(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】缶容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 25/34 20060101AFI20250408BHJP
B65D 8/00 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
B65D25/34 B
B65D8/00 A
(21)【出願番号】P 2020216689
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 恵喜
(72)【発明者】
【氏名】深堀 厚
(72)【発明者】
【氏名】前田 理行
(72)【発明者】
【氏名】秋本 宗一
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸司
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-011489(JP,A)
【文献】特開2017-068113(JP,A)
【文献】国際公開第2015/093405(WO,A1)
【文献】特開2006-248573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/34
B65D 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の缶体、
前記缶体の外周面の少なくとも一部を被覆するデジタル印刷画像層、
前記缶体及び前記デジタル印刷画像層を被覆する樹脂フィルム、及び、
前記樹脂フィルムの少なくとも一部を被覆するニス層、
を備え、
前記デジタル印刷画像層は、電子写真印刷画像層であ
り、
前記デジタル印刷画像層は、液体トナーによる電子写真印刷画像層である、
缶容器。
【請求項2】
前記樹脂フィルムは、PETフィルムである、
請求項1に記載の缶容器。
【請求項3】
前記缶体と、前記デジタル印刷画像層との間に、
顔料インク層を備える
請求項1又は2に記載の缶容器。
【請求項4】
前記缶体と、前記デジタル印刷画像層との間に、
金属薄膜層を備える、
請求項1から3のいずれか1項に記載の缶容器。
【請求項5】
筒状の缶体、
前記缶体の外周面の少なくとも一部を被覆するデジタル印刷画像層、
前記缶体及び前記デジタル印刷画像層を被覆する樹脂フィルム、及び、
前記樹脂フィルムの少なくとも一部を被覆するニス層、
を備え、
前記デジタル印刷画像層は、電子写真印刷画像層である缶容器の製造方法であって、
前記樹脂フィルム上に液体トナーを電子写真印刷することにより、前記電子写真印刷画像層が形成された印刷ラベルを製造するステップ、及び、
前記缶体の外周面の少なくとも一部を被覆するように、前記デジタル印刷画像層と前記樹脂フィルムとを含む印刷ラベルを貼り付けるラベル貼付ステップを備える、
缶容器の製造方法。
【請求項6】
前記印刷ラベルの表面の少なくとも一部に顔料インク層を形成するインク層形成ステップを更に備え、
前記ラベル貼付ステップを、前記顔料インク層が前記缶体と前記印刷ラベルの間に位置するように行う、
請求項5に記載の缶容器の製造方法。
【請求項7】
前記インク層形成ステップは、
顔料インクをグラビアコートで前記缶体の外周面に塗布し、乾燥する工程を含む、
請求項6に記載の缶容器の製造方法。
【請求項8】
前記印刷ラベルの表面の少なくとも一部に金属薄膜層を形成する金属薄膜層形成ステップを更に備え、
前記ラベル貼付ステップを、前記金属薄膜層が前記缶体と前記印刷ラベルの間に位置するように行う、
請求項6に記載の缶容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
缶体に直接インクジェットヘッドで印刷を行い、画像を形成することが知られている(特許文献1)。
[特許文献1]特開2019-108138号公報
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、筒状の缶体、缶体の外周面の少なくとも一部を被覆するインクジェット印刷画像層、及び、缶体及びインクジェット印刷画像層を被覆する樹脂フィルムを備える缶容器を提供する。
【0004】
