(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】印刷配線板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/11 20060101AFI20250407BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20250407BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20250407BHJP
H01P 3/12 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
H05K1/11 H
H05K3/46 N
H05K3/46 Q
H05K3/46 Z
H05K1/02 C
H05K1/02 J
H01P3/12 100
(21)【出願番号】P 2023500854
(86)(22)【出願日】2022-02-15
(86)【国際出願番号】 JP2022005952
(87)【国際公開番号】W WO2022176853
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2021025777
(32)【優先日】2021-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 智哉
(72)【発明者】
【氏名】島田 信宏
【審査官】沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-041966(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189622(WO,A1)
【文献】特開2011-211170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/11
H05K 3/46
H05K 1/02
H01P 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面と、該第1面とは反対側の第2面と、前記第1面から
前記第2面まで貫通する貫通孔
とを有
する第1絶縁層と、
前記貫通孔の内壁に位置し、かつ、前記第2面に平行な断面における開口面積が前記第1面側から前記第2面側に向かうに従って増大する部分を有する
スルーホール導体と、
前記第1絶縁層の前記第2面に位置し、前記スルーホール導体と電気的に接続された第1導体層と、
前記スルーホール導体に囲まれた空間を埋めている樹脂と、
前記第1導体層上に設けられている第2絶縁層と、
前記第2絶縁層を貫通する複数のビア導体と、
を備え、
前記複数のビア導体は、前記第1導体層と電気的に接続されており、かつ、前記第2面に向かう平面視で、前記スルーホール導体の前記第2面における第2面側開口を囲むように配置されており、
前記スルーホール導体は、前記第1絶縁層の前記貫通孔の前記内壁にのみ位置しており、前記第2絶縁層には位置していない、印刷配線板。
【請求項2】
前記第2絶縁層は、前記第1絶縁層との間に他の絶縁層を介さずに前記第1絶縁層と連続して積層されており、
前記スルーホール導体は、前記第1絶縁層に位置しているとともに前記第2絶縁層には位置しておらず、
前記複数のビア導体は、前記第2絶縁層に位置しているとともに前記第1絶縁層には位置していない、
請求項1に記載の印刷配線板。
【請求項3】
前記スルーホール導体は、前記第1面から前記第2面まで、該第2面に向かうに従って前記開口面積が増大している、請求項1
又は2に記載の印刷配線板。
【請求項4】
前記スルーホール導体は、前記貫通孔の中心軸を通り前記第2面に垂直な任意の断面において、前記第2面に平行な方向についての開口幅が、前記第1面から前記第2面まで、該第2面に向かうに従って増大している、請求項1
又は2に記載の印刷配線板。
【請求項5】
前記スルーホール導体は、前記貫通孔の中心軸を通り前記第2面に垂直な任意の断面において、前記第2面に垂直な方向に対して傾斜している部分を有する、請求項1~請求項
4のいずれか1つに記載の印刷配線板。
【請求項6】
前記スルーホール導体は、前記第2面に平行な断面における開口のアスペクト比が1を超える形状である、請求項1~請求項
5のいずれか1つに記載の印刷配線板。
【請求項7】
前記スルーホール導体は、前記第2面に平行な断面における開口の形状が長方形、レーストラック型、ダンベル型またはボウタイ型である、請求項
6に記載の印刷配線板。
【請求項8】
