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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】射出成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/67 20060101AFI20250408BHJP
   B29C 45/84 20060101ALI20250408BHJP
   B22D 17/26 20060101ALI20250408BHJP
   B22D 46/00 20060101ALI20250408BHJP
   B22D 18/02 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
B29C45/67
B29C45/84
B22D17/26 J
B22D17/26 Z
B22D46/00
B22D18/02 Y
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023511501
(86)(22)【出願日】2022-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2022016134
(87)【国際公開番号】W WO2022210921
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2024-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2021062344
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】常深 浩基
(72)【発明者】
【氏名】寺田 眞司
(72)【発明者】
【氏名】淺井 裕成
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-171904(JP,A)
【文献】特開2018-171832(JP,A)
【文献】特開2018-140612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/67
B29C 45/84
B22D 17/26
B22D 46/00
B22D 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型が取り付けられる固定プラテンと、
可動金型が取り付けられる可動プラテンと、
流体圧によって前記可動プラテンを移動させて、前記可動プラテンを前記固定プラテンに接触させる型閉工程を行う型締装置と、
前記流体圧を生じさせる油圧シリンダと、
前記油圧シリンダの複数の油室を接続する流路と、
前記流路の途中に設けられた両回転ポンプと、
前記両回転ポンプの回転を制御するサーボモータと、
前記型締装置を制御する制御部と、を有し、
前記型締装置は、前記両回転ポンプの回転方向に基づいて、前記流路を流れる油の流れを切り替え可能であり、
前記制御部は、
前記型閉工程で前記可動プラテンの速度制御を行う速度制御部と、
前記可動プラテンの移動で生じる前記流体圧を示した圧力値を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記圧力値が、所定の閾値を超えたか否かを判定する判定部と、
前記圧力値に応じて、前記サーボモータの出力を制御するモータ制御部と、
を有する、射出成形機。
【請求項2】
前記判定部は、前記可動プラテンの移動した位置毎に、予め定められた前記所定の閾値に基づいて判定を行う、
請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記判定部は、前記可動プラテンが所定位置に到達するまでの時間が、所定の時間を超えたか否かの判定を行う、
請求項1に記載の射出成形機。
【請求項4】
前記型閉工程で前記可動プラテンに対して圧力制御を行う圧力制御部と、
前記型閉工程において前記可動プラテンを移動させる時に、前記圧力制御部による前記圧力制御と、前記速度制御部による速度制御と、を切り替える切替部と、をさらに有し、
前記判定部は、前記圧力制御部による前記圧力制御を行う場合に、前記所定位置に到達するまでの時間が、前記所定の時間を超えたか否かの判定を行い、前記速度制御部による前記速度制御を行う場合に、前記取得部が取得した前記圧力値が、前記所定の閾値を超えたか否かの判定を行う、
請求項に記載の射出成形機。
【請求項5】
前記所定の閾値を記憶する記憶部をさらに備え、
前記記憶部に記憶される前記所定の閾値は、前記取得部が取得した前記圧力値に応じて更新される、
請求項1に記載の射出成形機。
【請求項6】
前記判定部は、前記流体圧を生じさせる前記サーボモータの回転速度から、前記可動プラテンの移動で発生する圧力の推定値を算出し、当該圧力の推定値と、前記取得部が取得した前記圧力値との差が所定値以上の場合、前記所定の閾値を超えたと判定する、
請求項に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機においては、成形品を成形するための金型装置を構成する、固定金型と可動金型とを接触させる型閉工程が行われる。型閉工程を行う際に、可動金型を移動させる型締装置として油圧シリンダを利用する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-015553公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には型締装置に油圧シリンダを用いた場合における型開工程に関する技術が記載されている。具体的には、型開工程において、トルクを制限した上で、時間的要素を監視して異常か否かを検出している。
【0005】
型締装置に油圧シリンダを用いた際、型閉工程において、可動プラテンを移動させる制御を行う場合、トルク又は圧力を低く制限した上で、時間的要素を監視して、異常か否かを検出する。当該制御では、トルク又は圧力を低く制限しているため、摩擦などの負荷の影響を受けて、型閉工程が終了するまでの型閉時間が大きくばらつく。このため、異常か否かを判定するための監視時間(時間的要素)は、かなり余裕をもって長く設定する必要がある。
【0006】
このため、当該型閉工程において、監視時間内に型閉工程が終了したか否かを判定している時に、固定金型と可動金型との間に異物が挟み込まれた場合、監視時間が経過するまで金型装置に負荷が与え続けることになる。
【0007】
本発明の一態様は、型閉工程において、可動プラテンの速度制御を行う際に、迅速に異常の検知可能とする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る射出成形機は、固定金型が取り付けられる固定プラテンと、可動金型が取り付けられる可動プラテンと、流体圧によって可動プラテンを移動させて、可動プラテンを固定プラテンに接触させる型閉工程を行う型締装置と、流体圧を生じさせる油圧シリンダと、油圧シリンダの複数の油室を接続する流路と、流路の途中に設けられた両回転ポンプと、両回転ポンプの回転を制御するサーボモータと、型締装置を制御する制御部と、を有する。型締装置は、両回転ポンプの回転方向に基づいて、流路を流れる油の流れを切り替え可能である。制御部は、型閉工程で可動プラテンの速度制御を行う速度制御部と、可動プラテンの移動で生じる流体圧を示した圧力値を取得する取得部と、取得部により取得された圧力値が、所定の閾値を超えたか否かを判定する判定部と、前記圧力値に応じて、サーボモータの出力を制御するモータ制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、可動プラテンの速度制御を行う際に、可動プラテンの移動で生じる流体圧の変化を検知することで、迅速に異常の検知を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。
図2図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。
図3図3は、第1の実施形態に係る型締装置の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施形態に係る制御装置の構成要素を機能ブロックで示す図ある。
図5図5は、第1の実施形態に係る制御装置の圧力制御部における圧力制御の例示した図である。
図6図6は、第1の実施形態に係る速度制御部における速度制御の例を示した図である。
図7図7は、第1の実施形態に係る制御装置の型閉工程において速度制御を行う場合の処理を示したフローチャートである。
図8図8は、変形例1に係る速度制御部における速度制御の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の又は対応する符号を付し、説明を省略することがある。
【0012】
