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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】脊磁計
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/81 20230101AFI20250407BHJP
   A61B 5/248 20210101ALI20250407BHJP
【FI】
H10N60/81
A61B5/248
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023523438
(86)(22)【出願日】2022-05-19
(86)【国際出願番号】 JP2022020761
(87)【国際公開番号】W WO2022249960
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2021090086
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155698
【氏名又は名称】株式会社有沢製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100197701
【弁理士】
【氏名又は名称】長野 正
(72)【発明者】
【氏名】平井 正明
(72)【発明者】
【氏名】中村 寿男
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-302933(JP,A)
【文献】特開平06-003427(JP,A)
【文献】特開2002-057377(JP,A)
【文献】特開平05-203711(JP,A)
【文献】特開2018-057843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/81
A61B 5/248
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容器と、前記内容器を空隙を介して包囲する外容器と、を備え、
前記内容器及び前記外容器は、繊維を含む基材に樹脂が含浸された繊維強化プラスチックから構成され、
前記内容器は、内部に冷媒を貯留する収容部をそれぞれ有する筒状容器及び第二の筒状容器と、前記筒状容器に冷媒を注入する冷媒注入管と、を備え、
前記第二の筒状容器は、その収容部が前記筒状容器の前記収容部に連通しており、
前記第二の筒状容器の所定領域及び前記外容器の所定領域を構成する基材は、織物を含み、
前記外容器の前記所定領域はハニカムシートを更に含み、前記ハニカムシートの一面及び他面に前記織物が積層されている、断熱容器と、
生体から発生する磁場を検出する超伝導量子干渉計と、を備え、
前記超伝導量子干渉計が、前記第二の筒状容器の前記収容部に貯留された冷媒中に浸漬され、
前記超伝導量子干渉計の測定面は、前記第二の筒状容器の前記所定領域及び前記外容器の前記所定領域と対向している、脊磁計。
【請求項2】
前記織物は、ガラス繊維、アルミナ繊維、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される、請求項1に記載の脊磁計。
【請求項3】
前記外容器の前記所定領域を構成する基材は、複数の繊維が一方向に引き揃えられてなる一方向繊維シートを更に含み、前記ハニカムシートの一面と他面の少なくとも一方の面に、前記一方向繊維シートが積層されている、請求項1又は2に記載の脊磁計。
【請求項4】
前記第二の筒状容器の軸芯の延在方向に対して、前記外容器の前記所定領域を構成する前記一方向繊維シートの繊維が平行である、請求項3に記載の脊磁計。
【請求項5】
前記第二の筒状容器の前記所定領域を構成する基材は、複数の繊維が一方向に引き揃えられてなる一方向繊維シートを更に含む、請求項に記載の脊磁計。
【請求項6】
前記第二の筒状容器の軸芯の延在方向に対して、前記第二の筒状容器の前記所定領域を構成する前記一方向繊維シートの繊維が直交している、請求項5に記載の脊磁計。
【請求項7】
前記外容器の前記所定領域を構成する一方向繊維シートと前記第二の筒状容器の前記所定領域を構成する一方向繊維シートとが対向する状態で、前記外容器が前記第二の筒状容器を包囲している、請求項に記載の脊磁計。
【請求項8】
前記外容器の前記所定領域を構成する前記一方向繊維シートは、ガラス繊維、アルミナ繊維、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される、請求項に記載の脊磁計。
【請求項9】
前記第二の筒状容器の前記所定領域を構成する前記一方向繊維シートは、ガラス繊維、アルミナ繊維、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される、請求項に記載の脊磁計。
【請求項10】
前記ハニカムシートの厚さは、1~7mmである、請求項1又は2に記載の脊磁計。
【請求項11】
前記樹脂が、エポキシ樹脂を含む、請求項1又は2に記載の脊磁計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱容器、及びそれを用いた脊磁計に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、脊髄の神経活動によって生じた磁場を測定する装置(脊磁計)が開発されている。脊磁計は、超伝導原理を利用した超伝導量子干渉計(Superconducting Quantum Interference Device、以下「SQUID」という。)を用いて、脊髄で発生する微弱な磁場を測定する。
【0003】
SQUIDは、超伝導状態を発現させるために、例えば液体ヘリウム等の冷媒に浸漬される必要がある。このため、脊磁計は、冷媒を長く貯留できる断熱性に優れた断熱容器を必要とする。更に、断熱容器を構成する材料は、磁気の影響を受けない非磁性の材料から構成されている必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics、以下「FRP」ともいう。)から構成される内容器とその内容器を包囲する外容器とを備える極低温容器と、その極低温容器を備える磁気検知装置とが開示されている。この内容器内は、低沸点を有する液体で満たされ、この液体中に磁気検知センサが配設されている。また、内容器と外容器との間の空隙は真空状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-302933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
微弱な磁場を測定するため、SQUIDと脊髄の測定部位との距離(リフトオフ)をできるだけ短くする必要がある。特にSQUIDと脊髄の測定部位との間に介在する断熱容器は、断熱機能を維持しつつ、断熱容器を構成する壁の厚さを薄くする必要がある。
【0007】
特許文献1に開示されている内容器及び外容器は、断熱機能を高めるため、それらの壁が厚い。このため、SQUIDが微弱な磁場を感知し難いという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、断熱性に優れ、壁が薄い断熱容器、及びそれを用いた脊磁計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、[1]本発明に係る断熱容器は、内容器と、前記内容器を空隙を介して包囲する外容器と、を備え、前記内容器及び前記外容器は、繊維を含む基材に樹脂が含浸された繊維強化プラスチックから構成され、前記内容器は、内部に冷媒を貯留する収容部をそれぞれ有する筒状容器及び第二の筒状容器と、前記筒状容器に冷媒を注入する冷媒注入管と、を備え、前記第二の筒状容器は、その収容部が前記筒状容器の前記収容部に連通しており、前記第二の筒状容器の所定領域及び前記外容器の所定領域を構成する基材は、織物を含み、前記外容器の前記所定領域はハニカムシートを更に含み、前記ハニカムシートの一面及び他面に前記織物が積層されている。
【0010】
また、[2]前記織物は、ガラス繊維、アルミナ繊維、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される、ようにしてもよい。
【0011】
また、[3]前記外容器の前記所定領域を構成する基材は、複数の繊維が一方向に引き揃えられてなる一方向繊維シートを更に含み、前記ハニカムシートの一面と他面の少なくとも一方の面に、前記一方向繊維シートが積層されている、ようにしてもよい。
【0012】
また、[4]前記第二の筒状容器の軸芯の延在方向に対して、前記外容器の前記所定領域を構成する前記一方向繊維シートの繊維が平行である、ようにしてもよい。
【0013】
また、[5]前記第二の筒状容器の前記所定領域を構成する基材は、複数の繊維が一方向に引き揃えられてなる一方向繊維シートを更に含む、ようにしてもよい。
【0014】
また、[6]前記第二の筒状容器の軸芯の延在方向に対して、前記第二の筒状容器の前記所定領域を構成する前記一方向繊維シートの繊維が直交している、ようにしてもよい。
【0015】
また、[7]前記外容器の前記所定領域を構成する一方向繊維シートと前記第二の筒状容器の前記所定領域を構成する一方向繊維シートとが対向する状態で、前記外容器が前記第二の筒状容器を包囲している、ようにしてもよい。
【0016】
また、[8]前記外容器の前記所定領域を構成する前記一方向繊維シートは、ガラス繊維、アルミナ繊維、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される、ようにしてもよい。
【0017】
また、[9]前記第二の筒状容器の前記所定領域を構成する前記一方向繊維シートは、ガラス繊維、アルミナ繊維、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される、ようにしてもよい。
【0018】
