(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】炭化珪素半導体装置
(51)【国際特許分類】
H10D 30/66 20250101AFI20250408BHJP
H10D 84/80 20250101ALI20250408BHJP
H10D 8/60 20250101ALI20250408BHJP
H10D 30/01 20250101ALI20250408BHJP
H10D 8/50 20250101ALI20250408BHJP
H10D 84/83 20250101ALI20250408BHJP
H10D 64/64 20250101ALI20250408BHJP
【FI】
H10D30/66 101C
H10D30/66 101T
H10D30/66 201A
H10D30/66 101H
H10D30/66 101E
H10D84/80 203D
H10D8/60 D
H10D8/60 F
H10D30/01 301A
H10D30/01 301E
H10D8/50 K
H10D8/50 F
H10D84/80 101A
H10D84/83 E
H10D64/64
(21)【出願番号】P 2021017046
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】松永 慎一郎
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/187670(WO,A1)
【文献】特開2017-084839(JP,A)
【文献】特開2016-076553(JP,A)
【文献】特開2019-054064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10D 30/66
H10D 84/80
H10D 8/60
H10D 30/01
H10D 8/50
H10D 84/83
H10D 64/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の炭化珪素半導体基板と、
前記炭化珪素半導体基板のおもて面に設けられた、前記炭化珪素半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層と、
前記第1半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に設けられた第2導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第1導電型の第1半導体領域と、
前記第2半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられ、前記第1半導体領域と接する第2導電型の第2半導体領域と、
前記第2半導体層の前記第1半導体領域の深さ方向に対向する位置に設けられた、前記第2半導体層よりも高不純物濃度の第2導電型の第3半導体領域と、
前記第1半導体領域および前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に達するトレンチと、
前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極上に設けられた層間絶縁膜と、
前記第1半導体領域および前記第1半導体領域の表面に設けられた第1電極と、
前記炭化珪素半導体基板の裏面に設けられた第2電極と、
前記第3半導体領域が設けられていない前記第2半導体層の表面に設けられ、前記第2半導体層とショットキー接合する第3電極と、
を備え
、
前記第3電極と前記第3半導体領域は平面視で重ならないことを特徴とする炭化珪素半導体装置。
【請求項2】
前記第1半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第2導電型の第4半導体領域と、
前記第1半導体層の前記トレンチと深さ方向に対向する位置に選択的に設けられた第2導電型の第5半導体領域と、
を備え、
前記第3電極と深さ方向に対向する位置に、前記第2半導体領域および前記第4半導体領域が設けられることを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項3】
前記第3電極の幅は、前記第4半導体領域と前記第5半導体領域との間の距離よりも広いことを特徴とする請求項2に記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項4】
前記第3半導体領域の幅は、前記第1半導体領域の幅よりも広いことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
【請求項5】
前記第3電極は、前記第2半導体領域に挟まれた前記第2半導体層の表面に設けられることを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載の炭化珪素半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炭化珪素半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に代わる次世代の半導体材料として期待されている。炭化珪素を半導体材料に用いた半導体素子(以下、炭化珪素半導体装置とする)は、シリコンを半導体材料に用いた従来の半導体素子と比較して、オン状態における素子の抵抗を数百分の1に低減可能であることや、より高温(200℃以上)の環境下で使用可能なこと等、様々な利点がある。これは、炭化珪素のバンドギャップがシリコンに対して3倍程度大きく、シリコンよりも絶縁破壊電界強度が1桁近く大きいという材料自体の特長による。
【0003】