図1は、一実施形態に係る射出成形機の型開完了時の状態を示す図である。図2は、一実施形態に係る射出成形機の型締時の状態を示す図である。本明細書において、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は互いに垂直な方向である。X軸方向及びY軸方向は水平方向を表し、Z軸方向は鉛直方向を表す。型締装置100が横型である場合、X軸方向は型開閉方向であり、Y軸方向は射出成形機10の幅方向である。Y軸方向負側を操作側と呼び、Y軸方向正側を反操作側と呼ぶ。
【0013】
図1図2に示すように、射出成形機10は、金型装置800を開閉する型締装置100と、金型装置800に成形材料を射出する射出装置300と、金型装置800に対し射出装置300を進退させる移動装置400と、射出成形機10の各構成要素を制御する制御装置700と、射出成形機10の各構成要素を支持するフレーム900とを有する。また、射出成形機10は、金型装置800で成形された成形品を金型装置800(可動金型820)から突き出すエジェクタ装置(不図示)を含む。フレーム900は、型締装置100を支持する型締装置フレーム910と、射出装置300を支持する射出装置フレーム920とを含む。型締装置フレーム910及び射出装置フレーム920は、それぞれ、レベリングアジャスタ930を介して床2に設置される。射出装置フレーム920の内部空間に、制御装置700が配置される。以下、射出成形機10の各構成要素について説明する。
【0014】
(型締装置)
型締装置100の説明では、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0015】
型締装置100は、金型装置800の型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程及び型開工程を行う。金型装置800は、固定金型810と、可動金型820と、可動金型820の内部(中空部)に進退自在に配置される可動部材830とを含む。
【0016】
型締装置100は、例えば、横型であって、型開閉方向が水平方向である。型締装置100は、固定プラテン110、可動プラテン120、タイバー140、及び油圧シリンダ150等を有する。
【0017】
固定プラテン110は、型締装置フレーム910に対し固定される。固定プラテン110における可動プラテン120との対向面に固定金型810が取付けられる。
【0018】
可動プラテン120は、型締装置フレーム910に対し型開閉方向に移動自在に配置される。型締装置フレーム910上には、可動プラテン120を案内するガイド101が敷設される。可動プラテン120における固定プラテン110との対向面に可動金型820が取付けられる。固定プラテン110に対し可動プラテン120を進退させることにより、金型装置800の型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、及び型開工程が行われる。
【0019】
タイバー140は、固定プラテン110と油圧シリンダ150のシリンダ本体部151(図3参照)とを型開閉方向に間隔Lをおいて連結する。タイバー140は、複数本(例えば4本)用いられてよい。複数本のタイバー140は、型開閉方向に平行に配置され、型締力に応じて伸びる。
【0020】
油圧シリンダ150は、可動プラテンに取り付けられる。油圧シリンダ150は、いわゆる直圧式で可動プラテン120を駆動し、可動プラテン120を型開閉方向に移動させる。油圧シリンダ150の構成、及び駆動機構の詳細については、後述する(図3参照)。
【0021】
型締装置100は、制御装置700による制御下で、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、及び型開工程などを行う。
【0022】
型閉工程では、油圧シリンダ150を駆動して油圧シリンダ150(後述のピストン部152)を設定移動速度で型閉完了位置まで前進させることにより、可動プラテン120を前進させ、可動金型820を固定金型810にタッチさせる。油圧シリンダ150の位置や移動速度は、例えば、シリンダ圧センサ等を用いて検出する。シリンダ圧センサは、油圧シリンダ150の伸縮位置を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。これにより、制御装置700は、型締工程及び後述の型開工程において、シリンダ圧センサの検出結果を示す信号に基づき、油圧シリンダ150(可動プラテン120)の位置に関するフィードバック制御(油圧シリンダ150の位置制御)を行うことができる。
【0023】
なお、油圧シリンダ150の位置を検出する油圧シリンダ位置検出器、及び油圧シリンダ150の移動速度を検出する油圧シリンダ移動速度検出器は、シリンダ圧センサに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0024】
昇圧工程では、油圧シリンダ150をさらに駆動して油圧シリンダ150の圧力を所定の圧力(以下、「目標型締圧」)になるように制御され、油圧シリンダ150の圧力を上昇させることで型締力を生じさせる。油圧シリンダ150の圧力は、例えば、油圧シリンダ150に設けられる圧力センサ(シリンダ圧センサ)等を用いて検出する。シリンダ圧センサは、油圧シリンダ150の内部の所定の油室の圧力(例えば、後述の油室155)の圧力を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。これにより、制御装置700は、昇圧工程、並びに後述の型締工程及び脱圧工程において、シリンダ圧センサの検出結果を示す信号に基づき、油圧シリンダ150の圧力に関するフィードバック制御(油圧シリンダ150の圧力制御)を行うことができる。
【0025】
型締工程では、油圧シリンダ150を駆動して、油圧シリンダ150の圧力を目標型締圧に維持する。型締工程では、昇圧工程で発生させた型締力が維持される。型締工程では、可動金型820と固定金型810との間にキャビティ空間801(図2参照)が形成され、射出装置300がキャビティ空間801に液状の成形材料を充填する。充填された成形材料が固化されることで、成形品が得られる。
【0026】
キャビティ空間801の数は、1つでもよいし、複数でもよい。後者の場合、複数の成形品が同時に得られる。キャビティ空間801の一部にインサート材が配置され、キャビティ空間801の他の一部に成形材料が充填されてもよい。インサート材と成形材料とが一体化した成形品が得られる。
【0027】
脱圧工程では、油圧シリンダ150を駆動して油圧シリンダ150を目標型締圧から減少させることにより、型締力を減少させる。
【0028】
型開工程では、油圧シリンダ150を駆動して油圧シリンダ150(ピストン部152)を設定移動速度で型開開始位置から型開完了位置まで後退させることにより、可動プラテン120を後退させ、可動金型820を固定金型810から離間させる。その後、エジェクタ装置が可動金型820から成形品を突き出す。型開開始位置と、型閉完了位置とは、同じ位置であってよい。
【0029】
型閉工程、昇圧工程及び型締工程における設定条件は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、型閉工程及び昇圧工程における油圧シリンダ150の移動速度、位置(型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、及び型締位置を含む)、圧力(目標型締圧を含む)、型締力等は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型閉開始位置、移動速度切換位置、型閉完了位置、及び型締位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型締位置、目標型締圧、及び型締力は、いずれか一つ或いは二つのみが設定されてもよい。
【0030】
脱圧工程及び型開工程における設定条件も同様に設定される。例えば、脱圧工程及び型開工程における油圧シリンダ150の移動速度や位置(型開開始位置、移動速度切換位置、及び型開完了位置)は、一連の設定条件として、まとめて設定される。型開開始位置、移動速度切換位置、及び型開完了位置は、前側から後方に向けて、この順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。型開開始位置と型閉完了位置とは同じ位置であってよい。また、型開完了位置と型閉開始位置とは同じ位置であってよい。
【0031】
なお、油圧シリンダ150の移動速度や位置などの代わりに、可動プラテン120の移動速度や位置などが設定されてもよい。また、油圧シリンダ150の位置(例えば型締位置)や可動プラテン120の位置の代わりに、目標型締圧や型締力が設定されてもよい。
【0032】
なお、本実施形態の型締装置100は、型開閉方向が水平方向である横型であるが、型開閉方向が上下方向である竪型でもよい。
【0033】
(エジェクタ装置)
エジェクタ装置の説明では、型締装置100の説明と同様に、型閉時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸正方向)を前方とし、型開時の可動プラテン120の移動方向(例えばX軸負方向)を後方として説明する。
【0034】
