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特許7661845紙製構造体、紙製トレーおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】紙製構造体、紙製トレーおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B31B 50/64 20170101AFI20250408BHJP
   B31B 50/80 20170101ALI20250408BHJP
   B31D 5/00 20170101ALI20250408BHJP
   B65D 5/56 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
B31B50/64
B31B50/80
B31D5/00
B65D5/56 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021144687
(22)【出願日】2021-09-06
(65)【公開番号】P2023037874
(43)【公開日】2023-03-16
【審査請求日】2024-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢島 俊輔
【審査官】種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-233322(JP,A)
【文献】特開2000-141511(JP,A)
【文献】特開2021-187447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31B 50/64
B31B 50/80
B31D 5/00
B65D 5/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上辺、下辺、左辺、右辺からなる一つながりの矩形の枠形状のフランジ部を有し、成形することにより、フランジ部、トップパネル、エンドパネル、左側面パネル、右側面パネル、底面からなるトレー形状の紙ベースを形成する紙製構造体であって、
フランジ部の上辺の内側には、それぞれ折罫線を介してトップパネルと底面パネルAが連設されており、
フランジ部の下辺の内側には、それぞれ折罫線を介してエンドパネルと底面パネルBが連設されており、
底面パネルAと底面パネルBとは、切断可能なミシン目線を介して繋がっており、
フランジ部の左辺の裏面には、それぞれ折罫線を介して左側面パネルと底面パネルCとを連設する左糊代が接着されており、
フランジ部の右辺の裏面には、それぞれ折罫線を介して右側面パネルと底面パネルDとを連設する右糊代が接着されていることを特徴とする紙製構造体。
【請求項2】
紙製構造体を成形してなる紙ベースと熱可塑性樹脂ライナー材とから構成される紙製トレーであって、
紙製構造体は、上辺、下辺、左辺、右辺からなる一つながりの矩形の枠形状のフランジ部を有し、
フランジ部の上辺の内側には、それぞれ折罫線を介してトップパネルと底面パネルAが連設されており、
フランジ部の下辺の内側には、それぞれ折罫線を介してエンドパネルと底面パネルBが連設されており、
底面パネルAと底面パネルBとは、切断可能なミシン目線を介して繋がっており、
フランジ部の左辺の裏面には、それぞれ折罫線を介して左側面パネルと底面パネルCとを連設する左糊代が接着されており、
フランジ部の右辺の裏面には、それぞれ折罫線を介して右側面パネルと底面パネルDとを連設する右糊代が接着されており、
紙製構造体をトレー形状に成形した時に、前記ミシン目線が切断して底面パネルAと底面パネルBが離開したことを特徴とする紙製トレー。
【請求項3】
紙製構造体を成形してなる紙ベースと熱可塑性樹脂ライナー材とから構成される紙製トレーであって、
紙製構造体は、上辺、下辺、左辺、右辺からなる一つながりの矩形の枠形状のフランジ部を有し、
フランジ部の上辺の内側には、それぞれ折罫線を介してトップパネルと底面パネルAが連設されており、
フランジ部の下辺の内側には、それぞれ折罫線を介してエンドパネルと底面パネルBが連設されており、
底面パネルAと底面パネルBとは、切断可能なミシン目線を介して繋がっており、
フランジ部の左辺の裏面には、それぞれ折罫線を介して左側面パネルと底面パネルCとを連設する左糊代が接着されており、
フランジ部の右辺の裏面には、それぞれ折罫線を介して右側面パネルと底面パネルDとを連設する右糊代が接着されており、
紙製構造体をトレー形状に成形した時に、前記ミシン目線が切断して底面パネルAと底面パネルBが離開し、底面パネルCと底面パネルDとは重なり部を有することを特徴とする紙製トレー。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂ライナー材は、ガスバリア層を有することを特徴とする請求項2または3に記載の紙製トレー。
