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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】複合フィラー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/373 20060101AFI20250407BHJP
   B22F 1/05 20220101ALI20250407BHJP
   C01B 32/21 20170101ALI20250407BHJP
   C04B 35/628 20060101ALI20250407BHJP
   B22F 1/16 20220101ALI20250407BHJP
【FI】
H01L23/36 M
B22F1/05
C01B32/21
C04B35/628 020
B22F1/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023206607
(22)【出願日】2023-12-07
【審査請求日】2025-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390018740
【氏名又は名称】日本アエロジル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】田代 英昭
(72)【発明者】
【氏名】青木 昌雄
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-132827(JP,A)
【文献】特開2016-041850(JP,A)
【文献】特開2015-164106(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0217450(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/373
B22F 1/05
C01B 32/21
C04B 35/628
B22F 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素、金属、酸化亜鉛又は酸化ジルコニウムからなるコア物質と、このコア物質の表面に付着したシェル物質とからなるコアシェル構造を形成する複合フィラーであって、
前記シェル物質が、フュームド酸化物粒子と前記コア物質とを乾式ボールミルで混合することにより、前記フュームド酸化物粒子が前記コア物質の表面の一部又は全部に付着してなり、
前記フュームド酸化物粒子が、真球状の一次粒子が数珠状に凝集して融着することにより嵩高い凝集粒子が形成されこの凝集粒子から集塊粒子に変化した粒子であり、
前記複合フィラ-を100体積%とするとき、前記コア物質は30体積%~85体積%の範囲にあり、前記シェル物質は15体積%~70体積%の範囲にあり、
C-Therm社製の熱伝導率測定装置TRIDENT及び圧縮試験アクセサリ(CTA)を用いて最大圧縮荷重条件(2400.0gF)にて測定した熱伝導率が0.075W/m・K以上であり、
高抵抗・抵抗率計『Hiresta-UX』(株式会社三菱ケミカルアナリテック製:型番『MCP-HT800』)又は低抵抗・抵抗率計『Loresta-GX』(株式会社三菱ケミカルアナリテック製:型番『MCP-T700』)及び粉体抵抗測定システム(株式会社三菱ケミカルアナリテック製:型番『MCP-PD-51』)を用いて測定した体積抵抗率が1.0×105Ω・cm以上であり、かつ
株式会社計測技術研究所製のAC WITHSTAND VOLTAGE TESTER 7473を用いて測定した絶縁破壊電圧が1kV/mm以上であることを特徴とする複合フィラー。
【請求項2】
前記コア物質となる炭素が、黒鉛、ケッチェンブラック、グラファイト又はカーボンブラックであり、前記コア物質となる金属が、銅、亜鉛、錫、ニッケル、アルミニウム又はステンレス鋼である請求項1記載の複合フィラー。
【請求項3】
前記複合フィラーの粒径が、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、型式「LA960」)を用いて前記複合フィラーの体積分布を測定したときの粒径であって、1μm~300μmの範囲にある請求項1記載の複合フィラー。
【請求項4】
前記フュームド酸化物粒子がフュームドシリカ粒子又はフュームドアルミナ粒子である請求項1記載の複合フィラー。
【請求項5】
真球状の一次粒子が数珠状に凝集して融着することにより嵩高い凝集粒子が形成されこの凝集粒子から集塊粒子に変化したフュームド酸化物粒子と炭素、金属、酸化亜鉛又は酸化ジルコニウムからなるコア物質とをフュームド酸化物粒子:コア物質=30~85:70~15の体積比にて乾式ボールミルで混合することにより、前記コア物質の表面の一部又は全部に前記フュームド酸化物粒子がシェル物質として付着したコアシェル構造を形成する複合フィラーの製造方法であって、前記フュームド酸化物粒子が、真球状の一次粒子が数珠状に凝集して融着し嵩高い凝集することにより嵩高い凝集粒子が形成されこの凝集粒子から集塊粒子に変化した粒子であることを特徴である複合フィラーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱性を有するコアとこのコアの表面に付着した電気絶縁性を有するシェルとを備えた複合フィラー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車等に用いられる電子機器は高電圧化、高電流化が進んでいる。これに伴ってこうした電子機器からの発熱量も大きくなっており、この熱の放散を如何に行うかが大きな課題の一つになっている。この電子機器に使用される部品には、高い放熱性能、即ち熱伝導性が求められるとともに、信頼性の観点から高い電気絶縁性が要求されている。
【0003】
従来、熱伝導性と電気絶縁性を有する材料として、複合コアとこの複合コアの少なくとも一部をコートする絶縁材料とを含む熱伝導性粒子及びその製造が開示されている(例えば、特許文献1(請求項1、請求項13、段落[0021]、段落[0028]、段落[0037]、段落[0038]、段落[0049]、段落[0053]、段落[0058]、段落[0097]、段落[0098])参照。)。上記熱伝導性粒子と樹脂とを混合して樹脂組成物を製造し、この樹脂組成物を成形し、この成形品が上記電子機器の部品として使用される。
【0004】
上記複合コアは、複数の熱伝導性を有するコア粒子とこのコア粒子を一緒に結合する有機バインダーとを含み、このコア粒子が、金属粒子、セラミック粒子、炭素をベースとする粒子、及びこれらの混合物からなる群から選択され、絶縁材料が、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、タルク、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素、ベーマイト、窒化ホウ素、マイカ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、硫化亜鉛、セリサイト、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0005】
上記熱伝導性粒子の製造方法は、複数のコア粒子と有機バインダーとを圧縮剪断混合方法により混合してコア粒子を有機バインダーに結合及び混合して複合コアを形成した後、複合コアと絶縁材料を圧縮剪断混合方法により混合して、複合コアを絶縁材料で少なくとも部分的にコートする方法である。
【0006】
上記コア粒子の金属粒子には、銅、銀、ニッケル、アルミニウム、又はこれらの合金が含まれ、コア粒子の炭素をベースとする粒子には、黒鉛、炭素ナノチューブ、フラーレン、グラフェン、カーボンブラック、ガラス炭素、炭素繊維、非晶質炭素、炭化ホウ素、又はこれらの混合物が含まれる。
【0007】
このように構成された上記熱伝導性粒子は、10mmの直径及び3.0mmの高さを有する上記熱伝導性粒子のシリンダー上で500Vの印加電圧で測定された時に、少なくとも1×104Ω・cm~1×1010Ω・cmの範囲である体積抵抗率を示す特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2017-504177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に示される熱伝導性粒子は、絶縁化の指標として500Vで測定されたときに1×104Ω・cm~1×1010Ω・cmの範囲の体積抵抗率を有する。しかしながら、上記熱伝導性粒子では、高電圧化、高電流化が進んだ電子機器用の材料、部品としては、電気絶縁性の観点で不十分であり、更に電気絶縁性の高い材料が求められている。
