(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】蓄電池制御装置、蓄電システム、及び蓄電池制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20250407BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20250407BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
H02J7/00 302C
H01M10/44 P
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2023038380
(22)【出願日】2023-03-13
【審査請求日】2024-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】荘田 隆博
【審査官】山口 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-037227(JP,A)
【文献】特開2004-296318(JP,A)
【文献】特開2022-001007(JP,A)
【文献】中国実用新案第209728128(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/44
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池ストリングと、前記蓄電池ストリングの入出力電力を変換する電力変換器とを備える蓄電システムを制御する蓄電池制御装置であって、
前記蓄電池ストリングは、
直列に接続される複数の蓄電池と、
相互に隣り合う前記蓄電池の間に設けられた第1スイッチと、前記第1スイッチ及び前記蓄電池をバイパスするバイパス線と、前記バイパス線に設けられた第2スイッチとを備え、前記蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換える複数のバイパス回路と
を備え、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方は機械式リレーであり、
前記蓄電池ストリングの総電圧が、前記バイパス回路の耐電圧以下となり、且つ、機械式リレーである前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方にアーク放電が発生する第1の条件が成立するように、前記電力変換器により前記蓄電池ストリングの電流を第1の所定値に設定し、複数の前記バイパス回路により複数の前記蓄電池の接続又はバイパスの状態を所定の状態に設定し、
前記第1の条件が成立する状態で、機械式リレーである前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方を開閉させる酸化被膜除去処理を実行する蓄電池制御装置。
【請求項2】
前記蓄電池ストリングの電流が前記第1の所定値より低い第2の所定値である第2の条件が成立するように、前記電力変換器により前記蓄電池ストリングの電流を減少させ、
前記第2の条件が成立する状態で、複数の前記バイパス回路により複数の前記蓄電池の接続又はバイパスの状態を前記所定の状態に設定し、
複数の前記蓄電池の接続又はバイパスの状態が前記所定の状態に設定された状態で、前記電力変換器により前記蓄電池ストリングの電流を前記第1の所定値まで増加させ、前記第1の条件を成立させる請求項1に記載の蓄電池制御装置。
【請求項3】
前記バイパス回路は、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方の過電圧保護を行う保護回路を備え、
前記バイパス回路の耐電圧は、前記保護回路のツェナー電圧以上である請求項1又は2に記載の蓄電池制御装置。
【請求項4】
前記蓄電池ストリングの電流を、前記第1の所定値に変化させる際、前記蓄電池ストリングの電流の指示値を、前記第1の所定値と現在値との差分より少量の変化量だけ、前記第1の所定値に向けて変化させる処理を、前記指示値が前記第1の所定値に達するまで繰り返し実行する請求項1又は2に記載の蓄電池制御装置。
【請求項5】
前記蓄電池ストリングの電流を、前記第2の所定値に変化させる際、前記蓄電池ストリングの電流の指示値を、前記第2の所定値と現在値との差分より少量の変化量だけ、前記第2の所定値に向けて変化させる処理を、前記指示値が前記第2の所定値に達するまで繰り返し実行する請求項2に記載の蓄電池制御装置。
【請求項6】
複数の前記バイパス回路により複数の前記蓄電池の接続又はバイパスの状態を前記所定の状態に設定する前に、現時点の複数の前記蓄電池の接続又はバイパスの状態を記憶部に記録し、
前記酸化被膜除去処理を実行した後に、複数の前記バイパス回路により、複数の前記蓄電池の接続又はバイパスの状態を、前記接続状態と前記バイパス状態との切り換えが必要な前記蓄電池を除いて、前記記憶部に記録された状態に復帰させる請求項1又は2に記載の蓄電池制御装置。
【請求項7】
蓄電池ストリングと、
前記蓄電池ストリングの入出力電力を変換する電力変換器と、
前記蓄電池ストリングと前記電力変換器とを制御する蓄電池制御装置と
を備える蓄電システムであって、
前記蓄電池ストリングは、
直列に接続される複数の蓄電池と、
相互に隣り合う前記蓄電池の間に設けられた第1スイッチと、前記第1スイッチ及び前記蓄電池をバイパスするバイパス線と、前記バイパス線に設けられた第2スイッチとを備え、前記蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換える複数のバイパス回路と
を備え、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方は機械式リレーであり、
前記蓄電池制御装置は、
前記蓄電池ストリングの総電圧が、前記バイパス回路の耐電圧以下となり、且つ、機械式リレーである前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方にアーク放電が発生する第1の条件が成立するように、前記電力変換器により前記蓄電池ストリングの電流を第1の所定値に設定し、複数の前記バイパス回路により複数の前記蓄電池の接続又はバイパスの状態を所定の状態に設定し、
前記第1の条件が成立する状態で、機械式リレーである前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方を開閉させる酸化被膜除去処理を実行する蓄電システム。
【請求項8】
蓄電池ストリングと、
前記蓄電池ストリングの入出力電力を変換する電力変換器と、
前記蓄電池ストリングと前記電力変換器とを制御する蓄電池制御装置と
を備える蓄電システムであって、
前記蓄電池ストリングは、
直列に接続される複数の蓄電池と、
相互に隣り合う前記蓄電池の間に設けられた機械式リレーである第1スイッチと、前記第1スイッチ及び前記蓄電池をバイパスするバイパス線と、前記バイパス線に設けられた第2スイッチとを備え、前記蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換える複数のバイパス回路と、
始端の前記蓄電池に対応する前記第1スイッチと前記電力変換器との間、及び終端の前記蓄電池と前記電力変換器との間に接続され蓄電部及び電流抑制部を備える蓄電及び電流抑制回路と
を備え、
前記蓄電池制御装置は、
複数の前記バイパス回路により、全ての前記蓄電池をバイパス状態に設定した後、何れか一つの前記バイパス回路により何れか一つの前記蓄電池を接続状態に切り換える第1酸化被膜除去処理を実行し、
前記蓄電池制御装置による前記第1酸化被膜除去処理の実行時に、前記蓄電池ストリングの総電圧が、前記バイパス回路の耐電圧以下となり、且つ、前記第1スイッチにアーク放電が発生する第1の条件が成立するように、接続状態の前記蓄電池、前記第1スイッチ、及び前記蓄電及び電流抑制回路を流れる過渡電流の最大値が設定されている蓄電システム。
【請求項9】
前記第2スイッチは機械式リレーであり、
前記蓄電池制御装置は、
前記第1酸化被膜除去処理の実行後、何れか一つの前記バイパス回路により、接続状態の前記蓄電池をバイパス状態に切り換える第2酸化被膜除去処理を実行し、
前記蓄電池制御装置による前記第2酸化被膜除去処理の実行時に、前記蓄電池ストリングの総電圧が、前記バイパス回路の耐電圧以下となり、且つ、前記第2スイッチにアーク放電が発生する第2の条件が成立するように、前記蓄電及び電流抑制回路、及び前記第2スイッチを流れる過渡電流の最大値が設定されている請求項8に記載の蓄電システム。
【請求項10】
蓄電池ストリングと前記蓄電池ストリングの入出力電力を変換する電力変換器とを備える蓄電システムを制御する蓄電池制御装置が実行する蓄電池制御方法であって、
前記蓄電池ストリングは、
直列に接続される複数の蓄電池と、
相互に隣り合う前記蓄電池の間に設けられた第1スイッチと、前記第1スイッチ及び前記蓄電池をバイパスするバイパス線と、前記バイパス線に設けられた第2スイッチとを備え、前記蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換える複数のバイパス回路と
を備え、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方は機械式リレーであり、
前記蓄電池ストリングの総電圧が、前記バイパス回路の耐電圧以下となり、且つ、機械式リレーである前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方にアーク放電が発生する第1の条件が成立するように、前記電力変換器により前記蓄電池ストリングの電流を第1の所定値に設定し、複数の前記バイパス回路により複数の前記蓄電池の接続又はバイパスの状態を所定の状態に設定し、
