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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-04
(45)【発行日】2025-04-14
(54)【発明の名称】光送受信装置、及び光受信器
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/61 20130101AFI20250407BHJP
   H04B 10/077 20130101ALI20250407BHJP
【FI】
H04B10/61
H04B10/077 190
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024573907
(86)(22)【出願日】2023-07-24
(86)【国際出願番号】 JP2023026913
【審査請求日】2024-12-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 勇人
(72)【発明者】
【氏名】松田 恵介
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第2536040(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0280778(US,A1)
【文献】国際公開第2014/126132(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/61
H04B 10/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光送信器と光受信器を備え、
前記光送信器は、
送信すべきデータに第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号及び前記第1のシンボル周期と異なる第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号が挿入された光変調のためのデジタル信号である変調信号を生成する変調信号生成部と、
前記変調信号生成部により生成されたデジタル信号である変調信号をアナログ信号からなる変調信号に変換するデジタル/アナログ変換部と、
前記デジタル/アナログ変換部によりアナログ信号に変換された変調信号に基づいてCW光発生部からのCW光を変調して前記第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号及び前記第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号が挿入された変調光を生成する光変調部と、を備え、
前記光受信器は、
前記第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号及び前記第1のシンボル周期と異なる前記第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号が挿入された偏波多重された変調光を受信し、受信された変調光をコヒーレント検波してアナログ電気信号を出力する光コヒーレント検波部と、
前記光コヒーレント検波部からのアナログ電気信号をアナログ/デジタル変換してデジタル信号として出力するアナログ/デジタル変換部と、
前記アナログ/デジタル変換部からのデジタル信号を受け、受けたデジタル信号から抽出された、受信された偏波多重された変調光に挿入された前記第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号及び当該第1のパイロットシンボル信号と隣接する前記第1のシンボル周期と異なる前記第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号を用いて位相差を算出して前記受けたデジタル信号の周波数を補償する周波数差補償部を有する受信側デジタル信号処理部と、を備える
光送受信装置。
【請求項2】
前記光変調部は単一キャリア信号を光搬送波として変調光を生成し、
前記光コヒーレント検波部は単一キャリア信号を光搬送波とした変調光をアナログ電気信号にし、
前記受信側デジタル信号処理部における周波数差補償部は前記単一キャリア信号に対してデジタル信号の周波数を補償する、
請求項1に記載の光送受信装置。
【請求項3】
前記光変調部は複数の異なる周波数配置のサブキャリア信号を光副搬送波として周波数多重された変調光を生成し、
前記光コヒーレント検波部は複数の異なる周波数配置のサブキャリア信号を光副搬送波として周波数多重された変調光をアナログ電気信号にし、
前記受信側デジタル信号処理部における周波数差補償部は前記複数の異なる周波数配置のサブキャリア信号毎にデジタル信号の周波数を補償する、
請求項1に記載の光送受信装置。
【請求項4】
前記光変調部により生成される変調光は、X偏波及びY偏波それぞれが直交位相のI信号とQ信号に変調された光信号である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光送受信装置。
【請求項5】
前記第1のパイロットシンボル信号及び前記第2のパイロットシンボル信号はQPSK信号が用いられる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光送受信装置。
【請求項6】
前記第2のパイロットシンボル信号の第2のシンボル周期は、前記第1のパイロットシンボル信号の第1のシンボル周期の2以上の整数倍である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光送受信装置。
【請求項7】
第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号及び前記第1のシンボル周期と異なる第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号が挿入された偏波多重された変調光を受信し、受信した変調光をコヒーレント検波してアナログ電気信号を出力する光コヒーレント検波部と、
前記光コヒーレント検波部からのアナログ電気信号をアナログ/デジタル変換してデジタル信号として出力するアナログ/デジタル変換部と、
前記アナログ/デジタル変換部からのデジタル信号を受け、受けたデジタル信号から抽出された、受信した偏波多重された変調光に挿入された前記第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号及び当該第1のパイロットシンボル信号と隣接する前記第1のシンボル周期と異なる前記第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号を用いて位相差を算出して前記受けたデジタル信号の周波数を補償する周波数差補償部を有する受信側デジタル信号処理部と、を備える
光受信器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、デジタルコヒーレント光通信を行う光送受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信の分野において、メトロ・コアネットワーク及び海底光ケーブルシステムではデジタルコヒーレント技術が広く適用されている。
デジタルコヒーレント光通信において、データレートの向上を含めて高性能化及び高機能化が図られている。
【0003】
特に、デジタルコヒーレント方式の光トランシーバは、1台の光トランシーバにおいて、周波数軸上で干渉しない複数のサブキャリア信号をデジタル領域で生成することが可能である。また近年では、各サブキャリアに対して異なる情報を割り当て多様なサービスを同時収容する方式が示されている。
このように同時収容することにより、ハードウェア利用効率及び省空間化を実現することが可能である。
サブキャリア信号を送受信できるデジタルコヒーレント光通信技術として、例えば、非特許文献1にて示されている。
【0004】