また、[10]前記ハニカムシートの厚さは、1~7mmである、ようにしてもよい。
【0019】
また、[11]前記樹脂が、エポキシ樹脂を含む、ようにしてもよい。
【0020】
また、[12]本発明に係る脊磁計は、生体から発生する磁場を検出する超伝導量子干渉計と、[1]から[11]のいずれかに記載の断熱容器と、を備え、前記超伝導量子干渉計が、前記第二の筒状容器の前記収容部に貯留された冷媒中に浸漬される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、断熱性に優れ、壁が薄い断熱容器、及びそれを用いた脊磁計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施の形態に係る断熱容器の概略側面図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る断熱容器の概略上面図である。
図3図2のA-A線矢視断面図である。
図4図3に示す冷媒注入管の構成を示す概略図である。
図5】一方向繊維シートの構成を示す概略図である。
図6図3に示す筒状容器の筒状部の構成を示す概略図である。
図7図3に示す筒状容器の筒状部の変形例の構成を示す概略断面図である。
図8図2のB-B線矢視断面図である。
図9】本発明の一実施の形態に係る断熱容器を用いた脊磁計の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る断熱容器と、それを用いた脊磁計を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0024】
(実施の形態)
実施の形態の断熱容器10について説明する。図1は、断熱容器10の側面図である。図2は、断熱容器10の上面図である。図3は、図2に示した断熱容器10のA-A線矢視断面図である。断熱容器10は、図3に示すように冷媒16を貯留するための容器である。断熱容器10は、内容器11と、内容器11を空隙15を介して包囲する外容器14と、を備える。
【0025】
内容器11及び外容器14について説明する。
【0026】
[内容器11]
内容器11は、内部に冷媒16を貯留する収容部23を有する筒状容器13と、筒状容器13に取り付けられている冷媒注入管12と、内部に冷媒16を貯留する収容部24を有する第二の筒状容器22と、を備える。収容部24は収容部23に連通している。筒状容器13は、上面を構成する上面部131と、側壁を構成する筒状部132と、底面を構成する底面部133と、を有する。冷媒注入管12は、上面部131に取り付けられている。なお、冷媒注入管12は、筒状部132に取り付けられていてもよい。ここで、内容器11における「内部」は、冷媒16が接する可能性がある面が構成する領域をいう。
【0027】
冷媒注入管12、筒状容器13及び第二の筒状容器22について説明する。
【0028】
[冷媒注入管12]
冷媒注入管12は、筒状容器13に冷媒16を注入するための管体である。管体は、円筒状、楕円筒状、角筒状等の形状で構成されていてもよい。
【0029】
断熱性を向上させる観点、及び、常温及び冷媒16により達成される-196℃以下の温度域において剛性を発現させる観点から、冷媒注入管12を構成する壁の厚さは、好ましくは2~30mmであり、より好ましくは2.5~15mmである。以下、「-196℃以下の温度域」を「極低温域」という。また、冷媒注入管12を構成する壁の厚さとは、冷媒注入管12の長手方向(高さ方向)と直交する平面における冷媒注入管12を構成する壁の厚さをいう。
【0030】
冷媒注入管12の長さは、外容器14及び内容器11の大きさに応じて設定され、例えば100~500mmである。
【0031】
冷媒注入管12の形状が円筒状である場合、冷媒注入管12の直径(内径)は、冷媒16の蒸発を抑制する観点から、例えば50~300mmである。
【0032】
冷媒注入管12の形状が楕円筒状である場合、その長軸の長さは、例えば50~300mmである。
【0033】
冷媒注入管12の形状が角筒状である場合、その対角線の長さは、冷媒注入管12の長手方向(高さ方向)と直交する平面における管体の断面において、例えば100~400mmである。
【0034】
冷媒注入管12は、基材21と基材21に含浸された樹脂とから構成される繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics、以下「FRP」という。)から構成される。
【0035】
ここで、FRPを構成する樹脂の硬化状態は、硬化反応が完全に進んだ状態(以下、「Cステージ状態」ともいう。)である。以下の説明において特に断りがない限り、FRPの硬化状態はCステージ状態である。他の実施の形態においても同じである。
【0036】
冷媒注入管12を構成するFRPの基材21は、ガラス繊維、アルミナ繊維、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される。基材21は、コスト、加工性及び入手容易性の観点、及び常温から極低温域における熱伝導率を小さくする観点から、ガラス繊維が好ましい。
【0037】
基材21を構成する繊維は、冷媒注入管12を介した外部から筒状容器13への熱の伝導を遅くするために、図4に示すように、冷媒注入管12の軸芯CLの延在方向にらせん状に巻かれている。繊維の配向方向と冷媒注入管12の軸芯CLの延在方向とが成す角度θは、50~89°である。角度θは、冷媒注入管12において熱の伝導を遅くする観点、及び剛性を高める観点から、55~70°がより好ましい。
【0038】
基材21に含浸させる樹脂は、例えば、エポキシ樹脂を主剤としたエポキシ系樹脂組成物、フェノール樹脂を主剤としたフェノール系樹脂組成物、熱硬化性ポリイミド樹脂を主剤としたポリイミド系樹脂組成物等から構成される。
【0039】
基材21に含浸させる樹脂量は、筒状容器13への熱の伝導を遅くする観点から、冷媒注入管12を構成するFRPの全重量に対して、好ましくは15~50wt%である。
【0040】
以下、基材に含浸させる樹脂の割合を樹脂量(wt%)と呼ぶ。樹脂量(wt%)は、FRP全重量に対するFRPに含まれる樹脂成分の重量を割合で示したものである。樹脂量(wt%)は、樹脂量(wt%)=(樹脂の重量(wt)×100)/(繊維の重量(wt)+樹脂の重量(wt))で表される。なお、「樹脂の重量」とは、固形分に換算した樹脂の重量を意味する。固形分に換算した樹脂の重量は、例えば溶剤のような揮発性の成分を除いた樹脂の重量をいう。
【0041】
[筒状容器13]
筒状容器13は、内部に冷媒16を貯留する収容部23を有する有底で筒状の容器である。収容部23は、筒状容器13の内部に形成されている。筒状容器13を構成する筒状部132は、円筒状、楕円筒状、角筒状等の形状で構成されていてもよい。
【0042】
筒状容器13を構成する壁の厚さは、断熱性を向上させる観点及び極低温域において剛性を発現させる観点から、好ましくは2~30mmであり、より好ましくは2.5~15mmである。ここで、筒状容器13を構成する壁の厚さとは、筒状部132を構成する壁の厚さをいう。
【0043】
筒状容器13の大きさは、例えば、人体の磁場を測定する装置に使用する場合、装置を長時間稼働させる観点から、50~150リットルの冷媒を貯留できる大きさであることが好ましい。
【0044】
筒状容器13を構成する筒状部132は、基材に樹脂が含浸されたFRPから構成される。FRPを構成する基材は、例えば、繊維、織物、複数の繊維が一方向に引き揃えられた一方向繊維シート等から構成される。基材は、筒状容器13の断熱性を高めるため、繊維又は一方向繊維シートを含むことが好ましい。また、基材は、筒状部132の剛性を高めるため、織物と一方向繊維シートとが積層された構成を有していることがより好ましい。
【0045】
i)基材が繊維から構成される場合、繊維の種類は、ガラス繊維、アルミナ繊維、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される。繊維の種類は、極低温域において熱伝導率を低くする観点から、好ましくはアルミナ繊維である。基材は、複数種の繊維、例えば、アルミナ繊維とガラス繊維から構成されてもよい。繊維は、筒状部132の軸芯の延在方向に対して、らせん状に巻かれている。繊維を巻く角度は、筒状部132の軸芯の延在方向に対して、50~89°である。
【0046】
ii)基材が織物から構成される場合、織物は、ガラス繊維、アルミナ繊維、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される繊維が織成されてなる。織物の織り方として、例えば、朱子織り、平織り、綾織りが挙げられる。織物は、筒を形成するように積層されている。織物は、例えば、筒状部132の軸芯の延在方向に対して、経糸が+45°、緯糸が-45°となるように積層されている。また、織物は、筒状部132の軸芯の延在方向に対して、経糸が0°、緯糸が90°となるように積層されていてもよい。また、疑似等方の剛性を発現させる観点から、例えば、一の織物が筒状部132の軸芯の延在方向に対して、経糸が+45°、緯糸が-45°となるように配置され、その上に、他の織物が、経糸が0°、緯糸が90°となるように積層され、この繰り返しで積層されてもよい。なお、筒状部132の軸芯の延在方向に対して経糸及び緯糸が成す角度は、厳密なものではなく、筒状部132の剛性を損なわない程度の角度の誤差を許容する。この角度の許容範囲は、例えば、所定の角度に対して±10°、望ましくは±5°である。
【0047】
iii)基材が一方向繊維シートから構成される場合、一方向繊維シートは、ガラス繊維、アルミナ繊維、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される。図5は、一方向繊維シートの正面図である。図示するように、一方向繊維シートは、複数の扁平糸66が一方向に引き揃えられて構成される。一方向繊維シートは、例えば、引き揃えられた複数の扁平糸66が崩れないように止め糸65により保持されている。一方向繊維シートは、例えば、図6に示すように扁平糸66の繊維と筒状部132の軸芯CLの延在方向とが成す角度φが50~89°となるように、らせん状に巻かれ、筒を形成している。
