(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】硬化剤、2液型接着剤、接着剤組成物、硬化物、積層体及びその製造方法、包装材、並びに包装体
(51)【国際特許分類】
C09J 175/06 20060101AFI20250408BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20250408BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
C09J175/06
B32B27/00 D
B32B27/40
(21)【出願番号】P 2021141153
(22)【出願日】2021-08-31
(62)【分割の表示】P 2020568358の分割
【原出願日】2020-08-03
【審査請求日】2023-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2019144315
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】堀内 雅文
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-530478(JP,A)
【文献】特開2017-043693(JP,A)
【文献】特開2004-352905(JP,A)
【文献】特開2003-113359(JP,A)
【文献】特開2018-140558(JP,A)
【文献】特開平07-011225(JP,A)
【文献】特開平06-025636(JP,A)
【文献】特表2019-509196(JP,A)
【文献】特表2018-521913(JP,A)
【文献】国際公開第2015/008822(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/168945(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-5/10
C09J9/00-201/10
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電インク組成物が印刷されている印刷面を接着する接着剤組成物であって、
ポリオールと、ポリイソシアネートと、
両末端にエポキシ基を有する2官能の脂環式エポキシ化合物と、を含有し、
前記ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基に対する、前記脂環式エポキシ化合物に含まれるエポキシ基のモル比が0.5~10であり、
前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとがウレタン結合を形成するとともに、前記
脂環式エポキシ化合物、又は、前記
脂環式エポキシ化合物及び前記ポリイソシアネートが前記静電インク組成物を架橋する、接着剤組成物。
【請求項2】
前記印刷面を接着する際の塗布量が1~10g/m
2である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記静電インク組成物はポリエチレンイミン樹脂で構成されるプライマー層上に印刷されている、請求項1又は2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記ポリエチレンイミン樹脂の塗布量が0.01~1.5g/m
2である、請求項3に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
硬化後の動的粘弾性測定によって求められるガラス転移温度が20℃以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記ポリオールに含まれる水酸基に対する、前記ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基のモル比が0.5~10である、請求項1~
5のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記ポリオール100質量部に対し、前記
脂環式エポキシ化合物を3~25質量部含有する、請求項1~
6のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記ポリオール100質量部に対し、前記ポリイソシアネートを10~50質量部含有する、請求項1~
7のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記ポリオールは、脂肪族ポリエステルポリオールであ
る、請求項1~
8のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記ポリイソシアネートは、キシリレンジイソシアネート誘導体を含み、
前記ポリイソシアネート全体に対する前記キシリレンジイソシアネート誘導体の含有量が10質量%以上である、請求項1~
9のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
前記
脂環式エポキシ化合物の分子量は500以下である、請求項1~
10のいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
静電インク組成物が印刷されている印刷面を接着する接着剤用の硬化剤であって、
ポリイソシアネートと
両末端にエポキシ基を有する2官能の脂環式エポキシ化合物とを含有し、
前記ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基に対する、前記
脂環式エポキシ化合物に含まれるエポキシ基のモル比が0.5~10であり、
前記脂環式エポキシ化合物、又は、前記
脂環式エポキシ化合物及び前記ポリイソシアネートが前記静電インク組成物を架橋する、硬化剤。
【請求項13】
前記ポリイソシアネートは、キシリレンジイソシアネート誘導体を含み、
前記ポリイソシアネート全体に対する前記キシリレンジイソシアネート誘導体の含有量が10質量%以上である、請求項
12に記載の硬化剤。
【請求項14】
前記エポキシ化合物の分子量は500以下である、請求項
12又は13に記載の硬化剤。
【請求項15】
静電インク組成物が印刷されている印刷面を接着する2液型接着剤であって、
主剤を含む第1液と、
請求項
12~14のいずれか一項に記載の硬化剤を含む第2液と、を有する、2液型接着剤。
【請求項16】
前記主剤はポリオールを含有する、請求項
15に記載の2液型接着剤。
【請求項17】
前記主剤に含有される前記ポリオールに含まれる水酸基に対する、前記硬化剤に含有される前記ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基のモル比が0.5~10である、請求項
16に記載の2液型接着剤。
【請求項18】
前記主剤に含有される前記ポリオールは、脂肪族ポリエステルポリオールであ
る、請求項
16又は17に記載の2液型接着剤。
【請求項19】
請求項1~
11のいずれか一項に記載の接着剤組成物を硬化して得られる硬化物。
【請求項20】
動的粘弾性測定によって求められるガラス転移温度が20℃以下である、請求項
19に記載の硬化物。
【請求項21】
第1基材、接着層、及び第2基材をこの順に備える積層体であって、
前記第1基材及び前記第2基材の少なくとも一方と前記接着層との間に静電インク組成物で構成される静電インク層を有し、
前記接着層は、
請求項19又は20に記載の硬化物で構成され、
前記静電インク組成物が、前記
脂環式エポキシ化合物、又は、前記エポキシ化合物及び前記ポリイソシアネートによって架橋されている、積層体。
【請求項22】
前記第1基材と前記静電インク層との間にポリエチレンイミンを含有するプライマー層を有する、請求項
21に記載の積層体。
【請求項23】
請求項
21又は22に記載の積層体を有する包装材。
【請求項24】
請求項
23に記載の包装材と、当該包装材で包装される被包装物とを備える、包装体。
【請求項25】
第1基材の一方面側に静電インク組成物を印刷して印刷面を得る工程と、
前記印刷面と第2基材側の一方面とを、請求項1~11のいずれか一項に記載の接着剤組成物を用いて接着する工程と、を有し、
接着する前記工程において、前記接着剤組成物に含まれる前記ポリオールと前記ポリイソシアネートとがウレタン結合を形成するとともに、前記
脂環式エポキシ化合物、又は、前記
脂環式エポキシ化合物及び前記ポリイソシアネートが前記静電インク組成物を架橋する、積層体の製造方法。
【請求項26】
第1基材の一方面側に静電インク組成物を印刷して印刷面を得る工程と、
請求項
15~18のいずれか一項に記載の2液型接着剤における前記第1液と前記第2液とを混合して接着剤組成物を調製する工程と、
前記印刷面と第2基材側の一方面とを、前記接着剤組成物を用いて接着する工程と、を有し、
接着する前記工程において、前記接着剤組成物に含まれるポリオールと前記ポリイソシアネートとがウレタン結合を形成するとともに、前記
脂環式エポキシ化合物、又は、前記
脂環式エポキシ化合物及び前記ポリイソシアネートが前記静電インク組成物を架橋する、積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬化剤、2液型接着剤、接着剤組成物、硬化物、積層体及びその製造方法、包装材、並びに包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の被包装物を密封保存する包装袋が知られている。包装袋としては、薄いフィルム又はシートを用いたパッケージが用いられている。このような包装袋には、製品、ブランド、製造元等の種々の情報が印刷されている。このような印刷手段として、静電インク組成物を用いるデジタル印刷機が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1では、PETフィルム等の第一の可撓性基材にプライマー樹脂を塗布して塗布面を得ること、当該塗布面にデジタル印刷機(HP社製,Indigo20000ラベル及びパッケージ用デジタル印刷機)を用いて静電印刷を行うこと、及び、架橋組成物を塗布することが提案されている。このようにして所定の工程を行った後、所定の成分が塗布された第一の可撓性基材と、第二の可撓性基材とをラミネートして包装材を得る技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
