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特許7661607可変ノズル装置及び可変容量型ターボチャージャ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】可変ノズル装置及び可変容量型ターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
   F01D 17/16 20060101AFI20250407BHJP
   F02B 37/24 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
F01D17/16 A
F02B37/24
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2024502353
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 JP2022007768
(87)【国際公開番号】W WO2023162115
(87)【国際公開日】2023-08-31
【審査請求日】2024-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グプタ ビピン
【審査官】村山 美保
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-096018(JP,A)
【文献】特開2012-077661(JP,A)
【文献】国際公開第2019/167181(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 17/16
F02B 37/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量型ターボチャージャの可変ノズル装置であって、
第1環状部材と、
前記第1環状部材に対向して設けられ、前記ターボチャージャのタービンホイールの外周側に形成されるスクロール流路から前記タービンホイールに排ガスを導くための排ガス流路を前記第1環状部材との間に形成する第2環状部材と、
前記第1環状部材の周方向に間隔を空けて前記排ガス流路に設けられた回動可能な複数の可変ノズルベーンと、
前記第1環状部材と前記第2環状部材との間隔を保持するように前記排ガス流路に設けられたスペーサ部材であって、前記第1環状部材および前記第2環状部材の少なくとも一方に固定されているとともに、前記周方向において隣接する一対の前記可変ノズルベーンの間に配置されたスペーサ部材と、
前記排ガス流路における前記周方向に沿った前記排ガスの流れの下流側を前記周方向における下流側と定義し、前記複数の可変ノズルベーンのうち前記周方向における前記スペーサ部材の下流側に隣り合う前記可変ノズルベーンを下流側可変ノズルベーンと定義すると、前記排ガス流路における前記スペーサ部材と前記下流側可変ノズルベーンとの間の位置に固定された固定ベーンと、
を備える、可変ノズル装置。
【請求項2】
前記固定ベーンの前縁は、前記第1環状部材の径方向における前記スペーサ部材の外側端よりも、前記径方向における外側に位置する、請求項1に記載の可変ノズル装置。
【請求項3】
前記固定ベーンの後縁は、前記第1環状部材の径方向における前記スペーサ部材の内側端によりも、前記径方向における内側に位置する、請求項1又は2に記載の可変ノズル装置。
【請求項4】
前記スペーサ部材は円柱状のサポートピンであり、
前記固定ベーンのベーン長は、前記サポートピンの直径よりも大きい、請求項1乃至3の何れか1項に記載の可変ノズル装置。
【請求項5】
前記固定ベーンのベーン長は、前記可変ノズルベーンのベーン長よりも小さい、請求項1乃至4の何れか1項に記載の可変ノズル装置。
【請求項6】
可変容量型ターボチャージャの可変ノズル装置であって、
第1環状部材と、
前記第1環状部材に対向して設けられ、前記ターボチャージャのタービンホイールの外周側に形成されるスクロール流路から前記タービンホイールに排ガスを導くための排ガス流路を前記第1環状部材との間に形成する第2環状部材と、
前記第1環状部材の周方向に間隔を空けて前記排ガス流路に設けられた回動可能な複数の可変ノズルベーンと、
前記第1環状部材と前記第2環状部材との間隔を保持するように前記排ガス流路に設けられたスペーサ部材と、
前記排ガス流路における前記周方向に沿った前記排ガスの流れの下流側を前記周方向における下流側と定義し、前記複数の可変ノズルベーンのうち前記周方向における前記スペーサ部材の下流側に隣り合う前記可変ノズルベーンを下流側可変ノズルベーンと定義すると、前記排ガス流路における前記スペーサ部材と前記下流側可変ノズルベーンとの間の位置に固定された固定ベーンと、
を備え、
前記スペーサ部材は、前記第1環状部材の径方向において前記可変ノズルベーンの回動中心よりも外側に位置する、可変ノズル装置。
【請求項7】
前記第1環状部材の軸方向に直交する断面において、前記固定ベーンの前縁と前記固定ベーンの後縁との中点は、前記第1環状部材の径方向において、前記可変ノズルベーンの回動中心よりも外側に位置する、請求項1乃至6の何れか1項に記載の可変ノズル装置。
【請求項8】
前記固定ベーンの後縁は、前記第1環状部材の径方向における前記可変ノズルベーンの回動中心よりも外側の位置、又は、前記第1環状部材の径方向における前記可変ノズルベーンの回動中心と同一の位置、に位置する、請求項7に記載の可変ノズル装置。
【請求項9】
前記第1環状部材は、前記可変ノズルベーンを回動可能に支持しており、
前記固定ベーンは、前記第1環状部材における前記排ガス流路側の面から前記第2環状部材側に突出するように設けられた、請求項1乃至8の何れか1項に記載の可変ノズル装置。
