(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用負極剤、非水電解質二次電池用負極および非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/134 20100101AFI20250408BHJP
H01M 4/133 20100101ALI20250408BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20250408BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20250408BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20250408BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20250408BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/133
H01M4/36 E
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/587
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2020086870
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】倉田 晴菜
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 知子
【審査官】上野 文城
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/208698(WO,A1)
【文献】特開2018-147826(JP,A)
【文献】特開2016-219370(JP,A)
【文献】特開2017-152121(JP,A)
【文献】特開2015-056269(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13 - 1399
H01M 4/36 - 62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質と、導電助剤と、バインダーとを含む非水電解質二次電池用負極剤であって、
前記バインダーは、平均分子量が50万以上500万以下の範囲内である第一の高分子と、平均分子量が5000以上5万以下の範囲内である第二の高分子とを含む混合バインダーであり、
前記電極活物質は、ケイ素系活物質と、炭素系活物質とを含み、
前記第一の高分子は、エチレン性不飽和カルボン酸塩を有し、かつ架橋構造を有し、
前記第二の高分子は、エチレン性不飽和カルボン酸化合物と、アルキルカルボン酸エステル基を含むエチレン性不飽和化合物との共重合体であ
り、
負極剤中の全無機粒子の表面積の総和S(m
2
)と、前記バインダーの質量B(g)との比率S/Bは、20以上400以下の範囲内であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極剤。
【請求項2】
電極活物質と、導電助剤と、バインダーとを含む非水電解質二次電池用負極剤であって、
前記バインダーは、平均分子量が50万以上500万以下の範囲内である第一の高分子と、平均分子量が5000以上5万以下の範囲内である第二の高分子とを含む混合バインダーであり、
前記電極活物質は、ケイ素系活物質と、炭素系活物質とを含み、
前記第一の高分子は、エチレン性不飽和カルボン酸塩を有し、かつ架橋構造を有し、
前記第二の高分子は、エチレン性不飽和カルボン酸化合物と、アルキルカルボン酸エステル基を含むエチレン性不飽和化合物との共重合体であ
り、
前記第二の高分子の含有比率は、前記混合バインダーに含まれる高分子の全質量に対し、1質量%以上20質量%以下の範囲内であることを特徴とする非水電解質二次電池用負極剤。
【請求項3】
前記第一の高分子は、平均分子量が50万以上500万以下の範囲内であるポリアクリル酸塩を架橋した高分子であり、
前記第二の高分子は、平均分子量が5000以上5万以下の範囲内である、ポリアクリル酸エステルとポリアクリル酸との共重合体であることを特徴とする請求項1
または請求項2に記載の非水電解質二次電池用負極剤。
【請求項4】
前記第一の高分子は、カルボジイミド系化合物、イソシアネート系架橋剤、及びアジリジン系化合物のいずれか1種により架橋されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極剤。
【請求項5】
前記第一の高分子は、アジリジン系化合物により架橋されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極剤。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の負極剤を用いて形成されたことを特徴とする非水電解質二次電池用負極。