エジェクタ装置は、可動プラテン120に取り付けられ、可動プラテン120と共に進退する。エジェクタ装置は、金型装置800から成形品を突き出すエジェクタロッドと、エジェクタロッドを可動プラテン120の移動方向(X軸方向)に移動させる駆動機構とを有する。
【0035】
エジェクタロッドは、可動金型820の内部に進退自在に配置される可動部材830と接触し、可動部材を前進させることができる。
【0036】
駆動機構は、例えば、エジェクタモータと、エジェクタモータの回転運動をエジェクタロッドの直線運動に変換する運動変換機構とを有する。運動変換機構は、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを含む。ねじ軸と、ねじナットとの間には、ボールまたはローラが介在してよい。
【0037】
エジェクタ装置は、制御装置700による制御下で、突き出し工程を行う。突き出し工程では、エジェクタ装置は、可動部材830を前進させ、成形品を突き出す。
【0038】
エジェクタロッドの位置や移動速度は、例えばエジェクタモータエンコーダを用いて検出する。エジェクタモータエンコーダは、エジェクタモータの回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。また、エジェクタロッドの位置を検出するエジェクタロッド位置検出器、及びエジェクタロッドの移動速度を検出するエジェクタロッド移動速度検出器は、エジェクタモータエンコーダに限定されず、一般的なものを使用できる。
【0039】
(射出装置)
射出装置300の説明では、型締装置100の説明やエジェクタ装置200の説明とは異なり、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0040】
射出装置300はスライドベース301に設置され、スライドベース301は射出装置フレーム920に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800に対し進退自在に配置される。射出装置300は、金型装置800にタッチし、金型装置800内のキャビティ空間801に成形材料を充填する。射出装置300は、例えば、シリンダ310、ノズル320、スクリュ330、計量モータ340、射出モータ350、荷重検出器360などを有する。
【0041】
シリンダ310は、供給口311から内部に供給された成形材料を加熱する。成形材料は、例えば樹脂などを含む。成形材料は、例えばペレット状に形成され、固体の状態で供給口311に供給される。供給口311はシリンダ310の後部に形成される。シリンダ310の後部の外周には、水冷シリンダなどの冷却器312が設けられる。冷却器312よりも前方において、シリンダ310の外周には、バンドヒータなどの加熱器313と温度検出器314とが設けられる。
【0042】
シリンダ310は、シリンダ310の軸方向(例えばX軸方向)に複数のゾーンに区分される。複数のゾーンのそれぞれに加熱器313と温度検出器314とが設けられる。複数のゾーンのそれぞれに設定温度が設定され、温度検出器314の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0043】
ノズル320は、シリンダ310の前端部に設けられ、金型装置800に対し押し付けられる。ノズル320の外周には、加熱器313と温度検出器314とが設けられる。ノズル320の検出温度が設定温度になるように、制御装置700が加熱器313を制御する。
【0044】
スクリュ330は、シリンダ310内に回転自在に且つ進退自在に配置される。スクリュ330を回転させると、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料が前方に送られる。成形材料は、前方に送られながら、シリンダ310からの熱によって徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。その後、スクリュ330を前進させると、スクリュ330前方に蓄積された液状の成形材料がノズル320から射出され、金型装置800内に充填される。
【0045】
スクリュ330の前部には、スクリュ330を前方に押すときにスクリュ330の前方から後方に向かう成形材料の逆流を防止する逆流防止弁として、逆流防止リング331が進退自在に取付けられる。
【0046】
逆流防止リング331は、スクリュ330を前進させるときに、スクリュ330前方の成形材料の圧力によって後方に押され、成形材料の流路を塞ぐ閉塞位置(図2参照)までスクリュ330に対し相対的に後退する。これにより、スクリュ330前方に蓄積された成形材料が後方に逆流するのを防止する。
【0047】
一方、逆流防止リング331は、スクリュ330を回転させるときに、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って前方に送られる成形材料の圧力によって前方に押され、成形材料の流路を開放する開放位置(図1参照)までスクリュ330に対し相対的に前進する。これにより、スクリュ330の前方に成形材料が送られる。
【0048】
逆流防止リング331は、スクリュ330と共に回転する共回りタイプと、スクリュ330と共に回転しない非共回りタイプのいずれでもよい。
【0049】
なお、射出装置300は、スクリュ330に対し逆流防止リング331を開放位置と閉塞位置との間で進退させる駆動源を有していてもよい。
【0050】
計量モータ340は、スクリュ330を回転させる。スクリュ330を回転させる駆動源は、計量モータ340には限定されず、例えば油圧ポンプなどでもよい。
【0051】
射出モータ350は、スクリュ330を進退させる。射出モータ350とスクリュ330との間には、射出モータ350の回転運動をスクリュ330の直線運動に変換する運動変換機構などが設けられる。運動変換機構は、例えば、ねじ軸と、ねじ軸に螺合するねじナットとを有する。ねじ軸とねじナットの間には、ボールやローラなどが設けられてよい。スクリュ330を進退させる駆動源は、射出モータ350には限定されず、例えば油圧シリンダなどでもよい。
【0052】
荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間で伝達される力を検出する。検出した力は、制御装置700で圧力に換算される。荷重検出器360は、射出モータ350とスクリュ330との間の力の伝達経路に設けられ、荷重検出器360に作用する力を検出する。
【0053】
荷重検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。荷重検出器360の検出結果は、スクリュ330が成形材料から受ける圧力、スクリュ330に対する背圧、スクリュ330から成形材料に作用する圧力などの制御や監視に用いられる。
【0054】
なお、成形材料の圧力を検出する圧力検出器は、荷重検出器360に限定されず、一般的なものを使用できる。例えば、ノズル圧センサ、又は型内圧センサが用いられてもよい。ノズル圧センサは、ノズル320に設置される。型内圧センサは、金型装置800の内部に設置される。
【0055】
射出装置300は、制御装置700による制御下で、計量工程、充填工程及び保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程と呼んでもよい。
【0056】
計量工程では、計量モータ340を駆動してスクリュ330を設定回転速度で回転させ、スクリュ330の螺旋状の溝に沿って成形材料を前方に送る。これに伴い、成形材料が徐々に溶融される。液状の成形材料がスクリュ330の前方に送られシリンダ310の前部に蓄積されるにつれ、スクリュ330が後退させられる。スクリュ330の回転速度は、例えば計量モータエンコーダ341を用いて検出する。計量モータエンコーダ341は、計量モータ340の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。また、スクリュ330の回転速度を検出するスクリュ回転速度検出器は、計量モータエンコーダ341に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0057】
計量工程では、スクリュ330の急激な後退を制限すべく、射出モータ350を駆動してスクリュ330に対して設定背圧を加えてよい。スクリュ330に対する背圧は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。荷重検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330が計量完了位置まで後退し、スクリュ330の前方に所定量の成形材料が蓄積されると、計量工程が完了する。
【0058】
計量工程におけるスクリュ330の位置及び回転速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、計量開始位置、回転速度切換位置及び計量完了位置が設定される。これらの位置は、前側から後方に向けてこの順で並び、回転速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、回転速度が設定される。回転速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。回転速度切換位置は、設定されなくてもよい。また、区間毎に背圧が設定される。