【請求項5】
請求項1に記載の紙製構造体を成形機の受型上に載置し、上から押し型を押し当てて紙製構造体の前記ミシン目線を切断して、トレー形状に成形した後、真空成形機または真空圧空成形機を用いてトレー内面に熱可塑性樹脂ライナー材を被覆密着せしめることを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の紙製トレーの製造方法。
【請求項6】
前記成形機は、真空成形機または真空圧空成形機を兼ねることを特徴とする請求項5に記載の紙製トレーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙製トレーに関し、容易に紙製トレーを成形することができる紙製構造体、これによる紙製トレーおよび紙製トレーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トレー形状の容器としては、紙製のものやプラスチック製のものが従来より種々実用化されている。内容物を密封したい場合には、蓋材を密封シールし易いように、平坦なフランジ部を備えたプラスチック製の容器が一般的に用いられてきた。
【0003】
しかし近年、環境に対する配慮から、限りある石油資源を原料とするプラスチック製の容器ではなく、再生産可能な資源である紙を用いた容器が注目されるようになり、紙製のベースにプラスチック製のライナーを組み合わせた紙製トレーが提案された。
【0004】
しかし従来の紙ベースとプラスチックライナーを分離可能な紙製トレーは、一般にフランジ部を形成する板紙構造が分かれており、フランジ部に段差が存在するため、蓋材を完全にシールすることが困難であった。そこで、フランジ部に段差が存在せず、従って蓋材の密封シールが可能な紙製トレーに対する要望が高まってきた。
【0005】
特許文献1に記載された紙製容器は、このような背景から生まれたものであり、紙を主材料とする、矩形の枠形状のフランジ部の対向する一対の枠の外側の辺に折れ線を介して補強面、側面、底半面を順次連設し、もう一対の対向する一対の枠の内側の辺に折れ線を介して側面を連設し、外側の辺に折れ線を介して補強面を連設したブランクで組み立てられた紙製容器本体と、該紙製容器本体の内面に加熱状態で真空ないし圧空に吸引されて密接着している熱可塑性樹脂よりなる内部保護フィルム層とからなることを特徴とする紙製容器である。
【0006】
特許文献1に記載された紙製容器は、フランジ部が一つながりの紙基材から形成されているため、蓋材のシール性にとっては有利であるが、容器の側面が紙の表面と裏面とから構成される構造であるため、成形工程が複雑であり、成型時に引っ掛かりやすく不良率が高くなる懸念があった。また、底面にパネルの重なりがないため、トレーの屈曲によりライナー材が浮いてしまうという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4305981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は、紙製のトレー本体とライナー材とから構成される紙製トレーにおいて、紙製本体の成形性が良好であり、ライナー材の浮きが生じにくく、また一つながりの平坦なフランジ部を有することにより蓋材のシール性が良好な紙製トレーを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、上辺、下辺、左辺、右辺からなる一つながりの矩形の枠形状のフランジ部を有し、成形することにより、フランジ部、トップパネル、エンドパネル、左側面パネル、右側面パネル、底面からなるトレー形状の紙ベースを形成する紙製構造体であって、フランジ部の上辺の内側には、それぞれ折罫線を介してトップパネルと底面パネルAが連設されており、フランジ部の下辺の内側には、それぞれ折罫線を介してエンドパネルと底面パネルBが連設されており、底面パネルAと底面パネルBとは、切断可能なミシン目線を介して繋がっており、フランジ部の左辺の裏面には、それぞれ折罫線を介して左側面パネルと底面パネルCとを連設する左糊代が接着されており、フランジ部の右辺の裏面には、それぞれ折罫線を介して右側面パネルと底面パネルDとを連設する右糊代が接着されていることを特徴とする紙製構造体である。
【0010】
