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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】作業車両の走行制御機構
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20250408BHJP
   B62D 1/28 20060101ALI20250408BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D1/28
A01B69/00 303A
A01B69/00 303M
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021148517
(22)【出願日】2021-09-13
(65)【公開番号】P2023041255
(43)【公開日】2023-03-24
【審査請求日】2023-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】畑邊 昌也
(72)【発明者】
【氏名】武井 祐
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-188097(JP,A)
【文献】特開2020-087340(JP,A)
【文献】特開2019-054746(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0070356(US,A1)
【文献】特開2013-091443(JP,A)
【文献】特開2000-198458(JP,A)
【文献】特開2021-007336(JP,A)
【文献】特開2020-000023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 1/28
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体の進行方向を操作する操舵装置と、前記操舵装置の操作量を検出する操舵センサと、前記操舵センサの出力を入力する走行制御部と、前記走行制御部の指示に基づいて、走行車輪を駆動する走行駆動装置と、前記走行車体の位置を検出する車体位置検出装置とを備えた作業車両の走行制御機構であって、
手動作業モード制御と、自動直進モード制御とを備え、
前記手動作業モード制御においては、前記走行制御部は前記操舵装置の操作量に応じて走行制御を行い、
前記自動直進モード制御においては、前記走行制御部は予め設定されている直進走行経路と、前記車体位置検出装置からの検出信号に基づいて直進走行制御を行い、
前記自動直進モード制御下において、前記操舵装置の操作が行われた場合はその操作量に応じて前記直進走行経路を修正し、その修正された直進走行経路と、前記車体位置検出装置からの検出信号に基づいて直進走行制御を行うことを特徴とする、作業車両の走行制御機構。
【請求項2】
前記車体位置検出装置は、航法衛星からの信号を受信する測位装置を有し、
前記走行制御部には予め直進走行経路データが格納されており、
前記自動直進モード制御下において、前記走行制御部は前記操舵装置の操作量に応じて前記直進走行経路を修正し、その修正された直進走行経路と前記測位装置からの検出信号に基づいて走行制御を行う、請求項1記載の作業車両の走行制御機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクターなどの作業車両の走行制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、田植え機において、予め設定された車体の目標方位に従って自動直進走行を行い、その目標からずれている場合は操縦パネルなどに設けられたトリムスイッチを押すことによって目標方位の修正を行っている技術が知られている。すなわち、機体方向を示す機体方位情報に基づき、別途設定された往復工程の目標方位に対する機体方位の偏差が小さくなる方向に操向装置の舵角を操作する自律直進操舵制御を行う制御部を備える圃場作業車両において、目標方位を修正する手動操作具を設け、該手動操作具による修正方位量を記憶し、以後の往復工程の目標方位を記憶された修正方位量に基づいて自動修正する圃場作業車両が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-110921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自動走行制御において、目標方位の修正は、操縦パネルなどに設けられたトリムスイッチを押すことで行っているが、手動走行の場合は、ステアリングホイールの手動操作で走行制御を行うのに対して、その修正操作はトリムスイッチを押す操作で行うため、異質の操作が求められ操作感覚に統一感がなかった。
さらに、トリムスイッチを押すことで目標方位を修正するためにはそれ専用の部材や回路が必須であり、製造上もコスト上も改善が求められる。
【0005】
本発明は、手動走行作業と、自動直進作業に関する制御変更の操作感覚を同質化し、製造上もコスト上も改良された、作業車両の走行制御機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の本発明は、