また、デジタルコヒーレント方式では、送信装置と受信装置との間での光ファイバ伝送路において生じる位相変動に応じた位相補償を行うために、送信装置において、データ列に対してはKシンボル毎にパイロットシンボルを挿入して出力し、受信装置において、データ列におけるパイロットシンボルを検出し、予め定められた記憶装置に記憶された参照シンボルとから位相変動を推定し、位相変動に基づいて残留周波数オフセットの補償を行う光伝送システムが特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】H. Sun et al、「800G DSP ASIC Design Using Probabilistic Shaping and Digital Sub-Carrier Multiplexing」、JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, VOL. 38, NO. 17, SEPTEMBER 1, 2020、p.p.4744-4756
【文献】WO2014/126132
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1に示された光受信器は、光コヒーレント検波により検波され、出力される電圧信号をアナログ/デジタル変換器(ADC:Analog-to-digital converter)でデジタル信号に変換している。
一般に、アナログ/デジタル変換器のサンプリング速度が高い場合にはアナログデジタル変換前のアナログ受信信号をデジタル信号として正確に取得することができ、デジタル信号処理における波形歪み補償を正確に行い、受信後の信号品質を改善できる。
【0007】
しかし、例えば数ギガ級のサンプリングレート又はスループットのFPGA(Field Programmable Gate Array)をデジタル信号処理に用いる場合、あるいは、サブキャリア多重方式のために各サブキャリアの変調速度が低い場合などの低中速なデジタルコヒーレント信号を光受信器において取り扱う場合、送信と受信の光搬送波の間に周波数の差があると、受信側デジタル信号処理における波形歪み補償の能力が低下する。
【0008】
特許文献1に光伝送システムは、Kシンボル毎にパイロットシンボルを挿入しているものの、隣接するパイロットシンボル間の時間間隔が長く、送信装置の光搬送波の周波数に対して受信装置の光搬送波の周波数に差があると、位相補償に対して推測誤りが生じてしまう。
【0009】
本開示は上記した点に鑑みてなされたものであり、低中速なデジタルコヒーレント信号を取り扱う光受信器において、送信と受信の光搬送波の間における周波数の差による波形歪み劣化の要因に対する補償機能を有する光送受信装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る光送受信装置は、光送信器と光受信器を備え、光送信器は、送信すべきデータに第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号及び第1のシンボル周期と異なる第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号が挿入された光変調のためのデジタル信号である変調信号を生成する変調信号生成部と、変調信号生成部により生成されたデジタル信号である変調信号をアナログ信号からなる変調信号に変換するデジタル/アナログ変換部と、デジタル/アナログ変換部によりアナログ信号に変換された変調信号に基づいてCW光発生部からのCW光を変調して第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号及び第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号が挿入された変調光を生成する光変調部と、を備え、光受信器は、第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号及び第1のシンボル周期と異なる第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号が挿入された偏波多重された変調光を受信し、受信した変調光をコヒーレント検波してアナログ電気信号を出力する光コヒーレント検波部と、光コヒーレント検波部からのアナログ電気信号をアナログ/デジタル変換してデジタル信号として出力するアナログ/デジタル変換部と、アナログ/デジタル変換部からのデジタル信号を受け、受けたデジタル信号から抽出された、受信された偏波多重された変調光に挿入された第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号及び当該第1のパイロットシンボル信号と隣接する第1のシンボル周期と異なる第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号を用いて位相差を算出して受けたデジタル信号の周波数を補償する周波数差補償部を有する受信側デジタル信号処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、低中速なデジタルコヒーレント信号を取り扱う光受信器において、アナログ/デジタル変換器によるデジタル信号処理における波形歪み補償の能力の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係る光送受信装置の構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態1に係る光送受信装置における送信側デジタル信号処理部の構成を示すブロック図である。
図3】実施の形態1に係る光送受信装置における他の送信側デジタル信号処理部の構成を示すブロック図である。
図4】実施の形態1に係る光送受信装置における受信側デジタル信号処理部の構成を示すブロック図である。
図5】実施の形態1に係る光送受信装置において、デジタルコヒーレント方式における第1のパイロットシンボル信号Pと第2のパイロットシンボル信号Pが挿入されたシンボル信号系列の一例を示す図である。
図6】実施の形態1に係る光送受信装置において、デジタルコヒーレント方式における第1のパイロットシンボル信号Pと第2のパイロットシンボル信号Pが挿入されたシンボル信号系列の他の例を示す図である。
図7】実施の形態1に係る光送受信装置において用いられるデジタルコヒーレント方式における単一キャリア信号を周波数軸上で説明する図である。
図8】実施の形態1に係る光送受信装置において、光周波数の差の補償に対する効果をIQ信号空間で説明する図である。
図9】比較例として示す、光周波数の差の補償に対してIQ信号空間で説明する図である。
図10】比較例において、デジタルコヒーレント方式における1つのパイロットシンボル信号Pが挿入されたシンボル信号系列の一例を示す図である。
図11】比較例において、デジタルコヒーレント方式における1つのパイロットシンボル信号Pが挿入されたシンボル信号系列の他の例を示す図である。
図12】実施の形態1に係る光送受信装置のハードウェア構成を示す図である。
図13】実施の形態2に係る光送受信装置における送信側デジタル信号処理部の構成を示すブロック図である。
図14】実施の形態2に係る光送受信装置における受信側デジタル信号処理部の構成を示すブロック図である。
図15】実施の形態2に係る光送受信装置において用いられるデジタルコヒーレント方式におけるサブキャリア多重方式のサブキャリア信号を周波数軸上で説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
実施の形態1に係る光送受信装置について、図1から図12に従って説明する。
図中、破線矢印は光信号の流れを、実線矢印は電気信号の流れを示している。
実施の形態1に係る光送受信装置は、光アクセス及び光コア・メトロネットワークにおける光ファイバを伝送媒体とした光通信ネットワークシステム、並びに宇宙及び空間光通信などを想定した無線空間を伝送媒体とする光ファイバを用いない光通信ネットワークシステムにおいて、光信号の送受信を司る通信機器及び光トランシーバの、その送信機能と受信機能に着目した装置である。
【0014】
実施の形態1に係る光送受信装置は、デジタルコヒーレント方式の偏波多重された二位相偏移変調(BPSK:Binary Phase Shift Keying)、四位相偏移変調(QPSK:Quadrature Phase Shift Keying)、又は直交振幅変調(QAM:Quadrature Amplitude Modulation)などの位相の直交性を利用する光信号であるデジタルコヒーレント信号を送受信する光送受信装置に適用される。
なお、偏波多重を行わない単一偏波のデジタルコヒーレント信号を送受信する光送受信装置に対して適用してもよい。
【0015】