【請求項7】
請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の負極剤を用いて形成された非水電解質二次電池用負極を備えたことを特徴とする非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池用負極剤、非水電解質二次電池用負極および非水電解質二次電池に関し、特にエネルギー密度を向上させうる非水電解質二次電池用負極剤、非水電解質二次電池用負極および非水電解質二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話といったモバイル機器の電源としてすでに多く採用されているリチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池は、近年、電気自動車等に搭載されるなど新たな分野で注目が集まっている。自動車分野においてリチウムイオン二次電池へ要求される性能としては、特に航続距離の向上へ向けた二次電池の高エネルギー密度化が重要視されている。
一般にリチウムイオン二次電池の負極としては、黒鉛系活物質からなる負極が用いられているが、黒鉛の理論容量は活物質1gあたり372mAhである。これに対し、黒鉛を上回る容量を示す活物質として、シリコン(Si)や錫(Sn)が近年注目されている。Siの理論容量は、活物質量あたり4200mAhg-1であり、同様にSnは990mAhg-1である。
【0003】
一方、Siは、黒鉛の約11倍の容量を持っているために、Li吸蔵放出に伴う体積変化も大きくなる。具体的には、Li吸蔵によりSiの体積は約4倍増加する。黒鉛と比べて、大容量を有する活物質を用いた電極は、充放電に伴う大きな体積変化から、電極の導電パスの切断や微粉化に伴う電極からの脱離、集電体と活物質層の剥離などのおそれがある。このことは、二次電池のサイクル特性を低下させる要因となる可能性がある。そのため、上記金属よりも放電容量は小さいが体積膨張も小さい金属酸化物を用いた負極についても開発が進められているが、金属酸化物系活物質でも同様の問題は完全には解決していない。
【0004】
また、サイクル特性を低下させる要因として、固体電解質層(Solid Electrolyte Interphase:SEI)形成に伴うリチウムイオンの消費も挙げられる。特に、充放電に伴う大きな体積変化が生じるケイ素材料系の活物質は、SEIの破壊と生成が繰り返されうることから、SEI形成に伴うリチウムイオンの消費も無視できない。
リチウムイオン二次電池用負極は、通常、バインダー(結着剤)、負極活物質、導電助剤に溶媒を混ぜて塗布液(負極用スラリー)とし、これを集電体上に塗布・乾燥して負極剤層を形成することで得られる。
【0005】
本発明者は、上記問題の解決の対象として非水電解質二次電池用負極におけるバインダーの働きに着目し、検討を行った。
負極活物質である、リチウムと合金可能な金属粒子である金属活物質の表面に酸化アルキレンの反復単位を含む物質を結合し物質層を形成することで、繰り返し充放電による容量の低下を抑制する発明が開示されている(特許文献1)。
しかしながら、この物質層の弾性により活物質の膨張を部分的に吸収することができるが、活物質の膨張収縮が大きい場合、体積変化を吸収できず、十分なサイクル特性が得られない。
【0006】
また、ケイ素材料を含む活物質を用いた場合のバインダー(結着剤)として、架橋ポリアクリル酸を用いることが開示されている。この架橋ポリアクリル酸は、無架橋のポリアクリル酸に比べ、サイクル特性に優れていると記載されている。このことは、架橋により電極構造が破壊され難くなるためとされている(特許文献2)。
しかしながら、バインダーとして、架橋ポリアクリル酸を用いることにより、サイクル特性の向上が認められるものの、依然として、放電容量維持率の低下が問題となっている。
【0007】
特に、塗膜の機械強度の向上には有効であるものの、架橋されたバインダーは、無架橋のバインダーに比べ、伸びにくい性質を有するため、活物質表面を覆っている架橋されたバインダーは、活物質の体積変化に追随できず、クラックが発生するおそれがある。
結果、クラックが生じても活物質が孤立して電池性能が低下することがないように、負極剤中に多量の導電助剤を含有させると、負極剤中の活物質比率が低下するため、従来技術に係るリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が低下するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-157709号公報
【文献】国際公開第2015/163302号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、上記課題を鑑み、本発明は、エネルギー密度を向上させうる非水電解質二次電池用負極剤、非水電解質二次電池用負極および非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
