(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】ロータ及び回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/276 20220101AFI20250408BHJP
【FI】
H02K1/276
(21)【出願番号】P 2021094750
(22)【出願日】2021-06-04
【審査請求日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2020196160
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中山 孝博
(72)【発明者】
【氏名】平松 律郎
(72)【発明者】
【氏名】内田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】坂井 眞人
【審査官】島倉 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-121253(JP,A)
【文献】特開2013-090386(JP,A)
【文献】特開2005-287285(JP,A)
【文献】特開2015-220950(JP,A)
【文献】特開2012-023804(JP,A)
【文献】国際公開第2014/046228(WO,A1)
【文献】特開2013-081302(JP,A)
【文献】特開2009-153365(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/22
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のコアシート(30)を積層して構成され、径方向内側に凸の折返し形状をなす複数個の磁石収容孔(24)を有するロータコア(22)と、前記ロータコアの磁石収容孔に埋込態様にて設けられる永久磁石(23)とを備えてなるロータ(20)であって、
前記コアシートは、前記磁石収容孔に対応した折返し形状の途中位置において孔幅方向に対向する内周縁部間を連結する連結部(31c,61)を有する第1磁石用貫通孔(31)と、前記連結部(31c,61)の無い第2磁石用貫通孔(32)とが1枚のコアシートに混在して設けられるとともに、
同一構成の前記コアシートを用い、前記ロータコアの1つの前記磁石収容孔の構成において前記第1磁石用貫通孔と前記第2磁石用貫通孔とが混在するように前記コアシートが積層されて前記ロータコアが構成され、
前記永久磁石は、ボンド磁石であ
り、
前記第1磁石用貫通孔に設けられる連結部は、自身の幅(Wb)が前記コアシートの板厚(t)より小さく設定されて構成された、ロータ。
【請求項2】
前記コアシートは、前記第1磁石用貫通孔と前記第2磁石用貫通孔とが周方向に交互に配置されて構成された、請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記ロータコアは、前記コアシートが所定枚数毎に第1位置と該第1位置から前記磁石収容孔を1個分回転させた第2位置とのいずれかに配置されて構成された、請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
前記ロータコアは、前記コアシートが1枚数毎に第1又は第2位置に配置されて構成された、請求項3に記載のロータ。
【請求項5】
前記第1磁石用貫通孔に設けられる連結部は、前記第1磁石用貫通孔自身の折返し形状の屈曲部(31b)に位置して構成された、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項6】
前記第1磁石用貫通孔に設けられる連結部は、自身の側縁部(31d)が前記連結部自身の延びる方向の中央部分ほど幅狭となるような一様の湾曲形状をなして構成された、請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項7】
前記ロータコアは、前記磁石収容孔の径方向外側端部(24c)を幅狭とすべく一方の角部を迫り出した迫出部(22e,22f)が設けられて構成された、請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項8】
前記永久磁石は、前記ロータコアの軸方向端面(22c)から少なくとも一部が突出する突出部(23x)が設けられて構成された、請求項1から請求項
7のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項9】
前記永久磁石は、自身の折返し形状の屈曲部(23b)の厚さ(Wm1)が他の部位(23a)の厚さ(Wm)よりも小さくして構成された、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項10】
前記磁石収容孔の内面には、軸方向に重なる前記第1磁石用貫通孔と前記第2磁石用貫通孔の周縁部の位置の違いによって形成される凹凸部(43,44,45,71)が設けられ、
前記永久磁石は、前記凹凸部の凹部(43a,44a,45a)に入り込む係合部(51,52,53)を有している、請求項1から請求項
9のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項11】
前記複数枚のコアシートの各々において、前記第1磁石用貫通孔及び前記第2磁石用貫通孔のそれぞれの径方向外側には2つの径方向外側連結部(22d)が位置している、請求項1から請求項
10のいずれか1項に記載のロータ。
【請求項12】
複数枚のコアシート(30)を積層して構成され、径方向内側に凸の折返し形状をなす複数個の磁石収容孔(24)を有するロータコア(22)と、前記ロータコアの磁石収容孔に埋込態様にて設けられる永久磁石(23)とを備えてなるロータ(20)と、
前記ロータに対して回転磁界を付与するステータ(10)と
を備えた回転電機(M)であって、
前記コアシートは、前記磁石収容孔に対応した折返し形状の途中位置において孔幅方向に対向する内周縁部間を連結する連結部(31c,61)を有する第1磁石用貫通孔(31)と、前記連結部(31c,61)の無い第2磁石用貫通孔(32)とが1枚のコアシートに混在して設けられるとともに、
同一構成の前記コアシートを用い、前記ロータコアの1つの前記磁石収容孔の構成において前記第1磁石用貫通孔と前記第2磁石用貫通孔とが混在するように前記コアシートが積層されて前記ロータコアが構成され、
前記永久磁石は、ボンド磁石であ
り、
前記第1磁石用貫通孔に設けられる連結部は、自身の幅(Wb)が前記コアシートの板厚(t)より小さく設定されて構成された、回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋込磁石型のロータ及び回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
埋込磁石型(IPM型)のロータを用いる回転電機が周知である。埋込磁石型のロータは、永久磁石がロータコアの内部に埋め込まれる態様をなし、永久磁石によるマグネットトルクに加えて、永久磁石より径方向外側に位置する外側コア部にてリラクタンストルクを得る構成となっている。
【0003】