前記スルーホール導体は、前記第2面に平行な断面における開口の形状が、湾曲した角部を有する長方形である、請求項
6に記載の印刷配線板。
【請求項9】
前記第2絶縁層の比誘電率が前記樹脂の比誘電率よりも低い、請求項
1~請求項8のいずれか1つに記載の印刷配線板。
【請求項10】
前記第2絶縁層上に第2導体層を備え、
前記第2導体層は、前記複数のビア導体と電気的に接続されており
前記第2導体層は、前記平面視で前記貫通孔の中心軸を囲む位置に、前記第2面側開口よりも面積が小さい開口を有する、請求項
1~請求項
9のいずれか1つに記載の印刷配線板。
【請求項11】
前記スルーホール導体の前記第1面における第1面側開口を覆う第3絶縁層と、
前記第3絶縁層上に設けられた第3導体層と、
を備え、
前記第3導体層は、電子部品と電気的に接続される複数の接続部を有し、
前記複数の接続部のうち少なくとも1つは、前記第1面に向かう平面視で前記貫通孔の中心軸と重なる位置である、請求項
10に記載の印刷配線板。
【請求項12】
前記第1絶縁層の内部に内層導体を備え、
前記内層導体は、前記スルーホール導体と電気的に接続されている、請求項1~請求項
11のいずれか1つに記載の印刷配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷配線板の一方の面から他方の面への信号の伝送に、印刷配線板の厚み方向に延在する導波管を用いる技術が知られている(例えば、特開2015-139042号公報)。従来の導波管は、印刷配線板の厚み方向の各位置で径の変化が無いものであった。
【発明の概要】
【0003】
本開示の一態様に係る印刷配線板は、第1面と、該第1面とは反対側の第2面と、前記第1面から前記第2面まで貫通する貫通孔とを有する第1絶縁層を備える。印刷配線板は、前記貫通孔の内壁に位置し、かつ、前記第2面に平行な断面における開口面積が前記第1面側から前記第2面側に向かうに従って増大する部分を有するスルーホール導体を備える。印刷配線板は、前記第1絶縁層の前記第2面に位置し、前記スルーホール導体と電気的に接続された第1導体層と、前記スルーホール導体に囲まれた空間を埋めている樹脂と、前記第1導体層上に設けられている第2絶縁層と、前記第2絶縁層を貫通する複数のビア導体と、を備える。前記複数のビア導体は、前記第1導体層と電気的に接続されており、かつ、前記第2面に向かう平面視で、前記スルーホール導体の前記第2面における第2面側開口を囲むように配置されている。前記スルーホール導体は、前記第1絶縁層の前記貫通孔の前記内壁にのみ位置しており、前記第2絶縁層には位置していない。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】第1の実施形態に係る印刷配線板の平面図および断面図である。
【
図3】変形例1に係る他の印刷配線板の平面図である。
【
図4】変形例1に係る他の印刷配線板の平面図である。
【
図5】変形例1に係る他の印刷配線板の平面図である。
【
図6】変形例1に係る他の印刷配線板の平面図である。
【
図8】変形例2に係る他の印刷配線板の断面図である。
【
図9】第2の実施形態に係る印刷配線板の断面図である。
【
図10】第3の実施形態に係る印刷配線板の平面図および断面図である。
【
図11】第4の実施形態に係る印刷配線板の断面図である。
【
図12】第5の実施形態に係る印刷配線板の断面図である。
【
図13】第6の実施形態に係る印刷配線板の断面図である。
【
図14】印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図15】印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図16】印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下、実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下で参照する各図は、説明の便宜上、実施形態を説明する上で必要な主要部材のみを簡略化して示したものである。したがって、本開示の印刷配線板1は、参照する各図に示されていない任意の構成部材を備え得る。また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法および寸法比率などを忠実に表したものではない。
【0006】
〔第1の実施形態〕
図1に示すように、第1の実施形態に係る印刷配線板1は、第1絶縁層11およびスルーホール導体20を備えている。以下では、印刷配線板1の厚さ方向をZ方向とするXYZ直交座標系により印刷配線板1の各部の向きを説明する。また、印刷配線板1を構成する各層の+Z方向を向く面を「上面」とも記し、-Z方向を向く面を「下面」とも記す。また、Z方向から見ることを「平面視」と記す。
