(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】エレベータの運転制御調整装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/18 20060101AFI20250407BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
B66B1/18 Z
B66B3/00 L
B66B3/00 M
(21)【出願番号】P 2023109990
(22)【出願日】2023-07-04
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英光
(72)【発明者】
【氏名】根本 竜太郎
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3006583(JP,U)
【文献】国際公開第2020/136872(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/18
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータ動作状態ごとに各種の不満をそれぞれ表すワードと各種の不満をそれぞれ低減させる制御とを予め関連付けた情報を管理する情報管理部と、
エレベータの乗場もしくはかご内でエレベータ利用者が発する声を収集する音声収集部と、
前記音声収集部により収集される声に含まれる不満を表すワード
とエレベータ動作状態とに
対応する制御をエレベータの運転に適用する運転制御調整部と、
を具備する、エレベータの運転制御調整装置。
【請求項2】
各種の不満をそれぞれ表すワードと各種の不満をそれぞれ低減させる制御とを予め関連付けた情報を管理する情報管理部と、
エレベータの乗場もしくはかご内でエレベータ利用者が発する声を収集する音声収集部と、
前記音声収集部により収集される声に含まれる不満を表すワードに基づき、エレベータの運転に適用する制御を調整する運転制御調整部と、
を具備し、
前記運転制御調整部は、
出現頻度が第1の閾値を上回るワードがある場合、当該ワードに関連付けられた制御を実施することを決定する
、
エレベータの運転制御調整装置。
【請求項3】
前記運転制御調整部は、
前記第1の閾値を上回るワードの出現頻度が第2の閾値を下回った場合、当該ワードに関連付けられた制御の実施を解除することを決定する、
請求項
2に記載のエレベータの運転制御調整装置。
【請求項4】
前記第1の閾値を上回るワードの出現頻度が前記第2の閾値を下回らない状態が一定期間以上続く場合、当該ワードに関連付けられた制御を変更する再設定処理部をさらに具備する、
請求項
3に記載のエレベータの運転制御調整装置。
【請求項5】
各種の不満をそれぞれ表すワードと各種の不満をそれぞれ低減させる制御とを予め関連付けた情報を管理する情報管理部と、
エレベータの乗場もしくはかご内でエレベータ利用者が発する声を収集する音声収集部と、
前記音声収集部により収集される声に含まれる不満を表すワードに基づき、エレベータの運転に適用する制御を調整する運転制御調整部と、
を具備し、
前記情報管理部は、
エレベータ利用者が外部の情報端末から前記情報に含まれる任意のワードもしくは制御の内容を変更することを許容する
、
エレベータの運転制御調整装置。
【請求項6】
前記情報管理部は、
前記情報において、各種のワードにそれぞれ対応する前記第1の閾値として、ワード毎に付与される優先度もしくは制御毎に付与される優先度に応じた閾値を設定する、
請求項
2に記載のエレベータの運転制御調整装置。
【請求項7】
前記運転制御調整部は、
不満を表すワードに相反する満足を表すワードがある場合、当該不満を表すワードに関連付けられた閾値または制御または当該不満を表すワードの数を変更する、
請求項
2に記載のエレベータの運転制御調整装置。
【請求項8】
各種の不満をそれぞれ表すワードと各種の不満をそれぞれ低減させる制御とを予め関連付けた情報を管理する情報管理部と、
エレベータの乗場もしくはかご内でエレベータ利用者が発する声を収集する音声収集部と、
前記音声収集部により収集される声に含まれる不満を表すワードに基づき、エレベータの運転に適用する制御を調整する運転制御調整部と、
を具備し、
前記情報管理部は、
エレベータ利用者の不満を低減させる制御の変化を示す情報を、外部の情報端末から閲覧することを許容する
、
エレベータの運転制御調整装置。
【請求項9】
コンピュータに、
エレベータ動作状態ごとに各種の不満をそれぞれ表すワードと各種の不満をそれぞれ低減させる制御とを予め関連付けた情報を管理する情報管理機能と、
エレベータの乗場もしくはかご内でエレベータ利用者が発する声を収集する音声収集機能と、
