(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】予測装置、予測方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06N 7/00 20230101AFI20250407BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20250407BHJP
【FI】
G06N7/00
G06N20/00
(21)【出願番号】P 2024547192
(86)(22)【出願日】2024-03-11
(86)【国際出願番号】 JP2024009208
【審査請求日】2024-08-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 翼
【審査官】福西 章人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0218925(US,A1)
【文献】国際公開第2012/157040(WO,A1)
【文献】特開2023-170003(JP,A)
【文献】特開2019-091304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
G06F 18/00-18/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間経過によって評価が変化する対象物に対する前記評価の推移を予測する予測装置であって、
前記対象物の前記評価が継続する確率を示す確率分布を取得する制御を行う取得制御部と、
取得された前記確率分布に基づいて前記対象物の前記評価の推移を予測する予測部と、
を備え
、
前記評価の前記推移が、経過時間に対する前記対象物の前記評価が継続する確率である
ことを特徴とする予測装置。
【請求項2】
時間経過によって評価が変化する対象物に対する前記評価の推移を予測する予測装置であって、
前記対象物の前記評価が継続する確率を示す確率分布を取得する制御を行う取得制御部と、
取得された前記確率分布に基づいて前記対象物の前記評価の推移を予測する予測部と、
を備え
、
前記評価が3値以上の異なる値をもつ
ことを特徴とする予測装置。
【請求項3】
前記予測部は、前記確率分布に基づいて前記対象物の前記評価の推移のシミュレーションを行い、前記シミュレーションの結果に基づいて前記対象物の前記評価の推移を予測する
ことを特徴とする請求項1
または請求項
2に記載の予測装置。
【請求項4】
前記予測部は、前記確率分布に基づいて乱数を生成し、前記乱数により前記シミュレーションを行う
ことを特徴とする請求項
3に記載の予測装置。
【請求項5】
前記評価は、前記対象物が健全である度合いを示す健全度である
ことを特徴とする請求項1
または請求項
2に記載の予測装置。
【請求項6】
前記確率分布を生成する生成部を備える
ことを特徴とする請求項1
または請求項
2に記載の予測装置。
【請求項7】
前記生成部は、前記対象物に対する点検作業履歴に基づいて前記確率分布を生成する
ことを特徴とする請求項
6に記載の予測装置。
【請求項8】
前記生成部は、前記対象物に対する限界試験結果に基づいて前記確率分布を生成する
ことを特徴とする請求項
6に記載の予測装置。
【請求項9】
前記予測部は、前記確率分布と、取得した前記対象物の前記評価とに基づいて、前記対象物の前記評価の推移を予測する
ことを特徴とする請求項1
または請求項
2に記載の予測装置。
【請求項10】
前記予測部は、前記確率分布と、取得した前記対象物の前記評価とに基づいて、前記対象物の前記評価の推移のシミュレーションを行い、前記シミュレーションの結果に基づいて前記対象物の前記評価の推移を予測する
ことを特徴とする請求項
9に記載の予測装置。
【請求項11】
前記予測部は、前記確率分布に基づいて行われた前記シミュレーションの結果を、取得した前記対象物の前記評価を用いて補正する
ことを特徴とする請求項
10に記載の予測装置。
【請求項12】
前記予測部は、前記評価の推移の予測結果を時間ごとに集計し、時間ごとの前記集計の結果を用いて、時間ごとの前記評価に至る確率を算出する
ことを特徴とする請求項1
または請求項
2に記載の予測装置。
【請求項13】
前記予測部は、時間ごとの前記評価に至る確率に基づいて、時間ごとの前記対象物のリスクに関するリスク評価を行う
ことを特徴とする請求項
12に記載の予測装置。
【請求項14】
時間経過によって評価が変化する対象物に対する前記評価の推移を予測する予測装置が実行する予測方法であって、
取得制御部が、前記対象物の前記評価が継続する確率を示す確率分布を取得する制御を行うステップと、
予測部が、取得された前記確率分布に基づいて前記対象物の前記評価の推移を予測するステップと、
を備え
、
前記評価の前記推移が、経過時間に対する前記対象物の前記評価が継続する確率である
ことを特徴とする予測方法。
【請求項15】
時間経過によって評価が変化する対象物に対する前記評価の推移を予測する予測装置が実行する予測方法であって、
取得制御部が、前記対象物の前記評価が継続する確率を示す確率分布を取得する制御を行うステップと、
予測部が、取得された前記確率分布に基づいて前記対象物の前記評価の推移を予測するステップと、
を備え、
前記評価が3値以上の異なる値をもつ
ことを特徴とする予測方法。
【請求項16】
コンピュータを、時間経過によって評価が変化する対象物に対する前記評価の推移を予測する予測装置として機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記対象物の前記評価が継続する確率を示す確率分布を取得する制御を行う取得制御部、および、
取得された前記確率分布に基づいて前記対象物の前記評価の推移を予測する予測部、として機能さ
せ、
前記評価の前記推移が、経過時間に対する前記対象物の前記評価が継続する確率である
ことを特徴とするプログラム。
【請求項17】
コンピュータを、時間経過によって評価が変化する対象物に対する前記評価の推移を予測する予測装置として機能させるプログラムであって、
前記コンピュータを、
前記対象物の前記評価が継続する確率を示す確率分布を取得する制御を行う取得制御部、および、
取得された前記確率分布に基づいて前記対象物の前記評価の推移を予測する予測部、として機能させ、
前記評価が3値以上の異なる値をもつ
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、予測装置、予測方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インフラ設備等の対象物のアセットマネジメントでは、対象物の寿命全体に渡る管理が要求される。これには、対象物のライフサイクルの各段階で適切な管理が行うことが重要であり、保全コストを最小化するためには、適切なタイミングで対象物の補修または交換を行う必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、機器の健全性を左右する部品の寿命特性を示す限界試験結果を参照して部品の余寿命を予測して、部品の余寿命と、機器寿命と、コスト情報とから、保全計画に基づいて機器の信頼性を担保しつつ保全コストが最小化される交換部品を選択する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載される従来の技術では、限界試験結果を参照して部品の余寿命を予測するので、限界試験結果と部品の健全性の実績値との間の乖離が大きい場合、予測精度が低下するという課題があった。例えば、限界試験結果を参照しても対象物の劣化の傾向は把握できるが、対象物の状態変化を把握できないので、対象物の健全性の予測精度が十分ではない。
【0006】
本開示は上記課題を解決するものであって、対象物の余寿命の予測に有用な情報を提供できる予測装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る予測装置は、時間経過によって評価が変化する対象物に対する評価の推移を予測する予測装置であって、対象物の評価が継続する確率を示す確率分布を取得する制御を行う取得制御部と、取得された確率分布に基づいて対象物の評価の推移を予測する予測部と、を備え、評価の推移が、経過時間に対する対象物の評価が継続する確率である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、対象物の評価が継続する確率を示す確率分布を取得し、取得した確率分布に基づいて対象物の評価の推移を予測する。これにより、本開示に係る予測装置は、対象物の評価の推移の予測結果という、対象物の余寿命の予測に有用な情報を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1に係る予測装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る予測方法を示すフローチャートである。