包装材は、種々の用途に用いられる。例えば、レトルト食品を包装する包装材は、例えば高温熱水処理条件下で加熱される場合がある。このような加熱条件下においても被包装物の品質を維持するため、密封性を高いレベルで維持することが求められる。ところが、デジタル印刷機による静電インク組成物の印刷物を含む積層体では、積層体を構成する各層間の接着強度が低下し、被包装物の密封性が損なわれることが懸念される。
【0006】
そこで、本開示では、高温熱水処理条件下においても、各層間の接着強度を十分高く維持することが可能な積層体及びその製造方法を提供する。また、このような積層体を得るために有用な硬化剤、接着剤組成物、2液型接着剤及び硬化物を提供する。また、このような積層体を備えることによって密封性に優れる包装材を提供する。また、密封性に優れる包装材で包装された包装体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、静電インク組成物が印刷されている印刷面を接着する接着剤組成物であって、ポリオールを含む主剤と、ポリイソシアネートを含む硬化剤と、エポキシ化合物と、を含有する接着剤組成物を提供する。この接着剤組成物は、これらの成分を含有することによって、静電インク組成物が印刷されている印刷面を高い接着強度で接着することができる。また、上記接着剤組成物は、静電インク組成物を凝集させて静電インク層の強度を向上させる作用を有すると考えられる。静電インク組成物は、通常、耐熱性及び耐水性が低い。しかしながら、上述の作用によって、上記接着剤組成物は、高温熱水処理条件下において高い接着強度を維持することができる。
【0008】
上記接着剤組成物において、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基に対する、エポキシ化合物に含まれるエポキシ基のモル比が0.5~10であってよい。これによって、高温熱水処理条件下において十分に高い接着強度を維持することができる。
【0009】
上記接着剤組成物において、ポリオールに含まれる水酸基に対する、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基のモル比が0.5~10であってよい。
これによって、高い接着強度を有しつつ柔軟性に優れる硬化物を形成することができる。
【0010】
上記接着剤組成物は、ポリオール100質量部に対し、エポキシ化合物を3~25質量部含有してよい。これによって、高い接着強度を維持しつつ、剪断抑制力にも優れる。このため、接着面同士を接着剤組成物で接着したときに、接着面同士がずれたり、接着後に接着剤がはみ出したりすることを抑制することができる。
【0011】
上記接着剤組成物は、ポリオール100質量部に対し、ポリイソシアネートを10~50質量部含有してよい。これによって、シール強度及び高温熱水処理条件下における接着強度を十分に高くすることができる。
【0012】
上記接着剤組成物は、静電インク組成物が印刷されている印刷面と基材とを接着するものであってよい。静電インク組成物は、通常、耐熱性及び耐水性が低い。しかしながら、上記接着剤組成物を用いて上記印刷面を接着した場合、加熱された水と接触する条件であっても、優れた接着性を維持することができる。このため、接着面間の接着強度が低下することを抑制できる。
【0013】
上記ポリオールは、脂肪族ポリエステルポリオールであってよい。上記エポキシ化合物は、両末端にエポキシ基を有するものであってよい。これによって、常温下のみならず高温熱水処理条件下においても高い接着強度を有する。
【0014】
上記エポキシ化合物は、2官能の脂環式エポキシ化合物を含んでいてよい。このようなエポキシ化合物は、2官能であることによって、静電インク組成物及びプライマー樹脂との架橋点を増やして接着剤の硬化反応を促進し、硬化し易くすることができる。また、脂環式であることによって、立体障害によりポリイソシアネートとの反応を抑制することができる。このため、安定的に硬化機能を発揮することができる。
【0015】
上記ポリイソシアネートは、キシリレンジイソシアネート誘導体を含んでよい。ポリイソシアネート全体に対するキシリレンジイソシアネート誘導体の含有量は10質量%以上であってよい。これによって、ポリオールとの反応性を高くして硬化性を向上することができる。
【0016】
上記接着剤組成物の硬化後の動的粘弾性測定によって求められるガラス転移温度は20℃以下であってよい。このような接着剤組成物は硬化後の柔軟性に優れるため、ラミネート時に生じる応力を緩和することができる。したがって、接着強度を一層高くすることができる。
【0017】
本開示は、静電インク組成物が印刷されている印刷面を接着する接着剤用の硬化剤であって、ポリイソシアネートとエポキシ化合物とを含有し、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基に対する、エポキシ化合物に含まれるエポキシ基のモル比が0.5~10である、硬化剤を提供する。この硬化剤は、液中での安定性に優れるため、ポリイソシアネートの硬化機能を高く維持することができる。このため、高温熱水処理条件下においても、静電インク組成物が印刷されている印刷面を十分に高い強度で接着することができる。
【0018】
上記硬化剤におけるエポキシ化合物は2官能の脂環式エポキシ化合物を含んでよい。このようなエポキシ化合物は、脂環式であることによって、立体障害によりポリイソシアネートとの反応を抑制することができる。このため、硬化剤の品質を安定的に維持することができる。そして、2官能であることによって、静電インク組成物及びプライマー樹脂との架橋点を増やして接着剤の硬化反応を促進し、硬化し易くすることができる。
【0019】
上記硬化剤におけるポリイソシアネートは、キシリレンジイソシアネート誘導体を含んでよい。ポリイソシアネート全体に対するキシリレンジイソシアネート誘導体の含有量は10質量%以上であってよい。これによって、主剤との反応性を高くして硬化性を向上することができる。
【0020】
本開示は、静電インク組成物が印刷されている印刷面を接着する2液型接着剤であって、主剤を含む第1液と、上述のいずれかの硬化剤を含む第2液と、を有する、2液型接着剤を提供する。このような2液型接着剤は、ポリイソシアネートの反応を抑制し、接着剤としての機能を十分に維持することができる。このため、第1液と第2液を混合したときの接着強度の立ち上がりも良好である。そして、第1液と第2液を混合して接着剤組成物とし、静電インク組成物の上に上述の接着剤組成物を塗布し、硬化させたときに、静電インク組成物を凝集させてインク自体の強度を向上させる作用を有すると考えられる。このため、高温熱水処理条件下においても、静電インク組成物が印刷されている印刷面を、十分に高い強度で接着することができる。
【0021】
上記2液型接着剤における主剤はポリオールを含有してよい。ポリオールは、ポリイソシアネートと円滑に反応して硬化する。そして、硬化剤がエポキシ化合物を含有することから、静電インク組成物を硬化させ、高温熱水処理条件下において、静電インク組成物が印刷されている印刷面を十分に高い接着強度で接着することができる。
【0022】
上記主剤に含有されるポリオールに含まれる水酸基に対する、上記硬化剤に含有されるポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基のモル比は0.5~10であってよい。これによって、高い接着強度を有しつつ柔軟性に優れる硬化物を形成することができる。
【0023】
上記主剤に含有されるポリオールは、脂肪族ポリエステルポリオールであってよい。上記硬化剤に含有されるエポキシ化合物は、両末端にエポキシ基を有するものであってよい。これによって、常温下のみならず高温熱水処理条件下においても高い接着強度を有する接着剤とすることができる。
【0024】
本開示は、上述のいずれかの接着剤組成物を硬化して得られる硬化物を提供する。このような硬化物は、静電インク組成物が印刷されている印刷面を、高温熱水処理条件下においても十分に高い接着強度で接着する。
【0025】
動的粘弾性測定によって求められる上記硬化物のガラス転移温度は20℃以下であってよい。このような硬化物は柔軟性に優れるため、接着に伴って生じる応力を緩和することができる。したがって、接着強度を一層高くすることができる。
【0026】
本開示は、第1基材、接着層、及び第2基材をこの順に備える積層体であって、第1基材及び第2基材の少なくとも一方と接着層との間に静電インク組成物で構成される静電インク層を有し、上記接着層は、ポリウレタンとエポキシ化合物、及びこれらの架橋物、の一方又は双方を含む積層体を提供する。
【0027】
静電インク組成物及びこれで構成される静電インク層は、通常、耐熱性及び耐水性が低い。しかしながら、上記積層体はポリウレタンとエポキシ化合物とを含む接着層を備える。このような接着層は、静電インク層との接着性に優れるとともに、静電インク組成物を凝集させて静電インク層の強度を向上させる作用を有すると考えられる。このため、高温熱水処理条件下においても、積層体の各層間の接着強度を十分に高く維持することができる。また、このような積層体は、エポキシ化合物のコーティング層を別途設けなくてもよいことから、高い生産性で製造することができる。
【0028】
本開示は、第1基材、接着層、及び第2基材をこの順に備える積層体であって、第1基材及び第2基材の少なくとも一方と接着層との間に静電インク組成物で構成される静電インク層を有し、接着層は、ポリオール、ポリイソシアネート、及びエポキシ化合物の重合物を含む積層体を提供する。
【0029】
上記積層体はポリオール、ポリイソシアネート、及びエポキシ化合物の重合物を含む接着層を備える。このような接着層は、静電インク層との接着性に優れるとともに、静電インク組成物を凝集させて静電インク層の強度を向上させる作用を有すると考えられる。このため、高温熱水処理条件下においても、積層体の各層間の接着強度を十分に高く維持することができる。また、このような積層体は、エポキシ化合物のコーティング層を別途設けなくてもよいことから、高い生産性で製造することができる。