【0059】
充填工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を設定移動速度で前進させ、スクリュ330の前方に蓄積された液状の成形材料を金型装置800内のキャビティ空間801に充填させる。スクリュ330の位置や移動速度は、例えば射出モータエンコーダ351を用いて検出する。射出モータエンコーダ351は、射出モータ350の回転を検出し、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。スクリュ330の位置が設定位置に達すると、充填工程から保圧工程への切換(所謂、V/P切換)が行われる。V/P切換が行われる位置をV/P切換位置とも呼ぶ。スクリュ330の設定移動速度は、スクリュ330の位置や時間などに応じて変更されてもよい。
【0060】
充填工程におけるスクリュ330の位置及び移動速度は、一連の設定条件として、まとめて設定される。例えば、充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)、移動速度切換位置及びV/P切換位置が設定される。これらの位置は、後側から前方に向けてこの順で並び、移動速度が設定される区間の始点や終点を表す。区間毎に、移動速度が設定される。移動速度切換位置は、1つでもよいし、複数でもよい。移動速度切換位置は、設定されなくてもよい。
【0061】
スクリュ330の移動速度が設定される区間毎に、スクリュ330の圧力の上限値が設定される。スクリュ330の圧力は、荷重検出器360によって検出される。荷重検出器360の検出値が設定圧力以下である場合、スクリュ330は設定移動速度で前進される。一方、荷重検出器360の検出値が設定圧力を超える場合、金型保護を目的として、荷重検出器360の検出値が設定圧力以下となるように、スクリュ330は設定移動速度よりも遅い移動速度で前進される。
【0062】
なお、充填工程においてスクリュ330の位置がV/P切換位置に達した後、V/P切換位置にスクリュ330を一時停止させ、その後にV/P切換が行われてもよい。V/P切換の直前において、スクリュ330の停止の代わりに、スクリュ330の微速前進または微速後退が行われてもよい。また、スクリュ330の位置を検出するスクリュ位置検出器、及びスクリュ330の移動速度を検出するスクリュ移動速度検出器は、射出モータエンコーダ351に限定されず、一般的なものを使用できる。
【0063】
保圧工程では、射出モータ350を駆動してスクリュ330を前方に押し、スクリュ330の前端部における成形材料の圧力(以下、「保持圧力」とも呼ぶ。)を設定圧に保ち、シリンダ310内に残る成形材料を金型装置800に向けて押す。金型装置800内での冷却収縮による不足分の成形材料を補充できる。保持圧力は、例えば荷重検出器360を用いて検出する。荷重検出器360は、その検出結果を示す信号を制御装置700に送る。保持圧力の設定値は、保圧工程の開始からの経過時間などに応じて変更されてもよい。保圧工程における保持圧力及び保持圧力を保持する保持時間は、それぞれ複数設定されてよく、一連の設定条件として、まとめて設定されてよい。
【0064】
保圧工程では金型装置800内のキャビティ空間801の成形材料が徐々に冷却され、保圧工程完了時にはキャビティ空間801の入口が固化した成形材料で塞がれる。この状態はゲートシールと呼ばれ、キャビティ空間801からの成形材料の逆流が防止される。保圧工程後、冷却工程が開始される。冷却工程では、キャビティ空間801内の成形材料の固化が行われる。成形サイクル時間の短縮を目的として、冷却工程中に計量工程が行われてよい。
【0065】
なお、本実施形態の射出装置300は、インライン・スクリュ方式であるが、プリプラ方式などでもよい。プリプラ方式の射出装置は、可塑化シリンダ内で溶融された成形材料を射出シリンダに供給し、射出シリンダから金型装置内に成形材料を射出する。可塑化シリンダ内には、スクリュが回転自在に且つ進退不能に配置され、またはスクリュが回転自在に且つ進退自在に配置される。一方、射出シリンダ内には、プランジャが進退自在に配置される。
【0066】
また、本実施形態の射出装置300は、シリンダ310の軸方向が水平方向である横型であるが、シリンダ310の軸方向が上下方向である竪型であってもよい。竪型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、竪型でも横型でもよい。同様に、横型の射出装置300と組み合わされる型締装置は、横型でも竪型でもよい。
【0067】
このように、本実施形態では、射出装置300は、計量モータ340及び射出モータ350等の電動アクチュエータにより電気駆動される。これにより、射出装置300は、制御装置700からの制御指令に対する油圧駆動される場合よりも応答性を相対的に高めることができる。そのため、射出成形機10は、射出装置300の相対的に優れた制御性を実現することができる。
【0068】
(移動装置)
移動装置400の説明では、射出装置300の説明と同様に、充填時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸負方向)を前方とし、計量時のスクリュ330の移動方向(例えばX軸正方向)を後方として説明する。
【0069】
移動装置400は、金型装置800に対し射出装置300を進退させる。また、移動装置400は、金型装置800に対しノズル320を押し付け、ノズルタッチ圧力を生じさせる。移動装置400は、液圧ポンプ410、駆動源としてのモータ420、液圧アクチュエータとしての液圧シリンダ430などを含む。
【0070】
液圧ポンプ410は、第1ポート411と、第2ポート412とを有する。液圧ポンプ410は、両方向回転可能なポンプであり、モータ420の回転方向を切換えることにより、第1ポート411及び第2ポート412のいずれか一方から作動液(例えば油)を吸入し他方から吐出して液圧を発生させる。また、液圧ポンプ410はタンクから作動液を吸引して第1ポート411及び第2ポート412のいずれか一方から作動液を吐出することもできる。
【0071】
モータ420は、液圧ポンプ410を作動させる。モータ420は、制御装置700からの制御信号に応じた回転方向及び回転トルクで液圧ポンプ410を駆動する。モータ420は、電動モータであってよく、電動サーボモータであってよい。
【0072】
液圧シリンダ430は、シリンダ本体431、ピストン432、及びピストンロッド433を有する。シリンダ本体431は、射出装置300に対して固定される。ピストン432は、シリンダ本体431の内部を、第1室としての前室435と、第2室としての後室436とに区画する。ピストンロッド433は、固定プラテン110に対して固定される。
【0073】
液圧シリンダ430の前室435は、第1流路401を介して、液圧ポンプ410の第1ポート411と接続される。第1ポート411から吐出された作動液が第1流路401を介して前室435に供給されることで、射出装置300が前方に押される。射出装置300が前進され、ノズル320が固定金型810に押し付けられる。前室435は、液圧ポンプ410から供給される作動液の圧力によってノズル320のノズルタッチ圧力を生じさせる圧力室として機能する。
【0074】
一方、液圧シリンダ430の後室436は、第2流路402を介して液圧ポンプ410の第2ポート412と接続される。第2ポート412から吐出された作動液が第2流路402を介して液圧シリンダ430の後室436に供給されることで、射出装置300が後方に押される。射出装置300が後退され、ノズル320が固定金型810から離間される。
【0075】
なお、本実施形態では移動装置400は液圧シリンダ430を含むが、本発明はこれに限定されない。例えば、液圧シリンダ430の代わりに、電動モータと、その電動モータの回転運動を射出装置300の直線運動に変換する運動変換機構とが用いられてもよい。
【0076】
(制御装置)
制御装置700は、例えばコンピュータで構成され、図1図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)701と、メモリなどの記憶媒体702と、入力インターフェース703と、出力インターフェース704とを有する。制御装置700は、記憶媒体702に記憶されたプログラムをCPU701に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置700は、入力インターフェース703で外部からの信号を受信し、出力インターフェース704で外部に信号を送信する。
【0077】
制御装置700は、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、及び突き出し工程などを繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品を得るための一連の動作、例えば計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」または「成形サイクル」とも呼ぶ。また、1回のショットに要する時間を「成形サイクル時間」または「サイクル時間」とも呼ぶ。