以下の説明において、実施の形態1に係る光送受信装置において、光信号はX偏波とY偏波を用いてデジタルコヒーレント方式により偏波多重され、X偏波及びY偏波それぞれが直交位相のI信号とQ信号に変調された光信号を想定する。例えば、X偏波は水平偏波であり、Y偏波は垂直偏波である。
X偏波におけるにI信号(XI信号)、X偏波におけるにQ信号(XQ信号)、Y偏波におけるにI信号(YI信号)、Y偏波におけるにQ信号(YQ信号)に偏波多重されたデジタルコヒーレント信号を想定する。
【0016】
なお、XI信号、XQ信号、YI信号、及びYQ信号それぞれに対する端子(XI出力端子、XQ出力端子、YI出力端子、及びYQ出力端子)、並びにXI信号、XQ信号、YI信号、及びYQ信号それぞれの電気信号が流れるレーン(XIレーン、XQレーン、YIレーン、及びYQレーン)は区別されるが、図においてはまとめて示している。
【0017】
実施の形態1に係る光送受信装置は、図1に示すように、光送信器100と光受信器200と光送・受信器制御部300を備える。
光送信器100と光受信器200と光送・受信器制御部300は同じ筐体に内蔵される。
光送信器100は送信すべきデータに第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号及び第1のシンボル周期と異なる第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号が挿入された偏波多重される変調光を生成し、生成した変調光を光ファイバ又は無線空間である伝送路を介して他の光送受信装置の光受信器へ出力する。
光送信器100から出力される変調光は、実施の形態1では、1つの搬送波周波数を持つCW(Continuous wave)光に対して電気信号である変調信号により変調した光信号である。
【0018】
光受信器200は、他の光送受信装置の光送信器からの伝送路を伝播した第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号及び第1のシンボル周期と異なる第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号が挿入された偏波多重された変調光を受信し、受信した変調光からデータを取得する。
光受信器200により受信した変調光から取得したデータは、光信号である変調光を1つの搬送波周波数を持つ干渉光と干渉させて得たアナログ電気信号を用いて復調されたデータである
【0019】
光送信器100は、変調信号生成部110と、デジタル/アナログ変換(digital-to-Analog converter、以下、DACと言う)部120と、光変調部130と、CW光発生部140を備える。
変調信号生成部110は送信側デジタル信号処理部(送信デジタルシグナルプロセッサ(DSP:digital signal processor)であり、以下、送信側DSP110と言う。
【0020】
送信側DSP110は、宛先に送りたい情報であるデータがデジタル信号として入力され、入力されたデータ、つまり送信すべきデータに第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号及び第1のシンボル周期と異なる第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号が挿入された光変調のためのデジタル信号である変調信号を生成する。
送信側DSP110により、送信すべきデータは誤り訂正が可能な信号形態であるフレームとして構築される。
【0021】
送信側DSP110は、XI信号、XQ信号、YI信号、及びYQ信号の4つの変調信号を生成する。
4つの変調信号それぞれは、図5に示す2種類のパイロットシンボル信号が挿入されたシンボル信号系列、又は図6に示す2種類のパイロットシンボル信号が挿入されたシンボル信号系列である。
【0022】
図5及び図6において、横軸は時間を示し、Sはデータシンボル信号を、P(PA1、PA2、・・・PA5・・)は第1のパイロットシンボル信号を、P(PB1、PBA2、・・・)は第2のパイロットシンボル信号を示している。
データシンボル信号Sは送信すべきデータのビット信号をIQ変調のために変換したシンボル信号(複素信号)である。いわゆる、データシンボル信号Sはデジタルコヒーレント信号である。
第1のパイロットシンボル信号P及び第2のパイロットシンボル信号Pはそれぞれ1ビット、つまり、シンボル長が1であるデジタルコヒーレント信号である。
【0023】
図5に示したシンボル信号系列は、フレーム単位ではなく、データシンボル信号Sに対して第1のシンボル間隔、つまり、第1のシンボル周期により第1のパイロットシンボル信号Pを挿入し、フレーム単位ではなく、データシンボル信号Sに対して第1のシンボル間隔とは異なる第2のシンボル間隔、つまり、第1のシンボル周期とは異なる第2のシンボル周期により第2のパイロットシンボル信号Pを挿入したシンボル信号系列である。
【0024】
第2のパイロットシンボル信号Pの第2のシンボル間隔は、第1のパイロットシンボル信号Pの第1のシンボル間隔の2以上の整数倍、本例では4倍の間隔である。
言い換えれば、第2のパイロットシンボル信号Pの第2のシンボル周期は、第1のパイロットシンボル信号Pの第1のシンボル周期の2以上の整数倍、本例では4倍のシンボル周期である。
【0025】
すなわち、第2のパイロットシンボル信号Pは第1のパイロットシンボル信号Pに対してデータシンボル信号Sに対して1/4の頻度で挿入される。
第2のパイロットシンボル信号Pは、第2のシンボル周期ごとに第1のパイロットシンボル信号Pに対して連続して挿入される。つまり、第2のパイロットシンボル信号Pは、第2のシンボル周期ごとに第1のパイロットシンボル信号Pの隣り合うシンボルに配置される。
第1のパイロットシンボル信号と隣接する第2のパイロットシンボル信号は短い時間間隔、実施の形態1では1つのシンボル間隔で配置される。
【0026】
図6に示したシンボル信号系列は、フレーム単位の決まった位置に定められた第1のシンボル間隔、つまり、第1のシンボル周期により第1のパイロットシンボル信号Pを挿入し、フレーム単位の決まった位置に定められた第1のシンボル間隔とは異なる第2のシンボル間隔、つまり、第1のシンボル周期とは異なる第2のシンボル周期により第2のパイロットシンボル信号Pを挿入したシンボル信号系列である。
【0027】
第2のパイロットシンボル信号Pの第2のシンボル間隔は、第1のパイロットシンボル信号Pの第1のシンボル間隔の2以上の整数倍、本例では4倍の間隔である。
言い換えれば、第2のパイロットシンボル信号Pの第2のシンボル周期は、第1のパイロットシンボル信号Pの第1のシンボル周期の2以上の整数倍、本例では4倍のシンボル周期である。
【0028】
すなわち、第2のパイロットシンボル信号Pは第1のパイロットシンボル信号Pに対してデータシンボル信号Sに対して1/4の頻度で挿入される。
第2のパイロットシンボル信号Pは、第2のシンボル周期ごとに第1のパイロットシンボル信号Pに対して連続して挿入される。つまり、第2のパイロットシンボル信号Pは、第2のシンボル周期ごとに第1のパイロットシンボル信号Pの隣り合うシンボルに配置される。
第1のパイロットシンボル信号と隣接する第2のパイロットシンボル信号は短い時間間隔、実施の形態1では1つのシンボル間隔で配置される。
【0029】
送信側DSP110は、図2に示すように、フレーム生成部111とマッピング部112とスペクトル整形部113とスキュー調整部(デスキュー部)114とパイロット生成部115とパイロット挿入部116の信号処理機能を有するデジタル回路を備えている。
フレーム生成部111は、送信すべきデータを誤り訂正が可能な信号形態である信号フレーム形式として構築するフレーマ部である。
【0030】
マッピング部112は、フレーム生成部111からのデジタル信号におけるビット信号によるデータ列をIQ変調のためのシンボル信号(複素信号)に変換する。
すなわち、マッピング部112は送信すべきデータによるデータ列を光変調のためのデジタル信号である変調信号に変換する。
一般にIQ変調の多値度が増えるにつれて、データシンボル信号Sに割り当てられるビット数が増え、データレートが向上する。
【0031】
マッピング部112により得られる偏波多重されるBPSK信号又はQPSK信号に対応するXI信号、XQ信号、YI信号、及びYQ信号に対する4つの出力端子をマッピング部112は有する。
なお、マッピング部112により得られる偏波多重される信号がQAM信号の場合もマッピング部112は4つの出力端子を有する。
要するに、マッピング部112はデジタルコヒーレント信号に対する4つの出力端子を有する。