このように、本発明は、非水電解質二次電池用負極剤、非水電解質二次電池用負極および非水電解質二次電池に関するものであり、特にエネルギー密度を向上させうる非水電解質二次電池用負極剤、非水電解質二次電池用負極および非水電解質二次電池に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電極活物質と、導電助剤と、バインダーと、を含む非水電解質二次電池用負極剤が、平均分子量が50万以上500万以下の範囲内であるポリアクリル酸塩を架橋した第一の高分子と、平均分子量が5000以上5万以下の範囲内である、ポリアクリル酸エステルとポリアクリル酸との共重合体である第二の高分子と、ケイ素系活物質と、炭素系活物質とをそれぞれ含むことでエネルギー密度を向上させ、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の一態様に係る非水電解質二次電池用負極剤は、電極活物質と、導電助剤と、バインダーとを含む非水電解質二次電池用負極剤であって、前記バインダーは、平均分子量が50万以上500万以下の範囲内である第一の高分子と、平均分子量が5000以上5万以下の範囲内である第二の高分子とを含む混合バインダーであり、前記電極活物質は、ケイ素系活物質と、炭素系活物質とを含み、前記第一の高分子は、エチレン性不飽和カルボン酸塩を有し、かつ架橋構造を有し、前記第二の高分子は、エチレン性不飽和カルボン酸化合物と、アルキルカルボン酸エステル基を含むエチレン性不飽和化合物との共重合体であることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る非水電解質二次電池用負極剤において、前記第一の高分子は、平均分子量が50万以上500万以下の範囲内であるポリアクリル酸塩を架橋した高分子であり、前記第二の高分子は、平均分子量が5000以上5万以下の範囲内である、ポリアクリル酸エステルとポリアクリル酸との共重合体であってもよい。
本発明の一態様に係る非水電解質二次電池用負極剤において、負極剤中の全無機粒子の表面積の総和S(m2)と、前記バインダーの質量B(g)との比率S/Bは、20以上400以下の範囲内であってもよい。
本発明の一態様に係る非水電解質二次電池用負極剤において、前記第一の高分子は、カルボジイミド系化合物、イソシアネート系架橋剤、及びアジリジン系化合物のいずれか1種により架橋されていてもよい。
【0013】
本発明の一態様に係る非水電解質二次電池用負極剤において、前記第一の高分子は、アジリジン系化合物により架橋されていてもよい。
本発明の一態様に係る非水電解質二次電池用負極剤において、前記第二の高分子の含有比率は、前記混合バインダーに含まれる高分子の全質量に対し、1質量%以上20質量%以下の範囲内であってもよい。
本発明の一態様に係る非水電解質二次電池用負極は、上述した非水電解質二次電池用負極剤を用いて形成されたことを特徴とする。
本発明の一態様に係る非水電解質二次電池は、上述した非水電解質二次電池用負極を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エネルギー密度を向上させうる非水電解質二次電池用負極剤、非水電解質二次電池用負極および非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る非水電解質二次電池用負極の構成の一例を示す断面模式図である。
【
図2】エネルギー密度の評価に使用する公知のコインセルの構成を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態に係る非水電解質二次電池用負極およびその製造方法について説明する。なお、本発明の実施形態は、以下に記載する実施形態に限定されうるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更などの変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の実施形態の範囲に含まれうるものである。
図1は、本発明の実施形態に係る非水電解質二次電池用負極の構成の一例を示す断面模式図である。本実施形態に係る非水電解質二次電池用負極1は、負極集電体21と、集電体21上に形成された負極活物質層10とで構成されている。そして、負極活物質層10は、ケイ素系活物質11と炭素系活物質12と導電助剤13とバインダー14とで構成されている。
【0017】
以下、上述した各組成物について説明する。
<非水電解質二次電池用負極剤>
(バインダー)
