(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】反応性枕及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A47G 9/10 20060101AFI20250407BHJP
【FI】
A47G9/10 P
(21)【出願番号】P 2023547733
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(86)【国際出願番号】 CN2021122537
(87)【国際公開番号】W WO2022083441
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-06-07
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523139250
【氏名又は名称】スーパー リッチ モールダーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SUPER RICH MOULDERS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100163991
【氏名又は名称】加藤 慎司
(72)【発明者】
【氏名】フー,リー
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ヤム
(72)【発明者】
【氏名】チュー,チュン ワー
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チェンミン
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107744304(CN,A)
【文献】中国実用新案第208371375(CN,U)
【文献】特表2007-531142(JP,A)
【文献】特開2017-189382(JP,A)
【文献】特開2020-014812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体型の反応性枕であって、
接触領域における圧力分布をモニタリングするための可撓性且つ層状の圧力センサアレイマットであって、
複数の第1の導電性糸と、前記第1の導電性糸と織り交ぜられた複数の第1の非導電性糸と、を有する第1の電極ファブリック層と、
複数の第2の導電性糸と、前記第2の導電性糸と織り交ぜられた複数の第2の非導電性糸と、を有する第2の電極ファブリック層と、
予め定義されたセンシング領域において少なくとも50Kオーム/スクエアのシート抵抗を有する複数の充填部を有しているピエゾ抵抗ファブリック層であって、前記第1の電極ファブリック層及び前記第2の電極ファブリック層と係合するように構成されており、前記ピエゾ抵抗ファブリック層は、半導性糸で作られた織布又は編布である、ピエゾ抵抗ファブリック層と、
を具備した圧力センサアレイマットと;
前記反応性枕の内部に複数の第1のエアバッグ及び1つ又は複数の第2のエアバッグを備えたビルトインアクチュエータであって、
前記第1のエアバッグは前記第2のエアバッグ上に配置され、各エアバッグは、エアバッグの容積の増加に対応する膨張構成と、エアバッグの容積の減少に対応する収縮構成とを有しており、前記ビルトインアクチュエータは、少なくとも1つのマイクロポンプ、少なくとも1つのチューブ、及び少なくとも1つのバルブを更に備えている、ビルトインアクチュエータと;
前記圧力センサアレイマットと通信するビルトインコントローラであって、
前記ビルトインアクチュエータは、前記ビルトインコントローラと通信して前記ビルトインコントローラを作動させて前記エアバッグを前記膨張構成と前記収縮構成との間で変換させる、ビルトインコントローラと;
を具備しており、
前記反応性枕は、前記反応性枕の好みの設定を表示及び変更するためのユーザインターフェイスに無線で接続できるように構成されており、前記ユーザインターフェイスは、前記ビルトインコントローラと通信し、前記ビルトインコントローラは、前記好みの設定を記憶して、前記圧力センサアレイマットによって生成されるリアルタイムの圧力データに基づいて変形を決定することができるように構成されている、
反応性枕。
【請求項2】
前記第1の導電性糸と前記第2の導電性糸とが実質的に垂直に整列している、請求項1に記載の反応性枕。
【請求項3】
前記第1及び第2の導電性糸の各々は、約3mmから10mmの幅を有している、請求項1又は2に記載の反応性枕。
【請求項4】
前記第1及び第2の非導電性糸の各々は、約5mmから50mmの幅を有している、請求項1又は2に記載の反応性枕。
【請求項5】
前記ピエゾ抵抗ファブリック層は、非導電性ファブリックを更に含み、前記複数の充填部には、前記予め定義されたセンシング領域にコーティングされたピエゾ抵抗インクが組み込まれている、請求項1に記載の反応性枕。