走行車体の進行方向を操作する操舵装置と、前記操舵装置の操作量を検出する操舵センサと、前記操舵センサの出力を入力する走行制御部と、前記走行制御部の指示に基づいて、走行車輪を駆動する走行駆動装置と、前記走行車体の位置を検出する車体位置検出装置とを備えた作業車両の走行制御機構であって、
手動作業モード制御と、自動直進モード制御とを備え、
前記手動作業モード制御においては、前記走行制御部は前記操舵装置の操作量に応じて走行制御を行い、
前記自動直進モード制御においては、前記走行制御部は予め設定されている直進走行経路と、前記車体位置検出装置からの検出信号に基づいて直進走行制御を行い、
前記自動直進モード制御下において、前記操舵装置の操作が行われた場合はその操作量に応じて前記直進走行経路を修正し、その修正された直進走行経路と、前記車体位置検出装置からの検出信号に基づいて直進走行制御を行うことを特徴とする、作業車両の走行制御機構である。
【0007】
第2の本発明は、
前記車体位置検出装置は、航法衛星からの信号を受信する測位装置を有し、
前記走行制御部には予め直進走行経路データが格納されており、
前記自動直進モード制御下において、前記走行制御部は前記操舵装置の操作量に応じて前記直進走行経路を修正し、その修正された直進走行経路と前記測位装置からの検出信号に基づいて走行制御を行う、第1の本発明の作業車両の走行制御機構である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、手動走行作業と、自動直進作業に関する制御変更の操作感覚を同質化し、製造上もコスト上も改良された、作業車両の走行制御機構を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明における実施の形態にかかる作業車両の側面図
図2】同作業車両の操舵装置を中心とする部分背面図
図3】同作業車両の走行制御を説明するための構成図
図4】圃場における同作業車両の作業についての説明図
図5】同作業車両の制御部を中心とする構成図
図6】同作業車両の自動直進モード制御における直線経路の修正についての説明図
図7】同作業車両の自動直進モード制御における操舵と直進走行経路の関係を示す説明図(その1)
図8】同作業車両の自動直進モード制御における操舵と直進走行経路の関係を示す説明図(その2)
図9】同作業車両の自動直進モード制御における操舵と直進走行経路の関係を示す説明図(その3)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態にかかる作業車両の一例としてのトラクターである。まず、図1を参照してトラクター1の全体構成について説明する。
【0012】
作業車両であるトラクター1は、自走しながら圃場などで作業を行う農業用トラクターである。また、トラクター1は、操縦者(作業者ともいう)が搭乗して圃場内を走行しながら所定の作業を実行する他、後述する走行制御部を中心とする制御系による各部の制御により、圃場内を自動走行しながら所定の作業を実行する。
【0013】
また、以下において、前後方向とは、トラクター1の直進時における進行方向であり、進行方向の前方側を「前」、後方側を「後」と規定する。トラクター1の進行方向とは、直進時において、後述する操縦席8からステアリングホイール(操舵装置)9に向かう方向である(図1参照)。
【0014】
左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向である。以下では、「前」側へ向けて左右を規定する。すなわち、トラクター1の操縦者(「作業者」ともいう)が操縦席8に着席して前方を向いた状態で、左手側が「左」、右手側が「右」である。
【0015】
上下方向とは、鉛直方向である。前後方向、左右方向および上下方向は互いに直交する。なお、各方向は説明の便宜上定義したものであり、これらの方向によって本発明が限定されるものではない。また、以下では、トラクター1を指して「機体」あるいは「車体」という場合がある。
【0016】
図1に示すように、トラクター1は、走行車体2と、その後部に作業機用リンク機構を備える。走行車体2は、車体フレーム3と、前輪4と、後輪5と、ボンネット6と、エンジンEと、操縦部7と、ミッションケース10とを備える。車体フレーム3は、走行車体2のメインフレームである。
【0017】
前輪4は、左右一対であり、主に操舵用の車輪(操舵輪)となる。後輪5は、左右一対であり、主に駆動用の車輪(駆動輪)となる。トラクター1は、後輪5が駆動する二輪駆動(2WD)と、前輪4および後輪5が共に駆動する四輪駆動(4WD)とを切り替え可能に構成されてもよい。この場合、駆動輪は、前輪4および後輪5の両方である。なお、走行車体2は、車輪(前輪4および後輪5)に代えてクローラ装置を備えてもよい。この場合、走行クローラが駆動輪である。
【0018】
ボンネット6は、走行車体2の前部において開閉自在に設けられる。ボンネット6は、後部を回動中心として上下方向に回動(開閉)可能である。ボンネット6は、閉じた状態で、車体フレーム3上に搭載されたエンジンEを覆う。エンジンEは、トラクター1の駆動源であり、ディーゼル機関やガソリン機関などの熱機関である。なお、ボンネット6は前部を回動中心としてもよい。
