(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/532 20060101AFI20250408BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20250408BHJP
A61F 13/494 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
A61F13/532 200
A61F13/49 311Z
A61F13/49 312Z
A61F13/49 315Z
A61F13/494 111
(21)【出願番号】P 2021067734
(22)【出願日】2021-04-13
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英聡
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2021/0000660(US,A1)
【文献】特開2013-52161(JP,A)
【文献】特開2006-136702(JP,A)
【文献】特開2018-458(JP,A)
【文献】特開2016-120018(JP,A)
【文献】特開2011-156032(JP,A)
【文献】特開2014-14667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者に装着された場合に前記着用者の腹部、股下部および背部を覆う吸収性物品であって、
長手方向に延在する一対の溝を有する吸収体と、
前記吸収体の幅方向左右に配置され、幅方向外側の一端を前記吸収体と接着して接着面を形成し、該接着面の幅方向内側端部に形成される線である起立線の先の他端を自由端とし、該自由端を弾性部材により着用者の肌面に密着するよう付勢した立体ギャザーと、
を、備え、
前記一対の溝の背部側にある端部のうち少なくともその一部が、前記立体ギャザーの起立線と交差する方向を向いて
おり、
前記一対の溝の前記端部の間に前記幅方向に収縮する伸縮性部材が配置されている、
吸収性物品。
【請求項2】
前記一対の溝の腹部側にある端部のうち少なくともその一部が、前記立体ギャザーの起立線と交差する方向を向いている、
請求項1記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記一対の溝の端部は略扇状であり、
前記端部の略扇状の円弧部は、前記一対の溝の延在方向から、前記立体ギャザーの起立線と交差する方向に形成されている、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記一対の溝は、
前記長手方向の端部が前記幅方向外側を向くように屈曲しており、
前記一対の溝の端部の延在方向は、前記立体ギャザーの起立線と交差する方向である、
請求項1~3のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記端部の幅は、前記股下部に対応する位置における前記一対の溝の幅よりも広い、
請求項
3に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記端部の深さは、前記股下部に対応する位置から前記背部に対応する位置に向かうに
つれて漸次浅くなる、
請求項3~5のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記一対の溝は、溝の底面と、幅方向中心に向けて立ち上がる傾斜線と、幅方向左右端に向けて立ち上がる傾斜線と、を備え、
前記幅方向左右端に向けて立ち上がる傾斜線は、前記幅方向中心に向けて立ち上がる傾斜線よりも傾斜が小さい、
請求項1~6のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記一対の溝の長手方向の、少なくとも何れか一方の端部の幅方向に延在し、該幅方向に伸長された状態で設けられ、収縮により前記端部の幅方向の側部を前記端部の幅が広がる方向に伸縮可能な、第1の伸縮性部材と、を備える、
請求項1~7のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収性物品が前記着用者に装着された場合の前記吸収体の背側端部から長手先端方向に所定の間隔を空けて設けられ、幅方向に伸縮可能な第2の伸縮性部材をさらに備え、
前記一対の溝の間隔は、前記第2の伸縮性部材の収縮によって前記端部が幅方向に所定長以上収縮されることが抑制される間隔である、
