(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20250408BHJP
【FI】
B62D25/08 H
B62D25/08 F
B62D25/08 J
(21)【出願番号】P 2021039886
(22)【出願日】2021-03-12
【審査請求日】2024-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【氏名又は名称】鈴木 大介
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【氏名又は名称】飛田 高介
(72)【発明者】
【氏名】川合 大介
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-058758(JP,A)
【文献】特開2011-084093(JP,A)
【文献】実開昭61-179083(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2013/0341968(US,A1)
【文献】韓国公開特許第2003-0055491(KR,A)
【文献】特開2010-228501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室とパワーユニット搭載ルームとを区画するダッシュパネルと、
前記ダッシュパネルの上端に車幅方向にわたって接合されていてウィンドシールドガラスを支持するカウルトップパネルとを備え、
前記カウルトップパネルは、前記ダッシュパネルに到達する直前で上下方向に延びる縦壁部を有し、
前記カウルトップパネルの縦壁部は、車幅方向の中央
を頂点として車両後方に
凸の湾曲し
た湾曲面を形成し、車幅方向において前記縦壁部全体が一つの円弧を描く構造であることを特徴とする車両前部構造。
【請求項2】
前記カウルトップパネルはさらに、前記縦壁部の下端から車両後方に延びる第1フランジを有し、
前記ダッシュパネルの上端には、車両後方へ屈曲していて前記カウルトップパネルの第1フランジに下方から重なって接合される第2フランジが形成されていて、
前記第1フランジおよび前記第2フランジは、平面視で車幅方向の中央が車両後方に突出するように湾曲した円弧状になっていることを特徴とする請求項1に記載の車両前部構造。
【請求項3】
前記カウルトップパネルはさらに、前記縦壁部の上端から車両前方に延びる平面部であり、前記縦壁部の車幅方向の中央を含む車幅方向の所定の範囲にわたる平面部を有し、
前記平面部は、側方視で前記縦壁部および前記ダッシュパネルの第2フランジとともにコの字状の断面を形成していることを特徴とする請求項2に記載の車両前部構造。
【請求項4】
当該車両前部構造はさらに、
前記ダッシュパネルおよび前記カウルトップパネルの車両後方に配置され車幅方向に延びていて両端が車体側面に固定され各種部品を支持するステアリングサポートメンバと、
前記カウルトップパネルの縦壁部の車幅方向の中央と前記ステアリングサポートメンバとの間に差し渡された車両前後方向に延びる補強部材とを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両は、カウルトップパネルを有する車両前部構造を備える。カウルトップパネルは、例えばダッシュパネルや適宜の補強部材とともに車幅方向にわたる閉断面構造を形成し、この閉断面構造によりウィンドシールドガラスを支持する。
【0003】
特許文献1には、カウル構造10が記載されている。カウル構造10は、カウルブレース13を備え、カウルトップアウタ11、カウルトップインナ12およびカウルブレース13によって車両側面視で閉じた断面構造としての閉断面部21を形成している。これにより、カウル構造10は、フロントウインドシールドガラス3の支持剛性が強くなる。
【0004】
このため特許文献1では、カウル構造10は、閉断面部を持たないカウル構造に比べて、フロントウインドシールドガラス3の車両上下方向に生じる振動を抑制することができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここでカウルトップパネルは、ダッシュパネルの例えば上端に車幅方向にわたって接合されている。ダッシュパネルは、車室とパワーユニット搭載ルームとを区画する部材であり、車両上下方向に延びる面を有する。このため、ダッシュパネルは、走行時などに車両前後方向に振動する場合がある。
【0007】
ダッシュパネルが車両前後方向に振動すると、ダッシュパネルに接合されたカウルトップパネルは、車両前後方向だけでなく車両上下方向にも振動する。ウィンドシールドガラスは、カウルトップパネルに支持されているため、カウルトップパネルの車両上下方向の振動が伝達される。その結果、ウィンドシールドガラスは、面直方向に振動して、室内にこもり音を発生させてしまう。
