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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】杭芯規定用マット
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/04 20060101AFI20250408BHJP
【FI】
E02D13/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021010257
(22)【出願日】2021-01-26
(65)【公開番号】P2022114109
(43)【公開日】2022-08-05
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】岸 俊甫
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-256951(JP,A)
【文献】特開平05-098642(JP,A)
【文献】特開平08-092958(JP,A)
【文献】実開昭61-045445(JP,U)
【文献】米国特許第09797199(US,B1)
【文献】特開2006-118336(JP,A)
【文献】特開平08-232265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定径の杭を施工する前に地上に設置され、前記杭を施工する際に杭芯の位置をガイドするために用いられる杭芯規定用マットであって、
前記所定径よりも寸法の大きな孔部を備えた樹脂製の敷設部を有し、
前記敷設部における前記孔部の周囲には、前記孔部の中心位置を指示する指示部が設けられ、
前記指示部は、前記敷設部の上面に描画されるマーキングであることを特徴とする、杭芯規定用マット。
【請求項2】
前記孔部の平面視寸法を調整する寸法調整部をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の杭芯規定用マット。
【請求項3】
前記敷設部を設置面に固定するための係止部をさらに備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の杭芯規定用マット。
【請求項4】
前記敷設部を折り畳む折り畳み部をさらに備えることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の杭芯規定用マット。
【請求項5】
前記孔部の平面視形状は、前記所定径よりも大径の円形であることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の杭芯規定用マット。
【請求項6】
前記寸法調整部は、前記孔部の中心に向かってスライド自在な複数の目盛り付きガイドにより形成されていることを特徴とする、請求項2、又は請求項2に従属する請求項3乃至5のいずれか一項に記載の杭芯規定用マット。
【請求項7】
前記寸法調整部は、内径の異なる複数のリング体により形成されていることを特徴とする、請求項2、又は請求項2に従属する請求項3乃至5のいずれか一項に記載の杭芯規定用マット。
【請求項8】
前記寸法調整部は、前記孔部の寸法を縮小する絞り部により形成されていることを特徴とする、請求項2、又は請求項2に従属する請求項3乃至5のいずれか一項に記載の杭芯規定用マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭芯規定用マットに関する。
【背景技術】
【0002】
杭工事とは、地盤が軟弱な場合に建物の荷重を地盤が支持できるように杭を設置する工事をいう。杭の種類としては、工場または現場で製作されてから地中に設置(打撃、圧入、埋設)される既製杭や、地中に掘削した穴に鉄筋かごを挿入してコンクリートを打設する場所打ち杭などが挙げられる。
【0003】
このような杭工事において、場所打ち杭や既製杭などの杭を設置する位置の位置決め精度を向上できるのが好ましい。例えば特許文献1には、杭径より僅かに大きい径の穴を設けた敷き鉄板の一部を、杭埋設機本体で敷くことにより固定し、この敷き鉄板の穴を通して杭を建込む杭埋設方法が提案されている。これにより、敷き鉄板の穴がガイドとなり、杭の沈設中に杭の芯ずれを生ずるおそれがないので、杭の芯位置合わせを容易にできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-98642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の杭埋設方法では、杭を設置する位置のガイドとしての穴が設けられる敷き鉄板が用いられる。しかし鉄板は重量が重いことから、持ち運びがしにくいという課題がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、杭の芯位置合わせを容易にでき、かつ、持ち運びがしやすい杭芯規定用マットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による杭芯規定用マットの一態様は、