【0078】
一回の成形サイクルは、例えば、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、及び突き出し工程をこの順で有する。ここでの順番は、各工程の開始の順番である。充填工程、保圧工程、及び冷却工程は、型締工程の間に行われる。型締工程の開始は充填工程の開始と一致してもよい。脱圧工程の終了は型開工程の開始と一致する。
【0079】
なお、成形サイクル時間の短縮を目的として、同時に複数の工程を行ってもよい。例えば、計量工程は、前回の成形サイクルの冷却工程中に行われてもよく、型締工程の間に行われてよい。この場合、型閉工程が成形サイクルの最初に行われることとしてもよい。また、充填工程は、型閉工程中に開始されてもよい。また、突き出し工程は、型開工程中に開始されてもよい。ノズル320の流路を開閉する開閉弁が設けられる場合、型開工程は、計量工程中に開始されてもよい。計量工程中に型開工程が開始されても、開閉弁がノズル320の流路を閉じていれば、ノズル320から成形材料が漏れないためである。
【0080】
なお、一回の成形サイクルは、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、及び突き出し工程以外の工程を有してもよい。
【0081】
例えば、保圧工程の完了後、計量工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された計量開始位置まで後退させる計量前サックバック工程が行われてもよい。計量工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を低減でき、計量工程の開始時のスクリュ330の急激な後退を防止できる。
【0082】
また、計量工程の完了後、充填工程の開始前に、スクリュ330を予め設定された充填開始位置(「射出開始位置」とも呼ぶ。)まで後退させる計量後サックバック工程が行われてもよい。充填工程の開始前にスクリュ330の前方に蓄積された成形材料の圧力を低減でき、充填工程の開始前のノズル320からの成形材料の漏出を防止できる。
【0083】
制御装置700は、ユーザによる入力操作を受け付ける操作装置750や画面を表示する表示装置760と接続されている。操作装置750および表示装置760は、例えばタッチパネル770で構成され、一体化されてよい。表示装置760としてのタッチパネル770は、制御装置700による制御下で、画面を表示する。タッチパネル770の画面には、例えば、射出成形機10の設定、現在の射出成形機10の状態等の情報が表示されてもよい。また、タッチパネル770の画面には、例えば、ユーザによる入力操作を受け付けるボタン、入力欄等の操作部が表示されてもよい。操作装置750としてのタッチパネル770は、ユーザによる画面上の入力操作を検出し、入力操作に応じた信号を制御装置700に出力する。これにより、例えば、ユーザは、画面に表示される情報を確認しながら、画面に設けられた操作部を操作して、射出成形機10の設定(設定値の入力を含む)等を行うことができる。また、ユーザが画面に設けられた操作部を操作することにより、操作部に対応する射出成形機10の動作を行わせることができる。なお、射出成形機10の動作は、例えば、型締装置100、エジェクタ装置200、射出装置300、移動装置400等の動作(停止も含む)であってもよい。また、射出成形機10の動作は、表示装置760としてのタッチパネル770に表示される画面の切り替え等であってもよい。
【0084】
なお、本実施形態の操作装置750及び表示装置760は、タッチパネル770として一体化されているものとして説明したが、独立に設けられてもよい。また、操作装置750は、複数設けられてもよい。操作装置750及び表示装置760は、型締装置100(より詳細には固定プラテン110)の操作側(Y軸負方向)に配置される。
【0085】
(第1実施形態)
次に、図3を参照して、型締装置100の詳細について説明する。
【0086】
図3は、本実施形態に係る型締装置100の一例を示す図である。具体的には、図3は、型閉工程における型締装置100の動作状態を表す図である。なお、図3では、金型装置800の描画が省略されている。
【0087】
図3に示すように、型締装置100は、固定プラテン110と、可動プラテン120と、タイバー140と、油圧シリンダ150と、油圧回路160と、サーボモータ170とを含んでいる。
【0088】
油圧シリンダ150は、シリンダ本体部151と、ピストン部152と、ロッド部153と、シリンダ閉塞部154とを含んでいる。
【0089】
シリンダ本体部151は、油圧シリンダ150の固定部である。シリンダ本体部151は、固定プラテン110に一端が連結されるタイバー140の他端と連結される。これにより、シリンダ本体部151は、固定プラテン110との間の距離が一定(間隔L)に固定される。シリンダ本体部151には、前端部(X軸負方向の端部)が開放される中空部が設けられる。
【0090】
タイバー140を介して連結されるシリンダ本体部151及び固定プラテン110は、何れか一方が型締装置フレーム910に固定され、他方が型締装置フレーム910の上で移動可能に載置される。これにより、型締力の発生によるタイバー140の伸びを許容することができる。
【0091】
ピストン部152は、一端がシリンダ本体部151の内部(中空部)に挿入され、他端が可動プラテン120に固定される。これにより、ピストン部152は、シリンダ本体部151に給排される作業油の作用で、前後方向(X方向)に移動することができ、その結果、その一端に固定される可動プラテン120を前後方向(X方向)に移動させることができる。また、ピストン部152には、シリンダ本体部151の内部側に開放される中空部が設けられる。
【0092】
ロッド部153は、一端がシリンダ本体部151の中空部の閉塞端部(即ち、X軸負方向の端部)に固定され、他端がピストン部152の中空部に挿入される。これにより、ロッド部153は、ピストン部152の中空部(後述の油室157)に供給される作動油の作用で、ピストン部152を前方(X軸正方向)に移動させることができる。また、ロッド部153には、ピストン部152の中空部に挿入される他端側から軸方向に延び出す孔部が設けられる。
【0093】
シリンダ閉塞部154は、シリンダ本体部151の開放端部を閉塞する。シリンダ閉塞部154には、ピストン部152が貫通し進退可能な貫通孔が設けられる。
【0094】
また、油圧シリンダ150の内部には、油室155~157が設けられる。
【0095】
油室155は、シリンダ本体部151の中空部の閉塞端部(X軸負方向の端部)において、シリンダ本体部151の内壁及びピストン部152の先端部(一端部)により区画される形で設けられる。これにより、ピストン部152は、油室155に供給される作動油の作用で、可動プラテン120に型締力を作用させることができる。油室155には、作動油の給排用のポート155Pが設けられる。
【0096】
本実施形態は、型閉工程に関する説明であって、型締力を作用させるための油室155に作業油の供給、排出を行う油圧回路は、従来と同様の油圧回路でよく、説明を省略する。
【0097】
油室156は、シリンダ本体部151の開放端部(X軸正方向の端部)において、シリンダ本体部151の内壁、シリンダ閉塞部154の内壁、及びピストン部152の中間部により区画される形で設けられる。これにより、ピストン部152は、油室156に供給される作動油の作用で、後退する(即ち、X軸負方向に移動する)ことができる。油室156には、作動油の給排用のポート156Pが設けられる。
【0098】
油室157は、ピストン部152の中空部の内壁、及びロッド部153の先端部により区画される形で設けられる。これにより、ピストン部152は、油室157に供給される作動油の作用で、前進する(即ち、X軸正方向に移動する)ことができる。油室157は、ロッド部153の孔部と連通しており、ロッド部153の孔部の先端には、油室157との間の作動油の給排用のポート157Pが設けられる。
【0099】
油圧回路160は、油圧シリンダ150を駆動する。油圧回路160は、型閉側リリーフ弁161と、型開側リリーフ弁162と、調整弁163と、両回転ポンプ164と、チェック弁165と、チェック弁166と、圧力センサ167と、タンク168と、油路OL1~OL3と、を備えている。
【0100】
油路OL1は、タンク168と、型閉側リリーフ弁161と、型開側リリーフ弁162と、チェック弁165と、チェック弁166と、の間を接続する。
【0101】
油路OL2は、油室157の給排用のポート157Pと、両回転ポンプ164と、の間を接続している。また、油路OL2は、型閉側リリーフ弁161、調整弁163、及びチェック弁165の各々と接続している。また、油路OL2の油室157の給排用のポート157P近傍に、圧力センサ167が設けられている。
【0102】
油路OL3は、油室156の給排用のポート156Pと、両回転ポンプ164と、の間を接続している。また、油路OL2は、型開側リリーフ弁162、調整弁163、及びチェック弁166の各々と接続している。