このような埋込磁石型のロータにおいて、軸方向視で永久磁石がV字及びU字等、径方向内側に凸の折返し形状とした場合(例えば特許文献1参照)、外側コア部に接する永久磁石の磁石表面と外側コア部自身とを大きくすることが可能である。つまり、回転電機の高トルク化が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらその一方で、永久磁石を収容するための磁石収容孔をロータコアに形成する関係で、外側コア部をロータコアの本体側部分と連結する連結部分の位置及び形状等の設定が難しい。連結部分は、磁束漏れが生じる部分でもあるためである。そのため、連結部分を幅狭にすると、外側コア部を支持する連結部分が構造的に弱くなり、外側コア部の遠心力強度の低下等に繋がる。トルクの増大を図ろうと外側コア部が大きくなるほど、より顕著となる。本発明者は、このような課題に対して簡易な対応で解決できないか検討していた。本発明の目的は、簡易な対応にて遠心力強度の向上が期待できるロータ及び回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するロータは、複数枚のコアシート(30)を積層して構成され、径方向内側に凸の折返し形状をなす複数個の磁石収容孔(24)を有するロータコア(22)と、前記ロータコアの磁石収容孔に埋込態様にて設けられる永久磁石(23)とを備えてなるロータ(20)であって、前記コアシートは、前記磁石収容孔に対応した折返し形状の途中位置において孔幅方向に対向する内周縁部間を連結する連結部(31c,61)を有する第1磁石用貫通孔(31)と、前記連結部(31c,61)の無い第2磁石用貫通孔(32)とが1枚のコアシートに混在して設けられるとともに、同一構成の前記コアシートを用い、前記ロータコアの1つの前記磁石収容孔の構成において前記第1磁石用貫通孔と前記第2磁石用貫通孔とが混在するように前記コアシートが積層されて前記ロータコアが構成された。
【0007】
上記課題を解決する回転電機は、複数枚のコアシート(30)を積層して構成され、径方向内側に凸の折返し形状をなす複数個の磁石収容孔(24)を有するロータコア(22)と、前記ロータコアの磁石収容孔に埋込態様にて設けられる永久磁石(23)とを備えてなるロータ(20)と、前記ロータに対して回転磁界を付与するステータ(10)とを備えた回転電機(M)であって、前記コアシートは、前記磁石収容孔に対応した折返し形状の途中位置において孔幅方向に対向する内周縁部間を連結する連結部(31c,61)を有する第1磁石用貫通孔(31)と、前記連結部(31c,61)の無い第2磁石用貫通孔(32)とが1枚のコアシートに混在して設けられるとともに、同一構成の前記コアシートを用い、前記ロータコアの1つの前記磁石収容孔の構成において前記第1磁石用貫通孔と前記第2磁石用貫通孔とが混在するように前記コアシートが積層されて前記ロータコアが構成された。
【0008】
上記ロータ及び回転電機によれば、1枚のコアシートにおいて、ロータコアの磁石収容孔に対応した折返し形状の途中位置に連結部を有する第1磁石用貫通孔と、連結部の無い第2磁石用貫通孔とが混在して設けられる。そして、ロータコアとして積層する際、同一構成のコアシートを用い、1つの磁石収容孔の構成において第1磁石用貫通孔と第2磁石用貫通孔とが混在するようにロータコアの積層がなされる。つまり、永久磁石より径方向外側に位置するロータコアの外側コア部は、埋込磁石型のロータが故の磁石収容孔の構成上必然的に備えられる自身の径方向外側端部より外側の2箇所の連結部に加え、第1磁石用貫通孔の連結部が新たに追加された3箇所以上でロータコアの共用部に対して支持される態様となる。そのため、外側コア部の遠心力強度を向上させることが可能である。しかも、1種類のコアシートを用意するだけの簡易な対応にて実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態における埋込磁石型のロータを有する回転電機の構成図。
【
図4】(a)(b)は同形態におけるロータに用いるコアシートの平面図。
【
図5】同形態におけるロータの特性を説明するための説明図。
【
図6】同形態におけるロータの特性を説明するための説明図。
【
図14】(a)(b)は同変更例におけるロータに用いるコアシートの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ロータ及び回転電機の一実施形態を説明する。
図1に示す本実施形態の回転電機Mは、埋込磁石型のブラシレスモータにて構成されている。回転電機Mは、略円環状のステータ10と、ステータ10の径方向内側空間にて回転可能に配置される略円柱状のロータ20とを備えている。
【0011】
ステータ10は、略円環状のステータコア11を備えている。ステータコア11は、磁性金属材料にて構成、例えば複数枚の電磁鋼板を積層して構成されている。ステータコア11は、径方向内側に向かって延び周方向等間隔に配置される本実施形態では12個のティース12を有している。各ティース12は、互いに同一形状をなしている。ティース12は、先端部である径方向内側端部が略T型をなし、先端面12aがロータ20の外周面に倣った円弧状をなしている。12個のティース12には、巻線13がそれぞれ集中巻きにて巻装されている。すなわち、ステータ10の磁極数は「12」である。巻線13は3相結線がなされ、
図1ようにそれぞれU相、V相、W相として機能する。そして、巻線13に対して電源供給がなされると、ロータ20を回転駆動するための回転磁界がステータ10にて生じるようになっている。このようなステータ10は、ステータコア11の外周面がハウジング14の内周面に対して固定されている。
【0012】
ロータ20は、回転軸21と、回転軸21が中心部に嵌挿される略円柱状のロータコア22と、ロータコア22の内部に埋め込まれる態様をなす本実施形態では8個の永久磁石23とを備えている。すなわち、ロータ20の磁極数は「8」である。ロータ20は、回転軸21がハウジング14に設けられる図示略の軸受に支持されることで、ステータ10に対して回転可能に配置されている。
【0013】
ロータコア22は、
図2に示すように、永久磁石23を収容するための磁石収容孔24を有している。磁石収容孔24は、ロータコア22の周方向等間隔に本実施形態では8個設けられている。各磁石収容孔24は、径方向内側に向かって凸の略V字の折返し形状、すなわち一対の直線部24aの径方向内側端部同士を屈曲部24bにて繋いだ形状をなしている。磁石収容孔24の直線部24aの径方向外側端部24cは、ロータコア22の外周面22aの近くに位置している。屈曲部24bは、回転軸21が嵌挿されるロータコア22の中心部の軸嵌挿孔22bの近くに位置している。
【0014】
磁石収容孔24は、一対の直線部24aの孔幅(永久磁石23の直線部23aの厚さWm相当)を一定、屈曲部24bの孔幅(永久磁石23の屈曲部23bの厚さWm1相当)が直線部24aより徐々に幅狭となるように設定されている。磁石収容孔24は、ロータコア22の軸方向全体に亘り設けられている。磁石収容孔24は、実質的に略同様な構成であるが、僅かな点で異なる第1態様の磁石収容孔24αと第2態様の磁石収容孔24βとの2種類がある(詳細は後述)。
【0015】
ロータコア22は、
図3に示すように、電磁鋼板よりなるコアシート30を軸線L1方向に複数枚積層して構成されている。個々のコアシート30については、
図4(a)に示すような同一構成のものが用いられている。なお、
図4(b)に示すコアシート30は、一見異なる形状に見えるが、実際は
図4(a)にて示した第1位置に対して磁石収容孔24を1個分、換言すれば1磁極分である45°回転させた第2位置に配置したものである。コアシート30には、ロータコア22の2つの態様の磁石収容孔24を構成すべく、それぞれ2種類の磁石用貫通孔31,32が混在して形成されている。
【0016】
第1及び第2磁石用貫通孔31,32は、それぞれがおおよそ径方向内側に向かって凸の略V字の折返し形状、すなわち一対の直線部31a,32aの径方向内側端部同士を屈曲部31b,32bにて繋いだ形状をなしている。第1及び第2磁石用貫通孔31,32の互いの異なる部分としては、第1磁石用貫通孔31の屈曲部31bには連結部31cが有り、第2磁石用貫通孔32の屈曲部32bには連結部31cのような連結部が無い形状をなしている。連結部31cは、第1磁石用貫通孔31の孔幅方向に延びて同方向に対向する内周縁部間を互いに連結する。連結部31cの幅Wbは、コアシート30の1枚の板厚t(