【0010】
本発明の目的は、放熱性(熱伝導性)を有するとともに従来の電気絶縁性よりもより高い電気絶縁性を有する複合フィラー及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点は、炭素、金属、酸化亜鉛又は酸化ジルコニウムからなるコア物質と、このコア物質の表面に付着したシェル物質とからなるコアシェル構造を形成する複合フィラーであって、前記シェル物質が、フュームド酸化物粒子と前記コア物質とを乾式ボールミルで混合することにより、前記フュームド酸化物粒子が前記コア物質の表面の一部又は全部に付着してなり、前記フュームド酸化物粒子が、真球状の一次粒子が数珠状に凝集して融着することにより嵩高い凝集粒子が形成されこの凝集粒子から集塊粒子に変化した粒子であり、前記複合フィラ-を100体積%とするとき、前記コア物質は30体積%~85体積%の範囲にあり、前記シェル物質は15体積%~70体積%の範囲にあり、C-Therm社製の熱伝導率測定装置TRIDENT及び圧縮試験アクセサリ(CTA)を用いて最大圧縮荷重条件(2400.0gF)にて測定した熱伝導率が0.075W/m・K以上であり、高抵抗・抵抗率計『Hiresta-UX』(株式会社三菱ケミカルアナリテック製:型番『MCP-HT800』)又は低抵抗・抵抗率計『Loresta-GX』(株式会社三菱ケミカルアナリテック製:型番『MCP-T700』)及び粉体抵抗測定システム(株式会社三菱ケミカルアナリテック製:型番『MCP-PD-51』)を用いて測定した体積抵抗率が1.0×105Ω・cm以上であり、かつ株式会社計測技術研究所製のAC WITHSTAND VOLTAGE TESTER 7473を用いて測定した絶縁破壊電圧が1kV/mm以上であることを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記コア物質となる炭素が、黒鉛、ケッチェンブラック、グラファイト又はカーボンブラックであり、前記コア物質となる金属が、銅、亜鉛、錫、ニッケル、アルミニウム又はステンレス鋼である。
【0013】
本発明の第3の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記複合フィラーの粒径が、レーザー回折式粒度分布計にて前記複合フィラーの体積分布を測定したときの粒径であって、1μm~300μmの範囲にある。
【0014】
本発明の第4の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記フュームド酸化物粒子がフュームドシリカ粒子又はフュームドアルミナ粒子である。
【0015】
本発明の第5の観点は、真球状の一次粒子が数珠状に凝集して融着することにより嵩高い凝集粒子が形成されこの凝集粒子から集塊粒子に変化したフュームド酸化物粒子と炭素、金属、酸化亜鉛又は酸化ジルコニウムからなるコア物質とをフュームド酸化物粒子:コア物質=30~85:70~15の体積比にて乾式ボールミルで混合することにより、前記コア物質の表面の一部又は全部に前記フュームド酸化物粒子がシェル物質として付着したコアシェル構造を形成する複合フィラーの製造方法であって、前記フュームド酸化物粒子が、真球状の一次粒子が数珠状に凝集して融着し嵩高い凝集することにより嵩高い凝集粒子が形成されこの凝集粒子から集塊粒子に変化した粒子であることを特徴である複合フィラーの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の観点の複合フィラーは、真球状の一次粒子が数珠状に凝集して融着することにより嵩高い凝集粒子が形成されこの凝集粒子から集塊粒子に変化した粒子により構成されるシェル物質が、炭素、金属、酸化亜鉛又は酸化ジルコニウムからなるコア物質の表面に、乾式ボールミルで混合されて、付着してなるため、また複合フィラ-を100体積%とするとき、コア物質が30体積%~85体積%の範囲にあって、シェル物質は15体積%~70体積%の範囲にあるため、熱伝導率が0.075W/m・K以上であり、体積抵抗率が1.0×105Ω・cm以上であり、かつ絶縁破壊電圧が1kV/mm以上である特徴を有する。
【0017】
本発明の第2の観点の複合フィラーは、コア物質となる炭素が、黒鉛、ケッチェンブラック、グラファイト又はカーボンブラックであり、コア物質となる金属が、銅、亜鉛、錫、ニッケル、アルミニウム又はステンレス鋼であるため、高い熱伝導性を有する。
【0018】
本発明の第3の観点の複合フィラーは、その粒径が1μm~300μmの範囲にあるため、この複合フィラーを樹脂と混合して樹脂組成物を製造するときに、この樹脂組成物を成形し易い特徴がある。
【0019】
本発明の第4の観点の複合フィラーは、フュームド酸化物粒子が、フュームドシリカ粒子又はフュームドアルミナ粒子であるため、シェル物質としてコア物質の表面に付着したときに、複合フィラーの電気絶縁性をより高くする。
【0020】
本発明の第5の観点の複合フィラーの製造方法では、真球状の一次粒子が数珠状に凝集して融着することにより嵩高い凝集粒子が形成されこの凝集粒子から集塊粒子に変化したフュームド酸化物粒子と炭素、金属、酸化亜鉛又は酸化ジルコニウムからなるコア物質とをフュームド酸化物粒子:コア物質=30~85:70~15の体積比にて乾式ボールミルで混合して複合フィラーを製造するため、比較的簡単な方法で、フュームド酸化物粒子がシェル物質としてコア物質の表面に付着する。これにより製造された複合フィラーは、放熱性(熱伝導性)を有するとともに従来の電気絶縁性よりもより高い電気絶縁性を有する特長がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明実施形態のコア物質の表面に、真球状の一次粒子が数珠状に凝集して融着することにより嵩高い凝集粒子が形成されこの凝集粒子から集塊粒子に変化したフュームド酸化物粒子が付着した複合フィラーの断面模式図である。
図2図1に示した集塊粒子が、真球状の一次粒子が数珠状に凝集して融着することにより嵩高い凝集粒子が形成されて、この凝集粒子から変化した状況を示す図である。
図3】シリカの一次粒子が焼結した最小粒子形態である凝集粒子を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真図である。
図4図3に示した凝集粒子が集まった集塊粒子を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真図である。
図5a】実施例1のSn粉末の粒度分布曲線とSn粉末とフュームドアルミナ粒子を乾式ボールミルで混合してなる複合フィラーの粒度分布曲線を重ね合わせた図である。
図5b】実施例1のSn粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図5c】実施例1の複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図6a】実施例2のZn粉末の粒度分布曲線とZn粉末とフュームドアルミナ粒子を乾式ボールミルで混合してなる複合フィラーの粒度分布曲線を重ね合わせた図である。
図6b】実施例2のZn粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図6c】実施例2の複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図7a】実施例3のNi粉末の粒度分布曲線とNi粉末とフュームドアルミナ粒子を乾式ボールミルで混合してなる複合フィラーの粒度分布曲線を重ね合わせた図である。
図7b】実施例3のNi粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図7c】実施例3の複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図8a】実施例4のSUS粉末の粒度分布曲線とSUS粉末とフュームドアルミナ粒子を乾式ボールミルで混合してなる複合フィラーの粒度分布曲線を重ね合わせた図である。
図8b】実施例4のSUS粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図8c】実施例4の複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図9a】実施例5のZnO粉末の粒度分布曲線とZnO粉末とフュームドアルミナ粒子を乾式ボールミルで混合してなる複合フィラーの粒度分布曲線を重ね合わせた図である。
図9b】実施例5のZnO粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図9c】実施例5の複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図10a】実施例6のCu粉末の粒度分布曲線とCu粉末とフュームドアルミナ粒子を乾式ボールミルで混合してなる複合フィラーの粒度分布曲線を重ね合わせた図である。