前記第1の条件が成立する状態で、機械式リレーである前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方を開閉させる酸化被膜除去処理を実行する蓄電池制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電池制御装置、蓄電システム、及び蓄電池制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直列に接続される複数の蓄電池と、蓄電池毎に設けられ対応する蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換えるバイパス回路とを蓄電池ストリングに備える蓄電システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の蓄電システムでは、要求される電流を放電できない蓄電池がバイパスされるバイパス制御が実行され、他の蓄電池から放電が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の蓄電システムでは、バイパス制御の実行時に蓄電システムの入出力電力に大きな変動が生じることを防止する必要がある。また、特許文献1に記載の蓄電システムでは、バイパス制御の実行時にバイパス回路のスイッチに蓄電池ストリングの総電圧が印加されるため、耐電圧の高いスイッチを使用したり、スイッチ用の保護回路を設けたりする必要がある。スイッチ用の保護回路を設ける場合には、保護回路に耐電圧を超える電圧が印加されることを防止する必要がある。これらの課題を解決するための方法として、電力変換器により蓄電池ストリングの電流(以下、ストリング電流という)を減少させてから、バイパス制御を実行する方法が考えられる。
【0005】
しかしながら、バイパス回路のスイッチに機械式リレーを使用する場合、ストリング電流を減少させてからスイッチのOpen/Closeの切換動作を実行すると、機械式リレーの接点部分でアーク放電が発生しない可能性がある。機械式リレーの接点部分には経時的に酸化被膜が形成されるため、当該接点部分でアーク放電が発生しない場合には、当該接点部分に形成された酸化被膜が除去されず、当該接点部分に接触不良が発生する可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、直列に接続される複数の蓄電池と、蓄電池毎に設けられ対応する蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換える複数のバイパス回路とを蓄電池ストリングに備える蓄電システムにおいて、システムの入出力電力の変動を抑えると共に、バイパス回路の機械式リレーの接点部分から酸化被膜を除去することができる、蓄電池制御装置、蓄電システム、及び蓄電池制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の蓄電池制御装置は、蓄電池ストリングと、前記蓄電池ストリングの入出力電力を変換する電力変換器とを備える蓄電システムを制御する蓄電池制御装置であって、前記蓄電池ストリングは、直列に接続される複数の蓄電池と、相互に隣り合う前記蓄電池の間に設けられた第1スイッチと、前記第1スイッチ及び前記蓄電池をバイパスするバイパス線と、前記バイパス線に設けられた第2スイッチとを備え、前記蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換える複数のバイパス回路とを備え、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方は機械式リレーであり、前記蓄電池ストリングの総電圧が、前記バイパス回路の耐電圧以下となり、且つ、機械式リレーである前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方にアーク放電が発生する第1の条件が成立するように、前記電力変換器により前記蓄電池ストリングの電流を第1の所定値に設定し、複数の前記バイパス回路により複数の前記蓄電池の接続又はバイパスの状態を所定の状態に設定し、前記第1の条件が成立する状態で、機械式リレーである前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方を開閉させる酸化被膜除去処理を実行する。
【0008】
本発明の蓄電システムは、蓄電池ストリングと、前記蓄電池ストリングの入出力電力を変換する電力変換器と、前記蓄電池ストリングと前記電力変換器とを制御する蓄電池制御装置とを備える蓄電システムであって、前記蓄電池ストリングは、直列に接続される複数の蓄電池と、相互に隣り合う前記蓄電池の間に設けられた第1スイッチと、前記第1スイッチ及び前記蓄電池をバイパスするバイパス線と、前記バイパス線に設けられた第2スイッチとを備え、前記蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換える複数のバイパス回路とを備え、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方は機械式リレーであり、前記蓄電池制御装置は、前記蓄電池ストリングの総電圧が、前記バイパス回路の耐電圧以下となり、且つ、機械式リレーである前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方にアーク放電が発生する第1の条件が成立するように、前記電力変換器により前記蓄電池ストリングの電流を第1の所定値に設定し、複数の前記バイパス回路により複数の前記蓄電池の接続又はバイパスの状態を所定の状態に設定し、前記第1の条件が成立する状態で、機械式リレーである前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方を開閉させる酸化被膜除去処理を実行する。
【0009】
本発明の蓄電システムは、蓄電池ストリングと、前記蓄電池ストリングの入出力電力を変換する電力変換器と、前記蓄電池ストリングと前記電力変換器とを制御する蓄電池制御装置とを備える蓄電システムであって、前記蓄電池ストリングは、直列に接続される複数の蓄電池と、相互に隣り合う前記蓄電池の間に設けられた機械式リレーである第1スイッチと、前記第1スイッチ及び前記蓄電池をバイパスするバイパス線と、前記バイパス線に設けられた第2スイッチとを備え、前記蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換える複数のバイパス回路と、始端の前記蓄電池に対応する前記第1スイッチと前記電力変換器との間、及び終端の前記蓄電池と前記電力変換器との間に接続され蓄電部及び電流抑制部を備える蓄電及び電流抑制回路とを備え、前記蓄電池制御装置は、複数の前記バイパス回路により、全ての前記蓄電池をバイパス状態に設定した後、何れか一つの前記バイパス回路により何れか一つの前記蓄電池を接続状態に切り換える第1酸化被膜除去処理を実行し、前記蓄電池制御装置による前記第1酸化被膜除去処理の実行時に、前記蓄電池ストリングの総電圧が、前記バイパス回路の耐電圧以下となり、且つ、前記第1スイッチにアーク放電が発生する第1の条件が成立するように、接続状態の前記蓄電池、前記第1スイッチ、及び前記蓄電及び電流抑制回路を流れる過渡電流の最大値が設定されている。
【0010】
本発明の蓄電池制御方法は、蓄電池ストリングと前記蓄電池ストリングの入出力電力を変換する電力変換器とを備える蓄電システムを制御する蓄電池制御装置が実行する蓄電池制御方法であって、前記蓄電池ストリングは、直列に接続される複数の蓄電池と、相互に隣り合う前記蓄電池の間に設けられた第1スイッチと、前記第1スイッチ及び前記蓄電池をバイパスするバイパス線と、前記バイパス線に設けられた第2スイッチとを備え、前記蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換える複数のバイパス回路とを備え、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方は機械式リレーであり、前記蓄電池ストリングの総電圧が、前記バイパス回路の耐電圧以下となり、且つ、機械式リレーである前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方にアーク放電が発生する第1の条件が成立するように、前記電力変換器により前記蓄電池ストリングの電流を第1の所定値に設定し、複数の前記バイパス回路により複数の前記蓄電池の接続又はバイパスの状態を所定の状態に設定し、前記第1の条件が成立する状態で、機械式リレーである前記第1スイッチと前記第2スイッチとの少なくとも一方を開閉させる酸化被膜除去処理を実行する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、直列に接続される複数の蓄電池と、蓄電池毎に設けられ対応する蓄電池を接続状態とバイパス状態とに切り換える複数のバイパス回路とを蓄電池ストリングに備える蓄電システムにおいて、システムの入出力電力の変動を抑えると共に、バイパス回路の機械式リレーの接点部分から酸化被膜を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る蓄電池制御装置を備える蓄電システムの概略を示す回路図である。
【
図2】