【0008】
特許文献1のカウル構造10では、フロントウインドシールドガラス3の振動を抑制するために、カウルトップアウタ11とカウルトップインナ12をつなぐカウルブレース13を設けている。このため、カウル構造10では、フロントウインドシールドガラス3の支持剛性を高めることができるものの、カウルブレース13により部品が増えてしまい、重量増加を招いてしまう。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、重量増加を抑えつつ、ウィンドシールドガラスの振動を抑制して、車室内にこもり音が発生することを防止することができる車両前部構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の代表的な構成は、車室とパワーユニット搭載ルームとを区画するダッシュパネルと、ダッシュパネルの上端に車幅方向にわたって接合されていてウィンドシールドガラスを支持するカウルトップパネルとを備え、カウルトップパネルは、ダッシュパネルに到達する直前で上下方向に延びる縦壁部を有し、カウルトップパネルの縦壁部は、車幅方向の中央が車両後方に最も突出するように湾曲していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、重量増加を抑えつつ、ウィンドシールドガラスの振動を抑制して、車室内にこもり音が発生することを防止することができる車両前部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係る車両前部構造を示す斜視図である。
【
図4】
図1の車両前部構造を斜め下方から見た状態を示す図である。
【
図5】
図3の車両前部構造の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態の代表的な構成は、車室とパワーユニット搭載ルームとを区画するダッシュパネルと、ダッシュパネルの上端に車幅方向にわたって接合されていてウィンドシールドガラスを支持するカウルトップパネルとを備え、カウルトップパネルは、ダッシュパネルに到達する直前で上下方向に延びる縦壁部を有し、カウルトップパネルの縦壁部は、車幅方向の中央が車両後方に最も突出するように湾曲していることを特徴とする。
【0014】
ここでダッシュパネルは、車両上下方向に延びる面を有するため、走行時などに車両前後方向に振動する場合がある。カウルトップパネルは、ダッシュパネルの上端に接合されているため、ダッシュパネルの車両前後方向の振動に伴って、車両前後方向だけでなく車両上下方向に振動する。また、ウィンドシールドガラスは、カウルトップパネルに支持されている。このため、ウィンドシールドガラスには、カウルトップパネルの車両上下方向の振動が伝達される。その結果、ウィンドシールドガラスは、面直方向に振動して、車室内にこもり音を発生させる場合がある。
【0015】
そこで本発明では、カウルトップパネルの縦壁部を車幅方向の中央が車両後方に最も突出するように湾曲させている。このため、カウルトップパネルは、湾曲した縦壁部によって車両前後方向に変形し難くなり、車両前後方向および車両上下方向の振動を抑制することができる。そして上記構成では、カウルトップパネルがダッシュパネルの上端に接合されているため、カウルトップパネルの振動を抑制することで、ダッシュパネルの車両前後方向の振動も抑制できる。
【0016】
このように本発明では、カウルトップパネルの縦壁部を湾曲させるという形状の工夫によって、他の部材を追加することなく、重量増加を抑えながら、カウルトップパネルおよびダッシュパネルの振動を抑制することができる。したがって上記構成によれば、重量増加を抑えつつ、ウィンドシールドガラスの振動を抑制して、車室内にこもり音が発生することを防止することができる。
【0017】
なお本発明では、他の部材を追加することなく、カウルトップパネルの車両前後方向の変形を抑制するため、例えば歩行者がウィンドシールドガラスに車両前方から接触した場合に、カウルトップパネルの変形が他の部材によって阻害されることがない。このため上記構成では、カウルトップパネルが歩行者の衝突時に変形して衝撃吸収を行うため、歩行者保護性能を損なうこともない。
【0018】
上記のカウルトップパネルはさらに、縦壁部の下端から車両後方に延びる第1フランジを有し、ダッシュパネルの上端には、車両後方へ屈曲していてカウルトップパネルの第1フランジに下方から重なって接合される第2フランジが形成されていて、第1フランジおよび第2フランジは、平面視で車幅方向の中央が車両後方に突出するように湾曲した円弧状になっている。
【0019】