前記音声収集機能により収集される声に含まれる不満を表すワード
とエレベータ動作状態とに
対応する制御をエレベータの運転に適用する運転制御調整機能と、
を実現させるための、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの運転制御調整装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータは、必ずしもエレベータ利用者が満足するように運行しているとは限らない。エレベータ利用者が抱く不満を低減させるためには、一般に、建物の管理者やオーナー(以降、「管理者等」と称す)がエレベータ利用者の要望を取り纏めて制御の変更方法を決める必要がある。例えば「長く待つ人を少なくする」、「早く応答する呼びを多くする」、「予約的中率を上げる」等の予め準備された制御の選択肢の中から、重視する制御を手動で選び、選んだ制御をエレベータの運転に適用する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平01-231778号公報
【文献】特開2021-080077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の手法では、制御の設定変更を行う管理者等が実際のエレベータ利用者の意見をくみ取れていなかったり、設定変更を行う時期が早かったり、遅かったりすることがあるため、利用者の不満を解消することは難しい。また、管理者等は、エレベータ利用者が抱く不満を意識しつつ手動で制御の設定変更をしたり、その変更をエレベータ会社へ依頼したりするので、作業が繁雑で負担がかかる。
【0005】
発明が解決しようとする課題は、利用者の不満を低減し、管理者等の負担を軽減することを可能にする、エレベータの運転制御調整装置およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によるエレベータの運転制御調整装置は、エレベータ動作状態ごとに各種の不満をそれぞれ表すワードと各種の不満をそれぞれ低減させる制御とを予め関連付けた情報を管理する情報管理部と、エレベータの乗場もしくはかご内でエレベータ利用者が発する声を収集する音声収集部と、前記音声収集部により収集される声に含まれる不満を表すワードとエレベータ動作状態とに対応する制御をエレベータの運転に適用する運転制御調整部とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、実施形態に係るエレベータの群管理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、乗場14の構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、乗りかご12内の出入口周辺部分の構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、情報管理部22cにより設定・管理される関連付け情報の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、カードリーダを用いる場合の構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、利用者IDと嗜好の制御とを関連付けた情報の概念を示す図である。
【
図7】
図7は、運転制御調整装置22が群管理制御装置20から独立して設けられる場合の構成の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、運転制御調整装置22による動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。
【0009】
<エレベータシステムの構成>
図1は、実施形態に係るエレベータの群管理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【0010】
図1に示されるエレベータの群管理システムは、エレベータの群管理制御装置20、複数台のエレベータを構成するエレベータ制御装置11a~11cおよび乗りかご12a~12c、ならびに各階の乗場(エレベータホール)14に設置される乗場呼び登録装置15および集音マイク16a~16cを含む。
【0011】
ここでは、A~C号機からなる3台のエレベータが群管理される例が示されている。A~C号機のエレベータには、3つのエレベータ制御装置11a~11c、3つの乗りかご12a~12c、3つの集音マイク16a~16cがそれぞれ対応するものとなっている。
【0012】
