IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-光学特性検査装置 図1
  • 特許-光学特性検査装置 図2
  • 特許-光学特性検査装置 図3
  • 特許-光学特性検査装置 図4
  • 特許-光学特性検査装置 図5
  • 特許-光学特性検査装置 図6
  • 特許-光学特性検査装置 図7
  • 特許-光学特性検査装置 図8
  • 特許-光学特性検査装置 図9
  • 特許-光学特性検査装置 図10
  • 特許-光学特性検査装置 図11
  • 特許-光学特性検査装置 図12
  • 特許-光学特性検査装置 図13
  • 特許-光学特性検査装置 図14
  • 特許-光学特性検査装置 図15
  • 特許-光学特性検査装置 図16
  • 特許-光学特性検査装置 図17
  • 特許-光学特性検査装置 図18
  • 特許-光学特性検査装置 図19
  • 特許-光学特性検査装置 図20
  • 特許-光学特性検査装置 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】光学特性検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/06 20060101AFI20250407BHJP
   G01J 1/58 20060101ALI20250407BHJP
   G01J 1/00 20060101ALI20250407BHJP
   G01M 11/00 20060101ALI20250407BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20250407BHJP
   G02B 7/00 20210101ALI20250407BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20250407BHJP
   H01S 5/02 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
G01J1/06 B
G01J1/58
G01J1/00 C
G01J1/00 E
G01M11/00 T
G02B6/42
G02B7/00 D
H01L21/66 X
H01S5/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024551608
(86)(22)【出願日】2024-04-24
(86)【国際出願番号】 JP2024016044
【審査請求日】2024-08-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002941
【氏名又は名称】弁理士法人ぱるも特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白取 優大
(72)【発明者】
【氏名】深尾 哲宏
(72)【発明者】
【氏名】見上 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大仲 崇之
【審査官】平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-203926(JP,A)
【文献】特開2018-116196(JP,A)
【文献】特開2016-018028(JP,A)
【文献】特開2015-108789(JP,A)
【文献】特開2014-199229(JP,A)
【文献】特開2010-066562(JP,A)
【文献】特開2008-216414(JP,A)
【文献】特開2005-345925(JP,A)
【文献】特開2005-214726(JP,A)
【文献】特開2005-172665(JP,A)
【文献】特開2004-085801(JP,A)
【文献】特開2001-085549(JP,A)
【文献】特開平03-167511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00 - G01J 1/06
G01J 1/42 - G01J 1/46
G01J 1/58
G01M 11/00 - G01M 11/02
G01B 11/00 - G01B 11/30
G01R 31/26 - G01R 31/27
G02B 6/24
G02B 6/255- G02B 6/27
G02B 6/30 - G02B 6/34
G02B 6/36 - G02B 6/43
G02B 7/00
G02F 1/01 - G02F 1/125
H01L 21/64 - H01L 21/66
H01S 5/02 - H01S 5/022
H10H 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光半導体素子からの出射光を受光するディテクタ、
前記光半導体素子の出射面の角度方向の位置、前記出射光の光軸に沿った位置、前記光軸に垂直な方向の位置、前記ディテクタの前記出射面に対する前記光軸に沿った位置、前記光軸に垂直な方向の位置のうちのいずれか測定位置として位置決め駆動する駆動装置、および
前記駆動装置の駆動を制御し、位置決めを行うごとに前記駆動装置から取得した前記測定位置を示す位置情報と前記ディテクタから出力された光量情報に基づいて、前記測定位置のうち、前記光半導体素子から最大光量が得られる位置の探索計算を行い、前記光半導体素子の光軸調整を行う光軸調整部、を備え、
前記光軸調整部は、前記駆動装置に起因する位置ずれ量を考慮し、非線形モデリングによる回帰手法を用いて前記探索計算を実行し、
前記光軸調整部には、
前記探索計算の収束状態を判定する収束判定部、および前記収束判定部がある程度収束したと判定すると、前記最大光量を示す可能性のある複数の位置のなかから、分散による重みづけ、あるいは乱数による振り分けにより、再探索位置を設定する再探索位置設定部が設けられていることを特徴とする光学特性検査装置。
【請求項2】
前記光半導体素子と前記ディテクタとの間に前記出射光の前記ディテクタへの入射角を補正するためのレンズが配置されたことを特徴とする請求項1に記載の光学特性検査装置。
【請求項3】
前記ディテクタとして、前記出射面から入射面までの距離が異なるディテクタを束ねたディテクタ束を備えたことを特徴とする請求項1に記載の光学特性検査装置。
【請求項4】
前記出射面に対向して設けられ、前記出射光の光量分布を撮影するカメラを備え、
前記光軸調整部は、前記カメラから取得した前記出射光の光量分布情報に基づいて、前記探索計算における範囲の絞り込みを行うことを特徴とする請求項1に記載の光学特性検査装置。
【請求項5】
前記光軸に垂直な方向に広がり、中央を貫通する前記ディテクタとともに前記出射光を受光する蛍光体、および
前記蛍光体の前記出射光の波長に対応した発光状態を撮影するカメラを備え、
前記光軸調整部は、前記カメラから取得した前記蛍光体の発光分布情報に基づいて、前記探索計算における範囲の絞り込みを行うことを特徴とする請求項1に記載の光学特性検査装置。
【請求項6】
前記光半導体素子を撮影する素子用カメラを備え、
前記光軸調整部は、前記素子用カメラから取得した前記光半導体素子の位置を示す情報に基づいて、前記探索計算における初期位置を設定することを特徴とする請求項1に記載の光学特性検査装置。
【請求項7】
前記光半導体素子の位置を測定するレーザ変位計を備え、
前記光軸調整部は、前記レーザ変位計から取得した前記光半導体素子の位置を示す情報に基づいて、前記探索計算における初期位置を設定することを特徴とする請求項1に記載の光学特性検査装置。