本発明の第2の態様においては、筒状の缶体、缶体の外周面の少なくとも一部を被覆するデジタル印刷画像層、缶体及びデジタル印刷画像層を被覆する樹脂フィルム、及び、樹脂フィルムの少なくとも一部を被覆するニス層を備える缶容器を提供する。
【0005】
また、第3の態様においては、缶体の外周面の少なくとも一部を被覆するように、インクジェット印刷画像層及び樹脂フィルムを含む印刷ラベルを貼り付けるラベル貼付ステップを備える、缶容器の製造方法を提供する。
【0006】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴のすべてを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態における、缶容器10の一例を示す。
【
図2】本実施形態における、缶容器10の層構成の一例を示す。
【
図3】本実施形態における、缶容器10の層構成の一例を示す。
【
図4】本実施形態における、缶容器10の層構成の一例を示す。
【
図5】本実施形態における、缶容器10の層構成の一例を示す。
【
図6】本実施形態における、缶容器10の層構成の一例を示す。
【
図7】本実施形態における、缶容器10の層構成の一例を示す。
【
図8】本実施形態の缶容器10のウエット成形による製造方法のフローの一例を示す。
【
図9】本実施形態における、S100のウエット成形のサブフローの一例を示す。
【
図10】本実施形態の缶容器10のドライ成形による製造方法のフローの一例を示す。
【
図11】本実施形態における、S110のドライ成形のサブフローの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0009】
図1は、本実施形態における、缶容器10の一例を示す。缶容器10は、インクジェット印刷等のデジタル印刷により絵柄等が形成される。缶容器10は、蓋部100、胴部200、及び、底部300を備える。
【0010】
蓋部100は、缶容器10の一端に設けられる。蓋部100の上面は内容物が充填できるように開放されている。蓋部100には、内容物が充填された後、飲み口等を含む蓋が設置され、巻締等により固定されてよい。蓋部100は、胴部200側から端部方向に向かうにつれて外径が縮小された縮径部を有してもよい。
【0011】
胴部200は、蓋部100と底部300の間に位置し、缶容器10の大部分を占める。胴部200は、缶容器10の長軸方向において、外径がほぼ一定であってよい。胴部200には、デジタル印刷による文字、記号、繰り返しパターン、デザインパターン、及び、絵柄(「絵柄等」ともいう)が設けられる。
図1の例では、胴部200には、絵柄400及び文字500が印刷されている。
【0012】
底部300は、缶容器10の他端側に設けられ、ドーム状に成形される。底部300は縦置きされた缶容器10を自立可能にする。底部300は、外径が一定であってもよいし、縮径されていてもよい。
【0013】
図1に示す缶容器10は典型的には飲料缶用の缶であってよいが、これに限定されない。例えば、缶容器10は、食品、油が封入される缶詰、一斗缶等の食品缶、又は、薬品、試薬、工業製品等が封入される工業缶等であってよい。
図1に示した蓋部100、胴部200、及び底部300の形状は飲料缶の一例であり、これに限定されない。また、缶容器10は、内容物が充填される前のものに限られず、内容物が充填された後のもの及び内容物が消費された後の空き缶も含んでよい。
【0014】
図2は、本実施形態における、缶容器10の層構成の一例を示す。例えば、缶容器10は、缶胴部200において、
図2に示す層構成を有してもよい。これに加えて、缶容器10は、蓋部100及び/又は底部300の側面においても、
図2に示す層構成を有してもよい。
【0015】
缶容器10は、缶体20、印刷ラベル30、及び、接着層40を有する。缶容器10に充填された内容物は、缶体20側(図面下側)に位置する。缶容器10は、印刷ラベル30側(図面上側)で外気に接する。以下、缶体20側を内面と言い、印刷ラベル30側を外周面とも言う。
【0016】
缶体20は、缶容器10の基礎となる構造であり、缶容器10に十分な強度を与える。缶体20は、筒状に形成される。缶体20は、シームレス缶または溶接缶により形成されてよい。缶体20の表面は平滑であってもよく、又は凹凸(例えば、ビード加工、エンボス加工及び/又はダイヤモンドカット等)が設けられてもよい。缶体20の材質は、アルミニウム缶、スチール缶、又は他の金属であってよい。缶体20は、表面処理(例えば、酸化皮膜処理)がされていてもよい。