図10b】実施例6のCu粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図10c】実施例6の複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図11a】実施例7のCu粉末の粒度分布曲線とCu粉末とフュームドアルミナ粒子を乾式ボールミルで混合してなる複合フィラーの粒度分布曲線を重ね合わせた図である。
図11b】実施例7のCu粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図11c】実施例7の複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図12a】実施例8のCu粉末の粒度分布曲線とCu粉末とフュームドアルミナ粒子を乾式ボールミルで混合してなる複合フィラーの粒度分布曲線を重ね合わせた図である。
図12b】実施例8のCu粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図12c】実施例8の複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図13a】実施例9のCu粉末の粒度分布曲線とCu粉末とフュームドアルミナ粒子を乾式ボールミルで混合してなる複合フィラーの粒度分布曲線を重ね合わせた図である。
図13b】実施例9のCu粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図13c】実施例9の複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図14a】実施例10のCu粉末の粒度分布曲線とCu粉末とフュームドアルミナ粒子を乾式ボールミルで混合した後、表面処理してなる複合フィラーの粒度分布曲線を重ね合わせた図である。
図14b】実施例10のCu粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図14c】実施例10の複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図15a】実施例11のAl粉末の粒度分布曲線とAl粉末とフュームドアルミナ粒子を乾式ボールミルで混合してなる複合フィラーの粒度分布曲線を重ね合わせた図である。
図15b】実施例11のAl粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図15c】実施例11の複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図16a】実施例12のZrO粉末の粒度分布曲線とZrO粉末とフュームドアルミナ粒子を乾式ボールミルで混合してなる複合フィラーの粒度分布曲線を重ね合わせた図である。
図16b】実施例12のZrO粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図16c】実施例12の複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図17a】実施例13の黒鉛粉末の粒度分布曲線と黒鉛粉末とフュームドシリカ粒子を乾式ボールミルで混合してなる複合フィラーの粒度分布曲線を重ね合わせた図である。
図17b】実施例13の黒鉛粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図17c】実施例13の複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図18a】比較例1のCu粉末の粒度分布曲線とCu粉末とフュームドシリカ粒子を乾式手混ぜで混合してなる複合フィラーの粒度分布曲線を重ね合わせた図である。
図18b】比較例1のCu粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図18c】比較例1の複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図19a】比較例2のCu粉末の粒度分布曲線とCu粉末とフュームドシリカ粒子を乾式自転・公転方式ミキサーで混合してなる複合フィラーの粒度分布曲線を重ね合わせた図である。
図19b】比較例2のCu粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図19c】比較例2の複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である
図20a】比較例3のCu粉末の粒度分布曲線とCu粉末とフュームドアルミナ粒子を乾式ボールミルで混合してなる複合フィラーの粒度分布曲線を重ね合わせた図である。
図20b】比較例3のCu粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図20c】比較例3の複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図21a】比較例4のCu粉末の粒度分布曲線とCu粉末とフュームドアルミナ粒子を乾式ボールミルで混合してなる複合フィラーの粒度分布曲線を重ね合わせた図である。
図21b】比較例4のCu粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
図21c】比較例4の複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施の形態の複合フィラー10は、炭素、金属、酸化亜鉛又は酸化ジルコニウムからなるコア物質11と、このコア物質11の表面に付着したシェル物質12とからなるコアシェル構造を形成する。図1では、シェル物質12は、コア物質11の表面の全部に付着しているが、コア物質11の表面の一部に付着していてもよい。また図1では、コア物質11の形状が球状である例を示しているが、コア物質は球状に限らず、針状、棒状、扁平な板状でもよい。
【0023】
コア物質10が炭素である場合には、炭素として、黒鉛、ケッチェンブラック、グラファイト又はカーボンブラックが挙げられる。またコア物質が金属である場合には、金属として銅、亜鉛、錫、ニッケル、アルミニウム又はステンレス鋼が挙げられる。コア物質としての酸化亜鉛又は酸化ジルコニウムは、熱伝導率が金属と同等に高いために選ばれる。コア物質の粒径及び粒度分布は、炭素、金属又は酸化亜鉛又は酸化ジルコニウムの各材質やその製造方法により異なるため、一概には決められない。
【0024】
本実施の形態のシェル物質12は、フュームド酸化物粒子とコア物質とを室温下で乾式ボールミルで混合することにより、フュームド酸化物粒子がコア物質の表面に付着して形成される。フュームド酸化物粒子としては、フュームドシリカ粒子又はフュームドアルミナ粒子が例示される。フュームド酸化物粒子は親水性フュームド酸化物粒子及び疎水性フュームド酸化物粒子を含む。フュームド酸化物粒子の平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)の画像解析法により測定され、7nm~90nmの範囲にある。フュームド酸化物粒子とコア物質を、乾式ボールミル以外の混合法である乾式手混ぜ混合法や、乾式自転・公転方式ミキサーによる混合法では、シェル物質のコア物質への付着力が十分でなく、所望の熱伝導性及び電気絶縁性を有する複合フィラーが得られない。図1の拡大図に示すように、シェル物質12は、集塊粒子12aと集塊粒子の空隙12bを含んで形成される。
【0025】
フュームド酸化物粒子とコア物質とを室温下で乾式ボールミルで混合すると、フュームド酸化物粒子の集塊粒子がコア物質にコーティングされて付着する以外に、コア物質自体も小径化したり、小径化したコア物質同士が凝集することがあるため、複合フィラーを粒度分布曲線でその粒径を調べると、粒度分布におけるピーク径は1つに限らず、複数のピーク径が出現する場合がある。このため、複合フィラーの平均粒径は、一概に決められないが、後述する実施例1~13における粒度分布曲線から、複合フィラーの粒径は、1μm~300μmの範囲にある。また複合フィラーの平均粒径が一概に決められないのと同じ理由で、複合フィラーにおけるシェル物質の平均粒径も一概に決められない。しかし、コア物質の平均粒径がミクロン(μm)のオーダーであるのに対して、シェル物質の平均粒径はナノメーター(nm)のオーダーである。後述する実施例1~13における複合前のコア物質のピーク径と複合フィラーのメインのピーク径を考慮し、粒度分布曲線から見積ることができるシェル物質層の厚さを算出すると、シェル物質層の厚さは、3μm~20μmの範囲にある。このシェル物質層の厚さは、図1において示される『d』の2倍である。