エレベータ制御装置11a~11cは、各号機の乗りかご12a~12c毎に設けられ、それぞれに対応した乗りかごの運転制御を行う。具体的には、エレベータ制御装置11a~11cは、それぞれに乗りかご12a~12cを昇降動作させるための図示せぬモータ(巻上機)の制御やドアの開閉制御などを行う。これらのエレベータ制御装置11a~11cは、コンピュータを用いて構成される。
【0013】
乗りかご12a~12cは、モータの駆動により昇降路内を昇降動作する。乗りかご12a~12cには、それぞれにかご内の積載荷重を検知するための荷重センサ13a~13cが設置されている。荷重センサ13a~13cによって検知された荷重データは、エレベータ制御装置11a~11cを介して群管理制御装置20に伝送される。
【0014】
また、乗りかご12a~12cには、それぞれ集音マイク18a~18cが設置されている。集音マイク18a~18cは、かご内のエレベータ利用者が発する声を集音する。集音されたエレベータ利用者の声は、エレベータ制御装置11a~11cを通じて、群管理制御装置20内の運転制御調整装置22へ伝送される。
【0015】
群管理制御装置20は、複数台の乗りかご12a~12cの運転を群管理制御するための装置であり、エレベータ制御装置11a~11cと同様にコンピュータを用いて構成される。本実施形態において、この群管理制御装置20には、呼び記憶部21、運転制御調整装置22、運転制御部23が備えられている。なお、ここでは運転制御調整装置22が群管理制御装置20の内側に設けられる場合の例を示すが、運転制御調整装置22は群管理制御装置20の外側に設けられてもよい。その場合の具体例については後で述べる。
【0016】
呼び記憶部21には、乗場呼び登録装置15の操作によって登録された乗場呼びを記憶する。運転制御調整装置22は、集音マイク16a~16cや集音マイク18a~18cからそれぞれ収集される声に含まれる不満を表すワード(言葉)に基づき、エレベータ利用者が抱く不満を低減させるための制御の実施を運転制御部23に指示するものである。運転制御調整装置22は、図示せぬ通信ネットワークを介して管理者等が所持する情報端末10や個々のエレベータ利用者が所持する情報端末11との通信を行えるように構成されている。管理者等は、情報端末10を用いて運転制御調整装置22で管理される情報の閲覧や内容変更(以降、「閲覧等」と称す)を行うことができる。場合によっては、エレベータ利用者が情報端末11を用いて運転制御調整装置22で管理される情報の一部の閲覧等を行えるように構成されていてもよい。
【0017】
運転制御調整装置22は、コンピュータを用いて構成され、運転制御調整装置22が備える各種の機能は、コンピュータが実行するプログラムとして実現される。運転制御調整装置22が備える各種の機能については、後で詳しく述べる。
【0018】
運転制御部23は、エレベータ制御装置11a~11cを通じて、複数のエレベータの運行を制御する。運転制御部23は運転制御調整装置22からの指示が無ければ、一般的な群管理制御を行うが、運転制御調整装置22からある制御の実施を指示されれば、その制御の実施を優先して行う。
【0019】
運転制御部23は、新たな乗場呼びが登録された場合、乗りかご12a~12cの中から当該乗場呼びを割当てる乗りかごを選出し、該当する乗場14に応答させる(乗りかごを乗場呼びが登録された階の乗場14に向かわせる)。
【0020】
図2は、乗場14の構成の一例を示す図である。
各階の乗場(エレベータホール)14には、乗場呼びを登録するための乗場呼び登録装置15が設置されている。
図2の例では、便宜的に任意の階に設置された乗場呼び登録装置15が示されているが、実際には各階毎に少なくとも1つの乗場呼び登録装置15が設置されている。乗場呼び登録装置15は、図示せぬ伝送ケーブルを介して群管理制御装置20に接続されている。乗場呼び登録装置15は、エレベータ利用者が行先方向(上方向/下方向)を指定するための方向ボタン(「乗場呼びボタン」とも称す)を備えている。
【0021】
ここで、「乗場呼び」とは、乗場で方向ボタンの操作により登録される呼びの信号のことであり、登録階と行先方向の情報を含む。これに対し、「かご呼び」とは、乗りかご内で行先階ボタンの操作により登録される呼びの信号のことであり、乗りかごと行先階の情報を含む。
【0022】
また、各階の乗場(エレベータホール)14には、集音マイク16a~16cが号機ごとに設置されている。集音マイク16a~16cは、それぞれ、乗場ドア17a~17cの近傍に設置され、乗りかご12a~12cの到着口前で待機している複数のエレベータ利用者が発する声を集音する。集音されたエレベータ利用者の声は、群管理制御装置20内の運転制御調整装置22へ伝送される。
【0023】
次に、乗りかご12a~12cの1つを便宜的に乗りかご12と称して、乗りかご12内の構成について説明する。
【0024】