請求項8に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ、尿パッド、生理用品等の吸収性物品が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザに装着された状態でユーザの腹部から股下部を通って背部へ向かう方向に延びる溝が、吸収性物品の吸収体に配置されることが考えられる。このような構造の場合、ユーザから排泄された尿が溝を通過することで、尿が吸収体表面の全体にわたって拡散すると考えられる。よって、ユーザから排泄された尿の吸収効率は向上することが想定される。しかしながら、このような構造では例えば溝の背側の端部を通過した尿がトップシート上に染み出ることが想定される。よって、背漏れが発生する可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、ユーザに装着された吸収性物品の吸収体が、ユーザの腹側から背部側へ向かう方向に延びる溝を備える場合に、溝の長手方向の端部を通過する尿の速度を抑制する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明では、溝の長手方向の端部の形態を工夫し、溝を通過する尿が、吸収性物品の幅方向にも流れるようにした。
【0007】
詳細には、本発明は、着用者に装着された場合に前記着用者の腹部、股下部および背部を覆う吸収性物品であって、長手方向に延在する一対の溝を有する吸収体と、前記吸収体の幅方向両外側に配置され、幅方向外側の一端を前記吸収体と接着して接着面を形成し、該接着面の幅方向内側端部に形成される線である起立線の先の他端を自由端とし、該自由端を弾性部材により着用者の肌面に密着するよう付勢した立体ギャザーと、を、備え、前記一対の溝の背部側にある端部のうち少なくともその一部が、前記立体ギャザーの起立線と交差する方向を向いている、吸収性物品である。
【0008】
前記一対の溝の腹部側にある端部のうち少なくともその一部が、前記立体ギャザーの起立線と交差する方向を向いていてよい。
【0009】
前記一対の溝の端部は略扇状であり、前記端部の略扇状の円弧部は、前記一対の溝の延在方向から、前記立体ギャザーの起立線と交差する方向に形成されていてよい。
【0010】
前記一対の溝は、前記股下部に対応する位置から端部に向かうにつれて幅方向に屈曲しており、前記一対の溝の端部の延在方向は、前記立体ギャザーの起立線と交差する方向であってよい。
【0011】
前記端部の幅は、前記股下部に対応する位置における前記一対の溝の幅よりも広くてよ
い。
【0012】
前記端部の深さは、前記股下部に対応する位置から前記背部に対応する位置に向かうにつれて漸次浅くなってよい。
【0013】
前記一対の溝は、溝の底面と、幅方向中心に向けて立ち上がる傾斜線と、幅方向左右端に向けて立ち上がる傾斜線と、を備え、前記幅方向左右端に向けて立ち上がる傾斜線は、前記幅方向中心に向けて立ち上がる傾斜線よりも傾斜が小さくてよい。
【0014】
前記一対の溝の長手方向の、少なくとも何れか一方の端部の幅方向に延在し、該幅方向に伸長された状態で設けられ、収縮により前記端部の幅方向の側部を前記端部の幅が広がる方向に伸縮可能な、第1の伸縮性部材と、を備えていてよい。
【0015】
前記吸収性物品が前記着用者に装着された場合の前記吸収体の背側端部から長手先端方向に所定の間隔を空けて設けられ、幅方向に伸縮可能な第2の伸縮性部材をさらに備え、前記一対の溝の間隔は、前記第2の伸縮性部材の収縮によって前記端部が幅方向に所定長以上収縮されることが抑制される間隔であってよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ユーザに装着された吸収性物品の吸収体が、ユーザの腹側から背部側へ向かう方向に延びる溝を備える場合に、ユーザの腹側から背部側へ向かう方向に延びる溝を備える場合に、溝の長手方向端部を通過する尿の流動速度を減らし、流動方向を変えることができるので、背漏れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、実施形態に係るおむつの外観斜視図である。
【
図3】
図3は、吸収体にスリットを形成する概要を例示する。
【
図4】
図4は、第1変形例に係るおむつの展開図の一例である。
【
図5】
図5は、第2変形例に係るおむつの展開図の一例である。
【
図6】
図6は、第3変形例に係るおむつの展開図の一例である。
【
図7】
図7は、おむつの幅方向断面図の第1例である。
【
図8】
図8は、おむつの幅方向断面図の第2例である。
【
図9】
図9は、第4変形例に係るおむつの展開図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0019】
<実施形態>
本実施形態では、パンツ型使い捨ておむつ(本願でいう「吸収性物品」の一例であり、以下、単に「おむつ」という)について、ユーザの腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、ユーザの股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、紙おむつがユーザに装着された状態(以下「装着状態」と略称する)において、ユーザの肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0020】