【
図3】実施の形態1に係る予測装置が備える予測部の構成例を示すブロック図である。
【
図5】対象物の健全度推移のシミュレーション結果を示す図である。
【
図6】
図6Aおよび
図6Bは、実施の形態1における対象物の健全度推移予測結果を示す図である。
【
図7】実施の形態1に係る予測装置の機能を実現するハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図8】実施の形態2に係る予測装置の構成例を示すブロック図である。
【
図9】実施の形態2に係る予測装置が備える生成部の構成例を示すブロック図である。
【
図10】実施の形態2に係る確率分布生成処理を示すフローチャートである。
【
図11】対象物の健全度継続時間と確率分布との関係を示す図である。
【
図12】実施の形態3に係る予測装置の構成例を示すブロック図である。
【
図13】実施の形態3に係る予測装置が備える予測部の構成例を示すブロック図である。
【
図14】実施の形態3に係る予測方法を示すフローチャートである。
【
図15】対象物の健全度推移のシミュレーション結果補正処理の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る予測装置1の構成例を示すブロック図である。
図1において、予測装置1は、時間の経過によって変化する対象物の評価の推移を予測する装置であって、対象物の評価が継続する確率を示す確率分布を取得し、取得された確率分布に基づいて対象物の評価の推移を予測する。例えば、予測装置1は、ネットワークを介して外部装置から確率分布を取得する。また、予測装置1は、確率分布の生成に必要な情報を取得し、取得した情報に基づいて確率分布を生成してもよい。さらに、予測装置1は、対象物の評価の推移の予測結果に基づいて対象物の余寿命を予測する。また、予測装置1が予測結果の情報を外部装置に出力することにより、外部装置が、予測結果の情報に基づいて、対象物の余寿命を予測してもよい。
【0011】
予測装置1は、有線または無線を介して表示装置2と接続された装置であってもよい。表示装置2は、予測装置1から出力された情報を表示する。例えば、表示装置2は、対象物の評価の推移の予測結果および対象物の余寿命を示す情報を、予測装置1から取得して表示する。表示装置2に表示された対象物の評価の推移の予測結果および対象物の余寿命を参照することにより、点検作業者は、保全コストが最小化されるタイミングで対象物の補修または交換を行うことができる。なお、表示装置2は、予測装置1が備える表示部であってもよいし、ネットワークを介して予測装置1と通信接続された端末が備える表示部であってもよい。
【0012】
(対象物の概要)
対象物は、保全管理が可能なものであればよい。対象物には、機械および機械部品、電気および電子機器、輸送機器、建築物およびインフラ設備、エネルギー設備、医療機器、および、環境設備が含まれ得る。
機械および機械部品には、例えば、機械の部品または装置、機械的なシステム等、製造業または工業分野において使用される機械がある。これには、モータ、ポンプ、ベアリング、ギア、またはバルブ等の部品も含まれる。電気および電子機器には、例えば、電気機器または電子機器、制御装置、センサ、回路等がある。これには、コンピュータ、制御パネル、または通信機器等も含まれる。輸送機器には、自動車、トラック、列車、船舶、航空機等の輸送機器がある。また、これらの機器には、車両が備える、エンジン、タイヤ、ブレーキ、サスペンションまたは航空機の機体も含まれる。
【0013】
建築物およびインフラ設備には、例えば、建物または施設、道路、橋、ダム等のインフラ構造物がある。これらの構造物は、建築材料または構造部材の劣化または老朽化による影響も強く受ける。エネルギー設備には、例えば、発電所、送電線および変電所等のエネルギー設備がある。これらの設備は、機械部品、電気機器、制御システム等から構成されており、寿命管理が重要である。
【0014】
医療機器には、例えば、機器に加え、医療設備および医療用具等がある。例えば、X線装置、MRIスキャナ、人工関節または手術用具等も含まれる。環境設備には、例えば、水処理プラント、廃棄物処理施設、または、排水設備等がある。これらの設備には、機械部品、電気機器、化学薬品等も含まれる。
【0015】
(評価の概要)
対象物の評価は、時間経過によって変化する評価であり、対象物の状態を評価するための指標である。例えば、評価は、対象物が健全である度合いをN段階で示す健全度であってもよい。健全度は、対象物の定期的な点検作業により記録される、対象物の状態を示す状態情報である。
健全度は、対象物の健全性を、機械的な状態、電気的な状態、化学的な状態、または、熱的な状態で示すものであってもよい。
機械的な状態を示す健全度には、例えば、機械部品または装置の摩耗、疲労、ひずみ、クラック等の機械的なダメージの度合いを示す指標が含まれてもよい。対象物における振動、温度、電圧または圧力等のパラメータが含まれてもよい。
電気的な状態を示す健全度には、例えば、電気機器または電子機器の動作状態または電気的なパラメータが含まれる。
化学的な状態を示す健全度には、例えば、化学プロセスまたは材料の劣化、腐食、変質等の度合いを示すパラメータが含まれてもよい。
熱的な状態には、部品の温度変化または熱応力の度合いを示すパラメータが含まれてもよい。
【0016】
また、対象物の評価は、対象物が劣化した度合いを示す劣化度であってもよい。劣化度は、例えば、対象物の劣化度合いを、機械的な状態、電気的な状態、化学的な状態、または、熱的な状態で示すものである。
以下、対象物が電子機器等の対象機器であり、評価が対象機器の健全度である場合を例に挙げて説明する。
【0017】
予測装置1は、取得制御部11および予測部12を備える。例えば、予測装置1は、コンピュータによって実現される。コンピュータが備えるメモリには、取得制御部11および予測部12の各機能を実現するための情報処理アプリケーションを構成するプログラムが記憶される。コンピュータが備えるプロセッサがメモリから読み出した情報処理アプリケーションを実行することで、取得制御部11および予測部12の各機能が実現される。
【0018】
(取得制御部)
取得制御部11は、確率分布を取得する制御を行う。例えば、予測装置1が、
図1において図示しない通信部を備え、この通信部によって、
図1において図示しない外部装置と通信接続が可能である場合、取得制御部11は、通信部を制御することにより、外部装置から確率分布を取得する。外部装置との通信に使用される通信方式としては、例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、Zigbee(登録商標)、LoRa(登録商標)、またはNFC(Near Field Communication)等がある。通信部は、例えば、これらのいずれかの通信方式に対応した無線通信モジュールである。取得制御部11は、通信部を制御して、ペアリング、ネットワーク接続、アドレス指定等の手順を実行することで、外部装置に対して通信を確立する。通信が確立されると、通信部は、対象物に関する確率分布を示す情報を外部装置に要求し、外部装置は、要求された情報を返信する。通信部により受信された情報は、取得制御部11によって取得される。
【0019】
(確率分布の概要)
確率分布は、対象機器の各健全度が継続する期間の確率からなる。例えば、対象機器の健全度がN=1から3である場合、確率分布は、健全度がN=3で継続する期間の確率、健全度がN=3から2の間の値で継続する期間の確率、健全度がN=2で継続する期間の確率、健全度がN=2から1の間の値で継続する期間の確率、および、健全度がN=1で継続する期間の確率が含まれる。また、確率分布は、対象機器の設計時点での各健全度が継続する期間の期待値と、対象機器の各健全度が継続する期間の実績値とに基づいて生成される。確率分布において対象機器の各健全度が継続する期間の実績値が考慮されているので、健全度の実績値との乖離の小さい予測が可能である。