図2は、バイパス制御要求の対象の蓄電池モジュールを接続状態からバイパス状態に切り換える処理を説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の他の実施形態の酸化被膜除去処理を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の他の実施形態に係る蓄電システムの概略を示す回路図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す蓄電池制御装置が、バイパス制御要求の対象の蓄電池モジュールを接続状態からバイパス状態に切り換える処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において実施形態を適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾点が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用される。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る蓄電池制御装置100を備える蓄電システム1の概略を示す回路図である。この図に示すように、蓄電システム1は、複数の蓄電池ストリングSTRと、複数の電力変換器PCと、ストリングバス3と、蓄電池制御装置100とを備える。複数の蓄電池ストリングSTRは、ストリングバス3を介して、相互に並列に接続されると共に外部系統(図示省略)に接続されている。蓄電システム1は、定置用又は車載用の電源である。
【0015】
蓄電池ストリングSTRは、直列に接続されるn個(nは2以上の整数)の蓄電池モジュールM1~Mnを備える。特に限定するわけではないが、本実施形態の蓄電池モジュールM1~Mnは、中古の蓄電池を再生したものであり、各蓄電池モジュールM1~Mnの劣化度には差がある。蓄電池モジュールM1~Mnは、例えば、リチウムイオンバッテリ、リチウムイオンキャパシタ等の二次電池のセルが複数接続されたものである。
【0016】
蓄電池モジュールM1~Mnは、ストリングバス3及び電力変換器PCを通じて外部系統から電力を供給されて充電される。また、蓄電池モジュールM1~Mnは、電力変換器PC及びストリングバス3を通じて外部系統に電力を供給する。
【0017】
外部系統は、負荷や発電機等を含む。蓄電システム1が定置用の場合には、家庭内の家電、商用電源系統等が負荷となり、太陽光発電システム等が発電機となる。他方で、蓄電システム1が車載用の場合には、駆動用モータ、エアコン、各種車載電装品等が負荷となる。なお、駆動用モータは負荷になり発電機にもなる。
【0018】
なお、蓄電池ストリングSTRは、直列に接続されるn個の蓄電池モジュールM1~Mnに代えて、直列に接続されるn個の蓄電池セル又は蓄電池パックを備えてもよい。また、蓄電池ストリングSTRは、各蓄電池セル又は各蓄電池パックをバイパスさせるバイパス回路を備えてもよい。
【0019】
電力変換器PCは、DC/DCコンバータ又はDC/ACコンバータであり、ストリングバス3に接続されている。また、電力変換器PCには、始端の蓄電池モジュールM1の正極と終端の蓄電池モジュールMnの負極とが接続されている。
【0020】
電力変換器PCは、蓄電池ストリングSTRの充電時に、ストリングバス3から入力された電圧を、後述の充電電力(又は電流)の指示値に応じて変換して複数の蓄電池モジュールM1~Mnに出力する。ここで、蓄電池ストリングSTR側の電圧は、蓄電池モジュールM1~Mnのバイパス状態(バイパスされている蓄電池モジュールM1~Mnの数)や蓄電池モジュールM1~Mnの充電状態に応じて変化する。そのため、電力変換器PCは、蓄電池ストリングSTRの充電時に、ストリングバス3から入力された電圧を、蓄電池ストリングSTR側の電圧に変換して複数の蓄電池モジュールM1~Mnに出力する。
【0021】
電力変換器PCは、蓄電池ストリングSTRの放電時に、複数の蓄電池モジュールM1~Mnから入力された電圧を、後述の放電電力(又は電流)の指示値に応じて変換してストリングバス3に出力する。ここで、放電時の電力変換器PCの入力電圧は、蓄電池モジュールM1~Mnのバイパス状態や蓄電池モジュールM1~Mnの充電状態に応じて変化する。それにより、放電時に蓄電池ストリングSTR間で電力変換器PCの入力電圧にバラツキが生じる。そのため、電力変換器PCは、蓄電池ストリングSTRの放電時に、入力電圧を他の蓄電池ストリングSTRと整合する電圧に変換してストリングバス3に出力する。
【0022】
電力変換器PCは、双方向変換器である。なお、ストリングバス3を流れる電流が交流の場合には、電力変換器PCは、瞬時値の変化に対して追従するための同期手段を備える。
【0023】
蓄電池ストリングSTRは、n個のバイパススイッチユニットB1~Bnと、n個の電圧センサ12と、1個の電流センサ13と、1個の電圧センサ14と、n個の温度センサ(図示省略)と、多数のセル電圧センサ(図示省略)とを備える。
【0024】
電圧センサ12は、各蓄電池モジュールM1~Mnの正負極端子間に接続されており、各蓄電池モジュールM1~Mnの端子間電圧を検出して検出信号を後述のストリングコントローラ102に送信する。また、電流センサ13は、蓄電池ストリングSTRの電力線PLに設けられており、ストリング電流を検出して検出信号をストリングコントローラ102に送信する。また、電圧センサ14は、蓄電池ストリングSTRの電力線PLに設けられており、蓄電池ストリングSTRの総電圧を検出して検出信号をストリングコントローラ102に送信する。
【0025】
また、温度センサは、各蓄電池モジュールM1~Mnに設けられており、各蓄電池モジュールM1~Mnの温度を検出して検出信号をストリングコントローラ102に送信する。さらに、セル電圧センサは、各蓄電池モジュールM1~Mnの蓄電池セル(図示省略)毎に設けられており、各蓄電池セルの電圧を検出して検出信号をストリングコントローラ102に送信する。
【0026】
バイパススイッチユニットB1~Bnは、蓄電池モジュールM1~Mn毎に設けられている。各バイパススイッチユニットB1~Bnは、バイパス線BLと、スイッチS1,S2と、保護回路16とを備える。バイパス線BLは、各蓄電池モジュールM1~MnとスイッチS2とをバイパスする電力線である。スイッチS1は、バイパス線BLに設けられている。このスイッチS1は、機械式リレーである。スイッチS2は、各蓄電池モジュールM1~Mnの正極とバイパス線BLの一端との間に設けられている。このスイッチS2は、機械式リレーである。
【0027】
始端の蓄電池モジュールM1及び終端の蓄電池モジュールMnは、電力変換器PC及びストリングバス3を介して外部系統に接続されている。全てのバイパススイッチユニットB1~BnにおいてスイッチS1がOpenになりスイッチS2がCloseになった場合に、全ての蓄電池モジュールM1~Mnが外部系統に直列で接続される。他方で、何れかのバイパススイッチユニットB1~BnにおいてスイッチS2がOpenになり、スイッチS1がCloseになった場合に、当該バイパススイッチユニットB1~Bnに対応する蓄電池モジュールM1~Mnがバイパスされる。
【0028】
保護回路16は、スイッチS1と並列に接続されたツェナーダイオードD11及びダイオードD12と、スイッチS2と並列に接続されたツェナーダイオードD21及びダイオードD22とを備え、スイッチS1,S2の過電圧保護を行う。ツェナーダイオードD11のアノードとダイオードD12のアノードとが接続されている。また、ツェナーダイオードD21のアノードとダイオードD22のアノードとが接続されている。
【0029】
ツェナーダイオードD11のカソードは、スイッチS1と蓄電池モジュールM1~Mnの負極との間でバイパス線BLに接続されている。他方で、ダイオードD12のカソードは、スイッチS1とスイッチS2との間でバイパス線BLに接続されている。
【0030】
ツェナーダイオードD21のカソードは、スイッチS2と蓄電池モジュールM1~Mnの正極との間で電力線PLに接続されている。他方で、ダイオードD22のカソードは、スイッチS1とスイッチS2との間でバイパス線BLに接続されている。
【0031】
ここで、保護回路16が設けられていない場合には、スイッチS2の遮断時にスイッチS2の接点の両端に印加される電圧が、接続状態の蓄電池モジュールM1~Mnと当該スイッチS2に対応する蓄電池モジュールM1~Mnとの総電圧となる。この場合には、スイッチS2の耐電圧は、n個の蓄電池モジュールM1~Mnの総電圧(全ての蓄電池モジュールM1~Mnが接続状態の時の蓄電池ストリングSTRの電圧)以上である必要がある。それに対して、保護回路16が設けられている場合には、スイッチS2の遮断時にスイッチS2の接点の両端に印加される電圧が、ツェナーダイオードD21のツェナー電圧となる。この場合には、スイッチS2の耐電圧は、ツェナーダイオードD21のツェナー電圧以上であればよい。なお、保護回路16で発生する損失を許容損失以下に抑える観点から、電力変換器PCにより入出力電力が低減され、保護回路16への大電流の流入が防止される。
【0032】