【請求項8】
被検査体として、複数の前記光半導体素子をそれぞれ個別に動作させる被検査体動作電源を備え、
前記光軸調整部は、複数の前記光半導体素子から、互いに異なるタイミングで出射するように、前記被検査体動作電源を制御し、複数の前記光半導体素子のうちのひとつの素子に対する前記探索計算の結果を他の素子に対する前記探索計算に利用することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の光学特性検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学特性検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザ、マッハツェンダー変調器等の光半導体素子といった素子の光学特性を検査する際、出射端面に対してディテクタを光軸位置に緻密に合わせる必要がある。しかし素子の特性によるばらつき、検査装置内での素子等の位置合わせ精度によるばらつき等により、検査のたびに光軸位置が異なる。
【0003】
例えば、光半導体素子の出射端面とディテクタの光軸調整を行う場合、光半導体素子から出射される光信号をディテクタで受光し、受光した光信号を電気信号等に変換して、その信号強度を確認しながら光軸調整を行う。そのため、手動で行う場合には、作業者の技量に検査結果が左右されるとともに、光軸調整に時間がかかるという課題がある。
【0004】
一方、プログラムでモータを動作させ、自動で光軸調整を行うことも可能であるが、決められた範囲内を全探索により探索することで最大光量が得られる点を取得する一般的な手法では、無駄な範囲も細かく信号を取得するため、光軸調整の時間が増大してしまう。あるいは、山登り法のようなアルゴリズムを使用し、光軸調整時間を短縮する手法も考えられる。しかし、検査前の素子、すなわちその素子の特性が未知である場合はピークが必ずしも1つであるとは限らず、山登り法のような手法では局所的最適解となってしまう可能性がある。
【0005】
そこで、ガウス過程回帰のような回帰手法を用いる(例えば、特許文献1参照。)ことで、局所的最適点での収束を回避し、大域的最適点を少ない手順で求めることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-85801号公報(段落0060、図12図14
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般的な回帰手法では、目的変数に対するノイズは考慮されるが、モータの繰り返し再現精度のような説明変数に不確実性がある場合、必ずしも大域的最適点に到達するとは限らなかった。
【0008】
本開示は、上記の課題を解決するものであり、局所的最適点での収束を回避し、少ない手順で求めた大域的最適点により光軸調整が可能な光学特性検査装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の光学特性検査装置は、光半導体素子からの出射光を受光するディテクタ前記光半導体素子の出射面の角度方向の位置、前記出射光の光軸に沿った位置、前記光軸に垂直な方向の位置、前記ディテクタの前記出射面に対する前記光軸に沿った位置、前記光軸に垂直な方向の位置のうちのいずれか測定位置として位置決め駆動する駆動装置、および前記駆動装置の駆動を制御し、位置決めを行うごとに前記駆動装置から取得した前記測定位置を示す位置情報と前記ディテクタから出力された光量情報に基づいて、前記測定位置のうち、前記光半導体素子から最大光量が得られる位置の探索計算を行い、前記光半導体素子の光軸調整を行う光軸調整部、を備え、前記光軸調整部は、前記駆動装置に起因する位置ずれ量を考慮し、非線形モデリングによる回帰手法を用いて前記探索計算を実行し、前記光軸調整部には、前記探索計算の収束状態を判定する収束判定部、および前記収束判定部がある程度収束したと判定すると、前記最大光量を示す可能性のある複数の位置のなかから、分散による重みづけ、あるいは乱数による振り分けにより、再探索位置を設定する再探索位置設定部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示の光学特性検査装置によれば、説明変数に対して不確実性を考慮した処理を行うことで局所的最適点での収束を回避できるので、大域的最適点を少ない手順で求めることで光軸調整が可能な光学特性検査装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1にかかる光学特性検査装置の構成を説明するためのブロック図である。
図2】検査対象である光半導体素子から発せられる光量の二次元分布を模擬した図である。
図3図3A図3Bは、それぞれ全探索による光軸調整での探索点の推移を示す図とガウス過程回帰を用いた光軸調整での探索点の推移を示す図である。
図4図4A図4Bは、ガウス過程回帰を用いた光軸調整での測定値と測定値に基づく予測平均値と標準偏差の2倍の範囲について、探索初期の段階を示す図とさらに探索を進めた状態を示す図である。
図5】ガウス過程回帰を用いた光軸調整での測定値と測定値に基づく予測平均値と標準偏差の2倍の範囲について、探索がある程度完了した段階の状態を示す図である。
図6】実施の形態1にかかる光学特性検査装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図7】実施の形態1にかかる光学特性検査装置の動作における、光軸調整工程での動作を説明するためのフローチャートである。
図8】実施の形態1にかかる光学特性検査装置の演算処理を実行する部分のハードウェア構成を示すブロック図である。
図9】実施の形態1の第一変形例にかかる光学特性検査装置の構成を説明するためのブロック図である。
図10】実施の形態1の第二変形例にかかる光学特性検査装置の構成を説明するためのブロック図である。
図11】実施の形態2にかかる光学特性検査装置の構成を説明するためのブロック図である。
図12】実施の形態2の変形例にかかる光学特性検査装置の構成を説明するためのブロック図である。
図13】実施の形態3にかかる光学特性検査装置の前段階での構成を説明するためのブロック図である。
図14】実施の形態3にかかる光学特性検査装置の後段階での構成を説明するためのブロック図である。
図15】実施の形態3にかかる光学特性検査装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図16】実施の形態3の第一変形例にかかる光学特性検査装置の構成を説明するためのブロック図である。
図17】実施の形態3の第二変形例にかかる光学特性検査装置の構成を説明するためのブロック図である。
図18】実施の形態4にかかる光学特性検査装置の構成を説明するためのブロック図である。
図19】実施の形態4の第一変形例にかかる光学特性検査装置の構成を説明するためのブロック図である。
図20】実施の形態4の第二変形例にかかる光学特性検査装置の構成を説明するためのブロック図である。
図21】実施の形態5にかかる光学特性検査装置の構成を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の光学特性検査装置では、半導体レーザといった自ら発光し光源として機能する発光素子に加え、マッハツェンダー変調器のような変調器が検査対象となる。ただし、以下では、被検査体として、半導体レーザを用いた場合を例にして説明するが、変調器を対象とする場合は、変調器に光信号を入力するために別途光源を設けることとする。
【0013】
実施の形態1.