【0032】
パイロット挿入部116は、パイロット生成部115により生成されたデジタルコヒーレント信号を用いた第1のパイロットシンボル信号Pを、マッピング部112によりフレーム生成部111からのデジタル信号におけるビット信号によるデータ列をデータ処理する前に、データ列に対して第1のシンボル周期毎に挿入する。
【0033】
また、パイロット挿入部116は、パイロット生成部115により生成されたデジタルコヒーレント信号を用いた第2のパイロットシンボル信号Pを、マッピング部112によりフレーム生成部111からのデジタル信号におけるビット信号によるデータ列をデータ処理する前に、データ列に対して第2のシンボル周期毎に挿入する。
この場合、マッピング部112は、第1のパイロットシンボル信号P及び第2のパイロットシンボル信号Pが挿入されたデータ列を図5に示したシンボル信号系列又は図6に示したシンボル信号系列による変調信号に変換する。
【0034】
なお、パイロット挿入部116は、図3に示すように、パイロット生成部115により生成されたデジタルコヒーレント信号を用いた第1のパイロットシンボル信号P及び第2のパイロットシンボル信号Pをそれぞれ、マッピング部112において、フレーム生成部111からのデジタル信号におけるビット信号によるデータ列を変調信号に変換する時に、シンボル単位で第1のシンボル周期及び第2のシンボル周期それぞれにより挿入して、図5に示したシンボル信号系列又は図6に示したシンボル信号系列による変調信号を得てもよい。
【0035】
スペクトル整形部113は、光送受信装置の周波数特性及び伝送路中の周波数特性に合わせて、マッピング部112により得られた変調信号の周波数特性を整形する。
スキュー調整部114は、スペクトル整形部113からの変調信号であるXI信号、XQ信号、YI信号、及びYQ信号それぞれの電気信号が流れるXIレーン、XQレーン、YIレーン、及びYQレーンにより発生する光送信器100に起因する信号間に起こるスキュー(遅延差)を補償する。
【0036】
以上のように、送信側DSP110は、フレーム生成部111により送信すべきデータをデジタルコヒーレント信号による信号フレームの形式にし、マッピング部112により変調信号に変換し、パイロット挿入部116によりデジタルコヒーレント信号による第1のパイロットシンボル信号P及び第2のパイロットシンボル信号Pが挿入された変調信号とし、変調信号がスペクトル整形部113により周波数特性の整形がなされ、スキュー調整部114によりスキューが補償された、第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号及び第1のシンボル周期と異なる第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号が挿入された光変調のためのデジタル信号である変調信号を生成する。
【0037】
DAC部120は、第1のパイロットシンボル信号P及び第2のパイロットシンボル信号Pが挿入されたデジタル信号からなる変調信号をアナログ信号からなる変調信号に変換する。
光変調部130は、DAC部120によりアナログ信号に変換された変調信号に基づいてCW光発生部140からのCW光に対して変調して第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号及び第1のシンボル周期と異なる第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号が挿入された変調光を生成し、生成した変調光を伝送路に出力する。
【0038】
変調光はCW光に変調信号による情報が載せられたデジタルコヒーレント信号である光信号である。
変調光は、独立のレーンから出力されるXI信号、XQ信号、YI信号、及びYQ信号による情報が混在する。
CW光発生部140からのCW光は、図7に周波数軸上で示すように、デジタルコヒーレント方式における単一キャリア信号である。
【0039】
光受信器200は、図1に示すように光コヒーレント検波部210と、干渉光発生部220と、アナログ/デジタル変換器であるADC(Analog-to-digital converter)部230と、受信側デジタル信号処理部240を備えている。
受信側デジタル信号処理部240は受信デジタルシグナルプロセッサ(DSP:digital signal processor)であり、以下、受信側DSP240という。
【0040】
光コヒーレント検波部210は、他の光送受信装置の光送信器からの伝送路により伝送された偏波多重された変調光を受信し、受信した変調光を干渉光発生部220からの単一の搬送波周波数fcを持つ連続(CW:Continuous wave)光である干渉光と干渉させ、干渉させて得た光信号を光電変換させて得た電圧に基づくアナログ電気信号を出力する光コヒーレント検波を行う。光コヒーレント検波部210から出力される電圧信号はシングルエンド出力又は差動出力である。
【0041】
実施の形態1では、光コヒーレント検波部210から出力されるアナログ電気信号は、4個の出力端子からそれぞれ出力されるXI信号とXQ信号とYI信号とYQ信号の4個の信号である。
XI信号とXQ信号とYI信号とYQ信号は、偏波多重された変調光と単一の搬送波周波数fcを持つ干渉光を光コヒーレント検波部210により光干渉させて得た復調信号を得るためのアナログ電圧信号である復調前の信号である。
【0042】
ADC部230は、XI信号のXIレーンとXQ信号のXQレーンとYI信号のYIレーンとYQ信号のYQレーンそれぞれに対応したADCの集合体である。
ADC部230における各ADCは対応した各レーンにおける入力されたアナログ領域の電気信号をサンプリング周波数に基づきサンプリングし、デジタル領域の離散信号であるデジタル信号に変換して、デジタル信号からなる復調前の信号を得る。
ADC部230によりデジタル信号に変換されたXI信号とXQ信号とYI信号とYQ信号それぞれは、図5又は図6に示したように、2種類のパイロットシンボル信号が挿入されたシンボル信号系列の信号である。
【0043】
受信側DSP240はADC部230によりデジタル信号に変換されたXI信号とXQ信号とYI信号とYQ信号に対してデジタル信号処理を行い、復調する。
なお、受信側DSP240は、ADC部230によりデジタル信号に変換されたXI信号とXQ信号とYI信号とYQ信号に対してX偏波に対するXI信号とXQ信号を合成してX偏波に対するデジタル領域での複素信号とし、Y偏波に対するYI信号とYQ信号を合成してY偏波に対するデジタル領域での複素信号としてもよい。
【0044】
光送信器100における送信側DSP110が変調信号を生成するのに対して、光受信器200における受信側DSP240が変調信号を復調して復調信号を得る。
受信側DSP240は入力されたデジタル信号に対して、伝送路で変調光が受けた波長分散及び非線形光学効果、偏波モード分散の補償、並びに、光送信器と光受信器とにおけるCW光の光源周波数差により生じる周波数オフセットの補償等を行う。
【0045】
受信側DSP240は、XI信号とXQ信号とYI信号とYQ信号それぞれに対してデジタル信号処理を行うが、説明の煩雑さをなくすため、図4ではデジタル信号処理の流れを1つの電気信号の流れにより示している。
また、図4では、主として、実施の形態1の特徴点である光送信器から伝送路を介して送られた偏波多重された変調光に挿入された第1のパイロットシンボル信号P及び第2のパイロットシンボル信号Pを検出する光復調機能に関して示し、誤り訂正などは示していない。
【0046】
受信側DSP240は、図4に示すように、スキュー調整部241と、振幅調整部242と、分散補償部243と、クロック同期部244と、帯域補償部245と、適応等化部246と、周波数差補償部247と、位相推定部248と、デマッピング部249と、フレーム同期部250と、第1のパイロットシンボル信号Pを読み取る第1のパイロット読み取り部251と、第2のパイロットシンボル信号Pを読み取る第2のパイロット読み取り部252と、パイロット除去部253を備える。
【0047】
なお、デマッピング部249に入力されるまでのXI信号とXQ信号とYI信号とYQ信号それぞれの信号は復調の前段階の信号処理が行われる復調前の信号であり、デマッピング部249から出力されるデータ信号が復調の信号処理が行われた復調後の信号である。
また、図4において、ADC部230から受信側DSP240に入力される信号は復調されるための復調前の信号であるが簡略して復調信号として示した。
【0048】