また、保護回路16が設けられていない場合には、スイッチS1の遮断時にスイッチS1の接点の両端に印加される電圧が、接続状態の蓄電池モジュールM1~Mnの総電圧となる。この場合には、スイッチS1の耐電圧は、(n-1)個の蓄電池モジュールM1~Mnの総電圧(1個を除く全ての蓄電池モジュールM1~Mnが接続状態の時の蓄電池ストリングSTRの電圧)以上である必要がある。それに対して、保護回路16が設けられている場合には、スイッチS1の遮断時にスイッチS1の接点の両端に印加される電圧は、ツェナーダイオードD11のツェナー電圧となる。この場合には、スイッチS1の耐電圧は、ツェナーダイオードD11のツェナー電圧以上であればよい。なお、保護回路16は、スイッチS1と並列に接続されたツェナーダイオードD11及びダイオードD12と、スイッチS2と並列に接続されたツェナーダイオードD21及びダイオードD22との2組で構成されているが、何れか1組で構成されてもよい。この場合、スイッチS2に印加される電圧は、隣接の蓄電池モジュールM1~Mnの電圧が加算されたものになる。そのため、スイッチS2の接点の耐電圧は、ツェナー電圧に蓄電池モジュールM1~Mnの電圧を加算したものより大きくする必要がある。
【0033】
蓄電池制御装置100は、複数のストリングコントローラ102と、複数のリレードライバ103と、1個のシステムコントローラ101とを備える。ストリングコントローラ102とリレードライバ103とは、蓄電池ストリングSTR毎に設けられている。
【0034】
ストリングコントローラ102は、対応する蓄電池ストリングSTRのリレードライバ103と電力変換器PCとに制御信号を送信する。リレードライバ103は、対応するストリングコントローラ102から送信された制御信号に従って、対応するバイパススイッチユニットB1~BnのスイッチS1,S2を制御する。また、電力変換器PCは、対応するストリングコントローラ102から送信された制御信号に従って、対応する蓄電池ストリングSTRの充放電電力を変換する。また、電力変換器PCは、対応するストリングコントローラ102からの制御信号に従って、対応する蓄電池ストリングSTRのストリング電流を制御する。
【0035】
ストリングコントローラ102は、対応する蓄電池ストリングSTRの状態の検出及び推定、システムコントローラ101への機器の制御要求の通知等を実行する。蓄電池ストリングSTRの状態の検出としては、対応する電流センサ13の検出信号に基づく蓄電池ストリングSTRのストリング電流の検出、対応する電圧センサ14の検出信号に基づく蓄電池ストリングSTRの総電圧の検出、電圧センサ12の検出信号に基づく蓄電池モジュールM1~Mnの電圧の検出、温度センサの検出信号に基づく蓄電池モジュールM1~Mnの温度の検出、セル電圧センサの検出信号に基づく蓄電池セルの電圧の検出等が挙げられる。また、蓄電池ストリングSTRの状態の推定としては、蓄電池モジュールM1~MnのSOC(State of Charge)やSOH(State of Health)の推定、蓄電池ストリングSTRのSOCやSOHの推定等が挙げられる。さらに、システムコントローラ101への機器の制御要求の通知としては、バイパススイッチユニットB1~BnのスイッチS1,S2のOpen/Closeの切換制御の要求、電力変換器PCの制御の要求等が挙げられる。
【0036】
SOHの推定方法としては、充放電試験による方法、電流積算法による方法、開回路電圧の測定による方法、端子電圧の測定による方法、モデルに基づく方法(以上はSOCの経時変化を用いる方法)、交流インピーダンス測定による方法、モデルに基づき、適応デジタルフィルタで求める方法、I-V特性(電流電圧特性)からの線型回帰(I-V特性の直線の傾き)による方法、ステップ応答による方法(以上、内部抵抗の経時的増加を用いて推定する方法)等が挙げられる。
【0037】
SOCの推定方法としては、電流積算法、OCV(Open Circuit Voltage)から求める方法(電圧法)、電流積算法と電圧法とを組み合わせた方法等の種々の公知の方法等が挙げられる。また、OCVは、端子間電圧の経時変化あるいは、内部抵抗の経時的増加を用いて推定する種々の公知の方法を用いて推定することができる。
【0038】
システムコントローラ101は、蓄電システム1の全体を統括的に制御するコントローラであり、複数のストリングコントローラ102と1:mの通信を実行する。このシステムコントローラ101は、蓄電池ストリングSTRの状態の監視、ストリングコントローラ102からの機器の制御要求に対する可否の判断、ストリングコントローラ102への機器の制御要求の許可の通知を実行する。また、システムコントローラ101は、各蓄電池ストリングSTRの充放電電力(又は電流)の指示値の設定、当該充放電電力(又は電流)の指示値のストリングコントローラ102への送信を実行する。
【0039】
システムコントローラ101は、ストリングコントローラ102から送信される蓄電池ストリングSTRの状態の検出結果や推定結果に基づいて、蓄電池ストリングSTRの状態を監視する。そして、システムコントローラ101は、上位のシステム(図示省略)から受信する蓄電システム1全体の入出力電力(又は電流)の指示と、蓄電池ストリングSTRの状態とに応じて、各蓄電池ストリングSTRに割り当てる充放電電力(又は電流)の指示値を算出する。
【0040】
ここで、各ストリングコントローラ102は、何れかの蓄電池モジュールM1~Mn(以下、M’)についてのバイパススイッチユニットB1~Bn(以下、B’)のスイッチS1,S2のOpen/Closeの切換制御の要求(以下、バイパス制御要求という)がシステムコントローラ101により許可された場合、当該バイパススイッチユニットB’のスイッチS1,S2のOpen/Closeの切換制御を実行する。この際、ストリングコントローラ102は、バイパススイッチユニットB’のスイッチS1,S2のOpen/Closeの切換制御の実行前に、保護回路16の保護とスイッチS1,S2の接点部分にできた酸化被膜の除去とを目的とする保護・酸化被膜除去処理を実行する。
【0041】
保護・酸化被膜除去処理は、ストリング電流減少処理と、バイパス状態切換処理と、ストリング電流増加処理と、酸化被膜除去処理とを含む。ストリング電流減少処理は、ストリング電流を第2の所定値まで減少させる処理である。第2の所定値は、後述の第1の所定値より低い値であり、蓄電池ストリングSTRのバイパス制御時に蓄電システム1全体の入出力電力の変動が許容範囲に抑えられる程度の低い値に設定される。本実施形態では、第2の所定値は0であり、ストリング電流が0の時に「第2の条件」が成立する。
【0042】
ここで、ストリングコントローラ102は、ストリング電流減少処理において、ストリング電流の指示値を現在値から第2の所定値まで漸次的且つ連続的に減少させる。具体的には、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値の現在値と第2の所定値との差分を等分した所定量ΔP1ずつストリング電流の指示値の更新を繰り返す。この際、ストリング電流の指示値の変化速度(時間当たりの変化量)は、蓄電システム1全体の入出力電力の変動が許容範囲に抑えられる程度に設定される。これにより、電力変換器PCは、蓄電システム1全体の入出力電力の変動を許容範囲に抑えるように、ストリング電流を現在値から第2の所定値まで漸次的且つ連続的に減少させる。
【0043】
バイパス状態切換処理は、バイパス制御要求の対象外の蓄電池モジュールM1~Mn(以下、M”)について対応するバイパススイッチユニットB1~Bn(以下、B”)のスイッチS1,S2の状態を切り換える処理である。ストリングコントローラ102は、バイパス状態切換処理において、蓄電池ストリングSTRの「第1の条件」が成立するように、複数の蓄電池モジュールM”の接続又はバイパスの状態(「所定の状態」)を決定する。「第1の条件」は、蓄電池ストリングSTRの総電圧が保護回路16の耐電圧以下となり、且つ、機械式リレーであるスイッチS1,S2にアーク放電が発生するという条件である。即ち、ストリングコントローラ102は、酸化被膜除去処理の実行時に蓄電池ストリングSTRの総電圧が保護回路16の耐電圧以下となるように、複数の蓄電池モジュールM”の接続又はバイパスの状態を決定する。また、ストリングコントローラ102は、酸化被膜除去処理の実行時にスイッチS1,S2にアーク放電が発生するように、後述のストリング電流増加処理において、ストリング電流を「第1の所定値」に設定する。なお、接続する蓄電池モジュールM”は、所定の基準で決定された優先順位に従って選択される。ここで、放電モードでは、バイパス制御要求の対象外の蓄電池モジュールM”の少なくとも一つが接続状態に設定される。
【0044】
ストリング電流増加処理は、ストリング電流を第2の所定値から第1の所定値まで増加させる処理である。第1の所定値は、機械式リレーであるスイッチS1,S2の作動時にスイッチS1,S2の接点部分にアーク放電を発生させ当該接点部分にできた酸化被膜を除去できる程度の値に設定される。
【0045】
ここで、ストリングコントローラ102は、ストリング電流増加処理において、ストリング電流の指示値を現在値(第2の所定値)から第1の所定値まで漸次的且つ連続的に増加させる。具体的には、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値の現在値と第1の所定値との差分を等分した所定量ΔP2ずつストリング電流の指示値の更新を繰り返す。この際、ストリング電流の指示値の変化速度は、蓄電システム1全体の入力出力電力の変動が許容範囲に抑えられる程度に設定する。これにより、電力変換器PCは、蓄電システム1全体の入出力電力の変動を許容範囲に抑えるように、ストリング電流を現在値から第1の所定値まで漸次的且つ連続的に増加させる。
【0046】