【0103】
両回転ポンプ164は、流体圧を生じさせる油圧シリンダ150が有する複数の油室(油室157及び油室156)の間を接続する流路(油路OL2及び油路OL3)上に設けられている。本実施形態にかかる両回転ポンプ164は、サーボモータ170による駆動によって、油路OL2及び油路OL3の間を流れる作業油の流れ方向、及び流れ量を調整する。このように、両回転ポンプ164は、サーボモータ170による駆動に基づいて、油路OL2及び油路OL3のどちらに対しても、作業油を排出できる。
【0104】
例えば、両回転ポンプ164は、サーボモータ170による駆動に基づいて、油路OL2から供給された作業油を、油路OL3に排出する。これにより、油室157の給排用のポート157Pから、油路OL2、油路OL3の順に介して、油室156の給排用のポート156Pまで作業油が流れる流路が実現される。これにより、ピストン部152が後退する(即ち、X軸負方向に移動する)ので、可動金型820を型開方向に移動させる型開工程を実現できる。
【0105】
他の例としては、両回転ポンプ164は、サーボモータ170による駆動に基づいて、油路OL3から供給された作業油を、油路OL2に排出する。これにより、油室156の給排用のポート156Pから、油路OL3、油路OL2の順に介して、油室157の給排用のポート157Pまで作業油が流れる流路が実現される。これにより、ピストン部152が前進する(即ち、X軸正方向に移動する)ので、可動金型820型閉方向に移動させる型閉工程を実現できる。
【0106】
型開側リリーフ弁162は、油路OL3に設けられたリリーフ弁であって、油路OL3を流れる作業油の圧力に基づいて、連通状態と遮断状態とを切り替える機械式の弁とする。例えば、型開工程において、油路OL3が所定の圧力以上となった場合に、型開側リリーフ弁162は連通状態となり、油路OL3内を流れる作業油を、油路OL1を介してタンク168まで排出させる。
【0107】
型閉側リリーフ弁161は、油路OL2に設けられたリリーフ弁であって、油路OL2を流れる作業油の圧力に基づいて、連通状態と遮断状態とを切り替える機械式の弁とする。例えば、型閉工程において、油路OL2が所定の圧力以上となった場合に、型閉側リリーフ弁161は連通状態となり、油路OL2内を流れる作業油を、油路OL1を介してタンク168まで排出させる。
【0108】
チェック弁165は、油路OL1から油路OL2への作動油の流れを一方向にして、逆流を阻止するバルブである。本実施形態の油圧回路160は、チェック弁165を設けることで、タンク168から油路OL2に作業油が供給される。
【0109】
チェック弁166は、油路OL1から油路OL3への作動油の流れを一方向にして、逆流を阻止するバルブである。本実施形態の油圧回路160は、チェック弁166を設けることで、タンク168から油路OL3に作業油が供給される。
【0110】
タンク168は、作動油を貯蔵する。また、タンク168は、油路OL1を通じて、型開側リリーフ弁162、型閉側リリーフ弁161、チェック弁165、及びチェック弁166に接続する。これにより、タンク168は、型開側リリーフ弁162又は型閉側リリーフ弁161から排出された作業油を、油路OL1を通じて貯蔵する。また、タンク168は、貯蔵されている作業油を、油路OL1を通じて、チェック弁165から油路OL2に供給し、又はチェック弁166から油路OL3に供給する。
【0111】
調整弁163は、油路OL2及び油路OL3の各々について、型開工程及び型閉工程において、油量を調整するためのバルブとする。調整弁163を設けることで、型開工程及び型閉工程において通過流量が一定になるように調整できる。
【0112】
圧力センサ167は、油路OL2上であって、油圧シリンダ150の油室157の給排用のポート157P近傍に設けられているため、油圧シリンダ150の油室157にかかっている圧力を検出する。
【0113】
つまり、従来用いられていた油圧シリンダを制御する油圧回路においては、両方向に作業油を排出可能な両回転ポンプ164の代わりに、一方向しか作業油を排出できない可変ポンプを用いられることが多かった。このような可変ポンプを用いた場合に、作業油を供給する油室を切り替える電磁切替弁(方向切替弁の一例)が設けられていた。この電磁切替弁で作業油の供給先の油室を切り替えることで、型開工程及び型閉工程を実現していた。
【0114】
従来の電磁切替弁は、油圧シリンダ近傍に設けられることが多かった。このような従来の油圧回路に、圧力センサを設けた場合に、油圧センサと油圧シリンダの間には電磁切替弁を構成する様々な部品が介在することになる。したがって、従来の油圧回路では、圧力センサで、油圧シリンダの油室にかかっている圧力を検出するのは難しかった。
【0115】
これに対して、本実施形態の油圧回路160では、サーボモータ170の回転方向に応じて、両回転ポンプ164の作業油の排出方向を切り替えることで、作業油を供給する油室を切り替えられる。このような構成によって、油圧シリンダ150と圧力センサ167との間に電磁接触器等を備えることが不要となる。さらに本実施形態にかかる油圧回路160は、従来の油圧回路と比べて、構成する部品点数を減らせるので、油圧回路160の配管長を従来と比べて短くできる。配管長を短くできるので、油圧回路160を鋼管で形成することができる。これにより、外乱による圧力変化を低減させることができる。
【0116】
型締装置100(油圧シリンダ150)を油圧駆動する油圧回路160は、上述したような閉回路として構成されている。その上、本実施形態にかかる油圧回路160においては、圧力センサ167と油圧シリンダ150との間が直接油路OL2A(油路OL2の一部)で接続されている。当該油圧回路160においては外乱による圧力変化も低減できるので、圧力センサ167は、油圧シリンダ150の油室157にかかっている圧力を、高い精度で検出できる。
【0117】
本実施形態の油圧回路160は、従来の油圧回路と比べて、電磁接触器等もなく、配管長も短いため、発熱量が小さく、油温が上昇しにくくなる。したがって、油圧回路160で用いる湯量を少なくできる。これにより、タンク168の容量を小さくできるので、型締装置100をコンパクトにできる。
【0118】
サーボモータ170は、制御装置700からの制御に基づいて作動し、両回転ポンプ164の回転を制御する。これにより、制御装置700は、サーボモータ170を制御することで、両回転ポンプ164の動作を制御できる。
【0119】
制御装置700は、両回転ポンプ164(サーボモータ170)を制御することで、油圧回路160における作動油の流れを制御し、型締装置100による型閉工程、及び型開工程を実現する。また、制御装置700は、油圧回路160を制御することで、昇圧工程、型締工程、脱圧工程も実現するが、説明を省略する。
【0120】
図4は、第1の実施形態に係る制御装置700の構成要素を機能ブロックで示す図である。図4に図示される各機能ブロックは概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。各機能ブロックの全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPU701にて実行されるプログラムにて実現される。または各機能ブロックをワイヤードロジックによるハードウェアとして実現してもよい。図4に示すように、制御装置700は、入力処理部711と、圧力制御部712と、速度制御部713と、切替部714と、取得部715と、判定部716と、停止制御部717と、通知部718と、を備える。また、制御装置700は、記憶媒体702上に閾値記憶部710を備える。
【0121】
閾値記憶部710は、型閉工程において速度制御を行うときに用いる圧力閾値を記憶する。
【0122】
入力処理部711は、入力インターフェース703を介して、操作装置750からのユーザの操作を入力処理する。例えば、入力処理部711は、ユーザから、型閉工程を行う際に、圧力制御又は速度制御のいずれか一方の選択操作を入力処理する。
【0123】
本実施形態の切替部714は、型閉工程において可動プラテンを移動させる時に、入力処理部711が入力処理した選択操作に基づいて、圧力制御部712による圧力制御で可動プラテン120及びピストン部152の移動させる制御と、速度制御部713による速度制御で可動プラテン120及びピストン部152の移動させる制御と、を切り替える。圧力制御部712及び速度制御部713については後述する。
【0124】
圧力制御部712は、型閉工程において、油圧シリンダ150を用いた圧力制御を行う。図5は、圧力制御部712における圧力制御の例を示した図である。図5ではピストン部152の速度1502と、圧力1501とを示している。
【0125】
図5に示される例では、型閉開始の時刻に型閉工程が開始される。圧力制御部712は、油圧シリンダ150のピストン部152と共に可動プラテン120を速度V1になるように制御する。そして、ピストン部152が金型保護位置に到着した後、圧力制御部712は、ピストン部152に対して行う制御を、速度制御から圧力制御に切り替える。圧力制御とは、圧力制御においては、所定の制限値以上の圧力がかからないように制御することであって、低圧制御とも称する。所定の制限値は、型閉開始から金型保護位置に到着するまでにかかっていた圧力より低い圧力値とする。