炭化珪素半導体装置としては、現在までに、ショットキーバリアダイオード(SBD:Schottky Barrier Diode)、プレーナゲート構造やトレンチゲート構造の縦型MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:絶縁ゲート型電界効果トランジスタ)が製品化されている。
【0004】
プレーナゲート構造は、半導体基板のおもて面上に平板状にMOSゲートを設けたMOSゲート構造である。トレンチゲート構造は、半導体基板(半導体チップ)のおもて面に形成したトレンチ内にMOSゲートを埋め込んだMOSゲート構造であり、トレンチの側壁に沿って半導体基板のおもて面と直交する方向にチャネル(反転層)が形成される。このため、半導体基板のおもて面に沿ってチャネルが形成されるプレーナゲート構造と比べて、単位面積当たりの単位セル(素子の構成単位)密度を増やすことができ、単位面積当たりの電流密度を増やすことができるため、コスト面で有利である。
【0005】
図17は、従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。従来の炭化珪素半導体装置の構造について、トレンチ型MOSFET170を例に説明する。トレンチ型MOSFET170では、n
+型炭化珪素基板101のおもて面にn
-型炭化珪素エピタキシャル層102が堆積される。n
-型炭化珪素エピタキシャル層102のn
+型炭化珪素基板101側に対して反対側の表面側は、n型高濃度領域105が設けられている。n型高濃度領域105内には、トレンチ116の底面全体を覆うように第1p
+型ベース領域103が選択的に設けられている。
【0006】
トレンチゲート構造のMOSゲートは、p型ベース層106、n+型ソース領域107、p+型コンタクト領域108、トレンチ116、ゲート絶縁膜109およびゲート電極110で構成される。なお、p+型コンタクト領域108は設けられなくてもよい。以下、n+型炭化珪素基板101とn-型炭化珪素エピタキシャル層102とn型高濃度領域105とp型ベース層106とを併せて炭化珪素半導体基体118とする。
【0007】
また、ゲート電極110上に層間絶縁膜111が設けられ、層間絶縁膜111の開口部に、n+型ソース領域107およびp+型コンタクト領域108と接するソース電極112が設けられる。n+型炭化珪素基板101の裏面にドレイン電極となる裏面電極113が設けられる。
【0008】
このような構造のトレンチ型MOSFET170は、閾値電圧(Vth)を調整するため、p型ベース層106のチャネルが形成される部分にイオン注入(以下、チャネルインプラと称する)を行っている。これにより、p型ベース層106より高不純物濃度のチャネルインプラ部120が形成される。MOSFETでは、閾値電圧が高いほど、電磁雑音などによって誤オンする可能性が低くなるため、このチャネルインプラにより、電子電流を貫通しにくくして、閾値電圧(チャネル反転電圧)を上げている。
【0009】
また、キャリア濃度を調節することにより、ライフタイムコントロールを行うことなく、ダイオードのスイッチング速度の高速化、低電流発振の低減およびリカバリ損失の低減を達成する半導体装置が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0010】
また、MOSFETのアバランシェ耐量を向上させるため、第1のチャネル領域のp型不純物の不純物濃度の2倍以上100倍以下の第1のストッパー領域を第1のチャネル領域に隣接する位置に設ける半導体装置が知られている(例えば、下記特許文献2参照)。
【0011】
また、pウェル領域内に高濃度p領域を設けることにより、等電位線のドリフト領域からpウェル領域への入り込みを、ほぼ完全に抑制することにより、ゲート絶縁層の耐圧の向上が可能な半導体装置が知られている(例えば、下記特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2014-187320号公報
【文献】特許第6416143号公報
【文献】特許第6710589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ここで、従来のトレンチ型MOSFET170では、チャネルインプラを炭化珪素半導体基体118の上面側(ソース電極12側)から全面に行っている。これにより、チャネルから離れた領域にもチャネルインプラが行われ、p型ベース層106内に不純物濃度が高いチャネルインプラ部120が全面に設けられる。ここで、ソース電極112に高電位を印加することで動作させる逆導通時、p+型コンタクト領域108からp型ベース層106とn-型炭化珪素エピタキシャル層102とを経由してn+型炭化珪素基板101への方向に電流が流れる。
【0014】
この際、チャネルインプラ部120により、電子電流がp型ベース層106を貫通しにくくなり、全電流に対する電子電流の割合が減り、同じ電流密度でのドリフト層内部での蓄積ホール量が増える。ドリフト層内部でホール量が増えると、ドリフト層中で電子およびホールの再結合が発生しやすくなる。このとき、n+型炭化珪素基板101の結晶に欠陥があると、発生するバンドギャップ相当の再結合エネルギー(3eV)により、n+型炭化珪素基板101に存在する結晶欠陥の一種である基底面転位(BPD:Basal Plane Dislocation)が移動し、2つの基底面転位に挟まれるシングルショックレー型積層欠陥(1SSF:Shockley Stacking Faults)が拡張する。積層欠陥が拡張すると、積層欠陥は電流を流しにくいため、MOSFETのオン抵抗および内蔵ダイオードの順方向電圧が上昇する。このように、チャネルインプラにより、トレンチ型MOSFET170でバイポーラ劣化が発生するという課題がある。