【0017】
印刷ラベル30は、絵柄等が印刷されたフィルム状の部材であり、缶体20の外周面の少なくとも一部を被覆する。これにより、印刷ラベル30は、缶体20が直接印刷されなくても、缶容器10に絵柄等を付与する。
【0018】
印刷ラベル30は、缶体20の胴部200の一部又は全体に設けられてよい。印刷ラベル30は、缶体20の蓋部100の一部又は全部に設けられてよい。印刷ラベル30は、缶体20の底部300の一部又は全部に設けられてよい。印刷ラベル30は、樹脂フィルム32及びデジタル印刷画像層34を含む。
【0019】
樹脂フィルム32は、缶容器10において、缶体20及びデジタル印刷画像層34を被覆する。樹脂フィルム32は印刷ラベル30の外周面側に配置され、デジタル印刷画像層34を物理的なダメージから保護する。また、缶容器10が飲料缶や食品缶である場合、殺菌消毒のためにレトルト処理が行われる。このような場合に、樹脂フィルム32は、デジタル印刷画像層34が水分と触れることを防ぐ。
【0020】
樹脂フィルム32は、透明フィルムであってよい。例えば、樹脂フィルム32は、透明バリアフィルムとして使用可能なフィルムであってよい。一例として、樹脂フィルム32は、延伸ポリプロピレン(PP)、延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)、又は、延伸ナイロンフィルムであってよい。特に樹脂フィルム32はPETフィルムであることが好ましい。
【0021】
また、樹脂フィルム32は、表面処理されたものであってよい。例えば、樹脂フィルム32は、コロナ処理されたフィルムであってよい。コロナ処理により樹脂フィルム32とデジタル印刷画像層34の密着性を向上することができる。樹脂フィルム32の厚さは、1~100μmの範囲であってよく好ましくは5~50μmであってよい。
【0022】
デジタル印刷画像層34は、絵柄等を構成する。デジタル印刷画像層34は、印刷ラベル30の内面側に形成され、缶体20の外周面の少なくとも一部を被覆する。デジタル印刷画像層34は、デジタル印刷により形成されたものであってよい。例えば、デジタル印刷として、インクジェット印刷及び電子写真印刷が挙げられる。
【0023】
デジタル印刷画像層34は、インクジェット印刷のインク成分又は電子写真印刷のトナー成分を含むものであってよい。一例として、インクジェット印刷により形成される場合、デジタル印刷画像層34は、樹脂成分と顔料又は染料とを含むインクジェット印刷画像層であって良い。デジタル印刷画像層34は、他の添加剤を含んでもよい。一例として、電子写真印刷により形成される場合、デジタル印刷画像層34は、樹脂成分、顔料及びワックスを含む電子写真印刷画像層であって良い。
【0024】
デジタル印刷画像層34は、単色の絵柄等が印刷された層又は複数色の絵柄等が印刷された層であってよい。デジタル印刷画像層34は、複数層からなるものであってよい。例えば、デジタル印刷画像層34は、第1層及び第2層の2層からなるものであってよい。
【0025】
第1層は、第2層よりも樹脂フィルム32側に位置し、缶体20に貼り付けられた後に缶容器10の外周面側に位置する。第1層は、絵柄等を形成するものであってよい。第2層は、下地として機能し、例えば白等の単色のベタパターン、ストライプ又は市松模様等の繰り返しパターン、又は、絵柄等を形成するものであってよい。一実施形態として、第1層及び第2層のうち一方はデジタル印刷でなく、グラビア印刷等の有版印刷により形成されたものであってよい。デジタル印刷画像層34は、3層以上であってもよい。
【0026】
デジタル印刷画像層34の厚さは、0.1μm以上20μm以下であってよい。好ましくは、デジタル印刷画像層34の厚さは、0.5μm以上10μm以下であってよい。
【0027】
接着層40は、印刷ラベル30を缶体20に接着する。接着層40は、硬化された接着剤または硬化された半硬化フィルム等であってよい。例えば、接着層40は、アクリル樹脂系接着剤、ポリウレタン樹脂系接着剤、ポリエステル樹脂系接着剤、又はエポキシ樹脂系接着剤を硬化したものであってよい。
【0028】