本実施形態に係る非水電解質二次電池用負極1を形成するための非水電解質二次電池用負極剤に含まれるバインダー14は、エチレン性不飽和カルボン酸塩を有し、かつ架橋構造を有する第一の高分子と、エチレン性不飽和カルボン酸化合物と、アルキルカルボン酸エステル基を含むエチレン性不飽和化合物との共重合体である第二の高分子とを含んだ混合バインダーである。そして、第一の高分子は、その平均分子量が50万以上500万以下の範囲内であり、第二の高分子は、その平均分子量が5000以上5万以下の範囲内である。第二の高分子における、エチレン性不飽和カルボン酸化合物と、アルキルカルボン酸エステル基を含むエチレン性不飽和化合物との共重合比、即ちエステル化率は、20%以上90%以下の範囲内が好ましく、50%以上80%以下の範囲内がより好ましい。エステル化率が90%を超えると、第一の高分子と架橋を形成しにくくなり結着性が低下し、サイクル特性が低下する。また、エステル化率が20%未満では、第二の高分子が凝集しやすくなり、サイクル特性が低下する。
【0018】
[第一の高分子]
本実施形態に係る第一の高分子としては、カルボキシル基を含んでいればよく、例えば、アルギン酸やカルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ロジン酸系重合体、ポリアクリル酸、マレイン酸とアクリル酸の共重合体、さらに、それらの塩やエステルなどを用いることができる。また、本実施形態に係る第一の高分子は、ポリアクリル酸カルシウムであってもよい。
上述した物質の中でも特に、ポリアクリル酸およびその塩またはエステル、あるいはポリアクリル酸カルシウムが好ましい。本実施形態に係るバインダー14に用いる高分子材料は、カルボキシル基を多く含むことで、リチウムイオンの伝導性を向上させるとともに、電解液の膨潤を抑えることで電解液の還元分解を抑制できる。
【0019】
本実施形態に係る第一の高分子としては、その平均分子量が50万以上500万以下の範囲内であればよい。その平均分子量が50万に満たなければ、結着力が低下するため、バインダー14を多量に要して活物質含有率が低下し容量が低下することがある。また、その平均分子量が500万より大きい場合には、非水電解質二次電池用負極剤の粘度が上昇し、バインダー14と、電極活物質等の粒子との均一な分散性が阻害されるのみならず、固形分濃度を上昇させることが困難になり、生産性が悪化することがある。
なお、本実施形態に係る第一の高分子は、水溶性高分子であることが好ましい。本実施形態に係る第一の高分子は、アルカリ金属を含む化合物により中和されていることが好ましい。中和により、後述する架橋剤の反応性を良化することができる。水溶性高分子を用いた場合には、ケイ素系活物質の分散性を向上させ、サイクル特性を向上させうる。
【0020】
[架橋剤]
本実施形態に係る第一の高分子を架橋処理する架橋剤は、カルボキシル基と架橋反応し架橋構造を形成するものを用いることができる。本実施形態で使用する架橋剤は、カルボキシル基と反応する水系架橋剤であれば、特に制限しないが、室温下、数分で反応させることができる、カルボジイミド系化合物、イソシアネート系架橋剤およびアジリジン系化合物が好ましい。
【0021】
また、第一の高分子は、複数の架橋処理を行っても良い。架橋は、上述した架橋剤を用いた化学結合の他、金属イオン結合を用いても良い。例えば、金属イオン結合は、多価カチオンを用いることができ、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどを用いることができる。金属イオン結合のように可逆的な架橋を含むことで、バインダー14に阻害されることなく、非水電解質二次電池用負極剤中で、電極活物質等の粒子が均一分散することができる。
【0022】
本実施形態に係る架橋剤は、高分子水溶液のpHに依存し、反応速度が決まるため、酸性高分子溶液に架橋剤を滴下すると、均一な架橋構造が形成できないことがある。そこで、塩に中和またはエステル化された高分子量の高分子水溶液に架橋剤を滴下することにより、ゆるやかに反応が進行し、均一な架橋構造を形成することができる。続いて、低分子量の酸性高分子を加えて、反応を完全終了させて、高分子水溶液を調整することができる。
【0023】
また、架橋剤の添加量は、第一の高分子材料のカルボキシル基の量に対し、架橋剤の架橋結合する官能基が、0.5mol%以上3.0mol%以下の範囲内となる量であることが好ましい。架橋剤の架橋結合する官能基の量が0.5mol%より少ないと架橋構造が少なすぎて、本発明の効果が得ることができない場合がある。また、架橋剤の架橋結合する官能基の量が3.0mol%より大きいと、負極用塗料、即ち非水電解質二次電池用負極剤において導電助剤や活物質を十分に分散させることができないため、好ましくない。
【0024】
[第二の高分子]
本実施形態に係る第二の高分子としては、カルボン酸エステルを含んでいればよく、より好ましくは、カルボン酸エステルとカルボキシル基を有し、かつ活性プロトンが少ない高分子である。本実施形態に係る第二の高分子としては、アルギン酸やカルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ロジン酸系重合体、ポリ(メタ)アクリル酸、マレイン酸とアクリル酸の共重合体をエステル化させた高分子などを用いることができ、特に、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルとポリアクリル酸の共重合体とが好ましい。
【0025】