【請求項10】
前記第1環状部材は、前記可変ノズルベーンを回動可能に支持しており、
前記固定ベーンは、前記第2環状部材における前記排ガス流路側の面から前記第1環状部材側に突出するように設けられた、請求項1乃至8の何れか1項に記載の可変ノズル装置。
【請求項11】
前記可変ノズル装置は、前記第1環状部材の軸方向において互いに対向するように設けられた一対の前記固定ベーンを含む、請求項1乃至10の何れか1項に記載の可変ノズル装置。
【請求項12】
前記スペーサ部材は、前記第1環状部材と前記第2環状部材のうち一方のみに固定された、請求項1乃至11の何れか1項に記載の可変ノズル装置。
【請求項13】
前記下流側可変ノズルベーンにおける全開時の翼角をα、前記固定ベーンの翼角をβとした場合に、α-45°<β<α+45°を満たす、請求項1乃至12の何れか1項に記載の可変ノズル装置。
【請求項14】
可変容量型ターボチャージャの可変ノズル装置であって、
第1環状部材と、
前記第1環状部材に対向して設けられ、前記ターボチャージャのタービンホイールの外周側に形成されるスクロール流路から前記タービンホイールに排ガスを導くための排ガス流路を前記第1環状部材との間に形成する第2環状部材と、
前記排ガス流路の周方向に間隔を空けて前記排ガス流路に設けられた回動可能な複数の可変ノズルベーンと、
前記第1環状部材と前記第2環状部材との間隔を保持するように前記排ガス流路に設けられたスペーサ部材と、
を備え、
前記スペーサ部材は、前記第1環状部材の径方向において前記可変ノズルベーンの回動中心よりも外側に位置し、前記第1環状部材と前記第2環状部材のうち一方のみに固定され、翼形状を有する、可変ノズル装置。
【請求項15】
請求項1乃至14の何れか1項に記載の可変ノズル装置と、
前記タービンホイールと、
前記タービンホイールを収容するケーシングと、
を備える、可変容量型ターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可変ノズル装置及び可変容量型ターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、可変容量型ターボチャージャの可変ノズル装置が開示されている。この可変ノズル装置は、タービンのスクロール流路からタービンホイールに排ガスを導くための排ガス流路を形成する一対の環状部材と、排ガス流路に設けられた複数の可変ノズルベーンと、一対の環状部材の間隔を保持するためのスペーサ部材とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第10358935号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者の鋭意検討の結果、可変容量型ターボチャージャの可変ノズル装置において、スペーサ部材が複数の可変ノズルベーンの間に配置される場合に、このスペーサ部材の下流側の可変ノズルベーンには、あるノズル開度において負のベーントルク、すなわち可変ノズルベーンを閉じる方向の空力トルクが発生していることが判明した。
【0005】
図9は、スペーサ部材としてのサポートピン015からウェイク(wake)Wが発生している様子を示しており、このウェイクWは、複数の可変ノズルベーン016のうち周方向におけるサポートピン015の下流側に隣り合う可変ノズルベーン016Dの圧力面の静圧を低下させる(図10の上側参照)。これにより、サポートピン015の下流側の可変ノズルベーン016Dでは、可変ノズルベーン016Dを開く方向のトルクが減少し、圧力面の静圧(図10の上側参照)と負圧面の静圧(図10の下側参照)とに基づく全体の空力トルクが負になる。図11では、サポートピンの下流側の可変ノズルベーン016Dの空力トルクがある翼角の範囲において0以下となることが示されている。
【0006】
これらの可変ノズルベーン016Dがアクチュエータの故障時に負の空力トルクにより閉じてしまうと、これにより流れが加速されてタービン回転数の上昇やエンジンのオーバーブーストを引き起こす可能性があるため、エンジンにとって好ましくない。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、スペーサ部材から生じるウェイクの影響を低減可能な可変ノズル装置及びこれを備える可変容量型ターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る可変ノズル装置は、
可変容量型ターボチャージャの可変ノズル装置であって、
第1環状部材と、
前記第1環状部材に対向して設けられ、前記ターボチャージャのタービンホイールの外周側に形成されるスクロール流路から前記タービンホイールに排ガスを導くための排ガス流路を前記第1環状部材との間に形成する第2環状部材と、
前記第1環状部材の周方向に間隔を空けて前記排ガス流路に設けられた回動可能な複数の可変ノズルベーンと、
前記第1環状部材と前記第2環状部材との間隔を保持するように前記排ガス流路に設けられたスペーサ部材と、
前記排ガス流路における前記周方向に沿った前記排ガスの流れの下流側を前記周方向における下流側と定義し、前記複数の可変ノズルベーンのうち前記周方向における前記スペーサ部材の下流側に隣り合う前記可変ノズルベーンを下流側可変ノズルベーンと定義すると、前記排ガス流路における前記スペーサ部材と前記下流側可変ノズルベーンとの間の位置に固定された固定ベーンと、
を備える。
【0009】
上記目的を達成するため、本開示の少なくとも一実施形態に係る可変容量型ターボチャージャは、
上記可変ノズル装置と、
前記タービンホイールと、