本実施形態によれば、缶体20に直接印刷するのではなく、デジタル印刷された印刷ラベル30を活用して缶容器10に絵柄等を付与する。これにより、缶体20に直接印刷するよりも絵柄等の印刷が容易になり、缶容器10の成形と並行して絵柄等の準備を行えるので、様々な絵柄等を有する缶容器10の生産性を向上することができる。特に製缶工程とデジタル印刷工程の生産性に差がある場合でも、製缶ラインの生産性を損なわずに缶容器10を製造することができる。また、缶体20が凹凸を有する場合等、直接印刷が比較的難しい条件においても缶体20に絵柄等を付与することができる。特にインクジェット印刷により印刷ラベル30を印刷する場合、缶体20の各々に異なった絵柄をすぐに印刷できるので、多種の絵柄等を有する缶容器10を容易に提供することができる。特に電子写真印刷により印刷ラベル30を印刷する場合、インクジェットと同様に従来のグラビア印刷及びフレキソ印刷よりも早く印刷を行うことができるので、短時間で多種の絵柄等を有する缶容器10を提供することができる。
【0029】
図3は、本実施形態における、缶容器10の層構成の一例を示す。
図3に係る缶容器10は、
図2に係る缶容器10に加えてニス層50を更に有する。
【0030】
ニス層50は、樹脂フィルム32の少なくとも一部を被覆する。ニス層50は、缶体20を外的な衝撃などから保護する。レトルト処理を行う場合、樹脂フィルム32等のフィルムが高温及び水分に起因して白く濁る恐れがある。ニス層50を設けることにより、樹脂フィルムが白く濁ることを防ぐことができる。
【0031】
ニス層50は、缶容器10の少なくとも缶胴部200に設けられてよい。ニス層50は、缶容器10の樹脂フィルム32の全体又は一部を覆うように形成されてよい。
【0032】
ニス層50は、樹脂成分を含んでよい。樹脂成分は、硬化された熱硬化性アクリル系樹脂、熱硬化性エポキシ系樹脂、または熱硬化性ポリエステル系樹脂を含んでよいが、透明性の観点から好ましくは熱硬化性エポキシ系樹脂であってよい。ニス層50は、更にオレフィン系炭化水素、パラフィン系炭化水素、油脂、ワックス、合成高分子系樹脂、及び、有機フッ素化合物選択される1種以上(以下、「ワックス等」ともいう)からを含むものであってよいが、これらに限らない。ニス層50は、更に公知の添加剤を含んでよい。添加剤の例としてレベリング剤、消泡剤、ハジキ防止剤、フッ素系化合物、及び、シリコン系化合物等が挙げられる。ニス層50の厚さは、0.5μm以上15μm以下であってよい。ニス層の厚さが0.5μm未満であると、缶体20の保護効果及び樹脂フィルムの白濁防止効果が十分でなく、15μm超となると生産速度が低下し、また、材料を多く消費するのでコスト的に不利になる。
【0033】
図4は、本実施形態における、缶容器10の層構成の一例を示す。
図4に係る缶容器10は、
図3に係る缶容器10に加えて内面保護層60を更に有する。
図4の構成に代えてニス層50等の一部の層は設けられなくてもよい。内面保護層60は、缶体20の内面を保護し、内容物が缶体20と接触して反応等を生じることを防止する。
【0034】
内面保護層60は、公知の塗料を硬化することにより形成されてよい。また、内面保護層60は、缶体20に熱圧着されたポリエステルフィルム又は樹脂フィルム32と同様の樹脂フィルム等であってよい。
【0035】
図5は、本実施形態における、缶容器10の層構成の一例を示す。
図5に係る缶容器10の印刷ラベル30は、樹脂フィルム32及びデジタル印刷画像層34に加えて、樹脂フィルム36を更に有する。
図5の構成に代えてニス層50及び/又は内面保護層60等の一部の層は設けられなくてもよい。
【0036】
デジタル印刷画像層34は、樹脂フィルム32及び樹脂フィルム36に挟まれた構造となる。これにより、デジタル印刷画像層34を、より強固に保護することができる。例えば、レトルト処理等において、デジタル印刷画像層34が水分に接触することをより確実に防ぐことができる。
【0037】
樹脂フィルム36は、樹脂フィルム32と同一のフィルムであってよい。これに代えて、異なるフィルムであってよい。例えば、樹脂フィルム32は缶容器10の保護機能を重視して選択されてよく、樹脂フィルム36はデジタル印刷画像層34及び/又は接着層40との密着性等を重視して選択されてよい。一例として、樹脂フィルム32は樹脂フィルム36よりも膜厚が厚くてよい。樹脂フィルム36は、不透明であってもよいが、後述する下地層38が設けられる場合には下地が可視化されるように透明であることが望ましい。必要に応じてデジタル印刷画像層34と樹脂フィルム36との間に接着剤等による接着層が更に設けられてもよい。