【0126】
判定部716は、可動プラテン120が昇圧開始位置(所定の位置の一例)に到達するまでの時間が、監視時間(所定の時間の一例)を超えたか否かを判定する。図5に示される例では、時刻t1において、金型装置800が異物を挟み込んだなどの異常が生じたものとする。このため、ピストン部152と共に可動プラテン120の速度1502が低下している。
【0127】
判定部716は、監視時刻t2を超えた場合に、異常が生じたと判定する。このように異物を挟み込んでから監視時刻t2が経過するまで判定を行わないが、低圧制御のために異物が金型装置800に与える影響は少ないという効果を得られる。
【0128】
停止制御部717は、判定部716により昇圧開始位置(所定位置の一例)に到達するまでの時間が、監視時間(所定の時間の一例)を超えたと判定された場合に、サーボモータ170を停止させる制御を行う。
【0129】
通知部718は、判定部716により昇圧開始位置(所定位置の一例)に到達するまでの時間が、監視時間(所定の時間の一例)を超えたと判定された場合に、異常が生じた旨を、射出成形機10を使用している作業者や、監視センター等に通知する。
【0130】
ところで、圧力制御部712による低圧制御のように、ピストン部152にかける圧力を低くした場合、摩擦等の影響を受けやすくなるため、型閉工程の完了時刻がばらつくことになる。そこで、圧力制御部712による低圧制御では、監視時刻t2について余裕を有して設定している。このような監視時刻t2に基づいて異常が生じたか否かを判定する場合に、異常を検知するまでの時間が長くなる可能性がある。
【0131】
そこで、本実施形態に係る制御装置700は、圧力制御部712による圧力制御の代わりに、速度制御部713による速度制御を可能としている。
【0132】
図4に戻り、本実施形態の速度制御部713は、型閉工程で移動する油圧シリンダ150と共に、油圧シリンダ150に固定された可動プラテン120の速度制御を行う。
【0133】
具体的には、本実施形態の速度制御部713は、型閉工程が開始してから金型保護位置に到着するまで、ピストン部152及び可動プラテン120が速度V1になるように速度制御する。そして、ピストン部152及び可動プラテン120が金型保護位置に到着した後、速度制御部713は、昇圧開始位置に到着するまでピストン部152及び可動プラテン120が速度V2(速度V2<速度V1)になるように速度制御する。速度制御部713が速度制御を行う場合、圧力センサ167が検出した圧力値によって異常か否かを判定する。つまり本実施形態は、上述した油圧回路160を備えたことで、圧力値の検出精度が高いので、当該圧力値で異常か否かの判定が可能となる。
【0134】
また、速度制御部713にはフィードバック制御を組み込んで、ピストン部152及び可動プラテン120の速度がばらつかないように制御を行ってもよい。
【0135】
取得部715は、ピストン部152及び可動プラテン120の移動によって、ピストン部152の油室157にかかる流体圧を示した圧力値を圧力センサ167から取得する。
【0136】
さらに、取得部715は、油圧シリンダ150に設けられた(図示しない)リニアセンサから、型閉方向におけるピストン部152の位置を取得する。これにより、ピストン部152が、金型保護位置や昇温開始位置に到達したかを認識できる。金型保護位置は、金型装置800の保護のために速度又は圧力を低減させる位置とする。昇温開始位置は、型閉工程を完了させる位置(所定位置の一例)である。
【0137】
判定部716は、取得部715によって取得された圧力値が、閾値記憶部710に記憶された圧力閾値を超えたか否かを判定する。
【0138】
図6は、本実施形態に係る速度制御部713における速度制御の例を示した図である。図6ではピストン部152の速度1601と、取得部715が取得した流体圧の圧力値1602と、を示している。
【0139】
図6に示される例では、型閉開始時刻に型閉工程が開始される。速度制御部713は、油圧シリンダ150のピストン部152と共に可動プラテン120を速度V1になるように制御する。そして、ピストン部152が金型保護位置に到着した後、速度制御部713は、ピストン部152と共に可動プラテン120を速度V2(速度V2<速度V1)になるように制御する。このように低速で可動プラテン120を移動させることで、可動プラテン120に固定された可動金型820の保護を実現できる。
【0140】
取得部715は、速度制御部713による速度変化に従って、圧力値P1から低下した圧力値P2を取得する。
【0141】
閾値記憶部710は、速度制御部713による速度制御用に、金型保護位置に到着するまでの圧力閾値T1と、金型保護位置から昇圧開始位置に到着するまでの圧力閾値T2と、を記憶している。このように、閾値記憶部710は、可動プラテン120及びピストン部152の移動した位置に応じて、予め定められた圧力閾値を記憶している。
【0142】
判定部716は、取得部715が取得した圧力値が、閾値記憶部710に記憶された圧力閾値を超えたか否かを判定する。本実施形態の判定部716は、可動プラテン120及びピストン部152の移動した位置毎に、予め定められた圧力閾値に基づいて判定を行う。具体的には、判定部716は、金型保護位置に到着するまでは、取得した圧力値が圧力閾値T1を超えたか否かを判定し、金型保護位置から昇圧開始位置に到着するまでは、取得した閾値が圧力閾値T2を超えたか否かを判定する。また、判定部716は、速度制御の場合でも圧力制御と同様に、昇圧開始位置に到着するまでの時刻が、監視時間を超えたか否かに応じて、異常が生じたか否かを判定してもよい。
【0143】
図6に示される例では、時刻t3において、判定部716は、取得部715が取得した圧力値が、閾値記憶部710に記憶された圧力閾値T2を超えたと判定する。このように、本実施形態の速度制御では、異物を挟み込んだ場合に、すぐに異常判定を行うことができる。
【0144】
停止制御部717は、判定部716により取得した圧力値が圧力閾値を超えたと判定した場合に、サーボモータ170を停止させる制御を行う。なお、本実施形態は、サーボモータ170を停止させる制御を行う場合について説明するが、停止させる制御に制限するものではなく、例えばサーボモータ170を逆回転させる制御を行うことも考えられる。
【0145】
通知部718は、判定部716により取得した圧力値が圧力閾値を超えたと判定した場合に、異常が生じた旨を、射出成形機10を使用している作業者や、監視センター等に通知する。
【0146】
図7は、本実施形態に係る制御装置700の型閉工程において速度制御を行う場合の処理を示したフローチャートである。なお、圧力制御については従来と同様の手法を用いてもよく、説明を省略する。
【0147】
まず、制御装置700は、速度制御による型閉工程の開始か否かを判定する(S701)。速度制御による型閉工程の開始ではないと判定した場合(S701:No)、処理を終了する。
【0148】
制御装置700が速度制御による型閉工程の開始であると判定した場合(S701:Yes)、速度制御部713は、サーボモータ170を制御して、ピストン部152が速度V1になるように速度制御を行う(S702)。
【0149】
取得部715は、ピストン部152の油室157にかかる流体圧を示した圧力値を圧力センサ167から取得する(S703)。
【0150】
判定部716は、金型保護位置に到達するまでは、取得部715が取得した圧力値が、圧力閾値T1を超えたか否かを判定する(S704)。判定部716が、取得した圧力値が、圧力閾値T1を超えたと判定した場合(S704:Yes)、停止制御部717が、サーボモータ170に対して停止制御を行うと共に、通知部718が、異常が生じた旨の通知を行い(S705)、処理を終了する。
【0151】
一方、判定部716は、取得した圧力値が、圧力閾値T1を超えていないと判定した場合(S704:No)、取得部715は、型閉方向におけるピストン部152の位置を取得する(S706)。判定部716は、取得部715が取得したピストン部152の位置が、金型保護位置に到達したか否かを判定する(S707)。金型保護位置に到達していないと判定した場合(S707:No)、再びS702から処理を行う。
【0152】
一方、判定部716は、取得部715が取得したピストン部152の位置が、金型保護位置に到達したと判定した場合(S707:Yes)、速度制御部713は、サーボモータ170を制御して、ピストン部152が速度V2になるように速度制御を行う(S708)。
【0153】
取得部715は、ピストン部152の油室157にかかる流体圧を示した圧力値を圧力センサ167から取得する(S709)。
【0154】
判定部716は、金型保護位置に到達するまでは、取得部715が取得した圧力値が、圧力閾値T2を超えたか否かを判定する(S710)。判定部716が、取得した圧力値が、圧力閾値T2を超えたと判定した場合(S710:Yes)、停止制御部717が、サーボモータ170に対して停止制御を行うと共に、通知部718が、異常が生じた旨の通知を行い(S711)、処理を終了する。