前記タービンホイールを収容するケーシングと、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、スペーサ部材から生じるウェイクの影響を低減可能な可変ノズル装置及びこれを備える可変容量型ターボチャージャが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る可変容量型ターボチャージャの回転軸線に沿った断面の一部を示す概略断面図である。
図2図1に示した可変ノズル装置におけるA-A断面(軸方向に直交する断面)の一例を示す概略断面図である。
図3図2に示した可変ノズル装置におけるB-B断面の一例を示す概略断面図である。
図4図2に示した可変ノズル装置におけるB-B断面の他の一例を示す概略断面図である。
図5図2に示した可変ノズル装置におけるB-B断面の更に他の一例を示す概略断面図である。
図6図2に示した可変ノズル装置におけるB-B断面の更に他の一例を示す概略断面図である。
図7】可変ノズル装置の変形例を説明するための概略断面図である。
図8A】スペーサ部材の断面形状の他の一例を示す図である。
図8B】スペーサ部材の断面形状の更に他の一例を示す図である。
図9】ターボチャージャのタービンの内部におけるマッハ数を示す図であり、円柱状のスペーサ部材であるサポートピンからウェイクが発生している様子を示している。
図10】サポートピンの下流側に隣接する可変ノズルベーンにおける圧力面と負圧面の静圧分布を示す図である。
図11】複数の可変ノズルベーンのうちサポートピンの下流側に隣接する可変ノズルベーンとその他の可変ノズルベーンについて、各可変ノズルベーンの回転軸の周りのトルクと翼角との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0013】
(可変容量型ターボチャージャ)
図1は、一実施形態に係る可変容量型ターボチャージャ100の回転軸線Oに沿った断面の一部を示す概略断面図である。以下、可変容量型ターボチャージャ100を単にターボチャージャ100と記載する。
【0014】
ターボチャージャ100は、不図示のコンプレッサと同軸に設けられたタービンホイール2と、タービンホイール2を収容するタービンケーシング4と、タービンホイール2を回転可能に支持する不図示の軸受を収容する軸受ケーシング6と、タービンケーシング4と軸受ケーシング6の間に設けられた可変ノズル装置8とを備えている。
【0015】
タービンケーシング4には、タービンホイール2の外周側にスクロール流路10が形成されており、不図示のエンジンからの排ガスは、スクロール流路10を通った後に可変ノズル装置8を介してタービンホイール2に供給される。
【0016】
(可変ノズル装置)
可変ノズル装置8は、第1環状部材12(ノズルマウント)、第2環状部材14(ノズルプレート)、複数のサポートピン15、複数の可変ノズルベーン16、複数のレバープレート18、ドライブリング20及び複数の固定ベーン22を備えている。
【0017】
第1環状部材12は、タービンホイール2の回転軸線Oを中心としてタービンホイール2の外周側に設けられる環状のプレートであり、複数の可変ノズルベーン16を回動可能に支持する。第1環状部材12には、第1環状部材12の軸方向に貫通する支持穴30(貫通穴)が周方向に間隔を空けて複数形成されており、支持穴30の各々は、可変ノズルベーン16の軸部16aをそれぞれ回動可能に支持している。
【0018】
以下、「軸方向」とは、特記しない限り第1環状部材12の軸方向を意味し、「径方向」とは、特記しない限り第1環状部材12の径方向を意味し、「周方向」とは、特記しない限り第1環状部材12の周方向を意味することとする。なお、第1環状部材12の軸方向は、タービンホイール2の軸方向、第2環状部材14の軸方向及びドライブリング20の軸方向に一致する。第1環状部材12の径方向は、タービンホイール2の径方向、第2環状部材14の径方向及びドライブリング20の径方向に一致する。第1環状部材12の周方向は、タービンホイール2の周方向、第2環状部材14の周方向及びドライブリング20の周方向に一致する。
【0019】
第2環状部材14は、タービンホイール2の回転軸線Oを中心としてタービンホイール2の外周側に設けられる環状のプレートであり、第1環状部材12に対向して設けられる。第2環状部材14は、スクロール流路10からタービンホイール2に排ガスを導くための環状の排ガス流路24を第1環状部材12との間に形成する。
【0020】
複数のサポートピン15は、第1環状部材12と第2環状部材14の間の排ガス流路24に周方向に間隔を空けて設けられる。複数のサポートピン15の各々は、第1環状部材12と第2環状部材14のうち少なくとも一方に固定されている。複数のサポートピン15の各々は、第1環状部材12と第2環状部材14との間隔を保持するためのスペーサ部材として機能する。複数のサポートピン15は同一の形状及び同一の寸法を有していてもよく、以下では、サポートピン15についての説明は、特記しないかぎりサポートピン15の各々についての説明である。
【0021】
複数の可変ノズルベーン16は、第1環状部材12と第2環状部材14の間の排ガス流路24に周方向に間隔を空けて配置される。可変ノズルベーン16の各々は、第1環状部材12の支持穴30に回動可能に支持されている。可変ノズル装置8は、複数の可変ノズルベーン16の翼角を変化させることにより排ガス流路24の流路面積を調節するよう構成されている。複数の可変ノズルベーン16は、同一の形状及び同一の寸法を有していてもよく、以下では、可変ノズルベーン16についての説明は、特記しないかぎり可変ノズルベーン16の各々についての説明である。
【0022】
かかる可変ノズル装置8では、不図示のアクチュエータから伝達される駆動力によってドライブリング20が回転駆動される。ドライブリング20が回動すると、ドライブリング20に係合しているレバープレート18が可変ノズルベーン16の軸部16aを回動させ、その結果、可変ノズルベーン16が回動して可変ノズルベーン16の翼角が変化する。