所定径の杭を施工する前に地上に設置され、前記杭を施工する際に杭芯の位置をガイドするために用いられる杭芯規定用マットであって、
前記所定径よりも寸法の大きな孔部を備えた樹脂製の敷設部を有し、
前記敷設部における前記孔部の周囲には、前記孔部の中心位置を指示する指示部が設けられ、
前記指示部は、前記敷設部の上面に描画されるマーキングであることを特徴とする。


【0008】
本態様によれば、杭の径よりも寸法の大きな孔部を通して杭を設置することにより、孔部が杭を設置する位置のガイドとなるので、杭の芯位置合わせを容易にできる。さらに、孔部が設けられる敷設部が樹脂製であるので、従来の鉄板と比較して軽量化でき、これにより持ち運びをしやすくできる。
【0010】
本態様によれば、敷設部における孔部の周囲に、孔部の中心位置を指示する指示部が設けられることにより、孔部の中心位置をより明確に提示できる。これにより、杭の設置位置と孔部の中心位置とのずれを抑制でき、杭の芯位置合わせをより一層容易にできる。また、杭の設置位置が孔部の中心位置からずれていると、特に杭の径と孔部の寸法とが近い場合には、杭の設置が進んだときに杭が孔部の周囲の敷設部と干渉するおそれがある。これに対して本態様では、指示部によって孔部の中心位置をより明確に提示することによって、杭と敷設部との干渉を抑制できる。
【0011】
また、本発明による杭芯規定用マットの他の態様において、前記孔部の平面視寸法を調整する寸法調整部をさらに備えることを特徴とする。
【0012】
杭の径と孔部の寸法との間の格差が大きすぎると、孔部が杭芯の位置合わせのガイドとして機能しない場合があり、使いづらく汎用性がないという問題がある。本態様によれば、寸法調整部により孔部の平面視寸法を杭の径に合わせて調整することが可能となるので、さまざまな杭径に対応することができ、汎用性を向上できる。
【0013】
また、本発明による杭芯規定用マットの他の態様において、前記敷設部を設置面に固定するための係止部をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、杭芯規定用マットの使用時に、係止部により敷設部を設置面に固定することによって、敷設部に設けられる孔部の位置も設置面に対して固定されるので、設置面に対して孔部の位置がずれることを抑制でき、杭の芯位置合わせをより容易にできる。
【0015】
また、本発明による杭芯規定用マットの他の態様において、前記敷設部を折り畳む折り畳み部をさらに備えることを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、運搬時には折り畳み部により敷設部を折り畳むことによって、マット全体の体格を縮小でき、持ち運びをより容易にできる。
【0017】
また、本発明による杭芯規定用マットの他の態様において、前記孔部の平面視形状は、前記所定径よりも大径の円形であることを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、孔部を杭と同形状の円形状とすることにより、孔部が矩形状など杭と異なる形状の場合と比較して、杭を孔部に通過可能とするために必要な孔部の開口面積を縮小でき、マット全体の体格も縮小できる。これにより、持ち運びをさらに容易にできる。
【0019】
また、本発明による杭芯規定用マットの他の態様において、前記寸法調整部は、前記孔部の中心に向かってスライド自在な複数の目盛り付きガイドにより形成されていることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、寸法調整部を孔部の中心に向かってスライド自在な目盛り付きガイドで形成することにより、ガイドの位置を孔部の径方向に沿って連続的に任意に変更することが可能となり、これにより孔部を所望の径に調整することを容易にできる。
【0021】
また、本発明による杭芯規定用マットの他の態様において、前記寸法調整部は、内径の異なる複数のリング体により形成されていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、寸法調整部を内径の異なる複数のリング体で形成することにより、杭の径に応じた適切な孔部の径を設定する際にリング体の組み合わせによって容易かつ確実に所望の孔部の径を実現できる。
【0023】
また、本発明による杭芯規定用マットの他の態様において、前記寸法調整部は、前記孔部の寸法を縮小する絞り部により形成されていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、寸法調整部を孔部の寸法を縮小する絞り部により形成することにより、絞り部の先端の位置によって孔部の径を調整できる。絞り部の先端の位置を孔部の径方向に沿って連続的に任意に変更することが可能となり、これにより孔部を所望の径に調整することを容易にできる。
【発明の効果】