【0007】
第1絶縁層11は、絶縁性を有する材質の板状部材である。以下、第1絶縁層11の下面を第1面S1と記し、上面(第1面S1とは反対側の面)を第2面S2と記す。第1面S1および第2面S2はXY平面と平行である。以下では、第2面S2に平行な断面を「横断面」と記し、第2面S2に垂直な断面を「縦断面」と記す。
【0008】
第1絶縁層11の材質は、絶縁性を有しているものであれば特に限定されない。第1絶縁層11の材質としては、例えば、エポキシ樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂、フェノール樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ケイ素樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリフェニレンオキシド(PPO)樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は2種以上を混合してもよい。また、印刷配線板1の強度を高められるという点から、第1絶縁層11には、ガラスクロスなどの繊維質基材が配合されていてもよい。また、第1絶縁層11には、水酸化アルミニウム、シリカまたは硫酸バリウムなどの無機充填剤、もしくはフェノール樹脂またはメタクリル樹脂などの有機充填材が配合されていてもよい。
【0009】
第1絶縁層11は、第1面S1から第2面S2まで貫通する貫通孔111を有する。貫通孔111の内壁112は、円錐台の側面の形状を有している。よって、貫通孔111の第1面S1における開口、第2面S2における開口、および任意の横断面における開口の形状は、いずれも円形である。また、これらの開口がなす円の半径は、第1面S1から第2面S2に向かうに従って増大している。
【0010】
スルーホール導体20は、貫通孔111の内壁112に位置しており、内壁112に沿って第1面S1から第2面S2まで延在している。スルーホール導体20は、厚さがほぼ均一である。よって、スルーホール導体20の内壁203は、貫通孔111の内壁112と同様、円錐台の側面の形状を有している。スルーホール導体20は、第1面S1における第1面側開口201、および第2面S2における第2面側開口202が他の導体で塞がっていない。スルーホール導体20の第1面側開口201、第2面側開口202、および任意の横断面における開口の形状は、いずれも円形である。これらの開口がなす円の半径は、第1面S1から第2面S2まで、該第2面S2に向かうに従って増大している。よって、スルーホール導体20は、第1面S1から第2面S2まで、該第2面S2に向かうに従って横断面における開口面積が増大している。また、スルーホール導体20は、貫通孔111の中心軸を通る任意の縦断面において、第2面S2に平行な方向についての開口幅(
図1におけるX方向についての開口幅)が第1面S1から第2面S2まで、該第2面S2に向かうに従って増大している(拡径している)。また、スルーホール導体20は、貫通孔111の中心軸を通る任意の縦断面において、第2面S2に垂直な方向(Z方向)に対して傾斜している部分を有する。より詳しくは、スルーホール導体20は、上記縦断面において、第2面S2に垂直な方向に対して内壁203が傾斜している部分を有する。別の観点では、スルーホール導体20は、横断面における開口の面積が第1面S1側から第2面S2側に向かうに従って増大する部分を有する。スルーホール導体20は、例えば、めっき処理により貫通孔111の内壁112に形成された銅、ニッケルおよび/または金などの金属(めっき層)であってもよい。
【0011】
スルーホール導体20は、
図1の白抜きの矢印で示すように第1面側開口201から第2面側開口202に電磁波を伝播させる導波管として機能する。導波管としてのスルーホール導体20は、第1面側開口201の直径をD1、第2面側開口202の直径をD2とした場合に、λ/2≦D1≦λ、およびλ/2≦D2≦λをいずれも満たす波長λの電磁波を伝播させる。この導波管を用いることで、印刷配線板1の第2面側開口202から+Z方向に電磁波を送信することができる。具体的には、第1面側開口201の近傍に、マイクロ波などの電磁波を出力するMMIC(モノリシックマイクロ波集積回路)の出力端子、または該出力端子と電気的に接続された接続パッドを配置すると、該電極から出力された電磁波をスルーホール導体20によって第2面S2側に導いて、第2面側開口202から+Z方向に送信することができる。