【0023】
図2は、図1に示した可変ノズル装置8におけるA-A断面(軸方向に直交する断面)の一例を示す概略断面図である。
【0024】
図2に示す例では、複数のサポートピン15は、3つのサポートピン15からなり、周方向に120度間隔で配置されている。サポートピン15の各々は、径方向において可変ノズルベーン16の各々の回動中心Cよりも外側に位置する。
【0025】
ここで、図2に示すように、排ガス流路24における周方向に沿った排ガスの流れの下流側(タービンホイール2の回転方向rにおける下流側)を周方向における下流側と定義し、複数の可変ノズルベーン16のうち周方向におけるサポートピン15の下流側に隣り合う可変ノズルベーン16を下流側可変ノズルベーン16Dと定義すると、固定ベーン22は、排ガス流路24におけるサポートピン15と下流側可変ノズルベーン16Dとの間の位置に固定される。
【0026】
図2に示す例では、複数の固定ベーン22は、3つの固定ベーン22からなり、周方向に120度間隔で配置される。複数の固定ベーン22は、複数のサポートピン15にそれぞれ対応するように、排ガス流路24におけるサポートピン15と下流側可変ノズルベーン16Dとの間の位置に固定される。複数の固定ベーン22は、同一の形状、同一の寸法及び同一の翼角を有していてもよく、以下では、固定ベーン22についての説明は、特記しないかぎり固定ベーン22の各々についての説明である。
【0027】
図2に示す例では、固定ベーン22のベーン長L1は、サポートピン15の直径Dよりも大きく、固定ベーン22の前縁22LEは、径方向におけるサポートピン15の外側端15eよりも径方向における外側に位置し、固定ベーン22の後縁22TEは、径方向におけるサポートピン15の内側端15iよりも径方向における内側に位置する。
【0028】
また、固定ベーン22のベーン長L1は、可変ノズルベーン16のベーン長L0よりも小さい。なお、固定ベーン22のベーン長L1とは、固定ベーン22における前縁22LEと後縁22TEとの距離であり、可変ノズルベーン16のベーン長L0とは、可変ノズルベーン16における前縁16LEと後縁16TEとの距離である。
【0029】
また、図2に示す断面において、固定ベーン22の前縁22LEと固定ベーン22の後縁22TEとの中点Mは、径方向において可変ノズルベーン16の回動中心Cよりも外側に位置する。また、図2に示す断面において、固定ベーン22の後縁22TEは、径方向における可変ノズルベーン16の回動中心Cよりも外側の位置、又は、径方向における可変ノズルベーンの回動中心Cと同一の位置に位置する。
【0030】
なお、固定ベーン22の翼角を小さくし過ぎると、固定ベーン22と下流側可変ノズルベーン16Dとの間隔によっては、下流側可変ノズルベーン16Dの回動時に下流側可変ノズルベーン16Dの前縁16LEと固定ベーン22とが干渉する場合があり、固定ベーン22の翼角を大きくしすぎると固定ベーン22自体からウェイクが発生する恐れがある。このため、下流側可変ノズルベーン16Dの回動時における下流側可変ノズルベーン16Dの前縁16LEと固定ベーン22との干渉を回避しつつ固定ベーン22自体からのウェイクの発生を抑制する観点から、下流側可変ノズルベーン16Dにおける全開時(開度が最大である時)の翼角をα、固定ベーン22の翼角をβとした場合に、α-45°<β<α+45°を満たすことが好ましく、α-30°<β<α+30°を満たすことがより好ましく、α-15°<β<α+15°を満たすことがより好ましい。なお、翼角とは、対象とする翼における前縁と後縁を結ぶ直線が前縁の位置における周方向の接線方向に対してなす角度である。
【0031】
以下、図2に示す構成が奏する効果について説明する。
上記可変ノズル装置8によれば、サポートピン15と下流側可変ノズルベーン16Dとの間の位置に固定ベーン22を設けることにより、サポートピン15から発生したウェイクが下流側可変ノズルベーン16Dに到達することを固定ベーン22によって抑制することができる。これにより、ウェイクの影響を低減し、下流側可変ノズルベーン16Dに作用するトルクの方向が下流側可変ノズルベーン16Dを開く方向から下流側可変ノズルベーン16Dを閉じる方向に反転することを抑制することができる。したがって、複数の可変ノズルベーン16を回動させるための不図示のアクチュエータの故障時等において、下流側可変ノズルベーン16Dが閉じてしまうことを抑制し、タービン回転数(タービンホイール2の回転数)の過度の上昇や不図示のエンジンのオーバーブースト等が生じるリスクを低減することができる。
【0032】
また、固定ベーン22の前縁縁22LEが径方向におけるサポートピン15の外側端15eよりも径方向における外側に位置し、固定ベーン22の後縁22TEが径方向におけるサポートピン15の内側端15iよりも径方向における内側に位置するため、サポートピン15から発生したウェイクが下流側可変ノズルベーン16Dに到達することを効果的に抑制することができる。
【0033】
また、固定ベーン22のベーン長L1がサポートピン15の直径Dよりも大きいため、サポートピン15から発生したウェイクが下流側可変ノズルベーン16Dに到達することを効果的に抑制することができる。
【0034】
また、固定ベーン22のベーン長L1が可変ノズルベーン16のベーン長L0よりも小さいため、固定ベーン22に起因する排ガス流路24の流路抵抗の増大を抑制しつつ、サポートピン15から発生したウェイクがサポートピン15の下流側の下流側可変ノズルベーン16Dに到達することを固定ベーン22によって抑制することができる。
【0035】