図3は、乗りかご12内の出入口周辺部分の構成例を示す図である。但し、この例は一例であって、この例に限定されるものではない。
【0025】
乗りかご12の出入口には、かごドア40が開閉自在に設けられている。
図3の例では、両開きタイプのかごドア40が示されており、かごドア40を構成する2枚のドアパネル40a,40bが間口方向(水平方向)に沿って互いに逆方向に開閉動作する。
【0026】
乗りかご12の出入口の両側には、入口柱41a,41bが設けられている。
図3の例では、かごドア40が戸開したときに、一方のドアパネル40aが入口柱41aの裏側に設けられた戸袋42aに収納され、他方のドアパネル40bが入口柱41bの裏側に設けられた戸袋42bに収納される。
【0027】
また、入口柱41a,41bの一方あるいは両方には、表示器43や、行先階ボタン44などが配設された操作盤45、スピーカ46が設置されている。
図3の例では、入口柱41aにスピーカ46や前述した集音マイク18a~18cの1つである集音マイク18が設置され、入口柱41bには表示器43、操作盤45が設置されている。乗りかご12内に乗車したエレベータ利用者が操作盤45上の行先階ボタン44を押下操作すると、当該行先階ボタン44によって指定された行先階がかご呼びとして登録される。乗りかご12内で登録されたかご呼びは、乗りかご12に対応したエレベータ制御装置11を介して群管理制御装置20に送られる。
【0028】
<運転制御調整装置22の機能構成>
図1に示される群管理制御装置20内の運転制御調整装置22は、各種の機能として、音声収集部22a、音声解析部22b、情報管理部22c、会話分類部22d、出現頻度集計部22e、状況判定部22f、運転制御調整部22g、および再設定処理部22hを有する。
【0029】
音声収集部22aは、各階の乗り場で号機毎に設置された集音マイク16a~16cによりそれぞれ集音された音声を区別して収集するとともに、乗りかご毎に集音マイク18a~18cによりそれぞれ集音された音声を区別して収集し、収集したそれぞれの音声のデータを所定の記憶領域に記録する。
【0030】
音声解析部22bは、音声収集部22aにより収集された個々の音声データをテキスト化して形態素解析等を行うことにより個々のワードを抽出(検出)する。
【0031】
情報管理部22cは、各種の不満をそれぞれ表すワードと各種の不満をそれぞれ低減させる制御とを予め関連付けた関連付け情報などの設定・管理を行う。
【0032】
図4に、情報管理部22cにより設定・管理される関連付け情報の一例を示す。但し、
図4に示される関連付け情報は一例であって、この例に限定されるものではない。関連付け情報の構成は適宜変えてもよい。
【0033】
図4に示される関連付け情報は、各種の設定項目として「エレベータ動作状態」、「ワード」、「制御」、「閾値」、「実績」を有する。
【0034】
「エレベータ動作状態」は、対応する「ワード」が音声としてエレベータ利用者から発せされる場合に想定されるエレベータの動作状態を示す。「ワード」は、対応する「エレベータ動作状態」においてエレベータ利用者が不満を感じたときに発すると想定される言葉を示し、「制御」は、その不満を低減もしくは解消するのに有効な制御を示す。
【0035】
なお、「ワード」は、「乗り場」での会話に関連するワードと、「かご内」での会話に関連するワードとに分けて管理してもよい。
【0036】
「エレベータ動作状態」の例としては、“乗り場呼び応答戸開前”(乗り場呼びに応答する前であって、ドアが戸開する前)、“乗り場呼び応答戸開時”(乗り場呼びに応答する前であって、ドアが戸開している時)、“かご呼び登録階へ応答中”(かご呼び登録のあった階へ応答している間)などがある。
【0037】
例えば、「エレベータ動作状態」が“乗り場呼び応答戸開前”(乗り場呼びに応答する前であって、ドアが戸開する前)で、「ワード」が“外れた、先に来た、…”(予想に反して、乗りかごの着床がランタン等により予告された号機と異なる号機の乗りかごが着床したときなどに発せられる言葉)に該当するものである場合、対応する「制御」は、“他号機先着抑制動作”(乗りかごの着床を予定している号機と異なる号機の乗りかごが先に着床することを抑制する動作)となる。
【0038】
また、「エレベータ動作状態」が“乗り場呼び応答戸開時”(乗り場呼びに応答する前であって、ドアが戸開している時)で、「ワード」が“乗れない、…”(着床した乗りかごに乗ろうとしても、満員状態のために乗れないときなどに発せられる言葉)に該当するものである場合、対応する「制御」は、“他号機を検出階へ自動配車”(他号機の乗りかごを乗り場呼びのあった階に向かわせること)となる。
【0039】