図3参照)以下に設定されている。連結部31cの側縁部31dは、連結部31c自身の延びる方向の中央部分ほど幅狭となるような一様の湾曲形状をなしている。側縁部31dの湾曲形状は、一例として連結部31cの延びる方向の長さの略1/2の曲率半径に設定されている。このような第1及び第2磁石用貫通孔31,32は、個々のコアシート30において周方向の45°毎に交互に配置されている。
【0017】
そして、ロータコア22を構成すべくコアシート30を積層する過程で、本実施形態ではコアシート30を1枚単位で、
図4(a)に示す第1位置に配置したものと、45°回転させた
図4(b)に示す第2位置に配置したものとが交互となるように積層される。つまり、ロータコア22として構成した際、
図2に示すように上層から下層に向けて順に、屈曲部31bに連結部31cを有する第1磁石用貫通孔31と屈曲部32bに連結部の無い第2磁石用貫通孔32とが交互となる第1態様の磁石収容孔24αと、屈曲部32bに連結部の無い第2磁石用貫通孔32と屈曲部32bに連結部31cを有する第1磁石用貫通孔31とが交互となる第2態様の磁石収容孔24βとが構成されることになる。第1及び第2態様の磁石収容孔24α,24βは、互いに第1及び第2磁石用貫通孔31,32が逆の順序で配置されてなる。
【0018】
つまり、ロータコア22として構成した場合、磁石収容孔24に設けられる永久磁石23のV字の折返し形状の内側で永久磁石23よりも径方向外側に位置する後述の外側コア部25は、磁石収容孔24の一対の直線部24aの径方向外側端部24cより外側の2箇所の連結部22dと、コアシート30の1枚おきに有る第1磁石用貫通孔31の連結部31cとの3箇所にてロータコア22の共用部22xに対して支持されている。したがって、磁石収容孔24の構成上必然的に備えられる2箇所の連結部22dに加え、屈曲部24bに位置する連結部31cも新たに追加された3箇所で外側コア部25が支持され、外側コア部25の遠心力強度の向上が図られている。
【0019】
また、1個の外側コア部25に対して連結部22d,31cが3箇所に設けられるが、3箇所の連結部22d,31cが外側コア部25の周囲においてバランスよく配置されており、外側コア部25の安定支持に貢献している。また、これら3箇所の連結部22d,31cをそれぞれコアシート30の1枚の板厚t以下に設定することで、懸念される磁束漏れも十分に低減される。さらに、磁石収容孔24の径方向外側端部24cには、V字の折返し形状の内側角部がそれぞれテーパ状に迫り出す迫出部22eが設けられている。換言すると、磁石収容孔24の径方向外側端部24cが幅狭とされその外側の連結部22dの長さLbが磁石収容孔24の直線部24aの孔幅(永久磁石23の直線部23aの厚さWm相当)よりも小さくしている。これによっても、外側コア部25の遠心力強度を向上させることが可能である。
【0020】
なお、
図3に示すように、コアシート30の枚数を奇数とする本実施形態の場合では、ロータコア22の上面側と下面側との両方の軸方向端面22cに現れる磁石収容孔24の開口形状は同一となる。コアシート30の枚数を偶数とした場合では、ロータコア22の両面の軸方向端面22cに現れる磁石収容孔24の開口形状は磁石用貫通孔31,32のいずれかの形状となり、こちらを選択してもよい。このように構成されるそれぞれの磁石収容孔24には、それぞれ永久磁石23が埋設状態で設けられる。
【0021】
永久磁石23は、本実施形態では磁石粉体を樹脂と混合した磁石材料を成型固化してなるボンド磁石を用いている。すなわち、永久磁石23は、ロータコア22の磁石収容孔24を成形型とし、固化前の磁石材料が射出成形により磁石収容孔24内に隙間なく充填され、充填後に磁石収容孔24内で固化されて構成されている。したがって、磁石収容孔24の孔形状は、永久磁石23の外形形状となる。またこの場合、個々の磁石収容孔24において、コアシート30の1枚おきに設けられる連結部31c間にも磁石材料が回り込む。本実施形態の永久磁石23に用いられる磁石粉体としては、例えばサマリウム鉄窒素(SmFeN)系磁石が用いられるが、他の希土類磁石等を用いてもよい。
【0022】
永久磁石23は、
図2に示すように、軸方向視で径方向内側に向かって凸の略V字の折返し形状、すなわち一対の直線部23aの径方向内側端部同士を屈曲部23bにて繋いだ形状をなしている。直線部23aの径方向外側端部23cは、ロータコア22の外周面22aの近くに位置している。永久磁石23は、一対の直線部23aの厚さWmを一定、屈曲部23bの厚さWm1が直線部23aの厚さWmより徐々に幅狭となるように設定されている。永久磁石23は、磁石収容孔24に対して直接形成されることから、磁石収容孔24と対応した形状をなしている。永久磁石23は、ロータ20の軸中心O1を通る自身の周方向中心線Lsに対して線対称形状をなし、隣接の永久磁石23間におけるロータ20の軸中心O1を通る磁極境界線Ldに近接している。隣接の磁極境界線Ld間の角度、すなわちこの永久磁石23を含むロータ磁極部26の磁極開角度θmは、電気角で180°である。
【0023】
ここで、V字形状をなす永久磁石23の各直線部23aの内側面の延長線とロータコア22の外周面22aとの交点間を磁極ピッチLp、永久磁石23の周方向中心線Ls上でロータコア22の外周面22aから屈曲部23bの内側面までを埋込深さLmとする。本実施形態の永久磁石23は、磁極ピッチLpより埋込深さLmが大となるような、自身の屈曲部23bがロータコア22の中心部に近い深い折返し形状に設定されている。つまり、各直線部23a及び屈曲部23bの各内側面でなす本実施形態の永久磁石23の磁石表面23dが、周知の表面磁石型の磁石表面(図示略)よりも大きくなるような設定としている。なお、永久磁石23のこの折返し形状は一例であり、埋込深さLmが浅いものや屈曲部23bの大きい略U字の折返し形状のもの等、適宜変更可である。
【0024】
また、永久磁石23は、
図3に示すように、ロータコア22の軸方向全体に亘り設けられ、さらにロータコア22の軸方向両端面22cから一部を突出させている。永久磁石23は、磁石収容孔24内にある埋込磁石部23mと、ロータコア22の軸方向両端面22cからそれぞれ突出する突出部23xとを有している。突出部23xの形成については、例えばロータコア22の軸方向端面22cに開口する磁石収容孔24を閉塞するための図示略の成形型に、突出部23x形成用の凹部を設けるだけで容易に実現可能である。突出部23xは、ロータコア22の磁石収容孔24内に位置する永久磁石23の埋込磁石部23mと連続して一体的に設けられている。
【0025】
ロータコア22の磁石収容孔24内に略埋込態様にて設けられる永久磁石23は、磁石素材が固化した後に、図示略の着磁装置を用いて本来の磁石として機能させるべくロータコア22の外部から着磁される。この場合、個々の永久磁石23は、自身の厚さ方向に磁化される。永久磁石23は、
図1に示すように、ロータコア22の周方向に本実施形態では8個設けられており、周方向に交互に異極となるように着磁される。
【0026】
永久磁石23のV字の折返し形状の内側であり永久磁石23よりも径方向外側に位置するロータコア22の部位は、ステータ10と対向してリラクタンストルクを得るための外側コア部25として機能する。外側コア部25は、軸方向視でロータ20の中心部方向に1つの頂点を向けた略三角形状をなしている。そして、ロータ20は、永久磁石23と永久磁石23のV字形状の内側で囲まれる外側コア部25とを含む本実施形態では8極のロータ磁極部26として構成されている。各ロータ磁極部26は、