図1図7は実施の形態1にかかる光学特性検査装置の構成と動作について説明するためのもので、図1は光学特性検査装置の構成を説明するため、被検査体と光を検知する部分の空間配置を模したブロック図である。
【0014】
そして、図2は検査対象(被検査体)である光半導体素子から発せられる光量の光軸に垂直な面での二次元分布を模擬し、光強度が強くなるほど白くなるように表した図、図3Aは全探索による光軸調整での探索点の推移を示す図、図3Bはガウス過程回帰を用いた光軸調整での探索点の推移を示す図である。
【0015】
また、図4A図4B、および図5は、ガウス過程回帰を用いた光軸調整での測定値(×)と測定値に基づく予測平均値(実線)と標準偏差の2倍の範囲(網掛け)を示すもので、図4Aは探索初期の段階を示す図、図4Bはさらに探索を進めた状態を示す図、そして図5は不確実性を考慮した処理において、再探索を開始する段階として、探索がある程度完了した段階の状態を示す図である。図6は光学特性検査装置の全体動作を説明するためのフローチャート、図7は光軸調整工程での動作を説明するためのフローチャートである。
【0016】
実施の形態1における光学特性検査装置1は、図1に示すように、被検査体900である光半導体素子の出射端面に対して、光を検知するディテクタ2を光軸Aoの位置(光軸位置)に合わせ(光軸調整)、被検査体900の光学特性を検査する装置である。
【0017】
被検査体900である光半導体素子に対しては、被検査体900を位置決め固定する被検査体固定治具6と被検査体900を動作(発光、または変調)させるための被検査体動作電源7を備えている。被検査体固定治具6は、光半導体素子の最大公差に合わせてざぐり穴を有してもよい。そのような設計にすることにより、光軸調整範囲を制限することが可能となり、より高速に回帰計算が収束することが期待できる。また、光半導体素子の検査を実施するために必要であれば、温度をコントロールする素子、例えばペルチェ素子などを備えていてもよい。また、使用環境により素子位置の固定が困難な場合は真空吸着するための機構を備えていてもよい。
【0018】
そして被検査体900の出射面に検知面を対向させるように配置されるディテクタ2、ディテクタ2を機械的に駆動するディテクタ駆動装置3、ディテクタ2が出力する光信号Soを電気信号Seに変換する光電変換器5を備えている。そして、ディテクタ2が検知した光量(電気信号Se)とディテクタ駆動装置3から出力されるディテクタ2の位置情報Ipdに基づいて、探索点を設定し、ディテクタ駆動装置3の駆動を制御(駆動信号Scdを出力)する光軸調整部4を備えている。さらに、光学特性検査の全体動作を制御する検査制御部8を備えている。
【0019】
ディテクタ2には、例えば光ファイバ、フォトダイオード、レンズ付きファイバ、先球ファイバなどを用いる。また、ディテクタ2の材料は被検査体900の出射光波長に合わせて適切に選定することが好ましい。
【0020】
ディテクタ駆動装置3は、ディテクタ2を被検査体900の出射面に対して水平方向(光軸Aoに垂直)、および出射方向に駆動する。ディテクタ駆動装置3の駆動には、例えばステッピングモータなどを用いる。一般に、レーザダイオード等の光軸位置は10μm程度であるため、それより分解能の細かい機器を使用することが好ましい。また、より緻密に調整が必要な方向に関しては、同じ方向に対して分解能の異なるステッピングモータ等を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
光軸調整部4は、カーネル関数を用いた非線形モデリングによるガウス過程回帰を用い、電気信号Seと位置情報Ipdに基づいて、探索点を設定する最適位置探索部41と、不確実性を考慮して説明変数を処理する変数処理部42を備えている。さらに、収束の状態を準収束と完全収束に2段階で判定する収束判定部43と、準収束と判定された際に再探索位置を設定する再探索位置設定部44を備えている。
【0022】
ディテクタ駆動装置3を上述した光軸調整部4と連携動作させることで、被検査体900から出射される光の高い出力を得られる座標にディテクタ2を移動させることができる。最適点の探索時には、例えば位置座標(位置情報Ipd:例えばXYZ)を説明変数、光量(電気信号Se)を目的変数とし最適位置を探索、設定する。また、ディテクタ駆動装置3には、角度を調整する機能を追加してもよい。その場合は、角度情報も説明変数に加える。
【0023】
なお、ガウス過程回帰は、一般に線形であるが、光半導体素子のような複数のピークが存在する場合には、ガウス過程回帰を含め線形なモデリングは不向きであり、カーネル関数を用いることで非線形なモデリングを行ったガウス過程回帰が望ましい。
【0024】
ここで、光学特性検査装置1の動作説明の前に、一般的な探索(全探索)とガウス過程回帰の違い、および一般的なガウス過程回帰による探索点の設定における課題と不確実性を考慮した変数処理を行った探索点の設定について説明する。
【0025】
被検査体900となる光半導体素子から発せられた光量分布が図2に示すように、ピークスプリットが生じてピークが2つある場合について検討する。例えば、全探索により光軸調整を実施した場合は、図3Aに示すように、探索点(白丸)は、領域全体を網羅するように、順次設定される。この場合も、ピークにより近い点を再度細かく探索しなおすといった工夫は一般に行われると考えられる。
【0026】
一方、ガウス過程回帰により光軸調整を実施した場合は、図3Bに示すように、初めに境界付近(周縁部)を探索し、その後、期待値の高い点を探索点として設定していく。このような挙動により、全探索よりも少ない探索点で、高い光強度が得られる探索点に到達させることが期待できる。
【0027】
このようなガウス過程回帰ではあるが、一般的なガウス過程回帰でも、目的変数に対するノイズは考慮して設計される。しかし、今回のようなモータによる駆動を伴うケースでは、説明変数に対しても一定のノイズ、例えばステッピングモータの繰り返し再現精度に代表されるような不確実性を考慮する必要がある。
【0028】
このような入力変数に対するノイズの考慮は統計学では難しい問題とされており、単純にガウス過程回帰を適用するだけでは安定的に正確で高速な調整が実現できない可能性がある。すなわち、ある程度高速で光軸調整は完了するが、入力にノイズが含まれるため最大の光強度が得られる点で計算が収束しない可能性がある。
【0029】
そこで、本開示の光学特性検査装置1では、例えば、ステッピングモータの位置情報(説明変数)がステッピングモータの繰り返し再現精度分、確率的に分布することを考慮した処理(変数処理部42による変数処理)を付加することにより、ガウス過程回帰の欠点を克服する。