また、「エレベータ動作状態」が“乗り場呼び応答戸開前”(乗り場呼びに応答する前であって、ドアが戸開する前)で、「ワード」が“遅い、長い、…”(乗りかごの到着が遅いと感じたとき、待ち時間が長いと感じたときなどに発せられる言葉)に該当するものである場合、対応する「制御」は、“予測未応答による割当変更・重み付け”(予測未応答の時間調整による乗りかごの割当変更・重み付け)となる。
【0040】
また、「エレベータ動作状態」が“かご呼び登録階へ応答中”(かご呼び登録のあった登録階へ乗りかごが向かっている間)で、「ワード」が“混んでいる、…”(乗りかごの中が多くの人で混んでいるときなどに発せられる言葉)に該当するものである場合、対応する「制御」は、“かご内比重に比例して追加割当抑制”(かご内比重に比例して当該乗りかごのかご呼び登録階への追加割当が抑制されるようにすること)となる。
【0041】
「閾値」は、対応する「ワード」の出現頻度に対する閾値であり、対応する「制御」を実施するための条件や、対応する「制御」の実施を解除するための条件を設定するために使用される。なお、出現頻度は、一定期間内にそのワードが出現する数を示すものとしてもよいし、一定期間内に出現する全ワードの数に対してそのワードが出現する数の比率を示すものとしてもよい。
【0042】
上記「閾値」には、対応する「制御」を実施するための条件を示す第1の閾値と、対応する「制御」の実施を解除するための条件を示す第2の閾値とがある。「ワード」の出現頻度が第1の閾値を上回ったときには、対応する「制御」が実施され、「ワード」の出現頻度が第2の閾値を下回ったときには、対応する「制御」の実施が解除されることになる。なお、第2の閾値は、第1の閾値よりも低い値としてもよいし、第1の閾値と同じ値としてもよい。
【0043】
上述した「エレベータ動作状態」、「ワード」、「制御」、「閾値」は、それぞれ、現時点での設定内容をリアルタイムに示す。これに対し、「実績」は、上記した「エレベータ動作状態」、「ワード」、「制御」、「閾値」の各設定内容の変更履歴を示す。また、「実績」は、現時点で検出されている各種のワードおよびそれらの出現頻度と併せて、これまで検出されてきた各種のワードおよびそれらの出現頻度の計時変化の履歴を示す。さらに、「実績」は、これまでの制御の実施の有無の履歴、ならびに制御の変更がある場合にはその変更履歴を示す。
【0044】
これにより、例えば「制御」を実施する前後とワードの出現頻度の変化量あるいは変化率との相関を確認することができる。また、「制御」の内容を変更した場合は、変更前後の制御の内容とワードの出現頻度の変化量あるいは変化率との相関を確認することができる。「閾値」を変更した場合も、変更前後の閾値とワードの出現頻度の変化量あるいは変化率との相関を確認することができる。
【0045】
ここで
図1の説明に戻ると、会話分類部22dは、音声解析部22bにより抽出(検出)された個々のワードについて、情報管理部22cを参照して分類する。例えば、抽出されたある個々のワードが、
図4で説明した関連付け情報に設定されている各種の不満を表すワードのいずれかに該当するか否かを判定し、該当するものがある場合はどのワードに該当するのかを判定する。その分類結果は「実績」の中に記録される。
【0046】
出現頻度集計部22eは、会話分類部22dにより分類された各種のワードにつき、一定時間ごとに出現頻度の集計を行う。その集計結果は「実績」の中に記録される。
【0047】
状況判定部22fは、不満を表す各種のワードの出現頻度の閾値を超える増加や減少の有無を判定する。具体的には、出現頻度集計部22eの集計結果に基づき、出現頻度が第1の閾値を上回ったワードがあるか否かの判定や、第1の閾値を上回ったワードの出現頻度が第2の閾値を下回ったか否かの判定などを行う。
【0048】
運転制御調整部22gは、エレベータ利用者の不満を表すワードの増加や減少に基づき、エレベータの運転に適用する制御を調整する。具体的には、運転制御調整部22gは、状況判定部22fにより出現頻度が第1の閾値を上回るワードがあると判定された場合、当該ワードに関連付けられた制御を実施することを決定し、その制御の実施を運転制御部23に指示する。また、状況判定部22fが、第1の閾値を上回るワードの出現頻度が第2の閾値を下回ったと判定した場合、当該ワードに関連付けられた制御の実施を解除することを決定し、その解除を運転制御部23に指示する。
【0049】
第1の閾値を上回るワードが複数存在する場合、1つの制御のみを実施して残りの制御を実施しない(例えば、実施中の制御が1つある場合はその制御が解除されるまで他の制御の実施を認めない)ようにしてもよいし、複数の制御を同時に実施しても支障が生じないのであれば複数の制御を実施するようにしてもよい。複数の制御の組み合わせによっては、同時に実施しても支障が生じない場合と、支障が生じる場合とがある。
【0050】