【0020】
(予測部)
予測部12は、取得制御部11により取得された確率分布に基づいて、対象機器の健全度の推移を予測する。例えば、予測部12は、取得制御部11から、対象機器の健全度が継続する確率を示す確率分布を取得する。この確率分布は、例えば、点検作業履歴(過去のデータまたは経験)に基づいて推定される。例えば、点検作業履歴に含まれる対象機器の健全度の測定結果等に基づいて、対象機器の健全度が継続する確率が推定される。
【0021】
次に、予測装置1の動作について説明する。
図2は、実施の形態1に係る予測方法を示すフローチャートである。
取得制御部11が、対象機器の健全度が継続する確率を示す確率分布を取得する制御を行う(ステップST1)。予測部12が、取得制御部11によって取得された上記確率分布に基づいて対象機器の健全度の推移を予測する(ステップST2)。
予測装置1は、
図2に示す予測方法を実行することにより、対象機器の健全度の推移の予測情報という、対象機器の余寿命の予測に有用な情報を提供できる。
【0022】
対象機器の健全度の推移を予測する方法として、数値計算による予測がある。例えば、確率分布を指数分布とした場合、予測部12は、数値計算により、ある時刻後に各健全度に至る確率を算出し、算出した確率に基づいて対象機器の健全度の推移を予測する。
【0023】
また、対象機器の健全度の推移の予測には、機械学習モデルを用いてもよい。例えば、予測部12は、確率分布を示す情報が入力されると、対象機器の健全度の推移の予測情報を出力する機械学習モデルを用いて、対象機器の健全度の推移を予測する。予測情報には、対象機器の健全度の推移の予測結果および対象機器の余寿命の予測結果のうち少なくとも一方が含まれる。機械学習モデルは、例えば、Transformer、BERT、または、GPT-3等のモデルが採用され、確率分布を示す情報を入力として受け付け、対象機器の健全度の推移の予測情報を出力するように機械学習されている。この場合、予測部12は、
図3を用いて後述するシミュレーション部を備えていなくてもよい。
【0024】
なお、機械学習モデルは、予測装置1が備える、
図1において図示しない記憶部に記憶される。また、機械学習モデルは、予測装置1とは別に設けられて通信接続が可能な外部記憶装置に記憶されてもよい。この場合、予測部12は、通信部を制御することにより、外部記憶装置に通信接続する。外部記憶装置に記憶された機械学習モデルには、予測部12から通信部により送信された確率分布が入力され、機械学習モデルから出力された予測情報は、通信部により受信されて予測部12に取得される。
【0025】
また、予測部12は、予測した対象機器の健全度の推移に基づいて、対象機器の余寿命を予測してもよい。余寿命とは、現在時刻から、健全度の推移の代表値がある一定の値に至るまでの残りの期間である。なお、健全度の推移の代表値とは、健全度の推移における期待値、中央値または最頻値である。予測部12によって算出された対象機器の健全度の推移の予測結果と対象機器の余寿命を示す情報は、例えば、表示装置2に出力される。表示装置2は、予測装置1から出力された、対象機器の健全度の推移の予測結果および対象機器の余寿命を示す情報を表示する。点検作業者は、表示装置2に表示された対象機器の健全度の推移の予測結果および対象機器の余寿命を示す情報を参照することにより、保全コストが最小化されるタイミングで対象機器の補修または交換を行うことができる。
【0026】
変形例1.
(評価の推移のシミュレーション)
対象機器の健全度の推移は、シミュレーションにより予測してもよい。
図3は、予測装置1が備える予測部12の構成例を示すブロック図である。例えば、予測部12は、
図3に示すように、シミュレーション部121および推移予測部122を備えてもよい。シミュレーション部121は、対象機器の健全度の推移のシミュレーションを行う。推移予測部122は、シミュレーション部121によるシミュレーションの結果に基づいて対象機器の健全度の推移を予測する。
対象機器の健全度の推移をシミュレーションする場合も同様に、予測部12によって算出された対象機器の健全度の推移のシミュレーション結果および対象機器の余寿命を示す情報は、例えば、表示装置2に出力される。表示装置2は、予測装置1から出力された、対象機器の健全度推移のシミュレーション結果および対象機器の余寿命を示す情報を表示する。点検作業者は、表示装置2に表示された対象機器の健全度の推移のシミュレーション結果および対象機器の余寿命を示す情報を参照することにより、保全コストが最小化されるタイミングで対象機器の補修または交換を行うことができる。
【0027】
図4は、予測の処理例を示すフローチャートである。
シミュレーション部121は、推移シミュレーション処理として、対象機器の健全度の推移のシミュレーションを行う(ステップST1A)。
推移予測部122は、推移予測処理として、シミュレーション部121により得られたシミュレーション結果Aに基づいて、対象機器の健全度の推移を予測する(ステップST2A)。
【0028】
例えば、シミュレーション部121は、確率分布に基づいて対象機器の健全度の推移のシミュレーションを行い、シミュレーションの結果に基づいて対象機器の健全度の推移を予測する。例えば、具体的には、シミュレーション部121は、対象機器の健全度が継続する確率を示す確率分布から、起こり得る健全度の推移のシミュレーションをX回行う。なお、シミュレーションの回数Xは、対象機器の健全度の推移として尤もらしい予測結果が得られる回数であればよく、例えば10000回程度である。
【0029】
(乱数によるシミュレーション)
シミュレーション部121は、確率分布に基づいて乱数を生成し、乱数によりシミュレーションを行ってもよい。例えば、シミュレーション部121は、モンテカルロシミュレーションにより、確率分布からランダムな値である乱数を生成し、生成された乱数を健全度の変化としてモデル化する。シミュレーション部121は、対象機器の各時点での健全度の増減をランダムに決定し、健全度の推移のシミュレーションをX回行う。
【0030】
次に、推移予測部122は、対象機器の健全度の推移のシミュレーション結果を解析することにより、経過時間によって変化する対象機器の健全度を予測し、この予測結果に基づいて対象機器の将来の状態を予測する。例えば、推移予測部122は、シミュレーション結果を解析することで、各健全度に至る確率、特定の時点での健全度の最頻値、中央値または期待値を算出する。期待値には、健全度の平均値である期待値(1)、または、期待値(1)を四捨五入した値である期待値(2)が含まれてもよい。
【0031】
図5は、対象機器の健全度推移のシミュレーション結果を示す図であり、シミュレーション部121による対象機器の健全度推移のシミュレーション結果Aを示している。
図5において、横軸は経過期間(日)であり、縦軸は対象機器の健全度である。シミュレーション結果Aは、シミュレーション部121が確率分布に基づいてX回のシミュレーションを行って算出した、起こり得る健全度の推移がプロットされたものである。
図5に示すシミュレーション結果Aは、例えば、経過期間が600日まででは対象機器の健全度がN=5.0から4.0に推移する可能性が高いことが分かる。また、経過期間が2000日近くになると、対象機器の健全度がN=2.0から1.0に推移する可能性が高くなっている。
【0032】
例えば、シミュレーション部121は、対象機器の健全度が継続する確率分布から擬似乱数を生成し、生成した擬似乱数に基づいて健全度の変化のランダムなシミュレーションを行う。このシミュレーションは、予め指定された回数Xだけ繰り返し行われる。
シミュレーション部121は、各シミュレーションにおいて、現在の健全度が継続するか否かを確率的に決定する。例えば、シミュレーション部121は、生成した擬似乱数が閾値よりも小さい場合、健全度が継続しないと判断し、健全度をランダムに減少させる。
一方、生成した擬似乱数が閾値以上である場合、シミュレーション部121は、健全度が継続すると判断して、健全度を変化させずに維持する。
なお、予測部12は、
図5に示すシミュレーション結果Aを表示装置2に表示させてもよい。これにより、
図5に示すように、対象機器の健全度が時間とともに変化する様子を示すシミュレーション結果Aが得られる。
【0033】
変形例2.