【0030】
上記積層体は第1基材と静電インク層の間にプライマー層を有していてよい。プライマー層を有することによって、デジタル印刷機による印刷を容易にすることができる。
【0031】
本開示は、上述のいずれかの積層体を備える包装材を提供する。この包装材は、上述の積層体を備えるため、高温熱水処理条件下に曝される用途に用いられても、被包装物の優れた密封性を十分に維持することができる。したがって、上記包装材は種々の用途に利用することができる。
【0032】
本開示は、上記包装材と、当該包装材で包装される被包装物とを備える、包装体を提供する。この包装体は、上記包装材で包装されていることから、被包装物の品質を十分に維持することができる。
【0033】
本開示は、第1基材の一方面側に静電インク組成物を印刷して印刷面を得る工程と、印刷面と第2基材側の一方面とを、上述のいずれかの接着剤組成物を用いて接着する工程と、を有する積層体の製造方法を提供する。この製造方法は、静電インク組成物を印刷して得られる印刷面を、接着剤組成物を用いて第2基材側の一方面と接着する。このため、印刷面を高い接着強度で接着することができる。また、上記接着剤組成物は、静電インク組成物を凝集させてインク自体の強度を向上させる作用を有すると考えられる。このため、高温熱水処理条件下において高い接着強度を有する積層体が得られる。また、このような積層体は、エポキシ化合物のコーティング層を別途設けなくてもよいことから、高い生産性で製造することができる。
【0034】
本開示は、第1基材の一方面側に静電インク組成物を印刷して印刷面を得る工程と、上述のいずれかの2液型接着剤における第1液と第2液とを混合して接着剤組成物を調製する工程と、印刷面と第2基材側の一方面とを、接着剤組成物を用いて接着する工程と、を有する、積層体の製造方法を提供する。この製造方法は、静電インク組成物を印刷して得られる印刷面を、第1液と第2液とを混合して調製される接着剤組成物を用いて第2基材側の一方面と接着する。このため、印刷面を高い接着強度で接着することができる。また、上記接着剤組成物は、静電インク組成物を凝集させてインク自体の強度を向上させる作用を有すると考えられる。このため、高温熱水処理条件下において高い接着強度を有する積層体が得られる。また、このような積層体は、エポキシ化合物のコーティング層を別途設けなくてもよいことから、高い生産性で製造することができる。また、第1液と第2液とを有する2液型接着剤を用いていることから、接着時の作業性を改善することができる。また、接着剤組成物を調製する際の配合不良の発生を抑制し、接着強度のばらつきを十分に低減することができる。
【発明の効果】
【0035】
本開示によれば、高温熱水処理条件下においても、各層間の接着強度を十分高く維持することが可能な積層体及びその製造方法を提供することができる。また、このような積層体を得るために有用な硬化剤、接着剤組成物、2液型接着剤及び硬化物を提供することができる。また、このような積層体を有することによって密封性に優れる包装材を提供することができる。また、密封性に優れる包装材で包装された包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図2】包装袋及び包装体の一例を示す平面図である。
【
図4】接着剤組成物のNCO反応率の経時変化を示すグラフである。
【
図5】接着剤組成物の接着強度の経時変化を示すグラフである。
【
図6】接着剤組成物のポットライフの経時変化を示すグラフである。
【
図7】実施例7の接着剤組成物を硬化して得られた硬化物の動的粘弾性測定の結果を示すグラフである。
【
図8】比較例1の接着剤組成物を硬化して得られた硬化物の動的粘弾性測定の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示の実施形態を、場合により図面を参照しながら以下に説明する。ただし、以下の実施形態は、本開示を説明するための例示であり、本開示を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用い、場合により重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0038】
一実施形態に係る接着剤組成物は、ポリオールと、ポリイソシアネートと、エポキシ化合物と、を含有する。ポリオールは、例えば、数平均分子量400以上であり、一分子中に2つ以上の水酸基を有する。ポリイソシアネートは、一分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する。ポリオール及びポリイソシアネートは、それぞれ、主剤及び硬化剤として反応してポリウレタン(ポリウレタン接着剤)を生成する。ポリオールは、数平均分子量は、例えば、10000以下であってよい。
【0039】
ポリオールは、ポリエステルポリオール、及びポリエーテルポリオールからなる群より選ばれる少なくとも一つを含有してよい。このうち、接着強度を十分に高くする観点から、ポリオールは、ポリエステルポリオールを含んでよく、脂肪族ポリエステルポリオールを含んでもよい。
【0040】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと、多塩基酸、そのアルキルエステル、その酸無水物、又は、その酸ハライドとの縮合反応、或いはエステル交換反応により得られる。多価アルコールとしては、低分子量ジオール、低分子量トリオール、水酸基を4つ以上有する低分子量ポリオール等が挙げられる。
【0041】
低分子量ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン、2-エチル-2-ブチル-1,3-プロパンジオール等が挙げられる。
【0042】
低分子量トリオールとしては、例えば、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジヒドロキシ-3-ヒドロキシメチルペンタン、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)ペンタン、及び、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-3-ブタノール等が挙げられる。
【0043】
水酸基を4つ以上有する低分子量ポリオールとしては、例えば、テトラメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、D-ソルビトール、キシリトール、D-マンニトール、及びD-マンニット等が挙げられる。
【0044】
多塩基酸のアルキルエステルとしては、多塩基酸のメチルエステル、エチルエステルなどが挙げられる。酸無水物としては、多塩基酸から誘導される酸無水物が挙げられる。例えば、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水2-アルキル(炭素数12~18)コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、及び無水トリメリット酸等が挙げられる。
【0045】
酸ハライドとしては、上記した多塩基酸から誘導される酸ハライドが挙げられる。例えば、シュウ酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、セバチン酸ジクロライドなどが挙げられる。
【0046】
ポリエーテルポリオールは、ポリアルキレンオキサイドであってよい。例えば、低分子量ポリオールを開始剤として、エチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加反応させることによって得られるものであってよい。具体例として、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール(ランダム又はブロック共重合体)が挙げられる。また、例えば、テトラヒドロフランの開環重合などによって得られるポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0047】
ポリイソシアネートとしては、例えば、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体、及びイソシアネート基末端プレポリマー等が挙げられる。接着剤組成物は、互いに異なる複数種類のポリイソシアネートを含んでいてもよい。ポリオールの水酸基に対する、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は、0.5~10であってよい。このような接着剤組成物は、高い接着強度を有しつつ柔軟性に優れる硬化物を形成することができる。
【0048】
ポリイソシアネート単量体としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、及び脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0049】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート)、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、及び、2,6-ジイソシアネートメチルカプエート等が挙げられる。
【0050】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、キシリレンジイソシアネート誘導体が挙げられる。キシリレンジイソシアネート誘導体としては、例えば、キシリレンジイソシアネート(1,3-キシリレンジイソシアネート、又は、1,4-キシリレンジイソシアネート)(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、又は、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート)(TMXDI)、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、及び、キシリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの反応により得られるキシリレンジイソシアネートのポリオール変性体等が挙げられる。