【0012】
また、印刷配線板1の上方から第2面側開口202に入射した電磁波をスルーホール導体20によって第1面S1側に導いて、第1面側開口201から上記の電極に入射させて受信することもできる。
【0013】
このように、第2面S2側に向かうに従ってスルーホール導体20の横断面の開口面積が増大する構成によれば、第2面S2側から電磁波を放射する場合に電磁波が伝搬方向に進むほど開口径が大きくなる導波管(フィードホーン型導波管)が得られる。よって、スルーホール導体20の内部において、電磁波が第2面S2に近付くに従って平面波に近付くため、第2面側開口202から外部に放射される電磁波の、平面波への変化が緩やかになる。また、電磁波が第2面側開口202に向かって進むほどスルーホール導体20の開口径が大きくなるため、開口径が一定である導波管と比較して、スルーホール導体20の内部における電磁波の反射が起きにくい。これらにより、開口径が一定である従来の導波管と比較して信号の伝送利得が向上する。
また、受信時において、第2面側開口202からスルーホール導体20に入射する電磁波の収束効率を高めることができる。
【0014】
また、スルーホール導体20の内壁203がZ方向に対して傾斜している構成により、送信時において、第1面S1側から第2面S2側に向かう電磁波が次第に広がっていく領域が形成される。これにより、スルーホール導体20の内部において反射がより起きにくくなり、信号の伝送利得がさらに向上する。
また、受信時において、第2面側開口202からスルーホール導体20に入射する電磁波の収束効率をさらに高めることができる。
【0015】
言い換えると、本実施形態の印刷配線板1は、
第1絶縁層、スルーホール導体および貫通孔を備え、
前記第1絶縁層は、第1面と、該第1面とは反対に位置する第2面と、を有し、
前記スルーホール導体は、前記第1面から前記第2面にわたって位置しており、前記スルーホール導体に囲まれた部分が貫通孔であり、
該貫通孔は、前記第2面に平行な断面における開口面積が前記第1面から前記第2面に向かうに従って増大する部分を有する。
【0016】
〔変形例1〕
次に、第1の実施形態の変形例1について説明する。変形例1に係る印刷配線板1は、スルーホール導体20の横断面における開口のアスペクト比が1を超える形状である点で上記実施形態と異なる。以下では、第1の実施形態と相違する点について説明し、共通する点については説明を省略する。変形例1は、後述する第2~第6の実施形態と組み合わせてもよい。
【0017】
図2に示すように、変形例1に係る印刷配線板1のスルーホール導体20は、第1面側開口201、第2面側開口202、および任意の横断面における開口の形状が互いに相似な長方形である。これらの長方形は、第1面S1から第2面S2に向かうに従って面積が増大している。また、貫通孔111の中心軸を通る任意の縦断面において、第2面S2に垂直な方向(Z方向)に対して内壁203が傾斜している。ここで、スルーホール導体20の開口が円形以外の形状である場合には、貫通孔111の中心軸は、例えば横断面における開口形状の重心を通る軸とすることができる(以下の
図3~
図6についても同様である)。
なお、内壁203がZ方向に対して傾斜している部分は、スルーホール導体20の長手方向(X方向に平行な内壁)、短手方向(Y方向に平行な内壁)のいずれか一方にあってもよい。特に、長手方向の内壁にあるのがよい。
【0018】
第1面側開口201の長辺(長径)の長さはa1、短辺(短径)の長さはb1である。第2面側開口202の長辺の長さはa2、短辺の長さはb2である。
図2のスルーホール導体20は、λ/2≦a1≦λ、およびλ/2≦a2≦λをいずれも満たす波長λの電磁波を伝播する。
【0019】
このような構成によれば、スルーホール導体20の長径が短径より大きくなっている分、通過できる電磁波の波長の範囲を広くすることができる。また、相対的に短径が小さいことで、導波管を伝搬する平面波の電磁界が長径(
図2のX方向)に向きやすくなり、伝搬効率を高めることができる。
【0020】
図3に示すように、スルーホール導体20は、横断面における開口の形状が、湾曲した角部204を有する長方形であってもよい。すなわち、スルーホール導体20の内壁の角部204が湾曲した凹状となっていてもよい。
この構成によれば、信号の送信時および受信時において、スルーホール導体20をZ方向に伝播する電流の周りを周回する磁界(磁力線)が、角部204付近の内壁で反射しにくくなる。よって、信号の伝送利得を向上することができる。
【0021】