図1は、本実施形態に係るおむつの外観斜視図である。おむつ1は、装着状態においてユーザの陰部を覆う股下領域に対応する部位である股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位置し、ユーザの前身頃に対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後ろ側に位置し、ユーザの後身頃に対応する部位である後身頃領域1Rと、を有する。
【0021】
おむつ1では、肌面側からトップシート、吸収体、バックシート、およびカバーシート4の順に積層されている(
図1ではカバーシート4のみを図示)。トップシートは、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が装着された状態において、ユーザから排泄された液体はユーザの肌に接触し得るトップシートを透過する。そしてトップシートよりも非肌面側に配置される吸収体に吸収される。トップシートの材料としては、例えば、織布、不織布、多孔質フィルムが使用できる。また、トップシートは親水性を有していてもよい。
【0022】
吸収体は、液体を吸収して保持することができる吸収体が前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにかけて股下領域1B付近を中心として配置される(詳細は後述する)。吸収体は、例えばパルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂が保持されている。なお、吸収体は液透過性のコアラップシートで包まれ、構造を保持できるようにしてあってもよい。
【0023】
カバーシート4は、例えば排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。カバーシート4は、単層構造に限らず、インナカバーシートおよびアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。
【0024】
バックシートは、カバーシート4と同様に、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。バックシートは、着用状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。
【0025】
また、おむつ1には、おむつ1とユーザの肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、ユーザの腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3(本開示の「第2の伸縮性部材」の一例)が設けられている。また、おむつ1には、同様の目的でユーザの大腿部を取り巻く部位に立体ギャザー3BL,3BRが設けられる。立体ギャザー3BL,3BRとウェストギャザー3は、糸ゴムの弾性力でユーザの肌に密着する。よって、ユーザの陰部から排出される液体は、おむつ1から殆ど漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。また、おむつ1は、ユーザの腹囲と大腿部を取り巻く状態でユーザの身体に固定される。おむつ1がこのような形態でユーザの身体に固定されるので、ユーザはおむつ1を着用した状態で立ち歩き可能である。
【0026】
また、おむつ1には、後身頃領域1Rのウェストギャザー3よりも股下側にタミーギャザー2(本開示の「第1の伸縮性部材」の一例)が設けられる。タミーギャザー2は、おむつ1の外装体であるカバーシート4に、伸長された状態の糸ゴムが幅方向に貼り付けられることで、伸縮可能に形成される。
【0027】
なお、
図1に示されるおむつ1は、前身頃領域1F、股下領域1B、および後身頃領域1Rが夫々別体に形成され、これら3つの領域が長手方向に並べられて互いに溶着されて
いる。なお、おむつ1は、前身頃領域1F、股下領域1B、および後身頃領域1Rが一体に形成されてもよい。
【0028】
図2は、おむつ1を非肌面側から見た場合の展開図の一例である。なお、
図2では、カバーシート4およびバックシート5の記載を省略している。
【0029】
図2に示されるように、吸収体6は長手方向において複数に分割されている。そして、夫々の吸収体6には、スリット8(本開示の「溝」の一例)が設けられている。スリット8は、吸収体6を厚み方向に貫通する。スリット8は、ユーザに装着された場合にユーザの股下領域1Bから後身頃領域1Rにわたって位置するように、長手方向に例えば2本並んで設けられる。なお、スリット8の数は1本であっても3本以上であってもよい。また、夫々のスリット8の長手方向における中央部の幅は一様である。よって、尿はスリット8を通過して吸収体6に一様に広がる。
【0030】