【0038】
図6は、本実施形態における、缶容器10の層構成の一例を示す。
図6に係る缶容器10の印刷ラベル30は、樹脂フィルム32、デジタル印刷画像層34及び樹脂フィルム36に加えて、下地層38を更に有する。
図6の構成に代えて樹脂フィルム36、ニス層50及び/又は内面保護層60等の一部の層は設けられなくてもよい。
【0039】
下地層38は、缶体20とデジタル印刷画像層34との間に形成され、デジタル印刷画像層34の下地となる層である。下地層38は、顔料インク層又は金属薄膜層であってよい。
【0040】
顔料インク層は、白等の単色のベタパターンがコート又は印刷されたもの、または、ストライプ又は市松模様等の繰り返しパターンが印刷されたものであってよい。顔料インク層は、デジタル印刷ではなく、コーティング又は有版式印刷により形成されたものであってよい。デジタル印刷を使用しないことで、汎用の材料(顔料等)を使用して低コストで顔料インク層を形成することができる。
【0041】
顔料インク層は、樹脂成分及び顔料等の着色剤を含む。着色剤は、白や黒等の通常の色だけでなく金や銀等の金属色のものを含んでもよい。下地層38を白色のベタパターンで形成する場合、下地層38は絵柄等が形成されるデジタル印刷画像層34の白背景になるので、絵柄等の美観を引き立てることができる。また、下地を含めてデジタル印刷画像層34のみで形成する場合と比較してコストコントロールをすることができる。
【0042】
顔料インク層は、デジタル印刷画像層34の絵柄等を補完する画像を形成してもよい。例えば、缶容器10の表面に形成される画像の中で占有面積の広い色を顔料インク層で形成し、それ以外の部分をデジタル印刷画像層34で形成してよい。また、顔料インク層は、缶容器10の製品ごとに相違しない共通部分の絵柄等を形成してもよい。
【0043】
例えば、缶容器10の表面に印刷されるべき絵柄等が、製品内で共通の部分(例えば、商品名や商品の基本的なデザイン等)と、製品ごとに異なる部分(例えば、製品1つずつで異なる二次元コード等)とを有する場合、共通の部分を顔料インク層で形成し、製品ごとに異なる部分をデジタル印刷画像層34で形成してよい。これらの方法によれば、デジタル印刷画像層34のみで全ての絵柄等を形成する場合と比較してコストコントロールをすることができる。
【0044】
金属薄膜層は、樹脂フィルム36の一面に蒸着等で形成された金属薄膜であってよい。例えば、金属薄膜層はアルミ蒸着層であってよい。下地層38を金属薄膜層とする場合、絵柄等が形成されるデジタル印刷画像層34の背景が金属光沢のあるものとなるので、絵柄等に高級感を与えることができる。
【0045】
下地層38は、単色又は複数色であってよい。下地層38は、単層または複数層で形成されていてもよい。また、下地層38は、顔料インク層と金属薄膜層を組み合わせた層であってもよい。
【0046】
図7は、本実施形態における、缶容器10の層構成の一例を示す。
図7に係る缶容器10は、缶体20の外周面側に樹脂フィルム70が設けられ、印刷ラベル30が接着層40により缶体20に接着している。内面保護層60も樹脂フィルムであってよい。一例として、缶容器10は、金属の缶体20の両面にポリエステルフィルム等の樹脂フィルムを被覆した樹脂被覆缶に、樹脂フィルム32及びデジタル印刷画像層34からなる印刷ラベル30を、接着層40を介して接着したものであってよい。
【0047】
図7の実施形態によれば、缶体20の成形加工時に水を使用しない樹脂被覆缶を利用できる。従って、本実施形態によれば、環境負荷の小さく抑えた缶容器10を提供することができる。
【0048】
図8は、本実施形態の缶容器10のウエット成形による製造方法のフローの一例を示す。本実施形態の缶容器10は、
図8のS100~S800の処理を行うことによって製造することができる。なお、説明の便宜上、S100~S800の処理を順番に説明するが、これらの処理は少なくとも一部が並列に実行されるものであってもよいし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各ステップを入れ替えて実行されるものであってもよい。また、一部のステップが省略されてもよい。