【0030】
ステッピングモータの将来の位置ずれ量は、現在のモータ位置に強く依存すると考えられるためマルコフ性を有すると考えられる。したがって、説明変数にマルコフ性を考慮する処理を加えることにより、困難性を回避できる。そして例えば、光軸探索がある程度完了(準収束)したら、最適点と思われる位置に確率的に何度か立ち寄る処理(処理A)を行うアルゴリズムを備えるようにする。あるいは、何度か立ち寄る確率を最大の光強度が得られる期待値により変動させる処理(処理B)を行うアルゴリズムを備えるようにする。
【0031】
準収束とは、現時点で探索および分散計算が収束している範囲において、これ以上の期待値が得られる点が存在しないことが確定したタイミングとして設定している。換言すれば、再探索で最大の光量が得られることが期待できるタイミングであり、図4A図5を用い、準収束のタイミングについて説明する。なお、図における計算(予測の平均値)では、すべて目的変数に対するノイズを考慮した計算を行っているため、測定データを推定した関数(実線)が必ずしも測定点(×)通る設定とはなっていない。
【0032】
図4Aに示す段階では、まだ探索数が十分でなく、最大のy(目的変数)が得られるx(説明変数)が-3~―2の範囲か、1~2の範囲にあるのかわからない。また、探索が必要な値域も十分狭まっていない。このタイミングで、一度探索した点を再探索しても無駄な探索となる可能性が高いため、ここでは準収束とは判定されず、再探索は行わない。
【0033】
ここから、さらに探索をして、図4Bに示すような状態まで探索が進めば、大体x=(1.5~2.5)の範囲にyの最大点がありそうなことがわかる。ただし、ここでx=2のデータは、ステッピングモータの繰り返し精度分誤差を含んでいる。このタイミングで、再探索等の処理を付加することによりステッピングモータの繰り返し精度の影響を最小化することができる。
【0034】
また、準収束になった際に実施する、処理A:「最適点と思われる位置に確率的に何度が立ち寄る」、あるいは処理B:「何度か立ち寄る確率を最大の光強度が得られる期待値により変動させる」の動作について、図5のような状態になったケースで説明する。
【0035】
この場合、x=-3.0付近とx=2.0付近の2か所で、平均値+2σが最大値を示しそうなことがわかる。ただし、x=-3.0で最大値を示しそうなのは、単に分散が大きいためである。したがって、このケースでは分散により重みづけをし、分散が小さいx=2.0の方をより再探索しやすくなるように設計することが処理Bの動作に対応する。
【0036】
処理Aについては、準収束のタイミングで確率的にX=2.0またはX=-3.0(どちらに行くかは乱数等で振り分ける)を再探索する動作に対応する。この確率は、実際に実物を用いて実験を行い最適な確率を設定することとなると考えられる。例えば、最適な確率とは、様々な測定対象を用いて確率を変化させ、自動光軸調整を実施し、ピーク調整が実現できかつ、タクトタイムが最も短くなる確率が適切であると考えられる。また、確率を固定するのではなく、前述の確率に加えて再探索点、あるいはその付近の分散の大きさを再探索の確率に影響させる工夫も可能であると考えられる。
【0037】
また、マルコフ性を考慮した動作について説明する。例えば上述した例において、xを増加させる方向に移動してx=2.0の点を探索したとする。その際、x=0.0からxを増大させる方向に移動した場合と、x=4.0からxを減少させる方向に移動した場合では、物理的に考えれば慣性により位置精度は異なってくると考えられる。x=0.0からでは慣性により、x=2.0よりやや大きなところに停止しやすく、x=4.0からでは、逆にx=2.0よりやや小さなところに停止しやすくなる。この慣性による位置ずれの起きやすさを想定した動作(処理)により、目的変数に対するノイズの影響を最小化することが可能になると考えられる。
【0038】
上述したように、カーネル関数を用いることで非線形なモデリングを行ったガウス過程回帰に対して、再探索等の付加処理を行うように構成した光軸調整部4を備えた光学特性検査装置の動作について、図6、7のフローチャートを参考にして説明する。
【0039】
まず、図6に示すように、被検査体900を被検査体固定治具6等に位置決め固定する(ステップS100)。この作業は、ピンセット等を用いた手作業、あるいは検査制御部8の指令に基づき、吸着コレット等を用いて自動で実施するようにしてもよい。つぎに、被検査体900を動作させるための被検査体動作電源7に被検査体900を接続する(ステップS110)。この接続には、被検査体900の電極に対してプローブ等を接触させて実施する。
【0040】
被検査体900を被検査体動作電源7に接続した後、被検査体動作電源7をONし、被検査体900を動作させる(ステップS120)。この作業も、手動、あるいは検査制御部8の指令に基づき、自動で実施するようにしてもよい。この際、動作条件は問わないが、光軸調整を実施するにあたり連続で発光(または変調)させる条件で動作させることが好ましい。
【0041】
つぎに、上述したように、探索点を順次設定しながら被検査体900から出射される光をディテクタ2で受光、光軸調整の工程を実施する(ステップS200)。光軸調整工程では、図7に示すように、はじめに目的変数に対するノイズを考慮した変数処理を実施すする(ステップS210)。そして、カーネル関数を用いることで非線形なモデリングを行ったガウス過程回帰を用いて、探索点の設定と設定した探索点へ移動しての光量測定結果に基づいて分散計算を実施する(ステップS220)。
【0042】
この際、ディテクタ2はディテクタ駆動装置3を用いて最適位置探索部41が指定した位置(駆動信号Scd)に移動することで、統計的に高い出力が得られることが期待できる位置に移動させられる。なお、ステップS220では、上述したマルコフ性の考慮として、慣性による位置ずれを想定してモータ駆動を制御するようにしてもよい。
【0043】
収束状態を判定し(ステップS230)、未収束と判定した場合はステップS220に移行し、再探索を行う。一方、光軸探索がある程度完了している、つまり準収束と判定した場合は、上述した処理A、処理Bにより、再探索位置を設定(ステップS250)し、ステップS220に移行し、再探索を行う。また、完全に収束したと判定した場合は、光軸調整工程を終了する。
【0044】
光軸調整工程を終了して光軸が調整されると、光学特性検査を実行する(ステップS300:図6)。光学特性検査では、被検査体動作電源7の出力を検査項目に応じて変化させ、あるいは検査項目に応じて光軸調整とは異なるパターンでディテクタ駆動装置3を駆動し、被検査体900の光学特性を検査する。検査が完了すると検査完了品を取り出し(ステップS400)、検査を終了する。