また、2本のスリット8の後身頃領域1R側の端部81(本開示の「第1端部」の一例)の夫々は、長手方向において略同一の場所に配置される。また、タミーギャザー2の幅方向の内側の端部(本開示の「第2端部」の一例)は、このような端部81と、前身頃領域1F側のスリット8の端部82との幅方向の外側に配置される。また、タミーギャザー2を形成する糸ゴム22の一部は、吸収体6に溶着されている。なお、糸ゴム22の一部は、吸収体6が貼り付けられるバックシート5(後述する)に溶着されてもよい。
【0031】
なお、本実施形態においては、主としてウエスト第1領域RW1に形成される第1収縮部S1とウエスト第2領域RW2に形成される第2収縮部S2によって、伸縮可能なウェストギャザー3が形成されている。ウェストギャザー3は、第1糸ゴム4F1,4R1及び第2糸ゴム4F2,4R2の収縮力によって、着用者のウエスト回りにおけるおむつ1のフィット性を向上させる。ウェストギャザー3の第1収縮部S1には、複数の第1糸ゴム4F1,4R1が互いに平行に、且つ一定間隔A1で配置されている。また、ウェストギャザー3の第2収縮部S2には、複数の第2糸ゴム4F2,4R2が互いに平行且つ一定の間隔A2を空けて設けられている。なお、ここでいう糸ゴム同士の間隔とは、隣の糸ゴム同士がおむつ1の長手方向に離間する寸法を意味する。
【0032】
また、本実施形態において、ウエスト第1領域RW1の第1糸ゴム4F1,4R1及びウエスト第2領域RW2の第2糸ゴム4F2,4R2は、カバーシート4の全幅区間に亘って延在している。そのため、おむつ1の完成後において、第1糸ゴム4F1,4R1及び第2糸ゴム4F2,4R2は、胴開口部に沿って周回する実質的に環状の伸縮部材を形成する。言い換えると、おむつ1の完成後において、ウェストギャザー3(第1収縮部S1、第2収縮部S2)が胴回り方向の全周に亘って形成される。
【0033】
また、タミーギャザー2に配置される糸ゴム22は、互いに平行に、且つ一定の間隔A3を空けて設けられている。そして、本実施形態では、タミーギャザー2の糸ゴム22の間隔A3が、ウェストギャザー3の第2収縮部S2における第2糸ゴム4F2,4R2の間隔A2よりも大きな寸法に設定されており、これにより、胴開口部を広げておむつ1を装着する際、着用者の腰骨に当接する部位となるタミーギャザー2を、ウェストギャザー3よりも相対的に広げやすくしている。
【0034】
また、後身頃領域1R側の吸収体6は、ウェストギャザー3の長手方向の端部と重なるように配置されている。また、スリット8は、後身頃領域1Rのウェストギャザー3の長手方向の端部から、例えば130mm程度(一番距離の短いMサイズ)(本開示の「所定の間隔」の一例)離れて配置される。なお、このようなウェストギャザー3の下端とスリット8の端部81との間の領域83の吸収体6の坪量は、約180g/m2である(一番
坪量の低いMサイズのパルプ坪量)。また、ウェストギャザー3は、ユーザにおむつ1が装着された場合に例えば約44cm拡幅し、その収縮力は約2.4Nとなる(特開2020-195550号広報の実施例4のMサイズ)。なお、領域83の長手方向の長さは130mm以上であってもよく、領域83の吸収体6の坪量は、約180g/m2以上であってもよい。
【0035】
また、前身頃領域1F側の吸収体6は、ウェストギャザー3と重なる。そして、スリット8の端部82は、ウェストギャザー3の長手方向の端部の近傍にまで延在している。
【0036】
図3は、吸収体6にスリット8を形成する概要を例示する。
図3(A)は、吸収体6にスリット8を形成する工程の概要を例示する。
図3(B)は、スリット8が形成された吸収体6を含むおむつ1の側面図を例示する。
【0037】
図3(A)に示されるように、厚み方向に貫通する複数の孔を有するメッシュプレート50が所定位置に固定される。そして、メッシュプレート50の長手方向の中央部に、厚み方向に突出する凸部51が固定される。凸部51は、長手方向の両端部に、上方へ向けて幅が漸次縮小するようにテーパが設けられている。また、凸部51の長手方向の中央部の厚みは一様である。なお、テーパの角度は例えば45度程度であってもよい。
【0038】
そして、このようなメッシュプレート50に向けて
図3(A)でいう上方から吸収体6の原料である解繊されたパルプが送られる。すると、解繊されたパルプを運ぶ空気がメッシュプレート50の孔を通過する際に、解繊されたパルプがメッシュプレート50の上に堆積する。そして、マット状の吸収体6が形成される。一方、凸部51が設けられている部分には孔が配置されていないため、解繊されたパルプを運ぶ空気の通り道とはならない。よって、凸部51には解繊されたパルプは堆積しない。なお、凸部51には、メッシュプレート50の孔よりも内径の小さな孔が設けられていてもよい。このような凸部51によっても空気の透過性はメッシュプレート50よりも低下するため、解繊されたパルプは堆積しない。
【0039】
そして、解繊されたパルプがメッシュプレート50の上に堆積した後、
図3(B)に示されるように凸部51を含むメッシュプレート50を下方に引き抜く。すると、スリット8を有する吸収体6が形成されることになる。なお、