本発明に係る紙製構造体は、対向する底面パネルAと底面パネルBとが切断可能なミシン目線を介して繋がっているため、移動中や、成型時に折れ曲がったり重なったりすることがなく、安定した成形性が期待できる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、紙製構造体を成形してなる紙ベースと熱可塑性樹脂ライナー材とから構成される紙製トレーであって、紙製構造体は、上辺、下辺、左辺、右辺からなる一つながりの矩形の枠形状のフランジ部を有し、フランジ部の上辺の内側には、それぞれ折罫線を介してトップパネルと底面パネルAが連設されており、フランジ部の下辺の内側には、それぞれ折罫線を介してエンドパネルと底面パネルBが連設されており、底面パネルAと底面パネルBとは、切断可能なミシン目線を介して繋がっており、フランジ部の左辺の裏面には、それぞれ折罫線を介して左側面パネルと底面パネルCとを連設する左糊代が接着されており、フランジ部の右辺の裏面には、それぞれ折罫線を介して右側面パネルと底面パネルDとを連設する右糊代が接着されており、紙製構造体をトレー形状に成形した時に、前記ミシン目線が切断して底面パネルAと底面パネルBが離開したことを特徴とする紙製トレーである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、紙製構造体を成形してなる紙ベースと熱可塑性樹脂ライナー材とから構成される紙製トレーであって、紙製構造体は、上辺、下辺、左辺、右辺からなる一つながりの矩形の枠形状のフランジ部を有し、フランジ部の上辺の内側には、それぞれ折罫線を介してトップパネルと底面パネルAが連設されており、フランジ部の下辺の内側には、それぞれ折罫線を介してエンドパネルと底面パネルBが連設されており、底面パネルAと底面パネルBとは、切断可能なミシン目線を介して繋がっており、フランジ部の左辺の裏面には、それぞれ折罫線を介して左側面パネルと底面パネルCとを連設する左糊代が接着されており、フランジ部の右辺の裏面には、それぞれ折罫線を介して右側面パネルと底面パネルDとを連設する右糊代が接着されており、紙製構造体をトレー形状に成形した時に、前記ミシン目線が切断して底面パネルAと底面パネルBが離開し、底面パネルCと底面パネルDとは重なり部を有することを特徴とする紙製トレーである。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記熱可塑性樹脂ライナー材は、ガスバリア層を有することを特徴とする請求項2または3に記載の紙製トレーである。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の紙製構造体を成形機の受型上に載置し、上から押し型を押し当てて紙製構造体の前記ミシン目線を切断して、トレー形状に成形した後、真空成形機または真空圧空成形機を用いてトレー内面に熱可塑性樹脂ライナー材を被覆密着せしめることを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の紙製トレーの製造方法である。
【0015】
また、請求項6に記載の発明は、前記成形機が、真空成形機または真空圧空成形機を兼ねることを特徴とする請求項5に記載の紙製トレーの製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載された本発明に係る紙製構造体は、対向する底面パネルAと底面パネルBとが切断可能なミシン目線を介して繋がっており、成型時に初めて切断するため、輸送中や、成型時に折れ曲がったり重なったりすることがなく、輸送適性や輸送効率に優れている。また安定した成形性を発揮するため、紙製構造体を製造する工場とこれを成形して紙製トレーを組み立てて、内容物を充填する工場とが異なる場所にあるような場合であっても、安定した物流・充填ラインを構築することが可能となる。
【0017】
本発明に係る紙製トレーは、紙ベースに熱可塑性樹脂ライナー材を一体として付着した構造であるため、使用後に紙ベースとライナー材とを分離することが容易に可能であり、リサイクル効率に優れている。
【0018】
本発明に係る紙製トレーは、一つながりの段差のない平坦なフランジ部を有するため、蓋材のシール性に優れ、密封シールが安定的に可能である。
【0019】
請求項3に記載の紙製トレーのように、側面パネルの延長上にある底面パネル同士が重なり合うようにした場合には、熱可塑性樹脂ライナー材の浮きを防止する効果がある。
【0020】
請求項4に記載の発明のように、熱可塑性樹脂ライナー材がガスバリア層を有する場合には、食品等を収納して、長期保存性を発揮することが可能となる。
【0021】
本発明に係る紙製トレーは、一般的な成形機や真空圧空成形機等を用いて容易に成形することができるため、従来紙器を製造した経験のない食品メーカー等においても、紙製トレーを成形して内容物を充填する一貫製造ラインを容易に構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明に係る紙製トレーの一実施態様を示した平面模式図である。
図2図2は、図1のA-A´断面を示した断面模式図である。
図3図3は、本発明に係る紙製構造体のもととなる紙ベースブランクを示した平面模式図であり、左右の側面パネル、底面パネルが接着されていない状態を示したものである。
図4図4は、本発明に係る紙製構造体の一実施態様を示した平面模式図である。