図1のように周方向に交互にそれぞれN極、S極として機能する。このようなロータ磁極部26を有するロータ20では、マグネットトルクとリラクタンストルクとが好適に得られるものとなる。
【0027】
本実施形態の回転電機Mのロータ20の作用を説明する。
本実施形態のロータ20を構成するロータコア22は、
図4に示した連結部31cを有する第1磁石用貫通孔31と連結部の無い第2磁石用貫通孔32とが周方向に交互に混在するコアシート30を複数枚積層してなる。この場合、用意するコアシート30は、1種類である。そして、コアシート30を1枚毎に第1位置に配置したものと、45°回転させた第2位置に配置したものとが交互となるように、
図3に示すように所定枚数のコアシート30が積層されてロータコア22が構成される。その後、個々の磁石収容孔24、詳しくは第1及び第2磁石用貫通孔31,32の順序が異なるだけで実質的に略同様な構成の第1及び第2態様の磁石収容孔24α,24βに永久磁石23が直接形成され、さらにその後に永久磁石23に対して着磁がなされてロータ20が構成される。
【0028】
ロータコア22においては、
図2及び
図3に示すように、永久磁石23より径方向外側に位置する外側コア部25が、磁石収容孔24の径方向外側端部24cより外側の2箇所の連結部22dと、径方向内側の屈曲部24bに位置しコアシート30の1枚おきに有る連結部31cとの3箇所にてロータコア22の共用部22xに支持されることになる。つまり、本実施形態のロータコア22の外側コア部25は、磁石収容孔24の構成上必然的に備えられる2箇所の連結部22dに加え、連結部31cも新たに追加された3箇所の支持態様となるため、外側コア部25の遠心力強度は向上する。
【0029】
図5は、外側コア部25の遠心力強度の評価に用いる本実施形態(図中、本形態)と比較例1及び比較例2(図中、比較1及び比較2)との比較結果である。なお、比較例1は、永久磁石23の埋込深さLm(
図2参照)がロータコア22の半径の半分程度の浅い折返し形状をなす構成である。比較例2は、永久磁石23がロータコア22の中心部まで近接する本実施形態のような深い折返し形状をなすが、屈曲部24bに連結部31cの無い磁石収容孔24を有する構成のものである。また、比較例2は、永久磁石23に突出部23x(
図3参照)が無く、磁石収容孔24に迫出部22e(
図2参照)の無いものである。そして、外側コア部25を支持する2箇所の連結部22dにかかる比較例1の応力を「1」としたときの比較例2と本実施形態との比較である。比較例2としては、比較例1に対して永久磁石23が深い折返し形状をなす分、永久磁石23の磁石表面23dと外側コア部25自身が大きくなるため高トルク化を望めるものの、外側コア部25の重量も大きくなり連結部22dに対する応力は「1」よりも大きくなる。つまり、外側コア部25の遠心力強度が低下することを意味する。
【0030】
これに対し本実施形態では、外側コア部25が2箇所の連結部22dに加えて連結部31cも追加された3箇所の支持態様としているため、連結部22dに対する応力は「1」よりも十分に小さくなる。つまり、外側コア部25の遠心力強度が向上したことが示されている。
【0031】
なおここで、連結部31cを有する第1磁石用貫通孔31のみが設けられたコアシート30と、連結部の無い第2磁石用貫通孔32のみが設けられたコアシート30との2種類のコアシート30を用意し、それぞれ種類の異なるコアシート30を交互に積層しても、上記と同様に外側コア部25の遠心力強度の向上は図れる。しかしながら、コアシート30を2種類用意する必要があり、製造上、管理上等で煩雑となる懸念がある。
【0032】
これに対し本実施形態では、連結部31cを有する第1磁石用貫通孔31と連結部の無い第2磁石用貫通孔32とを1枚のコアシート30に混在させ、1つの磁石収容孔24において第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とが混在するようにコアシート30を積層する構成である。本実施形態では、1枚ずつのコアシート30毎に第1及び第2磁石用貫通孔31,32が交互に混在する。つまり、本実施形態では、1種類のコアシート30を用意するだけの簡易な対応にて実現することが可能である。
【0033】
ちなみに、
図6は、トルク/磁石体積比における本実施形態(図中、本形態)と比較例1及び比較例2(図中、比較1及び比較2)との比較結果である。上記したように、比較例2は比較例1に対して永久磁石23が深い折返し形状をなす分、永久磁石23の磁石表面23dと外側コア部25自身が大きくなるために高トルクとなるため、トルク/磁石体積比は「1」より大きくなる。
【0034】
一方、本実施形態では、外側コア部25が2箇所の連結部22dに加えて連結部31cも追加された3箇所の支持態様である。連結部22d,31cは永久磁石23の磁束漏れが生じる部分でもあり、新たに連結部31cが増えることは有効磁束の低減、トルク/磁石体積比の低減が懸念されるところである。本実施形態ではその対策として、ロータコア22の軸方向端面22cから永久磁石23の一部を突出させた突出部23xが設けられている。ロータコア22の軸方向端面22cでの磁束漏れを突出部23xにて生じさせることで、肝心な永久磁石23の埋込磁石部23mの磁束漏れが低減、すなわち有効磁束が増加でき、高トルク化が図れる。さらに、永久磁石23の屈曲部23bでの磁束漏れが少ないことに着目し、屈曲部23bを厚さWm1として永久磁石23の体積を極力小さくすることで、トルク/磁石体積比の改善が図れる。これらにより、本実施形態では、連結部31cが増えることでこの部分での磁束漏れが増えるものの、連結部の無い比較例2と同等のトルク/磁石体積比を得ることが可能である。
【0035】
ただし、永久磁石23に突出部23xを設けなくても、また屈曲部23bの厚さを薄くしなくても、トルク/磁石体積比の低下はさほど大きくなく「1」よりは大きいため(図示略)、永久磁石23に高価な磁石材料を使う場合等においては、磁石コストとの兼ね合いで、永久磁石23に突出部23xの形成の有無、屈曲部23bの厚さ調整の有無を決定すればよい。
【0036】
本実施形態の効果について説明する。
(1)1枚のコアシート30において、ロータコア22の磁石収容孔24に対応した折返し形状の途中位置、本実施形態では屈曲部24bに連結部31cを有する第1磁石用貫通孔31と、連結部の無い第2磁石用貫通孔32とが周方向に交互に混在して設けられる。そして、ロータコア22として積層する際、同一構成のコアシート30を用い、1つの磁石収容孔24の構成において第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とが混在するように1枚毎で第1位置と45°回転させた第2位置との交互としてコアシート30の積層がなされる。つまり、永久磁石23より径方向外側に位置するロータコア22の外側コア部25は、埋込磁石型のロータ20が故の磁石収容孔24の構成上必然的に備えられる自身の径方向外側端部24cより外側の2箇所の連結部22dに加え、第1磁石用貫通孔31の連結部31cが新たに追加された3箇所にてロータコア22の共用部22xに対して支持される態様となる。そのため、外側コア部25の遠心力強度を向上させることができる。しかも、1種類のコアシート30を用意するだけの簡易な対応にて実現することができる。
【0037】
(2)コアシート30は、第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とが周方向に交互に配置されるものであるため、コアシート30を1枚数毎に第1位置と該第1位置から磁石収容孔24を1個分回転させた第2位置とのいずれかに配置するといった単純な積層態様にて実現することができる。また、コアシート30を1枚数毎に第1又は第2位置に配置することで、第1磁石用貫通孔31の連結部31cがコアシート30の1枚おきとなり重ならないため、連結部31cでの磁束漏れを極力低減することができる。