図3(B)では、後身頃領域1Rに配置される吸収体6にスリット8を形成する例を示している。また、
図3(B)の吸収体6の下面がおむつ1に組み込まれた場合に肌面側となる。そして、
図3(B)の吸収体6の右端がおむつ1に組み込まれた場合に長手方向の背側端部となる。また、
図3(B)に示されるように形成されたスリット8の端部81には、45度程度のテーパが形成される。また、スリット8の長手方向における中央部の深さは一様である。なお、同様にして前身頃領域1Fに配置される吸収体6にスリット8を形成する。
【0040】
また、
図3(B)に示されるようにスリット8が形成された吸収体6の上面は、ホットメルトが塗布されたバックシート5(図示しない)に貼り付けられる。しかしながら、スリット8の開口は、バックシート5に貼り付けられず、バックシート5と非接着な状態で組み立てられる。なお、スリット8の近傍以外の吸収体6の一部が、バックシート5に貼り付けられず非接着な状態であってもよい。
【0041】
[作用・効果]
上記のようなおむつ1によれば、端部81、82の幅方向における外側の側面(本開示の「端部の幅方向の側部」の一例)はタミーギャザー2により幅方向外側に引っ張られる。よって、端部81、82の幅が広がる。よって、端部81、82を長手方向に通過する尿の速度を減速させることができる。よって、尿は減速した状態でトップシートに染み出
ることになる。よって、前身頃領域1F側のウェストギャザー3から尿が漏れる、または後身頃領域1R側のウェストギャザー3から尿が背漏れすることは防止される。
【0042】
また、上記のようなおむつ1がユーザに装着された場合、おむつ1の股下領域1Bは両足によって狭まる方向に力が作用する。よって、スリット8の幅も狭まり、スリット8を長手方向に通過する尿の速度が増大する。しかしながら、前身頃領域1Fおよび後身頃領域1Rにおいては糸ゴム22の幅方向外側への引張力により、このようなスリット8の幅を狭める方向に力が作用することは抑制される。よって、スリット8の幅は保たれる。よって、スリット8の長手方向中央部において尿の速度が増大した場合であっても、スリット8の端部81、82を通過する尿の速度は減速される。よって、背漏れは防止される。
【0043】
また、おむつ1の股下領域1Bから端部81、82までの距離が十分とられ、股下領域1Bにおけるスリット8の幅の変化が端部81、82に及ぶことが抑制されている場合であっても、上記のようなおむつ1の構造により確実に端部81、82を通過する尿の速度を減速させることができる。よって、前身頃領域1F側のウェストギャザー3から尿が漏れる、または後身頃領域1R側のウェストギャザー3から尿が背漏れすることは防止される。
【0044】
また、上記のようなおむつ1によれば、
図3(B)に示されるように、端部81、82に長手方向先端に向かって深さが漸次浅くなるようなテーパが設けられる。よって、トップシートの方向に尿を誘導できる。また、テーパの角度は45度程度と緩やかな角度であるので、テーパがつけられることで尿の速度が増大することは抑制される。尿の流通方向を制御できずに、尿がおむつ1の厚み方向に跳ね上がるなどし、その結果として横漏れすることは抑制される。
【0045】
また、端部81、82は、テーパが設けられているため、テーパ面よりも非肌面側の吸収体6には肉がついた状態である。よって、端部81、82の近傍が幅方向において潰れることは抑制される。よって、端部81、82を長手方向に通過する尿の速度が増大することは抑制可能となる。よって、前身頃領域1F側のウェストギャザー3から尿が漏れる、または後身頃領域1R側のウェストギャザー3から尿が背漏れすることは防止される。
【0046】
また、
図3(B)に示されるように、端部81、82にテーパがつけられたようなスリット8を形成するために、凸部51の長手方向の両端部には幅が漸次縮小するようなテーパが設けられている。このようなテーパが設けられた凸部51によれば、解繊されたパルプが堆積した状態の吸収体6からメッシュプレート50を引き抜くことは容易となる。よって、スリット8を有する吸収体6は容易に製造可能である。
【0047】
また、上記のようなおむつ1によれば、スリット8の開口は、バックシート5に貼り付けられていない。よって、スリット8を流通する尿がバックシート5側に流出し得る。よって、スリット8の端部81または端部82に多量の尿が到達することは抑制される。よって、前身頃領域1F側のウェストギャザー3から尿が漏れる、または後身頃領域1R側のウェストギャザー3から尿が背漏れすることは防止される。
【0048】
また、上記のようなおむつ1によれば、タミーギャザー2を形成する糸ゴム22の一部が吸収体6に溶着されている。よって、吸収体6は幅方向の外側に引っ張られることになる。よって、スリット8の端部81、82を幅方向に広げることができる。よって、端部81、82を通過する尿の速度を減速させることができる。よって、尿は減速した状態でトップシートに染み出ることになる。よって、前身頃領域1F側のウェストギャザー3から尿が漏れる、または後身頃領域1R側のウェストギャザー3から尿が背漏れすることは防止される。