再設定処理部22hは、ある制御を実施しても、増加したワードの出現頻度が一定期間経過しても減少しない場合、その出現頻度が減少するように、実施中の制御を変更する。具体的には、第1の閾値を上回るワードの出現頻度が第2の閾値を下回らない状態が一定期間以上続く場合、当該ワードに関連付けられた制御を変更する。
【0051】
制御の変更を行う場合には、
図4で説明した関連付け情報に設定されている「制御」の内容を変更する。例えば、ワード“乗れない、…”に対応する制御“他号機を検出階へ自動配車”を実施しても出現頻度が減少しない場合には、検出階へ配車する台数をもう1台増やす等の変更を行うようにしてもよい。また、1つのワードにつき、より多くの制御の候補が用意されていてもよい。その場合、多くの制御について、例えばAI(Artificial Intelligence)に予め変更前後の制御の内容とワードの出現頻度の変化量あるいは変化率との相関を学習させ、当該ワードの出現頻度を減少させるために最適な制御がAIにより導き出されるようにしてもよい。
【0052】
以上のように構成することにより、利用者の不満の声を適切な時期に手間をかけずに自動でエレベータの運転に反映させることでき、エレベータ利用者にとっての快適性・利便性および管理者等にとっての利便性を共に向上させることができる。
【0053】
<変形例>
次に、上述した実施形態の各種の変形例について説明する。
【0054】
・変化例1
情報管理部22cは、エレベータ利用者が情報端末11から関連付け情報に含まれる任意の「ワード」もしくは「制御」の内容を変更することを許容する機能を有するように構成されていてもよい。「エレベータ動作状態」の内容も変更できるように構成されていてもよい。
【0055】
変更後の内容は、予め用意された選択肢の中から選べるように構成されていてもよい。更には、新たな「エレベータ動作状態」、「ワード」、「制御」の内容を、予め用意された選択肢の中から選択して、関連付け情報の中に追加できるように構成されていてもよい。
【0056】
なお、上記のようにエレベータ利用者が情報端末11から関連付け情報の変更・追加を行えるように構成した場合、不適切な変更・追加が行われないように変更・追加の操作に一定の制限を設けておいてもよい。また、不適切な操作が行われた場合に管理者等の情報端末10にその旨が通知されるようにしておいてもよい。
【0057】
・変化例2
情報管理部22cは、関連付け情報において、各種のワードにそれぞれ対応する第1の閾値として、ワード毎に付与される優先度もしくは制御毎に付与される優先度に応じた閾値を設定する機能を有するように構成されていてもよい。
【0058】
優先度は、予めワード毎にもしくは制御毎に決められていてもよいし、エレベータ利用者が独自に情報端末11から決めることができるようにしてもよい。
【0059】
例えば、エレベータ利用者が強い不快感を示すワードほど優先度が高く、そのワードに対応する制御が実施されやすくなるように第1の閾値が低めに設定され、逆に、エレベータ利用者が弱い不快感を示すワードほど優先度が低く、第1の閾値が高めに設定されていてもよい。その場合、それぞれの第1の閾値は、それぞれの優先度に応じてバランスよく設定されていることが望ましい。また、第1の閾値の調整に合わせて第2の閾値も調整しておくことが望ましい。
【0060】
・変化例3
運転制御調整部22gは、不満を表すワードに相反する満足(ポジティブな感情)を表すワードが検出された場合、当該不満を表すワードに関連付けられた「閾値」または「制御」または当該不満を表すワードの出現頻度を変更する機能を有するように構成されていてもよい。
【0061】
不満を表すワードに相反する満足(ポジティブな感情)を表すワードが検出された場合、不満を表すワードに対応する制御を実施しているときであれば、当該不満を表すワードに対応する制御の実施が解除されやすくなるように、第2の閾値を所定値分だけ上げるようにしてもよいし、実施中の制御を弱めるようにしてもよい。また、第2の閾値を所定値分だけ上げる代わりに、当該不満を表すワードの出現頻度から満足(ポジティブな感情)を表すワードの出現頻度を差し引いた値を、第2の閾値との比較に用いるようにしてもよい。
【0062】
これらの処理は、不満を表すワードに対応する制御を実施していないときにも適用できる。すなわち、不満を表すワードに相反する満足(ポジティブな感情)を表すワードが検出された場合、不満を表すワードに対応する制御を実施していないときであれば、当該不満を表すワードに対応する制御が実施されにくくなるように、第1の閾値を所定値分だけ上げるようにしてもよいし、第1の閾値を所定値分だけ上げる代わりに、当該不満を表すワードの出現頻度から満足(ポジティブな感情)を表すワードの出現頻度を差し引いた値を、第1の閾値との比較に用いるようにしてもよい。
【0063】
・変化例4