【請求項6】
前記ピエゾ抵抗インクは、ポリマー、導電性材料、及び溶媒を含んでいる、請求項5に記載の反応性枕。
【請求項7】
前記ポリマーは、約1重量%から10重量%の濃度を有しており、前記導電性材料は、約0.1重量%から2重量%の濃度を有しており、前記溶媒は、約90重量%から95重量%の濃度を有している、請求項6に記載の反応性枕。
【請求項8】
前記複数の充填部の各々は、円形、正方形、及び長方形から選択される1つ又は複数の形状を有し、幅が約5mmから15mmであり、間隔が約3mm~50mmである、請求項1に記載の反応性枕。
【請求項9】
前記第1のエアバッグは、前記反応性枕の左、右、上、及び底に対応する相対体積が適応できるように、膨張構成と収縮構成との間で変換するように構成されている、請求項1に記載の反応性枕。
【請求項10】
前記第1のエアバッグは、少なくとも3つのエアバッグを含んでいる、請求項9に記載の反応性枕。
【請求項11】
前記第2のエアバッグは、前記反応性枕の高さに対応する相対体積が適応できるように、前記膨張構成と前記収縮構成との間で変換するように構成されている、請求項1に記載の反応性枕。
【請求項12】
前記反応性枕は、ユーザ端末と通信するように構成された無線通信モジュールを更に備えている、請求項1に記載の反応性枕。
【請求項13】
反応性枕の製造方法であって、
可撓性且つ層状の圧力センサアレイマットを提供することであって、前記圧力センサアレイマットは、
複数の第1の導電性糸と、前記第1の導電性糸と織り交ぜられた複数の第1の非導電性糸と、を有する第1の電極ファブリック層と、
複数の第2の導電性糸と、前記第2の導電性糸と織り交ぜられた複数の第2の非導電性糸と、を有する第2の電極ファブリック層と、
予め定義されたセンシング領域において少なくとも50Kオーム/スクエアのシート抵抗を有する複数の充填部を有しているピエゾ抵抗ファブリック層であって、前記第1の電極ファブリック層及び前記第2の電極ファブリック層と係合するように構成されており、前記ピエゾ抵抗ファブリック層は、半導性糸で作られた織布又は編布である、ピエゾ抵抗ファブリック層と、
を具備していることと;
前記反応性枕の内部に複数の第1のエアバッグ及び1つ又は複数の第2のエアバッグを備えたビルトインアクチュエータを提供することであって、
前記第1のエアバッグは前記第2のエアバッグ上に配置され、各エアバッグは、エアバッグの容積の増加に対応する膨張構成と、エアバッグの容積の減少に対応する収縮構成とを有しており、前記ビルトインアクチュエータは、少なくとも1つのマイクロポンプ、少なくとも1つのチューブ、及び少なくとも1つのバルブを更に備えていることと;
前記圧力センサアレイマットと通信するビルトインコントローラを提供することであって、前記
ビルトインアクチュエータは、前記
ビルトインコントローラと通信して前記
ビルトインコントローラを作動させて前記エアバッグを前記膨張構成と前記収縮構成との間で変換させることと;
を具備し、
前記反応性枕は、前記反応性枕の好みの設定を表示及び変更するためのユーザインターフェイスに無線で接続できるように構成されており、前記ユーザインターフェイスは、前記ビルトインコントローラと通信し、前記ビルトインコントローラは、前記好みの設定を記憶して、前記圧力センサアレイマットによって生成されるリアルタイムの圧力データに基づいて変形を決定することができるように構成されており、
前記第1の導電性糸と前記第2の導電性糸とは、実質的に垂直に整列している、
反応性枕の製造方法。
【請求項14】
前記第1及び第2の導電性糸は、約3mmから10mmの幅を有しており、前記第1及び第2の非導電性糸は、約5mmから50mmの幅を有している、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ピエゾ抵抗ファブリック層は、非導電性ファブリックを更に含んでおり、前記複数の充填部にはピエゾ抵抗インクが組み込まれており、前記ピエゾ抵抗インクは、約1重量%から10重量%の濃度のポリマーと、約0.1重量%から2重量%の濃度の導電性材料と、約90重量%から95重量%の濃度の溶媒とを含んでいる、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照:
本出願は、2020年10月19日に出願された米国仮出願第63/198,436号の優先権を主張し、その開示の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、支持手段、特に可撓性(flexible)圧力センサマットを介して随時記録される接触圧力に応じて高さ及び形状を自動的に調整できる枕、並びにその製造方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
