に示すように、ガラス繊維の配向が複雑化し、ハウジング4全体の強度が均一になるとともに熱を受けた際の反り・変形が抑制される。よって、大型化を抑制しつつ寸法精度が高いハウジング4を得ることができる。
【0028】
また、コネクタ2がプリント基板1に実装された基板組立体10は、第一肉抜き凹部6の前端部62がプリント基板1の端よりも外側に位置付けられている。このような配置とすることで、リフロー工程中に、第一肉抜き凹部6に沿って風が抜け、プリント基板1のパッド13に安定的に熱が供給される。これにより、熱籠りを防ぎ、はんだ実装不具合を抑制することができる。
【0029】
さらに、上述した第一肉抜き凹部6を採用することでハウジング4の製造金型を小型化・簡素化することができる。即ち、第一肉抜き凹部6は、金型の開閉方向に延びた形状であるため、スライドコアを使用せずに第一肉抜き凹部6の形状を形成することができる。
【0030】
なお、第二肉抜き凹部51~57を形成するためのスライドコアは必要であるが、第二肉抜き凹部51~57は、寸法安定性の観点では第一肉抜き凹部6よりも優っている。ゆえに、本例のハウジング4においては、高い寸法精度が要求される係止突起47の近傍に第二肉抜き凹部51~57を形成している。
【0031】
続いて、上述したハウジング4の変形例を
図5~8を参照して説明する。上記実施形態では第一肉抜き凹部6が底壁41の長手方向中央を避けて形成されていたが、
図5に示す第1変形例では、底壁41の長手方向全域(ただし前端部を除く)に形成されている。
【0032】
図6~8に示す第2~4変形例では、長さが異なる第一肉抜き凹部6,6b~6eが組み合わされている。これら第2~4変形例の各ハウジングは、スライドコアを使用しない専用の金型で形成することもできるが、スライドコアを備えた共通の金型で形成することもできる。その場合は、メイン金型に対するスライドコアの位置をメイン金型の開閉方向にずらすことで可能となる。第2~4変形例のように第一肉抜き凹部6,6b~6eの長さやレイアウトを調節することで、金型キャビティを流れる溶融樹脂の流動方向の調節と流れるスピードの調節ができる。
【0033】
上述した実施形態及び変形例では、第一肉抜き凹部が底壁41のみに形成されていたが、本発明ではこれに限定されず、底壁41、上壁42、一対の側壁43,44の少なくとも一つの外面に肉抜き凹部6が形成されていればよい。
【0034】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0035】
1 プリント基板
2 コネクタ
3 端子
4 ハウジング
6,6b~6e 第一肉抜き凹部(肉抜き凹部)
10 基板組立体
41 底壁
42 上壁
43,44 側壁
45 後壁
46 開口部
51~57 第二肉抜き凹部