スキュー調整部241はXI信号とXQ信号とYI信号とYQ信号それぞれに対するレーンの光送信器及び光受信器装置由来のスキューを補償する。
振幅調整部242はXI信号とXQ信号とYI信号とYQ信号それぞれに対するレーンの光送信器及び光受信器装置由来の振幅差を必要に応じて調整する。
分散補償部243は伝送路中に生じる波長分散による信号劣化を補償する。
クロック同期部244は光送信器と光受信器間のクロック差を補償する。このクロック差を補償する機能は、ADC部230によりデジタル変換する前のアナログ信号において、行ってもよい。
【0049】
帯域補償部245は固定的な条件で周波数特性の劣化を補償する。
適応等化部246はX偏波信号(XI信号とXQ信号)とY偏波信号(YI信号とYQ信号)の偏波分離及び周波数特性の劣化を適応的に補償する。
適応等化部246において、等化処理の補償条件を決めるために、2種類のパイロットシンボル信号が挿入されたシンボル信号系列の信号から第1のパイロット読み取り部251により抽出された第1のパイロットシンボル信号Pが用いられる。
データシンボル信号Sに16QAMなどの直交位相変調が使われている場合に第1のパイロットシンボル信号PにIQ振幅が一定であるQPSK信号を用いているので、適応等化部246は等化処理の補償条件を決定できる。
【0050】
スキュー調整部241と振幅調整部242と分散補償部243とクロック同期部244と帯域補償部245と適応等化部246は、通常のデジタルコヒーレント方式で用いられるもので構成される。
すなわち、受信側DSP240の復調のための前段階の信号処理は通常のデジタルコヒーレント方式で用いられるデジタル信号処理における一般の手法である。
【0051】
周波数差補償部247は光送信器100におけるCW光発生部140からのCW光の周波数と干渉光発生部220からの干渉光の周波数差を補償する。
周波数差補償部247は、2種類のパイロットシンボル信号が挿入されたシンボル信号系列の信号から第1のパイロット読み取り部251により抽出された第1のパイロットシンボル信号Pにより受信したシンボル信号系列の信号における第1のパイロットシンボル信号Pの位置を検出する。
データシンボル信号Sに16QAMなどの直交位相変調が使われている場合に第1のパイロットシンボル信号PにIQ振幅が一定であるQPSK信号を用いているので、周波数差補償部247は第1のパイロットシンボル信号Pの位置を検出できる。
【0052】
周波数差補償部247は、ADC部230によりデジタル信号に変換されたXI信号とXQ信号とYI信号とYQ信号を受け、受けたデジタル信号から、第1のパイロット読み取り部251により抽出された第1のパイロットシンボル信号Pと、第2のパイロット読み取り部252により抽出された第2のパイロットシンボル信号P´と、光送信器100における送信側DSP110によりシンボル信号系列の信号に挿入された隣接する第1のパイロットシンボル信号Pと第2のパイロットシンボル信号Pの相対的な位置関係を用いて第2のパイロットシンボル信号Pに対する第2のパイロットシンボル信号P´の位相差を算出して受けたデジタル信号の周波数の補償を行う。
【0053】
周波数差補償部247は、2種類のパイロットシンボル信号が挿入されたシンボル信号系列の信号から第1のパイロット読み取り部251により抽出された第1のパイロットシンボル信号Pと、2種類のパイロットシンボル信号が挿入されたシンボル信号系列の信号から第2のパイロット読み取り部252により抽出された第2のパイロットシンボル信号P´を用い、第1のパイロットシンボル信号Pを基準にして第2のパイロットシンボル信号P´における第2のパイロットシンボル信号Pに対する周波数差を算出し、光送信器100におけるCW光発生部140からのCW光の周波数と干渉光発生部220からの干渉光の周波数差を補償して、光受信器200におけるシンボル信号系列の信号に対する周波数の補償を行う。
【0054】
周波数差補償部247は、隣接する第1のパイロットシンボル信号Pと第2のパイロットシンボル信号P´のIQ信号空間の観測位置、つまり、第1のパイロット読み取り部251により抽出された第1のパイロットシンボル信号Pが示す位置と当該抽出された第1のパイロットシンボル信号Pに隣接する第2のパイロット読み取り部252により抽出された第2のパイロットシンボル信号P´が示す位置と、元々既知である第1のパイロットシンボル信号Pと第2のパイロットシンボル信号Pの本来のIQ信号空間の相対位置、つまり、光送信器100における送信側DSP110によりシンボル信号系列の信号に挿入された隣接する第1のパイロットシンボル信号Pと第2のパイロットシンボル信号PのIQ信号空間の相対位置から第1のパイロットシンボル信号Pを基準にした第2のパイロットシンボル信号Pに対する第2のパイロットシンボル信号P´における周波数の差を見積る。
【0055】
見積られた第2のパイロットシンボル信号P´における周波数の差により、受信したシンボル信号系列の信号における隣接する第1のパイロットシンボル信号Pと第2のパイロットシンボル信号P´の位相差を解析し、算出した補償量をもって受信したシンボル信号系列の信号に対する周波数の補償を行う。
隣接する第1のパイロットシンボル信号Pと第2のパイロットシンボル信号Pは短い時間間隔(シンボル間隔)で挿入されているため、時間間隔に対する位相回転を小さくできる。結果として位相回転量を正確に読み取ることができ、正確な光周波数の差に対する補償を周波数差補償部247において行うことが可能となる。
【0056】
この点について、図8を用いて説明する。
図8はIQ信号空間を示し、横軸がQ軸、縦軸がI軸を示す。
は第1のパイロットシンボル信号Pにおける信号点、Pは周波数に差がない場合の第2のパイロットシンボル信号Pにおける信号点、P´は周波数に差がある場合の第2のパイロットシンボル信号Pにおける信号点である。
【0057】
図8において、信号点Pは第1のパイロット読み取り部251により抽出された第1のパイロットシンボル信号Pが示す観測信号点であり、位相差を解析するための基準点となる。
信号点Pは、信号点Pに対して周波数に差がない、つまり、光送信器100における送信側DSP110によりシンボル信号系列の信号に挿入された隣接する第1のパイロットシンボル信号Pと第2のパイロットシンボル信号PのIQ信号空間の相対位置から得られる信号点である。
【0058】
信号点P´は第2のパイロット読み取り部252により抽出された第2のパイロットシンボル信号Pが示す観測信号点である。
信号点Pと信号点P(差なし)は、送信側DSP110によりシンボル信号系列における1シンボル期間の経過によるIQ信号空間上の信号点Pを基準とした相対的な位置関係を示す。
信号点Pと信号点P´(差あり)は、観測信号点に対し、IQ信号空間上の信号点Pを基準とした信号点P´における相対的な位置関係を示す。
【0059】
信号点Pと信号点P´(差あり)と、信号点Pと信号点P(差なし)はIQ信号空間上の相対的な位置関係を示す。
これにより、信号点Pを基準にした信号点P´との位相差が、周波数差(単位時間における位相回転量)によってどれだけ本来の位相角(既知の値:信号点P)からずれたかを観測することができる。
信号点Pを基準とした信号点P及び信号点P´との位相差は2点を複素平面上の複素数で表した際の複素共役を用いた乗算処理で出力される複素数の値から位相項を取り出すことで算出される。
【0060】
すなわち、既知である第1のパイロットシンボル信号Pと第2のパイロットシンボル信号Pの本来のIQ信号空間の相対位置に対して、光送信器からの変調光100と光受信器200が受信した変調光の周波数に差がない場合として、第1のパイロット読み取り部251により抽出された第1のパイロットシンボル信号Pが示す信号点Pを基準として第2のパイロットシンボル信号Pが示す信号点PとのIQ信号空間上における相対位置の一例を図8に示す。
【0061】
また、第1のパイロット読み取り部251により抽出された第1のパイロットシンボル信号Pが示す信号点Pを基準として第2のパイロット読み取り部252により抽出された第2のパイロットシンボル信号Pが示す信号点P´とのIQ信号空間上における相対位置の一例を図8に示す。
第2のパイロット読み取り部252により抽出された第2のパイロットシンボル信号Pが示す信号点P´は、第2のパイロットシンボル信号Pが第1のパイロットシンボル信号Pに隣接、つまり、短い時間間隔、実施の形態1では隣リ合うシンボルに配置されるため、時間間隔に対する位相回転を小さくできる。結果として位相回転量を正確に読み取ることができる。
【0062】