【0045】
これにより、局所的最適点での収束を回避し、少ない手順で求めた大域的最適点により光軸調整が可能になる。また、ニューラルネットワークなどの非線形的な回帰手法の場合は、カーネル関数を用いて非線形化したガウス過程回帰と同様に、不確実性を考慮した処理を行うことで、局所的最適点での収束を回避し、少ない手順で求めた大域的最適点により光軸調整が可能になる。
【0046】
一方、群粒子最適化のような複数点を移動させることにより最適点を探索するようなアルゴリズムも、光学素子の検査には不適である。また、測定対象が単純な正規分布に近い光学ピークを有するものか不明であるため、確率的勾配降下法も不適である。さらに、一般に光学ピークと位置の関係は非線形であるため線形回帰手法単体では適用が困難であると考えられる。線形モデリング、確率的推定手法も複数のピークが存在する場合には不向きである。つまり、非線形モデリング手法を用い、不確実性を考慮した処理を行うことで、局所的最適点での収束を回避し、少ない手順で求めた大域的最適点により光軸調整が可能になる。
【0047】
本開示の光学特性検査装置1において、光軸調整部4、あるいは検査制御部8のように演算処理を行う部位は、図8に示すように、プロセッサ401と記憶装置402を備えたひとつのハードウェア400によって構成することも考えられる。記憶装置402は、図示していないが、ランダムアクセスメモリ等の揮発性記憶装置と、フラッシュメモリ等の不揮発性の補助記憶装置とを具備する。また、フラッシュメモリの代わりにハードディスクの補助記憶装置を具備してもよい。プロセッサ401は、記憶装置402から入力されたプログラムを実行する。この場合、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプロセッサ401にプログラムが入力される。また、プロセッサ401は、演算結果等のデータを記憶装置402の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置にデータを保存してもよい。
【0048】
第一変形例.
本第一変形例では、ディテクタの代わりに被検査体を駆動するようにした例について説明する。図9は第一変形例にかかる光学特性検査装置の構成を説明するため、被検査体と光を検知する部分の空間配置を模したブロック図である。簡潔化のため、以降は、図1と比べて光軸調整部については内部構成の描写を省略している。
【0049】
第一変形例にかかる光学特性検査装置1は、図9に示すように、被検査体900に対して、固定治具に代えて、被検査体900を移動可能に支持する被検査体駆動機構6Mを備えるようにした。そして、光軸調整部4から被検査体駆動機構6Mに対しては、被検査体駆動機構6Mの駆動を制御する信号Scsが出力され、被検査体駆動機構6Mから光軸調整部4に対しては、被検査体900の位置情報Ipsが出力されるようにしている。
【0050】
この際、被検査体900である光源の移動方向(および位置)はデカルト座標系のXYZに限らず、球座標系のrθφ方向としてもよい。また、本第一変形例では、被検査体900からディテクタ2への光の入射角を補正するために、ディテクタ2には先球ファイバ等の入射角を補正できる機能を有するディテクタを用いることが好ましい。本第一変形例において、光源側を移動させることにより、とくに角度方向に移動させた場合、より小さい移動量で大域的最適解が得られる。
【0051】
また、被検査体900と被検査体駆動機構6Mは、被検査体900である光源の出射面を移動に対して正確に追従させるために、真空吸着機構等の被検査体900を固定するための機能を備えていることが好ましい。また、光源側を移動させるので、被検査体900と被検査体動作電源7を接続する機構、例えばプローブ等も被検査体900と同様に移動する機構を備える必要がある。
【0052】
また、本第一変形例ではディテクタ2を動かすための機構は図示していないが、ディテクタ2を動かすための機構を備えていてもよい。
【0053】
第二変形例.
本第二変形例では、ディテクタの前方にレンズを配置するようにした例について説明する。図10は第二変形例にかかる光学特性検査装置の構成を説明するため、被検査体と光を検知する部分の空間配置を模したブロック図である。
【0054】
第二変形例にかかる光学特性検査装置1は、図10に示すように、第一変形例で説明した構成に、被検査体900の出射面とディテクタ2の間にレンズ2opを挿入した。このような構成とすることにより、ディテクタ2は必ずしも光の入射角を補正する機能を備えていなくともよくなる。
【0055】
レンズ2opには、例えば凸レンズ、球面凸レンズ、非球面レンズを使用する。また、本第二変形例において、ディテクタ2のみではなく、被検査体900、レンズ2opに対して移動させる機構を備えてもよい。装置のスペース、光源の出射特性に応じて適切に移動機構を備えることが好ましい。
【0056】
実施の形態2.
本実施の形態2においては、実施の形態1で用いた単体のディテクタに代えて、複数のディテクタを入射面が円弧状に並ぶように束ねたディテクタ束を設けるようにした。図11は実施の形態2にかかる光学特性検査装置の構成を説明するため、被検査体と光を検知する部分の空間配置を模したブロック図である。なお、探索点の設定動作については、実施の形態1と同様であり、実施の形態1で説明した図2図7を援用する。
【0057】
実施の形態2にかかる光学特性検査装置1では、実施の形態1で説明した単体のディテクタ2ではなく、複数のディテクタ2を入射面が円弧状に並ぶように束ねたディテクタ束2Gを備えるようにした。そして、光軸調整部4は、ディテクタ束2Gのそれぞれのディテクタ2が検知した光量(電気信号SeG)とディテクタ駆動装置3から出力されるディテクタ束2Gの位置情報IpGに基づいて、探索点を設定する。そして、設定した探索点に基づいて、ディテクタ駆動装置3の駆動を制御(駆動信号ScGを出力)する。
【0058】
ディテクタ束2Gは光軸Aoを含む平面において入射面が円弧状に配置され、出射光方向での位置(光源からの距離)がずれるように配置している。そのため、出射光方向に対して移動させる必要がなくなる。そのため、ディテクタ束移動装置3Gは、実施の形態1で説明したディテクタ束移動装置3Gに対して1軸分削減可能であり、また目的変数が削減できるので、より高速に回帰計算が収束する効果がある。
【0059】
なお、図では、ディテクタ束2Gを構成する各ディテクタ2の入射面は、光源から見て凸状にずれた構造としているが、凹状等の構造としてもよく測定対象である光半導体素子の特性に応じて形状を適切に決定することが好ましい。
【0060】
変形例.