【0019】
操縦部7は、走行車体2の上部に設けられ、操縦席8やステアリングホイール(操舵装置)9などを備える。操縦席8は、操縦者の座席である。ステアリングホイール9は、前輪4を操舵する場合に操縦者により操作される。なお、操縦部7は、ステアリングホイール9の前方に、各種情報を表示する表示部(メータパネル)9aを備える。
【0020】
また、操縦部7は、前後進レバー、アクセルレバー、主変速レバー、副変速レバーなどの各種操作レバーや、アクセルペダル、ブレーキペダル、クラッチペダルなどの各種操作ペダルを備える。
【0021】
図2において、60はモード切替スイッチであって、後述する作業モード制御と走行モード制御を切り替えるスイッチである。
【0022】
61は自動操舵入り切りスイッチであって、後述する自動操舵モード制御を入りにするか切りにするかを選択するスイッチである。
【0023】
62は後述する、A、B点設定手段であって、圃場50内の走行経路の中の平行直線走行経路を設定するためのA、B点設定手段である。走行制御部40の走行経路設定手段40dはそのA、B点設定情報に基づき、平行直線走行経路を自動生成する手段である。
【0024】
自動操舵入り切りスイッチ61およびA、B点設定手段62は自動操舵設定レバー63の上下操作により入り切り操作される。自動操舵設定レバー63を最初に下げる操作を行うとA点を記憶し、もう一度下げる操作を行うとB点を記憶し、A、B点が記憶された状態で最初に上げる操作を行うと自動操舵モード制御が入りになり、もう一度上げる操作を行うと自動操舵モード制御が切りになる。
【0025】
ミッションケース10は、トランスミッション(変速機構)を収容している。トランスミッション10は、エンジンEから伝達される動力(回転動力)を適宜減速して、駆動輪である後輪5や、PTO(Power Take-off)軸へ伝達する。
【0026】
走行車体2の後部には、圃場内で作業を行う作業機が連結され、作業機を駆動する動力を伝達するPTO軸がミッションケース10から後方へ突出している。PTO軸は、トランスミッションによって適宜減速された回転動力を、走行車体2の少なくとも後部に装着された作業機へ伝達する。作業機は、圃場内で作業を行う機械である。例えば、作業機は、圃場において耕耘作業を行うロータリ耕耘機である。ロータリ耕耘機は、PTO軸から伝達された動力によって耕耘爪が回転することで、圃場面(土壌)を耕耘する。
【0027】
また、トラクター1は、図5に示すような走行制御部40を備える。走行制御部40は、エンジンEを制御するとともに(40aはエンジンECU)、走行車体2の走行速度を制御する(40bは走行系ECU)。また、走行制御部40は、作業機を制御する。40cは種々のデータを記録する記録部である。
【0028】
また、トラクター1は、測位装置30を備える。測位装置30は、走行車体2の上部に設けられ、走行車体2の位置を測定する。測位装置30は、たとえば、GNSS(Global Navigation Satellite System)であり、上空を周回している航法衛星Sからの電波を受信して測位および計時を行うことができる。ここに、測位装置30は、本発明の車体位置検出装置の一例である。なお、本発明の車体位置検出装置としては測位装置30に限らず、他の手段で実現されてもかまわない。
【0029】
また、20は、走行車体2の方位(向き)を検出するセンサ。40hは測位装置30からの信号に基づいて、車速を演算する手段である。40iはタイマーである。40kは走行停止判断手段であって、作業者が操縦席8から離れた時間と、車速から、離れている間にトラクター1がどれほど走行したかを演算し、所定の距離を超えたら停止させる手段である。なお、Vsは車体フレーム3に取り付けられ、トラクター1の速度を検出するセンサである。100は遠隔操作装置(リモコン)であって、トラクター1は、作業者による遠隔操作装置100の操作によって、遠隔操作が可能である。
【0030】
図3は、本実施例の作業車両の制御の概要を示す構成図である。ここに、操舵装置9の下には操舵角度を検出する操舵センサ70が取り付けられている。この操舵センサ70の出力信号は走行制御部40へ出力される。すなわち、ステアバイワイヤ方式である。他方、航法衛星Sからの電波を受信して測位を行う測位装置30からの出力信号も走行制御部40へ入力される。さらに、走行制御部40の制御信号は走行駆動装置71へ出力される。走行駆動装置71は前輪駆動アクチュエータ72を駆動して前輪4,4の方向を変化させる。なお、73は前輪角センサであり、その出力は走行制御部40へ入力されフィードバック制御されるようになっている。
【0031】
次に、圃場を上記トラクター1で耕耘する仕方の概要を説明する。
【0032】
図4は、トラクター1の一般的な走行経路などを示す図である。ここに、50は圃場、50aは圃場50のほぼ中央の往復走行を行う主要範囲領域、50bは、主要範囲領域50aの外側の枕地領域を示す。51は畔であり、52は出入り口である。枕地領域50bにおける枕地走行経路は1周を1工程として、複数工程(3本)設定されている。53は路上である。
【0033】