(評価の予測結果を時間ごとに集計)
予測部12は、対象機器の健全度の推移の予測結果を時間ごとに集計し、時間ごとの集計の結果を用いて、時間ごとの健全度に至る確率を算出してもよい。例えば、予測部12は、対象機器の健全度推移の予測結果を時間ごとに集計し、時間ごとの集計の結果を用いて、時間ごとに、各健全度に至る確率を算出する。また、期待値、中央値または最頻値等を算出してもよい。
【0034】
予測部12は、各時刻での健全度の集計結果である代表値に基づいて、対象機器の将来の健全度の推移を予測してもよい。例えば、平均健全度が時間とともに減少する傾向にある場合は、これに基づいて将来の健全度の推移を予測する。また、予測部12は、予測した対象機器の健全度の推移に基づいて対象機器の余寿命を予測してもよい。
【0035】
また、推移予測部122は、
図5に示した、対象機器の健全度推移のシミュレーション結果Aを時間ごとに集計し、時間ごとの集計の結果を用いて、時間ごとの健全度に至る確率を算出してもよい。シミュレーション結果Aについての時間ごとに得られた集計結果には、各健全度に至る確率、期待値、中央値または最頻値等がある。
【0036】
図6Aおよび
図6Bは、対象機器の健全度推移予測結果を示す図である。
図6Aは、経過時間に対する対象機器の健全度が継続する確率を示すグラフである。
図6Aにおいて、横軸は経過期間(日)であり、縦軸は対象機器の健全度が継続する確率である。領域B1は、経過期間に対して対象機器の健全度がN=5で継続する期間の確率の領域である。領域B2は、経過期間に対して対象機器の健全度がN=4で継続する期間の確率の領域である。領域B3は、経過期間に対して対象機器の健全度がN=3で継続する期間の確率の領域である。領域B4は、経過期間に対して対象機器の健全度がN=2で継続する期間の確率の領域である。領域B5は、経過期間に対して対象機器の健全度がN=1で継続する期間の確率の領域である。
【0037】
図6Bは、経過時間に対する対象機器の健全度を示すグラフである。
図6Bにおいて、横軸は経過期間(日)であり、縦軸は対象機器の健全度である。実線A1は、経過期間の各時刻における健全度の平均値(期待値)の変化を示している。破線A2は、経過期間の各時刻における健全度の中央値の変化を示している。また、一点鎖線A3は、経過期間の各時刻における健全度の最頻値の変化を示している。
【0038】
例えば、予測部12は、取得制御部11によって取得された確率分布に含まれる確率を、
図6Aに示すように、経過期間に対してプロットする。予測部12は、各時刻における対象機器の健全度について平均値、中央値および最頻値を算出し、算出した値を、
図6Bに示すように、経過期間に対してプロットする。
なお、
図6Aに示すグラフと
図6Bに示すグラフとを表示するための表示情報は、予測部12によって生成される。表示装置2は、予測部12によって生成された表示情報に基づいて、
図6Aおよび
図6Bに示すグラフを表示する。これらを参照することにより、対象機器の健全度推移を把握することができる。
【0039】
また、予測部12は、対象機器の健全度推移の代表値がある値に至るまでの残りの時間を、「余寿命」として算出してもよい。例えば、健全度推移の代表値が平均値である場合に、予測部12は、現在時刻Tから代表値がN=1に至るまでの残り時間を、余寿命として算出する。例えば、予測部12は、
図6Bに示すグラフ上に余寿命が表示される表示情報を生成してもよい。表示装置2は、この表示情報に基づいて、余寿命が設定された
図6Bに示すグラフを表示する。このグラフを参照することで、対象機器の余寿命を把握することができる。
【0040】
変形例3.
(リスク値の算出)
予測部12は、時間ごとの健全度に至る確率に基づいて、時間ごとの対象機器のリスクに関するリスク評価を行ってもよい。例えば、予測部12は、対象機器が各健全度に至る確率を算出することで、対象機器が故障に至る確率を算出し、対象機器が故障に至るリスク評価値を算出する。
リスク評価値は、対象機器が故障に至る確率に対して故障時の損失を乗算することにより算出できる。ここで、対象機器が故障に至る確率は、対象機器の健全度が最低値(例えば、N=1)に至る確率である。
故障時の損失は、対象機器が故障したときに発生すると想定される損失である。例えば、故障時の損失は、対象機器が故障したときに発生する損害額であってもよい。
予測部12は、リスク評価値が表示される表示情報を生成してもよい。表示装置2は、この表示情報に基づいてリスク評価値を表示する。これにより、予測装置1は、対象機器のリスク評価に有用な評価値を提供できる。
【0041】
次に、予測装置1の機能を実現するハードウェア構成について説明する。
図7は、予測装置1の機能を実現するハードウェア構成例を示すブロック図である。
予測装置1が備える取得制御部11および予測部12の各機能は、処理回路により実現される。すなわち、予測装置1は、
図2に示したステップST1からステップST2の処理を実行するための処理回路を備える。処理回路は、メモリに記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)であってもよい。
【0042】
取得制御部11は、例えば、入力インタフェース100を介して、予測装置1が備える通信部によって外部装置から受信された確率分布を示す情報を取得する。また、予測装置1が備える記憶部に確率分布を示す情報が記憶されている場合、取得制御部11は、入力インタフェース100を介して、記憶部から確率分布を示す情報を読み出して取得する。この場合、予測装置1は、通信部を備えていなくてもよい。
【0043】
予測部12は、例えば、出力インタフェース101を介して対象物の評価の推移の予測結果を表示装置2に出力する。また、予測部12は、出力インタフェース101を介して通信部を制御することにより予測結果を外部装置に送信してもよい。
【0044】
予測装置1が備える取得制御部11および予測部12の各機能は、ソフトウェア、ファームウェアまたはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。
なお、ソフトウェアまたはファームウェアは、プログラムとして記述されてメモリ103に記憶される。
【0045】
プロセッサ102は、メモリ103に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、予測装置1が備える取得制御部11および予測部12の各機能を実現する。例えば、予測装置1は、プロセッサ102によって実行されるときに
図2に示したステップST1からステップST2の処理が結果的に実行されるプログラムを記憶するためのメモリ103を備える。これらのプログラムは、取得制御部11および予測部12が行う処理の手順または方法を、コンピュータに実行させるものである。メモリ103は、コンピュータを、取得制御部11および予測部12として機能させるためのプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。
【0046】
メモリ103は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically-EPROM)(登録商標)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVDなどが該当する。
【0047】
予測装置1が備える取得制御部11と予測部12の機能の一部を、専用のハードウェアで実現し、他の一部はソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。
例えば、取得制御部11の機能は、専用のハードウェアである処理回路により実現し、予測部12の機能は、プロセッサ102がメモリ103に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより実現してもよい。このように、処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせにより上記機能を実現することが可能である。
【0048】
以上のように、実施の形態1に係る予測装置1は、対象機器の健全度が継続する確率を示す確率分布を取得する制御を行う取得制御部11と、取得制御部11により取得された確率分布に基づいて対象機器の健全度の推移を予測する予測部12と、を備える。これにより、予測装置1は、対象機器の健全度の推移の予測情報という、対象機器の余寿命の予測に有用な情報を提供できる。
【0049】
実施の形態1に係る予測装置1において、予測部12は、確率分布に基づいて対象機器の健全度の推移のシミュレーションを行い、シミュレーションの結果に基づいて対象機器の健全度の推移を予測する。これにより、予測装置1は、対象機器の健全度の推移のシミュレーション結果を提供できる。
【0050】
実施の形態1に係る予測装置1において、予測部12は、確率分布に基づいて乱数を生成し、乱数によりシミュレーションを行う。これにより、予測装置1は、対象機器の健全度の推移のシミュレーション結果という、対象機器の余寿命の予測に有用な情報を提供できる。
【0051】
実施の形態1に係る予測装置1において、予測部12は、健全度の推移の予測結果を時間ごとに集計し、時間ごとの集計の結果を用いて、時間ごとの健全度に至る確率を算出する。これにより、予測装置1は、時間ごとの健全度に至る確率という、対象機器の余寿命の予測に有用な情報を提供できる。
【0052】
実施の形態1に係る予測装置1において、予測部12は、時間ごとの健全度に至る確率に基づいて、時間ごとの対象機器のリスクに関するリスク評価を行う。これにより、予測装置1は、対象機器のリスク評価に有用な評価値を提供できる。
【0053】
実施の形態1に係る予測方法は、取得制御部11が、対象機器の健全度が継続する確率を示す確率分布を取得する制御を行うステップ(ST1)と、予測部12が、取得制御部11により取得された確率分布に基づいて対象機器の健全度の推移を予測するステップ(ST2)と、を備える。これにより、実施の形態1に係る予測方法は、対象機器の健全度の推移の予測情報という、対象機器の余寿命の予測に有用な情報を提供できる。
【0054】
実施の形態1に係るプログラムを実行するコンピュータは、対象機器の健全度が継続する確率を示す確率分布を取得する制御を行う取得制御部11、および、取得制御部11により取得された確率分布に基づいて対象機器の健全度の推移を予測する予測部12として機能する。これにより、実施の形態1に係るプログラムを実行するコンピュータは、対象機器の健全度の推移の予測情報という、対象機器の余寿命の予測に有用な情報を提供できる。
【0055】
実施の形態2.