また、サポートピン15が径方向において可変ノズルベーン16の回動中心Cよりも外側に位置するため、サポートピン15が可変ノズルベーン16の回動中心Cよりも径方向における内側に位置する場合と比較して、サポートピン15が排ガス流路24の流れに与える影響がタービンホイール2に及ぶことを抑制し、タービン効率の低下を抑制することができる。
【0036】
また、軸方向に直交する上記A-A断面において、固定ベーン22の前縁22LEと固定ベーン22の後縁22TEとの中点Mは、径方向において可変ノズルベーン16の回動中心Cよりも外側に位置する。このため、上記中点Mが径方向における可変ノズルベーン16の回動中心Cよりも内側に位置する場合と比較して、固定ベーン22が排ガス流路24の流れに与える影響がタービンホイール2に及ぶことを抑制し、タービン効率の低下を抑制することができる。
【0037】
また、固定ベーン22の後縁22TEは、第1環状部材12の径方向における可変ノズルベーン16の回動中心Cよりも外側の位置、又は、第1環状部材12の径方向における可変ノズルベーン16の回動中心Cと同一の位置に位置する。このため、固定ベーン22の後縁22TEを可変ノズルベーン16の回動中心Cよりも径方向における内側に配置する場合よりも、固定ベーン22が排ガス流路24の流れに与える影響がタービンホイール2に及ぶことを抑制することができ、タービン効率の低下を抑制することができる。
【0038】
図3は、図2に示した可変ノズル装置8におけるB-B断面の一例を示す概略断面図である。
幾つかの実施形態では、例えば図3に示すように、固定ベーン22は、第1環状部材12における排ガス流路24側の面12a(第1環状部材12における第2環状部材14に対向する面)から第2環状部材14側に突出するように、第1環状部材12と一体的に設けられてもよい。
【0039】
図3に示す例では、サポートピン15の一端側は、第1環状部材12に形成された貫通穴36に挿通されており、貫通穴36に圧入等により固定されることにより第1環状部材12に固定されている。サポートピン15の他端側は、第2環状部材14に形成された貫通穴38に挿通されており、貫通穴38に圧入等により固定されることにより第2環状部材14に固定されている。サポートピン15は、第1環状部材12に軸方向に当接する円柱状の当接部15aと、第2環状部材14に軸方向に当接する円柱状の当接部15bと、当接部15aと当接部15bとを接続する円柱状の本体部15cとを含む。本体部15cの直径は当接部15aの直径及び当接部15bの直径の各々よりも小さい。また、軸方向における固定ベーン22の高さH1及び軸方向における可変ノズルベーン16の高さH2の各々は、軸方向における本体部15cの長さH3よりも長い。なお、図2に示したサポートピン15の直径Dとは、図3に示す例では本体部15cの直径を意味する。
【0040】
図3に示す構成によれば、サポートピン15から発生したウェイクが下流側可変ノズルベーン16Dに到達することを、第1環状部材12から突出する固定ベーン22によって抑制することができる。また、固定ベーン22を第1環状部材12と第2環状部材14のうち第1環状部材12のみに設けることにより、後述する図5に示す構成よりも固定ベーン22の寸法精度の観点において寸法管理が容易である。
【0041】
図4は、図2に示した可変ノズル装置8におけるB-B断面の他の一例を示す概略断面図である。図4に示す構成において、図3に示した構成と共通の符号は、特記しない限り図3に示した構成と同様の構成を示すものとし、説明を省略する。
【0042】
幾つかの実施形態では、例えば図4に示すように、固定ベーン22は、第2環状部材14における排ガス流路24側の面14a(第2環状部材14における第1環状部材12に対向する面)から第1環状部材12側に突出するように、第2環状部材14と一体的に設けられてもよい。
【0043】
図4に示す構成によれば、サポートピン15から発生したウェイクが下流側可変ノズルベーン16Dに到達することを、第2環状部材14から突出する固定ベーン22によって抑制することができる。また、固定ベーン22を第1環状部材12と第2環状部材14のうち第2環状部材14のみに設けることにより、後述する図5に示す構成よりも固定ベーン22の寸法精度の観点において寸法管理が容易である。
【0044】
図5は、図2に示した可変ノズル装置8におけるB-B断面の更に他の一例を示す概略断面図である。図5に示す構成において、図3に示した構成と共通の符号は、特記しない限り図3に示した構成と同様の構成を示すものとし、説明を省略する。
【0045】
幾つかの実施形態では、例えば図5に示すように、可変ノズル装置8は、軸方向において互いに対向するように設けられた一対の固定ベーン22a,22bを含む。この場合、固定ベーン22aは、第1環状部材12における排ガス流路24側の面12aから第2環状部材14側に突出するように、第1環状部材12と一体的に設けられ、固定ベーン22bは、第2環状部材14における排ガス流路24側の面14aから第1環状部材12側に突出するように、第2環状部材14と一体的に設けられる。軸方向における固定ベーン22aの高さH1aと軸方向における固定ベーン22bの高さH1bの合計(H1a+H1b)は、軸方向における本体部15cの長さH3よりも大きい。
【0046】
図5に示す構成によれば、サポートピン15から発生したウェイクが下流側可変ノズルベーン16Dに到達することを、第1環状部材12及び第2環状部材14からそれぞれ突出する固定ベーン22a及び固定ベーン22bによって抑制することができる。
【0047】
図6は、図2に示した可変ノズル装置8におけるB-B断面の更に他の一例を示す概略断面図である。図6に示す構成において、図3に示した構成と共通の符号は、特記しない限り図3に示した構成と同様の構成を示すものとし、説明を省略する。
【0048】