【0026】
図2に示すように、集塊粒子12aは、フュームド酸化物粒子がフュームドシリカ粒子である場合を例にして説明すると、気化原料としてSiCl4とH2とO2との混合ガスをバーナであるリアクターから噴射することにより、一次粒子が焼結した最小粒子形態である凝集粒子が形成され、次に凝集粒子が水素結合やファンデル・ワールス力の弱い相互作用で集まって集塊粒子が形成される。シェル物質は、複数の複合フィラーが集まった集合体においては、コア物質とコア物質の間に密に充填され、コア物質間の空隙内を密に充填する3次元網目構造を形成する。この結果、コア物質の高熱伝導性を損なわずに、集合体としての複合フィラーの体積抵抗率を1.0×105Ω・cm以上に高くし、絶縁破壊電圧を1kV/mm以上に高くすることができる。このため、コア物質が元来保有する高熱伝導性を維持したまま、高い電気絶縁性を実現させることができる。図3には、一次粒子が焼結して形成された最小粒子形態である凝集粒子が示され、続いて、図4には、凝集粒子が水素結合やファンデル・ワールス力の弱い相互作用で集まって形成された集塊粒子が示される。
【0027】
複合フィラ-を100体積%とするとき、コア物質は30体積%~85体積%の範囲にあり、シェル物質は15体積%~70体積%の範囲にある。コア物質は30体積%~70体積%の範囲にあることが好ましく、シェル物質は30体積%~70体積%の範囲にあることが好ましい。コア物質が30体積%未満で、シェル物質が70体積%を超えると、所望の熱伝導性を有する複合フィラーが得られない。またコア物質が85体積%を超えて、シェル物質が15体積%未満になると、所望の体積抵抗率及び絶縁破壊電圧を有する複合フィラーが得られない。フュームド酸化物粒子からなる集塊粒子12aと空隙12(図1拡大図参照。)を含んで形成されたシェル物質が乾式ボールミルによる混合でコア物質の表面に、所定の体積%で付着することにより、本実施形態の複合フィラーは、高い熱伝導性を維持するとともに、高い体積抵抗率及び高い絶縁破壊電圧を有するようになる。
【0028】
本実施形態の複合フィラーは、その熱伝導率が、C-Therm社製の熱伝導率測定装置TRIDENT及び圧縮試験アクセサリ(CTA)を用いて最大圧縮荷重条件(2400.0gF)にて測定したときに、0.075W/m・K以上、好ましくは0.100W/m・K以上である特徴がある。また本実施形態の複合フィラーは、その体積抵抗率が、高抵抗・抵抗率計『Hiresta-UX』(株式会社三菱ケミカルアナリテック製:型番『MCP-HT800』)又は低抵抗・抵抗率計『Loresta-GX』(株式会社三菱ケミカルアナリテック製:型番『MCP-T700』)及び粉体抵抗測定システム(株式会社三菱ケミカルアナリテック製:型番『MCP-PD-51』)を用いて測定したときに、1.0×105Ω・cm以上、好ましくは2.0×105Ω・cm以上である特徴がある。更に本実施形態の複合フィラーは、その絶縁破壊電圧が、株式会社計測技術研究所製のAC WITHSTAND VOLTAGE TESTER 7473を用いて測定したときに、1kV/mm以上、好ましくは2kV/mm以上である特徴がある。
【0029】
上記熱電導率及び体積抵抗率は、粉体の複合フィラーを測定したときの値である。また上記絶縁破壊電圧は、樹脂としてシリコーン樹脂(モーメンティブ社製:型番『YE5822A』)63体積%と、硬化剤(モーメンティブ社製:型番『YE5822B』)7体積%と、複合フィラー30体積%とを混合して樹脂の混合物を調製し、この樹脂の混合物と複合フィラーを自転・公転方式ミキサー(株式会社シンキー製:型番『ARE-310』)にて2000rpmで5分間混合することにより樹脂組成物を調製した後、この樹脂組成物を、キャビティの縦×横×深さが15cm×15cm×2mmである金型に入れて、ヒートプレス(株式会社小平製作所製:型番『PY15-EA』)を使用し、130℃の温度で10MPa(100kg/cm2)の圧力をかけて10分間保持することにより、樹脂を硬化させて作製した樹脂成形体を測定したときの値である。
【実施例
【0030】
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
【0031】
本発明の実施例及び比較例において使用する原材料は次の通りである。
下記の原材料は市販の状態で使用した。
(1)錫粉末(Sn, 富士フイルム和光純薬株式会社製:品番『206-01505』)
(2)親水性フュームドアルミナ粒子(Al2O3, エボニック株式会社製:品番『AEROXIDE(登録商標)Alu C』(平均一次粒径13nm))
(3) 亜鉛粉末(Zn, 林純薬工業株式会社製:品番『26000085』)
(4) ニッケル粉末(Ni, 富士フイルム和光純薬株式会社製:品番『145-00982』)
(5) ステンレス鋼粉末(SUS, 富士フイルム和光純薬株式会社製:品番『900919』)
(6) 酸化亜鉛粉末(ZnO, 林純薬工業株式会社製:品番『26000375』)
(7) 銅粉末(Cu, 林純薬工業株式会社製:品番『03003695』)
(8) 親水性フュームドアルミナ粒子(Al2O3, エボニック株式会社製:品番『VP Alu 30』(平均一次粒径90nm))
(9) 疎水性フュームドアルミナ粒子(Al2O3, 日本アエロジル株式会社製:品番『VP Alu C RK』(平均一次粒径13nm))
(10) イソブチルトリメトキシシラン(IBTMO, エボニック株式会社製:品番『Dynasylan(登録商標)IBTMO』)
(11) アルミニウム粉末(Al, 林純薬工業株式会社製:品番『01001325』)
(12) 酸化ジルコニウム粉末(ZrO, 富士フイルム和光純薬株式会社製:品番『264-00485』)
(13) 黒鉛粉末(C, 伊藤黒鉛工業株式会社製:品番『SG-BL40』)
(14) 親水性フュームドシリカ粒子(日本アエロジル株式会社製:品番『AEROSIL(登録商標)380S』(平均一次粒径7nm))
【0032】
<実施例1>
コア物質として、図5aに示すように、粒度分布に1つのピーク粒径17μmを有し、表1に示すように、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が9.6μm、同じく50%の粒径が18.4μm、同じく90%の粒径が40.6μmであるSn(錫)粉末を用意した。またシェル物質として、親水性フュームドアルミナ粒子(品番『AEROXIDE(登録商標)Alu C』)を用意した。次に、コア物質(Sn粉末)30体積%とシェル物質(フュームドアルミナ粒子)70体積%をボールミル回転台(増田理化工業株式会社製:型番『UNIVERSAL BALL MILL MODEL UBM-S』)にて、大気中の室温下、株式会社ニッカトー製の直径5mmのアルミナボールの入ったポットミルを110rpmの速度で5時間回転させることにより乾式混合して複合フィラーを得た。この複合フィラーの粒径分布のピークは、図5aに示すように、粒径が12μmと67μmの2つであり、表1に示すように、この複合フィラーは、粒径分布において、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が5.9μm、同じく50%の粒径が15.7μm、同じく90%の粒径が89.3μmであった。Sn粉末の粒度分布における粒径が4μmから150μmまでの広い範囲であったため、シェル物質層の厚さの算出は困難であった。図5bにSn粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図を、図5cに複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図をそれぞれ示す。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例1を初めとして、以下に述べる他の実施例、比較例における、コア物質又は複合フィラーの粒径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、型式「LA960」)を用いて、コア物質又は複合フィラーを測定し、得られたコア物質又は複合フィラーの粒径を横軸とし、体積換算した粒子の頻度を縦軸とした粒度分布曲線における粒径である。またシェル物質の平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)の画像解析法により測定した粒径である。
【0035】
<実施例2>