さらに、第二の高分子の含有量は、バインダー14の全体に含まれる高分子の全質量に対し、1質量%以上20質量%以下の範囲内であってもよい。つまり、バインダー14において、第二の高分子の含有量は、第一の高分子の含有量よりも少なければ好ましい。第二の高分子の含有量が1質量%以上の場合、活物質表面に十分な量の第二の高分子が付着する。また、第二の高分子の含有量が20質量%以下であれば、ケイ素系活物質11の充放電時の体積変化による負極活物質層10の内部応力に対する耐久性と、第一の高分子による塗膜強度のバランスとがより十分に得られる。
【0026】
本実施形態に係る第二の高分子の平均分子量は、5000以上5万以下の範囲内が好ましい。第二の高分子の平均分子量が5000に満たないと、ケイ素系活物質11の充放電時の体積変化による負極活物質層10の内部応力に対する耐久性が十分に得られず、電池性能が低下する可能性がある。また、第二の高分子の平均分子量が5万よりも大きい場合には、第二の高分子が活物質表面に吸着しにくくなり、電池性能が低下する可能性がある。
【0027】
本実施形態に係る非水電解質二次電池用負極剤に含まれるバインダー14は、負極剤中の全無機粒子の表面積の総和S(m2)とバインダーの質量B(g)の比率S/Bが、20以上400以下の範囲内であることが好ましい。より好ましくは100以上300以下の範囲内である。S/Bが20に満たない場合には、バインダー14が過多となり、負極活物質層10中のリチウムイオンの拡散性や導電性を阻害し、電池性能が低下する可能性がある。S/Bが400より大きい場合には、結着性が不足して十分な塗膜強度が得られず、電池性能が低下する可能性がある。総和S(m2)は、負極に含まれる各無機粒子の比表面積(m2/g)と負極スラリーに含まれる当該無機粒子の質量(g)の積の総和である。なお、上述の「全無機粒子」とは、後述する電極活物質と導電助剤とを含むものである。
また、本実施形態に係る第二の高分子は、水溶性高分子であることが好ましい。第二の高分子が水溶性高分子であれば、ケイ素系活物質の分散性を向上させ、サイクル特性を向上させうる。
【0028】
(電極活物質)
[ケイ素系活物質]
ケイ素系活物質11は、Liを可逆的に吸蔵および放出できるものであれば特に制限されず、公知のものも使用することができるが、Liと合金化するケイ素材料を使用することが望ましい。ケイ素系活物質11としては、Liと合金化するその他の元素と合金化されたケイ素材料も使用できる。ケイ素系活物質11は、特に黒鉛よりも容量が大きいSiOxであり、より好ましくは、xは0以上1.5以下の範囲内である。xが1.5より多いと、十分なLiの吸蔵および放出量を確保することができないことがある。本実施形態において、ケイ素系活物質11は、より好ましくは、xが0であるSiである。
【0029】
SiOxで表されるケイ素系活物質11の粒径は、特に限定されないが、D50(メジアン径:積算値が50%である粒度の直径であり、平均粒径を示す)が0.05μm以上10μm以下の範囲内であることが望ましい。ケイ素系活物質11は、D50が10μmより大きい場合、総活物質表面積あたりの電流が大きくなり、電極抵抗が増し、容量が低下することがある。一方、D50が0.05μmより小さい場合、負極用塗料を調液する工程で、ケイ素系活物質11が凝集しやすくなり、ケイ素系活物質11が均一に分散した負極用塗料、即ち非水電解質二次電池用負極剤を得ることが困難になる。そのため、電極抵抗が高くなり、容量が低下することがある。
【0030】
[炭素系活物質]
炭素系活物質12としては、特に制限されず、公知のものも使用することができる。特に、人造黒鉛や天然黒鉛が好ましい。炭素系活物質12の粒径(D50)は特に限定されないが、1μm以上であることが好ましい。D50が1μmより小さい場合、負極用塗料、即ち非水電解質二次電池用負極剤を調液する工程で、炭素系活物質12が凝集しやすくなり、電極活物質等の粒子が均一に分散した負極用塗料を得ることが困難になるのみならず、比表面積の増大によりバインダー14を多量に要して活物質含有率が低下するため、容量が低下することがある。
【0031】
[ケイ素系活物質]
本実施形態に係る非水電解質二次電池用負極剤に含まれるケイ素系活物質11の含有量は、全活物質の質量に対し、0質量%以上50質量%以下の範囲内であることが望ましい。ケイ素系活物質11の含有量が0質量%である場合には、十分な電池容量が得られず、50質量%より大きい場合には、ケイ素系活物質11の体積変化による影響で負極1が負極集電体21から剥離しやすくなる。
なお、ケイ素系活物質11の平均粒径(D50)は、炭素系活物質12よりも小さいことが好ましい。例えば、ケイ素系活物質11の平均粒径は、炭素系活物質12の平均粒径の0.001倍以上0.9倍以下の範囲内が好ましく、0.005倍以上0.5倍以下の範囲内がより好ましい。
【0032】
(導電助剤)