【0049】
また、上記のようなおむつ1によれば、スリット8が後身頃領域1Rのウェストギャザー3の下端から、例えば130mm程度離れて配置されている。また、領域83の吸収体6の坪量は、約180g/m2であり、ウェストギャザー3の収縮力は、約2.4Nである。よって、スリット8の端部81がウェストギャザー3の収縮力により幅方向において収縮されることは抑制される。よって、端部81を通過する尿の速度が増大することは抑制される。よって、尿が勢いよくトップシートに染み出ることは抑制される。よって、後身頃領域1R側のウェストギャザー3から尿が背漏れすることは防止される。なお、領域83の長手方向の長さおよび領域83の吸収体6の坪量は、ウェストギャザー3の収縮力に応じてスリット8の端部81が幅方向において収縮されない程度に変更されてもよい。
【0050】
また、上記のようなおむつ1によれば、背漏れ防止用のギャザーを設けずに背漏れを簡易に防止できる。よって、おむつ1は新たな部材を追加することなくおむつの機能を向上させることができる。
【0051】
[変形例1]
図4は、第1変形例に係るおむつ1VAを非肌面側から見た場合の展開図の一例である。
図4に示されるようにおむつ1VAは分割されていない1個の吸収体6Aを備える。そして、このような吸収体6Aには、肌面側から非肌側に凹む凹部8A(本開示の「溝」の一例)が設けられている。凹部8Aは、長手方向に例えば2本並んで設けられる。また、凹部8Aの長手方向における中央部の幅は一様である。よって、尿は凹部8Aを通過して吸収体6Aに一様に広がる。なお、凹部8Aは、例えば吸収体6Aが肉抜き加工されることで形成されてもよいし、圧搾加工されることで形成されてもよい。
【0052】
ここで、幅方向に広がる端部81Aは、タミーギャザー2の長手方向における股下側の端部よりも後身頃領域1R側の領域であってもよい。又は、端部81Aは、おむつ1のカバーシート4が前身頃領域1F、股下領域1B、および後身頃領域1Rの3つの別体のピースから形成される場合に、非肌面側からおむつ1を平面視した際に後身頃領域1Rに重なる部分であってもよい。又は、端部81Aは、凹部8Aの長手方向における後身頃領域1R側の端部と連通し、該端部と幅が略同一の領域であってもよい。
【0053】
また、このような吸収体6Aは、ウェストギャザー3の下端と重なるように配置されている。また、凹部8Aの後身頃領域1R側の端部81Aは、実施形態のスリット8の端部81と異なり、ウェストギャザー3の長手方向の端部近傍まで延在している。そして、端部81Aは、凹部8Aの長手方向の中央部の幅と比較して広がっている。
【0054】
[作用・効果]
上記のようなおむつ1VAによれば、端部81Aの幅方向における外側の側面はタミーギャザー2により幅方向外側に引っ張られる。さらに、端部81Aの幅は、凹部8Aの長手方向の中央部の幅と比較して広がっている。よって、ウェストギャザー3の近傍に配置された端部81Aがウェストギャザー3の収縮力の影響を受けて幅方向において収縮した場合であっても、端部81Aの幅は凹部8Aの中央部の幅よりも狭まることは抑制される。よって、端部81Aを通過する尿の速度を減速させることができる。よって、尿は減速した状態でトップシートに染み出ることになる。よって、後身頃領域1R側のウェストギャザー3から尿が背漏れすることは防止される。
【0055】
[変形例2]
図5は、第2変形例に係るおむつ1VBを非肌面側から見た場合の展開図の一例である。おむつ1VBの吸収体6Bには、肌面側からみて凹む凹部8B(本開示の「溝」の一例)が設けられている。凹部8Bは長手方向に延在し、幅方向に所定間隔を空けて配置され
る。そして、おむつ1VBには、幅方向において凹部8Bの端部81Bに挟まれる領域に伸縮シート23(本開示の「伸縮性部材」の一例)が設けられている。
【0056】
伸縮シート23には、おむつ1VBの幅方向に伸長された状態の糸ゴム24が貼り付けられている。また、伸縮シート23は、このように糸ゴム24が伸長された状態で厚み方向において吸収体6Bとトップシートとの間に積層される。また、伸縮シート23は、吸収体6Bと溶着等で固定される。なお、おむつ1VBには、タミーギャザー2が設けられていない。
【0057】
[作用・効果]
上記のようなおむつ1VBによれば、タミーギャザー2が設けられていなくとも、伸縮シート23が幅方向において収縮することで、2つの端部81Bの幅方向における内側の側面(本開示の「端部の幅方向の側部」の一例)がさらに内側に引張されることになる。よって、端部81Bの幅が凹部8Bの長手方向中央部の幅よりも広がることになる。また、ウェストギャザー3の収縮力の影響を受けた場合であっても、端部81Bの幅が狭まることは抑制される。よって、端部81Bを通過する尿の速度を減速させることができる。このため、尿は減速した状態でトップシートに染み出ることになる。よって、後身頃領域1R側のウェストギャザー3から尿が背漏れすることは防止される。