睡眠は最も重要な活動のひとつであり、人間の健康及び幸福に不可欠な役割を果たしている。快適な寝具、特に枕は、健康及び生活の質にとって重要である。首の痛み又は不快感は、人口の4分の1近くで発生していると推定されており、枕のデザインが悪いことが、この極めて高い発生率の主な原因となっていると考えられる。多くの研究者が、枕の硬さ(stiffness)、形状、及び熱特性などの要素で快適性を評価しようとした。枕の形状及び硬さの両方は、睡眠中の首及び頭のサポートに影響する。枕のサポートが不適切だと、頚椎に悪影響があり、首の痛み及び頚性頭痛の原因となる。現在市販されている枕製品は、形状及び硬さが固定されていることが多く、購入後に調整することはできない。しかしながら、横向きで寝る人、仰向けで寝る人、うつ伏せで寝る人は、頭及び首を背骨に合わせるために、硬さ及び高さの異なる枕が必要になることがある。一方、枕の選択は、マットレスの硬さ(firmness)にも依存する。快適な枕は、使用者ごとに適切な睡眠姿勢に合うように形状を変える必要がある。睡眠中の体圧分布をモニタリングできるマットレス製品はあっても、センサからの信号に基づいてアクティブに調整するものは市場では稀である。ユーザ及び就寝時の姿勢に固有のサポート問題に対応できる枕製品は存在しない。
【0004】
枕の快適性は、ユーザがその上で寝る接触領域の圧力によって特徴づけられるため、各接触領域の圧力を検出し、枕表面全体の圧力分布を監視するための圧力センサのマトリックスが必要である。従来、圧力センサは、金属又は半導体で作られた個別のゲージだった。これらのゲージは、通常剛性(rigid)であり、荷重をひずみに変換するために、梁(beams)に取り付ける必要がある。それらは、小さな領域を高い精度で監視できるが、その統合は複雑でコストがかかる。これらのセンサは、剛性の形態(rigid form)であるため、枕に取り付けるのには適していない。可撓性圧力センサには、可撓性及び低コストという独自の利点がある。これらは、タッチセンシング、大面積圧力モニタリング及びマッピング、歩行分析、並びにスポーツスコアリングなど、多くのアプリケーションの有望な候補として浮上している。プラスチックフォイルに印刷された薄くて柔軟なセンサは、広範囲の圧力を監視することができるが、センサを動作させるためには、滑らかな表面(平面又は曲面)が必要である。しかし、枕に使用する場合、通常、接触面は、平坦ではないランダムな3D形状になる。センサにしわ(creases)ができると、印刷物が接触時の繰り返しのせん断力に耐えられないため、信頼性の問題が発生する。更に、プラスチックフォイル基材は通気性がなく、ユーザに不快感を与える可能性がある。
【0005】
既存の調節可能な枕製品の欠点を考慮すると、ユーザが加える接触圧力に応じて枕の高さを調節するだけではなく、形状を適応させることもできる、反応性枕(reactive pillow)システムを提供する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
したがって、本発明の第1の態様は、反応性枕を提供する。反応性枕は、圧力センサマット、アクチュエータ、及びコントローラを備えている。圧力センサマットは、第1の電極ファブリック層、第2の電極ファブリック層、及びピエゾ抵抗ファブリック層を備えている。第1の電極ファブリック層は、複数の第1の導電部と、複数の第1の非導電部と、を有しており、ここで、第1の導電部は、第1の非導電部と織り交ぜられて(interlaced)いる。第2の電極ファブリック層は、複数の第2の導電部と、複数の第2の非導電部と、を有しており、ここで、第2の導電部は、第2の非導電部と織り交ぜられている。ピエゾ抵抗ファブリック層は、少なくとも50Kオーム/スクエアのシート抵抗を有しており、第1の電極ファブリック層及び第2の電極ファブリックと係合して、圧力センサマットを形成するように構成されている。加えて、アクチュエータは、複数の第1のエアバッグ及び1つ又は複数の第2のエアバッグを備えている。第1のエアバッグは、第2のエアバッグ上に配置され、各エアバッグは、エアバッグの容積の増加に対応する膨張構成(inflated configuration)と、エアバッグの容積の減少に対応する収縮構成(deflated configuration)とを有している。コントローラは、圧力センサマットと通信し、アクチュエータは、コントローラと通信してコントローラを作動させてエアバッグを膨張構成と収縮構成との間で変換させる。
【0007】
本発明の第1の側面に係る一実施形態では、第1の導電部と第2の導電部とが垂直に整列した(aligned perpendicularly)反応性枕が提供される。
【0008】