幾つかの実施形態では、例えば図6に示すように、サポートピン15は、第1環状部材12と第2環状部材14のうち一方のみに固定されていてもよい。図6に示す例では、サポートピン15の一端側は、第1環状部材12に形成された貫通穴36に挿通されており、貫通穴36に圧入等により固定されることにより第1環状部材12に固定されている。サポートピン15の他端側は、第2環状部材14に固定されていない。この場合、第2環状部材14は、タービンハウジング4に支持(固定)されていてもよい。
【0049】
図6に示す構成によれば、第1環状部材12と第2環状部材14の両方にサポートピン15が固定される場合と比較して、サポートピン15における熱変形時の歪みを軽減することができる。その結果、サポートピン15の厚みを小さくすることができ、サポートピン15から生じるウェイクのサイズを低減することができる。なお、ポートピン15は第1環状部材12と第2環状部材14のうち第2環状部材14のみに固定されてもよい。
【0050】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0051】
例えば、幾つかの実施形態では、例えば図7に示すように、可変ノズル装置8は、上述の固定ベーン22を備えていなくてもよい。図7に示す構成において、図3に示した構成と共通の符号は、特記しない限り図3に示した構成と同様の構成を示すものとし、説明を省略する。
【0052】
図7に示す例では、サポートピン15の一端側は、第1環状部材12に形成された貫通穴36に挿通されており、貫通穴36に圧入等により固定されることにより第1環状部材12に固定されている。サポートピン15の他端側は、第2環状部材14に固定されていない。この場合、第2環状部材14は、タービンハウジング4に支持(固定)されていてもよい。
【0053】
このように、第1環状部材12と第2環状部材14のうち一方のみにサポートピン15が固定されることにより、第1環状部材12と第2環状部材14の両方にサポートピン15が固定される場合と比較して、サポートピン15における熱変形時の歪みを軽減することができる。その結果、サポートピン15の厚みを小さくすることができ、サポートピン15から生じるウェイクのサイズを低減することができる。
【0054】
また、上述した幾つかの実施形態では第1環状部材と第2環状部材との間隔を保持するように排ガス流路に設けられたスペーサ部材の例として、サポートピンを例示したが、スペーサ部材の形状はサポートピンのような円柱形状に限らない。スペーサ部材がウェイクを生じる形状であれば、本開示に係る固定ベーンを設けることにより、ウェイクが下流側可変ノズルベーンに与える影響を低減することができる。例えば、図7に示した例では、第1環状部材12と第2環状部材14のうち一方のみにスペーサ部材としてのサポートピン15が固定されることにより、サポートピン15の厚みを上述のように小さくすることができるため、サポートピン15を翼形状としてもよい。これにより、サポートピン15から生じるウェイクのサイズを低減することができる。この場合、翼形状は、例えば図8Aに示すように軸方向に直交する断面形状が直線に沿った形状であってもよいし、図8Bに示すように曲線に沿って湾曲した形状であってもよい。
【0055】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0056】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る可変ノズル装置は、
可変容量型ターボチャージャ(例えば上述の可変容量型ターボチャージャ100)の可変ノズル装置(例えば上述の可変ノズル装置8)であって、
第1環状部材(例えば上述の第1環状部材12)と、
前記第1環状部材に対向して設けられ、前記ターボチャージャのタービンホイール(例えば上述のタービンホイール2)の外周側に形成されるスクロール流路(例えば上述のスクロール流路10)から前記タービンホイールに排ガスを導くための排ガス流路(例えば上述の排ガス流路24)を前記第1環状部材との間に形成する第2環状部材(例えば上述の第2環状部材14)と、
前記第1環状部材の周方向に間隔を空けて前記排ガス流路に設けられた回動可能な複数の可変ノズルベーン(例えば上述の複数の可変ノズルベーン16)と、
前記第1環状部材と前記第2環状部材との間隔を保持するように前記排ガス流路に設けられたスペーサ部材(例えば上述のサポートピン15)と、
前記排ガス流路における前記周方向に沿った前記排ガスの流れの下流側を前記周方向における下流側と定義し、前記複数の可変ノズルベーンのうち前記周方向における前記スペーサ部材の下流側に隣り合う前記可変ノズルベーンを下流側可変ノズルベーン(例えば上述の下流側可変ノズルベーン16D)と定義すると、前記排ガス流路における前記スペーサ部材と前記下流側可変ノズルベーンとの間の位置に固定された固定ベーン(例えば上述の固定ベーン22)と、
を備える。
【0057】
上記(1)に記載の可変ノズル装置によれば、スペーサ部材と下流側可変ノズルベーンとの間の位置に固定ベーンを設けることにより、スペーサ部材から発生したウェイクが下流側可変ノズルベーンに到達することを固定ベーンによって抑制することができる。これにより、ウェイクの影響を低減し、下流側可変ノズルベーンに作用するトルクの方向が開方向から閉方向に反転することを抑制することができる。したがって、可変ノズルベーンを回動させるためのアクチュエータの故障時等に可変ノズルベーンが閉じてしまうことを抑制し、タービン回転数の過度の上昇やエンジンのオーバーブースト等が生じるリスクを低減することができる。
【0058】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)に記載の可変ノズル装置において、