周波数差補償部247は、このようにして信号点P´における信号点Pに対する、第1のパイロットシンボル信号Pと第2のパイロットシンボル信号Pの間のサンプリング時間における位相ずれから周波数差(単位時間における位相回転量)を求める。
周波数差補償部247は、求めた周波数差を打ち消すようにサンプリング時間において逆方向の位相を与える単位振幅の正弦波(デジタルデータ)を生成し、生成した正弦波をシンボル信号系列の信号に乗算する。
その結果、周波数差補償部247は、光送信器100と光受信器200との間の光周波数差、つまり、光送信器100におけるCW光発生部140からのCW光の周波数と干渉光発生部220からの干渉光の周波数差を補償する。
【0063】
すなわち、第1のパイロット読み取り部251により抽出された第1のパイロットシンボル信号Pが示すIQ信号空間上における位置と当該抽出された第1のパイロットシンボル信号Pに隣接する第2のパイロット読み取り部252により抽出された第2のパイロットシンボル信号Pが示すIQ信号空間上における位置と、光送信器における送信側DSP110によりシンボル信号系列の信号に挿入された隣接する第1のパイロットシンボル信号Pと第2のパイロットシンボル信号PのIQ信号空間の相対位置から、第1のパイロット読み取り部251により抽出された第1のパイロットシンボル信号Pを基準にして当該抽出された第1のパイロットシンボル信号Pに隣接する第2のパイロット読み取り部252により抽出された第2のパイロットシンボル信号Pにおける、当該抽出された第1のパイロットシンボル信号Pに隣接する送信側DSP110によりシンボル信号系列の信号に挿入された第2のパイロットシンボル信号Pとの周波数差を解析できる。
【0064】
その結果、上記した解析結果である周波数差を用いることにより、光受信器200におけるシンボル信号系列の信号に対する周波数の補償が周波数差補償部247によって行うことができる。
第1のパイロットシンボル信号Pと第2のパイロットシンボル信号Pによる周波数の補償は上記に説明した通りであり、一般的に送信側及び受信側の間で既知である2つのパイロットシンボル信号を用いて周波数の補償を行う手法を用いることができる。
【0065】
光受信器200におけるシンボル信号系列の信号に対する周波数の補償を、第1のパイロットシンボル信号Pと当該抽出された第1のパイロットシンボル信号Pに隣接する第2のパイロットシンボル信号P、つまり、シンボル間隔という短い時間間隔の2つのパイロットシンボル信号を用いているため、第1のパイロットシンボル信号Pに対する周波数のずれによる第2のパイロットシンボル信号Pの位相回転は小さいため、第1のパイロットシンボル信号Pを基準にした第2のパイロットシンボル信号Pにおける正確な位相回転量が得られる。
【0066】
例えば、実施の形態1における第2のパイロットシンボル信号Pを用いずに、光送信器において、図10に示すフレーム単位ではなく、データシンボル信号Sに対してシンボル間隔によりパイロットシンボル信号Pを挿入したシンボル信号系列、又は図11に示すフレーム単位の決まった位置に定められたシンボル間隔によりパイロットシンボル信号Pを挿入したシンボル信号系列に基づく変調光に対して、光受信器において周波数の補償を行うとすると、図9に示すよう不具合を生じる場合がある。
【0067】
図9はIQ信号空間を示し、横軸がQ軸、縦軸がI軸を示す。
は周波数の補償を行うための一つ目のパイロットシンボル信号P1における信号点、Pは周波数に差がない場合の二つ目のパイロットシンボル信号Pにおける信号点、P´は周波数に差がある場合の第2のパイロットシンボル信号Pにおける信号点である。
【0068】
図9において、信号点Pは光受信器におけるパイロット読み取り部により抽出された一つ目のパイロットシンボル信号P1が示す観測信号点であり、位相差を解析するための基準点となる。
信号点Pは、信号点Pに対して周波数に差がない、つまり、光送信器におけるシンボル信号系列の信号に挿入された隣接する一つ目のパイロットシンボル信号P1と二つ目のパイロットシンボル信号PのIQ信号空間の相対位置から得られる信号点である。
信号点P´はパイロット読み取り部により抽出された二つ目のパイロットシンボル信号Pが示す観測信号点である。
【0069】
図9から理解されるように、一つ目のパイロットシンボル信号P1が抽出される時刻か二つ目のパイロットシンボル信号Pが抽出される時刻までの時間間隔が長く、光送信器からの光搬送波の周波数に対して光受信器200における干渉光の光搬送波の周波数に差があると、長い時間経過に対して一つ目のパイロットシンボル信号P1から二つ目のパイロットシンボル信号Pにおける信号点P´に大きな位相回転が生じる。
つまり、一つ目のパイロットシンボル信号Pに対する周波数のずれによる二つ目のパイロットシンボル信号Pの位相回転は大きく、IQ信号空間上での位相回転が生じて位相は循環的に回転するものであるため位相回転量の推測誤りが生じてしまう。
【0070】
実施の形態1に係る光送受信装置においては、第1のパイロットシンボル信号Pと当該抽出された第1のパイロットシンボル信号Pに隣接する第2のパイロットシンボル信号Pを用いているため、第1のパイロットシンボル信号Pに対する周波数のずれによる第2のパイロットシンボル信号Pの位相回転は小さく、位相回転量の推測誤りがなく、正確な位相回転量が得られる。
【0071】
要するに、実施の形態1に係る光送受信装置は、異なるシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号P及び第2のパイロットシンボル信号Pをシンボル信号系列の信号に挿入し、第2のパイロットシンボル信号Pの第2のシンボル周期ごとに連続する第1のパイロットシンボル信号P及び第2のパイロットシンボル信号Pから光送信器100における光搬送波と光受信器200における干渉光の周波数の間の周波数差を補償する。
【0072】
従って、実施の形態1に係る光送受信装置は、短い時間間隔での第1のパイロットシンボル信号P及び第2のパイロットシンボル信号Pを用いて、IQ信号空間上の第1のパイロットシンボル信号P及び第2のパイロットシンボル信号Pによる信号点P、P、P´情報から算出する位相回転量を、ひいては算出した位相回転量(周波数差)に起因した波形歪みに対する補償量の算出を正確に行うことができる。
【0073】
これにより光受信器200における受信信号の信号品質を改善させ、ひいては光送信器100における光搬送波と光受信器200における干渉光の周波数の間の周波数の差の補償範囲を拡大することができる。
よって、実施の形態1に係る光送受信装置は、低中速なデジタルコヒーレント信号に対して、光送信器100における光搬送波と光受信器200における干渉光の周波数の間の周波数の差などに起因した波形歪みによる劣化要因に対する補償を行なうことができる。
【0074】
なお、変調光の周波数の差の見積りにおいて、隣接する第1のパイロットシンボル信号Pと第2のパイロットシンボル信号PのIQ信号空間の観測位置、及び光送信器100における隣接する第1のパイロットシンボル信号Pと第2のパイロットシンボル信号Pの相対位置に対して平均化処理を行った後に補償量を算出してもよい。
平均化処理を行うことにより、速度応答性を任意に調整できる。
【0075】
位相推定部248はCW光発生部140および干渉光発生部220を構成する光源の位相変動を補償する。
位相推定部248は、通常のデジタルコヒーレント方式で用いられるもので構成される。
すなわち、周波数差補償部247による周波数差の補償以外の受信側DSP240における復調のための信号処理は通常のデジタルコヒーレント方式で用いられるデジタル信号処理における一般の手法である。
【0076】
デマッピング部249は、パイロット除去部253より第1のパイロットシンボル信号Pと第2のパイロットシンボル信号Pが除去された後、波形歪みの補償がなされたシンボル信号をビット信号に変換する。
フレーム同期部250はビット信号系列からフレームに対する同期を取る。
フレームに対する同期がとられたビット信号系列のデジタル信号は、その後、誤り訂正が行われる。
【0077】
次に、実施の形態1に係る光送受信装置のハード構成について、図12を用いて説明する。
図12中、図1から図4に付された符号と同一符号は同一又は相当部分を示す。
光送・受信器制御部300は、CPU(Central Processing Unit)又はシステムLSI(Large Scale Integration)などのプロセッサ31と、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などで構成されるメモリ32と、通信インタフェース33、入出力インタフェース34を備えている。