【0038】
(3)第1磁石用貫通孔31に設けられる連結部31cは、第1磁石用貫通孔31自身の折返し形状の屈曲部31bに位置し、2箇所の連結部22dとの位置関係で外側コア部25の周囲にバランスよく配置されるため、外側コア部25の安定支持に貢献できる。
【0039】
(4)第1磁石用貫通孔31に設けられる連結部31cは、自身の幅Wbがコアシート30の板厚t以下に設定されるため、連結部31cでの磁束漏れを極力低減することができる。
【0040】
(5)第1磁石用貫通孔31に設けられる連結部31cは、自身の側縁部31dが自身の延びる方向の中央部分ほど幅狭となるような一様の湾曲形状にて構成したため、連結部31cでの磁束漏れを極力低減しつつ、端部部分では幅広となることで剛性を高くすることができる。また、側縁部31dを湾曲形状とすることで、連結部31cへの応力集中を低減することができる。
【0041】
(6)ロータコア22は、磁石収容孔24の径方向外側端部24cの一方の角部に迫出部22eを設けて幅狭としたことで、径方向外側端部24cの外側の連結部22dが短くできるため、外側コア部25の遠心力強度の向上に貢献できる。
【0042】
(7)永久磁石23は、自身の軸方向端部を突出部23xとしてロータコア22の軸方向端面22cから突出させたため、ロータコア22の軸方向端面22cでの磁束漏れが主としてその突出部23xにて生じるようになる。つまり、肝心な永久磁石23の埋込磁石部23mの磁束漏れが低減できるため、有効磁束を増加でき、高トルク化を図ることができる。
【0043】
(8)永久磁石23は、自身の折返し形状の屈曲部23bの厚さWm1が直線部24aの厚さWmよりも小さく構成される。つまり、永久磁石23の屈曲部23bでの磁束漏れが少ないことに着目し、屈曲部23bを直線部24aよりも薄くして永久磁石23の体積を極力小さくすることで、トルク/磁石体積比の改善を図ることができる。
【0044】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・磁石収容孔24及び磁石収容孔24周りの構成を適宜変更してもよい。
【0045】
図7に示すように、例えば磁石収容孔24の径方向外側端部24cにおいてテーパ状に迫り出す迫出部22fをV字の折返し形状の外側角部に設けてもよい。すなわち、迫出部22fの設ける位置を、上記した迫出部22eと逆側の角部に設けてもよい。なお、
図7では、第2態様の磁石収容孔24β側のみに迫出部22fを設け、第1態様の磁石収容孔24α側の径方向外側端部24cの孔形状は、迫出部22fを設けない矩形状としてもよい。つまり、迫出部22e又は迫出部22fを周方向に複数ある磁石収容孔24の全てに設けてもよく、また一部に設けるだけでもよい。
【0046】
また、
図8及び
図9に示すように、例えば第2態様の磁石収容孔24β側の孔幅(永久磁石23の厚さWm2相当)を細く構成してもよい。また、
図8に示すように、例えば第2態様の磁石収容孔24βの直線部24aが屈曲部24bに向かうほど磁極境界線Ldから離間する態様としてもよい。この場合、直線部24aは、磁極境界線Ldに対して傾斜する。また、
図9に示すように、例えば第2態様の磁石収容孔24βの直線部24aが径方向外側端部24cから屈曲部24bにわたって磁極境界線Ldから一様に離間する態様としてもよい。この場合、直線部24aは、磁極境界線Ldに対して平行となる。なお、これらは第1態様の磁石収容孔24α側に適用してもよい。
【0047】
また、
図10に示すように、例えば永久磁石23の突出部23xを省略してもよい。この場合、永久磁石23の端部は、ロータコア22の軸方向端面22cと面一となる。また、
図10に示すように、例えば磁石収容孔24の屈曲部24bの孔幅(永久磁石23の厚さWm相当)についても直線部24aと同じ幅に設定してもよい。
【0048】
・コアシート30を1枚毎で第1位置と45°回転させた第2位置との交互となるように配置したが、複数枚単位で第1及び第2位置の交互に配置してもよい。この場合、同じ枚数単位で交互としてもよく、異なる枚数毎で交互としてもよい。
【0049】
・コアシート30の周方向に第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とを交互に配置、すなわち第1及び第2磁石用貫通孔31,32のそれぞれを1個おきに配置したが、第1及び第2磁石用貫通孔31,32のいずれかを2個おき以上に配置して構成してもよい。
【0050】
・第1磁石用貫通孔31の連結部31cを1個としたが、2個以上設けてもよい。この場合、外側コア部25の支持箇所は、ロータコア22の磁石収容孔24の構成上必然的に備えられる2箇所の連結部22dに加わり、合計4箇所以上となる。また、連結部31c等の連結部の配置位置に関して、磁石収容孔24の折返し形状の途中位置として屈曲部24b、この場合第1磁石用貫通孔31の屈曲部31bに連結部31cを設けたが、屈曲部31b以外、例えば上記実施形態で言えば直線部31a等に設けてもよい。また、連結部31c等の連結部の延びる方向に関して、上記実施形態では連結部31cを第1磁石用貫通孔31の孔幅方向に延びる形状、この場合第1磁石用貫通孔31の内周縁部と直交する方向、さらには径方向に延びる形状としたが、例えば孔幅方向に対して斜めの方向に延びる形状や径方向以外に延びる方向とする等、適宜変更してもよい。
【0051】
・磁石収容孔24の径方向外側端部24cに設ける迫出部22e,22fをテーパ状に迫り出す形状としたが、迫り出す形状を矩形状や湾曲状等、適宜変更してもよい。また上記したが、迫出部22e,22fを省略し、
図7等のように磁石収容孔24の径方向外側端部24cの孔形状を矩形状としてもよい。
【0052】
・ロータコア22の磁石収容孔24に磁石材料を射出成形して永久磁石23を構成したが、永久磁石23を予め作製しておき、ロータコア22の磁石収容孔24に挿入して固定する態様であってもよい。
【0053】
・ロータ20の磁極数、すなわち永久磁石23及び磁石収容孔24の個数を適宜変更してもよい。また、ステータ10の磁極数を適宜変更してもよい。
・上記以外、回転電機Mの構成を適宜変更してもよい。
【0054】
・上記実施形態において、磁石収容孔24の内面に凹凸部を設けた構成の例を、
図11~
図18に示している。
図11に示すように、永久磁石23に接する磁石収容孔24の内面は、内側側面41と外側側面42とを含む。内側側面41は、外側コア部25を構成する側面であって、永久磁石23のV字の折返し形状の内側に接する面である。外側側面42は、内側側面41に対して孔幅方向に対向する側面である。なお、磁石収容孔24の孔幅方向とは、軸方向視において磁石収容孔24の延在方向に直交する方向である。磁石収容孔24の延在方向とは、磁石収容孔24を軸方向から見たときの略V字の折返し形状に沿った方向である。内側側面41及び外側側面42の各々は、軸方向視で磁石収容孔24の折返し形状に沿った面である。
【0055】
内側側面41は、第1凹凸部43を有している。外側側面42は、第2凹凸部44を有している。第1凹凸部43は、屈曲部24bにおける内側側面41に設けられている。第2凹凸部44は、屈曲部24bにおける外側側面42に設けられている。また、磁石収容孔24の内面において、直線部24aの径方向外側端部24cに対応する部分には、第3凹凸部45が設けられている。また、本例では、磁石収容孔24の内面は、第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45が形成されていない部位である非凹凸部46を有している。第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45は、磁石収容孔24の延在方向において部分的に形成され、磁石収容孔24の延在方向のその他の箇所に非凹凸部46が形成されている。