【0015】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、p型ベース層への到達電流を引き抜き、ドリフト層へのホール注入を抑えて、ホール密度を低減できる炭化珪素半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題を解決し、本発明の目的を達成するため、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、次の特徴を有する。第1導電型の炭化珪素半導体基板のおもて面に、前記炭化珪素半導体基板より低不純物濃度の第1導電型の第1半導体層が設けられる。前記第1半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面に第2導電型の第2半導体層が設けられる。前記第2半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に第1導電型の第1半導体領域が設けられる。前記第2半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に、前記第1半導体領域と接する第2導電型の第2半導体領域が設けられる。前記第2半導体層の前記第1半導体領域の深さ方向に対向する位置に、前記第2半導体層よりも高不純物濃度の第2導電型の第3半導体領域が設けられる。前記第1半導体領域および前記第2半導体層を貫通し、前記第1半導体層に達するトレンチが設けられる。前記トレンチの内部にゲート絶縁膜を介してゲート電極が設けられる。前記ゲート電極上に層間絶縁膜が設けられる。前記第1半導体領域および前記第1半導体領域の表面に第1電極が設けられる。前記炭化珪素半導体基板の裏面に第2電極が設けられる。前記第3半導体領域が設けられていない前記第2半導体層の表面に、前記第2半導体層とショットキー接合する第3電極が設けられる。前記第3電極と前記第3半導体領域は平面視で重ならない。
【0017】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第1半導体層の、前記炭化珪素半導体基板側に対して反対側の表面層に選択的に設けられた第2導電型の第4半導体領域と、前記第1半導体層の前記トレンチと深さ方向に対向する位置に選択的に設けられた第2導電型の第5半導体領域と、を備え、前記第3電極と深さ方向に対向する位置に、前記第2半導体領域および前記第4半導体領域が設けられることを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第3電極の幅は、前記第4半導体領域と前記第5半導体領域との間の距離よりも広いことを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第3半導体領域の幅は、前記第1半導体領域の幅よりも広いことを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる炭化珪素半導体装置は、上述した発明において、前記第3電極は、前記第2半導体領域に挟まれた前記第2半導体層の表面に設けられることを特徴とする。
【0021】
上述した発明によれば、チャネルインプラ部は、チャネルが形成されるトレンチの側壁の近傍のみに形成されている。これにより、逆導通時では、電子電流がp型ベース層(第2導電型の第2半導体層)を貫通しやすくなり、p型ベース層に到達電子を引き抜くことができる。このため、全電流に対する電子電流の割合が増え、同じ電流密度での蓄積ホール量を減らすことができ、炭化珪素MOSFETのバイポーラ劣化を抑えることができる。
【0022】
また、チャネルインプラを行わない部分のp型ベース層上にp型ベース層とショットキー接合するショットキーメタル(第3電極)を設けている。これにより、電子電流が到達する電極をショットキーメタルとすることができ、逆バイアス時のリーク電流を抑えて、耐圧を維持することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明にかかる炭化珪素半導体装置によれば、p型ベース層への到達電流を引き抜き、ドリフト層へのホール注入を抑えて、ホール密度を低減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図2】チャネルインプラを全面に行った従来の炭化珪素半導体装置の不純物プロファイルを示す断面図である。
【
図3】チャネルインプラを行わない従来の炭化珪素半導体装置の不純物プロファイルを示す断面図である。
【
図4】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の不純物プロファイルを示す断面図である。
【
図5】チャネルインプラを全面に行った従来の炭化珪素半導体装置の逆導通時の電子電流経路を示す断面図である。
【
図6】チャネルインプラを行わない従来の炭化珪素半導体装置の逆導通時の電子電流経路を示す断面図である。
【
図7】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の逆導通時の電子電流経路を示す断面図である。
【
図8】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置および従来の炭化珪素半導体装置のドリフト層のホール密度を示すグラフである。
【
図9】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の耐圧を示すグラフである。
【
図10】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その1)。
【
図11】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その2)。
【
図12】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その3)。
【