プロセッサ31、メモリ32、通信インタフェース33、及び入出力インタフェース34はバス35に接続され、バス35を介してデータ及び制御信号などの受け渡しが相互に行なわれる。
【0078】
プロセッサ31は、メモリ32におけるROMに記録されたプログラムを、一旦、メモリ32におけるRAMに読み込み、読み込んだプログラムにより処理を実行する。
メモリ32におけるROMには、各種データ、光送信器100及び光受信器200における処理を実行させためのプログラム、及び光送・受信器制御部300の起動に必要な処理プログラムなどが格納される。
通信インタフェース33は、光送信器100における各構成要素、光受信器200における各構成要素、及び他の光送受信装置の各構成要素とのデータ及び制御信号の送受信に使用される。
【0079】
入出力インタフェース34は、電気配線を通じて、光送信器100における各構成要素及び光受信器200における各構成要素との間の制御信号及び変調信号を送受する。
入出力インタフェース34は、例えば、干渉光発生部220に対しては光を発生させるための干渉光発生部220を構成する光源への注入電流を干渉光発生部220に供給するためのインタフェースである。
また、入出力インタフェース34は、例えば、送信側DSP部110及び受信側DSP部に対して各種制御信号を出力するためのインタフェースである。
【0080】
以上のように、実施の形態1に係る光送受信装置は、光送信器100が、送信すべきデータに第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号P及び前記第1のシンボル周期と異なる第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号Pが挿入された変調信号を生成する変調信号生成部110と、デジタル/アナログ変換部120によりアナログ信号に変換された変調信号に基づいて第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボルP及び第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボルPが挿入された変調光を生成する光変調部130とを備え、光受信器200は、第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号P及び第1のシンボル周期と異なる第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号Pが挿入された偏波多重された変調光をコヒーレント検波してアナログ電気信号を出力する光コヒーレント検波部210と、変調光がコヒーレント検波されたアナログ電気信号をアナログ/デジタル変換部230によりデジタル変換されたデジタル信号から抽出された、受信した偏波多重された変調光に挿入された第1のパイロットシンボル信号P及び当該第1のパイロットシンボル信号Pと隣接する第2のパイロットシンボル信号Pを用いて位相差を算出して受けたデジタル信号の周波数を補償する周波数差補償部247を有する受信側デジタル信号処理部240を備えたので、光送信器100からの変調光の周波数に対する光受信器200が受信した変調光の周波数の差を補償できる。
【0081】
その結果、送信と受信の間の信号の周波数の差による波形歪み劣化の要因に対して補償でき、光受信器200における受信信号の信号品質を改善させ、ひいては光送信器100と光受信器200における光周波数の差の補償範囲を拡大することができる。
特に、低中速なデジタルコヒーレント信号を取り扱う光受信器200において、有効である。
【0082】
実施の形態2.
実施の形態2に係る光送受信装置について図13から図15に従って説明する。
実施の形態1に係る光送受信装置は、図7に周波数軸上で示すデジタルコヒーレント方式における単一キャリア信号を光搬送波として用いている。
これに対して、実施の形態2に係る光送受信装置は、図15に周波数軸上で示すデジタルコヒーレント方式におけるN個の異なる周波数配置のサブキャリア信号それぞれを光副搬送波として用い、サブキャリア多重方式による光送受信装置である。
【0083】
実施の形態2に係る光送受信装置では、N個の光副搬送波としてのサブキャリア信号に対して、実施の形態1に係る光送受信装置に適用する点が基本的な考え方である。
従って、以下、実施の形態1に係る光送受信装置に対して相違する点を中心に説明する。
実施の形態2では、一例として、図15に示すように、X偏波におけるN個の異なる周波数のサブキャリア信号SC#1~SC#NによるN個のチャネルとY偏波におけるN個の異なる周波数のサブキャリア信号SC#1~SC#NによるN個のチャネルが多重された光信号を送信する、及び受信する光送受信装置を想定する。
【0084】
光受信器200において、信号を検出できる帯域内のN個の異なる周波数配置のサブキャリア信号それぞれに偏波多重された変調光を光コヒーレント検波部210が一括で受信し、光コヒーレント検波部210が一括受信した変調光を、光コヒーレント検波を行ないアナログ電気信号として出力する。
一括処理されたアナログ電気信号はADC部230によりデジタル信号に変換されて受信側DSP240に入力される。
受信側DSP240において、サブキャリア信号SC#1~SC#N毎に分離し、サブキャリア信号SC#1~SC#Nによるチャネル毎に復調を行う。
実施の形態2に係る光送受信装置は、実施の形態1に係る光送受信装置と同様に図1に示すように、光送信器100と光受信器200と光送・受信器制御部300を備える。
【0085】
光送信器100は、送信側DSP110Aと、DAC部120と、光変調部130と、CW光発生部140を備える。
送信側DSP110Aは、図13に示すように、N個のサブキャリア生成部11~11とサブキャリア多重部117とスキュー調整部(デスキュー部)114を備える。
【0086】
N個のサブキャリア生成部11~11はそれぞれ、宛先に送りたい情報である異なるデータ信号#1~#Nがデジタル信号として入力され、送信すべきデータ#1~#Nに第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号及び第1のシンボル周期と異なる第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号が挿入された光変調のためのデジタル信号である変調信号を生成する。
【0087】
N個のサブキャリア生成部11~11それぞれは、送信すべきデータ#1~#N及び搬送波としてのサブキャリア信号SC#1~SC#Nが異なるものの、基本的には同じ構成である。
すなわち、N個のサブキャリア生成部11~11それぞれは、フレーム生成部111~111とマッピング部112~112とスペクトル整形部113~113とパイロット生成部115~115とパイロット挿入部116~116の信号処理機能を有するデジタル回路を備えており、実施の形態1に係る光送受信装置における光送信器の110の送信側DSP110におけるフレーム生成部111とマッピング部112とスペクトル整形部113とパイロット生成部115とパイロット挿入部116と基本的には同じ構成である。
【0088】
要するに、N個のサブキャリア生成部11~11それぞれは、フレーム生成部111~111により送信すべきデータをデジタルコヒーレント信号による信号フレームの形式にし、マッピング部112により異なるサブキャリア信号SC#1~SC#Nにより周波数軸上で偏波多重されるQPSK信号に対応するXI信号、XQ信号、YI信号、及びYQ信号に変換し、パイロット挿入部116~116によりデジタルコヒーレント信号による第1のパイロットシンボル信号P及び第2のパイロットシンボル信号Pが挿入された変調信号とし、変調信号がスペクトル整形部113により周波数特性の整形がなされる。
N個のサブキャリア生成部11~11それぞれは4つの出力端子を有する。
【0089】
サブキャリア多重部117はN個のサブキャリア生成部11~11からの変調信号を周波数軸上での信号多重を行う。
スキュー調整部114は、スペクトル整形部113からの周波数軸上での多重化された変調信号であるXI信号、XQ信号、YI信号、及びYQ信号それぞれの電気信号が流れるXIレーン、XQレーン、YIレーン、及びYQレーンにより発生する光送信器100に起因する信号間に起こるスキュー(遅延差)を補償する。
【0090】