本発明の一実施形態では、第1及び第2の導電部が、導電性糸(conductive yarns)で作られた又は導電性糸を含む織布(woven fabrics)又は編布(knitted fabrics)である、反応性枕が提供される。
【0009】
本発明の別の実施形態では、第1及び第2の非導電部が、非導電性糸(non-conductive yarns)で作られた又は導電性糸を含む織布又は編布である、反応性枕が提供される。
【0010】
本発明の別の実施形態では、第1及び第2の導電部の各々が、約3mmから10mmの幅を有している、反応性枕が提供される。
【0011】
本発明の別の実施形態では、第1及び第2の非導電部の各々が、約5mmから50mmの幅を有している、反応性枕が提供される。
【0012】
本発明の別の実施形態では、ピエゾ抵抗ファブリック層が、半導性糸(semi-conductive yarn)で作られた又は半導性糸を含む織布又は編布である、反応性枕が提供される。
【0013】
本発明の別の実施形態では、ピエゾ抵抗ファブリック層が、非導電性ファブリック(non-conductive fabric)と、ピエゾ抵抗インクを有する複数の充填部(filling portions)と、を更に含んでいる、反応性枕が提供される。
【0014】
本発明の別の実施形態では、ピエゾ抵抗インクが、ポリマー、導電性材料、及び溶媒を含んでいる、反応性枕が提供される。
【0015】
本発明の別の実施形態では、ポリマーが、約1重量%から10重量%の濃度を有しており、導電性材料が、約0.1重量%から2重量%の濃度を有しており、溶媒が、約90重量%から95重量%の濃度を有している、反応性枕が提供される。
【0016】
本発明の別の実施形態では、充填部のシート抵抗が、少なくとも50Kオーム/スクエアである、反応性枕が提供される。
【0017】
本発明の別の実施形態では、充填部が、円形、正方形、及び長方形から選択される1つ又は複数の形状を有し、幅が約5mmから15mmであり、間隔が約3mm~50mmである、反応性枕が提供される。
【0018】
本発明の別の実施形態では、アクチュエータが、少なくとも1つのマイクロポンプ、少なくとも1つのチューブ、及び少なくとも1つのバルブを更に備え、エアバッグを膨張構成と収縮構成との間で変換するように構成されている、反応性枕が提供される。
【0019】
本発明の別の実施形態では、第1のエアバッグが、枕の左、右、上底に対応する相対体積が適応できる(can be adapted)ように、膨張構成と収縮構成との間で変換するように構成されている、反応性枕が提供される。
【0020】
本発明の別の実施形態では、第1のエアバッグが少なくとも3つのエアバッグを含む反応性枕が提供される。
【0021】
本発明の別の実施形態では、第2のエアバッグが、枕の高さに対応する相対体積が適応できるように、膨張構成と収縮構成との間で変換するように構成されている、反応性枕が提供される。
【0022】
本発明の別の実施形態では、反応性枕が、ユーザ端末と通信するように構成されたBluetooth(登録商標)モジュールを更に備えている、反応性枕が提供される。
【0023】
本発明の第2の態様は、反応性枕の製造方法を提供する。この方法は、以下を含んでいる。(1)圧力センサマットを提供することであって、前記圧力センサマットは、複数の第1の導電部と複数の第1の非導電部とを有し、前記第1の導電部が前記第1の非導電部と織り交ぜられている、第1の電極ファブリック層と、複数の第2の導電部と複数の第2の非導電部とを有し、前記第2の導電部が前記第2の非導電部と織り交ぜられている、第2の電極ファブリック層と、少なくとも50Kオーム/スクエアのシート抵抗を有し、前記第1の電極ファブリック層及び前記第2の電極ファブリックと係合するように構成されている、ピエゾ抵抗ファブリック層と、を具備していること;(2)複数の第1のエアバッグ及び1つ又は複数の第2のエアバッグを備えたアクチュエータを提供することであって、前記第1のエアバッグは前記第2のエアバッグ上に配置され、各エアバッグは、エアバッグの容積の増加に対応する膨張構成と、エアバッグの容積の減少に対応する収縮構成とを有していること;(3)前記圧力センサマットと通信するコントローラを提供することであって、前記アクチュエータは、前記コントローラと通信して前記コントローラを作動させて前記エアバッグを前記膨張構成と前記収縮構成との間で変換させること。より具体的には、第1導電部と第2導電部とは、垂直に整列している。
【0024】
本発明の第2の側面に係る一実施形態では、第1及び第2の導電部が、約3mmから10mmの幅を有しており、前記第1及び第2の非導電部が、約5mmから50mmの幅を有している、反応性枕の製造方法が提供される。
【0025】
本発明の第2の側面に係る別の実施形態では、ピエゾ抵抗インクが、約1重量%から10重量%の濃度のポリマーと、約0.1重量%から2重量%の濃度の導電性材料と、約90重量%から95重量%の濃度の溶媒とを含んでいる、反応性枕の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