前記固定ベーンの前縁(例えば上述の前縁22LE)は、前記第1環状部材の径方向における前記スペーサ部材の外側端(例えば上述の外側端15e)よりも、前記径方向における外側に位置する。
【0059】
上記(2)に記載の可変ノズル装置によれば、スペーサ部材から発生したウェイクが下流側可変ノズルベーンに到達することを効果的に抑制することができる。
【0060】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)に記載の可変ノズル装置において、
前記固定ベーンの後縁(例えば上述の後縁22TE)は、前記第1環状部材の径方向における前記スペーサ部材の内側端(例えば上述の内側端15i)によりも、前記径方向における内側に位置する。
【0061】
上記(3)に記載の可変ノズル装置によれば、スペーサ部材から発生したウェイクが下流側可変ノズルベーンに到達することを効果的に抑制することができる。
【0062】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかに記載の可変ノズル装置において、
前記スペーサ部材は円柱状のサポートピン(例えば上述のサポートピン15)であり、
前記固定ベーンのベーン長(例えば上述のベーン長L1)は、前記サポートピンの直径(例えば上述の直径D)よりも大きい。
【0063】
上記(4)に記載の可変ノズル装置によれば、スペーサ部材から発生したウェイクが下流側可変ノズルベーンに到達することを効果的に抑制することができる。
【0064】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかに記載の可変ノズル装置において、
前記固定ベーンのベーン長(例えば上述のベーン長L1)は、前記可変ノズルベーンのベーン長(例えば上述のベーン長L0)よりも小さい。
【0065】
上記(5)に記載の可変ノズル装置によれば、スペーサ部材から発生したウェイクがスペーサ部材の下流側の下流側可変ノズルベーンに到達することを固定ベーンによって抑制しつつ、固定ベーンに起因する排ガス流路の流路抵抗の増大を抑制することができる。
【0066】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかに記載の可変ノズル装置において、
前記スペーサ部材は、前記第1環状部材の径方向において前記可変ノズルベーンの回動中心(例えば上述の回動中心C)よりも外側に位置する。
【0067】
上記(6)に記載の可変ノズル装置によれば、スペーサ部材が可変ノズルベーンの回動中心よりも径方向における内側に位置する場合と比較して、スペーサ部材が排ガス流路の流れに与える影響がタービンホイールに及ぶことを抑制し、タービン効率の低下を抑制することができる。
【0068】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかに記載の可変ノズル装置において、
前記第1環状部材の軸方向に直交する断面(例えば上述のA-A断面)において、前記固定ベーンの前縁と前記固定ベーンの後縁との中点(例えば上述の中点M)は、前記第1環状部材の径方向において、前記可変ノズルベーンの回動中心(例えば上述の回動中心C)よりも外側に位置する。
【0069】
上記(7)に記載の可変ノズル装置によれば、上記中点の位置が径方向における可変ノズルベーンの回動中心よりも内側に位置する場合と比較して、固定ベーンが排ガス流路の流れに与える影響がタービンホイールに及ぶことを抑制することができる。
【0070】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかに記載の可変ノズル装置において、
前記固定ベーンの後縁(例えば上述の後縁22TE)は、前記第1環状部材の径方向における前記可変ノズルベーンの回動中心(例えば上述の回動中心C)よりも外側の位置、又は、前記第1環状部材の径方向における前記可変ノズルベーンの回動中心と同一の位置、に位置する。
【0071】
上記(8)に記載の可変ノズル装置によれば、固定ベーンの後縁を可変ノズルベーンの回動中心よりも径方向における内側に配置する場合よりも、固定ベーンが排ガス流路の流れに与える影響がタービンホイールに及ぶことを抑制することができる。
【0072】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかに記載の可変ノズル装置において、
前記第1環状部材は、前記可変ノズルベーンを回動可能に支持しており、
前記固定ベーンは、前記第1環状部材における前記排ガス流路側の面(例えば上述の面12a)から前記第2環状部材側に突出するように設けられる。
【0073】
上記(9)に記載の可変ノズル装置によれば、スペーサ部材から発生したウェイクが下流側可変ノズルベーンに到達することを、第1環状部材から突出する固定ベーンによって抑制することができる。また、固定ベーンを第1環状部材と第2環状部材のうち第1環状部材のみに設ける場合には、下記(11)に記載の構成よりも固定ベーンの寸法精度の観点において寸法管理が容易である。
【0074】
(10)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかに記載の可変ノズル装置において、
前記第1環状部材は、前記可変ノズルベーンを回動可能に支持しており、
前記固定ベーンは、前記第2環状部材における前記排ガス流路側の面(例えば上述の面14a)から前記第1環状部材側に突出するように設けられる。
【0075】
上記(10)に記載の可変ノズル装置によれば、スペーサ部材から発生したウェイクが下流側可変ノズルベーンに到達することを、第2環状部材から突出する固定ベーンによって抑制することができる。また、固定ベーンを第1環状部材と第2環状部材のうち第2環状部材のみに設ける場合には、下記(11)に記載の構成よりも固定ベーンの寸法精度の観点において寸法管理が容易である。