図13】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その4)。
【
図14】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その5)。
【
図15】実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である(その6)。
【
図16】実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図17】従来の炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる炭化珪素半導体装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、nまたはpを冠記した層や領域では、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、nやpに付す+および-は、それぞれそれが付されていない層や領域よりも高不純物濃度および低不純物濃度であることを意味する。なお、以下の実施の形態の説明および添付図面において、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本明細書では、ミラー指数の表記において、“-”はその直後の指数につくバーを意味しており、指数の前に“-”を付けることで負の指数をあらわしている。そして、同じまたは同等との記載は製造におけるばらつきを考慮して5%以内まで含むとするのがよい。
【0026】
(実施の形態1)
本発明にかかる半導体装置は、ワイドバンドギャップ半導体を用いて構成される。実施の形態1においては、ワイドバンドギャップ半導体として例えば炭化珪素(SiC)を用いて作製(製造)された炭化珪素半導体装置について、トレンチ型MOSFET70を例に説明する。
図1は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
図1では、トレンチ型MOSFET70の主電流が流れる活性領域のみを示している。
【0027】
図1に示すように、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置は、n
+型炭化珪素基板(第1導電型の炭化珪素半導体基板)1の第1主面(おもて面)、例えば(0001)面(Si面)に、n
-型炭化珪素エピタキシャル層(第1導電型の第1半導体層)2が堆積されている。
【0028】
n+型炭化珪素基板1は、炭化珪素単結晶基板である。n-型炭化珪素エピタキシャル層2は、n+型炭化珪素基板1よりも低い不純物濃度であり、例えば低濃度n型ドリフト層である。n-型炭化珪素エピタキシャル層2の、n+型炭化珪素基板1側に対して反対側の表面には、n型高濃度領域5が設けられていてもよい。n型高濃度領域5は、n+型炭化珪素基板1よりも低くn-型炭化珪素エピタキシャル層2よりも高い不純物濃度の高濃度n型ドリフト層である。
【0029】
n-型炭化珪素エピタキシャル層2の、n+型炭化珪素基板1側に対して反対側の表面には、p型ベース層(第2導電型の第2半導体層)6が設けられている。以下、n+型炭化珪素基板1とn-型炭化珪素エピタキシャル層2とn型高濃度領域5とp型ベース層6とを併せて炭化珪素半導体基体(炭化珪素からなる半導体基板)18とする。
【0030】
n+型炭化珪素基板1の第2主面(裏面、すなわち炭化珪素半導体基体18の裏面)には、裏面電極13となるドレイン電極が設けられている。裏面電極13の表面には、ドレイン電極パッド(不図示)が設けられている。
【0031】
炭化珪素半導体基体18の第1主面側(p型ベース層6側)には、トレンチ構造が形成されている。具体的には、トレンチ16は、p型ベース層6のn+型炭化珪素基板1側に対して反対側(炭化珪素半導体基体18の第1主面側)の表面からp型ベース層6を貫通してn型高濃度領域5(n型高濃度領域5を設けない場合にはn-型炭化珪素エピタキシャル層2、以下単に(2)と記載する)に達する。トレンチ16の内壁に沿って、トレンチ16の底部および側壁にゲート絶縁膜9が形成されており、トレンチ16内のゲート絶縁膜9の内側にゲート電極10が形成されている。ゲート絶縁膜9によりゲート電極10が、n型高濃度領域5(2)およびp型ベース層6と絶縁されている。ゲート電極10の一部は、トレンチ16の上方(後述するソース電極12が設けられている側)からソース電極12側に突出していてもよい。
【0032】
n型高濃度領域5(2)のn+型炭化珪素基板1側に対して反対側(炭化珪素半導体基体18の第1主面側)の表面層には、トレンチ16の間に、第1p+型ベース領域(第2導電型の第4半導体領域)3が設けられている。また、n型高濃度領域5(2)内に、トレンチ16の底部と接する第2p+型ベース領域(第2導電型の第5半導体領域)4が設けられている。第2p+型ベース領域4は、トレンチ16の底部と深さ方向(ソース電極12からドレイン電極13への方向)に対向する位置に設けられる。第2p+型ベース領域4の幅は、トレンチ16の幅と同じかそれよりも広い。トレンチ16の底部は、第2p+型ベース領域4に達してもよいし、p型ベース層6と第2p+型ベース領域4に挟まれたn型高濃度領域5(2)内に位置していてもよい。
【0033】
p型ベース層6の内部には、炭化珪素半導体基体18の第1主面側にn+型ソース領域(第1導電型の第1半導体領域)7とp+型コンタクト領域(第2導電型の第2半導体領域)8が選択的に設けられている。また、n+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8は互いに接する。
【0034】
ここで、閾値電圧(Vth)を調整するため、p型ベース層6のチャネルが形成される部分にイオン注入(以下、チャネルインプラと称する)を行っている。これにより、p型ベース層6よりも不純物濃度を高くしたチャネルインプラ部(第2導電型の第3半導体領域)20が形成される。