【0056】
ロータコア22を構成する個々のコアシート30については、
図14(a)に示すような同一構成のものが用いられている。これにより、各コアシート30を同一部品としての管理が可能である。なお、
図14(b)に示すコアシート30は、
図14(a)に示すコアシート30とは一見異なる形状に見えるが、実際は
図14(a)にて示した第1位置に対して磁石収容孔24を1個分、換言すれば1磁極分である45°回転させた第2位置に配置したものである。
【0057】
ロータコア22を構成すべくコアシート30を積層する過程で、本例ではコアシート30を1枚単位で、
図14(a)に示す第1位置に配置したものと、45°回転させた
図14(b)に示す第2位置に配置したものとが交互となるように積層される。これにより、第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とが軸方向において交互に重なる。そして、軸方向に重なる第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とで各磁石収容孔24が構成される。
【0058】
磁石収容孔24の内面において、第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45の各々は、第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32の周縁部の位置の違いによって形成される。
【0059】
図11及び
図12に示すように、第1磁石用貫通孔31の屈曲部31bの孔幅は、第2磁石用貫通孔32の屈曲部32bの孔幅よりも狭い。また、各屈曲部31b,32bの径方向の中心位置は同位置に設定されている。そして、第1凹凸部43及び第2凹凸部44は、屈曲部31b,32bの孔幅の違いによって形成されている。
【0060】
図12に示すように、第1凹凸部43は、軸方向において複数の凹部43aを有している。永久磁石23は、第1凹凸部43の各凹部43aに入り込む係合部51を有している。各係合部51は、各凹部43aに対して軸方向に引っ掛かるようになっている。
【0061】
第2凹凸部44は、軸方向において複数の凹部44aを有している。永久磁石23は、第2凹凸部44の各凹部44aに入り込む係合部52を有している。各係合部52は、各凹部44aに対して軸方向に引っ掛かるようになっている。なお、本例では、第1凹凸部43の凹部43aの深さD1は、外側側面42に設けられた第2凹凸部44の凹部44aの深さD2と同等の深さに設定されている。また、凹部43aの深さD1及び凹部44aの深さD2の各々は、例えば、直線部24aに近づくにつれて徐々に浅くなっている。
【0062】
第3凹凸部45は、第1磁石用貫通孔31及び第2磁石用貫通孔32の各々の直線部31a,32aの径方向外側端部における形状の違いによって形成されている。
図14(a)に示すように、第1磁石用貫通孔31の直線部31aの径方向外側端部には、直線部31aに対して孔幅方向の内側に迫り出す迫出部31eが形成されている。迫出部31eは、直線部31aの径方向外側端部において、V字の折返し形状の内側角部に形成されている。また、迫出部31eは、当該内側角部をテーパ状とすることにより形成されている。
【0063】
図13に示すように、第3凹凸部45は、迫出部31eを有する直線部31aと迫出部を有しない直線部32aとが軸方向に重なることにより形成されている。第3凹凸部45は、軸方向において複数の凹部45aを有している。凹部45aは、迫出部を有しない直線部32aにて構成される。第3凹凸部45の凸部は、迫出部31eにて構成される。永久磁石23は、第3凹凸部45の各凹部45aに入り込む係合部53を有している。各係合部53は、各凹部45aに対して軸方向に引っ掛かるようになっている。なお、迫出部31eを、第1磁石用貫通孔31ではなく、第2磁石用貫通孔32に形成してもよい。
【0064】
図11に示すように、非凹凸部46は、磁石収容孔24の内面において、第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45が形成されていない部位である。すなわち、磁石収容孔24を軸方向から見たとき、非凹凸部46では、軸方向に重なる第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32の各々の周縁部の位置が一致している。
【0065】
図11に示すように、ロータコア22には、磁石収容孔24に対応した折返し形状の途中位置において孔幅方向に対向する内周縁部間を連結する連結部61が設けられている。連結部61は、例えば、磁石収容孔24の屈曲部24bに設けられている。
【0066】
本例では、連結部61は、第1磁石用貫通孔31及び第2磁石用貫通孔32のうち、第1磁石用貫通孔31のみに形成されている。連結部61は、各第1磁石用貫通孔31の屈曲部31bに形成されている。連結部61は、屈曲部31bの孔幅方向に延びて同方向に対向する内周縁部間を互いに連結する。各第1磁石用貫通孔31の連結部61において、連結部61が延びる方向に対して直交する方向の幅は、例えば、互いに同等の幅に設定されている。また、各コアシート30がロータコア22として積層された状態において、1つの磁石収容孔24における各連結部61は、軸方向に沿った一直線上に配置される。
【0067】
本例では、第1磁石用貫通孔31の屈曲部31bの孔幅は、第2磁石用貫通孔32の屈曲部32bの孔幅よりも小さい。したがって、第1磁石用貫通孔31の屈曲部31bに連結部61を設けることで、第2磁石用貫通孔32の屈曲部32bに連結部を設けた場合と比較して、連結部61の孔幅方向の長さを短く構成できる。
【0068】
また、本例では、第2磁石用貫通孔32には連結部が形成されない。このため、磁石収容孔24の屈曲部24bにおいて、コアシート30の一枚おきに連結部が無い箇所が存在する。そして、その連結部が無い箇所には、永久磁石23を構成する磁性材料が入り込んでいる。連結部61は、第1凹凸部43と第2凹凸部44との間に設けられている。換言すれば、連結部61は、第1凹凸部43と第2凹凸部44とを連結している。
【0069】
図11~
図13に示すような構成によれば、磁石収容孔24の構成上必然的に備えられる2箇所の連結部22dに加え、屈曲部24bに位置する連結部61も新たに追加された3箇所で外側コア部25が支持される。これにより、外側コア部25の遠心力強度の向上が図られている。また、2つの連結部22d及び連結部61からなる3箇所の支持点が、外側コア部25の周囲においてバランスよく配置される。これにより、外側コア部25の安定支持に貢献している。
【0070】
径方向内側に凸の折返し形状をなす永久磁石23を用いたロータ20では、永久磁石23の径方向外側に位置する外側コア部25の体積が大きくなる。また、高トルク化を図るべく、永久磁石23の径方向外側端部をロータコア22の外周面22aの近くにまで延ばした場合、連結部22dの肉厚が薄くなり、当該連結部22dの強度が低くなる傾向がある。このため、例えば外的要因によってロータ20に軸方向の加振力が加わったとき、連結部22dを支点として外側コア部25が軸方向に振動しようとする力が発生する。これにより、連結部61に負荷がかかり、何ら対策を講じていない場合には連結部61が変形するおそれがある。
【0071】
その点、
図11~