【0048】
筒状容器13を構成する基材に含浸させる樹脂は、例えば、エポキシ樹脂を主剤としたエポキシ系樹脂組成物、フェノール樹脂を主剤としたフェノール系樹脂組成物、熱硬化性ポリイミド樹脂を主剤としたポリイミド系樹脂組成物等から構成される。樹脂は、常温から極低温域において筒状容器13の剛性及び靭性を発現させる観点、及び良好な加工性を確保する観点から、好ましくは、エポキシ系樹脂組成物である。樹脂は、2種以上の樹脂組成物から構成されていてもよい。
【0049】
筒状容器13の樹脂量は、冷媒16を貯留した際の筒状容器13の剛性を維持する観点から、筒状容器13を構成するFRPの全重量に対して、好ましくは15~50wt%である。
【0050】
筒状容器13の上面部131及び底面部133は、基材に樹脂が含浸されたFRPから構成される。基材は、例えば織物である。織物は複数枚積層されている。樹脂は、常温及び極低温域において、筒状部132及び冷媒注入管12の伸縮挙動と上面部131及び底面部133の伸縮挙動を同じにする観点から、筒状部132及び冷媒注入管12を構成する樹脂と同じ樹脂であることが好ましい。上面部131の樹脂量は、上面部131を構成するFRPの全重量に対して、好ましくは15~50wt%である。底面部133の樹脂量は、底面部133を構成するFRPの全重量に対して、好ましくは15~50wt%である。上面部131及び底面部133の厚さは、例えば、筒状部132の厚さと同じである。
【0051】
冷媒16としては、例えば、液体酸素、液体窒素、液体ヘリウム等が挙げられる。脊髄の磁場を測定する用途においては、好ましくは、液体ヘリウムである。
【0052】
[第二の筒状容器22]
第二の筒状容器22は、その側壁を構成する筒状部122と、筒状部122の一方の端部を塞ぐ底面部123と、を備える。第二の筒状容器22は、筒状容器13の筒状部132に固定されている。収容部24は、第二の筒状容器22の内部に形成されている。収容部24は、筒状容器13の収容部23に連通している。
【0053】
第二の筒状容器22は、第二の筒状容器22の長手方向が筒状部132の長手方向と直交するように筒状部132に気密に固定されている。
【0054】
第二の筒状容器22は、例えば、円筒状、楕円筒状、角筒状等の形状で構成される。角筒状には第二の筒状容器22の長手方向に対して直交する平面における断面が正方形、台形又は長方形の柱状を含む。
【0055】
第二の筒状容器22の筒状部122を構成する壁の厚さは、筒状容器13を構成する壁の厚さと同じにしてもよい。脊髄の磁場を測定する装置に断熱容器10を使用する場合、リフトオフを短くする観点及び断熱性を向上させる観点から、第二の筒状容器22を構成する壁の厚さは、好ましくは2~15mmであり、より好ましくは2.5~10mmである。ここで、リフトオフとは、超伝導量子干渉計の測定面から脊髄の測定部位までの距離をいう。
【0056】
第二の筒状容器22の大きさは、例えば、脊髄の磁場を測定する装置に断熱容器10を使用する場合、第二の筒状容器22だけで10~30リットルの冷媒16を貯留できる大きさであることが好ましい。
【0057】
筒状部122は、測定対象物及び測定装置の間に位置し、これらに対向する所定領域を備える。そこで、まず、筒状部122の所定領域以外の領域の構造(基本構造)を説明する。
【0058】
筒状部122は、筒状の形状を有し、基材と基材に含浸された樹脂とから構成されたFRPから構成される。この基材は、i)織物、ii)一方向繊維シート、又はiii)織物及び一方向繊維シートから構成される。筒状部122の変形を抑制する観点から、基材は、ii)一方向繊維シート、又は、iii)織物及び一方向繊維シートから構成されることが望ましい。
【0059】
i)基材が織物から構成される場合、織物は、ガラス繊維、アルミナ繊維、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維が織成されてなる。繊維は、筒状部122の剛性を保持する観点、及び良好な加工性を確保する観点から、好ましくはガラス繊維又はアルミナ繊維である。基材は、2種以上の繊維から構成されていてもよい。織物の織り方として、例えば、朱子織り、平織り、綾織りが挙げられる。織物の織り方は、賦形性の観点から、好ましくは朱子織りである。
【0060】
織物は、例えば、筒状部122の軸芯の延在方向に対して、経糸が0°、緯糸が90°となるように積層されている。織物は、経糸が+45°、緯糸が-45°となるように積層されていてもよい。また、織物は、疑似等方の剛性を発現させる観点から、筒状部122の軸芯の延在方向に対して、一の織物が経糸が0°、緯糸が90°となるように配置され、その織物の上に、他の織物が経糸が+45°、緯糸が-45°となるように積層されていてもよい。
【0061】
ii)基材が一方向繊維シートから構成される場合、一方向繊維シートは、ガラス繊維、アルミナ繊維、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種から構成される。この繊維は、筒状部122の剛性を保持する観点、及び良好な加工性を確保する観点から、好ましくはガラス繊維又はアルミナ繊維である。基材は、2種以上の繊維から構成されていてもよい。一方向繊維シートは、筒状部122の変形を抑制する観点から、筒状部122の軸芯の延在方向に対して、一方向繊維シートの繊維が直交(90°)するように積層されていることが好ましい。
【0062】
iii)基材が織物及び一方向繊維シートから構成される場合、基材は、筒状部122の変形を抑制する観点から、一方向繊維シートの少なくとも一面に織物が積層された構成、織物の両面に一方向繊維シートが積層された構成、又は、織物と一方向繊維シートとが交互に積層された構成を有する。織物及び一方向繊維シートは、剛性を高める観点から、筒状部122の壁の断面を見たとき、厚さ方向において中心にくる織物又は一方向繊維シートを基準として線対称となる構成であることが好ましい。例えば、織物及び一方向繊維シートは、一方向繊維シートを中心として、一方向繊維シートの両面に織物が積層されている構成を有することが好ましい。このときの一方向繊維シートは、筒状部122の変形を抑制する観点から、筒状部122の軸芯の延在方向に対して、一方向繊維シートの繊維が直交(90°)するように積層されていることが好ましい。なお、直交は、厳密な意味ではなく、筒状部122の剛性を損なわない程度の誤差を許容する。この角度の許容範囲は、例えば、90°±15°である。
【0063】
次に、筒状部122の所定領域の構造を図8を例に説明する。図8は、図2に示した断熱容器10のB-B線矢視断面図である。「所定領域」は、断熱容器10の使用段階において、測定対象物101と測定装置102の間に位置し、リフトオフを小さくするために、壁を薄く形成したい領域を意味する。筒状部122の所定領域は、図8の符号111で示す領域であり、上壁の一部領域でも、上壁の全体領域でもよい。なお、外容器14の「所定領域」については後述する。
【0064】
所定領域111はFRPから構成される。FRPの基材は、i)織物か、ii)織物及び一方向繊維シートである。
【0065】
i)基材が織物から構成される場合の所定領域111の基材の構成は、上記所定領域111以外の基材が織物である場合の構造と実質同一である。すなわち、織物は、ガラス繊維、アルミナ繊維、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維が織成されてなる。繊維は、筒状部122の剛性を保持する観点、及び良好な加工性を確保する観点から、好ましくはガラス繊維又はアルミナ繊維である。基材は、2種以上の繊維から構成されていてもよい。織物の織り方として、例えば、朱子織り、平織り、綾織りが挙げられる。織物の織り方は、賦形性の観点から、好ましくは朱子織りである。
【0066】
一方、ii)所定領域111の基材が織物及び一方向繊維シートから構成される場合、上記所定領域111以外の基材が織物及び一方向繊維シートである場合の構造と実質同一である。すなわち、基材は、筒状部122の変形を抑制する観点から、一方向繊維シートの少なくとも一面に織物が積層された構成、織物の両面に一方向繊維シートが積層された構成、又は、織物と一方向繊維シートとが交互に積層された構成を有する。
【0067】
所定領域111の基材が一方向繊維シートを含む場合、基材は、剛性を高める観点から、筒状部122の壁の断面を見たとき、厚さ方向において中心にくる織物又は一方向繊維シートを基準として線対称となる構成であることが好ましい。例えば、織物及び一方向繊維シートは、一方向繊維シートを中心として、一方向繊維シートの両面に織物が積層されている構成を有することが好ましい。このときの一方向繊維シートは、筒状部122の変形を抑制する観点から、筒状部122の軸芯の延在方向に対して、一方向繊維シートの繊維が直交(90°)するように積層されていることが好ましい。なお、直交は、厳密な意味ではなく、筒状部122の剛性を損なわない程度の誤差を許容する。この角度の許容範囲は、例えば、90°±15°である。
【0068】
所定領域111の基材に一方向繊維シートを含む場合、一方向繊維シートが応力に対して高い剛性を発現するので、FRPは高い剛性を有する。従って、基材が織物から構成される場合と比較して、高い剛性を確保しつつ、壁を相対的に薄く形成することができる。これにより、例えば、断熱容器10の使用段階で、測定装置102を測定対象物101に近づけることができる。所定領域111は、剛性を保持する観点から、筒状部122の上壁の全体領域であることが好ましい。
【0069】
筒状部122の形状が円筒状である場合、筒状部122の所定領域111は、円筒の半分を構成する半円筒の周面(曲面)の一部領域、又は半円筒の周面(曲面)の全体領域である。
【0070】