添付の図面においては、類似の参照番号は同一又は機能的に類似した要素を指しており、上記及び本発明の他の側面、利点及び特徴を更に説明し明確にするために、特定の実施形態の図を含んでいる。これらの図面は、本発明の実施形態を示しており、その範囲を制限することを意図していないことが理解されるだろう。本発明は、添付の図面を使用して更に具体的且つ詳細に記載及び説明される。
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態における一体型(integrated)圧力センサマットを備えた反応性枕を示している。
【0028】
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態における列行(column-row)構造を有するセンサアレイ設計を示している。
【0029】
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態における非導電性テキスタイル及びピエゾ抵抗領域を有するピエゾ抵抗ファブリックを示す概略図である。
【0030】
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態におけるマルチゾーン設計のフレキシブルアクチュエータを示す概略図である。
【0031】
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態におけるアクチュエータの空気経路及び制御図を示す概略図である。
【0032】
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態におけるフレキシブルアクチュエータによる寝姿勢調整を示す模式図である。
【0033】
【
図7A】
図7Aは、本発明の一実施形態における4つの作動(actuation)領域を有するフレキシブルアクチュエータを示している。
【0034】
【
図7B】
図7Bは、本発明の一実施形態における5つの作動領域を有するフレキシブルアクチュエータシステムを示している。
【0035】
【
図7C】
図7Cは、本発明の一実施形態における6つの作動領域を有するフレキシブルアクチュエータシステムを示している。
【0036】
【
図7D】
図7Dは、本発明の別の実施形態における6つの作動領域を有するフレキシブルアクチュエータシステムを示している。
【0037】
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態における反応性枕のハードウェア制御ブロック図を示している。
【0038】
【
図9】
図9は、本発明の一実施形態における反応性枕のフィードバック制御システムのブロック図を示している。
【0039】
【
図10】
図10は、本発明の一実施形態におけるエアバッグの加圧及び減圧の制御を示すフローチャートである。
【0040】
当業者であれば、図の要素が単純さ及び明確さのために図示されており、必ずしもスケールに合わせて描かれていないことを理解するだろう。
【0041】
定義
本明細書における明細書での「one embodiment」、「an embodiment」、「an example embodiment」等への言及は、記載された実施形態が特定の特徴、構造又は特性を含むことができるが、全ての実施形態が必ずしも特定の特徴、構造又は特性を含むとは限らないことを示している。更に、そのような表現は、必ずしも同じ実施形態を指しているわけではない。更に、特定の特徴、構造、又は特性が実施形態に関連して記述されている場合、明示的に記述されているかどうかにかかわらず、他の実施形態に関連してそのような特徴、構造、又は特性に影響を与えることは、当業者の知識の範囲内である。
【0042】
用語「a」又は「an」は、1つ又は複数のものを含むという意味で使用され、用語「or」は、別段の明記がない限り、非排他的な「又は」を指すために使用される。加えて、本明細書で使用され、他に定義されていない用語は、限定ではなく、説明のみを目的とするものであることを理解されたい。更に、本明細書で言及されている全ての刊行物、特許、及び特許文書は、参照により個別に組み込まれているかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。本明細書と参照によりそのように組み込まれた文書との間に矛盾する用法がある場合、組み込まれた参照における用法は、本明細書の用法を補足するものとみなすべきである。解消できない不一致については、この明細書における使用方法が優先される。
【0043】