図13に示すような構成では、磁石収容孔24に充填されるボンド磁石からなる永久磁石23は、磁石収容孔24の第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45に対していわゆるアンカー効果のように係合する。すなわち、外側コア部25は、第1凹凸部43及び第3凹凸部45によって、永久磁石23のV字形状の内側面に対して軸方向に係合する。また、永久磁石23のV字形状の外側面は、第2凹凸部44によって、ロータコア22における外側コア部25以外の部位に対して軸方向に係合する。これにより、例えば外的要因によってロータ20に軸方向の加振力が加わっても、外側コア部25が連結部22dを支点として軸方向に振動することを抑制できる。その結果、連結部61に掛かる負荷が軽減される。このように、外側コア部25が軸方向に振動することにより連結部61が変形することを、第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45にて抑制することが可能である。すなわち、本例のような構成では、外側コア部25の遠心力強度と軸方向強度の両方の向上に寄与できる。
【0072】
また、上記の例では、磁石収容孔24の内面には、第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45が形成されていない部位である非凹凸部46が設けられる。これにより、磁石収容孔24の内面全体に凹凸部がある構成に比べ、磁石収容孔24と永久磁石23との境界が凹凸であることにより発生する軸方向の漏れ磁束を抑制できる。
【0073】
また、上記の例では、磁石収容孔24の内面は、外側コア部25を形成する内側側面41と、内側側面41に対向する外側側面42と、を含む。内側側面41には第1凹凸部43及び第3凹凸部45が設けられる。外側側面42には第2凹凸部44が設けられる。この構成によれば、磁石収容孔24の内側側面41及び外側側面42のそれぞれが凹凸を有するため、当該凹凸によって外側コア部25の振動をより効果的に抑制可能となる。また、磁石収容孔24の内側側面41及び外側側面42のそれぞれに非凹凸部46が設けられるため、非凹凸部46を設けることによる漏れ磁束の抑制効果をより好適に得ることが可能となる。
【0074】
また、上記の例では、第1凹凸部43及び第2凹凸部44は、ロータコア22の外径の半分の径を有する基準円C1の範囲内に設けられている。基準円C1は、ロータ20の軸中心O1を中心とする円である。基準円C1が示す範囲は、ロータコア22の径方向内側寄りの範囲、すなわち出力に寄与しにくい範囲である。このため、第1凹凸部43を基準円C1の範囲内に設けることで、第1凹凸部43を設けることによる出力低下を小さく抑えることが可能となる。
【0075】
また、上記の例では、第1凹凸部43及び第2凹凸部44は、磁石収容孔24の折返し形状の屈曲部24bに設けられている。この構成によれば、外側コア部25において連結部22dから離れた位置にある径方向内側端部を、第1凹凸部43及び第2凹凸部44によって永久磁石23に軸方向に係合させることが可能となる。したがって、連結部22dを支点とする外側コア部25の軸方向の振動を第1凹凸部43及び第2凹凸部44によって効果的に抑制可能となる。
【0076】
また、上記の例では、第3凹凸部45は、磁石収容孔24の径方向外側端部24cに設けられている。この構成によれば、外側コア部25の径方向外側端部付近において振動を抑制可能となる。また、第3凹凸部45の凸部は、磁石収容孔24の孔幅方向の内側に迫り出す迫出部31eによって構成されている。迫出部31eは、第1磁石用貫通孔31に形成されている。これにより、第1磁石用貫通孔31に対応する連結部22dの周方向長さを短く構成できる。その結果、コアシート30の成形性向上に寄与できる。
【0077】
また、迫出部31eは、直線部31aの径方向外側端部において、V字の折返し形状の内側角部に形成されている。これにより、永久磁石23の磁束低下を極力抑えつつも、迫出部31eによって第3凹凸部45を構成することが可能である。また、迫出部31eを設けることで永久磁石23の体積を小さくしつつも、磁束低下は極力抑えられることで、永久磁石23の単位体積当たりの出力トルクを向上させることが可能である。
【0078】
また、上記の例では、複数のコアシート30は、互いに同一構成である。各コアシート30には、形状が互いに異なる第1磁石用貫通孔31及び第2磁石用貫通孔32が混在して設けられている。そして、1つの磁石収容孔24の構成において第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とが混在している。この構成によれば、各コアシート30を同一構成とすることで部品管理を容易にしつつも、軸方向に重なる第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とによって磁石収容孔24に第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45を形成できる。
【0079】
また、上記の例では、互いに形状が異なる第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とを1つのコアシート30に形成することにより生じうる磁気的アンバランスを極力抑えることが可能となる。
【0080】
なお、
図11に示す例では、第1磁石用貫通孔31及び第2磁石用貫通孔32の屈曲部31b,32bの孔幅の違いによって第1凹凸部43及び第2凹凸部44を形成したが、これに特に限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0081】
例えば、
図15及び
図16に示すように、第1磁石用貫通孔31及び第2磁石用貫通孔32の屈曲部31b,32bの径方向幅を同等とし、屈曲部31b,32bの径方向の位置の違いによって第1凹凸部43及び第2凹凸部44を形成してもよい。同図に示す構成では、第1凹凸部43及び第2凹凸部44は、第1磁石用貫通孔31の屈曲部31bと第2磁石用貫通孔32の屈曲部32bとの径方向の位置の違いにより形成されている。第1磁石用貫通孔31の屈曲部31bは、第2磁石用貫通孔32の屈曲部32bよりも径方向内側に位置する。
【0082】
このような構成によっても、
図11に示すような構成と略同様の効果を得ることが可能である。また、
図15に示すような構成によれば、各磁石収容孔24内に形成される永久磁石23の磁気特性が互いに異ならないようにしつつも、磁石収容孔24の内面に第1凹凸部43及び第2凹凸部44を形成することが可能となる。なお、屈曲部31b,32bの位置を異ならせる構成と、屈曲部31b,32bの孔幅を異ならせる構成とを組み合わせることも可能である。
【0083】
また、上記の各例では、コアシート30を1枚毎で第1位置と45°回転させた第2位置との交互となるように配置したが、複数枚単位で第1及び第2位置の交互に配置してもよい。この場合、同じ枚数単位で交互としてもよく、異なる枚数毎で交互としてもよい。
図17には、一例として、コアシート30を2枚毎で第1位置と45°回転させた第2位置との交互となるように積層した構成を示している。このような構成によっても、上記の各例と略同様の効果を得ることが可能である。
【0084】
また、上記の各例では、磁石収容孔24の内面における凹凸部の形成位置は、上記の例に限定されるものではなく、適宜変更可能である。例えば、軸方向視における直線部24aの中間部において、磁石収容孔24の内面に凹凸部を形成してもよい。
【0085】
また、上記の各例の磁石収容孔24において、例えば、第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45のいずれか1つを省略してもよい。また、上記の各例において、連結部61は、第1凹凸部43と第2凹凸部44との間に設けられるが、これに以外に例えば、非凹凸部46において連結部61を設けてもよい。
【0086】