情報管理部22cは、エレベータ利用者の不満を低減させる制御の変化を示す情報を、外部の情報端末から閲覧することを許容する機能を有するように構成されていてもよい。
【0064】
前述したように、情報管理部22cが管理する関連付け情報は、「エレベータ動作状態」、「ワード」、「制御」、「閾値」を含み、それらは、それぞれ現時点での設定内容をリアルタイムに示す。また、「実績」は、前述したように、「エレベータ動作状態」、「ワード」、「制御」、「閾値」の各設定内容の変更履歴を示すだけでなく、現時点で検出されている各種のワードおよびそれらの出現頻度と併せて、これまで検出されてきた各種のワードおよびそれらの出現頻度の計時変化の履歴を示し、さらに、これまでの制御の実施の有無の履歴、ならびに制御の変更がある場合にはその変更履歴を示す。
【0065】
これにより、例えば「制御」を実施する前後とワードの出現頻度の変化量あるいは変化率との相関を確認することができる。また、「制御」の内容を変更した場合は、変更前後の制御の内容とワードの出現頻度の変化量あるいは変化率との相関を確認することができる。「閾値」を変更した場合も、変更前後の閾値とワードの出現頻度の変化量あるいは変化率との相関を確認することができる。
【0066】
このような関連付け情報は、エレベータ利用者や管理者等が情報端末を通じて把握しやすい表示形式で閲覧できるようにすることが望ましい。その場合、文字や表だけでなく、グラフ、イラスト等を用いた視覚的に把握しやすい表示形式を採用し、エレベータ利用者や管理者等が、エレベータ利用者の不満の低減効果を実感しやすいものとすることが望ましい。
【0067】
・変化例5
運転制御調整部22gは、エレベータ利用者の嗜好に合わせた制御をエレベータの運転に適用する機能を有するように構成されていてもよい。
【0068】
エレベータ利用者の個人ごとの特定には、声紋やIDカードを利用する。例えば、セキュリティゲートがあるビルには、IDカード(セキュリティーカードなど)から情報を読み取るカードリーダが設置されていることが多い。その場合、当該IDカードの情報を用いることにより、個人を特定することができる。また、マンションなどの入口付近には、マイクを備えたインターホンなどが設置されていることが多い。その場合、当該マイクから得られる声の声紋を用いることにより、個人を特定することができる。
【0069】
カードリーダを用いる場合の構成の一例を
図5に示す。
図5のようにビルのセキュリティゲートなどにカードリーダ19が設置されている場合、カードリーダ19が読み込むIDカードの情報が、群管理制御装置20内の運転制御調整装置22へ伝送されるようにしておく。運転制御調整装置22側では、情報管理部22cが、IDカードの情報から個人を特定した上で、「利用者ID」(エレベータ利用者の識別番号)と「嗜好の制御」(そのエレベータ利用者が嗜好する制御)とを関連付けた情報を管理する。
【0070】
図6に、「利用者ID」と「嗜好の制御」とを関連付けた情報の概念を示す。例えば利用者IDが“010001”のエレベータ利用者には、嗜好の制御として“制御A”が関連付けられている。また、利用者IDが“010002”のエレベータ利用者には、嗜好の制御として“制御B”が関連付けられている。例えば、利用者IDが“010001”のエレベータ利用者の来所が検出された場合には、“制御A”がエレベータの運転に適用されるようにすればよい。
【0071】
なお、「嗜好の制御」は、例えばエレベータ利用者が過去に発した満足を表す声もしくは不満を表す声に基づいてAIが決定するようにしてもよいし、エレベータ利用者が情報端末11を用いて予め用意された選択肢の中から指定できるようにしてもよい。
【0072】
・変化例6
運転制御調整装置22は、運転制御調整装置22は群管理制御装置20の外側に設けられてもよい。
【0073】
すなわち、運転制御調整装置22は、必ずしも
図1に示されるように群管理制御装置20の内側に設けられる必要はない。運転制御調整装置22は、群管理制御装置20から離れた場所に独立して設けられてもよい。その場合、運転制御調整装置22の機能の全てが群管理制御装置20から離れた場所に設けられてもよいし、運転制御調整装置22の機能の一部のみが群管理制御装置20から離れた場所に設けられてもよい。
【0074】
図7に、運転制御調整装置22が群管理制御装置20から独立して設けられる場合の構成の一例を示す。
【0075】
図7に示される運転制御調整装置22は、群管理制御装置20との通信が可能であり、前述した群管理制御装置20内の運転制御調整装置22と同等の機能・動作を実現する。すなわち、
図7に示される運転制御調整装置22は、