実施の形態1に係る予測装置は、対象物の評価が継続する確率を示す確率分布に基づいて、対象物の評価の推移を予測するものであるが、実施の形態2に係る予測装置は、予測に用いられる確率分布を生成する。
【0056】
図8は、実施の形態2に係る予測装置1Aの構成例を示すブロック図である。
図8において、予測装置1Aは、時間の経過によって変化する対象物の評価の推移を予測する装置であって、対象物の評価が継続する確率を示す確率分布を生成し、生成した確率分布に基づいて対象物の評価の推移を予測する。例えば、予測装置1Aは、確率分布の生成に必要な情報である設計情報3または点検作業履歴4を取得し、取得した設計情報3または点検作業履歴4に基づいて確率分布を生成する。なお、
図8には、設計情報3および点検作業履歴4の両方を取得する生成部13を示したが、生成部13は、設計情報3または点検作業履歴4のいずれか一方を取得して、取得した設計情報3または点検作業履歴4のいずれか一方を用いて確率分布を生成してもよい。
【0057】
(設計情報の概要)
設計情報3は、対象物に要求される環境に対応する限界試験に基づく対象物の寿命特性を示す限界試験結果である。例えば、設計情報3には、設計時点での評価が継続する期間の期待値等が含まれる。設計時点での評価が継続する期間の期待値は、対象物に対する限界試験により算出される。対象物が電子機器等の対象機器であり、評価が対象機器の健全度である場合、設計情報3には、設計時点での対象機器の各健全度が継続する期間の期待値等が含まれる。設計情報3は、例えば、予測装置1Aが備える記憶部に記憶されるか、または、予測装置1Aが通信可能な外部装置に記憶されている。
【0058】
(点検作業履歴の概要)
点検作業履歴4は、対象物に対する過去の点検作業で得られ、対象物の評価が継続する期間の実績値が含まれる。例えば、対象物が電子機器等の対象機器であり、評価が対象機器の健全度である場合、点検作業履歴4には、対象機器の各健全度が継続する期間の実績値が含まれる。なお、設計情報3と同様に、点検作業履歴4は、例えば、予測装置1Aが備える記憶部に記憶されるか、または、予測装置1Aが通信可能な外部装置に記憶されている。以下、対象物が電子機器等の対象機器であり、評価が対象機器の健全度である場合を例に挙げて説明する。
【0059】
予測装置1Aは、取得制御部11、予測部12および生成部13を備える。例えば、予測装置1Aは、コンピュータにより実現される。コンピュータが備えるメモリには、取得制御部11、予測部12および生成部13の各機能を実現するための情報処理アプリケーションを構成するプログラムが記憶される。コンピュータが備えるプロセッサが、メモリから読み出した情報処理アプリケーションを実行することで、取得制御部11、予測部12および生成部13の各機能が実現される。
【0060】
取得制御部11は、確率分布を取得する制御を行う。例えば、取得制御部11は、生成部13を制御することにより、生成部13により生成された確率分布を取得する。
予測部12は、取得制御部11により取得された確率分布に基づいて、対象機器の健全度の推移を予測する。例えば、予測部12は、取得制御部11から、生成部13によって生成された確率分布を取得する。
【0061】
(生成部)
生成部13は、対象機器の健全度が継続する確率を示す確率分布を生成する。
図8に示すように、生成部13は、設計情報3または点検作業履歴4を取得し、取得した設計情報3または点検作業履歴4に基づいて確率分布を生成する。
例えば、生成部13は、設計情報3に含まれる、設計時点での各健全度が継続する期間の期待値と、点検作業履歴4に含まれる、対象機器の各健全度が継続する期間の実績値とに基づいて、各健全度が継続する期間の確率分布を生成する。
確率分布は、例えば、各健全度が継続する期間の確率分布がワイブル分布に従うと仮定し、設計情報3に含まれる上記情報を事前情報としたベイズ推定により推定される。
【0062】
図9は、生成部13の構成例を示すブロック図である。生成部13は、
図9に示すように、設計情報取得部131、点検作業履歴取得部132、および確率分布推定部133を備える。設計情報取得部131は設計情報3を取得する。例えば、予測装置1Aが、
図9において図示しない通信部を備え、この通信部によって
図9において図示しない外部装置と通信接続が可能である場合、設計情報取得部131は、通信部を制御することにより、外部装置から設計情報3を取得する。また、予測装置1Aが備える記憶部に設計情報3が記憶されている場合、設計情報取得部131は、記憶部から設計情報3を読み出して取得する。この場合、予測装置1Aは、通信部を備えていなくてもよい。
なお、
図9には、設計情報取得部131および点検作業履歴取得部132の両方を備える生成部13を示したが、生成部13は、設計情報取得部131または点検作業履歴取得部132のいずれか一方を備えるものでもよい。
【0063】
点検作業履歴取得部132は、点検作業履歴4を取得する。例えば、設計情報取得部131と同様に、点検作業履歴取得部132は、通信部を制御することにより外部装置から点検作業履歴4を取得する。また、予測装置1Aが備える記憶部に点検作業履歴4が記憶されている場合、点検作業履歴取得部132は、記憶部から点検作業履歴4を読み出して取得する。この場合、予測装置1Aは、通信部を備えていなくてもよい。
【0064】
(設計情報および点検作業履歴に基づき確率分布を生成)
確率分布推定部133は、設計情報3または点検作業履歴4のうちの少なくとも一方に基づいて、対象機器の各健全度が維持する確率を示す確率分布を推定する。
例えば、確率分布推定部133は、設計情報3に含まれる設計時点での各健全度が継続する期間の期待値、および、点検作業履歴4に含まれる対象機器の各健全度が継続する期間の実績値に基づいて、適切な確率分布を選択する。確率分布としては、指数分布またはワイブル分布等がある。これらの分布は、健全度の継続期間をモデル化するのに適している。例えば、確率分布がワイブル分布に従うものとする。
確率分布推定部133は、選択した確率分布のパラメータを算出し、算出したパラメータを用いて、対象機器の健全度が継続する確率分布を生成する。この確率分布は、対象機器の各健全度における継続期間の確率的な分布をモデル化したものである。