範囲形式の値は、範囲の制限として明示的に示された数値だけでなく、各数値とサブ範囲が明示的に示されているかのように、その範囲内に含まれる個々の数値又はサブ範囲を全て含めるように柔軟に解釈する必要がある。例えば、「約0.1%から約5%」の濃度範囲は、明示的に示されている約0.1重量%から約5重量%の濃度だけを含むのではなく、個々の濃度(例:1%、2%、3%、4%)及び示された範囲内のサブ範囲(例:0.1%から0.5%、1.1%から2.2%、3.3%から4.4%)も含まれるものと解釈されるべきである。
【0044】
本明細書に記載されている製造方法では、時間的又は操作的シーケンスが明示的に記載されている場合を除き、工程は、本発明の原理から逸脱することなく任意の順序で実施することができる。最初の工程が実施され、次いで幾つかの他の工程がその後に実施される旨のクレームにおける記載は、第1の工程が他の工程の何れかの前に実施されるが、他の工程は、他の工程内で更に記載されない限り、任意の適切な順序で実施することができることを意味するものとする。例えば、「工程A、工程B、工程C、工程D、及び工程E」を記載するクレーム要素は、工程Aが最初に実施され、工程Eが最後に実施され、工程B、C及びDが工程Aと工程Eの間の任意の順序で実施され、その順序が依然としてクレームされたプロセスの文言の範囲内にあることを意味すると解釈される。特定の工程又は工程のサブセットを繰り返すこともできる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下の記載では、本反応性枕を好ましい例として説明する。追加及び/又は置換を含む修正が、本発明の範囲及び精神から逸脱することなくなされ得ることは、当業者には明らかであろう。特定の詳細は、本発明を不明瞭にしないために省略される場合がある。しかしながら、本開示は、当業者が過度の実験なしに本明細書の教示を実施できるように記載されている。
【0046】
本発明は、同時に複数の場所の圧力を検出し、それに応じて枕の形状及び硬さを調整して、睡眠中の首の不快感及び慢性疲労を軽減することができる反応性枕を提供する。人間が枕で寝ている場合、その接触圧は、ユーザや睡眠姿勢にもよるが、おおよそ数キロパスカルから数十キロパスカルの範囲にあると推定された。接触圧を検出するために、必要な表面全体に間隔を空けたセンサからなるセンサアレイを、枕の上又は下に配置する圧力センサマットとして製造することができる。しかしながら、圧力センサマットが枕の下に配置されている場合、検出される圧力は通常、枕の上に配置された圧力よりも低くなる。これは主に、柔らかく変形可能な枕を通じた接触面積の増加による圧力の散逸によるものである。ピエゾ抵抗センサの感度に適合する範囲でより正確な圧力測定を得るために、本発明の圧力センサマットは、枕の上面に配置される。枕上の圧力センサマットを介して圧力データを収集した後、枕の形状及び硬さの変更は、リアルタイムの調整のために圧力センサマットと通信する可撓性(flexible)アクチュエータに依存する。より具体的には、アクチュエータは、検出された圧力に基づいて、枕の高さ及び柔らかさを調整するように構成されている。各々が複数のエアバッグを備えたマルチ作動ゾーンを有する可撓性アクチュエータは、ユーザが首と頭との間の傾斜角度を調整することを可能にし、首と脊椎との位置合わせを改善し、不適切な首のサポートによる不快感を軽減させることができる。また、枕の上で寝ている人の呼吸を、息を吸ったり吐いたりするときの微妙な圧力差をモニタリングすることで確認することもできる。更に、反応性枕に組み込まれたいびきセンサ(snore sensor)により、睡眠姿勢を調整していびきをコントロールし、睡眠の質を向上させることもできる。
【0047】
図1は、本発明の一実施形態における圧力センサマットが組み込まれた反応性枕を描いている。可撓性圧力センサマット11は、枕本体10の上に配置されている。各センサは、導電性の列(columns)13と導電性の行(rows)14との間の各交点(intersections)12によって定義される。
【0048】
図2は、圧力センサマット11内に列行(column-row)構造として配置されたセンサアレイを示している。上部電極シート20及び下部電極シート21は、両方とも非導電性領域22と導電性領域23とからなり、非導電性領域22は、導電性領域23と織り交ぜられて(interlaced)いる。導電性領域23は、1つ又は複数の導電性列13又は導電性行14を含んでいる。上部電極シート20の導電性列13及び下部電極シート21の導電性行14は、それぞれ、X方向及びY方向に延在している。導電性列13及び導電性行14の幅は、約5mmから10mmの範囲にあるが、用途に応じて調整することができる。更に、導電性行13又は導電性列14は、通常、圧力センサマットの解像度要件に応じて、約5mmから50mmの範囲の感覚(space)で、非導電性領域22によって離間されて(spaced apart)いる。各導電性列13が各導電性行14と交差する交点又は重複領域(overlaying area)は、1つのセンサとして特徴付けられる。一方、ピエゾ抵抗材料で作られたピエゾ抵抗層24は、初期抵抗が高く、上部電極シート20と下部電極シート21との間に挟まれている。ピエゾ抵抗層24のシート抵抗は、圧力センサマットの大面積が同時に押されたときに、隣接するセンサ間のクロストークを最小限に抑えるために、少なくとも又は好ましくは50Kオーム/スクエア(ohm/square)以上である。