図5図5は、紙製構造体を成形機の受型と押し型によって圧締して、紙ベースを成形する様子を示した断面説明図である。
図6図6は、紙製構造体が成形機によって成形されて紙ベースが完成した状態を示す。
図7図7は、成形が完了した紙ベースに、真空圧空成形機によって、熱可塑性樹脂ライナー材を密着させる工程を示した断面説明図である。
図8図8は、真空圧空成形機の上チャンバーを閉じて、熱可塑性樹脂ライナー材を加熱して軟化させる工程を示した断面説明図である。
図9図9は、真空圧空成形機の上チャンバーに圧空を印加し、下チャンバーを真空吸引することにより、熱可塑性樹脂ライナー材を紙ベースに密着せしめる工程を示した断面説明図である。
図10図10は、熱可塑性樹脂ライナー材の断面構成の一例を示した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面を参照しながら、本発明に係る紙製トレー、並びにこれを成形するための紙製構造体、および紙製トレーの製造方法について詳細に説明する。図1は、本発明に係る紙製トレーの一実施態様を示した平面模式図である。図2は、図1のA-A´断面を示した断面模式図である。図3は、本発明に係る紙製構造体のもととなる紙ベースブランクを示した平面模式図であり、左右の側面パネル、底面パネルが接着されていない状態を示したものである。図4は、本発明に係る紙製構造体の一実施態様を示した平面模式図である。
【0024】
本発明に係る紙製構造体(BLKS)は、特許請求範囲に記載の通り、上辺(4A)、下辺(4B)、左辺(4C)、右辺(4D)からなる一つながりの矩形の枠形状のフランジ部(4)を有し、成形することにより、フランジ部(4)、トップパネル(5)、エンドパネル(7)、左側面パネル(11)、右側面パネル(21)、底面からなるトレー形状の紙ベース(2)を形成する紙製構造体(ブランクス)である。
【0025】
フランジ部(4)の上辺(4A)の内側には、それぞれ折罫線(a)、(b)を介してトップパネル(5)と底面パネルA(6)が連設されており、フランジ部(4)の下辺(4B)の内側には、それぞれ折罫線(c)、(d)を介してエンドパネル(7)と底面パネルB(8)が連設されている。底面パネルA(6)と底面パネルB(8)とは、切断可能なミシン目線(9)を介して繋がっていることを特徴とする。
【0026】
フランジ部(4)の左辺(4C)の裏面には、それぞれ折罫線(e)、(f)を介して左側面パネル(11)と底面パネルC(12)とを連設する左糊代(10)が接着されている。フランジ部(4)の右辺(4D)の裏面には、それぞれ折罫線(g)、(h)を介して右側面パネル(21)と底面パネルD(22)とを連設する右糊代(20)が接着されている。
【0027】
次に、この紙製構造体(BLKS)を成形して得られる、紙製トレー(1)のもととなる紙ベース(2)について説明する。図1は、本発明に係る紙製トレー(1)の一実施態様を示した平面模式図であるが、分かり易くするために、この図では熱可塑性樹脂ライナー材(3)が透明で目に見えないものとして省略されている。このため、図1は、紙ベース(2)を表している図として見ることもできる。
【0028】
図1のA-A´断面を示した図である図2においては、熱可塑性樹脂ライナー材(3)と、最終的に密封シールされる蓋材(30)が記載されている。
【0029】
図1に示した例では、底面パネルC(12)と底面パネルD(22)が底面の重なり部(13)を形成している。底面パネルC(12)の長さと底面パネルD(22)の長さは、成形した時に丁度突き当たる長さに設定しても良いが、この重なり部(13)が存在することにより、熱可塑性樹脂ライナー材(3)を密着させた時に浮きが発生することを防止する効果があることが判明している。
【0030】
図3は、本発明に係る紙製構造体(BLKS)のもととなる紙ベースブランク(BL)を示した平面模式図であり、左右の側面パネル、底面パネルが接着されていない状態を示したものである。この図で左糊代(10)を左辺(4C)の裏面に接着し、右糊代(20)を右辺(4D)の裏面に接着すると、図4に示した紙製構造体(BLKS)の状態となる。なお、図4では、煩雑を避けるために、折罫線a~hが省略されている。
【0031】
図4に示した紙製構造体(BLKS)は、図5に示したように、受型(41)と押し型
(42)を備えた成形機(40)で成形することにより、立体的な紙ベース(2)を極めて容易に、また安定して作成することができる。図5は、紙製構造体(BLKS)を成形機(40)の受型(41)と押し型(42)によって圧締して、紙ベース(2)を成形する様子を示した断面説明図である。図6は、紙製構造体(BLKS)が成形機(40)によって成形されて紙ベース(2)が完成した状態を示す。
【0032】