コア物質として、図6aに示すように、粒度分布に1つのピーク粒径9μmを有し、表2に示すように、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が5.2μm、同じく50%の粒径が8.0μm、同じく90%の粒径が12.2μmであるZn(亜鉛)粉末を用意した。またシェル物質として、実施例1と同じ、親水性フュームドアルミナ粒子(品番『AEROXIDE(登録商標)Alu C』)を用意した。次に、コア物質(Zn粉末)30体積%とシェル物質(フュームドアルミナ粒子)70体積%を実施例1と同じ乾式ボールミルを用いて実施例1と同じ方法で乾式混合して複合フィラーを得た。この複合フィラーの粒径分布のピークは、図6aに示すように、粒径が12μmと67μmの2つであり、表2に示すように、この複合フィラーは、粒径分布において、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が5.1μm、同じく50%の粒径が12.2μm、同じく90%の粒径が50.4μmであった。Zn粉末の粒度分布における粒径が3μmから22μmまで比較的狭い範囲であったため、シェル物質層の厚さは12μm-9μmの3μmと見積った。図6bにZn粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図を、図6cに複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図をそれぞれ示す。
【0036】
【表2】
【0037】
<実施例3>
コア物質として、図7aに示すように、粒度分布に1つのピーク粒径10μmを有し、表3に示すように、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が5.6μm、同じく50%の粒径が9.6μm、同じく90%の粒径が16.5μmであるNi(ニッケル)粉末を用意した。またシェル物質として、実施例1と同じ、親水性フュームドアルミナ粒子(品番『AEROXIDE(登録商標)Alu C』)を用意した。次に、コア物質(Ni粉末)30体積%とシェル物質(フュームドアルミナ粒子)70体積%を実施例1と同じ乾式ボールミルを用いて実施例1と同じ方法で乾式混合して複合フィラーを得た。この複合フィラーの粒径分布のピークは、図7aに示すように、粒径が12μmの1つであり、表3に示すように、この複合フィラーは、粒径分布において、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が3.3μm、同じく50%の粒径が9.2μm、同じく90%の粒径が38.4μmであった。Ni粉末の粒度分布における粒径が3μmから30μmまで比較的狭い範囲であったため、シェル物質層の厚さは12μm-10μmの2μmと見積った。図7bにNi粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図を、図7cに複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図をそれぞれ示す。
【0038】
【表3】
【0039】
<実施例4>
コア物質として、図8aに示すように、粒度分布に1つのピーク粒径89μmを有し、表4に示すように、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が26.0μm、同じく50%の粒径が68.9μm、同じく90%の粒径が160.3μmであるSUS(ステンレス鋼)粉末を用意した。またシェル物質として、実施例1と同じ、親水性フュームドアルミナ粒子(品番『AEROXIDE(登録商標)Alu C』)を用意した。次に、コア物質(SUS粉末)30体積%とシェル物質(フュームドアルミナ粒子)70体積%を実施例1と同じ乾式ボールミルを用いて実施例1と同じ方法で乾式混合して複合フィラーを得た。この複合フィラーの粒径分布のピークは、図8aに示すように、粒径が12μmと67μmの2つであり、表4に示すように、この複合フィラーは、粒径分布において、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が5.8μm、同じく50%の粒径が13.4μm、同じく90%の粒径が57.6μmであった。SUS粉末の粒度分布における粒径が8μmから300μmまでの広い範囲であったため、シェル物質層の厚さの算出は困難であった。図8bにSUS粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図を、図8cに複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図をそれぞれ示す。
【0040】
【表4】
【0041】
<実施例5>
コア物質として、図9aに示すように、粒度分布に3つのピーク粒径0.09μm、2μm及び77μmを有し、表5に示すように、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が0.6μm、同じく50%の粒径が2.6μm、同じく90%の粒径が38.9μmであるZnO(酸化亜鉛)粉末を用意した。またシェル物質として、実施例1と同じ、親水性フュームドアルミナ粒子(品番『AEROXIDE(登録商標)Alu C』)を用意した。次に、コア物質(ZnO粉末)30体積%とシェル物質(フュームドアルミナ粒子)70体積%を実施例1と同じ乾式ボールミルを用いて実施例1と同じ方法で乾式混合して複合フィラーを得た。この複合フィラーの粒径分布のピークは、図9aに示すように、粒径が13μmと45μmの2つであり、表5に示すように、この複合フィラーは、粒径分布において、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が1.7μm、同じく50%の粒径が14.5μm、同じく90%の粒径が63.3μmであった。ZnO粉末の粒度分布における粒径が0.06μmから300μmまでの広い範囲であったため、シェル物質層の厚さの算出は困難であった。図9bにZnO粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図を、図9cに複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図をそれぞれ示す。
【0042】
【表5】
【0043】
<実施例6>
コア物質として、図10aに示すように、粒度分布に1つのピーク粒径34μmを有し、表6に示すように、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が13.5μm、同じく50%の粒径が30.6μm、同じく90%の粒径が62.0μmであるCu(銅)粉末を用意した。またシェル物質として、実施例1と同じ、親水性フュームドアルミナ粒子(品番『AEROXIDE(登録商標)Alu C』)を用意した。次に、コア物質(Cu粉末)30体積%とシェル物質(フュームドアルミナ粒子)70体積%を実施例1と同じ乾式ボールミルを用いて実施例1と同じ方法で乾式混合して複合フィラーを得た。この複合フィラーの粒径分布のピークは、図10aに示すように、粒径が13μmと51μmの2つであり、表6に示すように、この複合フィラーは、粒径分布において、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が6.8μm、同じく50%の粒径が16.4μm、同じく90%の粒径が66.3μmであった。Cu粉末の粒度分布における粒径が5μmから175μmまでの広い範囲であったため、シェル物質層の厚さの算出は困難であったが、便宜的にシェル物質層の厚さは51μm-34μmの17μmと見積った。図10bにCu粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図を、図10cに複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図をそれぞれ示す。
【0044】
【表6】
【0045】
<実施例7>