なお、ディテクタの入射面の配置は、光源からの距離が異なるのであれば、円弧状に限るものではない。本第変形例では、複数のディテクタの入射面が光源からの距離が異なるように直線状に並ぶように配置した例について説明する。図12は変形例にかかる光学特性検査装置の構成を説明するため、被検査体と光を検知する部分の空間配置を模したブロック図である。
【0061】
変形例にかかる光学特性検査装置1は、図12に示すように、直線上にずらしてもよい。ディテクタ束2Gの光源からの距離を、配置の中央を頂点または底として円弧状に変化させるのではなく、例えば片側のエッジから反対側のエッジ方向へ単調に変化させる。このような形態とすることにより、ディテクタ束2Gの面積が十分大きい場合は1軸方向に移動させるだけで光軸調整が完了する。
【0062】
実施の形態3.
実施の形態1と2では、予備測定なしに光軸調整を行う例について説明した。本実施の形態3では、光量マッピング情報を取得してから光軸調整を行う例について説明する。図13図15は実施の形態3にかかる光学特性検査装置の構成と動作を説明するためのもので、図13は光量マッピング情報を取得する際の被検査体と光量マッピングを取得する部分の空間配置を模したブロック図、図14は光量マッピング情報を得た後に装備を入れ替えた状態での被検査体と光を検知する部分の空間配置を模したブロック図である。また、図15は光学特性検査装置の動作を説明するためのフローチャートである。なお、探索点の設定動作については、実施の形態1と同様であり、実施の形態1で説明した図2図6を援用する。
【0063】
実施の形態3にかかる光学特性検査装置1は、図13に示すように、被検査体固定治具6に固定された被検査体900の出射面に対し、前段階としてカメラ2Cを配置する。カメラ2CのセンサにはCCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサ、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)センサ等を用いる。カメラ2Cは、カメラ2Cの出射光方向での位置を調整するために少なくとも1軸方向(図中矢印方向)に移動可能なカメラ移動装置3Cに支持されている。これにより図15に示すように、カメラ2Cで光源から出射された光の光量マッピング情報が取得できる(ステップS130)。
【0064】
ここで得られたマッピング情報を基に、例えば図14に示すような構成に装備を入れ替える(ステップS140)。その際、光軸調整(ステップS200)においては、ディテクタ2の移動範囲は光量マッピング上での最大光量が得られた座標点からカメラ2Cの分解能とステッピングモータの分解能の範囲だけ探索させればよい。つまり、光量マッピング情報を事前に取得することで、より少ない探索点で、正確な光軸調整ができるようになる。
【0065】
第一変形例.
光量マッピング情報の取得に用いる機器は、カメラに限ることはない。本第一変形例では、カメラに代えて、蛍光体を用いる例について説明する。図16は第一変形例にかかる光学特性検査装置の被検査体と、光量マッピング情報の取得部分と光を検知する部分の空間配置を模したブロック図である。
【0066】
第一変形例にかかる光学特性検査装置1では、光量マッピング情報を取得する際の構成として、カメラの代わりに図16に示すように、蛍光体2Lを用いてもよい。光源(被検査体900)の出射光の先に、光源の発光波長に対応した蛍光体2Lを光軸Aoに対して垂直に広がるように配置する。また、蛍光体2Lの中央を貫通するようにディテクタ2を配置する。
【0067】
光軸調整を実施する際、光源を発光させた状態で、カメラ2Cにより蛍光体2Lを撮像することにより、蛍光体2Lの発光状態を基に光源からの光の広がりに関するマッピングデータを取得し、同時に光軸調整を行う。つまり、図15で説明した光量分布情報取得(ステップS130)は、ステップS200のなかで並行して実施され、装備入れ替え(ステップS140)はスキップすることになる。この場合は、蛍光体2Lの発光状態を目的変数とし、ガウス過程回帰等の統計手法を使用することにより高速に光軸調整が完了できる。
【0068】
この際、蛍光体2Lは光源の出射光広がりを十分考慮した面積、具体的には1×1cm2程度の受光面積を有することが好ましい。また、本変形例において、蛍光体2Lの発光状態をより精緻に検出するために暗室下で光軸調整を実施してもよい。
【0069】
第二変形例.
あるいは、光信号を電気信号に変換する光電変換器と光軸調整部との接続には、AD変換ボードを介してもよい。図17は第二変形例にかかる光学特性検査装置の被検査体と光を検知する部分の空間配置を模したブロック図である。
【0070】
第二変形例にかかる光学特性検査装置1では、図17に示すように、AD変換ボードを備えた計算機で光軸調整部4Aを構成するようにした。これにより、AD変換ボートを介して計算機と光電変換器5を電気的に接続する。例えば、モータの移動周期とAD変換ボードからの信号取得タイミングを同期させることにより、特定の位置における光出力Soを電気信号Seに変換する光電変換器5の出力を連続して取得することが可能となる。このような構成にすることにより統計的に高い出力が得られる点に移動するまでの間にも電気信号のデータを取得することが可能となり、結果として多量のデータによる回帰を実施、結果として高速で回帰計算の収束が期待できる。
【0071】
実施の形態4.
本実施の形態4では、光軸調整において、被検査体の位置と角度を測定する装備を備えた例について説明する。図18は実施の形態4にかかる光学特性検査装置の構成と動作を説明するためのもので、被検査体の設置状態を確認する部分、および光を検知する部分の空間配置を模したブロック図である。なお、光軸調整動作については、実施の形態1と同様であり、実施の形態1で説明した図2図5図7、および実施の形態3で説明した図15を援用する。
【0072】
実施の形態4にかかる光学特性検査装置1は、図18に示すように、被検査体900である光半導体素子(光源)に対し、出射面側にディテクタ駆動装置3に支持されたディテクタ2が設けられている。この際、ディテクタ2は単体のディテクタ2を用いてもよいし、ディテクタ2を束ねて実効的な受光面積を増大させてもよい。
【0073】
被検査体900である光源は、光軸調整前にカメラ6Cを用いて撮像される。そこで得られた光源の画像情報から画像処理技術を用いて、出射端面の位置情報、および光源の傾き角度といった配置情報を取得する。これは、実施の形態3の図15で説明した光量分布情報取得(ステップS130)を光源配置情報取得と読み代えることに対応する。また、装備入れ替え(ステップS140)はスキップすることになる。
【0074】
画像処理により得られた光源の配置情報を基にディテクタ2を移動させる範囲を制限する。このような構成にすることにより、より高速に光軸調整が終了する。また、画像処理により得られた光源の位置情報、傾き角度、収束したディテクタ2(ディテクタ駆動装置3)の位置情報Ipを学習データとして、機械学習をさせてもよい。機械学習を用いることにより、ディテクタ2の初期位置をより最適点に近い点に設定することが可能となり、かつディテクタ2の移動範囲をより制限することが可能となる。
【0075】
第一変形例.