上記構成によれば、カウルトップパネルの第1フランジおよびこれに接合するダッシュパネルの第2フランジを、車幅方向の中央が車両後方に突出するように湾曲した円弧状に形成している。このため、カウルトップパネルの第1フランジおよびダッシュパネルの第2フランジを、単に車両前後方向に延びる平面状に形成する場合に比べて、カウルトップパネルの縦壁部およびダッシュパネルが車両前後方向により変形し難くなる。したがって、カウルトップパネルおよびダッシュパネルの車両前後方向の振動をより抑制することができる。
【0020】
上記のカウルトップパネルはさらに、縦壁部の上端から車両前方に延びる平面部であり、縦壁部の車幅方向の中央を含む車幅方向の所定の範囲にわたる平面部を有し、平面部は、側方視で縦壁部およびダッシュパネルの第2フランジとともにコの字状の断面を形成している。
【0021】
このように、カウルトップパネルの平面部および縦壁部とダッシュパネルの第2フランジとよってコの字状の断面を形成したので、カウルトップパネルがより変形し難くなり、振動の発生を抑制することができる。
【0022】
上記の車両前部構造はさらに、ダッシュパネルおよびカウルトップパネルの車両後方に配置され車幅方向に延びていて両端が車体側面に固定され各種部品を支持するステアリングサポートメンバと、カウルトップパネルの縦壁部の車幅方向の中央とステアリングサポートメンバとの間に差し渡された車両前後方向に延びる補強部材とを備える。
【0023】
上記構成によれば、カウルトップパネルの湾曲した縦壁部のうち最も車両後方に突出した車幅方向の中央とステアリングサポートメンバとの間を、補強部材によってつないでいる。このため、剛性の高いステアリングサポートメンバによって、カウルトップパネルの縦壁部の車幅方向の中央を支持することになり、カウルトップパネルの変形を確実に抑制して、振動の発生を防止することができる。
【実施例】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例について詳細に説明する。かかる実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0025】
図1は、本発明の実施例に係る車両前部構造100を示す斜視図である。
図2は、
図1の車両前部構造100のA-A断面図である。以下各図において、車両前後方向をそれぞれ矢印Front、Back、車幅方向の左右をそれぞれ矢印Left、Right、車両上下方向をそれぞれ矢印Up、Downで例示する。
【0026】
車両前部構造100は、
図1に示すようにダッシュパネル102とカウルトップパネル104とを備える。ダッシュパネル102は、
図2に示すように車室105とパワーユニット搭載ルーム106とを区画する部材であり、車両上下方向に延びる面を有する。カウルトップパネル104は、ダッシュパネル102の上方で車幅方向にわたって延びていて、
図2に一点鎖線で示すウィンドシールドガラス108を支持する。
【0027】
車両前部構造100はさらに、ダッシュサイドパネル109、110と、剛性の高いステアリングサポートメンバ112と、
図2に示すカウルフロントパネル114とを備える。ダッシュサイドパネル109、110は、
図1に示すようにダッシュパネル102を相互間で支持する一対の部材であり、ダッシュパネル102の車幅方向の両端に取付けられている。
【0028】
ステアリングサポートメンバ112は、ダッシュパネル102およびカウルトップパネル104の車両後方に配置され車幅方向に延びていて、その両端が車体側面のダッシュサイドパネル109、110に固定され各種部品を支持する。なお各種部品は、例えば、インストルメントパネルに付属するメーター類、オーディオ類などのインパネを構成するインパネ支持部品や、ステアリングホイールやステアリングシャフト、ステアリングコラムなどのステアリング部品である。
【0029】
またステアリングサポートメンバ112には、車体の運転席側に位置する、補強部品としてのリンフォース116およびブレース118が取り付けられている。リンフォース116は、
図1に示すようにステアリングサポートメンバ112からカウルトップパネル104まで直線状に延びている。ブレース118は、不図示のフロアパネルから直線状に延びていて、ステアリングサポートメンバ112に接続されている。なおダッシュパネル104には、各種ペダルを取り付けるためのリンフォース120が接合されている。
【0030】
カウルフロントパネル114は、
図2に示すようにカウルトップパネル104の下方で車両前後方向に延びていて、ダッシュパネル102およびカウルトップパネル104に接合されている。
【0031】
またカウルトップパネル104は、