本実施形態に係る非水電解質二次電池用負極剤に含まれる導電助剤13としては、カーボンブラックや天然黒鉛、人造黒鉛、さらには、酸化チタンや酸化ルテニウムなどの金属酸化物、金属ファイバーなどが使用できる。なかでもストラクチャー構造を呈するカーボンブラックが好ましく、特にその一種であるファーネスブラックやケッチェンブラック、アセチレンブラック(AB)が好ましく用いられる。なお、カーボンブラックとその他の導電助剤、例えば、気相成長炭素繊維(VGCF)との混合系も好ましく用いられる。
導電助剤13の含有量は、全活物質の質量に対して、1質量%以上90質量%未満の範囲内であることが好ましい。導電助剤13の含有量が1質量%未満であると、導電性が不足して電極抵抗が増加する場合があり、90質量%以上であると、活物質量が不足してリチウム吸蔵容量が低下してしまうことがある。
【0033】
<非水電解質二次電池用負極およびその製造方法>
(負極活物質層)
本実施形態に係る負極活物質層10は、上述した、ケイ素系活物質11と炭素系活物質12と導電助剤13、さらに一部が架橋された第一の高分子とカルボン酸エステルを含む第二の高分子とを含む混合バインダー14などの混合物の他、溶媒を加えたスラリー状の非水電解質二次電池用負極剤を集電体21上に塗布乾燥させて形成することができる。非水電解質二次電池用負極剤に含まれる溶媒は、バインダー14に含まれる樹脂を溶解可能であれば、特に限定されず、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドなどの有機溶剤や水が挙げられる。
【0034】
(集電体)
集電体21としては、二次電池用の負極集電体材料として従来用いられている材料を適宜採用すればよい。例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、鉄、ステンレス鋼(SUS)、チタン等が挙げられる。特に、電子伝導性、電池作動電位という観点から、銅が特に好ましい。こうした集電体21の一般的な厚さは、10~30μm程度である。
図2は、エネルギー密度の評価に使用する公知のコインセル20の構成を示す断面模式図である。コインセル20は、内部でセパレータ22を介して、負極1と正極23とが対向しており、その周囲に電解液24が十分な量充填されている。コインセル20の外装部分は負極側に負極ケース25、正極側に正極ケース26が配置され、正極ケース26の円周部(外周部)にガスケット27が設けられている。
【0035】
正極23は、Li金属箔や正極活物質層と、正極集電体(図示せず)と、が積層された積層構造とすることができる。正極活物質層を構成する正極活物質は、リチウムの吸蔵放出が可能なものであればよく、公知の非水電解質二次電池用の正極活物質を用いることができる。具体的は、正極活物質としては、例えば、リチウムマンガン酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウム鉄酸化物およびリチウムニッケルマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物、リチウム遷移金属リン酸化合物等を用いることができる。なお、正極活物質として、上記活物質を複数混合させて用いてもよい。
【0036】
正極活物質層は、正極活物質のほかに導電助剤やバインダーを含んでもよい。正極活物質層に含まれる導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ等の公知の材料を用いることができる。正極活物質層に含まれるバインダーは、正極活物質と導電助剤との混合物を集電体へ密着できれば特に限定されない。このようなバインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等を挙げることができる。
【0037】
正極23における集電体(図示せず)としては、二次電池用の正極集電体材料として従来用いられている材料を適宜採用すればよい。例えば、アルミニウム、ニッケル、銅、鉄、ステンレス鋼(SUS)、チタン等が挙げられる。特に、電子伝導性、電池作動電位という観点から、アルミニウムが特に好ましい。こうした集電体の一般的な厚さは、10~30μm程度である。
セパレータ22は、対向配置された正極23と負極1との間に配置されている。これにより、セパレータ22は正極23と負極1とを電気的に絶縁している。セパレータ22としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン製の微孔膜、芳香族ポリアミド樹脂製の微孔膜、不織布、無機セラミック粉末を含む多孔質の樹脂コート等を用いることができる。
【0038】
電解液24は、負極ケース25と正極ケース26およびガスケット27とで区画された空間内に充填されている。電解液24は、溶媒と電解質とから構成されている。
本実施形態に係る非水電解質二次電池に用いる電解液24の溶媒には、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの低粘度の鎖状炭酸エステル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの高誘電率の環状炭酸エステル、γ‐ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、メチルアセテート、メチルプロピオネート、ビニレンカーボネート、ジメチルホルムアミド、スルホランおよびこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