コア物質として、図11aに示すように、粒度分布に1つのピーク粒径34μmを有し、表7に示すように、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が13.5μm、同じく50%の粒径が30.6μm、同じく90%の粒径が62.0μmである、実施例6と同じCu(銅)粉末を用意した。またシェル物質として、親水性フュームドアルミナ粒子(品番『VP Alu 30』)を用意した。次に、コア物質(Cu粉末)30体積%とシェル物質(フュームドアルミナ粒子)70体積%を実施例1と同じ乾式ボールミルを用いて実施例1と同じ方法で乾式混合して複合フィラーを得た。この複合フィラーの粒径分布のピークは、図11aに示すように、粒径が13μmと51μmの2つであり、表7に示すように、この複合フィラーは、粒径分布において、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が6.8μm、同じく50%の粒径が16.4μm、同じく90%の粒径が66.3μmであり、実施例6と差異がなかった。Cu粉末の粒度分布における粒径が5μmから175μmまでの広い範囲であったため、シェル物質層の厚さの算出は困難であったが、便宜的にシェル物質層の厚さは51μm-34μmの17μmと見積った。図11bにCu粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図を、図11cに複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図をそれぞれ示す。
【0046】
【表7】
【0047】
<実施例8>
コア物質として、図12aに示すように、粒度分布に1つのピーク粒径34μmを有し、表8に示すように、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が13.5μm、同じく50%の粒径が30.6μm、同じく90%の粒径が62.0μmである、実施例6と同じCu(銅)粉末を用意した。またシェル物質として、疎水性フュームドアルミナ粒子(品番『VP Alu C RK』)を用意した。次に、コア物質(Cu粉末)30体積%とシェル物質(フュームドアルミナ粒子)70体積%を実施例1と同じ乾式ボールミルを用いて実施例1と同じ方法で乾式混合して複合フィラーを得た。この複合フィラーの粒径分布のピークは、図12aに示すように、粒径が12μmの1つであり、表8に示すように、この複合フィラーは、粒径分布において、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が2.6μm、同じく50%の粒径が9.2μm、同じく90%の粒径が26.5μmであった。Cu粉末の粒度分布における粒径が5μmから175μmまでの広い範囲であったため、シェル物質層の厚さの算出は困難であった。図12bにCu粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図を、図12cに複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図をそれぞれ示す。
【0048】
【表8】
【0049】
<実施例9>
コア物質として、図13aに示すように、粒度分布に1つのピーク粒径34μmを有し、表9に示すように、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が13.5μm、同じく50%の粒径が30.6μm、同じく90%の粒径が62.0μmである、実施例6と同じCu(銅)粉末を用意した。またシェル物質として、親水性フュームドアルミナ粒子(品番『AEROXIDE(登録商標)Alu C』)を用意した。次に、コア物質(Cu粉末)70体積%とシェル物質(フュームドアルミナ粒子)30体積%を実施例1と同じ乾式ボールミルを用いて実施例1と同じ方法で乾式混合して複合フィラーを得た。この複合フィラーの粒径分布のピークは、図13aに示すように、粒径が13μmと45μmの2つであり、表9に示すように、この複合フィラーは、粒径分布において、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が7.3μm、同じく50%の粒径が17.2μm、同じく90%の粒径が55.7μmであった。Cu粉末の粒度分布における粒径が5μmから175μmまでの広い範囲であったため、シェル物質層の厚さの算出は困難であったが、便宜的にシェル物質層の厚さは45μm-34μmの11μmと見積った。図13bにCu粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図を、図13cに複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図をそれぞれ示す。
【0050】
【表9】
【0051】
<実施例10>
コア物質として、図14aに示すように、粒度分布に1つのピーク粒径34μmを有し、表10に示すように、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が13.5μm、同じく50%の粒径が30.6μm、同じく90%の粒径が62.0μmである、実施例6と同じCu(銅)粉末を用意した。またシェル物質として、実施例1と同じ、親水性フュームドアルミナ粒子(品番『AEROXIDE(登録商標)Alu C』)を用意した。次に、コア物質(Cu粉末)30体積%とシェル物質(フュームドアルミナ粒子)70体積%を実施例1と同じ乾式ボールミルを用いて実施例1と同じ方法で乾式混合した後、この混合粉末の表面をシランカップリング剤であるイソブチルトリメトキシシランで湿式処理(以下、C4処理という。)により疎水化して複合フィラーを得た。このC4処理はIBTMOの入ったビーカーに上記混合粉末を投入し、ホットプレート付きマグネチックスターラー(東京理化機械株式会社製:型番『RH-1000』)で大気中、120℃の温度で加熱処理し、その後大気中、150℃で1時間乾燥する処理である。乾燥したものをそのまま複合フィラーとした。この複合フィラーの粒径分布のピークは、図14aに示すように、粒径が15μmと51μmと300μmの3つであり、表10に示すように、この複合フィラーは、粒径分布において、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が8.2μm、同じく50%の粒径が40.3μm、同じく90%の粒径が298.9μmであった。Cu粉末の粒度分布における粒径が5μmから175μmまでの広い範囲であったため、シェル物質層の厚さの算出は困難であったが、便宜的にシェル物質層の厚さは51μm-34μmの17μmと見積った。図14bにCu粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図を、図14cに複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図をそれぞれ示す。
【0052】
【表10】
【0053】
<実施例11>
コア物質として、図15aに示すように、粒度分布に1つのピーク粒径30μmを有し、表11に示すように、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が20.3μm、同じく50%の粒径が30.2μm、同じく90%の粒径が47.9μmであるAl(アルミニウム)粉末を用意した。またシェル物質として、実施例1と同じ、親水性フュームドアルミナ粒子(品番『AEROXIDE(登録商標)Alu C』)を用意した。次に、コア物質(Al粉末)85体積%とシェル物質(フュームドアルミナ粒子)15体積%を実施例1と同じ乾式ボールミルを用いて実施例1と同じ方法で乾式混合して複合フィラーを得た。この複合フィラーの粒径分布のピークは、図15aに示すように、粒径が45μmの1つであり、表11に示すように、この複合フィラーは、粒径分布において、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が10.2μm、同じく50%の粒径が35.3μm、同じく90%の粒径が60.1μmであった。Al粉末の粒度分布における粒径が12μmから77μmまでの比較的狭い範囲であったため、シェル物質層の厚さは45μm-30μmの15μmと見積った。図15bにAl粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図を、図15cに複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図をそれぞれ示す。
【0054】
【表11】
【0055】
<実施例12>
コア物質として、図16aに示すように、粒度分布に1つのピーク粒径45μmを有し、表12に示すように、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が2.0μm、同じく50%の粒径が35.9μm、同じく90%の粒径が65.1μmであるZrO(酸化ジルコニウム)粉末を用意した。またシェル物質として、実施例1と同じ、親水性フュームドアルミナ粒子(品番『AEROXIDE(登録商標)Alu C』)を用意した。次に、コア物質(ZrO粉末)30体積%とシェル物質(フュームドアルミナ粒子)70体積%を実施例1と同じ乾式ボールミルを用いて実施例1と同じ方法で乾式混合して複合フィラーを得た。この複合フィラーの粒径分布のピークは、図16aに示すように、粒径が12μmと59μmの2つであり、表12に示すように、この複合フィラーは、粒径分布において、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が3.2μm、同じく50%の粒径が11.4μm、同じく90%の粒径が52.7μmであった。ZrO粉末の粒度分布における粒径が0.2μmから150μmまでと比較的広い範囲であったため、シェル物質層の厚さの算出は困難であったが、便宜的にシェル物質層の厚さは59μm-45μmの14μmと見積った。図16bにZrO粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図を、図16cに複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図をそれぞれ示す。