【0051】
ポリイソシアネート全体に対するキシリレンジイソシアネート誘導体の含有量は、主剤(例えば、ポリオール)との反応性向上の観点から、10質量%以上であってよく、20質量%以上であってよく、30質量%以上であってよく、40質量%以上であってもよい。30質量%以上とすることで、反応性を一層高くすることができる。
【0052】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロジイソシアネート)(IPDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)、及び、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)等が挙げられる。
【0053】
ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート単量体の多量体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、単量体とアルコール類との反応より生成するポリオール変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体、カルボジイミド変性体、ウレトジオン変性体、ウレトンイミン変性体などが挙げられる。
【0054】
イソシアネート基末端プレポリマーは、少なくとも2つのイソシアネート基を分子末端に有するウレタンプレポリマーである。ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体及びイソシアネート基末端プレポリマーからなる群より選ばれる少なくとも一種と、ポリオールとを、ウレタン化反応させて得ることができる。このとき、ポリオールの水酸基に対する、ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基のモル比(NCO/OH)は、0.5以上、0.6以上、0.8以上、1以上又は1.5以上であってよい。上記モル比(NCO/OH)は、10以下、5以下、4以下、又は、3以下であってもよい。モル比(NCO/OH)の数値範囲の例として、0.5~10、0.5~5、0.8~4、及び0.6~3が挙げられる。
【0055】
エポキシ化合物は、1分子中に1個又は2個以上のエポキシ基を有する化合物であってよく、少なくとも両末端にエポキシ基を有するものであってよい。エポキシ化合物としては、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、及び、脂環式エポキシ化合物(環状脂肪族エポキシ化合物)等が挙げられる。
【0056】
エポキシ化合物の分子量は、500以下であってよく、450以下であってよく、400以下であってもよい。このようなエポキシ化合物は、静電インク層を構成する静電インク組成物中に十分に浸透させることができる。エポキシ化合物の分子量の下限は、例えば98であってよい。
【0057】
脂環式エポキシ化合物としては、例えば、エポキシシクロヘキシルメチル-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、及び、ビス(エポキシシクロヘキシル)アジペート等が挙げられる。
【0058】
1分子中に1個のエポキシ基を有する1官能の脂環式エポキシ化合物としては、3,4エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、及び、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。1分子中に2個のエポキシ基を有する2官能のエポキシ化合物としては、3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、及び、4-ビニルシクロヘキセンジオキシド等が挙げられる。また、1分子中に1個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物として、下記一般式(I)で表される2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物が挙げられる。
【0059】
【0060】
上記一般式(I)中、nは、1~4の整数であってよい。
【0061】
エポキシ化合物は、2官能の脂環式エポキシ化合物を含むことが好ましい。2官能であることによって、静電インク組成物及びプライマー樹脂との架橋点を増やして接着剤の硬化反応を促進し、硬化し易くすることができる。また、脂環式であることによって、立体障害によりポリイソシアネートとの反応を抑制することができる。このため、安定的に硬化機能を発揮することができる。
【0062】
接着剤組成物において、ポリオール100質量部に対するエポキシ化合物の含有量は、高い接着強度と優れた剪断抑制力を両立する観点から、3~25質量部であってよく、6~25質量部であってよく、8~20質量部であってもよい。エポキシ化合物の含有量が過大になると、優れた剪断抑制力が損なわれる傾向にある。すなわち、接着層を形成したときに接着面同士がずれたり、接着剤組成物がはみ出したりする場合がある。エポキシ化合物の配合量が過小になると、特に高温熱水処理条件下における接着強度が低下する傾向にある。
【0063】
接着剤組成物において、ポリオール100質量部に対するポリイソシアネートの含有量は、シール強度及び高温熱水処理条件下における接着強度を十分に高くする観点から、10~50質量部であってよく、15~35質量部であってよく、20~30質量部であってもよい。
【0064】
ポリイソシアネートに含まれるイソシアネート基に対する、エポキシ化合物に含まれるエポキシ基のモル比は0.5~10であってよく、1.5~9であってよく、2.0~6.5であってもよい。これによって、高温熱水処理条件下において十分に高い接着強度を維持することができる。
【0065】
接着剤組成物は、上述の成分の他に、添加剤等の任意成分を含有してよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、シランカップリング剤、エポキシ樹脂、触媒、塗工性改良剤、レベリング剤、核剤、滑剤、離型剤、消泡剤、可塑剤、界面活性剤、顔料、染料、有機微粒子、無機微粒子、防黴剤、及び難燃剤等が挙げられる。また、有機酸系、スズ系、鉛系、アミン系等のウレタン化触媒を含有してもよい。接着剤組成物は、有機溶媒等の溶剤を含有してよい。
【0066】
接着剤組成物は、静電インク組成物が印刷されている印刷面と基材とを接着する接着剤として用いることができる。接着剤組成物は、ポリオールとポリイソシアネートとの反応によってウレタン結合を形成し、接着剤としての機能を発揮する。エポキシ化合物の共存下でも、ウレタン結合の形成が円滑に進行するため、十分に高い接着強度で印刷面と基材とを接着することができる。
【0067】
接着剤組成物は、ウレタン結合の形成とともに静電インク組成物を架橋させる機能を有していてもよい。これによって、印刷面と基材との接着強度を向上させることができる。印刷面におけるインク被覆率が高くなっても、それに応じて接着剤組成物に含まれるエポキシ化合物の含有量を増やすことによって、静電インク組成物によって構成される静電インク層に、エポキシ化合物を十分に浸透させることができる。浸透したエポキシ化合物は、静電インク組成物を架橋させることによって、静電インク組成物(静電インク層)の強度を高める作用を有する。このため、印刷面におけるインク被覆率が高くなっても、110~135℃のレトルト条件での熱処理後における接着強度を高く維持することができる。
【0068】
接着剤組成物は、熱処理後においても高い接着強度を維持できる一方で、ポットライフにも優れる。このため、印刷面と基材とを接着する際の、塗工及びラミネート加工等の作業性にも優れる。接着剤組成物は、ウレタンを形成するポリオール及びポリイソシアネートと、エポキシ化合物とを含み、これらが硬化物となって接着層を形成する。これは、ポリウレタンのみを含む接着層とエポキシコーティング層とを別々に設ける場合に比べて、積層体を構成する層の数を減らすことができる。このため、例えばロールトゥロールで積層体を作製する際、エージング後のロールの蛇行、及び、ブロッキング等による皺の発生等の問題が発生しない。また、コーティング後のエージング工程を削減し、製造の効率化を図ることができる。
【0069】
印刷面における静電インク層と接着剤組成物とが直接接する積層体では、接着剤組成物に含まれるエポキシ化合物及び/又はポリイソシアネート等の成分が静電インク層中に十分に浸透する。これによって、静電インク層を構成する静電インク組成物を架橋し、積層体の接着強度を向上することができる。また、印刷面が静電インク組成物で構成される静電インク層のない無地部分(透明部分)を含む場合であっても、エポキシ化合物は接着層の中に含まれるため、べたつきをなくすことができる。一方、接着層と別にエポキシコーティング層を設けると、印刷面が無地部分を含む場合に、無地部分の近傍でエポキシ化合物が過剰となり、べたつきが発生し易くなる。このように、本実施形態の接着剤組成物は、静電インク層が形成されていない無地部分を含む印刷面を高い接着強度で接着しつつ、べたつきをなくすことができる。
【0070】
一実施形態に係る2液型接着剤は、静電インク組成物が印刷されている印刷面と基材とを接着する。2液型接着剤は、主剤を含む第1液と、硬化剤を含む第2液とを有する。2液型接着剤は、第1液と第2液のみから構成されていてもよい。第1液と第2液は、それぞれ個別に存在しており、混合されていない。例えば、第1液は第1容器に収容され、第2液は第2容器に収容されていてもよい。例えば、2液型接着剤は、主剤を含む第1液が収容された第1容器と、硬化剤を含む第2液が収容された第2容器を備えていてよい。
【0071】
第1液に含まれる主剤は、上記ポリオールを含有してよい。第2液に含まれる硬化剤は、上記ポリイソシアネートと上記エポキシ化合物と、を含有してよい。第1液と第2液とを混合すれば、上述の接着剤組成物を得ることができる。したがって、上述の接着剤組成物の説明内容は、2液型接着剤にも適用される。2液型接着剤は、接着剤組成物と同様の作用効果を有する。