【0025】
以上の説明から理解できるように、本発明の杭芯規定用マットによれば、杭の芯位置合わせを容易にでき、かつ、持ち運びをしやすくできる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態に係る杭芯規定用マットの杭工事における適用例を示す図
図2】実施形態に係る杭芯規定用マットの概略構成を示す平面図
図3】折り畳み状態の杭芯規定用マットを示す模式図
図4】寸法調整部の一例としての目盛り付きガイドの概略構成図
図5】寸法調整部の他の例としてのリング体の概略構成図
図6】寸法調整部の他の例としての絞り片の概略構成図
図7】寸法調整部の他の例としての目盛り付きガイドの概略構成図
図8】寸法調整部の他の例としての絞り部材の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0028】
なお、以下の説明において、x方向、y方向、z方向は互いに垂直な方向である。x方向及びy方向は水平方向であり、z方向は鉛直方向である。x方向は矩形状の敷設部11の対向する二対の対辺の一方の延在方向であり、y方向は他方の延在方向である。また、以下では説明の便宜上、z正方向側を上側、z負方向側を下側とも表現する場合がある。
【0029】
図1は、実施形態に係る杭芯規定用マット10の杭工事における適用例を示す図である。本実施形態において、杭工事とは、地盤が軟弱な場合に建物の荷重を地盤が支持できるように杭を設置する工事をいう。
【0030】
図1に示すように、杭工事では、杭打機1によって杭が所定の杭芯Aの位置に設置される。なお杭工事で用いられる杭の種類としては、工場または現場で製作されてから地中に設置(打撃、圧入、埋設)される既製杭や、地中に掘削した穴に鉄筋かごを挿入してコンクリートを打設する場所打ち杭などが挙げられる。
【0031】
杭打機1には、杭の種類や施工方法に応じて様々な重機が適用される。例えば場所打ち杭を施工する場合には、杭打機1としてアースドリル機を用いることができる。
【0032】
実施形態に係る杭芯規定用マット10は、杭工事において、杭打機1が杭を打つ位置、すなわち杭芯Aの位置をわかりやすくするために用いられる。図1に加えて図2も参照して杭芯規定用マット10の構成を説明する。図2は、実施形態に係る杭芯規定用マット10の概略構成を示す平面図である。
【0033】
図1図2に示すように、杭芯規定用マット10は所定径の杭を施工する際に地上に設置される。杭芯規定用マット10は、敷設部11と、孔部12とを有する。
【0034】
敷設部11は、杭工事が行われる地表面に載置される平板状の部材である。敷設部11の外形は例えば図2に示すような略正方形状であり、対向する二対の対辺の一方がx方向に延在し、他方がy方向に延在するよう設置される。敷設部11は樹脂製である。敷設部11の寸法は例えば4m四方であり、厚みは20mmであり、重量は40kg程度である。
【0035】
孔部12は、敷設部11の主面のほぼ中央に形成される。孔部12の形状は、例えば図2に示すように円形状であり、施工対象の杭の径(所定径の一例)よりも大きな寸法で形成され、これにより杭を孔部12へ通過可能に形成される。
【0036】
本実施形態の杭芯規定用マット10によれば、杭の径よりも寸法の大きな孔部12を通して杭を設置することにより、孔部12が杭を設置する位置のガイドとなるので、杭芯Aの位置合わせを容易にできる。また、従来の杭埋設工事においては、上述の特許文献1に記載のように杭の設置位置のガイドとしての穴が設けられる敷き鉄板が用いられることが多い。これに対して本実施形態では、孔部12が設けられる敷設部11が樹脂製であるので、従来の鉄板と比較して杭芯規定用マット10の重量を軽量化できる。これにより杭芯規定用マット10の持ち運びをしやすくできる。したがって、本実施形態の杭芯規定用マット10は、杭の芯位置合わせを容易にでき、かつ、持ち運びをしやすくできる。この結果、杭工事の施工性を向上できる。
【0037】
なお、孔部12は少なくとも杭の径より寸法が大きく、杭を通すことができる形状であればよく、例えば矩形状など円形以外の形状でもよい。
【0038】
ただし、孔部12の平面視形状は、杭の所定径よりも大径の円形であることが好ましい。孔部12を杭と同形状の円形状とすることにより、孔部12が矩形状など杭と異なる形状の場合と比較して、杭を孔部12に通過可能とするために必要な孔部12の開口面積を縮小でき、杭芯規定用マット10の全体の体格も縮小できる。これにより、杭芯規定用マット10の持ち運びをさらに容易にできる。
【0039】
また、本実施形態の杭芯規定用マット10では、敷設部11における孔部12の周囲には、孔部12の中心位置Cを指示する指示部13が設けられるのが好ましい。指示部13は、例えば敷設部11の上面に描画されるマーキング(標識または印とも表現できる)である。指示部13は、例えば図2に示すように、孔部12の交差する(好ましくは直交する)2つの直径に沿って、各直径の両端に対向する二組、合計4つが設けられる。各組の対向する2つの指示部13を結ぶ直線Bは孔部12の直径であり、二組の指示部13を結ぶ2本の直線Bは、孔部12の中心位置Cで交差する。つまり、2本の直線Bは孔部12の通り芯である。