スルーホール導体20の横断面における開口の形状は、
図2および
図3に示した長方形に限らず、アスペクト比が1を超える任意の形状とすることができる。
例えば、
図4に示すように、スルーホール導体20は、横断面における開口の形状がレーストラック型(X方向に延びる長円型)であってもよい。
【0022】
また、
図5に示すように、スルーホール導体20は、横断面における開口の形状がダンベル型であってもよい。ここで、ダンベル型は、X方向についての一方側および他方側の端部がいずれも円形であり、これらの端部を除いた中央部が帯状となっている形状である。言い換えると、ダンベル型は、円形の2つの端部を、該円形の直径より幅の狭い帯状の中央部で繋いだ形状である。
【0023】
また、
図6に示すように、スルーホール導体20は、横断面における開口の形状がボウタイ型であってもよい。ここで、ボウタイ型は、X方向についての一方側および他方側の端部がいずれも台形状であり、端部を除いた中央部が帯状である。各端部の台形状は、X方向についての端に近いほどY方向の幅が広い形状である。
【0024】
これらのレーストラック型、ダンベル型およびボウタイ型のスルーホール導体20も、長方形のスルーホール導体20と同様の効果を奏する。
【0025】
〔変形例2〕
次に、第1の実施形態の変形例2について説明する。変形例2に係る印刷配線板1は、スルーホール導体20の縦断面の形状が上記実施形態と異なる。以下では、第1の実施形態と相違する点について説明し、共通する点については説明を省略する。変形例2は、変形例1と組み合わせてもよい。また、変形例2は、後述する第2~第6の実施形態と組み合わせてもよい。
【0026】
図7に示すように、変形例2に係る印刷配線板1のスルーホール導体20は、横断面の開口面積が第2面S2に向かって増大する部分p1と、開口面積が一定である部分p2とを有する。部分p1は、スルーホール導体20のうち第1面S1から所定距離範囲内の部分であり、部分p2は、スルーホール導体20のうち部分p1を除いた部分である。
【0027】
別の観点では、貫通孔111の中心軸を通る任意の縦断面において、部分p1では、第2面S2に平行な方向についての開口幅が第2面S2に向かうに従って増大している。一方、任意の縦断面において、部分p2では、第2面S2に平行な方向についての開口幅が一定である。
【0028】
別の観点では、貫通孔111の中心軸を通る任意の縦断面において、部分p1では、第2面S2に垂直な方向(Z方向)に対して内壁203が傾斜している。一方、任意の断面において、部分p2では、内壁面がZ方向に平行である。
なお、開口面積が一定の部分p2が第1面S1側にあり、面積が増大する部分p1が第2面S2側にある構成であってもよい。
【0029】
このように、スルーホール導体20は、横断面における開口の面積が第1面S1側から第2面S2側に向かうに従って増大する部分を有していればよく、横断面における開口面積は、第2面S2に向かうに従って単調非減少となっていればよい。
【0030】
また、
図8に示すように、変形例2に係る印刷配線板1のスルーホール導体20は、横断面の開口面積が第2面S2に向かって減少する部分p3と、横断面の開口面積が第2面S2に向かって増大する部分p1とを有していてもよい。部分p3は、スルーホール導体20のうち第1面S1から所定距離範囲内の部分であり、部分p1は、スルーホール導体20のうち部分p3を除いた部分である。
図8の構成によれば、送信時および受信時の反射、収束を平均的なものにできるため、送受信時の信号の伝搬効率の差を小さくできる。
【0031】
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態に係る印刷配線板1は、第1導体層21を有している点で第1の実施形態と異なる。以下では、第1の実施形態と相違する点について説明し、共通する点については説明を省略する。
【0032】
図9に示すように、第2の実施形態に係る印刷配線板1は、第1絶縁層11の第2面S2に第1導体層21を有する。第1導体層21は、スルーホール導体20と電気的に接続されている。第1導体層21は、スルーホール導体20の第2面側開口202の大きさを維持する配置となっている。すなわち、第1導体層21は、第2面側開口202を塞がない配置となっている。第1導体層21は、第2面S2のうち一部、例えばスルーホール導体20との接続部の周囲のみに設けられていてもよい。
【0033】
第1導体層21は、例えば、めっき処理により形成されためっき層(銅、ニッケルまたは金等)、銅箔等の金属箔、蒸着膜、スパッタ膜などであってもよい。これらのうち、コストおよび量産性の観点からは、銅のめっき層および/または銅箔を用いるのがよい。