【0072】
2液型接着剤は、例えば、第1液と第2液とを配合して混合し接着剤組成物を調製した後、印刷面と基材とを接着すればよい。このように2液型接着剤は、3液型のものに比べて配合が容易であるため、作業性に優れる。また、安定性に優れるため、工業スケールでの製造に適している。さらに、2液を配合するだけで接着剤組成物を得られることから、混合不良等に伴う接着強度のばらつきを十分に低減することができる。また、硬化剤が安定性に優れるため、ポリイソシアネートの反応活性を高く維持することができる。このため、高温熱水処理条件下においても、静電インク組成物が印刷されている印刷面を十分に高い強度で接着することができる。
【0073】
一実施形態に係る硬化剤は、静電インク組成物が印刷されている印刷面と基材とを接着する接着剤に用いられる。硬化剤は、上記接着剤組成物に含まれるポリイソシアネートとエポキシ化合物とを含有する。したがって、上述の接着剤組成物の説明内容は、この硬化剤にも適用される。
【0074】
硬化剤に含まれるポリイソシアネートとエポキシ化合物とは、互いに反応することが抑制されている。このため、硬化剤を液状態で長期間保存しても、ポリイソシアネートの硬化機能を高い水準に維持することができる。このため、2液型の接着剤の材料として好適に用いることができる。このような硬化剤を用いて調製された接着剤組成物は、高温熱水処理条件下においても静電インク組成物が印刷されている印刷面と基材とを十分に高い強度で接着することができる。
【0075】
一実施形態に係る硬化物は、上述の接着剤組成物を硬化することによって得られる。この硬化物は、静電インク組成物が印刷されている印刷面と基材とを接着する接着層を構成していてよい。硬化物は、ポリウレタンとエポキシ化合物、及びこれらの架橋物、の一方又は双方を含んでいてよい。ポリウレタンは、上述のポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物であってよい。
【0076】
動的粘弾性測定によって求められる硬化物のガラス転移温度は20℃以下であってよく、15℃以下であってもよい。このように低いガラス転移温度を有することによって室温下における柔軟性が向上する。これによって、例えば、印刷面と基材とを接着する際に生じる応力を十分緩和することができる。これによって、接着強度を一層高くすることができる。上記ガラス転移温度は、耐熱性向上の観点から、5℃以上であってよく、10℃以上であってもよい。なお、ガラス転移温度が測定される硬化物は、接着剤組成物を60℃の条件で加熱して得られるものである。
【0077】
一実施形態に係る積層体は、第1基材、接着層、及び第2基材をこの順に備える。第1基材と第2基材は、接着層によって接着されている。第1基材及び第2基材の一方又は双方は、接着層と直接接していてもよいし、直接接していなくてもよい。第1基材及び第2基材の一方又は双方と、接着層の間には任意の層があってよい。第1基材側及び/又は第2基材側の接着層との接着面には、静電インク組成物が印刷されている。
【0078】
静電インク組成物は、液体電子写真印刷、すなわち静電印刷に用いられるインク組成物であり、紙及びプラスチック等の基材上に印刷される。静電インク組成物は、染料等の着色剤又は顔料、及び樹脂を含んでよい。また、これらに加えて、キャリア流体又はキャリア液体を含んでよい。さらに、チャージディレクタ、チャージアジュバント、界面活性剤、粘度調節剤、乳化剤及びその他の添加剤を含んでよい。
【0079】
着色剤としては、例えば、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料、及びブラック顔料が挙げられる。樹脂としては、エチレンアクリル酸コポリマー、プロピレンアクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー、プロピレンメタクリル酸コポリマー、及びエチレン酢酸ビニルコポリマー等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0080】
キャリア液体としては、炭化水素、シリコーンオイル、及び植物油等が挙げられる。炭化水素としては、脂肪族炭化水素、分岐鎖脂肪族炭化水素、及び芳香族炭化水素が挙げられる。静電インク組成物は、印刷基材、例えば第1基材上に印刷された場合に、キャリア液体を実質的に含まないものであってよい。例えば印刷中の電気泳動プロセス又は蒸発によってキャリア液体を除去してもよい。これによって実質的に固形分だけが印刷基材に転写される。
【0081】
チャージディレクタは、静電インク組成物に含まれる粒子に十分な静電電荷を維持する作用を有する。チャージディレクタとしては、例えば脂肪酸の金属塩、スルホスクシネートの金属塩、オキシホスフェートの金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸の金属塩、芳香族カルボン酸又は芳香族スルホン酸の金属塩等のイオン性化合物、並びにポリオキシエチレン化アルキルアミン、レシチン、ポリビニルピロリドン、多価アルコールの有機酸エステルのような双対イオン性及び非イオン性化合物が挙げられる。
【0082】
チャージアジュバントは、静電インク組成物に含まれる粒子の電荷を増大させる又は安定化させる作用を有する。チャージアジュバントとしては、例えばバリウムペトロネート、カルシウムペトロネート、ナフテン酸Co塩、ナフテン酸Ca塩、ナフテン酸Cu塩、ナフテン酸Mn塩、ナフテン酸Ni塩、ナフテン酸Zn塩、ナフテン酸Fe塩、ステアリン酸Ba塩、ステアリン酸Co塩、ステアリン酸Pb塩、ステアリン酸Zn塩、ステアリン酸Al塩、ステアリン酸Cu塩、ステアリン酸Fe塩、及び金属カルボキシレート等が挙げられる。
【0083】
接着層は、上述の接着剤組成物を加熱し、硬化することで形成される。接着剤組成物は、ポリオールを主剤とし、ポリイソシアネートを硬化剤とする、所謂2液硬化型接着剤であってよい。したがって、接着層は、ポリオールとポリイソシアネートが反応して生成するポリウレタン樹脂と、エポキシ化合物を含んでいてもよい。また、接着層は、ポリオールとポリイソシアネートとエポキシ化合物が反応して得られる重合物(架橋物)を含んでいてもよい。このような接着層は、高温熱水処理条件下においても高い接着強度を有する。また、熱水と接触しても高い接着強度を維持することができる。
【0084】
接着層は、例えば、静電インク組成物の上に接着剤組成物を塗布し、接着剤組成物の塗布面を、他方の基材の表面に貼り合わせ、常温又は加温下において養生して硬化させることによって形成することができる。接着剤組成物の塗布量は、例えば、1~10g/m2であってよく、2~6g/m2であってよく、3~5g/m2であってもよい。
【0085】
図1は、積層体の一例を模式的に示す断面図である。
図1は積層体の厚さ方向に沿う断面を示している。積層体300は、第1基材10、プライマー層40、接着層30(接着剤組成物又はその硬化物)、及び第2基材20をこの順に有する。第1基材10の第2基材20側にある一方面にはプライマー層40が設けられている。
【0086】
第1基材10及び第2基材20の少なくとも一方は、可撓性基材であってよい。可撓性基材は、例えば、アルミニウム箔等の金属箔、及び、フィルム状の熱可塑性ポリマーの一方又は双方を備えていてよい。可撓性基材としては、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、配向ポリアミド(OPA)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、直鎖低密度ポリエチエレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)のフィルムが挙げられる。また、PETフィルムにアルミニウム又は酸化アルミニウム等が蒸着された蒸着フィルム又は透明蒸着フィルムであってもよい。第1基材10と第2基材20の材質は同一であってもよいし、異なっていてもよい。第1基材10及び第2基材20の厚みは7~150μmであってよく、15~90μmであってよく、20~80μmであってもよい。
【0087】
プライマー層40は、樹脂を含んでいてよい。樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル、ポリアミン、ポリエチレンイミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン、ポリアクリルポリマーヒドロキシル含有樹脂、カルボキシル基含有樹脂、及びアミン系ポリマー等が挙げられる。プライマー層40を有することによって、静電インク組成物による印刷を円滑に行うことができる。プライマー層40を構成する樹脂の塗布量は、例えば0.01~1.5g/m2であってよく、0.05~1.0g/m2であってもよい。
【0088】
静電インク組成物50は、デジタル印刷機を用いた静電印刷によってプライマー層40上に印刷され、静電インク層を形成している。
図1において複数ある静電インク組成物50は、同一組成を有していてもよいし、互いに異なる組成を有することによって異なる色を有していてもよい。静電インク組成物50は、接着剤組成物及び/又はプライマー層40に含まれる成分によって、架橋していてもよい。これによって、第1基材10と第2基材20の接着強度を一層高くすることができる。
【0089】
積層体300は、エポキシコーティング層を有していない。このように、エポキシコーティング層を設ける必要がないため、その分、工程数を少なくして生産性を向上することができる。
【0090】
本例では、第1基材10と第2基材20が対向する方向とは垂直な方向に沿って隣り合う静電インク組成物50の間において、接着層30とプライマー層40とが直接接触している。これによって、第1基材10と第2基材20の対向方向からみたときに、積層体300に透明部分(無地部分)を設けることができる。このため、積層体300を包装フィルムとしたときに、被包装物を、積層体300を介して視認することができる。このような透明部分を設けても、ラミネート方式により接着層30におけるべたつきを十分に抑制することができる。
【0091】