このようにして生成された異なる周波数軸上での多重化された変調信号はDAC部120によりアナログ信号に変換される。
光変調部130は、DAC部120によりアナログ信号に変換された変調信号に基づいてCW光発生部140からのCW光に対して変調して第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル及び第1のシンボル周期と異なる第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボルが挿入された複数の異なるサブキャリア信号が周波数多重され、偏波多重された変調光を生成し、生成した変調光を伝送路に出力する。
【0091】
光受信器200は光コヒーレント検波部210と干渉光発生部220とADC部230と、受信側DSP240Aを備えている。
光コヒーレント検波部210は第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号P及び第1のシンボル周期と異なる第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号Pが挿入された複数の異なるサブキャリア信号により周波数多重され、偏波多重された変調光を一括して受信し、受信した変調光を干渉光発生部220からの単一の搬送波周波数fcを持つCW光である干渉光と干渉させ、干渉させて得た光信号を光電変換させて得た電圧に基づくアナログ電気信号を出力する光コヒーレント検波を行う。
【0092】
ADC部230は光コヒーレント検波部210からのアナログ領域の電気信号をサンプリング周波数に基づきサンプリングし、デジタル領域の離散信号であるデジタル信号に変換して、復調信号を得るためのデジタル信号からなる復調前の信号を得る。
受信側DSP240Aは、スキュー調整部(デスキュー部)241とサブキャリア分離部254とN個のサブキャリア検出部24~24を備える。
スキュー調整部241はXI信号とXQ信号とYI信号とYQ信号それぞれに対するレーンの光送信器及び光受信器装置由来のスキューを補償する。
【0093】
サブキャリア分離部254は第1のパイロットシンボル信号P及び第2のパイロットシンボル信号Pが挿入された複数の異なるサブキャリア信号により周波数多重され、偏波多重されたデジタル信号からなる復調前の信号を周波数軸上でのN個のサブキャリア信号SC#1~SC#Nに対応させて信号分離を行う。
N個のサブキャリア検出部24~24それぞれは、サブキャリア分離部254により分離されたN個のデジタル信号それぞれに対して、伝送路で変調光が受けた波長分散及び非線形光学効果、偏波モード分散の補償、並びに、光送信器と光受信器とにおけるCW光の光源周波数差により生じる周波数オフセットの補償等を行う。
【0094】
N個のサブキャリア検出部24~24それぞれは、振幅調整部242~242と、分散補償部243~243と、クロック同期部244~244と、帯域補償部245~245と、適応等化部246~246と、周波数差補償部247~247と、位相推定部248~248と、デマッピング部249~249と、フレーム同期部250~250と、第1のパイロットシンボル信号Pを読み取る第1のパイロット読み取り部251~251と、第2のパイロットシンボル信号Pを読み取る第2のパイロット読み取り部252~252と、パイロット除去部253~253を備え、実施の形態1に係る光送受信装置における光受信器200の受信側DSP240における振幅調整部242と、分散補償部243と、クロック同期部244と、帯域補償部245と、適応等化部246と、周波数差補償部247と、位相推定部248と、デマッピング部249と、フレーム同期部250と、第1のパイロット読み取り部251と、第2のパイロット読み取り部252と、パイロット除去部253と基本的には同じ構成である。
【0095】
要するに、N個のサブキャリア検出部24~24それぞれにおいて、実施の形態1に係る光送受信装置における受信側DSP240と同様のデジタル処理が行われる。
N個のサブキャリア検出部24~24それぞれにおける周波数差補償部247~247は複数の異なるサブキャリア信号SC#1~SC#N毎に光送信器100におけるCW光発生部140からのCW光の周波数と干渉光発生部220からの干渉光の周波数差を補償する。
受信側DSP240Aを構成するN個のサブキャリア検出部24~24により、N個のデータ信号が受信側DSP240Aから出力される。
【0096】
実施の形態2に係る光送受信装置のハード構成も、実施の形態1に係る光送受信装置のハード構成と同様に、受信器制御部30は、CPU又はシステムLSIなどのプロセッサ31と、RAM及びROMなどで構成されるメモリ32と、通信インタフェース33、入出力インタフェース34により構成される。
【0097】
以上のように、実施の形態2に係る光送受信装置は、N個の光副搬送波としてのサブキャリア信号SC#1~SC#Nにより光送信器100が周波数多重された変調光を出力し、光受信器200がN個のサブキャリア信号SC#1~SC#Nが周波数軸上で周波数多重された偏波多重された変調光を一括して受信する光送受信装置において、サブキャリア信号SC#1~SC#N毎に実施の形態1に係る光送受信装置と同様に、光送信器100からの光搬送波の周波数に対する光受信器200における干渉光の光搬送波の周波数の差を補償できる。
【0098】
なお、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本開示に係る光送受信装置は、光アクセス、光コア・メトロネットワークにおける光ファイバを伝送媒体とした通信システムに限らず、宇宙又は空間光通信などの光ファイバを用いない光通信システムにも適用される。
【符号の説明】
【0100】
100 光送信器、110、110A 変調信号生成部(送信側DSP)、11~11 サブキャリア生成部、111、111~111 フレーム生成部(フレーマ部)、112、112~112 マッピング部、113、113~113 スペクトル整形部、114 スキュー調整部(デスキュー部)、115、115~115 パイロット生成部、116、116~116 パイロット挿入部、117 サブキャリア多重部、120 デジタル/アナログ変換(DAC)部、130 光変調部、140 CW光発生部、200 光受信器、210 光コヒーレント検波部、220 干渉光発生部、230 ADC部、240、240A 受信側デジタル信号処理部(受信側DSP)、24~24 サブキャリア検出部、241 スキュー調整部、242、242~242 振幅調整部、243、243~243 分散補償部、244、244~244 クロック同期部、245、245~245 帯域補償部、246、246~246 適応等化部、247、247~247 周波数差補償部、248、248~248 位相推定部、249、249~249 デマッピング部、250、250~250 フレーム同期部、251、251~251 第1のパイロット読み取り部、252、252~252 第2のパイロット読み取り部、253、253~253 パイロット除去部。
【要約】
光送信器(100)が、送信すべきデータに第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号及び第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号が挿入されたデジタル信号である変調信号を生成する変調信号生成部(110)と、デジタル/アナログ変換部(120)によりアナログ信号に変換された変調信号に基づいてCW光発生部(140)からのCW光を変調して第1のパイロットシンボル信号及び第2のパイロットシンボル信号が挿入された変調光を生成する光変調部(130)と、を備え、光受信器(200)は、第1のシンボル周期からなる第1のパイロットシンボル信号及び第2のシンボル周期からなる第2のパイロットシンボル信号が挿入された偏波多重された変調光を受信し、受信された変調光をコヒーレント検波してアナログ電気信号を出力する光コヒーレント検波部(210)と、アナログ/デジタル変換器部(230)からのデジタル信号から抽出された、受信した偏波多重された変調光に挿入された第1のパイロットシンボル信号及び当該第1のパイロットシンボル信号と隣接する第2のパイロットシンボル信号を用いて位相差を算出して受けたデジタル信号の周波数を補償する周波数差補償部(247)を有する受信側デジタル信号処理部(240)と、を備える。
図1
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