【0058】
[変形例3]
図6は、第3変形例に係るおむつの展開図の一例である。具体的には、第3変形例に係るおむつ1VCを、肌面側から見た展開図の一例である。おむつ1VCの吸収体6Cには、肌面側からみて凹む凹部8C(本開示の「溝」の一例)が、設けられている。凹部8Cは長手方向(延在方向)に延在し、幅方向に所定間隔を空けて配置される(本開示の「一対の溝」の一例)。凹部8Cの長手方向における中央部の幅は一様である。よって、尿は凹部8Cを通過して吸収体6Cに一様に広がる。凹部8Cは、例えば吸収体6Cが肉抜き加工されることで形成されてもよいし、圧搾加工されることで形成されてもよい。なお、本図はおむつ1VCの後身頃領域(背部側)1Rに関するものであるが、前身頃領域1F(腹部側)の形態も、本図と同様であってよい。
【0059】
おむつの肌面側、幅方向左右には、サイドシート10L,10Rが設けられている。サイドシート10L,10Rの長手方向端部は、ホットメルト等により吸収体6C(と、と接着されている。また、サイドシート10L,10Rの一端である幅方向左右外側の端部には、おむつ1VCの非肌面側を構成するバックシートやカバーシート4等とホットメルト等により接着されて接着面を構成している。
【0060】
一方で、サイドシート10L,10Rの長手方向中央部における幅方向内側の端部(他端)においては、サイドシート10L,10Rは固定されておらず、自由端になっている。サイドシート10L,10Rの幅方向自由端側には糸ゴム等の弾性部材が付されており、長手方向中央部に向かって付勢されている。着用者がおむつを着用すると、サイドシート10L,10Rの自由端側は、弾性部材の付勢力により、幅方向左右の接着面の幅方向内側端部との境界に出来た起立線から襞状になって立ち上がる。肌面側に立ち上がったサイドシート10L,10Rは、肌面側に密着し、立体ギャザー3BL,3BRとして機能する。
【0061】
本変形例では、おむつ背部1Rの凹部8Cの長手方向先端部81Cは、凹部8Aの長手方向中央部の幅と比較して広く、幅方向外側に向けて略扇状に広がっている。換言すると、略扇状に広がる先端部81Cの円弧部は、ウェストギャザー3が存在する方向でもある、凹部8Cの主要部分の延長線上へ向かう方向から、サイドシート10L,10Rが存在する方向に広がっている。サイドシート10L,10Rが存在する方向には立体ギャザー
3BL,3BRが存在する。また、長手方向先端部81Cの左右には、タミーギャザー2が存在する。よって、凹部8Cの長手方向先端部81Cの一部は、立体ギャザー3BL,3BRの起立線と交差する方向を向いていると言える。
【0062】
図7は、おむつの幅方向断面図の第1例である。具体的には、
図6に係るおむつ1VCをA-A線で切断した幅方向断面図である。おむつ1VCは、おむつ1VCの肌面側から、トップシート7、吸収体6C、バックシート5、カバーシート4の順に積層されている。また、疎水性のサイドシート10L,10Rが、カバーシート4から、トップシート7に包まれた吸収体6Cの側面、そしてトップシート7に包まれた吸収体6Cの肌面側幅方向端部にまで接着されている。A-A線はおむつ1VCの股下部1B付近の断面であるため、サイドシート10L,10Rの幅方向内側は自由端になっており、弾性部材により付勢されて立体ギャザー3BL,3BRになっている。吸収体6Cに付された凹部8Cは、本図の例では、吸収体の厚さが一番薄い底面と、幅方向中心に向けて立ち上がる傾斜線と、幅方向左右端に向けて立ち上がる傾斜線からなる略V字状の溝となっており、凹部8Cに落ち込んだ体液は幅方向内側、外側に、吸収体6Cに均等に吸収されながら、長手方向に流れていく。
【0063】
図8は、おむつの幅方向断面図の第2例である。切断位置は、
図7と同様、
図6に示したA-A線である。本図の例では、溝部8Cの幅方向中心に向けて立ち上がる傾斜線は、ほぼ垂直に立ち上がっている。一方、溝部8Cの幅方向左右端に向けて立ち上がる傾斜線の傾斜角は、幅方向中心に向けて立ち上がる傾斜線よりも小さい。このため、凹部8Cに落ち込んで溢れた尿は幅方向外側に流れやすくなる。
【0064】
[作用・効果]
上記のようなおむつ1VCでは、おむつ背部1Rの凹部8Cの長手方向先端部81Cは、幅方向外側に向けて広がっている。長手方向先端部81Cの側面には、タミーギャザー2が付されている。おむつ1VCが着用されると、前身頃領域1F、後身頃領域1Rにある吸収体6Cは、タミーギャザー2の収縮力により広がる。よって、端部81Cの幅が凹部8Cの中央部の幅よりも狭まることは抑制される。本例において、溝部8Cで吸収されなかった尿は、端部81Cで減速されながら、おむつの幅方向外側に向かって流れる。
【0065】