別の例では、第1基材10と第2基材20が対向する方向とは垂直な方向に沿って隣り合う静電インク組成物50同士が接触していてもよい。すなわち、接着層30に接着する少なくとも一方の接着面が、静電インク組成物50を有するか、当該接着面が静電インク組成物50で構成されていればよい。接着層30が静電インク組成物50と強固に接着するため、第1基材10と第2基材20とを十分強固に接着することができる。
【0092】
さらに別の例では、プライマー層40を有していなくてもよいし、第1基材10と第2基材20の対向面のそれぞれにプライマー層40を有していてもよい。また、第1基材10及び第2基材20との間には、積層体300のガスバリア性及び水蒸気バリア性向上の観点から、第1基材10とプライマー層40の間、及び/又は、第2基材20と接着層30の間に、アルミニウム箔等の金属層、及び、ナイロンフィルム等の樹脂層の少なくとも一つを有していてもよい。
【0093】
積層体300は、例えば食品の包装材として有用である。積層体300は、高温熱水処理条件下における接着強度及び熱水との接触環境下における接着強度に優れることから、レトルト用の包装材、電子レンジ対応の包装材、及び煮沸用の包装材として好適に用いることができる。積層体300の厚みは、例えば、15~200μmであってよく、18~120μmであってもよい。
【0094】
一実施形態に係る積層体300の製造方法は、第1基材10の一方面上にプライマー層40を形成する工程と、プライマー層40上に静電インク組成物50を印刷して印刷面を得る工程と、印刷面と第2基材20の一方面とを、接着剤組成物を用いて接着する工程を有する。
【0095】
プライマー層40は、第1基材10の一方面上にグラビア印刷で形成してよい。プライマー層40は、樹脂原料を、架橋剤によって架橋させて形成することができる。架橋は、紫外光、加熱、電子ビームのようなイオン化放射線、及び、マイクロ波放射線のような非イオン化放射線を照射して行ってもよい。静電インク組成物50の印刷は、デジタル印刷機を用いた静電印刷によって行うことができる。
【0096】
印刷面と第2基材20の一方面との接着剤組成物による接着は、ラミネートによって行うことができる。ラミネートは、任意の装置を用いて行うことができる。接着剤組成物に含まれるエポキシ化合物及び/又はポリイソシアネートが静電インク層を構成する静電インク組成物50及びプライマー層40に浸透し、静電インク組成物50及びプライマー層40に含まれる成分と架橋反応してもよい。これによって、各層の界面が十分に結着した積層体300を得ることができる。
【0097】
接着剤組成物を用いて接着する工程の前に、上述の2液型接着剤を構成する第1液と第2液とを混合して接着剤組成物を調製する工程を有していてもよい。このような2液型接着剤を用いることによって、接着剤組成物の調製及び接着作業を円滑に行うことができる。また、接着剤組成物の混合状態のばらつきが低減されるため、積層体300の信頼性を向上することができる。
【0098】
図2は、上述の積層体を用いて形成される包装袋の一実施形態を示す平面図である。包装袋100は、一対の包装材60,62を貼り合わせて構成される。包装材60,62として、上述の積層体300を用いることができる。すなわち、包装袋100は、フィルム状の略矩形の一対の包装材60,62の周縁を貼り合わせてなるシール部101と、シール部101によって一対の包装材60,62の間に形成される収容部102とを備える。すなわち、包装袋100は、側端部、下端部及び上端部がシール部101によってシールされている。包装袋100は、シール部101に包囲された非シール部(シート部)に、被包装物(例えば、食品)が収容される収容部102を備える。なお、下端部のシール部101は、被包装物を収容部102に充填した後にシールしてもよい。
【0099】
包装材60,62は、積層体300と、積層体300の第1基材10又は第2基材20の表面にシーラント層を有していてよい。この場合、一対の包装材60,62はシーラント層同士が対向するように重ね合わせられる。一対のフィルム状の包装材60,62は、シール部101において接着剤によって接着されていてもよい。包装材60,62を構成する積層体300の第1基材10及び第2基材20のどちらを内側にしてもよい。
【0100】
包装袋100を構成する一対の包装材60,62が、同じ層構成を備えることは必須ではなく、例えば、一対の包装材60,62が、互いに層構成の異なる積層体で構成されていてもよい。
【0101】
包装袋100は、開封手段120を備えていてもよい。開封手段は、側端部のシール部101に形成されるV字状のノッチからなる一対の易開封加工部124と、一対の易開封加工部124の間に切り開きの軌道となるハーフカット線121を有する。ハーフカット線121は、レーザーを用いて形成することができる。易開封加工部124は、V字状のノッチに限定されず、U字状又はI字状等のノッチであってよく、傷痕群あってもよい。
【0102】
包装材60,62を用いて包装袋100を製造する手順を以下に説明する。積層体300を所定形状にカットして、一対の包装材60,62を得る。包装材60,62の一方面に設けられたシーラント層同士を対向させ、シーラント層同士を接着する。これによって、上端部及び側端部にシール部101を形成して、シール部101でコの字状に包囲された非シール部を形成する。このようにして、
図3に示すような上端部のみ(又は下端部のみ)がシールされていない包装袋110が得られる。包装袋は、幾つかの実施形態において、
図3に示すように一部の周縁がシールされていなくてもよい。
【0103】
次に、未シール状態にある上端部(又は下端部)から被包装物を充填する。その後、上端部(又は下端部)において包装材60,62同士を接着して、上端部(又は下端部)にもシール部101を形成する。このようにして、包装袋100とその中に収容された被包装物とを備える包装体200を製造することができる。
【0104】
包装袋100及び包装体200は、包装材60,62として、高温熱水処理条件下においても、各層間の接着強度を十分高く維持することができる積層体を備えることから、熱水又は電子レンジで加熱される食品用に特に好適に用いることができる。包装体200としては、煮沸加熱又は電子レンジ加熱されるレトルト包装体が挙げられる。
【0105】
以上、幾つかの実施形態を説明したが、本開示は上記実施形態に何ら限定されるものではない。例えば、包装材は、PETボトルの表面に貼り付けられる包装フィルムであってよい。また、包装袋の形状は、四方袋に限定されず、例えば、二方袋、三方袋、合掌袋又はスタンディングパウチでもよい。積層体は、第1基材、プライマー層、静電インク層、接着層及び第2基材に加えて、1つ又は複数の任意の層を備えていてもよい。
【実施例】
【0106】
実施例を参照して本開示の内容をより詳細に説明するが、本開示は下記の実施例に限定されるものではない。
【0107】
(実施例1)
[接着剤組成物及び積層体の作製]
第1基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、厚さ:12μm)を準備した。このPETフィルムの一方面に水性プライマー樹脂(ポリエチレンイミンを含有する樹脂、Michelman社製、商品名:DP050)を塗布してプライマー層を形成した。水性ポリエチレンイミンの塗布量が0.10~0.18g/m2となるように塗布した。
【0108】
デジタル印刷機(HP社製,Indigo20000ラベル及びパッケージ用デジタル印刷機)を用いて、プライマー層の表面に所定の印刷を行った。一回の印刷によるインク被覆率を100%とした。静電インク組成物としては、エチレンアクリル酸、及びエチレンメタクリル酸のコポリマーを含有する熱可塑性樹脂を含む静電インク組成物(HP Indigo エレクトロインキ)を使用した。静電インク組成物の色としては、表1に示すとおり、白(W)、黄色(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)を用いた。静電インク組成物の色及びインク被覆率が異なる複数の試料を作製した。各色のインク被覆率及びその合計は、表1に示すとおりとした。表1に示すとおり、インク被覆率の合計は200~500%であった。
【0109】
主剤として脂肪族ポリエステルポリオール(A)(三井化学株式会社製、商品名:タケラックA626)、ポリイソシアネート(B)(三井化学株式会社製、商品名:タケネートA50)、及びエポキシ化合物(C)として3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、及び、溶媒として酢酸エチルを配合して、固形分濃度が36.5質量%の接着剤組成物を調製した。このエポキシ化合物の構造は下記式(1)に示すとおりである。各成分の質量基準の配合比は、表1に示すとおりとした。表1の[(B)/(A)]×100の欄には、100質量部の脂肪族ポリエステルポリオールに対するポリイソシアネートの配合量(質量部)を示している。 表1の[(C)/(A)]×100の欄には、100質量部の脂肪族ポリエステルポリオールに対するエポキシ化合物の配合量(質量部)を示している。表1の「エポキシ基/イソシアネート基」の欄には、ポリイソシアネート(B)に含まれるイソシアネート基に対する、エポキシ化合物(C)に含まれるエポキシ基のモル比を示している。
【0110】
静電インク組成物を印刷した印刷面に対し、ドライラミネート装置を用いて、上述のとおりに調製した接着剤組成物を塗布して接着層を形成した。接着剤組成物の塗布量は、4.0g/m2とした。
【0111】
【0112】
第2基材として、アルミニウム箔(東洋アルミニウム株式会社製、厚さ:7μm)、ナイロンフィルム及び無延伸ポリプロピレンフィルムをこの順に有する基材フィルムを準備した。上記ドライラミネート装置を用い、接着層とアルミニウム箔とが接触するようにして、基材フィルムを接着層に貼り合わせて積層体を得た。養生時間(エージング)は、40℃で2日間とした。このようにして積層フィルム(積層体)を製造した。
【0113】
[接着強度(常温)の測定]
JIS K 6854-1:1999に準拠して、作製した積層体の接着強度を測定した。具体的には、作製した積層体を15mm幅にカットして測定サンプルとした。測定サンプルの端部における層間を剥離した後、角度:90°、引張速度:300mm/min、及び室温の条件で引張試験機を用いて、積層体の層間の剥離強度を測定した。この剥離強度を常温(20℃)での接着強度とした。測定結果は表1に示すとおりであった。