酸化被膜除去処理は、第1の条件が成立する状態で、バイパススイッチユニットB’のスイッチS1,S2の接点部分にアーク放電を発生させて当該接点部分にできた酸化被膜を除去する処理である。具体的には、ストリングコントローラ102は、第1の所定値のストリング電流をバイパススイッチユニットB’のスイッチS2に流した状態で当該スイッチS2をCloseからOpenに切り換え、さらにOpenからCloseに切り換え、さらにCloseからOpenに切り換える。また、ストリングコントローラ102は、第1の所定値のストリング電流をバイパススイッチユニットB’のスイッチS1に流した状態で当該スイッチS1をCloseからOpenに切り換え、さらにOpenからCloseに切り換え、さらにCloseからOpenに切り換える。
【0047】
ストリングコントローラ102は、保護・酸化被膜除去処理の実行前、蓄電池ストリングSTRの蓄電池モジュールM1~Mnの現時点での接続又はバイパスの状態を、内蔵するメモリ(図示省略)に記録する。そして、ストリングコントローラ102は、保護・酸化被膜除去処理の実行後、バイパス制御要求の対象外の蓄電池モジュールM”の接続又はバイパスの状態がメモリに記録された状態に復帰するように、バイパススイッチユニットB”のスイッチS1,S2のOpen/Closeの状態を切り換える。この際、ストリングコントローラ102は、バイパス制御要求の対象の蓄電池モジュールM’がバイパス状態になるように、バイパススイッチユニットB’のスイッチS1,S2のOpen/Closeの状態を切り換える。
【0048】
図2は、バイパス制御要求の対象の蓄電池モジュールM’を接続状態からバイパス状態に切り換える(バイパス制御)処理を説明するためのフローチャートである。まず。ステップS1において、ストリングコントローラ102は、蓄電池ストリングSTRの蓄電池モジュールM1~Mnを監視し、バイパス制御が必要な蓄電池モジュールM1~Mnが有るか否かを判定する。ステップS1において肯定判定がされた場合には、ステップS2に移行し、ステップS1において否定判定がされた場合には、処理を終了する。
【0049】
ステップS2において、ストリングコントローラ102は、バイパス制御要求をシステムコントローラ101に送信し、システムコントローラ101からバイパス制御要求の許可の通知を受信したか否かを判定する。ステップS2において肯定判定がされた場合には、ステップS3に移行し、ステップS2において否定判定がされた場合には、処理を終了する。
【0050】
ステップS3において、ストリングコントローラ102は、蓄電池ストリングSTRの蓄電池モジュールM1~Mnの現時点での接続又はバイパスの状態を、内蔵するメモリ(図示省略)に記録する。次に、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値が第2の所定値に達するまでステップS4~S6のループ処理を繰り返し実行する(ストリング電流減少処理)。ここで、ステップS4~S6において、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値を所定量ΔP1ずつ漸次的且つ連続的に現在値から第2の所定値まで減少させる。
【0051】
まず、ステップS4において、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値を所定量ΔP1だけ減少させた値に更新する。この所定量ΔP1は、蓄電システム1の入出力電力の急激な変化を防止するという目的に適合するように少量に設定される。この所定量ΔP1は、ストリング電流の現在値と第2の所定値との差が小さい場合には、ストリング電流の現在値と第2の所定値との差と等しくなる場合もある。他方で、この所定量ΔP1は、ストリング電流の現在値と第2の所定値との差が相対的に大きい場合には、ストリング電流の現在値と第2の所定値との差よりも少量になる場合もある。この所定量ΔP1が、ストリング電流の現在値と第2の所定値との差よりも少量になる場合には、ストリング電流の更新が複数回繰り返し実行される。
【0052】
次に、ステップS5において、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値を電力変換器PCに送信してから所定時間T1の間、待機する。この所定時間T1は、ストリングコントローラ102による電力変換器PCの制御に必要な時間とストリング電流の変化速度とを考慮して設定されている。
【0053】
次に、ステップS6において、ストリングコントローラ102は、ストリング電流が、第2の所定値に達したか(ストリング電流の減少が完了したか)否かを判定する。ステップS6において肯定判定がされた場合には、ステップS7に移行し、ステップS6において否定判定がされた場合には、ステップS4に移行する。
【0054】
ステップS7,S8において、ストリングコントローラ102は、バイパス状態切換処理を実行する。まず、ステップS7において、ストリングコントローラ102は、バイパス制御要求の対象外の蓄電池モジュールM”の接続又はバイパスの状態を決定する。ステップS7では、第1の所定値のストリング電流が流れる時に蓄電池ストリングSTRの総電圧が保護回路16の耐電圧以下となるように、接続状態にする蓄電池モジュールM”とバイパス状態にする蓄電池モジュールM”とが決定される。
【0055】
次に、ステップS8において、ストリングコントローラ102は、バイパス制御要求の対象外の蓄電池モジュールM”の接続又はバイパスの状態がステップS7で決定された状態に切り換わるように、バイパススイッチユニットB”のスイッチS1,S2のOpen/Closeを切り換える。次に、ステップS9において、ストリングコントローラ102は、バイパス制御要求の対象の蓄電池モジュールM’が接続状態となるように、バイパススイッチユニットB’のスイッチS1,S2のOpen/Closeを切り換える。
【0056】
次に、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値が第1の所定値に達するまでステップS10~S12のループ処理を繰り返し実行する(ストリング電流増加処理)。ここで、ステップS10~S12において、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値を所定量ΔP2ずつ漸次的且つ連続的に現在値から第1の所定値まで増加させる。
【0057】
まず、ステップS10において、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値を所定量ΔP2だけ増加させた値に更新する。この所定量ΔP2は、蓄電システム1の入出力電力の急激な変化を防止するという目的に適合するように少量に設定される。この所定量ΔP2は、ストリング電流の現在値と第1の所定値との差が小さい場合には、ストリング電流の現在値と第1の所定値との差と等しくなる場合もある。他方で、この所定量ΔP2は、ストリング電流の現在値と第1の所定値との差が相対的に大きい場合には、ストリング電流の現在値と第1の所定値との差よりも少量になる場合もある。この所定量ΔP2が、ストリング電流の現在値と第1の所定値との差よりも少量になる場合には、ストリング電流の更新が複数回繰り返し実行される。
【0058】
次に、ステップS11において、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値を電力変換器PCに送信してから所定時間T2の間、待機する。この所定時間T2は、ストリングコントローラ102による電力変換器PCの制御に必要な時間とストリング電流の変化速度とを考慮して設定されている。
【0059】
次に、ステップS12において、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値が、第1の所定値に達したか(ストリング電流の増加が完了したか)否かを判定する。ステップS12において肯定判定がされた場合には、ステップS13に移行し、ステップS12において否定判定がされた場合には、ステップS10に移行する。
【0060】
ステップS13,S14において、ストリングコントローラ102は、酸化被膜除去処理を実行する。まず、ステップS13において、ストリングコントローラ102は、第1の所定値のストリング電流をバイパススイッチユニットB’のスイッチS2に流した状態で当該スイッチS2をCloseからOpenに切り換える(下記表1のS13-1)。そして、ストリングコントローラ102は、当該スイッチS2をOpenからCloseに切り換え(下記表1のS13-2)、さらにCloseからOpenに切り換える(下記表1のS13-3)。これにより、当該スイッチS2の接点部分にアーク放電が発生し、当該接点部分にできた酸化被膜が除去される。
【0061】
次に、ステップS14において、ストリングコントローラ102は、バイパススイッチユニットB’のスイッチS1をOpenからCloseに切り換えて第1の所定値のストリング電流をバイパススイッチユニットB’のスイッチS1に流す(下記表1のS14-1)。そして、ストリングコントローラ102は、バイパススイッチユニットB’のスイッチS1をCloseからOpenに切り換え(下記表1のS14-2)、次にOpenからCloseに切り換え(下記表1のS14-3)、さらにCloseからOpenに切り換える(下記表1のS14-4)。これにより、当該スイッチS1の接点部分にアーク放電が発生し、当該接点部分にできた酸化被膜が除去される。なお、スイッチS1,S2をCloseからOpen、OpenからClose、CloseからOpenに切り換えることは必須ではない。例えば、スイッチS1,S2をCloseからOpenに、又はOpenからCloseに1度切り換えるだけでもよい。
【表1】
【0062】