ここで、吸収体6Cの幅方向外側には、立体ギャザー3BL,3BRが存在している。また、立体ギャザー3BL,3BRと、吸収体6Cとの間には、尿を一時的に保持できる袋状の空間が存在しているので、長手方向先端部81Cから立体ギャザー3BL,3BRに向かって流れた尿は、当該袋状の空間で保持されている間に吸収体6Cに吸収される。この形態では、凹部8Cを流れ、端部81Cに到達して減速されたた尿の主な流動方向は幅方向外側になり、ウェストギャザーに到達しにくくなるので、背漏れが抑制される。また、尿は立体ギャザー3BL,3BRと吸収体6Cとの間にできた袋状の空間で保持されて吸収されるので、おむつ1VCの外に溢れることはない。
【0066】
また、
図8のように立体ギャザー3BL,3BR側の傾斜線を緩やかにすれば、溝部8Cが狭まってしまった場合でも、その一定程度が立体ギャザー3BL,3BRと、吸収体6Cとの間にできた袋状の空間に流れ込む。よって、溝部8Cが一時的に尿の流路としての機能を果たさなくなった場合であっても、尿はおむつ1VCの外に溢れることはない。
【0067】
[変形例4]
図9は、第4変形例に係るおむつの展開図の一例である。具体的には、第4変形例に係るおむつ1VDを、肌面側から見た展開図の一例である。おむつ1VDの吸収体6Dには、肌面側からみて凹む凹部8D(本開示の「溝」の一例)が設けられている。股下部1Bでは、凹部8Dは長手方向(延在方向)に延在し、幅方向に所定間隔を空けて配置される
(本開示の「一対の溝」の一例)。しかし、凹部8Dは、本図に示す後身頃領域1Rでは、幅方向外側に屈曲している。凹部8Cは、例えば吸収体6Cが肉抜き加工されることで形成されてもよいし、圧搾加工されることで形成されてもよい。
【0068】
おむつ1VDに立体ギャザー3BR,3BLが設けられていることは、第3変形例と同様である。凹部8Dの主要部分を通過し、前身頃領域1F、後身頃領域1Rに到達した尿は、凹部8Dの長手方向先端部81Dが幅方向外側に屈曲していることにより流れの方向を変え、幅方向外側を向いた長手方向先端部81Dから放出される。そして、この長手方向先端部81Dは、立体ギャザー3BL,3BRの起立線が存在する方向に向かっている。すなわち、本変形例においても、変形例3と同様、凹部8Dの一部である長手方向先端部81Dは、立体ギャザー3BL,3BRの起立線と交差する方向を向いていると言える。なお、本図はおむつ1VDの後身頃領域1R(背部側)に関するものであるが、前身頃領域1F(腹部側)における形態も、本図と同様であってよい。
【0069】
[作用・効果]
上記のようなおむつ1VDによれば、凹部8Dを流れた尿は、凹部8Dの方向変化に従って前身頃領域1F、後身頃領域1Rに到達すると幅方向外側に向かって流れる。そして長手方向先端部81Dから放出された尿は、そのまま立体ギャザー3BL,3BRと、吸収体6Cとの間にできた袋状の空間に導かれ、保持されている間に吸収体6Cに吸収される。この形態では、尿の流動方向はおむつ1VDの幅方向外側になるので、背漏れが抑制される。また尿は立体ギャザー3BL,3BRと吸収体6Cとの間にできた袋状の空間で保持されて吸収されるので、おむつ1VDの外に溢れることはない。
【0070】
[その他変形例]
スリット8の代わりに肌面側から非肌面側に凹む凹部が吸収体6の長手方向に延在し、端部81または端部82の深さがスリット8の長手方向中央部の深さよりも深くとられてもよい。このようなおむつによれば、端部81または端部82を通過する尿の速度をさらに減速させることができる。よって、前身頃領域1F側のウェストギャザー3から尿が漏れる、または後身頃領域1R側のウェストギャザー3から尿が背漏れすることは確実に防止される。
【0071】
また、端部81あるいは端部82の何れか一方の幅方向にはタミーギャザー2が配置されていなくともよい。また、端部81または端部82にテーパは設けられていなくともよい。また、テーパの代替となるような構造(例えば長手方向に向かって階段状となる構造)が設けられていてもよい。また、2本のスリット8の端部81は長手方向において略同一の位置に配置されなくともよい。また、スリット8の長手方向の中央部の幅および深さは一様でなくともよい。また、タミーギャザー2を形成する糸ゴム22の一部は、吸収体6が貼り付けられているシート状部材(例えばバックシート5)に溶着されてもよい。このような場合、タミーギャザー2を形成する糸ゴムと吸収体6とは間接的に接着することになる。また、タミーギャザー2を形成する糸ゴムは、吸収体6に溶着されていなくともよい。また、おむつ1は前身頃領域1Fに対して後身頃領域1Rがテープを介して固定されるテープ型のおむつであってもよい。
【0072】
以上で開示した実施形態や変形例はそれぞれ組み合わせる事ができる。
【符号の説明】
【0073】
1、1VA、1VB、1VC、1VD:おむつ
1B :股下領域
1F :前身頃領域
1R :後身頃領域
2 :タミーギャザー
3 :ウェストギャザー
3BL、3BR:立体ギャザー
4 :カバーシート
5 :バックシート
6、6A、6B、6C、6D:吸収体
8 :スリット
8A、8B、8C、8D:凹部
22 :糸ゴム
23 :伸縮シート
24 :糸ゴム
50 :メッシュプレート
51 :凸部
81、81A、81B、81C、81D:端部
82 :端部
83 :領域