筒状部122の所定領域111及び所定領域111以外の樹脂量は、剛性を維持する観点から、筒状部122を構成するFRPの全重量に対して、15~50wt%である。
【0071】
筒状部122を構成する基材に含浸させる樹脂は、例えば、エポキシ樹脂を主剤としたエポキシ系樹脂組成物、フェノール樹脂を主剤としたフェノール系樹脂組成物、又は熱硬化性ポリイミド樹脂を主剤としたポリイミド系樹脂組成物等から構成される。樹脂は、常温及び極低温域において剛性及び靭性を有する観点、及び良好な加工性を確保する観点から、好ましくは、エポキシ系樹脂組成物である。樹脂は、2種以上の樹脂組成物から構成されていてもよい。
【0072】
底面部123は基材と基材に含浸された樹脂とから構成されるFRPから構成される。基材は、複数枚積層された織物から構成されている。樹脂は、常温から極低温域において、筒状部122の伸縮挙動と底面部123の伸縮挙動を同じにさせる観点から、筒状部122を構成する樹脂と同じ樹脂であることが好ましい。底面部123の樹脂量は、冷媒を貯留した際の筒状容器13の剛性を維持する観点から、筒状部122の樹脂量と同じ、底面部123のFRPの全重量に対して、15~50wt%であることが好ましい。
【0073】
筒状容器13の収容部23と第二の筒状容器22の収容部24は、例えば、管等の部材を介して連通して固定されてもよい。この場合、収容部23と収容部24とを連通するための部材は、筒状容器13及び第二の筒状容器22を構成する材料と同じ材料で構成されていることが好ましい。
【0074】
筒状容器13と第二の筒状容器22との接合方法として、例えば、筒状容器13の接合面と第二の筒状容器22の接合面に接着剤を塗布して気密に接合する方法、筒状容器13の接合面及び第二の筒状容器22の接合面にねじを形成し、接着剤を塗布した後に螺合して気密に接合する方法等が挙げられる。接合方法は、空隙15を真空状態に保つことができる気密な接合であることが好ましい。
【0075】
使用する接着剤は、良好な接着性を発現させる観点から、冷媒注入管12及び筒状容器13を構成する樹脂と同じ樹脂であることが好ましい。樹脂として、例えば、エポキシ樹脂を主剤としたエポキシ系樹脂組成物、フェノール樹脂を主剤としたフェノール系樹脂組成物、又は熱硬化性ポリイミド樹脂を主剤としたポリイミド系樹脂組成物等が挙げられる。樹脂は、常温から極低温域において剛性及び靭性を有する観点、及び良好な接着性を確保する観点から、好ましくは、エポキシ系樹脂組成物である。樹脂は、2種以上の樹脂組成物から構成されていてもよい。
【0076】
[外容器14]
外容器14は、図3に示すように、内容器11を空隙15を介して包囲するように構成されている。外容器14の上面部は、冷媒注入管12を介して筒状容器13を支持している。断熱容器10において、冷媒注入管12の端面と外容器14の上面部の面は同じ平面上に存在する。
【0077】
ここで、「包囲」とは、外容器14が空隙15を介して内容器11を包み込むように取り囲んでいる状態をいう。外容器14の「内部」とは、外容器14において空隙15に接する領域をいう。外容器14の上面となる部分を「上面部」という。
【0078】
空隙15は、断熱効果を上げる観点から、真空状態であることが好ましい。外容器14は、空隙15が真空状態になっても、外容器14の形状を保持できる程度の剛性を有する。
【0079】
外容器14の形状及び大きさは、内容器11を包囲できるものであれば、限定されるものではない。外容器14は、空隙15を真空状態にしたときの容器の変形を防ぐ観点から、応力を分散できる丸みを帯びた形状で構成されていることが好ましい。特に、外容器14の角部は、曲率半径が大きい形状で形成されていることが好ましい。これにより真空に伴う容器への収縮応力が容器の特定部分に集中することを防ぐことができる。
【0080】
外容器14についても、図8に示す測定対象物101と測定装置102の間に位置する所定領域112とそれ以外の領域に分けて説明する。まず、所定領域112以外の領域の構成について説明する。
【0081】
外容器14を構成する壁の厚さは、空隙15を真空状態にしたときに容器の変形を防ぐ観点から、筒状容器13及び第二の筒状容器22の厚さ以上であることが好ましい。
【0082】
外容器14の所定領域112以外の部分は、基材と基材に含浸された樹脂とから構成されるFRPから構成される。外容器14の所定領域112を構成する基材は、i)織物、又は、ii)織物及び一方向繊維シートから構成されていてもよい。
【0083】
基材が織物から構成される場合、織物は、ガラス繊維、アルミナ繊維、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維が織成されてなる。織物を構成する繊維は、剛性を保持する観点、及び良好な加工性を確保する観点から、好ましくはガラス繊維及びアルミナ繊維である。基材は、2種以上の繊維から構成されていてもよい。織物の織り方として、例えば、朱子織り、平織り、綾織りが挙げられる。織物の織り方は、賦形性の観点から、好ましくは朱子織りである。
【0084】
織物は、例えば、第二の筒状容器22の軸芯の延在方向に対して、織物の経糸が0°、緯糸が90°となるように積層されていてもよいし、経糸が+45°、緯糸が-45°となるように積層されていてもよい。また、織物は、疑似等方に剛性を発現させる観点から、第二の筒状容器22の軸芯の延在方向に対して、経糸が0°、緯糸が90°となるように一の織物が配置されており、その織物の上に経糸が+45°、緯糸が-45°となるように他の織物が積層されていてもよい。ここで、第二の筒状容器22の軸芯の延在方向に対して経糸及び緯糸が成す角度の許容範囲は、±10°、望ましくは±5°である。
【0085】
外容器14の所定領域112以外の領域を構成する樹脂は、例えば、エポキシ樹脂を主剤としたエポキシ系樹脂組成物、フェノール樹脂を主剤としたフェノール系樹脂組成物、又は熱硬化性ポリイミド樹脂を主剤としたポリイミド系樹脂組成物等から構成される。樹脂は、常温から極低温域において剛性及び靭性を有する観点、及び良好な加工性を確保する観点から、好ましくはエポキシ系樹脂組成物である。樹脂は、2種以上の樹脂組成物から構成されていてもよい。
【0086】
次に、外容器14の所定領域112の構造を図8の円2を参照して説明する。外容器14の所定領域112も、FRPから構成される。外容器14の所定領域112を構成する基材は、i)織物、又は、ii)織物及び一方向繊維シートから構成される。
【0087】
i)基材が織物から構成される場合、その構成は外容器14の他の部分の基材の構成と同一である。すなわち、織物は、ガラス繊維、アルミナ繊維、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維が織成されてなる。織物を構成する繊維は、剛性を保持する観点、及び良好な加工性を確保する観点から、好ましくはガラス繊維及びアルミナ繊維である。基材は、2種以上の繊維から構成されていてもよい。織物の織り方として、例えば、朱子織り、平織り、綾織りが挙げられる。織物の織り方は、賦形性の観点から、好ましくは朱子織りである。
【0088】
ii)次に、基材が織物及び一方向繊維シートから構成される場合、織物は、外容器14の他の部分の基材を構成する織物と実質同一である。一方向繊維シートは、ガラス繊維、アルミナ繊維、及び炭素繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種の繊維から構成される。この繊維は、剛性を保持する観点、及び良好な加工性を確保する観点から、好ましくはガラス繊維又はアルミナ繊維である。この繊維は、2種以上の繊維から構成されていてもよい。
【0089】
一方向繊維シートは、剛性を高める観点、及び外容器14の変形を抑える観点から、第二の筒状容器22(筒状部122)の軸芯の延在方向に対して、一方向繊維シートを構成する繊維が平行(0°)になるように積層されていることが好ましい。ここで、平行(0°)は、外容器14の剛性を低下させない程度の誤差を許容する。角度の許容範囲は、±10°、望ましくは、±5°である。
【0090】
外容器14の所定領域112には、測定対象物101の荷重がかかり、他の部分よりも剛性が要求される。このため、図8の円2に拡大して示すように、外容器14は、所定領域112を構成するFRP内に、剪断力に強く、断熱性に寄与するハニカムシート70を更に含む。ハニカムシート70は、例えば、アラミドハニカムシート、ペーパーハニカムシート、不燃ハニカムシートから構成される。ハニカムシート70は、剛性を確保する観点から、好ましくは、アラミドハニカムシートである。ハニカムシート70を構成する多角形状、例えば、六角形状のセルのサイズは、セルを構成する一辺の長さが3~10mmであり、断熱性を維持する観点、及びハニカム形状を保持する観点から、好ましくは3~5mmである。ハニカムシートの厚さ(高さ)は、1~7mmであり、断熱性を維持する観点、及び外容器14の壁を薄くする観点から、好ましくは1~3mmである。セル内は空隙となっており、断熱性が高められている。セルの空隙は真空でも空気が入っていてもよい。
【0091】
所定領域112の基材が織物から構成される場合、織物は、ハニカムシート70の両面に積層される。一方、所定領域112の基材が織物及び一方向繊維シートから構成される場合、ハニカムシート70の一面又は他面の少なくとも一方の面に一方向繊維シートが積層されることが望ましい。例えば、外容器14の所定領域112のFRPは、i)ハニカムシート70の両面に織物が積層されており、少なくとも1つの織物の上に一方向繊維シートが積層されている構成、ii)ハニカムシート70の両面に一方向繊維シートが積層され、これらの一方向繊維シートの上に織物が積層されている構成、iii)ハニカムシート70の一面に一方向繊維シートが積層され、その一方向繊維シートの上に織物が積層され、ハニカムシート70の他面に織物が積層されている構成、を有する。
【0092】