次に、ステップS15において、ストリングコントローラ102は、バイパス制御要求の対象外の蓄電池モジュールM”の接続又はバイパスの状態がステップS3でメモリに記録された状態に復帰するように、バイパススイッチユニットB”のスイッチS1,S2のOpen/Closeの状態を切り換える。この際、ストリングコントローラ102は、バイパス制御要求の対象の蓄電池モジュールM’がバイパス状態になるように、バイパススイッチユニットB’のスイッチS1,S2のOpen/Closeの状態を切り換える。以上で処理を終了する。
【0063】
以上説明したように、本実施形態の蓄電池制御装置100は、電力変換器PCによりストリング電流を第1の所定値に設定し、複数のバイパススイッチユニットB1~Bnにより複数の蓄電池モジュールM1~Mnの接続又はバイパスの状態を所定の状態に設定する。これにより、蓄電池ストリングSTRの総電圧が、バイパススイッチユニットB1~Bnの耐電圧以下となり、且つ、機械式リレーであるスイッチS1,S2の接点部分にアーク放電が発生する第1の条件が成立する。そして、蓄電池制御装置100は、第1の条件が成立する状態で、機械式リレーであるスイッチS1,S2を開閉させる酸化被膜除去処理を実行する。その後、蓄電池制御装置100は、バイパス制御要求の対象の蓄電池モジュールM’のバイパス制御を実行する。また、蓄電池制御装置100は、バイパス制御要求の対象外の蓄電池モジュールM”の接続状態又はバイパス状態を元の状態に復帰させる。
【0064】
即ち、本実施形態の蓄電池制御装置100は、電力変換器PCによりストリング電流を第1の所定値まで減少させてから、バイパス制御要求の対象の蓄電池モジュールM’のバイパス制御を実行する。これにより、バイパス制御の実行時に蓄電システム1の入出力電力に許容範囲を超える大きな変動が生じることを防止できる。
【0065】
また、本実施形態の蓄電池制御装置100は、電力変換器PCによりストリング電流をスイッチS1,S2の接点部分にアーク放電が発生する第1の所定値に設定してから、所定のスイッチS1,S2のOpen/Closeの切り換えを実行する。これにより、機械式リレーであるスイッチS1,S2の接点部分にできた酸化被膜を除去できる。
【0066】
さらに、本実施形態の蓄電池制御装置100は、酸化被膜除去処理の実行時における蓄電池モジュールM1~Mnの接続又はバイパスの状態を、蓄電池ストリングSTRの総電圧がバイパススイッチユニットB1~Bnの耐電圧以下となるように設定する。これにより、保護回路16やスイッチS1,S2の耐電圧を蓄電池ストリングSTRの総電圧に比して低く設定した場合であっても、酸化被膜除去処理の実行時に、酸化被膜除去処理の対象のバイパススイッチユニットB1~Bnの保護回路16やスイッチS1,S2に過電圧が印加されることを防止できる。従って、耐電圧を低く抑えた低コストなツェナーダイオードや機械式リレーを、バイパススイッチユニットB1~Bnの保護回路16やスイッチS1,S2に使用でき、バイパススイッチユニットB1~Bnのコストを低減できる。
【0067】
また、本実施形態の蓄電池制御装置100は、電力変換器PCによりストリング電流を第2の所定値まで減少させて第2の条件を成立させる。その後、蓄電池制御装置100は、第2の条件が成立する状態で、複数のバイパススイッチユニットB1~Bnにより蓄電池モジュールM1~Mnの接続又はバイパスの状態を、上述のバイパススイッチユニットB1~Bnの耐電圧と蓄電池ストリングSTRの総電圧とを考慮した「所定の状態」に設定する。
【0068】
ここで、第2の所定値は、第1の所定値よりも低く、バイパススイッチユニットB1~Bnによる蓄電池モジュールM1~Mnのバイパス制御の実行時に蓄電システム1の入出力電力の変動が許容範囲に抑えられる程度に低く設定される。これにより、第2の条件が成立する状態でバイパススイッチユニットB1~Bnにより蓄電池モジュールM1~Mnの接続又はバイパスの状態が「所定の状態」に切り換えられる際に、蓄電システム1の入出力電力の変動を許容範囲に抑えることができる。
【0069】
また、本実施形態の蓄電システム1では、バイパススイッチユニットB1~BnがスイッチS1,S2の過電圧保護を行う保護回路16を備え、蓄電池制御装置100が、酸化被膜除去処理の実行時の蓄電池ストリングSTRの総電圧を、保護回路16の許容損失を超えないように設定する。これにより、スイッチS1,S2の耐電圧を保護回路16のツェナー電圧より高く設定すればよく、スイッチS1,S2の耐電圧を蓄電池ストリングSTRの総電圧より低く設定できる。従って、スイッチS1,S2のコストを低減できる。
【0070】
また、本実施形態の蓄電池制御装置100は、ストリング電流を第1の所定値に変化させる際、ストリング電流の指示値を、漸次的且つ連続的に変化させる。具体的には、蓄電池制御装置100は、第1の所定値と現在値との差分より少量の変化量(所定量ΔP2)だけ、第1の所定値に向けて変化させる処理を、ストリング電流の指示値が第1の所定値に達するまで繰り返し実行する。これにより、ストリング電流を第1の所定値に変化させる際における蓄電システム1の入出力電力の変動を許容範囲に抑えることができる。
【0071】
また、本実施形態の蓄電池制御装置100は、ストリング電流を第2の所定値に変化させる際、ストリング電流の指示値を、漸次的且つ連続的に変化させる。具体的には、蓄電池制御装置100は、第2の所定値と現在値との差分より少量の変化量(所定量ΔP1)だけ、第2の所定値に向けて変化させる処理を、ストリング電流の指示値が第2の所定値に達するまで繰り返し実行する。これにより、ストリング電流を第2の所定値に変化させる際における蓄電システム1の入出力電力の変動を許容範囲に抑えることができる。
【0072】
また、本実施形態の蓄電池制御装置100は、バイパススイッチユニットB1~Bnにより蓄電池モジュールM1~Mnの接続又はバイパスの状態を「所定の状態」に切り換える前に、現時点の蓄電池モジュールM1~Mnの接続又はバイパスの状態を内蔵するメモリに記録する。そして、蓄電池制御装置100は、酸化被膜除去処理を実行した後に、バイパススイッチユニットB1~Bnにより蓄電池モジュールM1~Mnの接続又はバイパスの状態を、バイパス制御の対象の蓄電池モジュールM’を除いて、メモリに記録された状態に復帰させる。これにより、スイッチS1,S2の酸化被膜を除去できると共に、酸化被膜除去処理の実行後に、蓄電池モジュールM1~Mnの接続又はバイパスの状態を所望の状態に設定することができる。
【0073】
図3は、本発明の他の実施形態の酸化被膜除去処理を説明するためのフローチャートである。このフローチャートに示す処理は、バイパス制御要求の対象外の蓄電池モジュールM”に対応するバイパススイッチユニットB”のスイッチS1,S2の酸化被膜を除去するための処理である。まず、ステップS101において、ストリングコントローラ102は、蓄電池ストリングSTRの蓄電池モジュールM1~Mnを監視し、バイパス制御が必要な蓄電池モジュールM’が有るか否かを判定する。ステップS101において否定判定がされた場合にはステップS102に移行し、ステップS101において肯定判定がされた場合には処理を終了する。なお、バイパス制御が必要な蓄電池モジュールM’が有る場合(ステップS101でYES)には、
図2のステップS2~S15の処理が実行される。
【0074】
ステップS102において、蓄電池ストリングSTRの蓄電池モジュールM1~Mnの現時点での接続又はバイパスの状態を内蔵するメモリ(図示省略)に記録する。次に、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値が第3の所定値に達するまでステップS103~S105のループ処理を繰り返し実行する(ストリング電流減少処理)。ここで、ステップS103~S105において、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値を所定量ΔP3ずつ漸次的且つ連続的に現在値から第3の所定値まで減少させる。
【0075】
まず、ステップS103において、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値を所定量ΔP3だけ減少させた値に更新する。この所定量ΔP3は、蓄電システム1の入出力電力の急激な変化を防止するという目的に適合するように少量に設定される。この所定量ΔP3は、ストリング電流の現在値と第3の所定値との差が小さい場合には、ストリング電流の現在値と第3の所定値との差と等しくなる場合もある。他方で、この所定量ΔP3は、ストリング電流の現在値と第3の所定値との差が相対的に大きい場合には、ストリング電流の現在値と第3の所定値との差よりも少量になる場合もある。この所定量ΔP3が、ストリング電流の現在値と第3の所定値との差よりも少量になる場合には、ストリング電流の更新が複数回繰り返し実行される。
【0076】
第3の所定値は、上述の第1の所定値と第2の所定値との条件を共に満たす値に設定される。即ち、第3の所定値は、蓄電池モジュールM1~Mnのバイパス制御時に蓄電システム1全体の入出力電力の変動が許容範囲に抑えられ、且つ、スイッチS1,S2のOpen/Closeの切換時にスイッチS1,S2の接点部分にアーク放電を発生させる程度の値に設定される。
【0077】
次に、ステップS104において、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値を電力変換器PCに送信してから所定時間T3の間、待機する。この所定時間T3は、ストリングコントローラ102による電力変換器PCの制御に必要な時間とストリング電流の変化速度とを考慮して設定されている。
【0078】