図2に示すように縦壁部122と、第1フランジ124と、平面部126とを有する。カウルトップパネル104はさらに、ウィンドシールドガラス108に沿って傾斜した傾斜部128と、上方に突出した頂部130とを有する。カウルトップパネル104は、全体として頂部130から車両後方に向かうほどダッシュパネル102に近づくように傾斜している。
【0032】
縦壁部122は、
図2に示すようにダッシュパネル102に到達する直前で上下方向に延びている。縦壁部122は、
図1の点線Bで囲まれた部位であり、ダッシュパネル102の上方で車幅方向にわたって延び、その両端にはダッシュサイドパネル109、110が位置している。第1フランジ124は、
図2に示す縦壁部122の下端132から車両後方に延び、さらに
図1に示すように車幅方向にわたって延びている。
【0033】
カウルトップパネル104の平面部126は、
図1の点線Cで囲まれた部位であり、縦壁部122の上端134から車両前方に延びていて、さらに縦壁部122の車幅方向の中央136を含む車幅方向の所定の範囲にわたっている。
【0034】
ダッシュパネル102の上端には、
図2に示す車両後方へ屈曲している第2フランジ138が形成されている。またカウルフロントパネル114は、車両後方に延びる第3フランジ140を有する。
【0035】
ダッシュパネル102の第2フランジ138は、
図2に示すように縦壁部122よりも車両前側の位置で、カウルフロントパネル114の第3フランジ140に下方から重なって接合している。また第2フランジ138は、縦壁部122よりも車両後側の位置で、第3フランジ140に下方から重なって接合し、さらに第3フランジ140を介して、カウルトップパネル104の第1フランジ124に下方から重なってこれに間接的に接合している。
【0036】
ここでダッシュパネル102は、車両上下方向に延びる面を有するため、走行時などに車両前後方向に振動する場合がある。またカウルトップパネル104は、ウィンドシールドガラス108を支持していて、全体として車両前後方向に延びて、さらにダッシュパネル102の上端に形成された第2フランジ138に接合されている。
【0037】
このため、仮に、カウルトップパネル104がダッシュパネル102の車両前後方向の振動に伴って、車両前後方向だけでなく車両上下方向に振動すると、ウィンドシールドガラス108には、カウルトップパネル104の車両上下方向の振動が伝達される。このような場合には、ウィンドシールドガラス108は、面直方向に振動して、車室105内にこもり音を発生させてしまう。
【0038】
そこで車両前部構造100では、カウルトップパネル104の形状を工夫することで、他の部材を追加することなく、重量増加を抑えながら、カウルトップパネル104およびダッシュパネル102の振動を抑制することができる構成を採用した。
【0039】
図3は、
図1の車両前部構造100の上面図である。
図4は、
図1の車両前部構造100を斜め下方から見た状態を示す図である。車両前部構造100では、
図3に示すようにカウルトップパネル104の縦壁部122を、車幅方向の中央136が車両後方に最も突出するように湾曲した形状としている。
【0040】
また、
図3に示すカウルトップパネル104のうち、傾斜部128および頂部130を含む前端部142は、その車幅方向の中央144が車両前方に最も突出するように湾曲している。さらにカウルトップパネル104では、湾曲した縦壁部122の曲率が湾曲した前端部142の曲率よりも小さくなっていて、縦壁部122が前端部142よりも緩やかに湾曲している。このため、カウルトップパネル104は、
図3に示す上面視で前後非対称な楕円形状を形成している。
【0041】
またカウルトップパネル104では、湾曲した縦壁部122の下端132(
図2参照)から車両後方に延びる第1フランジ124が、
図3に示すように車幅方向の中央146が車両後方に突出するように湾曲した円弧状になっている。ダッシュパネル102では、その上端に形成された第2フランジ138が
図4に示すように車幅方向の中央148が車両後方に突出するように湾曲した円弧状になっている。
【0042】
さらにカウルトップパネル104では、
図2に示すように平面部126が、側方視で縦壁部122およびダッシュパネル102の第2フランジ138とともにコの字状の断面を形成している。なおカウルトップパネル104は、縦壁部122と平面部126により
図2に示す側方視でL字状の断面を形成している。
【0043】
車両前部構造100では、
図3に示すようにカウルトップパネル104の縦壁部122を車幅方向の中央136が車両後方に最も突出するように湾曲させている。このため、カウルトップパネル104は、湾曲した縦壁部122によって車両前後方向に変形し難くなり、車両前後方向および車両上下方向の振動を抑制することができる。
【0044】
そして車両前部構造100では、