【0049】
まず、S100において、金属板に対してウエット成形を行う。ウエット成形は、缶体20の成形時にルブリカントを使用する成形方法である。次いでウエット成形の各工程について
図9を用いて説明する。
図9は、本実施形態における、S100のウエット成形のサブフローの一例を示す。S100に係るウエット成形は、S11からS16の工程を含む。
【0050】
S11においてアンコイラを行う。具体的には、缶体20の材料となるコイル状の金属板を巻きほどいて延ばす。金属板の材料は、例えば、アルミニウムまたは鉄を主成分とするスチールであってよい。
【0051】
次に、S12においてルブリケータを行う。具体的には、S11で延ばされた金属板に対してルブリカントを塗布する。ルブリカントは、潤滑剤及び冷却材として機能し、公知の物が使用される。
【0052】
次に、S13においてカッピングプレスを行う。具体的にはS12でルブリカントが塗布された金属板を円盤状に打ち抜く。ここで更に絞り加工を行い、カップ状の金属素材を得る。
【0053】
次に、S14においてボディメーカーを行う。具体的にはS13で得られたカップ状の金属素材に対して、絞り加工及びしごき加工を行い、周壁が一定の厚さを有し、底がドーム状となった円筒形状の缶状容器を形成する。これにより、缶容器10の胴部200及び底部300が形成される。
【0054】
次に、S15でトリマーを行う。具体的には、S14で得られた缶状容器の上部を切りそろえる。
【0055】
次に、S16でウォッシャーを行う。具体的には、S15で得られた缶状容器を洗浄し、ルブリカントや他の汚れ等を洗浄し、乾燥する。S100の後にS200の処理を行う。
【0056】
S200において、内面保護層60を形成する。例えば、スプレー塗装で缶状容器の内面に透明塗料をコートしてよい。内面保護層60を設けない場合(例えば、
図2の形態)、S200の処理は省略してよい。S200の次にS300の処理を行う。
【0057】
S300において、印刷ラベル30を製造する。具体的には樹脂フィルム32の片面にデジタル印刷を行い、デジタル印刷画像層34を形成する。樹脂フィルム32は
図2において説明したものを用いることができる。デジタル印刷は、版を使用せず、オンデマンド可能な印刷方式を指す。例えば、デジタル印刷は、インクジェット印刷又は電子写真印刷であってよい。一例として、樹脂フィルム32の上に、インクジェットインク又はトナー(以下、単に「トナー等」ともいう)が絵柄等を表すように印刷して形成し、硬化及び/又は乾燥することで印刷ラベル30を製造してよい。
【0058】
電子写真印刷では、レーザービーム方式又はエレクトロンビーム方式を用いてよい。また、トナーとして粉体トナー又は液体トナーを用いてよい。熱転写による樹脂フィルム32等の収縮を防止、低減する観点からは液体トナーを用いることが好ましいが、これに限られない。
【0059】
樹脂フィルム32とトナー等の密着性を向上させるために、印刷前に、樹脂フィルム32に表面処理を施してもよい。一例として、樹脂フィルムにコロナ処理又はプラズマ処理等を行うか、及び/又は、プライマー層等を形成してもよい。トナー等としては公知のものを用いてよい。
【0060】
樹脂フィルム32には、複数回の印刷を行うことで複数層からなるデジタル印刷画像層34を形成してもよい。この際に複数回の印刷のうち一部はデジタル印刷でなく、グラビア印刷等の有版印刷であってよく、全部がデジタル印刷であってもよい。
【0061】
一実施形態において、デジタル印刷画像層34の上に更に別の樹脂フィルム36を積層してもよい。これにより、
図5及び
図6に係る印刷ラベル30が実現される。一実施形態において、デジタル印刷画像層34の上に透明塗料等を塗布、硬化、乾燥して樹脂フィルム36に代わる保護層を形成してもよい。
【0062】
一実施形態において、樹脂フィルム36又は保護層の上側(樹脂フィルム32と反対側)に更に下地層38を形成してもよい。これにより、
図6に係る印刷ラベル30が実現される。
【0063】
下地層38は、顔料インクをコート又は印刷することにより形成される顔料インク層であってよい。例えば、顔料インク層は、グラビアコート等のコーティング、又は、グラビア印刷等の有版式印刷により形成されてよい。一例として、顔料インクを缶体20の外周面に塗布し、乾燥することで、印刷ラベル30の表面の少なくとも一部に顔料インク層が形成される。