【0040】
例えば杭工事において、図2に示す孔部12の中心位置Cに、図1に示す杭芯Aの位置を合わせるように作業員が杭打機1を操作することによって、杭の設置位置の位置合わせを行うことができる。
【0041】
このように敷設部11における孔部12の周囲に、孔部12の中心位置Cを指示する指示部13が設けられることにより、孔部12の中心位置Cをより明確に作業員に提示できる。これにより、杭の設置位置と孔部の中心位置とのずれを抑制でき、杭の芯位置合わせをより一層容易にできる。また、杭の設置位置(図1に示す杭芯A)が孔部12の中心位置Cからずれていると、特に杭の径と孔部12の寸法とが近い場合には、杭の設置が進んだときに杭が孔部12の周囲の敷設部11と干渉するおそれがある。これに対して本実施形態では、指示部13によって孔部12の中心位置Cをより明確に提示することによって、杭と敷設部11との干渉を抑制できる。
【0042】
なお、指示部13は杭芯規定用マット10の地上設置時に作業員が視認できるものであればよく、指示部13の態様は、例えば敷設部11の表面を凸状や凹状に加工したものや、敷設部11の表面に付加された別部材など、マーキング以外でもよい。
【0043】
また、本実施形態の杭芯規定用マット10において、敷設部11は、例えば図1図2に示すように矩形状の四つの角部において、打ち込みピンなどの係止部14によって設置面に固定されるのが好ましい。
【0044】
このように杭芯規定用マット10の使用時に、係止部14により敷設部11を設置面に固定することによって、敷設部11に設けられる孔部12の位置も設置面に対して固定されるので、設置面に対して孔部12の位置がずれることを抑制でき、杭芯Aの位置合わせをより容易にできる。
【0045】
また、本実施形態の杭芯規定用マット10は、敷設部11を折り畳む折り畳み部15をさらに備えるのが好ましい。折り畳み部15は、例えばヒンジである。図2の例では、敷設部11はy方向の中央位置にて2つの要素に分断され、これらの2つの要素がヒンジにより連結されている。図3は、折り畳み状態の杭芯規定用マット10を示す模式図である。図3に示すように、敷設部11は折り畳み部15を中心としてy方向に折り畳み可能となっている。
【0046】
このように運搬時には折り畳み部15により敷設部11を折り畳むことによって、杭芯規定用マット10の全体の体格を縮小でき、持ち運びをより容易にできる。
【0047】
なお、折り畳み部15による敷設部11の折り畳みの態様は図2図3のものに限られない。例えば敷設部11をx方向の中央位置でもさらに分断して、図3に示した折り畳み状態からさらにx方向に折り畳む構成でもよい。または、敷設部11の矩形状の対角線を中心として折り畳む構成でもよい。また、折り畳み部15の具体的な構造はヒンジ以外でもよく、例えば敷設部11の折り畳み部分に一方の主面側から折り畳み線に沿って切り込みを入れて、これにより切り込み位置で敷設部11の折り畳みを容易にできる構成などでもよい。
【0048】
また、本実施形態の杭芯規定用マット10は、孔部12の平面視寸法を調整する寸法調整部を備えるのが好ましい。杭の径と孔部12の寸法との間の格差が大きすぎると、孔部12が杭芯Aの位置合わせのガイドとして機能しない場合があり、使いづらく汎用性がないという問題がある。本実施形態では、寸法調整部により孔部12の平面視寸法を杭の径に合わせて調整することが可能となるので、さまざまな杭径に対応することができ、汎用性を向上できる。また、杭工事において複数種類の杭を設置する場合にも対応できる。
【0049】
以下、図4図8を参照して、本実施形態の杭芯規定用マット10に適用される寸法調整部の複数の具体例について説明する。
【0050】
図4は、寸法調整部の一例としての目盛り付きガイド16の概略構成図である。図4の例では、寸法調整部は、孔部12の中心に向かってスライド自在な複数の目盛り付きガイド16により形成されている。図4では、杭30の外形の一例を点線で図示している。
【0051】
目盛り付きガイド16は、目盛り部16Aと、ガイド部16Bとを有する。目盛り部16Aは、孔部12の径方向に沿って移動可能に敷設部11に設置される。ガイド部16Bは、目盛り部16Aの孔部12中心側の先端に接続される。ガイド部16Bは、例えば図4に示すように孔部12や杭30の円形状の接線方向を長手方向とする部材である。
【0052】
図4の例では、目盛り付きガイド16は、孔部12の交差する(好ましくは直交する)2つの直径に沿って、各直径の両端側に対向する二組、合計4つが設けられる。4つの目盛り付きガイド16のそれぞれの目盛り部16Aが孔部12中心側へ進出する長さを揃えることによって、その先端の4つのガイド部16Bが、杭30を設置可能な範囲を孔部12の開口面積より狭い範囲で、かつ、孔部12の中心位置を中心とする範囲で規定することができる。