【0065】
(点検作業履歴に基づき確率分布を生成)
また、確率分布推定部133は、対象機器に対する点検作業履歴4に基づいて、確率分布を生成してもよい。例えば、確率分布推定部133は、点検作業履歴4に含まれる、対象機器の各健全度が継続する期間の実績値に基づいて、確率分布を生成する。
確率分布には、一般に、指数分布、ワイブル分布、正規分布などがある。確率分布推定部133は、これらの中から実績値に最も適合する分布を選択する。
次に、確率分布推定部133は、選択した確率分布のパラメータを、例えば、最尤推定法または最小二乗法などの統計的手法を使用する。例えば、指数分布と仮定した場合は、過去の実績から平均健全度継続期間を推定する。
確率分布推定部133は、推定したパラメータを用いて、対象機器の健全度が継続する確率分布を生成する。これにより、健全度が継続する期間の確率的な分布をモデル化することができる。生成された確率分布は、機器の将来の健全度推移の予測に使用される。
【0066】
(設計情報に基づき確率分布を生成)
また、確率分布推定部133は、対象機器に対する設計情報3に基づいて、確率分布を生成してもよい。例えば、確率分布推定部133は、設計情報3に含まれる、設計時点での各健全度が継続する期間の期待値に基づいて、確率分布を生成する。
設計時点での各健全度が継続する期間の期待値は、対象機器の設計段階での予測または評価に基づいて算出される。
確率分布推定部133は、期待値に基づいて適切な確率分布を選択する。一般に、対数正規分布または指数分布などが使用される。
次に、確率分布推定部133は、選択した確率分布のパラメータを算出し、算出したパラメータを用いて、対象機器の健全度が継続する確率分布を生成する。この確率分布は、対象機器の各健全度における継続期間の確率的な分布をモデル化したものである。これにより、将来の健全度の継続期間を予測することが可能である。確率分布推定部133により生成された確率分布は、取得制御部11に取得される。
【0067】
また、生成部13は、設計情報3または点検作業履歴4のうちの少なくとも一方が入力されると、対象機器の健全度が継続する確率を示す確率分布を出力する機械学習モデルを用いて、対象機器の確率分布を生成してもよい。機械学習モデルは、例えば、Transformer、BERT、またはGPT-3等のモデルが採用され、設計情報3または点検作業履歴4のうちの少なくとも一方を入力として受け付け、確率分布を出力するように機械学習されている。
【0068】
なお、機械学習モデルは、予測装置1Aが備える、
図8において図示しない記憶部に記憶される。また、機械学習モデルは、予測装置1Aとは別に設けられて通信接続が可能な外部記憶装置に記憶されてもよい。この場合、生成部13は、通信部を制御することにより、外部記憶装置に通信接続する。外部記憶装置に記憶された機械学習モデルには、生成部13から通信部により送信された設計情報3または点検作業履歴4のうちの少なくとも一方が入力され、機械学習モデルから出力された確率分布は、通信部により受信されて、取得制御部11により取得される。
【0069】
次に、予測装置1Aの動作について説明する。
図10は、実施の形態2に係る確率分布生成処理を示すフローチャートである。
設計情報取得部131が設計情報3を取得し、点検作業履歴取得部132が点検作業履歴4を取得する(ステップST1B)。
確率分布推定部133が、設計情報3および点検作業履歴4に基づいて確率分布を推定する(ステップST2B)。
予測装置1Aは、
図10に示す確率分布生成方法を実行することで、対象機器の健全度の推移の予測に用いる、対象機器の健全度が継続する確率分布を生成することができる。
【0070】
図11は、対象機器の健全度継続時間と確率分布との関係を示す図である。
図11において、横軸は、対象機器の各健全度が継続する継続期間であり、縦軸は、対象機器の健全度が継続する確率である。破線C1は、設計情報3から推定された確率分布である。実線C2は、確率分布推定部133によって設計情報3および点検作業履歴4から推定された確率分布である。棒グラフDは、健全度が継続する確率の継続期間である。
【0071】
確率分布推定部133は、設計情報3と点検作業履歴4とに基づいて、実線C2で示す確率分布を推定する。例えば、確率分布推定部133は、ベイズ推定により、実線C2で示す確率分布を推定する。
まず、確率分布推定部133は、設計情報3に含まれる、設計時点での各健全度が継続する期間の期待値と、点検作業履歴4に含まれる、対象機器の各健全度が継続する期間の実績値とを取得する。ベイズ推定では、事前分布を選択する必要がある。
確率分布推定部133は、選択した事前分布のパラメータを、設計情報3に含まれる、設計時点での各健全度が継続する期間の期待値に基づいて設定する。
確率分布推定部133は、点検作業履歴4に含まれる、対象機器の健全度が継続する期間の実績値に基づいて、尤度関数を定義する。尤度関数は、観測されたデータが与えられたときに、モデルのパラメータの値がどれだけ確からしいかを表す関数である。
次に、確率分布推定部133は、ベイズ推定により事後分布を算出する。事後分布は、観測されたデータを考慮した後のパラメータの確率分布である。事前分布と尤度関数とを組み合わせて、事後分布として実線C2で示す確率分布を算出する。
【0072】
以上のように、実施の形態2に係る予測装置1Aは、確率分布を生成する生成部13を備える。これにより、予測装置1Aは、対象機器の各健全度が継続する期間の確率分布を生成することができる。
【0073】
実施の形態2に係る予測装置1Aにおいて、生成部13は、対象機器に対する点検作業履歴に基づいて確率分布を生成する。これにより、予測装置1Aは、対象機器の各健全度が継続する期間の確率分布を生成することができる。
【0074】
実施の形態2に係る予測装置1Aにおいて、生成部13は、対象機器に対する限界試験結果に基づいて確率分布を生成する。これにより、予測装置1Aは、対象機器の各健全度が継続する期間の確率分布を生成することができる。
【0075】
実施の形態3.