【0114】
(実施例2~6)
接着剤組成物の配合を、表1及び表2に示すとおりに変更したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を作製し、接着強度の測定を行った。測定結果は表1及び表2に示すとおりであった。
【0115】
(実施例7)
脂肪族ポリエステルポリオール(A)(三井化学株式会社製、商品名:タケラックA626)からなる第1液と、ポリイソシアネート(B)(三井化学株式会社製、商品名:タケネートA50)及びエポキシ化合物(C)からなる第2液とが、別々に容器に収容された2液型接着剤を準備した。第1液と第2液とを混合し、表2に示す配合の接着剤組成物を調製した。この接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして積層体を作製し、接着強度の測定を行った。測定結果は表2に示すとおりであった。
【0116】
(比較例1)
接着剤組成物を調製する際にエポキシ化合物(C)を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして積層体を作製し、接着強度の測定を行った。測定結果は表2に示すとおりであった。
【0117】
(比較例2)
静電インク組成物を印刷した印刷面に対し、式(1)のエポキシ化合物を塗布してエポキシコーティング層を設けたこと、このエポキシコーティング層に、比較例1の接着剤組成物を塗布したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を作製し、接着強度の測定を行った。エポキシコーティング層の塗布量は、表2に示す配合において0.53質量部に相当する量とした。測定結果は表2に示すとおりであった。
【0118】
【0119】
【0120】
表1及び表2に示すとおり、エポキシ化合物を配合することによって、比較例1よりも接着強度が高くなることが確認された。なお、比較例2では、比較的高い接着強度が得られたが、接着層に加えてエポキシコーティング層を形成するため、工程数を増加する必要があった。エポキシコーティング層の硬化(エージング)には2日間所要し、生産性が低下した。
【0121】
比較例1の積層体では、静電インク層とプライマー層との界面付近で剥離していた。比較例2の積層体では、静電インク層が凝集破壊していた。一方、実施例1~7の積層体では、静電インク層と接着層の界面で剥離しており、静電インク層の凝集破壊は見られなかった。このことは、静電インク層の凝集力が向上していることを示唆している。なお、実施例1~7における、脂肪族ポリエステルポリオール(A)の水酸基に対する、ポリイソシアネート(B)に含まれるイソシアネート基のモル比は0.5~10の範囲内であった。
【0122】
次に、実施例5と比較例2の積層体の熱間接着強度、シール強度及び熱水接着強度の測定を行った。測定には、インク被覆率の合計が500%のものと、200%のものを用いた。測定手順の詳細は以下のとおりである。
【0123】
[レトルト(120℃)後の接着強度の測定]
積層体を用いて三方袋を作製し、三方袋に水を封入した。その後、レトルト処理装置(日阪製作所製)を用いて、レトルト熱処理(120℃×30分間)を実施した。レトルト熱処理後、15mm幅にカットして積層体サンプルを採取し、インク層とインク層に接する層との層間強度を測定した。測定された剥離強度を、表3の「120℃×30分間」の欄に示す。なお、表3には、熱処理前の常温での接着強度も併せて示した。
【0124】
[レトルト(130℃)後の接着強度の測定]
積層体を用いて三方袋を作製し、三方袋に水を封入した。その後、レトルト処理装置(日阪製作所製)を用いて、レトルト熱処理(130℃×30分間)を実施した。レトルト熱処理後、15mm幅にカットして積層体サンプルを採取し、静電インク層と静電インク層に接する層との層間強度を測定した。測定された剥離強度を、表3の「130℃×30分間」の欄に示す。
【0125】
[シール強度(熱処理前)の測定]
180℃、0.2MPa及び1秒間の条件で、実施例5の一対の積層体を、無延伸ポリプロピレンフィルム同士が重なり合うようにしてヒートシールを行った。これによって、無延伸ポリプロピレンフィルム同士を熱溶着させ、15mm幅の測定サンプルを作製した。JIS K 7127:1999に準拠して、作製した測定サンプルのシール強度を測定した。測定は、剥離角度:90°、引張速度:300mm/min、及び常温(20℃)の条件で引張試験機を用いて、ヒートシール間の剥離強度を測定した。この剥離強度を「熱処理前」のシール強度とした。測定結果は表3に示すとおりであった。比較例2の積層体を用いて、同様の測定サンプルを作製し、同様の測定を行った。測定結果は表3に示すとおりであった。
【0126】
[シール強度(ボイル後)の測定]
上述の「シール強度(熱処理前)の測定」で作製した測定サンプルを、100℃の水中で30分間加熱した。その後、上述の「シール強度(熱処理前)の測定」と同じ手順でシール強度を測定した。測定結果は表3の「ボイル後」の欄に示すとおりであった。
【0127】
[レトルト(120℃)後のシール強度の測定]
上述の「シール強度(熱処理前)の測定」で作製した測定サンプルのレトルト熱処理(120℃×30分間)を行った。引張試験機を用い、「シール強度(熱処理無し)の測定」と同様にして剥離強度を測定した。測定結果は表3の「120℃×30分間」の欄に示すとおりであった。
【0128】
[レトルト(130℃)後のシール強度の測定]
上述の「シール強度(熱処理前)の測定」で作製した測定サンプルのレトルト熱処理(130℃×30分間)を行った。引張試験機を用い、「シール強度(熱処理前)の測定」と同様にして剥離強度を測定した。測定結果は表3の「130℃×30分間」の欄に示すとおりであった。
【0129】
[熱水接着強度の測定]
15mm幅にカットした積層体の端部における層間を剥離した後、90℃の熱水に浸した状態で引張試験機を用いて剥離強度を測定した。すなわち、剥離角度:フリー、引張速度:300mm/minとした。この剥離強度を熱水接着強度として表3に示す。
【0130】
【0131】
表3に示すとおり、熱処理の有無にかかわらず、シール強度は実施例5の方が比較例2よりも優れることが確認された。インク被覆率が500%の場合には、特に実施例5の方が比較例2よりも接着強度が高かった。また、実施例5のシール強度はボイル後も十分に高かったのに対し、比較例2のシール強度はボイル後に大幅に低下した。
【0132】
(実施例8)
[接着剤組成物及び積層体の作製]
第1基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、厚さ:12μm)を準備した。このPETフィルムの一方面に水性プライマー樹脂(ポリエチレンイミンを含有する樹脂、Michelman社製、商品名:DP050)を塗布してプライマー層を形成した。水性ポリエチレンイミンの塗布量が0.10~0.18g/m2となるように塗布した。
【0133】
HP Indigo社製の印刷機(商品名:Indigo 2000)を用いて、プライマー層の表面に所定の印刷を行った。静電インク組成物としては、エチレンアクリル酸、及びエチレンメタクリル酸のコポリマーを含有する熱可塑性樹脂を含む静電インク組成物(HP Indigo エレクトロインキ)を使用した。静電インク組成物の色としては、白(W)、黄色(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)を用いた。インク被覆率として、W200%のものと、C100%+M100%+Y100%+W200%のものを調製した。表4では、前者を「インク被覆率(1)」とし、後者を「インク被覆率(2)」とした。このように、静電インク組成物のインク被覆率が異なる2種類の試料を作製した。
【0134】
実施例5と同じ接着剤組成物を調製した。静電インク組成物を印刷した印刷面に対し、ハンドラミネーター機で、上述のとおりに調製した接着剤組成物を塗布して接着層を形成した。接着剤組成物の塗布量は、4.0g/m2とした。
【0135】
第2基材として、ナイロンフィルム及び無延伸ポリプロピレンフィルムをこの順に有する基材フィルムを準備した。接着層とナイロンフィルムとが接触するようにして、基材フィルムを接着層に貼り合わせて積層体を得た。養生時間(エージング)は、40℃×2日間とした。
【0136】
このようにして得られた積層体の接着強度(室温)、熱間接着強度(120℃)、シール強度(熱処理前)及びシール強度(ボイル後)を、上述の手順と同じ手順で測定した。測定結果は表4に示すとおりであった。
【0137】
(実施例9~12)
接着剤組成物を調製する際、ポリイソシアネート(B)の配合量を表4に示すとおりに変更したこと以外は実施例8と同様にして積層体を作製した。作製した積層体を、実施例8と同様にして評価した。評価結果は表4に示すとおりであった。
【0138】
(比較例3)
静電インク組成物を印刷した印刷面に対するラミネートを、ドライラミネート装置を用いずにハンドラミネーター機で実施したこと以外は、比較例1と同様にして、積層体を作製した。静電インク組成物の色及びインク被覆率は、表4に示すとおりとした。作製した積層体を、実施例8と同様にして評価した。評価結果は表4に示すとおりであった。
【0139】
【0140】
表4に示すとおり、各実施例では高温熱水処理条件下においても高い接着強度及びシール強度が得られることが確認された。また、脂肪族ポリエステルポリオール(A)に対するポリイソシアネート(B)の配合割合を調整することによって、熱間接着強度(120℃)、並びにシール強度(熱処理前及びボイル後)を十分に高くできることが確認された。一方、エポキシ化合物(C)を用いていない比較例3では、高温熱水処理条件に曝されると接着強度及びシール強度が大幅に低下することが確認された。なお、実施例8~12における、脂肪族ポリエステルポリオール(A)に含まれる水酸基に対する、ポリイソシアネート(B)に含まれるイソシアネート基のモル比は0.5~10の範囲内であった。
【0141】
(実施例13~17)