【0053】
このように、寸法調整部を孔部12の中心に向かってスライド自在な目盛り付きガイド16で形成することにより、ガイド部16Bの位置を孔部の径方向に沿って連続的に任意に変更することが可能となり、これにより孔部12を所望の径に調整することを容易にできる。
【0054】
図5は、寸法調整部の他の例としてのリング体17A、17Bの概略構成図である。図5の例では、寸法調整部は、内径の異なる複数のリング体17A、17Bにより形成されている。リング体17Aは、孔部12の内径と同一の外径を有し、周方向に沿って所定幅で形成される円環状の部材である。リング体17Bは、リング体17Aの内径と同一の外径を有し、周方向に沿って所定幅で形成される円環状の部材である。
【0055】
図5に示すように、孔部12の内径に沿ってリング体17Aを設置すれば、杭を設置可能な範囲を孔部12より小さいリング体17Aの内径の範囲に縮小できる。さらに、リング体17Aの内径に沿ってリング体17Bを設置すれば、杭を設置可能な範囲をリング体17Aより小さいリング体17Bの内径の範囲に縮小できる。
【0056】
このように、寸法調整部を内径の異なる複数のリング体17A、17Bで形成することにより、杭の径に応じた適切な孔部12の径を設定する際に、リング体17A、17Bの組み合わせによって容易かつ確実に所望の孔部12の径を実現できる。
【0057】
なお、複数のリング体17A、17Bの構成は図5に示す例に限られない。例えば、各リング体の径方向寸法をより小さくしてリング体の数を3個以上に増やして、これにより孔径の調整をより細分化する構成としてもよい。または、図5に示したリング体17A、17Bのさらに孔部中心側に別のリング体を設けて、これにより孔径の調整範囲を拡大する構成としてもよい。
【0058】
図6は、寸法調整部の他の例としての絞り片18の概略構成図である。図6の例では、寸法調整部は、孔部12の寸法を縮小する複数の絞り片18(絞り部)により形成されている。複数の絞り片18は、周知のカメラレンズの絞り機構に適用される虹彩絞りと同様の構造をとるものである。複数の絞り片18が重ね合わせられ、各絞り片18の孔部中心側への進出量を変更することによって中心の開口部の面積を変更可能に構成される。
【0059】
このように、寸法調整部を孔部12の寸法を縮小する複数の絞り片18により形成することにより、絞り片18の先端の位置によって孔部12の径を調整できる。絞り片18の先端の位置を孔部12の径方向に沿って連続的に任意に変更することが可能となり、これにより孔部12を所望の径に調整することを容易にできる。
【0060】
図7は、寸法調整部の他の例としての目盛り付きガイド19の概略構成図である。図7に示す構成は、図4を参照して説明した目盛り付きガイド16の変形例である。図7に示す目盛り付きガイド19は、設置位置が図4の目盛り付きガイド16と異なる。
【0061】
図7に示すように、4個の目盛り付きガイド19は、敷設部11の矩形状の対角線に沿って配置されている。敷設部11が略正方形上であり、孔部12が円形状であるので、敷設部11の外縁部分から孔部12までの寸法は敷設部11の対角線上が最も長くなる。このため、目盛り付きガイド19を対角線上に配置することにより、図7に示すように目盛り付きガイド19を敷設部11内に収容できる長さを増やすことができる。これにより、目盛り付きガイド19の大部分を敷設部11に収容した状態でも敷設部11の外側にはみ出る部分を少なくすることができ、杭芯規定用マット10の見映えをよくできる。
【0062】
図8は、寸法調整部の他の例としての絞り部材20の概略構成図である。図8に示す構成は、図6を参照して説明した絞り片18(絞り部)の変形例である。
【0063】
図8に示す絞り部材20は、形状が図6の絞り片18と異なる。絞り片18では、孔部12の外縁部分を塞ぎ、開口部を縮小する構成であったのに対して、図8の絞り部材20は、孔部12の外縁部分は塞がず、絞り部材20の先端部分によって杭30を設置可能な範囲を規定する。例えば図8に示すように、複数の絞り部材20が連動して、例えば不図示のガイド部材により案内されて、または、不図示のアクチュエータにより駆動されて、孔部12の周方向や径方向にスライド移動する。これにより、各絞り部材20の先端部20Aが孔部中心側に進出し、この結果、杭を設置可能な範囲を孔部12の開口面積より狭い範囲で、かつ、孔部12の中心位置を中心とする範囲で規定することができる。
【0064】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0065】
10 杭芯規定用マット
11 敷設部
12 孔部
13 指示部
14 係止部
15 折り畳み部
16、19 目盛り付きガイド(寸法調整部)
17A、17B リング体(寸法調整部)
18 絞り片(絞り部、寸法調整部)
20 絞り部材(絞り部、寸法調整部)
30 杭
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8