実施の形態1に係る予測装置は、対象物の評価が継続する確率を示す確率分布に基づいて対象物の評価の推移のシミュレーションを行い、シミュレーションの結果に基づいて対象物の評価の推移を予測するものであった。実施の形態3に係る予測装置は、確率分布に基づいて行われたシミュレーションの結果を、取得した対象物の評価を用いて補正するものである。
【0076】
図12は、実施の形態3に係る予測装置1Bの構成例を示すブロック図である。
図12において、予測装置1Bは、時間の経過によって変化する対象物の評価の推移を予測する装置である。そして、予測装置1Bは、対象物の評価が継続する確率を示す確率分布を生成し、生成した確率分布に基づいて対象物の評価推移のシミュレーションを行い、シミュレーションの結果を補正し、補正したシミュレーション結果に基づいて対象物の評価推移を予測する。以下、対象物が電子機器等の対象機器であり、評価が対象機器の健全度である場合を例に挙げて説明する。
【0077】
予測装置1Bは、取得制御部11および予測部12Aを備える。例えば、予測装置1Bは、コンピュータにより実現される。コンピュータが備えるメモリには、取得制御部11および予測部12Aの各機能を実現するための情報処理アプリケーションを構成するプログラムが記憶される。コンピュータが備えるプロセッサがメモリから読み出した情報処理アプリケーションを実行することで、取得制御部11および予測部12Aの各機能が実現される。
【0078】
取得制御部11は、確率分布を取得する制御を行う。例えば、取得制御部11は、通信部を制御することにより外部装置から確率分布を取得する。また、予測装置1Bが備える記憶部に確率分布を示す情報が記憶されている場合、取得制御部11は、記憶部から確率分布を示す情報を読み出して取得してもよい。さらに、予測装置1Bが生成部13を備える場合、取得制御部11は、生成部13を制御することにより、生成部13によって生成された確率分布を取得してもよい。
【0079】
予測部12Aは、取得制御部11により取得された確率分布に基づいて、対象機器の健全度推移のシミュレーションを行い、点検作業履歴4Aに含まれる対象機器の過去の状態遷移を満たすようにシミュレーション結果を補正して、補正したシミュレーション結果に基づいて健全度推移を予測する。点検作業履歴4Aは、ある特定の時刻で対象機器がある健全度であることを示す情報が含まれる。例えば、予測部12Aは、シミュレーションの結果を、対象機器のこれまでの状態遷移に相当する過去の点検作業履歴4Aを満たすように、点検作業履歴4Aに含まれる、ある時刻においてある健全度の値であるという状態に補正する。なお、点検作業履歴4Aは、例えば、予測装置1Bが備える記憶部に記憶されるか、または、予測装置1Bが通信可能な外部装置に記憶されている。
【0080】
図13は、予測装置1Bが備える予測部12Aの構成例を示すブロック図である。予測部12Aは、
図13に示すように、シミュレーション部121、推移予測部122Aおよびシミュレーション結果補正部123を備える。シミュレーション部121は、対象機器の健全度の推移のシミュレーションを行う。例えば、シミュレーション部121は、モンテカルロシミュレーションにより確率分布から乱数を生成し、生成した乱数を用いて起こり得る健全度の推移のシミュレーションをX回行う。
【0081】
推移予測部122Aは、シミュレーション結果補正部123によって補正されたシミュレーションの結果に基づいて、対象機器の健全度の推移を予測する。例えば、推移予測部122は、補正されたシミュレーション結果を各時点で集計することにより、各健全度に至る確率、健全度の期待値、中央値または最頻値等という代表値から健全度の推移を予測する。さらに、推移予測部122は、予測した健全度の推移に基づいて対象機器の余寿命を算出してもよい。
【0082】
シミュレーション結果補正部123は、確率分布に基づいて行われたシミュレーションの結果を、取得した対象機器の健全度を用いて補正する。
例えば、シミュレーション結果補正部123は、シミュレーション部121により生成されたシミュレーション結果を取得し、点検作業履歴4Aから、ある時刻での対象機器の健全度を取得する。シミュレーション結果補正部123は、点検作業履歴4Aに含まれる対象機器の過去の状態遷移を満たすように、シミュレーション結果を補正する。
【0083】
また、シミュレーション結果補正部123は、シミュレーション部121によって生成されたシミュレーション結果と、点検作業履歴4Aとが入力されると、補正されたシミュレーション結果を出力する機械学習モデルを用いて、シミュレーション結果を補正してもよい。機械学習モデルは、例えば、Transformer、BERT、またはGPT-3等のモデルが採用され、シミュレーション結果と点検作業履歴4Aとを入力として受け付け、補正されたシミュレーション結果を出力するように機械学習されている。
【0084】
なお、機械学習モデルは、予測装置1Bが備える、
図12において図示しない記憶部に記憶される。また、機械学習モデルは、予測装置1Bとは別に設けられて通信接続が可能な外部記憶装置に記憶されてもよい。この場合、シミュレーション結果補正部123は、通信部を制御することにより、外部記憶装置に通信接続する。外部記憶装置に記憶された機械学習モデルには、シミュレーション結果補正部123から、通信部により送信されたシミュレーション結果および点検作業履歴4Aが入力され、機械学習モデルから出力されたシミュレーション結果は、通信部により受信されてシミュレーション結果補正部123により取得される。
【0085】
次に、実施の形態3に係る予測装置1Bの動作について説明する。
図14は、実施の形態3に係る予測方法を示すフローチャートである。
まず、シミュレーション部121は、対象機器の健全度推移のシミュレーションを行う(ステップST1C)。次に、シミュレーション結果補正部123は、シミュレーション部121によるシミュレーションの結果を、点検作業履歴4Aから取得した対象機器の健全度を用いて補正する(ステップST2C)。
【0086】
図15は、対象機器の健全度推移のシミュレーション結果補正処理の概要を示す図である。
図15において、横軸は経過期間(日)であり、縦軸は対象機器の健全度である。
例えば、シミュレーション結果補正部123は、点検作業履歴4Aから、経過期間が300日での点検作業における対象機器の健全度E1と、経過期間が400日での点検作業における対象機器の健全度E2とを取得する。そして、シミュレーション結果補正部123は、取得した健全度E1とE2を満たすように、
図5に示したシミュレーション結果Aを補正する。このようにして補正されたシミュレーション結果が、
図15に示すシミュレーション結果Fである。なお、予測部12Aは、
図15に示すシミュレーション結果Fを表示装置2に表示させてもよい。
【0087】
続いて、推移予測部122Aは、シミュレーション結果補正部123により補正されたシミュレーション結果Fに基づいて、対象機器の健全度の推移を予測する(ステップST3C)。例えば、推移予測部122Aは、補正されたシミュレーション結果Fを、時間ごとに集計し、時間ごとの集計の結果を用いて時間ごとの健全度に至る確率を算出する。補正されたシミュレーション結果Fの時間ごとの集計結果には、各健全度に至る確率、期待値、中央値または最頻値等がある。
【0088】
図16Aおよび
図16Bは、対象機器の健全度推移予測結果を示す図である。
図16Aは、経過時間に対する対象機器の健全度が継続する確率を示すグラフである。
図16Aにおいて、横軸は経過期間(日)であり、縦軸は対象機器の健全度が継続する確率である。領域G1は、経過期間に対して対象機器の健全度がN=5で継続する期間の確率の領域である。領域G2は、経過期間に対して対象機器の健全度がN=4で継続する期間の確率の領域である。領域G3は、経過期間に対して対象機器の健全度がN=3で継続する期間の確率の領域である。領域G4は、経過期間に対して対象機器の健全度がN=2で継続する期間の確率の領域である。領域G5は、経過期間に対して対象機器の健全度がN=1で継続する期間の確率の領域である。
【0089】
シミュレーション結果補正部123が、時刻T1での点検作業履歴P1と、時刻T2での点検作業履歴P2とに基づいて、
図5に示したシミュレーション結果を補正する。これにより、
図6Aに示した領域B1が
図16Aに示す領域G1となり、
図6Aに示した領域B2が
図16Aに示す領域G2となっている。点検作業履歴P1には、時刻T1での対象機器の健全度E1が含まれ、点検作業履歴P2には、時刻T2での対象機器の健全度E2が含まれる。
【0090】
図16Bは、経過時間に対する対象機器の健全度を示すグラフである。
図16Bにおいて、横軸は経過期間(日)であり、縦軸は対象機器の健全度である。実線A4は、経過期間の各時刻における健全度の平均値(期待値)の変化を示している。破線A5は、経過期間の各時刻における健全度の中央値の変化を示している。また、一点鎖線A6は、経過期間の各時刻における健全度の最頻値の変化を示している。
【0091】
例えば、シミュレーション結果補正部123が、時刻T1での点検作業履歴P1と、時刻T2での点検作業履歴P2とに基づいて、
図5に示したシミュレーション結果を補正する。これにより、
図6Bにおいて実線A1で示した、経過期間の各時刻における健全度の平均値(期待値)の変化は、
図16Bにおいて実線A4で示す経過期間の各時刻における健全度の平均値の変化となる。
図6Bにおいて破線A2で示した、経過期間の各時刻における健全度の中央値の変化は、
図16Bにおいて破線A5で示す経過期間の各時刻における健全度の中央値の変化となる。さらに、
図6Bにおいて一点鎖線A3で示した、経過期間の各時刻における健全度の最頻値の変化は、
図16Bにおいて一点鎖線A6で示す経過期間の各時刻における健全度の最頻値の変化となる。
【0092】
なお、
図16Aに示すグラフと
図16Bに示すグラフとを表示するための表示情報は、推移予測部122Aにより生成される。表示装置2は、推移予測部122Aにより生成された表示情報に基づいて、
図16Aおよび
図16Bに示したグラフを表示する。これらを参照することにより、対象機器が取り得る健全度推移に限定することができ、限定したシミュレーション結果に基づいて健全度推移を予測することにより、予測精度が向上する。
【0093】
変形例1.