【0049】
ピエゾ抵抗層24は、ピエゾ抵抗糸(piezoresistive yarns)で作られた織物(textile)である。ピエゾ抵抗糸は、高い抵抗率を有しており、パターンのないブランク生地に織り込んだり(woven into)編み込んだり(knitted into)することができる。ピエゾ抵抗層の抵抗率は、センサの感度及び感知範囲を制限することになる。圧電抵抗ファブリックは、例えば、本発明で要求される弾力性に応じて、綿布、混合布、又は、ポリエステル若しくはLYCRAなどの合成布であってもよいが、これらに限定されない。本発明の別の実施形態では、ピエゾ抵抗層24は、
図3に示すように、ピエゾ抵抗を実現するために、非導電性ファブリック30と、予め定義されたセンシング領域31(導電性列13と導電性行14との交点に対応)にコーティングされたピエゾ抵抗インクと、を含んでいる。ピエゾ抵抗インクの導電性材料は、布地に強力に付着させるためのバインダを備えた導電性ポリマー又はナノ材料である。材料の抵抗は、インク内の導電性材料の濃度によって調整される。インクの粘度は、スプレーコーティング又はディスペンシングなど、選択した印刷/コーティング方法に応じて調整される。接触時の柔らかい感触を維持するために、ファブリック全体を配合インクに浸すのではなく、センシング領域31だけに塗布することが好ましい。センサを完成させるために、ピエゾ抵抗領域の位置は、上部電極シート20内の導電性カラム13と下部電極シート21内の対応する導電性行14との間の交点に位置合わせされる。ピエゾ抵抗層24は、圧力センサマット11上の各センサについて、上部電極シート20と下部電極シート21との間の均一な伝導経路を達成するように最適化される必要がある。
【0050】
圧力センサマット11を通じて経時的に収集された連続的な圧力データにより、先行時間から現在までの圧力の大幅な変化に対応して、枕の形状のリアルタイムの変化を通じて支持を調整するアクチュエータ40が提供され、本発明におけるアクチュエータ40は、枕の複数の作動ゾーン(actuation zones)を形成する、例えばゴム製であるがこれに限定されない1つ又は複数のエアバッグを含んでいる。
図4は、2つの層及び4つの領域のエアバッグ、即ち、上層の3つのエアバッグ領域と下層の1つのエアバッグ領域とを含んだアクチュエータシステム40を示している。下層エアバッグ44は、枕の高さを素早く調節することができ、上層エアバッグ41、42、43は、頭及び首の領域の相対位置を制御し、それにより、頭と首との間の傾斜角度を調節することができる。一方、エアバッグは、メモリフォーム又は繊維カバーシートなどのトッピング層で覆われ、圧力センサマット11は、トッピング層及びアクチュエータシステム40の上に配置される。圧力センサマット11内のセンサは、アクチュエータシステム40の加圧状態及び接触状態を監視するために利用される。また、エアバッグは、空気漏れなく人体を持ち上げるように設計されており、各エアバッグの吊り上げ変位は、約0mmから50mm程度である。
【0051】
図5に示すように、各作動ゾーンのエアバッグは、可撓性シリコーンチューブを介してリレーバルブ51及びTコネクタチューブジョイント52に接続されている。マイクロポンプ50及び内圧センサ53などの他の必要な部品と共に、エアバッグを個別に制御して、エアバッグの体積の増加に対応する膨張構成と、エアバッグの体積の減少に対応する収縮構成との間で、エアバッグを変換することができる。接触圧分布に応じて、コントロールユニットは、アルゴリズムによる手動又は自動調節に基づいて、リレーバルブ51に開閉の指令を与える。
【0052】
図6は、本発明の一実施形態における反応性枕を使用した睡眠姿勢調整のシナリオを示している。下層のエアバッグ44が加圧又は減圧されると、個々のユーザの快適さの好みに合わせて、枕の高さを増減することができる。上層のエアバッグ41、42、43が互いに対して加圧又は減圧されると、前部領域(首付近)と後部領域(頭付近)の相対的な高さを変化させることができる。したがって、頭と首との間の傾斜角度を調整することができ、首と背骨とをよりよく整列させて、睡眠の質を向上させることが可能となり得る。回転調整(左から右へ)は、アクチュエータシステム40内の膨張/収縮エアバッグ/領域の数を変更することによって達成することができる。