外容器14の所定領域112を構成する基材に織物及び一方向繊維シートを含む場合、所定領域112は、基材が織物の場合よりも、高い剛性を有する。このため、外容器14の所定領域112を構成する壁を薄くすることができる。また、織物及び一方向繊維シートからなる構成は織物のみからなる構成に比べて、壁を薄くしても外容器14の所定領域の変形が生じ難い。
【0093】
外容器14の所定領域112は、断熱性及び剛性を高める観点から、第二の筒状容器22の所定領域111より大きい(広い)方が好ましい。
【0094】
外容器14の所定領域112を構成する樹脂は、所定領域112以外の領域を構成する樹脂と同一でよい。すなわち、樹脂は、例えば、エポキシ樹脂を主剤としたエポキシ系樹脂組成物、フェノール樹脂を主剤としたフェノール系樹脂組成物、又は熱硬化性ポリイミド樹脂を主剤としたポリイミド系樹脂組成物等から構成される。樹脂は、常温から極低温域において剛性及び靭性を有する観点、及び良好な加工性を確保する観点から、好ましくはエポキシ系樹脂組成物である。樹脂は、2種以上の樹脂組成物から構成されていてもよい。
【0095】
なお、外容器14の所定領域112以外の部分のFRPの基材を、織物及び一方向繊維シートから構成してもよい。この場合、織物及び一方向繊維シートは、外容器14の変形を抑制する観点から、一方向繊維シートの少なくとも一面に織物が積層された構成、織物の両面に一方向繊維シートが積層された構成、又は、織物と一方向繊維シートとが交互に積層された構成を有する。
【0096】
外容器14の所定領域112の樹脂量は、冷媒16を貯留した際の外容器14の剛性を維持する観点から、外容器14を構成するFRPの全重量に対して、好ましくは15~50wt%である。
【0097】
なお、空隙15に、荷重を支え、筒状容器13及び第二の筒状容器22を定位置に固定する支持体(図示しない)が配置されてもよい。
【0098】
外容器14と冷媒注入管12は、気密に接合されている。外容器14と冷媒注入管12との接合方法として、例えば、外容器14の接合面と冷媒注入管12の接合面に接着剤を塗布して気密に接合する方法、外容器14の接合面及び冷媒注入管12の接合面にねじを形成し、接着剤を塗布した後に螺合して気密に接合する方法等が挙げられる。
【0099】
上述の実施の形態では、単層の壁で構成される筒状部132について説明したが、筒状部132の壁は多層の壁で構成されていてもよい。また、同じような筒の形状を有する冷媒注入管12等も多層の壁で構成されていてもよい。例えば、図7の円1に示すように、筒状部132は、外層132Oと内層132Iとから構成されてもよい。外層132Oは空隙15(外)に近い層を構成し、内層132Iは冷媒16(内)に近い層を構成する。
【0100】
外層132O及び内層132Iは、それぞれ、FRPから構成される。FRPを構成する基材は、繊維、又は一方向繊維シートである。基材の材質は、ガラス又はアルミナである。
【0101】
筒状部132の剛性を確保する観点、筒状部132の熱伝導率を低くする観点、及び、コストを抑える観点から、外層132Oを構成する基材は、繊維、又は一方向繊維シートであることが好ましい。基材の材質はガラスであることが好ましい。内層132Iを構成する基材は、繊維又は一方向繊維シートであることが好ましい。基材の材質はアルミナであることが好ましい。
【0102】
外層132O及び内層132Iを構成する基材は、それぞれ、筒状部132の軸芯の延在方向に対して、らせん状に巻かれている。筒状部132の軸芯の延在方向に対する、繊維又は一方向繊維シートを構成する繊維の傾きは、外層132Oと内層132Iとで異なっていても、同じであってもよい。筒状部132の剛性を高くする観点、及び作業性(金型からの脱型性)を良くする観点から、内層132Iを構成する繊維又は一方向繊維シートを構成する繊維の傾きは、外層132Oを構成する繊維又は一方向繊維シートを構成する繊維の傾きよりも大きいことが好ましい。外層132Oと内層132Iの厚さは、同じか、内層132Iが外層132Oよりも厚いことが好ましい。内層132Iの厚さと外層132Oの厚さの比率は、50:50~80:20であり、好ましくは50:50~70:30であり、より好ましくは50:50~60:40である。
【0103】
外層132O及び内層132Iを構成する基材に含浸される樹脂は、層間剥離防止の観点から、同じ樹脂を使用することが好ましい。
【0104】
筒状部132のFRPの構成が2層構成である場合、上面部131及び底面部133のFRPの構成も2層構成にすることが好ましい。冷媒注入管12を介した外部からの内容器11全体への熱の伝導を遅くする観点から、上面部131及び底面部133の外層を構成する繊維の材質は、例えばガラスであり、内層を構成する繊維の材質は、例えばアルミナである。上面部131及び底面部133を構成する樹脂は、筒状部132を構成する樹脂と同じ樹脂であることが好ましい。
【0105】
以下、冷媒注入管12、筒状容器13、第二の筒状容器22、及び外容器14の製造方法について説明する。
【0106】
[冷媒注入管12の製造方法]
冷媒注入管12の製造方法は、液状の樹脂を含浸させた繊維、すなわち、基材を棒状の金型にらせん状に巻き付けて冷媒注入管12の形状を成形する成形工程と、加熱して樹脂を硬化させる硬化工程と、硬化させた冷媒注入管12を金型から外す脱型工程と、を含む。
【0107】
成形工程における成形方法は、例えば、フィラメントワインディング法による成形方法を採用することができる。金型に繊維を巻き付ける角度は、金型の軸芯の延在方向に対して、50~89°である。
【0108】
硬化工程において、樹脂を硬化させるための温度及び時間は、樹脂の種類及び樹脂量等により適宜設定することができる。例えば、樹脂としてエポキシ系樹脂組成物を使用し、樹脂量を20~50wt%とする場合、加熱温度は80~150℃、硬化時間は1~12時間である。
【0109】
脱型工程において、室温まで冷却して、金型から冷媒注入管12を外し、冷媒注入管12を得る。
【0110】
[筒状容器13の製造方法]
筒状容器13の製造方法の一例について説明する。筒状容器13を構成する筒状部132は、繊維、織物、一方向繊維シート等から構成される基材に樹脂を含浸させたプリプレグを、繊維の向きを考慮しつつ、棒状の金型に巻き付け、硬化させ、所定の形状にカットすることで得られる。筒状容器13を構成する上面部131及び底面部133は、プリプレグを積層し、硬化させ、所定の形状にカットすることで得られる。ここで、プリプレグは、樹脂の硬化反応が途中まで進んでいるものの、完全に進んでいないBステージ状態にある複合材料をいう。
【0111】
続いて、形成した上面部131と筒状部132とを、気密に接合する。接合方法としては、例えば、上面部131の接合面と筒状部132とを接着剤等により接合する方法、上面部131の接合面及び筒状部132の接合面にねじを形成し、螺合する方法が挙げられる。ねじに常温で硬化する接着剤等を塗布してから螺合してもよい。これにより、接合面は気密に封止される。底面部133と筒状部132も、上面部131と筒状部132との接合方法と同じ方法により接合することができる。このようにして、筒状容器13が完成する。
【0112】
筒状容器13の製造方法の他の例について説明する。この製造方法は、基材に樹脂を含浸させた後に加熱してプリプレグを作製するプリプレグ作製工程と、筒状容器13を形取った金型の表面にプリプレグを貼って成形する成形工程と、加熱及び加圧によりプリプレグを硬化させる硬化工程と、硬化させたプリプレグを金型から外す脱型工程と、を含む。
【0113】
プリプレグ作製工程において、基材に樹脂を含浸させる時間、及び含浸させた後の織物を加熱する温度は、樹脂の種類及び織物に付着した樹脂の付着量(樹脂量)等により適宜設定される。例えば、樹脂がエポキシ系樹脂組成物であり、樹脂量が20~50wt%である場合、時間は1~12時間、温度は80~150℃である。
【0114】
成形工程において、プリプレグは筒状容器13の形状に合わせてカットされる。そのプリプレグは金型に貼られ成形される。プリプレグは、金型が複雑な形状である場合、小さくカットされ、金型に貼られ成形される。これにより、金型の形状にプリプレグを追従させることができる。
【0115】
硬化工程において、プリプレグは加熱及び加圧により硬化する。硬化させる方法は、例えば高圧釜を用いたオートクレーブ成形方法が挙げられる。これにより、プリプレグを均一に硬化させることができる。
【0116】
脱型工程において、プリプレグは、室温まで冷却して金型から外される。そして筒状容器13が得られる。
【0117】
また、例えば、筒状部132が2層の壁から構成されるFRPである場合、筒状部132は、例えば、フィラメントワインディング法により作製することができる。
【0118】
内層を構成する基材がアルミナ繊維であり、外層を構成する基材がガラス繊維である場合、次のように筒状部132を作製する。樹脂を含浸させたアルミナ繊維を棒状の金型に、らせん状に巻き付ける。次に、その巻き付けたアルミナ繊維の上に、樹脂を含浸させたガラス繊維をらせん状に巻き付けて、2層の壁から構成される筒状部132を成形する。その後、加熱して筒状部132を構成する樹脂を硬化させる。室温まで冷却した後、筒状部132を金型から外し、2層の壁から構成される筒状部132を得る。
【0119】
上面部131及び底面部133も、2層の壁となるように作製する。上面部131の製造方法は、アルミナ繊維が織成されてなる織物を基材としたプリプレグ、及びガラス繊維が織成されてなる織物を基材としたプリプレグをそれぞれ作製するプリプレグ作製工程と、壁が2層となるように2種のプリプレグを積層する積層工程と、積層されたプリプレグを硬化させる硬化工程と、を含む。底面部133は、上面部131の製造方法と同じ製造方法により作製される。
【0120】
2層の壁から構成される上面部131と筒状部132との接合方法、及び2層の壁から構成される底面部133と筒状部132との接合方法は、上面部131と筒状部132との接合方法と同じ方法を採用することができる。
【0121】
[第二の筒状容器22の製造方法]
第二の筒状容器22は、第二の筒状容器22を構成する筒状部122と底面部123を別々に作製する。
【0122】