【0039】
電解液24に含まれる電解質は特に制限がなく、例えば、LiClO4、LiBF4、LiAsF6、LiPF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiI、LiAlCl4等およびそれらの混合物等が挙げられる。好ましくは、LiBF4およびLiPF6のうちの1種または2種以上を混合したリチウム塩である。
ガスケット27は、端子間での短絡防止や電解液の漏出を防止するための部材である。ガスケット27としては、公知のガスケットを用いることができる。
【0040】
以下に、本実施形態に係る非水電解質二次電池用負極およびその製造方法について、具体的な実施例および比較例を挙げて説明する。なお、本発明は下記実施例によって制限されるものではない。
(実施例1)
水271gに、アルギン酸(和光純薬工業、平均分子量50万)11.4g、水酸化ナトリウム(関東化学)6.33gを加え、ディスパーにて撹拌した。続いて、この高分子溶液に、塩化カルシウム1%水溶液11.5gを加えて、20分間撹拌した。以上により、5%濃度の第一の高分子の水溶液を作製した。
【0041】
得られた第一の高分子の水溶液13.1gに、水84gを加えて撹拌した。次に、ケイ素(Si)系活物質としてSi粒子(平均粒径2μm)8.2gと、炭素(C)系活物質として人造黒鉛(Gr)24.6g、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)3.28gおよび気相成長炭素繊維(VGCF)3.28g、第二の高分子としてアクリル酸エチルエステルとマレイン酸との共重合体(平均分子量3万、単量体の配合モル比率50:50)0.16gを加えて、撹拌翼としてディスクタービン翼を取り付けたディスパーで撹拌した。続いて、フィルミックス(プライミクス社製)を用いて本分散し、実施例1の負極用スラリー(非水電解質二次電池用負極剤)を得た。
なお、実施例1の負極用スラリーでは、全無機粒子の表面積の総和S(m2)とバインダーの質量B(g)の比率S/Bは、410であり、バインダーの全体に含まれる高分子の全質量に対する第二の高分子の含有量比(%)は、25であった。
【0042】
(実施例2)
第一の高分子の平均分子量を500万とした以外は実施例1と同様にして、実施例2の負極用スラリーを得た。
(実施例3)
第一の高分子をヒアルロン酸とした以外は実施例1と同様にして、実施例3の負極用スラリーを得た。
(実施例4)
第一の高分子をマレイン酸とアクリル酸との共重合体の塩とした以外は実施例1と同様にして、実施例4の負極用スラリーを得た。
(実施例5)
第一の高分子をカルボキシメチルセルロース塩とした以外は実施例1と同様にして、実施例5の負極用スラリーを得た。
【0043】
(実施例6)
第一の高分子をポリアクリル酸塩とし、第二の高分子をアクリル酸エチルエステルとアクリル酸との共重合体とした以外は実施例1と同様にして、実施例6の負極用スラリーを得た。
(実施例7)
第一の高分子をポリアクリル酸塩とし、第二の高分子をアクリル酸エチルエステルとアクリル酸との共重合体とした以外は実施例2と同様にして、実施例7の負極用スラリーを得た。
(実施例8)
全無機粒子の表面積の総和S(m2)とバインダーの質量B(g)の比率S/Bが21となるよう負極組成比を変更した以外は実施例1と同様にして、実施例8の負極用スラリーを得た。
(実施例9)
全無機粒子の表面積の総和S(m2)とバインダーの質量B(g)の比率S/Bが328となるよう負極組成比を変更した以外は実施例2と同様にして、実施例9の負極用スラリーを得た。
【0044】
(実施例10)
架橋剤の種類をカルボジイミド系架橋剤とした以外は実施例1と同様にして、実施例10の負極用スラリーを得た。
(実施例11)
架橋剤の種類をイソシアネート系架橋剤とした以外は実施例1と同様にして、実施例11の負極用スラリーを得た。
(実施例12)
架橋剤の種類をアジリジン系化合物とした以外は実施例1と同様にして、実施例12の負極用スラリーを得た。
(実施例13)
バインダーの全体に含まれる高分子の全質量に対する第二の高分子の含有量比(%)を1とした以外は実施例1と同様にして、実施例13の負極用スラリーを得た。
(実施例14)
バインダーの全体に含まれる高分子の全質量に対する第二の高分子の含有量比(%)を20とした以外は実施例2と同様にして、実施例14の負極用スラリーを得た。
【0045】
(実施例15)
第一の高分子をポリアクリル酸塩とし、その平均分子量を100万とし、架橋剤の種類をアジリジン系化合物とし、第二の高分子をアクリル酸エチルエステルとアクリル酸との共重合体とし、その平均分子量を3万とし、全無機粒子の表面積の総和S(m2)とバインダーの質量B(g)の比率S/Bを164とし、バインダーの全体に含まれる高分子の全質量に対する第二の高分子の含有量比(%)を10とした以外は実施例1と同様にして、実施例15の負極用スラリーを得た。