図2に示すようにカウルトップパネル104の第1フランジ124がダッシュパネル102の上端に形成された第2フランジ138に接合されている。そのため、カウルトップパネル104の振動を抑制することで、ダッシュパネル102の車両前後方向の振動も抑制できる。
【0045】
このように車両前部構造100では、カウルトップパネル104の縦壁部122を湾曲させるという形状の工夫によって、他の部材を追加することなく、重量増加を抑えながら、カウルトップパネル104およびダッシュパネル102の振動を抑制することができる。したがって車両前部構造100によれば、重量増加を抑えつつ、ウィンドシールドガラス108の振動を抑制して、車室内にこもり音が発生することを防止することができる。
【0046】
また車両前部構造100では、他の部材を追加することなく、カウルトップパネル104の車両前後方向の変形を抑制する。これにより、例えば歩行者がウィンドシールドガラス108に車両前方から接触した場合に、カウルトップパネル104の変形が他の部材によって阻害されることがない。このため車両前部構造100では、カウルトップパネル104が歩行者の衝突時に変形して衝撃吸収を行うため、歩行者保護性能を損なうこともない。
【0047】
また車両前部構造100では、
図3および
図4に示すように、カウルトップパネル104の第1フランジ124およびこれに接合するダッシュパネル102の第2フランジ138をそれぞれ、車幅方向の中央146、148が車両後方に突出するように湾曲した円弧状に形成している。
【0048】
このため、カウルトップパネル104の第1フランジ124およびダッシュパネル102の第2フランジ138を、単に車両前後方向に延びる平面状に形成する場合に比べて、カウルトップパネル104の縦壁部122およびダッシュパネル102が車両前後方向により変形し難くなる。したがって車両前部構造100では、カウルトップパネル104およびダッシュパネル102の車両前後方向の振動をより抑制することができる。
【0049】
さらに車両前部構造100では、
図2に示すように側面視でカウルトップパネル104の平面部126および縦壁部122とダッシュパネル102の第2フランジ138とよってコの字状の断面を形成した。そのため、カウルトップパネル104がより変形し難くなり、振動の発生を抑制することができる。
【0050】
図5は、
図3の車両前部構造100の変形例を示す図である。
図6は、
図5の車両前部構造100AのD-D断面図である。変形例の車両前部構造100Aは、補強部材150を備える点で、上記の車両前部構造100と異なる。
【0051】
補強部材150は、
図5に示すように車両前後方向に延びる部材であって、その前端152がカウルトップパネル104の縦壁部122の車幅方向の中央136に接合され(
図6参照)、その後端154がステアリングサポートメンバ112に接合されている。
【0052】
つまり補強部材150は、カウルトップパネル104の湾曲した縦壁部122のうち最も車両後方に突出した車幅方向の中央136とステアリングサポートメンバ112との間に差し渡され、カウルトップパネル104とステアリングサポートメンバ112をつないでいる。
【0053】
このため車両前部構造100Aでは、剛性の高いステアリングサポートメンバ112によって、カウルトップパネル104の縦壁部122の車幅方向の中央136を支持することになり、カウルトップパネル104の変形を確実に抑制して、振動の発生を防止することができる。したがって車両前部構造100Aによれば、重量増加を抑えつつ、ウィンドシールドガラス108の振動を抑制して、車室内にこもり音が発生することを防止することができる。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、車両前部構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0056】
100、100A…車両前部構造、102…ダッシュパネル、104…カウルトップパネル、105…車室、106…パワーユニット搭載ルーム、108…ウィンドシールドガラス、109、110…ダッシュサイドパネル、112…ステアリングサポートメンバ、114…カウルフロントパネル、116、120…リンフォース、118…ブレース、122…縦壁部、124…第1フランジ、126…平面部、128…傾斜部、130…頂部、132…縦壁部の下端、134…縦壁部の上端、136…縦壁部の車幅方向の中央、138…第2フランジ、140…第3フランジ、142…カウルトップパネルの前端部、144…前端部の車幅方向の中央、146…第1フランジの車幅方向の中央、148…第2フランジの車幅方向の中央、150…補強部材、152…補強部材の前端、154…補強部材の後端