【0056】
【表12】
【0057】
<実施例13>
コア物質として、図17aに示すように、粒度分布に1つのピーク粒径39μmを有し、表13に示すように、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が15.8μm、同じく50%の粒径が34.2μm、同じく90%の粒径が57.9μmである黒鉛粉末を用意した。またシェル物質として、親水性フュームドシリカ粒子(品番『AEROSIL(登録商標)380S』)を用意した。次に、コア物質(黒鉛粉末)30体積%とシェル物質(フュームドシリカ粒子)70体積%を実施例1と同じ乾式ボールミルを用いて実施例1と同じ方法で乾式混合して複合フィラーを得た。この複合フィラーの粒径分布のピークは、図17aに示すように、粒径が12μmと59μmの2つであり、表13に示すように、この複合フィラーは、粒径分布において、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が5.3μm、同じく50%の粒径が18.3μm、同じく90%の粒径が76.7μmであった。黒鉛粉末の粒度分布における粒径が4μmから101μmまでと比較的広い範囲であったため、シェル物質層の厚さの算出は困難であったが、便宜的にシェル物質層の厚さは59μm-39μmの20μmと見積った。図17bに黒鉛粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図を、図17cに複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図をそれぞれ示す。
【0058】
【表13】
【0059】
<比較例1>
コア物質として、図18aに示すように、粒度分布に1つのピーク粒径34μmを有し、表14に示すように、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が13.5μm、同じく50%の粒径が30.6μm、同じく90%の粒径が62.0μmである、実施例6と同じCu(銅)粉末を用意した。またシェル物質として、実施例1と同じ親水性フュームドアルミナ粒子(品番『AEROXIDE(登録商標)Alu C』)を用意した。次に、コア物質(Cu粉末)30体積%とシェル物質(フュームドアルミナ粒子)70体積%を大気中でポリエチレン袋に入れ、手袋をはめた手でポリエチレン袋を1分間混ぜる手混ぜ混合法によりて複合フィラーを得た。この複合フィラーの粒径分布のピークは、図18aに示すように、粒径が12μmの1つであり、表14に示すように、この複合フィラーは、粒径分布において、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が6.7μm、同じく50%の粒径が11.4μm、同じく90%の粒径が20.4μmであった。手混ぜ後の複合フィラーの粒度分布がシャープな1つのピークとなり、コア物質のCu粉末が手混ぜで解れるほど弱い凝集物になったと考えられるため、シェル物質層の厚さの算出は困難であった。図18bにCu粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図を、図18cに複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図をそれぞれ示す。
【0060】
【表14】
【0061】
<比較例2>
コア物質として、図19aに示すように、粒度分布に1つのピーク粒径34μmを有し、表15に示すように、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が13.5μm、同じく50%の粒径が30.6μm、同じく90%の粒径が62.0μmである、実施例6と同じCu(銅)粉末を用意した。またシェル物質として、実施例1と同じ親水性フュームドアルミナ粒子(品番『AEROXIDE(登録商標)Alu C』)を用意した。次に、コア物質(Cu粉末)30体積%とシェル物質(フュームドアルミナ粒子)70体積%を自転・公転方式ミキサー(株式会社シンキ―製、あわとり練太郎:型番『ARE-310』)にて大気中、2000rpmで3分間混合することにより複合フィラーを得た。この複合フィラーの粒径分布のピークは、図19aに示すように、粒径が13μmと67μmの2つであり、表15に示すように、この複合フィラーは、粒径分布において、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が11.2μm、同じく50%の粒径が51.2μm、同じく90%の粒径が91.9μmであった。複合フィラーの粒度分布においてピーク径67μmがメインであったことと、乾式ボールミルで複合化した実施例6と有意差があったため、シェル物質層の厚さは67μm-34μmの33μmと見積った。図19bにCu粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図を、図19cに複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図をそれぞれ示す。
【0062】
【表15】
【0063】
<比較例3>
コア物質として、図20aに示すように、粒度分布に1つのピーク粒径34μmを有し、表16に示すように、小径側から計算した累積体積%が10%の粒径が13.5μm、同じく50%の粒径が30.6μm、同じく90%の粒径が62.0μmである、実施例6と同じ銅(Cu)粉末を用意した。またシェル物質として、実施例1と同じ、親水性フュームドアルミナ粒子(品番『AEROXIDE(登録商標)Alu C』)を用意した。次に、コア物質(Cu粉末)25体積%とシェル物質(フュームドアルミナ粒子)75体積%を実施例1と同じ乾式ボールミルを用いて実施例1と同じ方法で乾式混合して複合フィラーを得た。この複合フィラーの粒径分布のピークは、図20aに示すように、粒径が13μmと59μmの2つであり、表16に示すように、この複合フィラーは、粒径分布において、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が4.1μm、同じく50%の粒径が13.8μm、同じく90%の粒径が71.0μmであった。Cu粉末の粒度分布における粒径が5μmから175μmまでの広い範囲であったため、シェル物質層の厚さの算出は困難であったが、便宜的にシェル物質層の厚さは59μm-34μmの25μmと見積った。図20bにCu粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図を、図20cに複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図をそれぞれ示す。
【0064】
【表16】
【0065】
<比較例4>
コア物質として、図21aに示すように、粒度分布に1つのピーク粒径34μmを有し、表17に示すように、小径側から計算した累積体積%が10%の粒径が13.5μm、同じく50%の粒径が30.6μm、同じく90%の粒径が62.0μmである、実施例6と同じ銅(Cu)粉末を用意した。またシェル物質として、実施例1と同じ、親水性フュームドアルミナ粒子(品番『AEROXIDE(登録商標)Alu C』)を用意した。次に、コア物質(Cu粉末)90体積%とシェル物質(フュームドアルミナ粒子)10体積%を実施例1と同じ乾式ボールミルを用いて実施例1と同じ方法で乾式混合して複合フィラーを得た。この複合フィラーの粒径分布のピークは、図21aに示すように、粒径が30μmの1つであり、表17に示すように、この複合フィラーは、粒径分布において、小径側から計算した累積体積が10%の粒径が14.0μm、同じく50%の粒径が27.1μm、同じく90%の粒径が50.2μmであった。混合後の複合フィラーの粒度分布は小粒径側に多少シフトしたシャープな1つのピークとなり、シェル物質の厚さの算出は困難であった。図21bにCu粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図を、図21cに複合フィラーの走査型電子顕微鏡(SEM)の写真図をそれぞれ示す。