図7~9は、成形が完了した紙ベース(2)に、真空圧空成形機(50)によって、熱可塑性樹脂ライナー材(3)を密着させる工程を示した断面説明図である。図7では、真空圧空成形機(50)の下チャンバー(51)に紙ベース(2)をセットし、上チャンバー(52)を下降する様子を示した断面説明図である。
【0033】
図8は、真空圧空成形機(50)の上チャンバー(52)を閉じて、熱可塑性樹脂ライナー材(3)を加熱ヒーター(53)によって加熱して軟化させる工程を示した断面説明図である。次いで、図9に示したように、真空圧空成形機(50)の上チャンバー(52)に加圧空気(54)を印加し、下チャンバー(51)を真空吸引(55)することにより、熱可塑性樹脂ライナー材(3)を紙ベース(2)に密着せしめる。
【0034】
以上の説明では、紙ベース(2)を成形する成形機(40)と、紙ベース(2)に熱可塑性樹脂ライナー材(3)を密着させる真空圧空成形機(50)とは、別の装置であるように記載しているが、これらの一連の工程は、特に図示しないが、一つの共通の装置によって一貫して行うこともできる。
【0035】
本発明に係る紙製トレー(1)に用いる材料について説明する。まず紙ベース(2)としては、坪量100g/m~500g/m程度の板紙を使用することができる。板紙は、目的とする紙製トレーの用途や印刷適性等に応じて選択する。具体的には、マニラボール紙、白ボール紙、チップボール紙、両面カード紙、裏白ボール紙、アイボリー紙、カートン原紙、カップ原紙、コートボール紙等である。食品を収納する用途であれば、食品グレードの板紙が望ましい。
【0036】
熱可塑性樹脂ライナー材(3)としては、真空成形可能な各種熱可塑性樹脂フィルムが使用できる。具体的には、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリオレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂(PMMA)、エチレン-酢酸ビニル系共重合樹脂(EVA)、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、等の合成樹脂フィルムを単体または接着層と複合して用いることができる。
【0037】
図10は、熱可塑性樹脂ライナー材(3)の断面構成の一例を示した断面模式図である。この例は、ポリオレフィン系樹脂(3A)、ガスバリア層(3B)、ポリオレフィン系樹脂(3C)の3層から構成される多層フィルムである。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂が用いられる。電子レンジによる加熱が想定される場合には、ポリプロピレン樹脂が用いられる。
【0038】
ガスバリア層(3B)としては、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)フィルム、ポリビニルアルコール(PVA)フィルム、エチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム、ガスバリア性ナイロンフィルム、ガスバリア性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等のガスバリア性フィルムや、PETフィルム等にアルミニウム等の金属を蒸着した金属蒸着フィルムや、PETフィルムに酸化アルミニウムや酸化珪素等の無機酸
化物を蒸着させた無機酸化物蒸着フィルム、あるいは、ポリ塩化ビニリデンコーティング、水溶性樹脂と無機層状化合物を含有する被膜や金属アルコキシドあるいはその加水分解物とイソシアネート化合物を反応させた被膜からなる樹脂層などのガスバリアコーティング層、などを用いることができる。
【0039】
蓋材(30)としては、一般的に印刷加工が施されることが多いので、印刷適性や、シール適性、開封性等を考慮して選択される。印刷適性の良好な二軸延伸フィルムとシーラントフィルムをドライラミネートした複合フィルム等が好適に用いられる。
【0040】
以下実施例および比較例に基づいて、本発明に係る紙製トレーについてさらに具体的に説明する。
【実施例
【0041】
<実施例1>
紙ベースの材料として、食品グレードの板紙(王子製紙社製OKフレースPRO、坪量310g/m)を使用して、図3に示したような紙ベースブランクを作成した。糊代部分をエマルジョン接着剤(日栄化工社製)で接着して、図4に示したような底面パネル同士の重なりがある紙製構造体を作成した。
【0042】
熱可塑性樹脂ライナー材としては、ポリエチレン樹脂(20μm)/EVOH(10μm)/ポリエチレン樹脂(20μm)の3層貼り合わせフィルムを使用した。
【0043】
これらの材料を用いて、図1、2に示したような紙製トレーを作成し、以下の評価項目について評価した。
<分離性>
紙ベースとライナー材の剥離性を評価した。パネラー30人に剥離して貰い、25人以上が分離し易いと判断した場合を〇とした。
<ブランクス輸送適性>