図1で説明した呼び記憶部21に記憶される情報を取得したり、集音マイク18a~18cから供給される音声信号を取得したり、集音マイク16a~16から供給される音声信号を取得したり、情報端末10,11との間で情報の送受を行ったり、運転制御部23に対して運転制御調整部22gが制御の実施を指示したりすることができる。この場合、集音マイク16a~16から供給される音声信号や集音マイク18a~18cから供給される音声信号は、群管理制御装置20を経由することなく直接的に運転制御調整装置22が取得できるように構成してもよい。運転制御調整装置22と情報端末10,11との情報の送受も、群管理制御装置20を経由することなく直接的に行えるように構成してもよい。
【0076】
<動作例>
次に、
図8のフローチャートを参照して、運転制御調整装置22による動作の一例を説明する。
【0077】
最初に、情報管理部22cが、関連付け情報を設定する処理を行う(ステップS1)。ここでは、
図4で説明した各種の「エレベータ動作状態」、「ワード」、「制御」、「閾値」の内容が設定される。
【0078】
次に、音声収集部22aが、各階の乗り場で号機毎に設置された集音マイク16a~16cによりそれぞれ集音された音声を区別して収集するとともに、乗りかご毎に集音マイク18a~18cによりそれぞれ集音された音声を区別して収集する(ステップS2)。
【0079】
次に、音声解析部22bが、音声収集部22aにより収集された個々の音声データをテキスト化して形態素解析等を行うことにより個々のワードを抽出(検出)する(ステップS3)。
【0080】
次に、会話分類部22dが、音声解析部22bにより抽出(検出)された個々のワードを分類する(ステップS4)。例えば、抽出されたある個々のワードが、
図4で説明した関連付け情報に設定されている各種の不満を表すワードのいずれかに該当するか否かを判定し、該当するものがある場合はどのワードに該当するのかを判定する。その分類結果は「実績」の中に記録される。
【0081】
次に、出現頻度集計部22eが、会話分類部22dにより分類された各種のワードにつき、一定時間ごとに出現頻度の集計を行う(ステップS5)。その集計結果は「実績」の中に記録される。
【0082】
状況判定部22fが、不満を表す各種のワードの出現頻度の閾値を超える増加や減少の有無を判定する(ステップS6)。具体的には、出現頻度集計部22eの集計結果に基づき、出現頻度が第1の閾値を上回ったワードがあるか否かの判定や、第1の閾値を上回ったワードの出現頻度が第2の閾値を下回ったか否かの判定などを行う。
【0083】
該当するワードが無ければ(ステップS6のNO)、ステップS2からの処理を繰り返す。例えば、状況判定部22fにより出現頻度が第1の閾値を上回るワードが無いと判定された場合や、第1の閾値を上回るワードの出現頻度が第2の閾値を下回ったと判定した場合では、ステップS2へ処理を戻す。一方、該当するワードがあれば(ステップS6のYES)、運転制御調整部22gが、エレベータの運転に適用する制御を調整する(ステップS7)。
【0084】
例えば、状況判定部22fにより出現頻度が第1の閾値を上回るワードがあると判定された場合、運転制御調整部22gは、当該ワードに関連付けられた制御を実施することを決定し、その制御の実施を運転制御部23に指示する。また、第1の閾値を上回るワードの出現頻度が第2の閾値を下回ったと判定した場合、運転制御調整部22gは、当該ワードに関連付けられた制御の実施を解除することを決定し、その解除を運転制御部23に指示する。
【0085】
再設定処理部22hは、ある制御を実施しても、増加したワードの出現頻度が一定期間経過しても減少しない場合、その出現頻度が減少するように、実施中の制御を変更する(ステップS8)。具体的には、第1の閾値を上回るワードの出現頻度が第2の閾値を下回らない状態が一定期間以上続く場合、当該ワードに関連付けられた制御を変更する。その後、ステップS2へ戻る。なお、再設定処理を要しない場合は、何もせずにステップS2へ戻る。
【0086】
これにより、利用者の不満の声を適切な時期に手間をかけずに自動でエレベータの運転に反映させることでき、エレベータ利用者にとっての快適性・利便性および管理者等にとっての利便性を共に向上させることができる。
【0087】
以上詳述したように、実施形態によれば、利用者の不満を低減し、管理者等の負担を軽減することが可能になる。
【符号の説明】
【0088】
10,11…情報端末、11a~11c…エレベータ制御装置、12a~12c…乗りかご、14…乗場(エレベータホール)、15…乗場呼び登録装置、16a~16c…集音マイク、17a~17c…乗場ドア、18a~18c…集音マイク、19…カードリーダ、20…群管理制御装置、21…呼び記憶部、22…運転制御調整装置、22a…音声収集部、22b…音声解析部、22c…情報管理部、22d…会話分類部、22e…出現頻度集計部、22f…状況判定部、22g…運転制御調整部、22h…再設定処理部、23…運転制御部。