【0066】
【表17】
【0067】
<比較例5>
実施例6と同じ、コア物質のCu(銅)粉末のみからなるフィラーを作製した。
【0068】
<比較例6>
実施例11と同じ、Al(アルミニウム)粉末のみからなるフィラーを作製した。
【0069】
<比較例7>
実施例1と同じ、Sn(錫)粉末のみからなるフィラーを作製した。
【0070】
上述した実施例1~13及び比較例1~4のコア物質、シェル物質の各内容及びこれらの物質の混合方法を表18に示す。また複合フィラーの組成及び複合フィラーの物性を表19に示す。なお、比較例5~7のフィラーは複合化していないコア物質のみからなるが、便宜的に複合フィラーと表記している。
【0071】
【表18】
【0072】
【表19】
【0073】
<物性値の比較測定>
実施例1~13及び比較例1~4の複合フィラー、比較例5~7のフィラーの各熱伝導率を前述した装置を用いて測定した。またこれらの複合フィラー及びフィラーの各体積抵抗率に関して、体積抵抗率が106Ω・cm以上の場合は高抵抗・抵抗率計及び粉体抵抗測定システムを、体積抵抗率が106Ω・cm未満の場合は低抵抗・抵抗率計及び粉体抵抗測定システムをそれぞれ用いて測定した。更にこれらの複合フィラー及びフィラーを用いて前述した方法で作製された樹脂成形体の各絶縁破壊電圧を前述した装置を用いて測定した。これらの結果を表19に示す。比較例5のCu粉末からなるフィラーの熱電導率を100と規格化したときの実施例1~13及び比較例1~4,6、7の各熱伝導比も表19に示す。
【0074】
<評価>
表18及び表19から明らかなように、コア物質とシェル物質の混合を乾式ボールミル混合法によらない手混ぜで混合した比較例1の複合フィラーでは、体積抵抗率の測定は粉体に圧力をかけて圧縮した状態で測定するために1.9×106Ω・cmと一見高めの数値が得られているが、実際は混合力が著しく不足しているためシェルの形成には至らず、樹脂への馴染みが非常に悪いため成形体の作製が困難であり絶縁破壊電圧を測定できなかった。またコア物質とシェル物質の混合を乾式ボールミル混合法によらない自転・公転方式ミキサーで混合した比較例2の複合フィラーでは、乾式ボールミルで混合した実施例6の複合フィラーに比べてシェル物質層が厚くシェル内に多くの空隙が存在しており、体積抵抗率が2.9×102Ω・cmと低くかった。
【0075】
混合時のコア物質の体積%が25体積%であって、シェル物質の体積%が75体積%である、適切な範囲にない比較例3の複合フィラーでは、コア物質に対してシェル物質が過剰なため、絶縁破壊電圧は5.0kV/mmと高いが熱伝導率が0.070W/m・Kと低かった。また混合時のコア物質の体積%が90体積%であって、シェル物質の体積%が10体積%である、適切な範囲にない比較例4の複合フィラーでは、熱伝導率が0.112W/m・Kと高く優れていたが、シェル物質の量が不十分で適切な絶縁化ができていないため体積抵抗率が2.6×10-3Ω・cmと低く、かつ絶縁破壊電圧は0kV/mmと著しく低くかった。
【0076】
Cu粉末のコア物質のみからなる比較例5のフィラーでは、熱伝導率が0.126W/m・Kと高く優れていたが、体積抵抗率が1.8×10-4Ω・cmと低く、かつ絶縁破壊電圧は0kV/mmと著しく低くかった。Al粉末のコア物質のみからなる比較例6のフィラーでは、熱伝導率が0.191W/m・Kと高く優れていたが、体積抵抗率が1.4×10-4Ω・cmと低く、かつ絶縁破壊電圧は0kV/mmと著しく低くかった。Sn粉末のコア物質のみからなる比較例7のフィラーでは、熱伝導率が0.181W/m・Kと高く優れていたが、体積抵抗率が1.0×10-4Ω・cmと低く、かつ絶縁破壊電圧は0kV/mmと著しく低くかった。
【0077】
これに対して、シェル物質のフュームド酸化物粒子が真球状の一次粒子が数珠状に凝集して融着することにより嵩高い凝集粒子が形成されこの凝集粒子から集塊粒子に変化した粒子であって、このシェル物質とコア物質とが乾式ボールミルで混合され、複合フィラ-を100体積%とするとき、コア物質が30体積%~85体積%の範囲にあり、シェル物質が15体積%~70体積%の範囲にある実施例1~13の複合フィラーでは、熱電導率が0.075W/m・K以上であり、体積抵抗率が1.0×105Ω・cm以上であり、絶縁破壊電圧が1kV/mm以上であった。
【0078】
特に、コア物質(Cu粉末)とシェル物質(フュームドアルミナ粒子)の材質がそれぞれ同一である一方、各体積%が異なる実施例6(Cu:フュームドアルミナ粒子=30体積%:70体積%)の複合フィラーと、実施例9(Cu:フュームドアルミナ粒子=70体積%:30体積%)の複合フィラーとを熱伝導率に関して対比すると、コア物質がリッチの実施例9の熱伝導率が0.128W/m・Kで高かったのに対して、コア物質がプアの実施例6の熱伝導率は0.086W/m・Kで低かった。
【0079】
体積抵抗率及び絶縁破壊電圧に関しては、シェル物質がリッチの実施例6の体積抵抗率及び絶縁破壊電圧がそれぞれ 5.7×105Ω・cm及び4.6kV/mmであったのに対して、シェル物質がプアの実施例9の体積抵抗率及び絶縁破壊電圧はそれぞれ7.6×106Ω・cm及び1.2kV/mmであった。体積抵抗率では、実施例9の方が実施例6より高かったが、絶縁破壊電圧では、実施例6の方が実施例9より高かったけれども、これはしばしば生じる結果である。体積抵抗値は粉体そのものではなく高い圧力をかけて圧縮したサンプルを測定するものであり、また電圧は高々0.1~0.5kV程度の印加であるため、絶縁性の議論は絶縁破壊電圧を用いた方がより信頼性が高い。
【0080】
また、実施例6のコア物質及びシェル物質と同じ材質及び同じ体積%であった複合フィラーをC4処理した実施例10を考察すると、実施例6の熱伝導率が0.086W/m・Kであったものが、実施例10の熱伝導率は0.105W/m・Kと若干高くなった。また体積抵抗率で対比すると、実施例6の体積抵抗率が5.7×105Ω・cmであったものが、実施例10の体積抵抗率は1.9×107Ω・cmと大幅に高くなった。更に絶縁破壊電圧で対比すると、実施例6の絶縁破壊電圧が4.6kV/mmであったものが、実施例10の絶縁破壊電圧は1.3kV/mmと低くなった。これは複合フィラーのC4処理によりコア―シェル界面やシェル物質層内の空気が置換されたためと考えられる。
【0081】
更に、フュームド酸化物粒子が疎水性フュームドアルミナ粒子である実施例8の複合フィラーでは、体積抵抗率が3.6×1010Ω・cmであって、フュームド酸化物粒子が親水性である他の実施例の複合フィラーの体積抵抗率が高かった。これは疎水性フュームドアルミナ粒子が親水性フュームドアルミナ粒子より体積抵抗率が高いことに起因すると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の複合フィラーは、通信機器や車載電子機器の半導体チップ又はトランジスタ又はリチウムイオン二次電池又はLED光源からなる発熱体の冷却部材、モータのハウジングに内蔵されたステータの冷却部材、インバータのケースに内蔵された電力変換装置の冷却部材、アクチュエータの摺動部又は回転部で発生した熱の放熱部材等に利用できる。
【要約】
【課題】放熱性(熱伝導性)を有するとともに従来の電気絶縁性よりもより高い電気絶縁性を有する複合フィラーを提供する。
【解決手段】炭素、金属、酸化亜鉛又は酸化ジルコニウムからなるコア物質と、このコア物質の表面に付着したシェル物質とからなるコアシェル構造を形成する複合フィラーである。シェル物質が、フュームド酸化物粒子とコア物質とを乾式ボールミルで混合することにより、フュームド酸化物粒子がコア物質の表面の一部又は全部に付着してなる。フュームド酸化物粒子が、真球状の一次粒子が数珠状に凝集して融着することにより嵩高い凝集粒子が形成されこの凝集粒子から集塊粒子に変化した粒子である。複合フィラ-中、コア物質は30~85体積%であり、シェル物質は15~70体積%であり、熱伝導率が0.075W/m・K以上であり、体積抵抗率が1.0×105Ω・cm以上であり、かつ絶縁破壊電圧が1kV/mm以上である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図8c
図9a
図9b
図9c
図10a
図10b
図10c
図11a
図11b
図11c
図12a
図12b
図12c
図13a
図13b
図13c
図14a
図14b
図14c
図15a
図15b
図15c
図16a
図16b
図16c
図17a
図17b
図17c
図18a
図18b
図18c
図19a
図19b
図19c
図20a
図20b
図20c
図21a
図21b
図21c