まず、基材が織物から構成される筒状部122の製造方法について説明する。筒状部122の製造方法は、織物を基材としたクロスプリプレグを作製するクロスプリプレグ作製工程と、筒状部122を形取った金型の表面に、経糸又は緯糸の延在方向が金型の軸芯の延在方向に対して直交するようにクロスプリプレグを貼って成形するクロスプリプレグ成形工程と、積層されたクロスプリプレグを硬化させる硬化工程と、金型から硬化させたクロスプリプレグを外す脱型工程と、を含む。
【0123】
クロスプリプレグ作製工程において、織物に樹脂を含浸させる。その後、その織物を加熱する。加熱時間及び加熱温度は、樹脂の種類及び織物に付着した樹脂の量(樹脂量)等により適宜設定される。例えば、樹脂がエポキシ系樹脂組成物であり、樹脂量が20~50wt%である場合、加熱時間は1~12時間、加熱温度は80~150℃である。
【0124】
クロスプリプレグ成形工程において、クロスプリプレグは金型の大きさに合わせてカットされる。そのクロスプリプレグは金型に貼られ成形される。クロスプリプレグは、例えば、織物を構成する経糸又は緯糸が金型の軸芯の延在方向に対して直交するように貼られ成形される。
【0125】
硬化工程において、クロスプリプレグは加熱及び加圧により硬化する。硬化させる方法は、例えば高圧釜を用いたオートクレーブ成形方法が挙げられる。これにより、クロスプリプレグを均一に硬化させることができる。
【0126】
脱型工程において、クロスプリプレグは、室温まで冷却して金型から外される。そして筒状部122が得られる。
【0127】
次に底面部123を、底面部133の作製方法と同じ作製方法により作製する。作製した底面部123を筒状部122に接合することで、第二の筒状容器22を得る。底面部123と筒状部122との接合方法は、底面部133と筒状部132との接合方法と同じ方法を採用することができる。
【0128】
次に、基材が織物と一方向繊維シートから構成される筒状部122の製造方法について説明する。基材が織物と一方向繊維シートから構成される筒状部122の製造方法は、織物を基材としたクロスプリプレグ及び一方向繊維シートを基材としたUDプリプレグを作製するプリプレグ作製工程と、筒状部122を形取った金型の表面に、織物の経糸又は緯糸の延在方向が金型の軸芯の延在方向に対して直交するようにクロスプリプレグを貼って成形するクロスプリプレグ第一成形工程と、そのクロスプリプレグの上に一方向繊維シートの繊維が金型の軸芯の延在方向に対して直交するようにUDプリプレグを貼って成形するUDプリプレグ成形工程と、そのUDプリプレグの上に、織物の経糸又は緯糸の延在方向が金型の軸芯の延在方向に対して直交するようにクロスプリプレグを貼って成形するクロスプリプレグ第二成形工程と、積層されたプリプレグを硬化させる硬化工程と、金型から硬化させたプリプレグを外す脱型工程と、を含む。
【0129】
プリプレグ作製工程において、織物に樹脂を含浸させ、一方向繊維シートに樹脂を含浸させる。その後、織物及び一方向繊維シートをそれぞれ加熱する。加熱時間及び加熱温度は、樹脂の種類、及び、織物及び一方向繊維シートに付着した樹脂の量(樹脂量)等により適宜設定される。例えば、樹脂がエポキシ系樹脂組成物であり、樹脂量が20~50wt%である場合、加熱時間は1~12時間、加熱温度は80~150℃である。
【0130】
クロスプリプレグ第一成形工程において、クロスプリプレグは金型の大きさに合わせてカットされる。そのクロスプリプレグは金型に貼られ成形される。クロスプリプレグは、織物を構成する経糸又は緯糸が金型の軸芯の延在方向に対して直交するように貼られ成形される。
【0131】
UDプリプレグ成形工程において、UDプリプレグは、一方向繊維シートの繊維が金型の軸芯の延在方向に対して直交するように、クロスプリプレグの上に貼られ成形される。UDプリプレグがクロスプリプレグの上に貼られ成形される領域は、筒状部122において少なくとも所定領域111であればよい。UDプリプレグは、筒状部122の剛性を高める観点、及び筒状部122の変形を抑える観点から、クロスプリプレグの上の全体領域に貼られ成形されることが好ましい。
【0132】
クロスプリプレグ第二成形工程において、クロスプリプレグは金型の大きさに合わせてカットされる。そのクロスプリプレグは、貼られているUDプリプレグの上に貼られ成形される。そのクロスプリプレグは、織物の経糸又は緯糸が金型の軸芯の延在方向に対して直交するように貼られ成形される。
【0133】
硬化工程において、プリプレグは加熱及び加圧により硬化する。硬化させる方法は、例えば高圧釜を用いたオートクレーブ成形方法が挙げられる。これにより、プリプレグを均一に硬化させることができる。
【0134】
脱型工程において、プリプレグは、室温まで冷却して金型から外される。そして筒状部122が得られる。
【0135】
基材が一方向繊維シートから構成される筒状部122の製造方法は、上述した基材が織物と一方向繊維シートから構成される筒状部122の製造方法から、織物にかかる工程を除いた製造方法と同じである。
【0136】
筒状部122の内、所定領域111と他の領域の構成が異なる場合、所定領域111について、所望の構成が得られる製造方法を採用し、他の領域に関しては、可能な範囲で所望の構成が得られる製造方法を組み合わせて実行すればよい。
【0137】
[外容器14の製造方法]
外容器14は、筒状容器13を包囲する第1の部分と第二の筒状容器22を包囲する第2の部分と底面部123を包囲する第3の部分とに分けて作製される。
【0138】
まず、第1の部分の製造方法の一例を説明する。FRPの基材が織物から構成される場合、第1の部分を製造する方法は、織物を基材としたクロスプリプレグを作製するクロスプリプレグ作製工程と、筒状容器13を包囲する外容器14を形取った金型の表面にクロスプリプレグを貼って成形するクロスプリプレグ成形工程と、積層されたクロスプリプレグを加熱及び加圧により硬化させる硬化工程と、金型から硬化させたクロスプリプレグを外す脱型工程と、を含む。
【0139】
クロスプリプレグ作製工程において、基材としての織物に樹脂を含浸させる。その後、織物を加熱する。加熱時間及び加熱温度は、樹脂の種類、及び、織物に付着した樹脂の量(樹脂量)等により適宜設定される。例えば、樹脂がエポキシ系樹脂組成物であり、樹脂量が20~50wt%である場合、加熱時間は1~12時間、加熱温度は80~150℃である。
【0140】
クロスプリプレグ成形工程において、クロスプリプレグは金型の大きさに合わせてカットされる。そのクロスプリプレグは金型に貼られ成形される。
【0141】
硬化工程において、クロスプリプレグは加熱及び加圧により硬化する。硬化させる方法は、例えば高圧釜を用いたオートクレーブ成形方法が挙げられる。これにより、クロスプリプレグを均一に硬化させることができる。
【0142】
脱型工程において、クロスプリプレグは、室温まで冷却して金型から外される。以上で、第1の部分が得られる。
【0143】
次に、外容器14の第2の部分の製造方法の一例を説明する。基材が織物から構成される場合の、第2の部分を製造する方法は、織物を基材としたクロスプリプレグを作製するクロスプリプレグ作製工程と、第二の筒状容器22を包囲する外容器14の第2の部分を形取った金型の表面に、織物の経糸又は緯糸の延在方向が金型の軸芯の延在方向と平行となるようにクロスプリプレグを貼って成形するクロスプリプレグ第一成形工程と、貼って成形したクロスプリプレグの所定領域112の上にハニカムシート70を積層するハニカムシート積層工程と、織物の経糸又は緯糸の延在方向が金型の軸芯の延在方向と平行となるようにハニカムシート70の上、及び、クロスプリプレグ第一成形工程で貼って成形したクロスプリプレグの上に、クロスプリプレグを貼って成形するクロスプリプレグ第二成形工程と、積層されたクロスプリプレグを硬化させる硬化工程と、金型から硬化させたクロスプリプレグを外す脱型工程と、を含む。
【0144】
クロスプリプレグ作製工程において、基材としての織物に樹脂を含浸させる。その後、織物を加熱する。加熱時間及び加熱温度は、樹脂の種類、及び、織物に付着した樹脂の量(樹脂量)等により適宜設定される。例えば、樹脂がエポキシ系樹脂組成物であり、樹脂量が20~50wt%である場合、加熱時間は1~12時間、加熱温度は80~150℃である。
【0145】
クロスプリプレグ第一成形工程において、クロスプリプレグは外容器14の第2の部分の形状に合わせてカットされる。そのクロスプリプレグは金型に貼られ成形される。そのクロスプリプレグは、織物の経糸又は緯糸が金型の軸芯の延在方向に対して平行となるように貼られ成形される。そのクロスプリプレグは、50~100℃の温風をあてながら、貼られ成形されてもよい。
【0146】
ハニカムシート積層工程において、ハニカムシート70は、クロスプリプレグの所定領域112となる予定領域の上に配置される。
【0147】
クロスプリプレグ第二成形工程において、クロスプリプレグは、貼られているハニカムシート70及びクロスプリプレグの上に、さらに金型の形状に沿って貼って成形される。クロスプリプレグは、織物の経糸又は緯糸が金型の軸芯の延在方向に対して平行となるように貼られ成形される。そのクロスプリプレグは、50~100℃の温風をあてながら、貼られ成形されてもよい。
【0148】
硬化工程において、積層されたクロスプリプレグは加熱及び加圧により硬化する。硬化させる方法は、例えば高圧釜を用いたオートクレーブ成形方法が挙げられる。これにより、クロスプリプレグを均一に硬化させることができる。
【0149】
脱型工程において、クロスプリプレグは、室温まで冷却して金型から外される。そして第二の筒状容器22を包囲する外容器14が得られる。
【0150】