【0035】
実施の形態1では、MOSチャネルから離れた領域にチャネルインプラを行わず、MOSチャネル近傍の浅い領域のみにチャネルインプラを行っている。このため、チャネルインプラ部20は、チャネルが形成されるトレンチ16の側壁の近傍のみに形成されている。具体的には、チャネルインプラ部20は、トレンチ16の側壁と接し、n+型ソース領域7と深さ方向(ソース電極12から裏面電極13への方向)に対応する位置に設けられている。また、チャネルインプラ部20の幅w0は、n+型ソース領域7の幅w1よりも広く、n+型ソース領域7とp+型コンタクト領域8を合わせた幅w2よりも狭いことが好ましい。
【0036】
ここで、
図2は、チャネルインプラを全面に行った従来の炭化珪素半導体装置の不純物プロファイルを示す断面図である。
図3は、チャネルインプラを行わない従来の炭化珪素半導体装置の不純物プロファイルを示す断面図である。
図4は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の不純物プロファイルを示す断面図である。
【0037】
図2に示すように、チャネルインプラを全面に行った従来の炭化珪素半導体装置では、不純物濃度が高いチャネルインプラ部120が、n
+型ソース領域107とp
+型コンタクト領域108の下部に設けられている。
図3に示すように、チャネルインプラを行わない従来の炭化珪素半導体装置では、n
+型ソース領域107とp
+型コンタクト領域108の下部の不純物濃度がチャネルインプラを全面に行った従来の炭化珪素半導体装置より低くなっている。これに対して、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置では、不純物濃度が高いチャネルインプラ部20が、n
+型ソース領域7の下部のみに設けられ、p
+型コンタクト領域8の下部の不純物濃度がチャネルインプラを全面に行った従来の炭化珪素半導体装置より低くなっている。
【0038】
このように、チャネルインプラ部20をMOSチャネル近傍のみに設けることにより、MOSチャネルより離れた部分ではp型ベース層6の不純物濃度を下げて、電子電流が貫通しやすいようになっている。ドレイン電極にソース電極12よりも負電位が印加され、電流の向きが反対になる逆導通時には、p+型コンタクト領域8からp型ベース層6とn-型炭化珪素エピタキシャル層2とを経由してn+型炭化珪素基板1への方向に電流が流れる。この際、MOSチャネルより離れた部分でp型ベース層6の不純物濃度を下げているため、電子電流がp型ベース層6を貫通しやすくなり、p型ベース層6に到達電子を引き抜くことができる。
【0039】
図5は、チャネルインプラを全面に行った従来の炭化珪素半導体装置の逆導通時の電子電流経路を示す断面図である。
図6は、チャネルインプラを行わない従来の炭化珪素半導体装置の逆導通時の電子電流経路を示す断面図である。
図7は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の逆導通時の電子電流経路を示す断面図である。
【0040】
図5および
図6に示すように、従来の炭化珪素半導体装置では逆導通時に、最も電子密度が高い領域(
図5および
図6のハッチングが濃い領域)はp型ベース層106に達せず、電子電流がp型ベース層106を貫通しにくくなっていることがわかる。一方、
図7に示すように、最も電子密度が高い領域(
図7のハッチングが濃い領域)はp型ベース層6に達しており、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置では、電子電流がp型ベース層6を貫通しやすくなっていることがわかる。
【0041】
図8は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置および従来の炭化珪素半導体装置のドリフト層のホール密度を示すグラフである。
図8において、縦軸はホール密度を示し、単位は/cm
3である。横軸はドリフト層の表面(p型ベース層6、106との界面)からの深さを示し、単位はμmである。
図8では、点線は、チャネルインプラを全面に行った従来の炭化珪素半導体装置のドリフト層のホール密度を示し、細線は、チャネルインプラを行わない従来の炭化珪素半導体装置のドリフト層のホール密度を示し、太線は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置のドリフト層のホール密度を示す。
図8に示すように、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置では、チャネルインプラ20を部分的にすることにより、電子電流が縦方向に流れて、全電流に対する電子電流の割合が増え、同じ電流密度での蓄積ホール量を減らすことができる。
【0042】
このように、実施の形態1にかかる炭化珪素MOSFETではドリフト層へのホール注入を抑えて、ドリフト層中で電子およびホールの再結合の発生を減少させることができ、積層欠陥の拡張を抑制して、炭化珪素MOSFETのバイポーラ劣化を抑えることができる。
【0043】
また、実施の形態1では、チャネルインプラを行わない部分のp型ベース層6上にp型ベース層6とショットキー接合するショットキーメタル(第3電極)23を設けている。例えば、
図1に示すようにトレンチ16間のp
+型コンタクト領域8の間の領域に、ショットキーメタル23を設けることが好ましい。また、p
+型コンタクト領域8とn
+型ソース領域7とがトレンチ16の奥行き方向に交互に設けられる形態でも、p
+型コンタクト領域8の間の領域に、ショットキーメタル23を設けることが好ましい。ショットキーメタル23は、トレンチ16間のすべての領域に必要ではなく、少なくともトレンチ16間の一部の領域に設けられることが好ましい。