光源の配置情報の取得には、カメラと組み合わせてレーザ変位計などを用いてもよい。本第一変形例では、カメラと一次元レーザ変位計を組み合わせて光源の配置情報を取得する例について説明する。図19は第一変形例にかかる光学特性検査装置の被検査体と、被検査体の配置情報の取得部分と光を検知する部分の空間配置を模したブロック図である。
【0076】
第一変形例にかかる光学特性検査装置1では、配置情報を取得する構成として、図19に示すように、カメラ6Cと一次元レーザ変位計6Dを組み合わせるようにした。一次元レーザ変位計6Dは、被検査体900である光源に対して、例えば光源として板状の光半導体素子を用いる場合、主面の法線に沿って離れた位置から主面に対してレーザ光を当てるように配置する。このような構成にすることにより、カメラ6Cで得られた光源の位置、傾き情報に加えて、一次元レーザ変位計6Dからの高さ情報を取得することができる。
【0077】
また、一次元レーザ変位計6Dにより、光源の高さ情報として複数点を取得することにより、光源の鉛直方向での傾き情報を取得することが可能となる。光源の高さ情報、鉛直方向の傾き情報も予想アルゴリズムに入力することにより、より最適点に近い初期位置予想が可能となり、より高速に光軸調整が完了する。また、この場合においても機械学習などを用いて初期位置の最適化を行ってもよい。
【0078】
第二変形例.
レーザ変位計として、二次元レーザ変位計を用いてもよい。図20は第二変形例にかかる光学特性検査装置の被検査体と、被検査体の配置情報の取得部分と光を検知する部分の空間配置を模したブロック図である。第二変形例にかかる光学特性検査装置1は、第一変形例におけるカメラ6Cと一次元レーザ変位計6Dの組み合わせに代えて、図20に示すように二次元レーザ変位計6D2を備えるようにした。
【0079】
このような構成とすることにより、被検査体900である光源の表面モルフォロジー取得が可能となり、光源の出射面の傾き、鉛直方向の傾き、水平方向の位置情報、つまり配置情報を一度に取得することが可能となる。二次元レーザ変位計6D2で得られた情報を基にディテクタ2の初期位置を決定する際に、より最大光量が得られる点付近に初期位置を設定することが可能となる。また、傾きの情報があるため、探索範囲の削減も可能となる。結果として、検査時間および計算時間を削減することが可能となる。
【0080】
実施の形態5.
上記各実施の形態では、被検査体として光半導体素子をひとつずつ光軸調整を行う例について説明した。本実施の形態5では、被検査体として一度に複数の光源を検査する例について説明する。図21は実施の形態5にかかる光学特性検査装置の構成と動作を説明するためのもので、被検査体としての2つの光源と、光を検知する部分の空間配置を模したブロック図である。なお、光軸調整動作については、実施の形態1と同様であり、実施の形態1で説明した図2図7を援用する。
【0081】
実施の形態5にかかる光学特性検査装置1は、図21に示すように、2つの光半導体素子900aと光半導体素子900bを被検査体900として用いる。また、ディテクタとしては複数のディテクタ2を束ねたディテクタ束2Gを用いる。なお、簡潔にするため光源は2つとしているが、3つ以上であってもよい。
【0082】
被検査体動作電源7としては、例えば、光半導体素子900aと光半導体素子900bに対して周期が既知であるパルス信号を交互に印加し、そのパルス信号をトリガーとして光電変換器5から電気信号SeGを取得するようにする。このような構成にすることにより、ディテクタ束2Gを移動させることなく、複数の光半導体素子900a、900bそれぞれの光信号を区別して取得可能となる。
【0083】
また、ディテクタ束2Gの移動先の決定には、上述したカーネル関数を用いた非線形モデリングによるガウス過程回帰を用い、不確実性を考慮した処理を行う。そして、例えば、初めに被検査体900のうち、ひとつの光半導体素子の回帰計算が収束するようディテクタ束2Gを移動させ、ふたつ目の光半導体素子からの回帰計算にはひとつ目で移動させた際の情報を再利用する。
【0084】
このような構成とすることにより、光半導体素子一つ当たりの平均的な回帰計算の収束時間を短縮させることが期待できる。この際、光軸調整部4として使用する計算機の性能、例えばメモリ、CPU(Central Processing Unit)のスペックは、光半導体素子の数に応じて適切に選択することが好ましい。また、必要に応じて計算機は複数用いてもよい。
【0085】
本構成において、ディテクタとして光ファイバを使用する場合には、必ずしも1つのみを用いる必要はなく、ディテクタ束2Gと同様に束ねたものを使用してもよい。また、被検査体固定治具6に支持された光源同士のピッチが、例えばピッチ距離±1mm程度の範囲に収まる場合は、光半導体素子同士のピッチ間隔に合わせた光源数に応じたディテクタ、またはディテクタ束を備えていてもよい。
【0086】
また、複数の光半導体素子は必ずしも平面的に並んでいる必要はなく、立体的に配置されていてもよい。また、実施の形態4と同様に、被検査体900をカメラ6C、一次元レーザ変位計6D、二次元レーザ変位計6D2等を用いて撮像、高さ情報を取得しておき、その情報を使用してディテクタ束2Gの移動先を決定あるいは移動範囲を制限してもよい。
【0087】
また、ディテクタ束2Gの初期位置の決定には、実施の形態2、またはその変形例のように、カメラ2C、蛍光体2L等を用いて光源からの出射光の光量分布情報を事前に取得しておき、初期位置を決定してもよい。この時使用するカメラ2Cの視野、蛍光体2Lの蛍光面の面積は、複数ある光源の配置に応じて適切に決定する。
【0088】