図7B、7C、及び7Dは、それぞれ、本発明の様々な実施形態におけるアクチュエータシステム40内における異なる数のエアバッグを示している。非対称の圧力パターンが検出されると、本発明における反応性枕は、左右の高さを調節して、人をバランスのとれた睡眠姿勢に保つことができる。一実施形態では、エアバッグ/領域は、互いに接続されており、同じ圧力弁によって制御することができる。他の実施形態では、エアバッグ/領域の各々を、別個の圧力弁によって制御することができる。
【0053】
図8は、本発明における反応性枕のハードウェアを示すブロック図である。システムユニットは、5V、0.5Aの標準USBポートから電力を供給される。ハードウェアシステムは、圧力センサマット11上の各センサにプローブされた電圧電流変換器アンプの電圧出力信号を読み取るための一連のIC(Op-AMP及びMUX)回路で構成されている。一方、アクチュエータシステム40から内部圧力を読み取るためのMEMS ICがある。これらの電圧信号はすべて、16ビット/32ビットMCU ICに内蔵された複数チャネルのADCコンバータによって、デジタルデータに変換される。マイクロポンプ50及びリレーバルブ51を駆動するには、一組のIC(モータードライバ)回路も必要となる。
【0054】
全てのデータ処理及び制御は、16ビット/32ビット MCU ICにインストールされたソフトウェアプログラムによって処理される。更に、スマートフォン上のプログラム又はアプリケーションなど、現在の枕の設定や好みを表示したり変更したりするためのユーザインターフェイスがある携帯機器にユーザデータを記録して送信し、Bluetooth
(登録商標)モジュールの存在下で、MCU ICと携帯機器とをBluetooth
(登録商標)などを介して、無線通信させることができる。したがって、ユーザは、ポータブルデバイスから対応するプログラム又はアプリケーションを介して、ワイヤレスで枕の設定又は好みを変更することができる。プログラムは、少なくとも3つの部分を含んでいてもよい。最初の部分は、センサアレイ、対応するエアバッグの内圧センサ、及びその温度センサを含む様々な検知機構(sensing mechanisms)からデータを取得するデータ取得モジュールである。これらの検知機構からのデータ取得のサンプリングレートは、対応するセンサアレイサイズ及び/又はアレイ内のセンサの応答時間によって制限される場合がある。第2の部分は、マイクロポンプ50のドライバ及び速度制御を有するリレーバルブ51を含む、出力モジュールである。第3の部分は、
図9に示すように、枕変形アルゴリズムを備えたフィードバック制御システムモジュールであり、頭と首との間の傾斜角を調節し、システムに供給された快適なユーザ体験から学び、枕の形状遷移を通じてセンサマットから受信したリアルタイムの圧力データに基づいて変形を決定する。より具体的には、センサマットは、まず頭頸部の圧力分布を分析することで、ユーザが横向きに寝ているか又は仰向けに寝ているかを識別し、続いて枕変形アルゴリズムを適用して、ユーザが好みに応じて枕の高さを手動で選択できるようにする。本発明の一実施形態では、エアバッグの膨張は、センサマットが対象が横向きに寝た姿勢であることを識別したときに、対象の首に近い領域で約80から100%に調節することができる。別の実施形態では、対象が仰向けに寝た姿勢であることが識別された場合、エアバッグの膨張を首に近い領域で約20から40%に調節することができる。各睡眠位置に対する快適性は、エアバッグの調節可能な膨張範囲内で、ユーザの好みに基づいて選択することができる。
図10を参照すると、本発明の一実施形態に従ってエアバッグの加圧及び減圧がどのように決定及び実行されるかをフロー図で示している。
【0055】
したがって、本発明の反応性枕は、主に以下の特徴及び利点を有している。(1)圧力検出用のセンサアレイは柔軟性があり、3次元表面に準拠しているため、大面積で同時に圧力を検出して監視することができる。ファブリック圧力センサマットは、枕の上面に配置されており、正確な圧力モニタリングが可能で、快適性も向上している。導電性及び半導電性の糸で製造された又は導電性及び半導電性の糸を含んだ電極及びピエゾ抵抗層は、高い信頼性を提供する。(2)アクチュエータシステムは、圧力センサマットからの信号に応じて枕の形状をリアルタイムに変形させることができる。(3)制御用電子機器(Control electronics)及びソフトウェアが反応性枕とモバイルデバイスと間の通信を確立し、ワイヤレスでの継続的なデータ記録を可能にする。
【0056】
本発明は、特定の実施形態に関して説明されてきたが、,当業者に明らかな他の実施形態も本発明の範囲内である。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ規定される。