次に、基材が織物と一方向繊維シートから構成される場合の、第2の部分を製造する方法の一例を説明する。この製造方法は、織物を基材としたクロスプリプレグと一方向繊維シートを基材としたUDプリプレグを作製するプリプレグ作製工程と、第二の筒状容器22の所定領域111を包囲する外容器14の第2の部分を形取った金型の表面に、織物の経糸又は緯糸の延在方向が金型の軸芯の延在方向と平行となるようにクロスプリプレグを貼って成形するクロスプリプレグ第一成形工程と、そのクロスプリプレグの所定領域112の上にハニカムシートを積層するハニカムシート積層工程と、織物の経糸又は緯糸の延在方向が金型の軸芯の延在方向と平行となるようにハニカムシートの上、及び、クロスプリプレグ第一成形工程で貼って成形したクロスプリプレグの上に、クロスプリプレグを貼って成形するクロスプリプレグ第二成形工程と、そのクロスプリプレグの上に一方向繊維シートの繊維が金型の軸芯の延在方向に平行となるようにUDプリプレグを貼って成形するUDプリプレグ成形工程と、積層されたプリプレグを硬化させる硬化工程と、金型から硬化させたプリプレグを外す脱型工程と、を含む。
【0151】
プリプレグ作製工程において、織物と一方向繊維シートに、それぞれ、樹脂を含浸させ、加熱し、Bステージ状態にしたクロスプリプレグとUDプリプレグを作製する。加熱時間及び加熱温度は、樹脂の種類、及び、織物及び一方向繊維シートに付着した樹脂の量(樹脂量)等により適宜設定される。例えば、樹脂がエポキシ系樹脂組成物であり、樹脂量が20~50wt%である場合、加熱時間は1~12時間、加熱温度は80~150℃である。
【0152】
クロスプリプレグ第一成形工程において、クロスプリプレグは金型の大きさに合わせてカットされる。そのクロスプリプレグは金型に貼られ成形される。クロスプリプレグは、織物の経糸又は緯糸の延在方向が金型の軸芯の延在方向に例えば平行となるように貼られ成形される。そのクロスプリプレグは、50~100℃の温風をあてながら、貼られ成形されてもよい。
【0153】
ハニカムシート積層工程において、ハニカムシート70は、クロスプリプレグの所定領域112となる予定領域の上に配置される。
【0154】
クロスプリプレグ第二成形工程において、クロスプリプレグは金型の大きさに合わせてカットされる。そのクロスプリプレグは、ハニカムシート70及びクロスプリプレグの上に、貼られ成形される。そのクロスプリプレグは、織物の経糸又は緯糸の延在方向が金型の軸芯の延在方向に例えば平行となるように貼られ成形される。そのクロスプリプレグは、50~100℃の温風をあてながら、貼られ成形されてもよい。
【0155】
UDプリプレグ成形工程において、UDプリプレグは、一方向繊維シートの繊維が金型の軸芯の延在方向に例えば平行となるように、クロスプリプレグの上に貼られ成形される。UDプリプレグがクロスプリプレグの上に貼られ成形される領域は、少なくとも、外容器14の所定領域112となる領域を含む。UDプリプレグは、外容器14の剛性を高める観点、及び外容器14の変形を抑える観点から、外容器14の全体領域に貼られ成形されることが好ましい。
【0156】
硬化工程において、積層されたプリプレグは加熱及び加圧により硬化する。硬化させる方法は、例えば高圧釜を用いたオートクレーブ成形方法が挙げられる。これにより、プリプレグを均一に硬化させることができる。
【0157】
脱型工程において、プリプレグは、室温まで冷却して金型から外される。これにより、外容器14の第2の部分を得ることができる。
【0158】
外容器14の第3の部分は、底面部123の作製方法と同じ作製方法により作製することができる。続いて、外容器14の第1の部分と第3の部分とを気密に接合する。接合方法は、底面部123と筒状部122との接合方法と同じ方法を採用することができる。
【0159】
こうして形成された各部を接合して、断熱容器10を完成する。具体的には、第二の筒状容器22を筒状容器13の筒状部132に気密に接合する。次に、冷媒注入管12を筒状容器13に気密に接合する。さらに、内容器11を包囲するように外容器14の第1の部分と第2の部分と第3の部分をそれぞれ配置して気密に接合する。
【0160】
次に、予め形成されている又は新たに形成された空気穴を介して、真空ポンプなどを用いて、空隙15内の空気を排気し、空隙15内の圧力が基準値以下となった段階で、樹脂等を用いて、空気穴を気密に塞ぐ。以上で、断熱容器10が完成する。各部の接合には、底面部123と筒状部122との接合方法と同じ方法を採用することができる。
【0161】
以上、実施の形態1で説明した断熱容器10は、例えば医療分野で使用される断熱容器として用いることができる。以下、断熱容器10を用いた応用例について説明する。
【0162】
[応用例1]
断熱容器10を用いた応用例として、脊磁計60が挙げられる。
【0163】
図9に示すように、脊磁計60は、生体18から発生する磁場を検出する超伝導量子干渉計17と、断熱容器10と、を備える。断熱容器10は、内容器11と、内容器11を空隙15を介して包囲する外容器14と、を備える。内容器11は、内部に冷媒16を貯留する収容部23を有する筒状容器13と、筒状容器13に取り付けられる冷媒注入管12と、内部に冷媒16を貯留する収容部24を有する第二の筒状容器22と、を備える。超伝導量子干渉計17は、第二の筒状容器22に貯留された冷媒16中に浸漬された状態で第二の筒状容器22に収容されている。生体18は、図9に示すように生体18の脊髄部分と超伝導量子干渉計17の測定面19の上に位置するように横になっている。
【0164】
図9の円3に拡大して示すように、外容器14の所定領域は、ハニカムシート71の一面に織物63が積層され、他面に織物64が積層された構成を有する。超伝導量子干渉計17は、冷媒16に浸漬された状態で第二の筒状容器22に収容されている。また、測定面19は、ハニカムシート71と対向している。
【0165】
外容器14の所定領域112を構成する基材は、織物63と一方向繊維シートを含んでもよい。一方向繊維シートは、ハニカムシート71と織物63との間に積層されている。一方向繊維シートは、織物63の上に積層されていてもよい。一方向繊維シートは、ハニカムシート71と織物64との間に積層されていてもよい。一方向繊維シートは、織物64の下に積層されていてもよい。また、この一方向繊維シートは、外容器14の剛性を確保する観点、及び、外圧及び外部応力に対する外容器14の変形を抑える観点から、第二の筒状容器22の軸芯の延在方向に対して、繊維が平行となるように積層されていることが好ましい。
【0166】
第二の筒状容器22の所定領域111を構成する基材は、織物と一方向繊維シートを含んでもよい。この一方向繊維シートは、第二の筒状容器22の所定領域111の剛性を確保する観点、及び、内圧に対する第二の筒状容器22の変形を抑える観点から、第二の筒状容器22の軸芯の延在方向に対して、繊維が直交していることが好ましい。
【0167】
また、外容器14の所定領域112を構成する基材に一方向繊維シートを含む場合、超伝導量子干渉計17の測定面19は、外容器14の所定領域112を構成する一方向繊維シートの面と対向している。第二の筒状容器22の所定領域111を構成する基材に一方向繊維シートを含む場合、超伝導量子干渉計17の測定面19は、第二の筒状容器22の所定領域111を構成する一方向繊維シートの面と対向している。
【0168】
[効果]
断熱容器10及びそれを用いた脊磁計60は、以下の効果を奏する。
【0169】
断熱容器10において、外容器14の所定領域112を構成する基材は織物63及び織物64を含み、外容器14の所定領域112にハニカムシート71を含む。ハニカムシート71の一面には織物63が積層され、他面には織物64が積層されている。これにより、断熱容器10の断熱性が向上する。
【0170】
外容器14の所定領域112を構成する基材に一方向繊維シートを更に含むことで、外容器14の剛性を確保することができる。外容器14は、外容器14の所定領域112を構成する一方向繊維シートと第二の筒状容器22の所定領域111を構成する一方向繊維シートとが対向する状態で、第二の筒状容器22を包囲している。これにより、断熱容器10は、空隙15が真空である場合において、外部応力、内圧及び外圧に耐えうる剛性を有する。
【0171】
また、第二の筒状容器22の所定領域111を構成する基材と外容器14の所定領域112を構成する基材に応力に対して高い剛性を発現する一方向繊維シートが含まれることで、第二の筒状容器22の所定領域111及び外容器14の所定領域112は、剛性を有する。すなわち、織物のみからなる構成で発現する剛性と同じ剛性を織物及び一方向繊維シートからなる構成で発現させる場合、壁の厚さを薄くすることができる。すなわち、断熱容器10を用いた脊磁計60は、超伝導量子干渉計17の測定面19から生体18の脊髄(測定部位)までの距離(リフトオフ)を短くすることができる。
【0172】
また、冷媒注入管12を備えた断熱容器10を用いた脊磁計60は、冷媒注入管12を介した外部から筒状容器13及び第二の筒状容器22への熱の伝導を小さくすることができる。これにより、断熱容器10に冷媒16を長時間保管することができるため、脊磁計60の稼働時間を長くすることができる。
【実施例
【0173】
断熱容器10を構成する外容器14の断熱性を評価するため、表1に記載した実施例及び比較例の構成に従ってサンプルを作製し、熱伝導率を測定した。さらに、外容器14を構成する壁の積層構成の違いによる剛性の評価と、第二の筒状容器22を構成する壁の積層構成の違いによる剛性の評価を行うために、表1及び表2に記載した実施例及び比較例の構成に従ってサンプルを作製し、曲げ強度及び曲げ弾性率を測定した。なお、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0174】
実施例及び比較例で使用した樹脂、基材及びハニカムシートは、以下の通りである。
【0175】
(樹脂)
(1)マトリクス樹脂A
(1-1)主剤:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ダウケミカル社製、DER383LCL)、
(1-2)硬化剤:酸無水物系硬化剤(日立化成工業社製、HN-2000)、
(1-3)硬化促進剤:N,N-ジメチルベンジルアミン(花王社製、カオライザーNo.20)。
【0176】
(2)マトリクス樹脂B