次に、ステップS105において、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値が、第3の所定値に達したか(ストリング電流の減少が完了したか)否かを判定する。ステップS105において肯定判定がされた場合にはステップS106に移行し、ステップS105において否定判定がされた場合にはステップS103に移行する。
【0079】
次に、ステップS106において、ストリングコントローラ102は、酸化被膜除去処理の対象の蓄電池モジュールM1~Mnが接続状態となるように、当該蓄電池モジュールM1~Mnに対応するバイパススイッチユニットB1~BnのスイッチS1,S2のOpen/Closeを切り換える。
【0080】
次に、ステップS107,S108において、ストリングコントローラ102は、酸化被膜除去処理を実行する。まず、ステップS107において、ストリングコントローラ102は、第3の所定値のストリング電流を、酸化被膜除去処理の対象のバイパススイッチユニットB1~BnのスイッチS2に流した状態で当該スイッチS2をCloseからOpenに切り換える(下記表2のS107-1)。そして、ストリングコントローラ102は、当該スイッチS2をOpenからCloseに切り換え(下記表2のS107-2)、次にCloseからOpenに切り換える(下記表2のS107-3)。これにより、当該スイッチS2の接点部分にアーク放電が発生し、当該接点部分にできた酸化被膜が除去される。
【0081】
次に、ステップS108において、ストリングコントローラ102は、酸化被膜除去処理の対象のバイパススイッチユニットB1~BnのスイッチS1をOpenからCloseに切り換えて第3の所定値のストリング電流を当該スイッチS1に流す(下記表2のS108-1)。そして、ストリングコントローラ102は、当該スイッチS1をCloseからOpenに切り換え(下記表2のS108-2)、次にOpenからCloseに切り換え(下記表2のS108-3)、さらにCloseからOpenに切り換える(下記表2のS108-4)。これにより、当該スイッチS1の接点部分にアーク放電が発生し、当該接点部分にできた酸化被膜が除去される。
【表2】
【0082】
次に、ステップS109において、ストリングコントローラ102は、蓄電池モジュールM1~Mnの接続又はバイパスの状態がステップS102でメモリに記録された状態に復帰するように、バイパススイッチユニットB1~BnのスイッチS1,S2のOpen/Closeを切り換える。以上で処理を終了する。
【0083】
以上説明したように、本実施形態の処理では、電力変換器PCによりストリング電流を第3の所定値まで減少させてから、酸化被膜除去処理の対象外の蓄電池モジュールM1~Mnのバイパス制御を実行する。これにより、バイパス制御の実行時に蓄電システム1の入出力電力に許容範囲を超える大きな変動が生じることを防止できる。
【0084】
また、本実施形態の処理では、電力変換器PCによりストリング電流をスイッチS1,S2の接点部分にアーク放電が発生する第3の所定値に設定してから、所定のスイッチS1,S2のOpen/Closeの切り換えを実行する。これにより、機械式リレーであるスイッチS1,S2の接点部分にできた酸化被膜を除去できる。
【0085】
さらに、本実施形態の処理では、保護回路16やスイッチS1,S2の耐電圧を蓄電池ストリングSTRの総電圧に比して低く設定した場合であっても、酸化被膜除去処理の実行時に、酸化被膜除去処理の対象のバイパススイッチユニットB1~Bnの保護回路16やスイッチS1,S2に過電圧が印加されることを防止できる。従って、耐電圧を低く抑えた低コストなツェナーダイオードや機械式リレーを、バイパススイッチユニットB1~Bnの保護回路16やスイッチS1,S2に使用でき、バイパススイッチユニットB1~Bnのコストを低減できる。
【0086】
図4は、本発明の他の実施形態に係る蓄電システム2の概略を示す回路図である。なお、上述の実施形態と同様の構成については、同一の符号を付し、上述の実施形態ついての説明を援用する。
【0087】
図4に示すように、本実施形態の蓄電システム2では、各蓄電池ストリングSTRが、ストリング遮断スイッチ11と、CR回路15とを備える。ストリング遮断スイッチ11は、各電力変換器PCと始端の蓄電池モジュールM1との間に設けられている。このストリング遮断スイッチ11は、電力変換器PCと始端の蓄電池モジュールM1とを接続又は遮断する。ストリング遮断スイッチ11は、後述のキャパシタCの電荷が電力変換器PCに流れることを防止する目的で設けられている。なお、例えば、電力変換器PCの動作を停止させ、電力変換器PCのインピーダンスが蓄電池ストリングSTRのインピーダンスに対して相対的に高い状態にすることができる場合等、ストリング遮断スイッチ11を要せずに上記目的を達成できる場合には、ストリング遮断スイッチ11を設けなくてもよい。
【0088】
CR回路15は、直列に接続されたキャパシタCと、抵抗Rとを備える。抵抗Rの一端は、キャパシタCに接続され、抵抗Rの他端は、ストリング遮断スイッチ11と始端のバイパススイッチユニットB1との間で電力線PLに接続されている。他方で、キャパシタCは、終端のバイパススイッチユニットBnと電力変換器PCとの間で電力線PLに接続されている。
【0089】
図4は、蓄電池モジュールM1がバイパス制御要求の対象の蓄電池モジュールM’である場合において蓄電池モジュールM1のバイパス制御を実行する前の状態を示している。この状態において、蓄電池モジュールM1は、接続状態となっており、バイパススイッチユニットB1において、スイッチS1はOpen、スイッチS2はCloseである。他方で、蓄電池モジュールM2~Mnは、バイパス状態となっており、バイパススイッチユニットB2~Bnにおいて、スイッチS1はClose、スイッチS2はOpenである。また、ストリング遮断スイッチ11はOpenである。
【0090】
この状態において、過渡電流が、蓄電池モジュールM1の正極からバイパススイッチユニットB1のスイッチS2を介してCR回路15に流れ、キャパシタCを充電し、バイパススイッチユニットB2~BnのスイッチS1を介して蓄電池モジュールM1の負極に流れる。ここで、
図4に示す状態で蓄電池モジュールM1、バイパススイッチユニットB1のスイッチS2、及びCR回路15等を流れてキャパシタCを充電する過渡電流の最大値が、第1の所定値に設定されている。「第1の所定値」は、機械式リレーであるスイッチS2の作動時に蓄電池モジュールM1、バイパススイッチユニットB1のスイッチS2、及びCR回路15等を流れてキャパシタCを充電する過渡電流によりスイッチS2の接点部分にアーク放電を発生させ当該接点部分にできた酸化被膜を除去できる程度の値に設定される。また、「第1の所定値」は、上記過渡電流が蓄電池モジュールM1、スイッチS2、及びCR回路15等を流れる時に蓄電池ストリングSTRの総電圧が保護回路16の許容損失を超えないように設定される。
【0091】
蓄電池制御装置200は、CR回路15のキャパシタCが充電された状態で、蓄電池モジュールM1を
図4に示す接続状態からバイパス状態に切り換える。蓄電池モジュールM1がバイパス状態に切り換えられた状態において、過渡電流が、キャパシタC、バイパススイッチユニットB1のスイッチS1、及びバイパススイッチユニットB2~Bnを流れる。ここで、蓄電池モジュールM1がバイパス状態に切り換えられてキャパシタC、バイパススイッチユニットB1のスイッチS1等を流れる過渡電流の最大値が、第4の所定値に設定されている。「第4の所定値」は、機械式リレーであるスイッチS1の作動時にキャパシタC、スイッチS1等を流れる過渡電流によりスイッチS1の接点部分にアーク放電を発生させ当該接点部分にできた酸化被膜を除去できる程度の値に設定される。また、「第4の所定値」は、上記過渡電流がキャパシタC、及びスイッチS1等を流れる時に蓄電池ストリングSTRの総電圧が保護回路16の許容損失を超えないように設定される。
【0092】
図5は、
図4に示す蓄電池制御装置200が、バイパス制御要求の対象の蓄電池モジュールM’を接続状態からバイパス状態に切り換える処理を説明するためのフローチャートである。なお、バイパス制御要求の対象の蓄電池モジュールM’が蓄電池モジュールM1である場合を例に挙げて当該処理について説明するが、他の蓄電池モジュールM2~Mnがバイパス制御要求の対象の蓄電池モジュールM’である場合も同様の処理を実行すればよい。また、バイパス制御要求の対象の蓄電池モジュールM’に対して酸化被膜除去処理を実行することは必須ではなく、酸化被膜除去処理を実行する蓄電池モジュールM1~Mnや酸化被膜除去処理を実行するタイミングは適宜設定すればよい。
【0093】
まず、ステップS201において、ストリングコントローラ102は、蓄電池ストリングSTRの蓄電池モジュールM1~Mnを監視し、バイパス制御が必要な蓄電池モジュールM’が有るか否かを判定する。ステップS201において肯定判定がされた場合には、ステップS202に移行し、ステップS201において否定判定がされた場合には、処理を終了する。
【0094】
ステップS202において、ストリングコントローラ102は、バイパス制御要求をシステムコントローラ101に送信し、システムコントローラ101からバイパス制御要求の許可の通知を受信したか否かを判定する。ステップS202において肯定判定がされた場合には、ステップS203に移行し、ステップS202において否定判定がされた場合には、処理を終了する。
【0095】