【0044】
図9は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の耐圧を示すグラフである。
図9において、縦軸はドレイン電流を示し、単位はAである。横軸はドレイン電圧を示し、単位はVである。
図9では、ショットキーメタル23のバリアハイトが3Vである場合(
図9の実線)と1Vである場合(
図9の点線)を示す。
図9に示すように、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の耐圧は1800V程度であることがわかる。このように、ショットキーメタル23を設けることで、電子電流が到達する電極をショットキーメタル23とすることができ、逆バイアス時のリーク電流を抑えて、耐圧を維持することができる。
【0045】
層間絶縁膜11は、炭化珪素半導体基体18の第1主面側の全面に、トレンチ16に埋め込まれたゲート電極10を覆うように設けられている。ソース電極12は、層間絶縁膜11に開口されたコンタクトホールを介して、n+型ソース領域7およびp型ベース層6に接する。また、p+型コンタクト領域8が設けられる場合、ソース電極12は、n+型ソース領域7、p型ベース層6およびp+型コンタクト領域8に接する。ソース電極12は、層間絶縁膜11によって、ゲート電極10と電気的に絶縁されている。ソース電極12上には、ソース電極パッド(不図示)が設けられている。ソース電極12と層間絶縁膜11との間に、例えばソース電極12からゲート電極10側への金属原子の拡散を防止するバリアメタル14が設けられていてもよい。
【0046】
(実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法)
次に、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法について説明する。
図10~
図15は、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造途中の状態を示す断面図である。
【0047】
まず、n型の炭化珪素でできたn
+型炭化珪素基板1を用意する。そして、このn
+型炭化珪素基板1の第1主面上に、n型の不純物、例えば窒素原子(N)をドーピングしながら炭化珪素でできた下部n
-型炭化珪素エピタキシャル層2aを、例えば30μm程度の厚さまでエピタキシャル成長させる。ここまでの状態が
図10に記載される。
【0048】
次に、フォトリソグラフィ技術によって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。そして、アルミニウム等のp型の不純物を、酸化膜の開口部に注入し、深さ0.5μm程度の下部第1p+型ベース領域3aおよび第2p+型ベース領域4を形成する。
【0049】
次に、イオン注入用マスクの一部を除去し、開口部に窒素等のn型の不純物をイオン注入し、下部n
-型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面領域の一部に、例えば深さ0.5μm程度の下部n型高濃度領域5aを形成してもよい。下部n型高濃度領域5aの不純物濃度を例えば1×10
17/cm
3程度に設定する。ここまでの状態が
図11に記載される。
【0050】
次に、下部n-型炭化珪素エピタキシャル層2aの表面上に、窒素等のn型の不純物をドーピングした上部n-型炭化珪素エピタキシャル層2bを、0.5μm程度の厚さで形成する。上部n-型炭化珪素エピタキシャル層2bの不純物濃度が3×1015/cm3程度となるように設定する。以降、下部n-型炭化珪素エピタキシャル層2aと上部n-型炭化珪素エピタキシャル層2bを合わせてn-型炭化珪素エピタキシャル層2となる。
【0051】
次に、上部n-型炭化珪素エピタキシャル層2bの表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。そして、アルミニウム等のp型の不純物を、酸化膜の開口部に注入し、深さ0.5μm程度の上部第1p+型ベース領域3bを、下部第1p+型ベース領域3aに重なるように形成する。下部第1p+型ベース領域3aと上部第1p+型ベース領域3bは連続した領域を形成し、第1p+型ベース領域3となる。上部第1p+型ベース領域3bの不純物濃度を例えば5×1018/cm3程度となるように設定する。
【0052】
次に、イオン注入用マスクの一部を除去し、開口部に窒素等のn型の不純物をイオン注入し、n
-型炭化珪素エピタキシャル層2の表面領域の一部に、例えば深さ0.5μm程度の上部n型高濃度領域5bを形成してもよい。上部n型高濃度領域5bの不純物濃度を例えば1×10
17/cm
3程度に設定する。この上部n型高濃度領域5bと下部n型高濃度領域5aは少なくとも一部が接するように形成され、n型高濃度領域5を形成する。ただし、このn型高濃度領域5が基板全面に形成される場合と、主電流が流れる活性領域に形成し該活性領域の外周に形成されない場合等がある。ここまでの状態が
図12に記載される。
【0053】
次に、n-型炭化珪素エピタキシャル層2の表面上に、エピタキシャル成長によりp型ベース層6を1.1μm程度の厚さで形成する。p型ベース層6の不純物濃度は5×1015/cm3~5×1016/cm3程度に設定する。
【0054】
次に、p型ベース層6の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスク21を例えば酸化膜で形成する。イオン注入用マスク21は、n
+型ソース領域7が形成される領域を開口部とする。このため、p
+型コンタクト領域8やショットキーメタル23が形成される領域上にイオン注入用マスク21を形成する。そして、アルミニウム等のp型の不純物を、イオン注入用マスク21の開口部に注入22し、チャネルインプラ部20をp型ベース層6の内部に形成する。これにより、チャネルインプラ部20をMOSチャネル近傍のみに設けることができる。チャネルインプラ部20の不純物濃度は1×10