(2-1)主剤:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(DIC社製、EPICLON850)、
(2-2)硬化剤:アミン系硬化剤(日本カーバイド工業社製、DICY)、
(2-3)硬化促進剤:N,N-ジメチルベンジルアミン(花王社製、カオライザーNo.20)。
【0177】
(基材及びハニカムシート)
(1)織物(ガラス):ガラスクロス(アリサワファイバーグラス社製、ECC75 181)、
(2)織物(アルミナ):アルミナクロス(有沢製作所社製、ALPT5107)、
(3)織物(炭素):カーボンクロス(有沢製作所社製、CFPH3113)、
(4)UD(アルミナ):アルミナ繊維を使用した一方向繊維シート(有沢製作所社製、UDP-AL/CR8)、
(5)UD(ガラス):ガラス繊維を使用した一方向繊維シート(有沢製作所社製、UDP-GF/CR8)、
(6)UD(炭素):炭素繊維を使用した一方向繊維シート(有沢製作所社製、UDP-CF/CR8)、
(7)ハニカムシートA(TASUNS社製、ハニカムコア)厚さ 1.2mm、
(8)ハニカムシートB(TASUNS社製、ハニカムコア)厚さ 7.0mm。
【0178】
基材に含浸させるための樹脂をそれぞれ調製した。
(1)樹脂の調製
(1-1)基材を織物としたプリプレグに用いた樹脂の調製
マトリクス樹脂Aの主剤、硬化剤、及び硬化促進剤を使用した。まず、容器に、主剤100重量部、硬化剤88重量部、及び硬化促進剤0.8重量部を加えた。その後、室温下、700rpm、60分の条件にて高速ミキサーで撹拌し、マトリクス樹脂Aを得た。このときの粘度は、500mPa・sであった。
【0179】
(1-2)基材をUDとしたプリプレグに用いた樹脂の調製
マトリクス樹脂Bの主剤、硬化剤、及び硬化促進剤を使用した。まず、容器に、主剤100重量部、硬化剤88重量部、及び硬化促進剤0.8重量部を加えた。その後、室温下、700rpm、60分の条件にて高速ミキサーで撹拌し、マトリクス樹脂Bを得た。このときの粘度は、500mPa・sであった。
【0180】
調製した樹脂を使用してプリプレグを作製した。
(2)プリプレグの作製
(2-1)基材を織物としたクロスプリプレグの作製
硬化後の樹脂量が35wt%となるように織物にマトリクス樹脂Aを含浸させた。次に、130℃、10分の条件で乾燥させ、樹脂量が35wt%のBステージ状態のプリプレグを得た。
【0181】
(2-2)基材をUDとしたUDプリプレグの作製
硬化後の樹脂量が35wt%となるようにUDにマトリクス樹脂Bを含浸させた。次に、130℃、10分の条件で乾燥させ、樹脂量が35wt%のBステージ状態のUDプリプレグを得た。
【0182】
各測定に用いたサンプルの作製、測定方法及び評価は、次のように行った。
【0183】
(3)外容器14を構成する壁を評価するための測定用サンプルの作製
外容器14を構成する壁の熱伝導率、曲げ強度、及び曲げ弾性率を測定するための測定用サンプルを次のように作製した。まず、(2-1)及び(2-2)で作製したプリプレグとハニカムシートを、表1に示した実施例1~10、及び比較例1の積層構成と同じ積層構成となるように積層した。クロスプリプレグは、積層する際に、最下層のプリプレグの一辺を基準として、その一辺と経糸とが成す角度が所定の角度となるように積層した。UDプリプレグは、積層する際に、クロスプリプレグを積層する際に基準とした最下層のプリプレグの一辺を基準として、その一辺とUDプリプレグを構成する繊維とが成す角度が所定の角度となるようにUDプリプレグを積層した。所定の角度とは、表1に記載の実施例及び比較例において示した角度をいう。次に、積層したプリプレグを、硬化後の樹脂量が35wt%、硬化後の厚さが2.5mmとなるように、130℃、90分、0.29MPaの条件でプレスした。プレス後、Cステージ状態の測定用サンプルを得た。
【0184】
曲げ強度及び曲げ弾性率を測定するための測定用サンプルを、幅10mm、長さ20mmの長方形にカットして大きさを整えた。実施例1~4、及び比較例1における測定用サンプルを、測定用サンプルを構成するクロスプリプレグの経糸に対して、測定用サンプルの長辺方向が平行となるようにカットした。実施例5~10における測定用サンプルを、測定用サンプルを構成するUDプリプレグの繊維に対して、測定用サンプルの長辺方向が平行となるようにカットした。実施例5~10の測定用サンプルにおいて、UDプリプレグの繊維に対して、測定用サンプルの長辺方向が平行となるようにカットした理由は、一方向繊維シートが断熱容器10の壁を構成する基材に使用された際に、繊維の延在方向の違いによる効果(剛性)の差異を適切に評価するためである。
【0185】
熱伝導率を測定するための測定用サンプルは、熱伝導率、曲げ強度、及び曲げ弾性率を測定するために作製した厚さ2.5mmの平板状の測定用サンプルを直径50mmの円形にカットしたものとした。
【0186】
(4)第二の筒状容器22を構成する壁を評価するための測定用サンプルの作製
第二の筒状容器22を構成する壁の曲げ強度及び曲げ弾性率を測定するための測定用サンプルを次のように作製した。(2-1)及び(2-2)で作製したプリプレグを、表2に示した実施例11~18の積層構成と同じ積層構成となるように積層した。その積層する際に、最下層のプリプレグの一辺を基準として、その一辺と経糸とが成す角度が所定の角度となるようにクロスプリプレグを積層した。UDプリプレグを積層する場合、クロスプリプレグを積層する際に基準とした最下層のプリプレグの一辺を基準として、その一辺とUDプリプレグを構成する繊維とが成す角度が所定の角度となるようにUDプリプレグを積層した。所定の角度とは、表2に記載の実施例において示した角度をいう。積層した後のプリプレグを、硬化後の樹脂量が35wt%、硬化後の厚さが2.5mmとなるように、130℃、90分、0.29MPaの条件でプレスした。プレス後、Cステージ状態の測定用サンプルを得た。更に、得られた測定用サンプルを、幅10mm、長さ20mmの長方形にカットした。実施例11~13における測定用サンプルを、測定用サンプルを構成するクロスプリプレグの経糸に対して、測定用サンプルの長辺方向が平行となるようにカットした。実施例14~18における測定用サンプルを、測定用サンプルを構成するUDプリプレグの繊維に対して、測定用サンプルの長辺方向が平行となるようにカットした。
【0187】
(5)熱伝導率の測定
熱伝導率(W/m・K)は、測定装置(アグネ技術センター社製、ARC-TC-1000型)を用いて測定した。測定は、温度傾斜法により行った。測定条件は、ASTME1225に準拠した。
【0188】
(6)曲げ強度、曲げ弾性率の測定
曲げ強度及び曲げ弾性率は、オートグラフ試験機(島津製作所社製、AG-10)を用いて測定した。測定は3点曲げ(支点間距離10mm、試験速度2mm/分)で行った。測定に際し、3点曲げの両端の支点が測定用サンプルの長手方向において両端に配置されるように、測定用サンプルを試験機に設置した。曲げ強度及び曲げ弾性率は、JIS K7017に準拠し、得られた最大曲げ応力(破壊荷重)から算出した。
【0189】
表1は、実施例1~10、及び比較例1の熱伝導率、曲げ強度、及び曲げ弾性率の測定結果を示したものである。表2は、実施例11~18の曲げ強度、及び曲げ弾性率の測定結果を示したものである。
【0190】
【表1】
【0191】
【表2】
【0192】
表1に示した実施例同士を対比してみると、例えば、実施例1は、比較例1に比べて、熱伝導率を約80%低減できることがわかった。また、実施例8は、比較例1に比べて、約70%の曲げ強度を維持しつつ、熱伝導率を約50%低減できることがわかった。
【0193】
また、表2に示した実施例と比較例とを対比してみると、厚さを同一としたときに、例えば、実施例13の曲げ強度は、実施例11の曲げ強度に比べて約1.7倍であることがわかった。また、実施例17の曲げ弾性率は、実施例11の曲げ弾性率に比べて約2.2倍であることがわかった。
【0194】
これらの測定結果から、第二の筒状容器22を包囲する外容器14の所定領域112を構成する壁を実施例1~実施例10に記載の積層構成とすることで、断熱容器10の断熱性を向上させることができる。さらに、第二の筒状容器22の所定領域111を構成する壁を実施例11~実施例18に記載の積層構成とすることで、従来の断熱容器を構成する壁の剛性を維持しつつ、第二の筒状容器22を構成する壁を薄くすることができる。さらに、このような断熱容器10を脊磁計60の断熱容器として使用することで、超伝導量子干渉計17の測定面19から脊髄の測定部位までの距離(リフトオフ)を短くすることができ、超微弱な磁場の測定が可能となる。
【0195】
以上の結果から、実施の形態の断熱容器は、断熱性に優れ、壁が薄い断熱容器、及びそれを用いた脊磁計を提供することができる。
【0196】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【0197】
本出願は、2021年5月28日に出願された、日本国特許出願2021-090086号に基づく。本明細書中に日本国特許出願2021-090086号の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参照して取り込むものとする。
【符号の説明】
【0198】
10 断熱容器、
11 内容器、
12 冷媒注入管、
13 筒状容器、
131 上面部、
122、132 筒状部、
123、133 底面部、
132O 外層、
132I 内層、
111、112 所定領域、
101 測定対象物、
102 測定装置、
14 外容器、
15 空隙、
16 冷媒、
17 超伝導量子干渉計、
18 生体、
19 測定面、
21 基材、
22 第二の筒状容器、
23、24 収容部、
60 脊磁計、
63、64 織物、
65 止め糸、
66 扁平糸、
70、71 ハニカムシート。
図1
図2
図3
図4
図5
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図9