また、上記の例では、磁石収容孔24の延在方向において部分的に第1凹凸部43、第2凹凸部44及び第3凹凸部45が形成されるとともに、磁石収容孔24の延在方向のその他の箇所に非凹凸部46が形成されているが、これに特に限定されるものではない。例えば、磁石収容孔24の内面に対し、軸方向の一部に凹凸部を形成するとともに、軸方向における当該凹凸部以外の箇所に非凹凸部を形成してもよい。
【0087】
また、例えば
図18に示すように、各磁石収容孔24の内面の全体に凹凸部71を形成してもよい。同図に示す構成では、第1磁石用貫通孔31を第2磁石用貫通孔32より一回り小さい形状としている。そして、互いに形状の異なる第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とが軸方向に重なることにより、磁石収容孔24の内面全体に凹凸部71が形成されている。このような構成によれば、磁石収容孔24の内面における凹凸部71の面積を広く確保することが可能となる。その結果、外側コア部25の軸方向の振動をより好適に抑制することが可能となる。
【0088】
なお、上記の各例では、第1磁石用貫通孔31の連結部61を1個としたが、2個以上設けてもよい。この場合、外側コア部25の支持箇所は、磁石収容孔24の構成上必然的に備えられる2箇所の連結部22dに加わり、合計4箇所以上となる。
【0089】
また、上記の各例では、連結部61を磁石収容孔24における屈曲部24bに設けたが、屈曲部24b以外の例えば直線部24a等に連結部61を設けてもよい。
また、上記の各例では、連結部61が延びる方向を、磁石収容孔24の屈曲部24bの孔幅方向であって、ロータ20の径方向としたが、これ以外に例えば、孔幅方向に対して斜めの方向や径方向以外に延びる方向とする等、適宜変更してもよい。
【0090】
・上記実施形態及び上記の各変更例では、1枚のコアシート30において、第1磁石用貫通孔31と第2磁石用貫通孔32とを同数としたが、これに特に限定されるものではない。すなわち、1枚のコアシート30において、第1磁石用貫通孔31の数を、第2磁石用貫通孔32の数よりも多くまたは少なくしてもよい。なお、第1磁石用貫通孔31及び第2磁石用貫通孔32の数によらず、各第1磁石用貫通孔31及び各第2磁石用貫通孔32の形状を、軸中心O1を中心とする点対称となるように構成することで、周方向における磁気アンバランスを抑制することが可能となる。
【0091】
例えば、
図19に示すコアシート30では、第1磁石用貫通孔31を2つ、第2磁石用貫通孔32を4つとしている。また、2つの第1磁石用貫通孔31は、180°対向位置に配置されている。これにより、周方向における磁気アンバランスを抑制することが可能となる。なお、
図19に示す例では、第1磁石用貫通孔31の屈曲部31bの孔幅が第2磁石用貫通孔32の屈曲部32bの孔幅よりも狭い。つまり、永久磁石23の屈曲部23bの厚さは、第2磁石用貫通孔32に比べて第1磁石用貫通孔31で薄くなる。このため、第1磁石用貫通孔31の数を第2磁石用貫通孔32の数よりも少なく構成することで、出力トルクの低下を小さく抑えることが可能となる。
【0092】
・上記実施形態及び上記の各変更例では、コアシート30を積層する過程で、各コアシート30を1磁極分である45°毎回転させるが、この積層の際の回転角度は、1磁極分である45°に限定されず、磁極2つ分、または3つ分等、45°以外の角度であってもよい。
【0093】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記磁石収容孔の内面には、軸方向に重なる前記磁石用貫通孔の周縁部の位置の違いによって形成される凹凸部(43,44,45)と、前記凹凸部が形成されていない部位である非凹凸部(46)と、が設けられている。
【0094】
この構成によれば、磁石収容孔の内面に非凹凸部が設けられるため、磁石収容孔の内面全体に凹凸部がある構成に比べ、磁石収容孔と永久磁石との境界が凹凸であることにより発生する軸方向の漏れ磁束を抑制できる。
【0095】
(ロ)前記ロータコアは、前記永久磁石よりも径方向外側の部位である外側コア部(25)を有し、
前記磁石収容孔の内面は、前記外側コア部を形成する内側側面(41)と、前記内側側面に対向する外側側面(42)と、を含み、
前記凹凸部は、前記内側側面及び前記外側側面の各々に設けられ、
前記非凹凸部は、前記内側側面及び前記外側側面の各々に設けられている。
【0096】
この構成によれば、磁石収容孔の内側側面及び外側側面のそれぞれが凹凸部を有するため、当該凹凸部によって外側コア部の振動をより効果的に抑制可能となる。また、磁石収容孔の内側側面及び外側側面のそれぞれに非凹凸部が設けられる。このため、非凹凸部を設けることによる漏れ磁束の抑制効果をより好適に得ることが可能となる。
【0097】
(ハ)前記凹凸部は、前記ロータコアの外径の半分よりも径方向内側に設けられている。
この構成によれば、ロータコアの外径の半分よりも径方向内側の範囲は、出力に寄与しにくい範囲である。このため、凹凸部をロータコアの外径の半分よりも径方向内側に設けることで、凹凸部を設けることによる出力低下を小さく抑えることが可能となる。
【0098】
(ニ)前記凹凸部は、前記磁石収容孔の折返し形状の屈曲部(24b)に設けられている。
この構成によれば、外側コア部の径方向内側端部を、屈曲部に設けられた凹凸部によって永久磁石に軸方向に係合させることが可能となる。したがって、外側コア部の軸方向の振動を凹凸部によって効果的に抑制可能となる。
【0099】
(ホ)前記凹凸部は、前記磁石収容孔の径方向外側端部(24c)に設けられている。
この構成によれば、外側コア部の径方向外側端部付近において振動を抑制可能となる。
(ヘ)前記磁石収容孔の径方向外側端部に設けられた前記凹凸部の凸部は、前記磁石収容孔の孔幅方向の内側に迫り出す迫出部(31e)によって構成されている。
【0100】
この構成によれば、迫出部を設けることによって、磁石収容孔の径方向外側端部付近に形成される連結部の周方向長さを部分的に短く構成できる。その結果、コアシートの成形性向上に寄与できる。
【0101】
(ト)前記迫出部は、前記磁石収容孔の径方向外側端部において、前記磁石収容孔の折返し形状の内側角部に形成されている。
この構成によれば、永久磁石の磁束低下を極力抑えつつも、迫出部によって凹凸部を構成することが可能である。また、迫出部を設けることで永久磁石の体積を小さくしつつも、磁束低下は極力抑えられることで、永久磁石の単位体積当たりの出力トルクを向上させることが可能である。
【0102】
(チ)1枚の前記コアシートに形成される前記各第1磁石用貫通孔の前記連結部において、前記連結部が延びる方向に対して直交する方向の幅は、互いに同等の幅に設定されている。
【0103】
この構成によれば、各コアシートがロータコアとして積層された状態において、1つの磁石収容孔における各連結部は、軸方向に沿った一直線上に配置される。このため、外側コア部に軸方向の加振力が加わったとき、1つの磁石収容孔における各連結部に略均等に負荷が掛かることとなる。このため、連結部の変形を好適に抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0104】
M 回転電機、10 ステータ、20 ロータ、22 ロータコア、22c 軸方向端面、22e,22f 迫出部、23 永久磁石、23a 直線部(他の部位)、23b 屈曲部、23x 突出部、24 磁石収容孔、24c 径方向外側端部、30 コアシート、31 第1磁石用貫通孔、31b 屈曲部、31c,61 連結部、31d 側縁部、32 第2磁石用貫通孔、t 板厚、Wb 幅、Wm,Wm1 厚さ、43 第1凹凸部(凹凸部)、43a 凹部、44 第2凹凸部(凹凸部)、44a 凹部、45 第3凹凸部(凹凸部)、45a 凹部、51~53 係合部、71 凹凸部。