(実施例16)
第一の高分子の平均分子量を500万とした以外は実施例15と同様にして、実施例16の負極用スラリーを得た。
(実施例17)
第二の高分子の平均分子量を5000とした以外は実施例15と同様にして、実施例17の負極用スラリーを得た。
(実施例18)
全無機粒子の表面積の総和S(m2)とバインダーの質量B(g)の比率S/Bを27とした以外は実施例15と同様にして、実施例18の負極用スラリーを得た。
【0046】
(比較例1)
第一の高分子の分子量を49万とした以外は実施例15と同様にして、比較例1の負極用スラリーを得た。
(比較例2)
第一の高分子の分子量を510万とした以外は実施例15と同様にして、比較例2の負極用スラリーを得た。
(比較例3)
第二の高分子の分子量を4000とした以外は実施例15と同様にして、比較例3の負極用スラリーを得た。
(比較例4)
第二の高分子の分子量を51000とした以外は実施例15と同様にして、比較例4の負極用スラリーを得た。
(比較例5)
架橋剤を添加しなかった以外は実施例15と同様にして、比較例5の負極用スラリーを得た。
【0047】
実施例1~18および比較例1~5により得られた負極用スラリーを集電体に塗布した。集電体は、厚さ12μmの銅箔を使用した。負極用スラリーは、1.0mg/cm2の目付量になるように、ドクターブレードにて塗布した。続いて、80℃で30分予備乾燥した。これを密度が1.0g/cm3になるようプレスを行ない、105℃で5時間、減圧乾燥して負極を得た。
【0048】
(セルの作製)
得られた負極と、300μm厚のLi金属箔正極をセパレータ(型番2200、セルガード製)を介して負極ケースと正極ケースで挟み込み、コインセルを作製した。正極は、直径15mmの円板に打ち抜き、Li金属箔は、直径16mmの円板に打ち抜いて、評価を行なった。電解液は、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DMC)の3:7(体積比)の混合溶液に、LiPF6を1Mとなるように加え、さらにフルオロエチレンカーボネート(FEC)を10質量%、ビニレンカーボネート(VC)を1質量%添加したものを使用した。
【0049】
(評価)
<放電容量>
放電容量は、以下のようにして決定した。
充放電は、0.01V~1.5Vで行なった。初めに初期放電容量評価として0.05Cでの定電流充放電を3回行い、さらに続けて0.5Cで定電流充電し0.5Cで定電流放電を行なうサイクル試験を100サイクル行なった。
また、本実施例では、放電容量を下記の基準で評価した。
◎:100サイクル目の放電容量が1サイクル目の放電容量が極めて良い。
○:100サイクル目の放電容量が1サイクル目の放電容量が良い。
△:100サイクル目の放電容量が1サイクル目の放電容量がやや良い。
×:100サイクル目の放電容量が1サイクル目の放電容量が悪い。
なお、本実施例では、「◎」、「○」、及び「△」を使用上問題のないレベルであるとして「合格」とした。
【0050】
<負極用スラリーの塗布性>
負極用スラリーの塗布性は、以下のようにして決定した。
実施例1~18および比較例1~5により得られた負極用スラリーを集電体に、1.0mg/cm2の目付量になるようにドクターブレードにて塗布した。
また、本実施例では、負極用スラリーの塗布性を下記の基準で評価した。
◎:塗工層の均一性が極めて高い。
○:◎には劣るが、塗工層は均一性を有する。
△:○には劣るが、塗工層は実用上問題ない均一性を有する。
×:塗工層は明らかに均一性を有しない。
なお、本実施例では、「◎」、「○」、及び「△」を使用上問題のないレベルであるとして「合格」とした。
以下、各評価の結果を表1に示す。
【0051】
【0052】
実施例1~18は比較例1~5よりも100サイクル目の放電容量が高いことがわかった。比較例1は第一の高分子の分子量が小さく、活物質層の十分な結着性が得られず、放電容量が低くなった。比較例3は、第二の高分子の分子量が小さく、Siの体積変化にバインダーが追随できず、放電容量が低下した。比較例5は、第一の高分子を架橋しなかったため、活物質層の十分な結着性が得られず、さらにSiの体積変化にもバインダーが追随できず、放電容量が低下した。比較例2は、第一の高分子の分子量が大きすぎて増粘したため、負極用スラリーの塗布性が悪化し、負極が作製できなかった。比較例4は、第二の高分子の分子量が大きく、活物質の表面に吸着しにくくなり、放電容量が低くなった。
【0053】
以上より本発明の効果が確認できた。
本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0054】
1 負極
10 負極活物質層
11 ケイ素系活物質
12 炭素系活物質
13 導電助剤
14 バインダー
20 コインセル
21 負極集電体
22 セパレータ
23 正極
24 電解液
25 負極ケース
26 正極ケース
27 ガスケット