なお、印刷配線板1は、第1面S1にもスルーホール導体20と電気的に接続された第1導体層21を有していてもよい。第1導体層21を有する第1絶縁層11として、片面銅箔または両面銅箔のプリント板を用いてもよい。
【0034】
このように、第2面S2に第1導体層21を有する構成によれば、送信時においては、電磁波がスルーホール導体20を通じて第2面S2側から放射される場合に、
図9において破線で示すように、電磁波(電磁界)が第2面S2上に設けられた第1導体層21に沿うように広がる。これにより、スルーホール導体20を通じて第2面S2側から放射される電磁界をより広く安定した平面波へ変化させることができる。よって、電磁波の空間への放出効率を高めることができる。
また、受信時においては、受信する平面波の収束効率を高めることができる。
【0035】
〔第3の実施形態〕
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態に係る印刷配線板1は、有機樹脂40、第2絶縁層12および複数の第1ビア導体31を有している点で第2の実施形態と異なる。以下では、第2の実施形態と相違する点について説明し、共通する点については説明を省略する。
【0036】
図10に示すように、第3の実施形態に係る印刷配線板1は、スルーホール導体20に囲まれた空間を埋めている有機樹脂40(樹脂)と、第1導体層21上に設けられている第2絶縁層12と、第2絶縁層12を貫通する複数のビア導体31と、を備える。ここで、スルーホール導体20に囲まれた空間とは、スルーホール導体20の内壁、第1面側開口201がなす面、および第2面側開口202がなす面に囲まれた空間をいう。複数のビア導体31は、第1導体層21と電気的に接続されている。また、複数のビア導体31は、第2面S2に向かう平面視で、第2面側開口202を囲むように第2面側開口202の外側に配置されている。
図10では、第2面側開口202の周囲を等間隔に囲む6つのビア導体31が設けられている。ビア導体31の材質は、上記で第1導体層21の材質として例示した複数の材質のうちのいずれかであってもよく、第1導体層21の材質と同一であってもよい。
【0037】
貫通孔111(スルーホール導体20)に充填する有機樹脂40としては、エポキシ樹脂(比誘電率ε:2.5~6.0)、ポリイミド樹脂(比誘電率ε:4.8~4.9)、ポリアミド樹脂(比誘電率ε:3.8~4.1)、ポリフェニレンエーテル樹脂(比誘電率ε:2.8~2.9)などから選ばれる少なくとも一種がよい。有機樹脂40には無機フィラーを混合してもよい。
【0038】
第2絶縁層12としては、液晶ポリマー(比誘電率ε:3.5~3.6)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン、比誘電率ε:2.1)、環状オレフィンコポリマー(比誘電率:2.7)などがよい。特に、第2絶縁層12としては、有機樹脂40よりも比誘電率が低いものがよい。第2絶縁層12および/または有機樹脂40の空隙率を変えたり、無機フィラーの含有量を変えたりすることで、第2絶縁層12および/または有機樹脂40の比誘電率を調整してもよい。特に、有機樹脂40にエポキシ樹脂を用い、第2絶縁層12に液晶ポリマーを用いてもよい。なお、第2絶縁層12として有機樹脂40と同一の材質を用いてもよい。
【0039】
このように、複数のビア導体31を有する構成によれば、送信時においては、電磁波がスルーホール導体20から第1導体層21に達した後に、その平面波としての広がりをビア導体31によって抑制しつつ、指向性を高めることができる。また、受信時においては、平面波の収束効率を高めることができる。
【0040】
また、第2絶縁層12の比誘電率が有機樹脂40の比誘電率よりも低い構成とすることで、スルーホール導体20から第1導体層21に向けて電磁波が放射される送信時においてカットオフ周波数を高くできるため、高次モードの電磁波をより減衰させることができる。また、比誘電率が低い第2絶縁層12において、出射時の電磁波の波長を広くとることができる。
【0041】
〔第4の実施形態〕
次に、第4の実施形態について説明する。第4の実施形態に係る印刷配線板1は、第2導体層22を有している点で第3の実施形態と異なる。以下では、第3の実施形態と相違する点について説明し、共通する点については説明を省略する。
【0042】