【0064】
下地層38は、印刷ラベル30の表面の少なくとも一部に形成される金属薄膜層であってよい。例えば、金属薄膜層は、アルミニウム等の金属を蒸着することにより形成してよい。これに代えて、金属薄膜層は、アルミニウム箔等の金属箔を貼り付けることにより形成してもよい。
【0065】
なお、S300の処理はS100-S200の後に行う必要はなく、S100-S200の処理と並行して、又は、先立って行ってよい。次にS400の処理を行う。
【0066】
S400において、S300で製造したデジタル印刷画像層及び樹脂フィルムを含む印刷ラベル30を、S200(又はS100)で得た缶状容器の缶体20に貼り付ける。例えば、接着剤、又は、接着剤を半硬化した半硬化フィルムを缶状容器の外周面と印刷ラベル30との間に設置し、印刷ラベル30との接着を行ってよい。接着剤は印刷ラベル30の接着面(すなわち樹脂フィルム32の反対側の面)と缶状容器との接着性を考慮して適宜選択されてよい。例えば、接着剤は、アクリル樹脂系接着剤、ポリウレタン樹脂系接着剤、ポリエステル樹脂系接着剤、又はエポキシ樹脂系接着剤であってよいがこれに限られない。
【0067】
これにより、缶状容器を形成する缶体20と印刷ラベル30との間に接着層40が形成される。印刷ラベル30の表面に顔料インク層又は金属薄膜層が形成されている場合、顔料インク層又は金属薄膜層が缶体と印刷ラベルの間に位置するように接着が行われてよい。次にS500の処理を行う。
【0068】
S500において、缶状容器の外周面(すなわち、樹脂フィルム32)にニス層50を形成する。例えば、缶状容器の外周面の一部又は全面に、ニス組成物を塗布し、硬化することでニス層50を形成してよい。ニス組成物は、樹脂成分、ワックス等、有機溶媒、及び、必要に応じて添加物を含んでよい。樹脂成分は、硬化された熱硬化性アクリル系樹脂、熱硬化性エポキシ系樹脂、または熱硬化性ポリエステル系樹脂を含んでよい。硬化は、加熱、送風、紫外線照射、電子線照射またはこれらの組み合わせにより行ってよい。
【0069】
S500(すなわちニス層50の形成)は、S300(すなわち印刷ラベル30の製造)の中で行われてもよい。その場合、印刷の前に、樹脂フィルム32の両面のうち、デジタル印刷画像層34が形成される面とは反対面に予めニス層50を形成しておいてよい。これに代えて、印刷の後に、ニス層50を形成してもよい。
【0070】
また、缶容器10がニス層50を含まない場合(例えば、
図2の形態)、S500の処理は省略してよい。次にS600の処理を行う。
【0071】
S600においてネック加工が行われる。ネック加工(ネッキングとも言う)により、缶状容器の一端を成形して蓋部100を形成し、後に蓋が巻締できるようにする。ネック加工において、縮径部を形成してもよい。ネック加工として、製缶分野において公知の方法を用いることができる。
【0072】
なお、ネック加工は、S100とS400の間に行われてもよい。既にネック加工された缶容器10に対して印刷ラベル30を貼り付けることとなる。この場合、印刷ラベル30は少なくとも胴部200に貼り付けられてよい。
【0073】
ネック加工を行うことで、蓋部100、胴部200、底部300を有する缶容器10が形成される。次にS700の処理を行う。
【0074】
S700において、缶容器10の検査を行う。例えば、缶容器10の外周面または内周面に凹み、穴、傷、及び汚れ等がないかを検査する。例えば、缶容器10に形成された絵柄等が十分に鮮明か、印字ずれ、カケ及び滲み等がないか検査する。検査は、検査装置によるものでも、人の目視によるものでもよい。次にS800の処理を行う。
【0075】
S800において、検査後の缶容器10に対して、内容物を充填する。内容物を充填した缶容器10に対して、缶蓋の取り付けを行う。内容物の充填および缶蓋の取り付けは、既知の方法により行ってよい。例えば、缶容器10の上に飲み口が設けられた缶蓋を設置し、巻締ることにより缶蓋を缶容器10に固定してもよい。
【0076】
S100~S200は製缶工場で行ってよい。S300はラベル製造工場で行われてよい。S400からS800はボトラーで行ってよい。ただし、前述したようにS500はS300とともにラベル製造工場で行われてよい。S400以降のステップをボトラーで行う場合、製缶工場では印刷ラベル30を接着していない缶容器を保管する。