【0076】
(11)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(10)の何れかに記載の可変ノズル装置において、
前記可変ノズル装置は、前記第1環状部材の軸方向において互いに対向するように設けられた一対の前記固定ベーン(例えば上述の一対の固定ベーン22a,22b)を含む。
【0077】
上記(11)に記載の可変ノズル装置によれば、スペーサ部材から発生したウェイクが下流側可変ノズルベーンに到達することを、第1環状部材と第2環状部材の各々から突出する固定ベーンによって抑制することができる。
【0078】
(12)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(11)の何れかに記載の可変ノズル装置において、
前記スペーサ部材は、前記第1環状部材と前記第2環状部材のうち一方のみに固定される。
【0079】
上記(12)に記載の可変ノズル装置によれば、第1環状部材と第2環状部材の両方にスペーサ部材が固定される場合と比較して、スペーサ部材における熱変形時の歪みを軽減することができる。その結果、スペーサ部材の厚みを小さくすることができ、スペーサ部材から生じるウェイクのサイズを低減することができる。
【0080】
(13)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(12)の何れかに記載の可変ノズル装置において、
前記下流側可変ノズルベーンにおける全開時の翼角をα、前記固定ベーンの翼角をβとした場合に、α-45°<β<α+45°を満たす。
【0081】
上記(12)に記載の可変ノズル装置によれば、下流側可変ノズルベーンの回動時における下流側可変ノズルベーンの前縁と固定ベーンとの干渉を回避しつつ固定ベーン自体からのウェイクの発生を抑制することができる。
【0082】
(14)本開示の少なくとも一実施形態に係る可変ノズル装置は、
可変容量型ターボチャージャ(例えば上述の可変容量型ターボチャージャ100)の可変ノズル装置(例えば上述の可変ノズル装置8)であって、
第1環状部材(例えば上述の第1環状部材12)と、
前記第1環状部材に対向して設けられ、前記ターボチャージャのタービンホイール(例えば上述のタービンホイール2)の外周側に形成されるスクロール流路(例えば上述のスクロール流路10)から前記タービンホイールに排ガスを導くための排ガス流路(例えば上述の排ガス流路24)を前記第1環状部材との間に形成する第2環状部材(例えば上述の第2環状部材14)と、
前記排ガス流路の周方向に間隔を空けて前記排ガス流路に設けられた回動可能な複数の可変ノズルベーン(例えば上述の複数の可変ノズルベーン16)と、
前記第1環状部材と前記第2環状部材との間隔を保持するように前記排ガス流路に設けられたスペーサ部材(例えば上述のサポートピン15)と、
を備え、
前記スペーサ部材は、前記第1環状部材の径方向において前記可変ノズルベーンの回動中心(例えば上述の回動中心C)よりも外側に位置し、前記第1環状部材と前記第2環状部材のうち一方のみに固定され、翼形状を有する。
【0083】
上記(14)に記載の可変ノズル装置によれば、スペーサ部材が可変ノズルベーンの回動中心よりも径方向における内側に位置する場合と比較して、スペーサ部材が排ガス流路の流れに与える影響がタービンホイールに及ぶことを抑制することができる。また、第1環状部材と第2環状部材の両方にスペーサ部材が固定される場合と比較して、スペーサ部材における熱変形時の歪みを軽減することができる。その結果、スペーサ部材の厚みを小さくすることができ、スペーサ部材から生じるウェイクのサイズを低減することができる。また、スペーサ部材が翼形状を有することにより、スペーサ部材から生じるウェイクのサイズを効果的に低減することができる。
【0084】
(15)本開示の少なくとも一実施形態に係る可変容量型ターボチャージャは、
上記(1)乃至(14)の何れかに記載の可変ノズル装置と、
前記タービンホイールと、
前記タービンホイールを収容するケーシング(例えば上述のタービンケーシング4)と、
を備える。
【0085】
上記(15)に記載の可変ノズル装置によれば、上記(1)乃至(14)の何れかに記載の可変ノズル装置を備えるため、スペーサ部材から発生したウェイクが下流側可変ノズルベーンに到達することを固定ベーンによって抑制することができる。これにより、ウェイクの影響を低減し、下流側可変ノズルベーンに作用するトルクの方向が開方向から閉方向に反転することを抑制することができる。したがって、可変ノズルベーンを回動させるためのアクチュエータの故障時等に可変ノズルベーンが閉じてしまうことを抑制し、タービン回転数の過度の上昇やエンジンのオーバーブースト等が生じるリスクを低減することができる。
【符号の説明】
【0086】
2 タービンホイール
4 タービンケーシング
6 軸受ケーシング
8 可変ノズル装置
10 スクロール流路
12 第1環状部材
12a 排ガス流路側の面
14 第2環状部材
14a 排ガス流路側の面
15 サポートピン
15a,15b 当接部
15c 本体部
15e 外側端
15i 内側端
16 可変ノズルベーン
16a 軸部
16LE 前縁
16TE 後縁
16D 下流側可変ノズルベーン
18 レバープレート
20 ドライブリング
22,22a,22b 固定ベーン
22LE 前縁
22TE 後縁
24 排ガス流路
30 支持穴
36,38 貫通穴
100 可変容量型ターボチャージャ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11