図11に示すように、第4の実施形態に係る印刷配線板1は、第2絶縁層12上に第2導体層22を備える。第2導体層22は、複数のビア導体31と電気的に接続されている。また、第2導体層22は、平面視で貫通孔111の中心軸111aを囲む位置に、第2面側開口202よりも面積が小さい開口221を有する。開口221の形状は、例えば円形であってもよい。また、開口221の形状は、第2面側開口202の形状の相似形であってもよい。第2導体層22の材質は、上記で第1導体層21の材質として例示した複数の材質のうちのいずれかであってもよく、第1導体層21の材質と同一であってもよい。また、第2導体層22およびビア導体31は、めっき処理などの共通の工程で形成されることで、一体的となっていてもよい。
【0043】
このような構成によれば、送信時においては、スルーホール導体20から開口221を通って+Z方向に放射される電磁波の指向性をビア導体31および第2導体層22の開口221によって高めつつ、収束効率を高めることができる。また、受信時においては、第2導体層22の開口221を通すことで電磁波のサイドローブの部分を低減することができるため、電磁波のメインローブを高い効率でスルーホール導体20に導入させることができる。この場合、スルーホール導体20の内部においては、平面波が電磁波の進行方向に対して垂直な方向(第2面S2に平行な方向)に向きやすくなる。また、高次モードの電磁波を減衰させることができる。
【0044】
〔第5の実施形態〕
次に、第5の実施形態について説明する。第5の実施形態に係る印刷配線板1は、第4の実施形態の印刷配線板1の上面および下面にそれぞれ構成要素を追加したものに相当する。以下では、第4の実施形態と相違する点について説明し、共通する点については説明を省略する。
【0045】
図12に示すように、第5の実施形態に係る印刷配線板1は、第1絶縁層11の第1面S1(下面)にも、スルーホール導体20と電気的に接続された第1導体層21を有する。この第1面S1の第1導体層21の下面には、スルーホール導体20の第1面側開口201を覆う第3絶縁層13が設けられている。第3絶縁層13上(下面)には、第3導体層23が設けられている。第3導体層23は、電子部品としてのMMIC50の端子と電気的に接続される複数の接続パッド231、232(接続部)を有する。このうち接続パッド231は、第1面S1に向かう平面視で貫通孔111の中心軸111aと重なる位置にある。すなわち、接続パッド231の位置は、中心軸111aと重なる位置である。また、接続パッド232は、第3絶縁層13を貫通するビア導体32によって、第1面S1上の第1導体層21と電気的に接続されている。第3絶縁層13および第3導体層23の下面には、第4絶縁層14が設けられている。
【0046】
第3絶縁層13および第4絶縁層14の材質は、上記で第2絶縁層12の材質として例示した複数の材質のうちのいずれかであってもよく、第2絶縁層12の材質と同一であってもよい。ビア導体32および第3導体層23の材質は、上記で第1導体層21の材質として例示した複数の材質のうちのいずれかであってもよく、第1導体層21の材質と同一であってもよい。また、ビア導体32および第3導体層23は、めっき処理などの共通の工程で形成されることで、一体的となっていてもよい。
【0047】
また、第2導体層22の上面には、第2導体層22の開口221を覆う第5絶縁層15が設けられている。第5絶縁層15の上面には、平面視で開口221を覆う範囲に第4導体層24が設けられている。第4導体層24は、パッチアンテナとして機能する。
【0048】
第5絶縁層15の材質は、上記で第2絶縁層12の材質として例示した複数の材質のうちのいずれかであってもよく、第2絶縁層12の材質と同一であってもよい。ただし、有機樹脂40の比誘電率よりも第2絶縁層12の比誘電率の方が低く、かつ、第2絶縁層12の比誘電率よりも第5絶縁層15の比誘電率の方が低い構成とするのがよい。特に、有機樹脂40にエポキシ樹脂を用い、第2絶縁層12に液晶ポリマーを用い、第5絶縁層15にPTFEを用いてもよい。
第4導体層24の材質は、上記で第1導体層21の材質として例示した複数の材質のうちのいずれかであってもよく、第1導体層21の材質と同一であってもよい。
【0049】
このような構成によれば、MMIC50の端子から放射された電磁波(高周波信号)を、接続パッド231からスルーホール導体20に導き、第4導体層24から+Z方向に送信することができる。ここで、接続パッド231が貫通孔111の中心軸111a上にあることで、MMIC50の端子から放射された電磁波を狭いスルーホール導体20に直線的に伝搬させることができる。このため、MMIC50からスルーホール導体20へ入射するときの電磁波の伝送損失を小さくすることができる。