紙製構造体(ブランクス)を500枚段ボール箱に梱包し、振動、落下試験後のブランクスのずれ、およびブランクスの引っ掛かり、入り込みを評価した。それぞれ独立して分離可能だった場合を〇とした。
<成形性>
紙製構造体(ブランクス)の成形時の収率を評価。95%以上を〇とした。
<浮き>
紙製トレー成型後に側面パネルから内面に手で屈曲させ、ライナー材の浮きを評価。
浮かなかったものを〇とした。
<シール性>
蓋材を完全シールできるものを〇とした。
【0044】
<実施例2>
板紙として、食品グレードの板紙(王子製紙社製OKフレースPRO、坪量400g/m)を使用した以外は、実施例1と同様にして紙製トレーを作成し、同様に評価した。
【0045】
<実施例3>
熱可塑性樹脂ライナー材としては、ポリエチレン樹脂(20μm)/EVOH(10μm)/ポリプロピレン樹脂(20μm)の3層貼り合わせフィルムを使用した以外は、実施例2と同様にして紙製トレーを作成し、同様に評価した。
【0046】
<実施例4>
板紙として、食品グレードの板紙(APP社製アリキンクリーム、坪量250g/m)を使用した以外は、実施例3と同様にして紙製トレーを作成し、同様に評価した。
【0047】
<実施例5>
板紙として、食品グレードの板紙(APP社製アリキンクリーム、坪量250g/m)を使用した以外は、実施例1と同様にして紙製トレーを作成し、同様に評価した。
【0048】
<実施例6>
底面における底面板の重なりが生じないようにした以外は、実施例1と同様の材料を用い、同様にして紙製トレーを作成し、同様に評価した。
【0049】
<実施例7>
底面における底面板の重なりが生じないようにした以外は、実施例2と同様の材料を用い、同様にして紙製トレーを作成し、同様に評価した。
【0050】
<実施例8>
底面における底面板の重なりが生じないようにした以外は、実施例3と同様の材料を用い、同様にして紙製トレーを作成し、同様に評価した。
【0051】
<実施例9>
底面における底面板の重なりが生じないようにした以外は、実施例4と同様の材料を用い、同様にして紙製トレーを作成し、同様に評価した。
【0052】
<実施例10>
底面における底面板の重なりが生じないようにした以外は、実施例5と同様の材料を用い、同様にして紙製トレーを作成し、同様に評価した。
【0053】
<比較例1>
市販の紙トレー(板紙の坪量310g/m、ライナー材ポリエチレン樹脂20μm)を用いて、同様に評価した。この紙トレーは、フランジ部に段差が存在した。
【0054】
<比較例2>
紙製構造体(ブランクス)において、ミシン目線を初めから切断しておいた以外は、実施例6と同様の材料を用い、同様にして紙製トレーを作成し、同様に評価した。
【0055】
<比較例3>
紙製構造体(ブランクス)において、ミシン目線を初めから切断しておいた以外は、実施例7と同様の材料を用い、同様にして紙製トレーを作成し、同様に評価した。
【0056】
<比較例4>
紙製構造体(ブランクス)において、ミシン目線を初めから切断しておいた以外は、実施例8と同様の材料を用い、同様にして紙製トレーを作成し、同様に評価した。
【0057】
<比較例5>
紙製構造体(ブランクス)において、ミシン目線を初めから切断しておいた以外は、実施例9と同様の材料を用い、同様にして紙製トレーを作成し、同様に評価した。
【0058】
<比較例6>
紙製構造体(ブランクス)において、ミシン目線を初めから切断しておいた以外は、実施例10と同様の材料を用い、同様にして紙製トレーを作成し、同様に評価した。
【0059】
以上の評価結果を表1にまとめた。
【0060】
【表1】
【0061】
表1の結果から、紙製構造体において、底面パネルAと底面パネルBとがミシン目線によって繋がっていることにより、ブランクスの輸送適性や成形性が向上することが分かった。また、底面板の重なりが浮きを防止する効果があることが分かった。
【符号の説明】
【0062】
1・・・紙製トレー
2・・・紙ベース
BL・・・紙ベースブランク
BLKS・・・紙製構造体(ブランクス)
3・・・熱可塑性樹脂ライナー材
3A・・・ポリオレフィン系樹脂
3B・・・ガスバリア層
3C・・・ポリオレフィン系樹脂
4・・・フランジ部
4A・・・上辺
4B・・・下辺
4C・・・左辺
4D・・・右辺
5・・・トップパネル
6・・・底面パネルA
7・・・エンドパネル
8・・・底面パネルB
9・・・ミシン目線
10・・・左糊代
11・・・左側面パネル
12・・・底面パネルC
13・・・底面の重なり部
20・・・右糊代
21・・・右側面パネル
22・・・底面パネルD
a~h・・・折罫線
30・・・蓋材
40・・・成形機
41・・・受型
42・・・押し型
50・・・真空圧空成形機
51・・・下チャンバー
52・・・上チャンバー
53・・・加熱ヒーター
54・・・加圧空気
55・・・真空吸引
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10