(対象物の評価を用いて評価の推移を予測)
これまで対象機器の健全度推移のシミュレーション結果を補正する処理を説明したが、予測部12Aは、対象機器の健全度が継続する確率を示す確率分布と、取得した対象機器の健全度とに基づいて、対象機器の健全度の推移を予測してもよい。例えば、予測部12Aは、確率分布に基づいて、対象機器の健全度の推移を予測するときに、点検作業履歴4Aから取得した、対象機器のこれまでの健全度の推移を満たすように予測を行う。これにより、健全度の実績値との乖離が少ない予測結果が得られる。
なお、この場合、推移予測部122Aが、確率部分布と点検作業履歴4Aとを取得して予測を行うので、予測部12Aは、推移予測部122Aを備えていればよく、シミュレーション部121およびシミュレーション結果補正部123を備えていなくてもよい。
【0094】
また、例えば、予測部12Aは、数値計算により、ある時刻後に各健全度に至る確率を算出し、算出した確率に基づいて対象機器の健全度の推移を予測してもよい。この場合、予測部12Aは、点検作業履歴4Aから取得した、対象機器のこれまでの健全度の推移を満たすように予測を行う。例えば、対象機器の初回点検から200日までは健全度がN=5であった場合、200日までの健全度がN=5を満たすように、対象機器の健全度推移の予測が行われる。
【0095】
さらに、予測部12Aは、対象機器の健全度が継続する確率を示す確率分布と、点検作業履歴4Aに含まれる対象機器のこれまでの健全度の推移とが入力されると、対象機器のこれまでの健全度の推移を満たす、対象機器の健全度推移の予測結果を出力する機械学習モデルを用いて、対象機器の健全度推移を予測してもよい。機械学習モデルは、例えば、Transformer、BERT、またはGPT-3等のモデルが採用され、確率分布と点検作業履歴4Aとを入力として受け付け、対象機器の健全度推移の予測結果を出力するように機械学習されている。
【0096】
(対象物の評価を用いて評価の推移をシミュレーション)
さらに、予測部12Aは、対象機器の健全度が継続する確率を示す確率分布と、取得した対象機器の健全度とに基づいて、対象機器の健全度の推移のシミュレーションを行い、シミュレーションの結果に基づいて対象機器の健全度の推移を予測してもよい。これにより、点検作業履歴から得られる、ある時刻である健全度であるという、対象機器の状態を満たすシミュレーション結果に限定することができ、健全度の実績値との乖離が少ない予測結果が得られる。
【0097】
例えば、予測部12Aは、点検作業履歴4Aから、対象機器のこれまでの健全度の推移を取得し、確率分布に基づいて、取得した対象機器のこれまでの健全度の推移を満たすように、対象機器の健全度推移のシミュレーションを行う。
具体的には、シミュレーション部121は、対象機器の健全度が継続する確率を示す確率分布に基づいて、対象機器のこれまでの健全度の推移を満たして起こり得る健全度の推移のシミュレーションをX回行う。シミュレーションの回数Xは、対象機器の健全度の推移として尤もらしい予測結果が得られる回数であればよく、例えば10000回程度である。また、シミュレーションには、実施の形態1の変形例1に記載したモンテカルロシミュレーションを利用してもよい。
なお、この場合、シミュレーション部121が、確率部分布と点検作業履歴4Aとを取得してシミュレーションを行うので、予測部12Aは、シミュレーション部121および推移予測部122Aを備えていればよく、シミュレーション結果補正部123を備えていなくてもよい。
【0098】
以上のように、実施の形態3に係る予測装置1Bにおいて、予測部12Aは、確率分布に基づいて行われたシミュレーションの結果を、取得した対象機器の健全度を用いて補正する。これにより、予測装置1Bは、確率分布に基づいて行ったシミュレーション結果Aを、過去に対象機器が取り得た健全度推移に限定したシミュレーション結果Fに補正することができる。
【0099】
実施の形態1に係る予測装置1において、予測部12は、確率分布と、取得した対象機器の健全度とに基づいて、対象機器の健全度の推移を予測する。これにより、予測装置1は、取得した対象機器の健全度を用いて変更された健全度推移の予測情報という、対象機器の余寿命の予測に有用な情報を提供できる。
【0100】
実施の形態1に係る予測装置1において、予測部12は、確率分布と、取得した対象機器の健全度とに基づいて、対象機器の健全度の推移のシミュレーションを行い、シミュレーションの結果に基づいて対象機器の健全度の推移を予測する。これにより、予測装置1は、取得した対象機器の健全度を用いて変更された健全度推移のシミュレーション結果という、対象機器の余寿命の予測に有用な情報を提供できる。
【0101】
なお、各実施の形態の組み合わせまたは実施の形態のそれぞれの任意の構成要素の変形もしくは実施の形態のそれぞれにおいて任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本開示に係る予測装置は、例えば、様々な分野の対象物の保全管理に利用可能である。
【符号の説明】
【0103】
1,1A,1B 予測装置、2 表示装置、3 設計情報、4,4A 点検作業履歴、11 取得制御部、12,12A 予測部、13 生成部、100 入力インタフェース、101 出力インタフェース、102 プロセッサ、103 メモリ、121 シミュレーション部、122,122A 推移予測部、123 シミュレーション結果補正部、131 設計情報取得部、132 点検作業履歴取得部、133 確率分布推定部。
【要約】
予測装置(1)は、対象機器の健全度が継続する確率を示す確率分布を取得する制御を行う取得制御部(11)と、取得制御部(11)により取得された確率分布に基づいて対象機器の健全度の推移を予測する予測部(12)と、を備える。