また、受信時においては、パッチアンテナとしての第4導体層24からスルーホール導体20を通った電磁波を収束率の高い状態でMMIC50に伝送させることができる。
【0050】
〔第6の実施形態〕
次に、第6の実施形態について説明する。第6の実施形態に係る印刷配線板1は、第1絶縁層11の内部に内層導体25を有する点で第1の実施形態と異なる。以下では、第1の実施形態と相違する点について説明し、共通する点については説明を省略する。
【0051】
図13に示すように、第6の実施形態に係る印刷配線板1は、第1絶縁層11の内部に内層導体25を備える。内層導体25は、スルーホール導体20と電気的に接続されている。内層導体25は、第2面S2に平行な板状の導体である。第1絶縁層11は、複数の絶縁体をZ方向に積層させた構成であってもよく、内層導体25は、これらの複数の絶縁体のいずれかの界面に形成されていてもよい。また、内層導体25が複数層設けられていてもよい。
【0052】
第6の実施形態は、第2~第5の実施形態と組み合わせてもよい。すなわち、第2~第5の実施形態の印刷配線板1は、第1絶縁層11の内部に内層導体25を有していてもよい。
【0053】
このように内層導体25を有する構成によれば、第1絶縁層11が、曲げなどを生じさせ得るような負荷を受けたときに、スルーホール導体20を含む導波管の変形を低減することができる。これにより、伝搬する電磁波の乱れを小さくすることができるため、安定した伝送利得(伝送効率)を得ることができる。
【0054】
〔印刷配線板の製造方法〕
次に、
図14~
図16を参照して、印刷配線板1の製造方法の実施例について説明する。ここでは、
図12に示す第5の実施形態に係る印刷配線板1を製造する場合を例に挙げて説明する。以下の製造方法で挙げている各部材の材質は一例であり、これらに限らない。
【0055】
まず、第1絶縁層11と、第1絶縁層11の第1面S1および第2面S2に形成された第1導体層21とを有するプリント板を用意する。第1絶縁層11は、例えば、エポキシ樹脂を含侵したガラスクロス(比誘電率ε:4.6)であり、第1導体層21は銅箔である。
【0056】
次に、
図14に示すように、先端が後端よりも径の小さいリーマ型のドリルを用いてプリント板に貫通孔111を形成する。長方形などの角のある形状には、径の小さいドリルを併用する。リーマ型のドリルを用いることで、第2面S2に向かって開口面積が大きくなる貫通孔111を形成できる。
【0057】
次に、
図15に示すように、無電解銅めっき処理および電解銅めっき処理を行って、貫通孔111の内壁112にスルーホール導体20を形成する。なお、この工程で併せて第1導体層21を形成してもよい。
【0058】
次に、
図16に示すように、スルーホール導体20によって囲まれた空間にエポキシ樹脂(比誘電率ε:4.3)の有機樹脂40を充填する。また、有機樹脂40を充填した構造体の第1面S1側および第2面S2側にそれぞれ、液晶ポリマー(比誘電率ε:3.5~3.6)をレイアップし、この状態の構造体を加熱するとともにZ方向に加圧する(例えば、200℃、2時間)。これにより、液晶ポリマーが一旦溶融した後に硬化させて、
図16に示すように、第2面S2側に第2絶縁層12が形成され、第1面S1側に第3絶縁層13が形成される。この後、公知の成膜技術等を用いて、第2面S2側にビア導体31、第2導体層22、第5絶縁層15、第4導体層24を形成し、第1面S1側にビア導体32、第3導体層23、第4絶縁層14、MMIC50を形成して、
図12に示す印刷配線板1が完成する。
【0059】
なお、上記実施の形態で示した構成、構造、位置関係および形状などの具体的な細部は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態で示した構成、構造、位置関係および形状を適宜組み合わせ可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本開示は、印刷配線板に利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 印刷配線板
10 絶縁層
11 第1絶縁層
111 貫通孔
111a 中心軸
112 内壁
12 第2絶縁層
13 第3絶縁層
14 第4絶縁層
15 第5絶縁層
20 スルーホール導体
201 第1面側開口
202 第2面側開口
203 内壁
204 角部
21 第1導体層
22 第2導体層
221 開口
23 第3導体層
231、232 接続パッド(接続部)
24 第4導体層
25 内層導体
31、32 ビア導体
40 有機樹脂(樹脂)
50 MMIC(電子部品)
S1 第1面
S2 第2面