脂肪族ポリエステルポリオール(A1)(三井化学株式会社製、タケラックA525)、ポリイソシアネート(B1)(三井化学株式会社製、タケネートA52)、及びエポキシ化合物(C)として3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4エポキシシクロヘキサンカルボキシレートを配合して、接着剤組成物を調製した。配合割合は、表5に示すとおりとした。このような接着剤組成物を用いたこと以外は、実施例8~実施例12と同様にして積層体を作製して評価した。評価結果は、表5に示すとおりであった。
【0142】
(比較例4)
ポリオールとして脂肪族ポリエステルポリオール(A1)(三井化学株式会社製、タケラックA525)、及び、ポリイソシアネート(B1)(三井化学株式会社製、タケネートA52)を配合して、接着剤組成物を調製した。配合割合は、表5に示すとおりとした。このような接着剤組成物を用いたこと以外は、比較例3と同様にして積層体を作製して評価した。評価結果は、表5に示すとおりであった。
【0143】
【0144】
表5に示すとおり、脂肪族ポリエステルポリオールとポリイソシアネートの組み合わせを変更した場合も、各実施例では高い接着強度及びシール強度が得られることが確認された。また、脂肪族ポリエステルポリオール(A1)に対するポリイソシアネート(B1)の配合割合を調整することによって、熱間接着強度(120℃)、並びにシール強度(熱処理前及びボイル後)を十分に高くできることが確認された。一方、エポキシ化合物(C)を用いていない比較例4では、高温熱水処理条件に曝されると接着強度及びシール強度が大幅に低下することが確認された。なお、実施例13~17における、脂肪族ポリエステルポリオール(A1)に含まれる水酸基に対する、ポリイソシアネート(B1)に含まれるイソシアネート基のモル比は0.5~10の範囲内であった。
【0145】
[安定性の評価]
(実施例18)
実施例7で用いた脂肪族ポリエステルポリオール(A)、ポリイソシアネート(B)、及びエポキシ化合物(C)を配合したときの安定性を以下の手順で評価した。まず、次の2種類の混合物を準備した。
混合物a:ポリイソシアネート(42.9質量%)+エポキシ化合物(57.1質量%)
混合物b:脂肪族ポリエステルポリオール(76.1質量%)+エポキシ化合物(23.9質量%)
【0146】
ポリイソシアネートとエポキシ化合物を混合後、50℃で保管した。1ヶ月保管したサンプルを混合物a(1)、及び、2ヶ月保管したサンプルを混合物a(2)とした。脂肪族ポリエステルポリオールとエポキシ化合物を混合後、50℃で保管した。1ヶ月保管したサンプルを混合物b(1)、及び、2ヶ月保管したサンプルを混合物b(2)とした。
【0147】
混合物a(1)及び混合物a(2)に、脂肪族ポリエステルポリオール(A)を添加して直ぐに、40℃の乾燥雰囲気下(シリカゲル)に置いた。その後、FT-IR(透過法)で、NCOの残存量の経時変化(0~100時間)を調べた。結果は、
図4に示すとおりであった。
図4の横軸は、脂肪族ポリエステルポリオール(A)を添加してからの経過時間を示しており、縦軸は配合直後を基準(0)とするNCO減少率をNCO反応率として示している。
【0148】
保管後の混合物b(1)及び混合物b(2)に、ポリイソシアネート(B)を添加して直ぐに、40℃の乾燥雰囲気下(シリカゲル)に置いた。その後、FT-IR(透過法)で、NCOの残存量の経時変化(0~100時間)を調べた。結果は、
図4に示すとおりであった。
図4の横軸は、ポリイソシアネート(B)を添加してからの経過時間を示している。
図4には、対照として、(A)、(B)及び(C)の3成分を同時に混合し、混合直後からのNCO残存量を測定して得られた結果も併せて示した。いずれの混合物も、3成分の混合比率は、(A)を64.6質量%、(B)を15.2質量%、及び(C)を20.2質量%とした。
【0149】
図4に示す結果から、混合物aを用いた接着剤組成物の方が、混合物bを用いた接着剤組成物よりも、保管中の反応の進行が抑制されており、反応活性を十分に維持できることが確認された。混合物a(1)及び混合物a(2)の反応活性は、(A)、(B)及び(C)の3成分を同時に混合した直後の接着剤組成物と同等であった。このことから、混合物aは、長期間保存しても良好な反応活性を維持できることが確認された。
【0150】
(実施例19)
実施例18と同様にして、混合物a(1)、混合物a(2)、混合物b(1)及び混合物b(2)を調製した。混合物a(1)、及び混合物a(2)に、脂肪族ポリエステルポリオール(A)を添加して得られた接着剤組成物を、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPPフィルム)に5g/m
2塗布し、別のCPPフィルムを重ねて、CPPフィルム同士を接着した。その後、40℃の乾燥雰囲気下(シリカゲル)に置いて、接着強度の経時変化(0~50時間)を調べた。接着強度は、実施例1の「接着強度(常温)の測定」と同じ手順で測定した。測定結果は
図5に示すとおりであった。
図5の横軸は、脂肪族ポリエステルポリオール(A)を添加してからの経過時間を示している。
【0151】
混合物b(1)及び混合物b(2)に、ポリイソシアネート(B)を添加して得られた接着剤組成物の接着強度の経時変化も、混合物a(1)及び混合物a(2)と同様にして測定した。測定結果は
図5に示すとおりであった。
図5の横軸は、ポリイソシアネート(B)を添加してからの経過時間を示している。
図5にも、対照として、(A)、(B)及び(C)の3成分を同時に混合し、混合直後にCPPフィルム同士を接着して測定された接着力の結果も併せて示した。いずれの混合物も、(A)、(B)及び(C)の配合比率は同じとした。
【0152】
図5に示す結果から、混合物aを用いて得られた接着剤組成物の方が、混合物bを用いて得られた接着剤組成物よりも、高い接着強度を維持できることが確認された。混合物a(1)及び混合物a(2)を用いた接着剤組成物の接着強度の立ち上がりは、(A)、(B)及び(C)の3成分を同時に混合した直後の接着剤組成物と同等であった。このことから、混合物aは、長期間保存しても、良好な接着性を維持できることが確認された。
【0153】
(実施例20)
実施例18と同様にして、混合物a(1)、混合物a(2)、混合物b(1)及び混合物b(2)を調製した。混合物a(1)、及び混合物a(2)に、脂肪族ポリエステルポリオール(A)を添加して得られた接着剤組成物のポットライフ試験を以下の手順で行った。脂肪族ポリエステルポリオール(A)を添加した後、直ぐに溶媒(酢酸エチル)で、接着剤組成物の濃度が30質量%となるように希釈した。B型回転粘度計(回転数:60rpm、ローター:No.1)を用いて、この希釈液(170g)の粘度の経時変化を調べた。測定は24℃の大気圧下で行った。一定時間毎に、酢酸エチルを補充しながら測定を継続して行った。測定結果は、
図6に示すとおりであった。
図6の横軸は、粘度測定を開始してからの経過時間を示している。
【0154】
混合物b(1)及び混合物b(2)に、ポリイソシアネート(B)を添加して得られた接着剤組成物の接着強度の経時変化も、混合物a(1)及び混合物a(2)と同様にして測定した。測定結果は
図6に示すとおりであった。
図6にも、(A)、(B)及び(C)の3成分を同時に混合して調製した接着剤組成物の測定結果を対照として示す。いずれの混合物も、(A)、(B)及び(C)の配合比率は同じとした。
【0155】
図6に示す結果から、混合物a及び混合物bを用いて得られた接着剤組成物のポットライフは、(A)、(B)及び(C)の3成分を同時に混合して得られた接着剤組成物と同等であった。このことから、混合物a及び混合物bは、長期間保存しても、良好な塗工性を維持できることが確認された。
【0156】
[動的粘弾性の評価]
(実施例21)
実施例7と比較例1の接着剤組成物に溶剤を配合して不揮発分を40質量%に調整して配合液を得た。この配合液を、離型紙上にドクターブレードで200μmの厚みに製膜した。室温及び窒素雰囲気下、24時間乾燥して溶剤を除去した後、60℃で6日間養生して硬化膜を作成した(膜厚:40~50μm)。これを幅5mmにカットして短冊状サンプルを調製した。市販の動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御株式会社製、装置名:DVA-200)を用いて短冊状サンプルの動的粘弾性測定を行った。測定は、-50℃から5℃/minの速度で昇温し、以下の条件で行った。
標線間長さ:2cm
幅:0.485cm
変形モード:引張り
静動比:1.4
設定歪:0.16%(>1.00×108Pa)
測定周波数:10Hz
【0157】
図7は、実施例7の接着剤組成物を硬化して得られた硬化物の動的粘弾性測定の結果を示すグラフである。
図8は、比較例1の接着剤組成物を硬化して得られた硬化物の動的粘弾性測定の結果を示すグラフである。比較例1の硬化物のガラス転移温度は29.3℃であった。一方、実施例7の硬化物のガラス転移温度は14.4℃であった。このことは、エポキシ化合物を含有することによって、室温下における硬化物の柔軟性が向上することを示している。本開示の接着剤組成物は、静電インク層に浸み込むことのみならず、柔軟化してラミネートに伴って生じる応力を緩和することによって、接着強度を向上することができるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本開示によれば、高温熱水処理条件下においても、各層間の接着強度を十分高く維持することが可能な積層体及びその製造方法を提供することができる。また、このような積層体を得るために有用な硬化剤、接着剤組成物、2液型接着剤及び硬化物を提供することができる。また、このような積層体を有することによって密封性に優れる包装材を提供することができる。また、密封性に優れる包装材で包装された包装体を提供することができる。
【符号の説明】
【0159】
10…第1基材、20…第2基材、30…接着層、40…プライマー層、50…静電インク組成物、60,62…包装材、100,110…包装袋、101…シール部、102…収容部、120…開封手段、121…ハーフカット線、124…易開封加工部、200…包装体、300…積層体。