17/cm
3程度に設定する。ここまでの状態が
図13に記載される。
【0055】
次に、炭化珪素半導体基体18の第1主面層(p型ベース層6の表面層)に、MOSゲートを構成する所定領域を形成する。具体的には、p型ベース層6の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するイオン注入用マスクを例えば酸化膜で形成する。この開口部に窒素(N)、リン(P)等のn型の不純物をイオン注入し、p型ベース層6の表面の一部にn+型ソース領域7を形成する。次に、n+型ソース領域7の形成に用いたイオン注入用マスクを除去し、同様の方法で、所定の開口部を有するイオン注入用マスクを形成し、p型ベース層6の表面の一部にホウ素等のp型の不純物をイオン注入し、p+型コンタクト領域8を形成してもよい。p+型コンタクト領域8の不純物濃度は、p型ベース層6の不純物濃度より高くなるように設定する。
【0056】
次に、イオン注入で形成した全領域を活性化するための熱処理(活性化アニール)を行う。例えば、1700℃程度の不活性ガス雰囲気で熱処理(アニール)を行い、第1p
+型ベース領域3、第2p
+型ベース領域4、n
+型ソース領域7、p
+型コンタクト領域8の活性化処理を実施する。なお、上述したように1回の熱処理によって各イオン注入領域をまとめて活性化させてもよいし、イオン注入を行うたびに熱処理を行って活性化させてもよい。ここまでの状態が
図14に記載される。
【0057】
次に、p型ベース層6の表面上に、フォトリソグラフィによって所定の開口部を有するトレンチ形成用マスクを例えば酸化膜で形成する。次に、ドライエッチングによってp型ベース層6を貫通し、n型高濃度領域5(2)に達するトレンチ16を形成する。トレンチ16の底部はn型高濃度領域5(2)に形成された第2p+型ベース領域4に達してもよい。次に、トレンチ形成用マスクを除去する。次に、炭化珪素半導体基体18のおもて面に例えばRCA洗浄(強酸および高塩基溶液を用いたウェット洗浄)を行う。
【0058】
次に、n+型ソース領域7の表面と、トレンチ16の底部および側壁に沿ってゲート絶縁膜9を形成する。まず、酸素雰囲気中において1000℃程度の温度の熱酸化または高温酸化(High Temperature Oxide:HTO)等のような化学反応(化学気相成長法)によってトレンチ内に酸化膜が堆積される。
【0059】
次に、トレンチの底部およびトレンチの開口部の角を丸めるための犠牲酸化を行ってもよい。次に、酸化膜に対して、アニール処理を行う。熱酸化によって形成した場合、熱処理(POA(Post Oxidation Anneal)処理)により、酸化膜と半導体部との界面の界面準位密度を低減させてもよい。HTOのような堆積法によって酸化膜を形成した場合は、電気的特性改善(移動度など)のため、一般的にHTO成膜後に、窒素(N
2)を含んだガス等でポストアニールすることが行われる。例えば、1300℃の温度、NO10%/N
2ガスで30分程度のNOアニールを行う。これにより、ゲート絶縁膜9が形成される。ここまでの状態が
図15に記載される。
【0060】
次に、ゲート絶縁膜9上に、例えばリン原子がドーピングされた多結晶シリコン層を設ける。この多結晶シリコン層はトレンチ16内を埋めるように形成してもよい。この多結晶シリコン層をフォトリソグラフィによりパターニングし、トレンチ16内部に残すことによって、ゲート電極10を形成する。
【0061】
次に、例えばスパッタリング等の物理気相成長法(PVD:Physical Vapor Deposition)により、炭化珪素半導体基体18のおもて面までの全面にチタン膜(不図示)を形成する。チタン膜の厚さは、例えば100nm程度であってもよい。
【0062】
次に、例えば500℃程度の温度で10分間程度の熱処理によりチタン膜をシンタリングする。この熱処理により、チタン膜とp型ベース層6とのショットキー接合が形成される。次に、フォトリソグラフィおよびエッチングにより当該チタン膜を選択的に除去して、ショットキーメタル23を形成する。ここで、ショットキーメタル23はSiCとショットキー接合する金属であればTi以外の金属でもよく、例えば、ニッケル(Ni)で形成することもできる。
【0063】
次に、ショットキーメタル23、ゲート絶縁膜9およびゲート電極10を覆うように、例えばリンガラスを1μm程度の厚さで成膜し、層間絶縁膜11を形成する。次に、層間絶縁膜11を覆うように、チタン(Ti)または窒化チタン(TiN)からなるバリアメタル14を形成してもよい。層間絶縁膜11およびゲート絶縁膜9をフォトリソグラフィによりパターニングしn+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8を露出させたコンタクトホールを形成する。その後、熱処理(リフロー)を行って層間絶縁膜11を平坦化する。
【0064】
次に、層間絶縁膜11を選択的に除去して炭化珪素半導体基体18の表面に、ニッケル(Ni)かTiの膜を成膜する。次に、表面を保護してn+型炭化珪素基板1の裏面側にNiかTiの膜を成膜する。次に1000℃程度の熱処理を行い炭化珪素半導体基体18の表面側とn+型炭化珪素基板1の裏面の表面側にオーミック電極を形成する。
【0065】
次に、上記コンタクトホール内に形成したオーミック電極部分に接触するように、および層間絶縁膜11上にソース電極12となる導電性の膜を設け、n+型ソース領域7およびp+型コンタクト領域8とソース電極12とを接触させる。
【0066】
次いで、n+型炭化珪素基板1の第2主面上に、例えばニッケル(Ni)膜でできた裏面電極13を形成する。その後、例えば970℃程度の温度で熱処理を行って、n+型炭化珪素基板1と裏面電極13とをオーミック接合する。