【0155】
一方、判定部716は、取得した圧力値が、圧力閾値T2を超えていないと判定した場合(S710:No)、取得部715は、型閉方向におけるピストン部152の位置を取得する(S712)。判定部716は、取得部715が取得したピストン部152の位置が、昇温開始位置に到達したか否かを判定する(S713)。金型保護位置に到達していないと判定した場合(S713:No)、再びS708から処理を行う。
【0156】
一方、判定部716は、取得部715が取得したピストン部152の位置が、昇温開始位置に到達したと判定した場合(S713:Yes)、処理を終了する。
【0157】
上述した処理手順のように、本実施形態においては、ピストン部152及び可動プラテン120に対して金型保護位置から昇圧開始位置に到着するまで速度制御を行うと共に、圧力センサ167が検出する圧力値に基づいて異常か否かを判定する。これにより、異物を挟み込んだ場合など異常が生じた場合にすぐに検知できるため、金型装置800の保護を実現できる。また、本実施形態においては、上述した速度制御を行うことで、型閉工程の終了時間のばらつきを抑止できる。
【0158】
(変形例1)
上述した実施形態においては、金型保護位置から昇圧開始位置までの速度V2で速度制御を行う場合について説明した。しかしながら、金型保護位置以降の速度制御を1段階に制限するものではなく、多段階で制御を行ってもよい。そこで、本変形例においては、金型保護位置以降において多段階で速度制御を行う場合について説明する。
【0159】
図8は、変形例1に係る速度制御部713における速度制御の例を示した図である。図8ではピストン部152の速度1801と、取得部715が取得した流体圧の圧力値1802と、を示している。
【0160】
図8に示される例では、型閉開始時刻に型閉工程が開始される。速度制御部713は、油圧シリンダ150のピストン部152を速度V1になるように制御する。そして、ピストン部152が第1金型保護位置に到着した時、速度制御部713は、ピストン部152を速度V3(速度V3<速度V1)になるように制御する。
【0161】
その後、第2金型保護位置に到着した時、速度制御部713は、ピストン部152を速度V4(速度V4<速度V3)になるように制御し、第3金型保護位置に到着した時、速度制御部713は、ピストン部152を速度V5(速度V5<速度V4)になるように制御する。
【0162】
図8に示されるように、取得部715は、速度制御部713による速度変化に従って、圧力センサ167によって検出される圧力値1202が低下していく。
【0163】
本変形例においては、閾値記憶部710に記憶される圧力閾値1803は、速度に応じて低下するように設定されている。例えば、閾値記憶部710は、型閉開始から第1金型保護位置到着までの圧力閾値T1を記憶し、第1金型保護位置到着から第2金型保護位置到着までの圧力閾値T3を記憶し、第2金型保護位置到着から第3金型保護位置到着までの圧力閾値T4を記憶し、第3金型保護位置到着から昇温開始位置到着までの圧力閾値T5を記憶する。
【0164】
そして、判定部716は、取得部715が取得した圧力値が、閾値記憶部710に記憶された圧力閾値のうち、圧力値を検出した位置に対応付けられた圧力閾値(圧力閾値T1、T3、T4、T5のうちいずれか一つ)を超えたか否かを判定する。
【0165】
図8に示される例では、第3第金型保護位置に到着した後の時刻t4において、判定部716は、取得部715が取得した圧力値が、閾値記憶部710に記憶された圧力閾値T5を超えたと判定する。圧力値が、閾値記憶部710に記憶された圧力閾値T5を超えたと判定された場合の処理は、上述した実施形態と同様として説明を省略する。
【0166】
(変形例2)
上述した実施形態においては、取得した圧力値が、閾値記憶部710に記憶された圧力閾値より高いか否かに基づいて、異常が生じたか否かを判定する例について説明した。しかしながら、異常か生じたか否かの判定として用いる閾値は、予め記憶された圧力閾値に制限するものではない。そこで、変形例1においては、実際に取得した圧力値に基づいて更新する例について説明する。
【0167】
本変形例の取得部715は、今回取得した圧力値に所定の値を加算した値を、次回の圧力閾値として、当該圧力値を取得した位置と対応付けて、閾値記憶部710を更新する。なお、圧力値を取得した位置は、油圧シリンダ150に設けられた(図示しない)リニアセンサから取得できる。なお、所定の値は、異常判定の際に余裕を持たせるために定められた値であって、実施の態様に応じた任意の値でよい。圧力値を取得する位置の間隔は、実施態様に応じて定められた間隔とする。これにより、位置毎に摩擦等を考慮した圧力閾値に更新でき、異常の検出精度を向上させることができる。
【0168】
本変形例では、取得部715は、今回(1ショット)取得した圧力値に所定の値を加算した値を、次の圧力閾値として閾値記憶部710を更新した例について説明した。しかしながら、1ショットの圧力値に基づいて、次回の圧力閾値を更新する手法に制限するものではなく、型閉工程を複数回(例えば、10回)行い、取得部715が複数回で取得した圧力値の移動平均を圧力閾値として閾値記憶部710を更新してもよい。
【0169】
(変形例3)
上述した実施形態及び変形例は、圧力閾値が閾値記憶部710に記憶されている例について説明した。しかしながら圧力閾値は、静的なパラメータに制限するものではなく、動的に生成されるパラメータであってもよい。
【0170】
本変形例の判定部716は、油圧回路160及び油圧シリンダ150を表す数式モデルを保持している。そして、判定部716は、速度制御部713が制御しているサーボモータ170の回転速度を取得し、当該回転速度を数式モデルに当てはめることで、油圧シリンダ150に生じている流体圧を示す圧力の推定値を算出する。
【0171】
そして、判定部716は、取得部715が取得した圧力値と、圧力の推定値と、の差が所定値以上か否かを判定する。判定部716は、取得部715が取得した圧力値と、圧力の推定値と、の差が所定値以上の場合に、異常が生じたと判定する。本変形例は、圧力の推定値と所定値との組み合わせを用いる例について説明するが、上述した実施形態及び変形例で示した圧力閾値を用いた場合と同様の異常検知を実現できる。さらに、圧力の推定値と所定値との組み合わせを用いて判定を行った場合には、上述した実施形態と同様の効果の他に、サーボモータの回転速度を考慮した、より高い精度で異常判定を行うことができる。
【0172】
上述した実施形態及び変形例においては、両回転ポンプ164及びサーボモータ170を用いることで、油圧回路160を閉回路としたことで、配管長を抑えることができる。これにより外乱を抑止できるため、金型保護位置と昇温開始位置の間で低速制御を行った場合に、圧力センサ167が検出した圧力値による異常検知の精度を向上させることができる。
【0173】
本実施形態及び変形例においては、油圧回路160等の閉回路において、金型保護位置と昇温開始位置の間で低速制御を行った場合に、圧力センサ167が検出した圧力値で異常検知を行う例について説明した。しかしながら、金型保護位置と昇温開始位置の間で低速制御を行っている間に、圧力センサ167が検出した圧力値で異常検知を行う手法は、上述した閉回路を用いた例に制限するものではなく、従来の開回路の油圧回路に適用してもよい。
【0174】
上述した実施形態及び変形例においては、金型保護位置以降において、速度制御部713がピストン部152に対して速度制御を行うことで、昇温開始位置に到着する到着時間のばらつきを抑えることができる。
【0175】
上述した実施形態及び変形例においては、型閉工程において速度制御を行った場合に、判定部716は、圧力センサ167から取得した圧力値が、圧力閾値を超えたか否かを判定することで、異物を挟み込んだなどの異常判定を行う。これにより、従来の監視時刻を経過したか否かの判定と比べて、迅速な異常検知を実現できる。また、従来と比べて迅速に停止制御を行えるので、金型装置800の保護を実現できる。
【0176】
以上、本発明に係る射出成形機の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態などに限定されない。請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【0177】
本願は、2021年3月31日に出願した日本国特許出願2021-062344号に基づく優先権を主張するものであり、この日本国特許出願の全内容を本願に参照により援用する。
【符号の説明】
【0178】
10・・・射出成形機 100・・・型締装置 110・・・固定プラテン 120・・・可動プラテン 150・・・油圧シリンダ 160・・・油圧回路 170・・・サーボモータ 700・・・制御装置 710・・・閾値記憶部 711・・・入力処理部 712・・・圧力制御部 713・・・速度制御部 714・・・切替部 715・・・取得部 716・・・判定部 717・・・停止制御部 718・・・通知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8