なお、本開示は、様々な例示的な実施の形態および実施例が記載されているが、1つ、または複数の実施の形態に記載された様々な特徴、態様、および機能は特定の実施の形態の適用に限られるのではなく、単独で、または様々な組み合わせで実施の形態に適用可能である。したがって、例示されていない無数の変形例が、この明細書に開示される技術の範囲内において想定される。例えば、少なくとも1つの構成要素を変形する場合、追加する場合または省略する場合、さらには、少なくとも1つの構成要素を抽出し、他の実施の形態の構成要素と組み合わせる場合が含まれるものとする。
【0089】
以上のように、本開示の光学特性検査装置1によれば、光半導体素子(被検査体900)からの出射光を受光するディテクタ2、光半導体素子(被検査体900)およびディテクタ2のうちのいずれかの測定位置を位置決め駆動する駆動装置(ディテクタ駆動装置6、ディテクタ束移動装置6G、カメラ移動装置3C、被検査体駆動機構6M)、および駆動装置の駆動を制御し、位置決めを行うごとに駆動装置から取得した測定位置を示す位置情報Ipとディテクタ2から出力された光量情報(電気信号Se)に基づいて、測定位置のうち、光半導体素子(被検査体900)から最大光量が得られる位置の探索計算を行い、光半導体素子(被検査体900)の光軸調整を行う光軸調整部4、を備え、光軸調整部4は、駆動装置に起因する位置ずれ量を考慮し、非線形モデリングによる回帰手法(例えば、カーネル関数を用いて非線形モデリングを行ったが進過程回帰、ニューラルネットワーク)を用いて探索計算を実行するようにした。これにより、ノイズの影響を抑え、ピークスプリットが生じた場合でも局所的最適点での収束を回避し、少ない手順で求めた大域的最適点により光軸調整が可能となる。
【0090】
その際、光軸調整部4には、探索計算の収束状態を判定する収束判定部43、および収束判定部43がある程度収束したと判定すると、再探索位置を設定する再探索位置設定部44、が設けられているようにすれば、ノイズの影響をより小さくできる。
【0091】
またさらに、再探索位置設定部44は、最大光量を示す可能性のある複数の位置のなかから、分散による重みづけ、あるいは乱数による振り分けにより、再探索位置を設定するようにすれば、より確実にノイズの影響を小さくできる。
【0092】
光半導体素子(被検査体900)とディテクタ2との間に角度補正用のレンズ2opが配置されていれば、入射角の補正が不要になる。
【0093】
ディテクタとして、光半導体素子(被検査体900)の出射面からの距離が異なるディテクタを束ねたディテクタ束2Gを備えるようにすれば、束ねた(ディテクタ2を重ねた)方向の移動の省略により、目的変数が削減できるので、より高速に回帰計算ができる。
【0094】
出射光の光量分布を撮影するカメラ2Cを備え、光軸調整部4は、カメラ2Cから取得した出射光の光量分布情報に基づいて、探索計算における範囲の絞り込みを行うようにすれば、計算回数を削減でき、より高速に回帰計算ができる。
【0095】
あるいは、出射光を受光する蛍光体2L、および蛍光体2Lの発光状態を撮影するカメラ2Cを備え、光軸調整部4は、カメラ2Cから取得した蛍光体2Lの発光分布情報に基づいて、探索計算における範囲の絞り込みを行うようにしても、計算回数を削減でき、より高速に回帰計算ができる。
【0096】
光半導体素子(被検査体900)を撮影する素子用カメラ(カメラ6C)を備え、光軸調整部4は、素子用カメラ(カメラ6C)から取得した光半導体素子(被検査体900)の位置を示す情報に基づいて、探索計算における初期位置を設定するようにすれば、計算回数を削減でき、高速に回帰計算ができる。
【0097】
光半導体素子(被検査体900)の位置を測定するレーザ変位計(一次元レーザ変位計6D、二次元レーザ変位計6D2)を備え、光軸調整部4は、レーザ変位計から取得した光半導体素子(被検査体900)の位置を示す情報に基づいて、探索計算における初期位置を設定するようにしても、計算回数を削減でき、高速に回帰計算ができる。
【0098】
被検査体900として、複数の光半導体素子900a、900bをそれぞれ個別に動作させる被検査体動作電源7を備え、光軸調整部4は、複数の光半導体素子900a、900bから、互いに異なるタイミングで出射するように、被検査体動作電源7を制御し、複数の光半導体素子900a、900bのうちのひとつの素子に対する探索計算の結果を他の素子に対する探索計算に利用するようにすれば、計算回数を削減でき、高速に回帰計算ができる。
【符号の説明】
【0099】
1:光学特性検査装置、 2:ディテクタ、 2C:カメラ、 2G:ディテクタ束、 2L:蛍光体、 2op:レンズ、 3:ディテクタ駆動装置、 3C:カメラ移動装置、 3G:ディテクタ束移動装置、 4:光軸調整部、 41:最適位置探索部、 42:変数処理部、 43:収束判定部、 44:再探索位置設定部、 5:光電変換器、 6:被検査体固定治具、 6C:カメラ(素子用カメラ)、 6D:一次元レーザ変位計(レーザ変位計)、 6D2:二次元レーザ変位計(レーザ変位計)、 6M:被検査体駆動機構、 7:被検査体動作電源、 8:検査制御部、 900:被検査体(光半導体素子)、 Ip:位置情報、 Scd:駆動信号、 Se:電気信号。
【要約】
被検査体(900)からの出射光を受光するディテクタ(2)、被検査体(900)およびディテクタ(2)のうちのいずれかの測定位置を位置決め駆動する駆動装置、および位置決めを行うごとに駆動装置から取得した測定位置を示す位置情報(Ip)とディテクタ(2)から出力された電気信号(Se)に基づいて、測定位置のうち、被検査体(900)から最大光量が得られる位置の探索計算を行い、被検査体(900)の光軸調整を行う光軸調整部(4)、を備え、光軸調整部(4)は、駆動装置に起因する位置ずれ量を考慮し、非線形モデリングによる回帰手法を用いて探索計算を実行する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21