【0067】
次に、例えばスパッタ法によって、炭化珪素半導体基体18のおもて面のソース電極12上および層間絶縁膜11の開口部に、ソース電極パッド(不図示)となる電極パッドを堆積する。電極パッドの層間絶縁膜11上の部分の厚さは、例えば5μmであってもよい。電極パッドは、例えば、1%の割合でシリコンを含んだアルミニウム(Al-Si)で形成してもよい。次に、ソース電極パッドを選択的に除去する。
【0068】
次に、裏面電極13の表面に、ドレイン電極パッド(不図示)として例えばチタン(Ti)、ニッケル(Ni)および金(Au)をこの順に成膜する。以上のようにして、
図1に示す半導体装置が完成する。
【0069】
以上、説明したように、実施の形態1によれば、チャネルインプラ部は、チャネルが形成されるトレンチの側壁の近傍のみに形成されている。これにより、逆導通時では、電子電流がp型ベース層を貫通しやすくなり、p型ベース層に到達電子を引き抜くことができる。このため、全電流に対する電子電流の割合が増え、同じ電流密度での蓄積ホール量を減らすことができ、炭化珪素MOSFETのバイポーラ劣化を抑えることができる。
【0070】
また、チャネルインプラを行わない部分のp型ベース層上にp型ベース層とショットキー接合するショットキーメタルを設けている。これにより、電子電流が到達する電極をショットキーメタルとすることができ、逆バイアス時のリーク電流を抑えて、耐圧を維持することができる。
【0071】
(実施の形態2)
図16は、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置の構造を示す断面図である。
図16に示すように、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置では、ショットキーメタル23の深さ方向に対応する位置に、ショットキー部p
+型コンタクト領域8aおよびショットキー部第1p
+型ベース領域3cが設けられている点で実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置と異なる。
【0072】
ショットキー部p+型コンタクト領域8aは、p型ベース層6の表面層に設けられ、ショットキー部第1p+型ベース領域3cは、n型高濃度領域5(2)の内部に設けられている。ショットキー部p+型コンタクト領域8aおよびショットキー部第1p+型ベース領域3cを設けることにより、ショットキーメタル23の下部の領域でも、電界強度を下げることができ、トレンチ18の底面に沿った部分でゲート絶縁膜9に高電界が印加されることを防止することができる。
【0073】
また、ショットキーメタル23の幅d1が広いと、ショットキーメタル23の下部の領域で電界が高くなるため、幅d1が広い場合、ショットキー部第1p+型ベース領域3cとショットキー部p+型コンタクト領域8aを設けることが好ましい。例えば、ショットキーメタル23の幅d1が、第1p+型ベース領域3と第2p+型ベース領域4との間の距離d2より広いときに、ショットキー部第1p+型ベース領域3cとショットキー部p+型コンタクト領域8aを設けることが好ましい。
【0074】
また、実施の形態2にかかる炭化珪素半導体装置は、第1p+型ベース領域3およびp+型コンタクト領域8と同様の方法で、ショットキー部第1p+型ベース領域3cおよびショットキー部p+型コンタクト領域8aを形成することにより、実施の形態1にかかる炭化珪素半導体装置の製造方法と同様に製造することができる。
【0075】
以上、説明したように、実施の形態2によれば、ショットキーメタルの深さ方向に対応する位置に、ショットキー部p+型コンタクト領域およびショットキー部第1p+型ベース領域が設けられている。これにより、ショットキーメタルの下部の領域でも、電界強度を下げることができ、トレンチの底面に沿った部分でゲート絶縁膜に高電界が印加されることを防止することができる。
【0076】
以上において本発明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であり、上述した各実施の形態において、例えば各部の寸法や不純物濃度等は要求される仕様等に応じて種々設定される。また、各実施の形態では第1導電型をn型とし、第2導電型をp型としたが、本発明は第1導電型をp型とし、第2導電型をn型としても同様に成り立つ。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上のように、本発明にかかる炭化珪素半導体装置および炭化珪素半導体装置の製造方法は、インバータなどの電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置や自動車のイグナイタなどに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【符号の説明】
【0078】
1、101 n+型炭化珪素基板
2、102 n-型炭化珪素エピタキシャル層
2a 下部n-型炭化珪素エピタキシャル層
2b 上部n-型炭化珪素エピタキシャル層
3、103 第1p+型ベース領域
3a 下部第1p+型ベース領域
3b 上部第1p+型ベース領域
3c ショットキー部第1p+型ベース領域
4、104 第2p+型ベース領域
5、105 n型高濃度領域
5a 下部n型高濃度領域
5b 上部n型高濃度領域
6、106 p型ベース層
7、107 n+型ソース領域
8、108 p+型コンタクト領域
8a ショットキー部p+型コンタクト領域
9、109 ゲート絶縁膜
10、110 ゲート電極
11、111 層間絶縁膜
12、112 ソース電極
13、113 裏面電極
16、116 トレンチ
18、118 炭化珪素半導体基体
20、120 チャネルインプラ部
21 イオン注入用マスク
22 注入
23 ショットキーメタル
70、170 トレンチ型MOSFET