【0077】
この場合、絵柄等の変更があっても、ボトラーにおいて変更後の絵柄等を缶容器に貼り付けることができるため、廃棄対象となる缶容器を減らすことができる。また、デジタル印刷を利用して絵柄等を形成していることもあり、デザインの変更をより迅速に高い自由度で行うことができる。また、製缶工場で多種類の印刷された缶容器を保管する必要がないため、保管コストの面でもすぐれ、多品種小ロットのニーズに対応することができる。
【0078】
なお、S100からS700を製缶工場で行い、S800をボトラーで行ってもよい。製缶工場およびボトラーでのステップの分担のパターンは、これらに限られない。
【0079】
図10は、本実施形態の缶容器10のドライ成形による製造方法のフローの一例を示す。本実施形態の缶容器10は、
図10のS110~S800の処理により製造できる。なお、説明の便宜上、S110~S800の処理を順番に説明するが、これらの処理は少なくとも一部が並列に実行されるものであってもよいし、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各ステップを入れ替えて実行されるものであってもよい。S110~S800のうち
図8に係る各ステップと共通のステップについては説明を省略する。
【0080】
まず、S110において、金属のコイル材に対してドライ成形を行う。ドライ成形は、缶体20の成形時にルブリカントを使用しない成形方法である。このため、ルブリカントの洗浄等のために大量の水を消費することがなく、環境負荷を抑えることができる。次いでドライ成形の各工程について
図11を用いて説明する。
【0081】
図11は、本実施形態における、S110のドライ成形のサブフローの一例を示す。S100に係るドライ成形は、S11、S120、S13、S14及びS15の工程を含む。このうちS11,S13、S14及びS15の処理は、
図9に示したウエット成形における対応する各処理と同様の処理であってよい。
【0082】
ドライ成形においてはS11の後にS120が行われる。次に、S120において、S11で延ばされた金属板に樹脂フィルムをラミネートする。例えば、金属板の両面又は片面に樹脂フィルムを熱圧着してよい。金属板の両面に樹脂フィルムをラミネートした場合は、
図7と同様の形態となり、ラミネートした樹脂フィルムのうち内面側のものが内面保護層60として機能する。
【0083】
樹脂フィルムは熱可塑性樹脂であってよく、好ましくはポリエステルフィルムであってよい。樹脂フィルムに可塑性樹脂の代わりに熱硬化性樹脂を用いてもよい。例えば、熱硬化性アクリル系樹脂、熱硬化性エポキシ系樹脂、熱硬化性ポリウレタン系樹脂または熱硬化性ポリエステル系樹脂を用いてもよい。ラミネートの一例として特開2004-25640号に記載の方法を用いてもよい。
【0084】
本実施形態によれば、樹脂フィルムを缶体に付与することで、ルブリカントを使用せずに缶の成形時に適切なすべり性を与えることができる。
図11のフローではルブリカントを使用しないので
図9のS16のウォッシャーの処理を省略することができるが、汚れ等の除去のためにウォッシャーを実行してもよい。
【0085】
なお、必要であれば樹脂フィルムをラミネートした後に更にルブリカントを塗布してもよい。この場合も、
図9と同様にS16のウォッシャーの処理を行ってよい。
【0086】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0087】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した缶体、缶容器および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先だって」等と明示しておらず、また、前の処理の缶体または缶容器を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0088】
10 缶容器
20 缶体
30 印刷ラベル
32 樹脂フィルム
34 デジタル印刷画像層
36 樹脂フィルム
38 下地層
40 接着層
50 ニス層
60 内面保護層
70 樹脂フィルム
100 蓋部
200 胴部
300 底部
400 絵柄
500 文字