ステップS203において、ストリングコントローラ102は、蓄電池ストリングSTRの蓄電池モジュールM1~Mnの現時点での接続又はバイパスの状態を、内蔵するメモリ(図示省略)に記録する。次に、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値が第2の所定値に達するまでステップS204~S206のループ処理を繰り返し実行する(ストリング電流減少処理)。「第2の所定値」は、上述の「第1の所定値」、「第4の所定値」より低い値であり、蓄電池ストリングSTRのバイパス制御時に蓄電システム1全体の入出力電力の変動が許容範囲に抑えられる程度の低い値に設定される。本実施形態では、第2の所定値は0である。ここで、ステップS204~S206において、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値を所定量ΔP1ずつ漸次的且つ連続的に現在値から第2の所定値まで減少させる。
【0096】
まず、ステップS204において、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値を所定量ΔP1だけ減少させた値に更新する。この所定量ΔP1は、蓄電システム1の入出力電力の急激な変化を防止するという目的に適合するように少量に設定される。この所定量ΔP1は、ストリング電流の現在値と第2の所定値との差が小さい場合には、ストリング電流の現在値と第2の所定値との差と等しくなる場合もある。他方で、この所定量ΔP1は、ストリング電流の現在値と第2の所定値との差が相対的に大きい場合には、ストリング電流の現在値と第2の所定値との差よりも少量になる場合もある。この所定量ΔP1が、ストリング電流の現在値と第2の所定値との差よりも少量になる場合には、ストリング電流の更新が複数回繰り返し実行される。
【0097】
次に、ステップS205において、ストリングコントローラ102は、ストリング電流の指示値を電力変換器PCに送信してから所定時間T1の間、待機する。この所定時間T1は、ストリングコントローラ102による電力変換器PCの制御に必要な時間とストリング電流の変化速度とを考慮して設定されている。
【0098】
次に、ステップS206において、ストリングコントローラ102は、ストリング電流が、第2の所定値に達したか(ストリング電流の減少が完了したか)否かを判定する。ステップS206において肯定判定がされた場合には、ステップS207に移行し、ステップS206において否定判定がされた場合には、ステップS204に移行する。
【0099】
ステップS207において、ストリングコントローラ102は、ストリング遮断スイッチ11をOpen(切断状態)にする。なお、電力変換器PCによりストリング電流を十分に低下させる場合には、ストリング遮断スイッチ11により蓄電池ストリングSTRを遮断することは必須ではない。
【0100】
次に、ステップS208において、ストリングコントローラ102は、バイパス制御要求の対象外の蓄電池モジュールM2~Mnをバイパス状態にする(
図4参照)。次に、ステップS209において、ストリングコントローラ102は、バイパス制御要求の対象の蓄電池モジュールM1を接続状態にする。具体的には、バイパススイッチユニットB1のスイッチS1をOpenにしてからバイパススイッチユニットB1のスイッチS2をCloseにする。この際、過渡電流が、蓄電池モジュールM1、バイパススイッチユニットB1のスイッチS2、及びCR回路15等を流れ、バイパススイッチユニットB1のスイッチS2の接点部分にアーク放電を発生させ当該接点部分にできた酸化被膜を除去する。
【0101】
次に、ステップS210において、ストリングコントローラ102は、ステップS209から所定時間T4の間、待機する。この所定時間T4は、キャパシタCの充電に必要な時間を考慮して設定されている。ここで、キャパシタCの充電に必要な時間は、CR回路15が過渡状態を脱して定常状態に至るまでの時間に相当し、時定数τ(=C×R)に基づいて求められる。
【0102】
次に、ステップS211において、ストリングコントローラ102は、バイパス制御要求の対象の蓄電池モジュールM1を接続状態からバイパス状態に切り換える。具体的には、バイパススイッチユニットB1のスイッチS2をOpenにしてからバイパススイッチユニットB1のスイッチS1をCloseにする。この際、過渡電流が、キャパシタC、及びバイパススイッチユニットB1のスイッチS1等を流れ、バイパススイッチユニットB1のスイッチS1の接点部分にアーク放電を発生させ当該接点部分にできた酸化被膜を除去する。
【0103】
次に、ステップS212において、ストリングコントローラ102は、ステップS211から所定時間T5の間、待機する。この所定時間T5は、キャパシタCの放電に必要な時間を考慮して設定されている。ここで、キャパシタCの放電に必要な時間は、時定数τ(=C×R)に基づいて求められる。
【0104】
次に、ステップS213において、ストリングコントローラ102は、バイパス制御要求の対象外の蓄電池モジュールM2~Mnの接続又はバイパスの状態がステップS203でメモリに記録された状態に復帰するように、バイパススイッチユニットB2~BnのスイッチS1,S2のOpen/Closeの状態を切り換える。以上で処理を終了する。
【0105】
以上説明したように、本実施形態の蓄電システム2では、蓄電池ストリングSTRが、始端の蓄電池モジュールM1に対応するスイッチS2と電力変換器PCとの間、及び終端の蓄電池モジュールMnと電力変換器PCとの間に接続されたCR回路15を備える。この蓄電システム2において、蓄電池制御装置200は、以下の第1酸化被膜除去処理を実行する。
(第1酸化被膜除去処理)
複数のバイパススイッチユニットB1~Bnにより、全ての蓄電池モジュールM1~Mnをバイパス状態に設定し、その後、何れか一つのバイパススイッチユニットB1により何れか一つの蓄電池モジュールM1を接続状態に切り換える。
【0106】
ここで、蓄電池制御装置200による第1酸化被膜除去処理の実行時に、蓄電池ストリングSTRの総電圧が、バイパススイッチユニットB1~Bnの耐電圧以下となり、且つ、バイパススイッチユニットB1のスイッチS2にアーク放電が発生する第1の条件が成立するように、接続状態の蓄電池モジュールB1、バイパススイッチユニットB1のスイッチS2、及びCR回路15等を流れる過渡電流の最大値が設定されている。これにより、第1酸化被膜除去処理の実行時、上記の何れか一つの蓄電池モジュールM1、バイパススイッチユニットB1のスイッチS2、及びCR回路15等を流れる過渡電流により、バイパススイッチユニットB1のスイッチS2にアーク放電を発生させて当該スイッチS2にできた酸化被膜を除去することができる。
【0107】
また、蓄電池制御装置200は、以下の第2酸化被膜除去処理を実行する。
(第2酸化被膜除去処理)
第1酸化被膜除去処理の実行後、何れか一つのバイパススイッチユニットB1により、接続状態の蓄電池モジュールM1をバイパス状態に切り換える。
【0108】
ここで、蓄電池制御装置200による第2酸化被膜除去処理の実行時に、蓄電池ストリングSTRの総電圧が、バイパススイッチユニットB1~Bnの耐電圧以下となり、且つ、バイパススイッチユニットB1のスイッチS1にアーク放電が発生する第2の条件が成立するように、CR回路15、及びバイパススイッチユニットB1のスイッチS1等を流れる過渡電流の最大値が設定されている。これにより、第2酸化被膜除去処理の実行時、CR回路15、及びバイパススイッチユニットB1のスイッチS1等を流れる過渡電流により、バイパススイッチユニットB1のスイッチS1にアーク放電を発生させて当該スイッチS1にできた酸化被膜を除去することができる。
【0109】
以上、上述の実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、適宜公知や周知の技術を組み合わせてもよい。
【0110】
例えば、上述の実施形態では、スイッチS1,S2を機械式リレーとしたが、スイッチS1,S2の少なくとも一方を半導体スイッチとしてもよい。この場合、機械式リレーであるスイッチS1,S2の一方についてのみ酸化被膜除去処理を行えばよい。
【0111】
また、酸化被膜除去処理を実行するタイミング、酸化被膜除去処理の対象の蓄電池モジュールM1~Mnは、適宜設定すればよい。また、バイパススイッチユニットB1~Bnに保護回路16を設けることは必須ではなく、保護回路16を設けない場合には、酸化被膜除去処理の実行時の蓄電池ストリングSTRの総電圧を機械式リレーであるスイッチS1,S2の耐電圧以下に設定すればよい。
【0112】
また、上述の実施形態では、ストリング電流の指示値を所定量ΔP1,ΔP2,ΔP3ずつ、時間をかけて漸次的且つ連続的に目標値まで変化させる。しかしながら、例えば、ストリング電流の変化が蓄電システム1の入出力電力に及ぼす影響が軽微であるような場合には、ストリング電流の指示値を一斉に変化させてもよい。
【0113】
さらに、上述の実施形態では、蓄電及び電流抑制回路としてCR回路15を例に挙げたが、蓄電及び電流抑制回路は、電荷を蓄える機能と電流を抑制する機能とを備えていればよく、例えば、抵抗Rに代えて定電流ダイオードや電流制御回路を設けてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1 :蓄電システム
2 :蓄電システム
15 :CR回路(蓄電及び電流抑制回路)
16 :保護回路
100 :蓄電池制御装置
200 :蓄電池制御装置
B1~Bn,B’,B” :バイパススイッチユニット(バイパス回路)
BL :バイパス線
M1~Mn,M’,M” :蓄電池モジュール(蓄電池)
PC :電力変換器
S1 :スイッチ(第2スイッチ、機械式リレー)
S2 :スイッチ(第1スイッチ、機械式リレー)
STR :蓄電池ストリング
ΔP1 :所定量(少量の変化量)
ΔP2 :所定量(少量の変化量)
ΔP3 :所定量(少量の変化量)