トラクター1は、破線に示すように、その主要範囲領域50aを往復自動作業走行した後、その外周形状の直ぐ周りの枕地領域50bを1周だけ自動作業走行する。
【0034】
そのような経路は走行制御部40の走行経路設定手段40dにより設定され、記録部40cに予め記録されており、測位装置30で受信する衛星信号とその予め記録された経路データとを照合しながら、走行系ECU40bが操舵装置9や変速装置10を操作して、トラクター1を自律作業走行させていく。
【0035】
また、出入り口52から出た外の路上53においては、手動で操舵装置9を操作してトラクター1を路上走行させる。
以下に、走行制御部40の各種のモードに応じた制御について説明する。
【0036】
走行制御部40は図5に示すように、走行モード制御40eと、作業モード制御40fと、自動操舵モード制御40gを実行できる。
【0037】
ここに、走行モード制御40eとは、操舵装置9を操作してもブレーキが作動しない制御モードであって、路上53の走行時に適切であり用いられるモードである。また、作業モード制御40fは少なくとも、操舵装置9の操作量に応じてブレーキが作動する制御モードであり、圃場50内における各種作業時に適切であり、用いられるモードである。また、自動操舵モード制御40gは予め設定されている走行経路に沿って操舵装置9を自動的に自動操舵する制御モードであり、圃場50内の直線経路の作業走行時に適切であり用いられるモードである。
すなわち、圃場内においては、予め設定されている走行経路が直線の場合の自動操舵モード制御40gと、手動で操舵装置9を操作して車体を走行させる制御とがある。前者は本発明の自動直進モード制御に対応し、後者は本発明の手動作業モード制御に対応する。
【0038】
さらに、この手動作業モード制御と、自動直進モード制御とについて説明する。
【0039】
手動作業モード制御においては、図3に示すように、走行制御部40は操舵装置9の回転角度を操舵センサ70が検出し、操舵装置9の操作量として検出した信号を走行制御部40へ出力する。走行制御部40はその操作量信号に応じて、ステアリングソレノイドなどで構成されている走行駆動装置71の制御を行う。さらにその走行駆動装置71は前輪駆動アクチュエータ72を駆動して前輪4,4を動かす。前輪角センサ73は前輪4,4の変化角度を検出し、その結果を走行制御部40へ出力する。
【0040】
走行駆動装置71はその信号を受けてフィードバック制御を行い、前輪4,4を制御していく。
【0041】
他方、自動直進モード制御においては、航法衛星Sからの電波を受信した測位装置30はその測位信号を走行制御部40へ出力しているので、走行制御部40は、予め記録部40cに記録されている直進走行経路とその入力されてくる測位信号の内容を突き合わせ、一致している場合はそのままとし、不一致の場合は、走行駆動装置71へその不一致を解消する方へ前輪4,4が回動するように指令信号を出力する。走行駆動装置71はそれに従って、前輪4,4を駆動していく。
【0042】
ところで、自動直進モード制御下において、操縦者が走行車体2の走行を見ていて直進状態がズレていると判断する場合がある。航法衛星Sの精度が山間地などで落ちることがあるからである。そうした場合には、操縦者は自動直進モード制御下にも関わらず、操舵装置9をそのずれを解消する側へ回転させる。左側へ変更したい場合は左側へ回転し、右側へ変更したい場合は右側へ回転する。その結果、操舵センサ70はその角度を検知し、走行制御部40へ出力する。走行制御部40は、自動直進モード制御であるにも関わらず操舵センサ70から信号が入力されてきたので、ずれの解消と判断し、その角度に応じて、予め記録部40cに設定されている直進走行経路74を、ずれを解消する方向に変更修正する(図6(B))。以後、走行制御部40はその修正された直進走行経路74’に従って、上述した直進制御を実行していく(図6(A))。
【0043】
図7図9は、自動直進モード制御下における操舵装置9の操作と直進走行経路74の関係を示す説明図である。図7に示すように、直進走行経路74は操舵装置9を操作した方向に操作量に応じて平行に移動する。すなわち、操舵装置9を中立の角度Aから時計回りに角度A’まで操舵すると直進走行経路74は車両の進行方向に対して右に平行移動して直進走行経路74’に修正される。さらに操舵装置9を角度A’から時計回りに角度A''まで連続して操舵すると、直進走行経路74’はさらに右に平行移動して直進走行経路74’’に修正される。
【0044】
また、図8に示すように、直進走行経路74は操舵装置9を操作した時間に応じて平行に移動する。すなわち、操舵装置9を中立の角度Aから時計回りに角度A’まで操舵した状態をT秒維持すると、直進走行経路74は操舵直後に車両の進行方向に対して右に平行移動した直進走行経路74’からさらに右方向に平行移動した直進走行経路74’’に修正される。
【0045】
その直後、図9に示すように、操舵装置9を角度A’から反時計回りに中立の角度Aまで操舵すると、右に平行移動していた直進走行経路74’’は車両の進行方向に対して左に平行移動した直進走行経路74’に修正される。このように直進走行経路74は操舵装置9の操舵量を時間で積分した値に比例して平行移動する。
【0046】
このように制御することにより、自動直進モード制御下における操舵装置9の操作に対するトラクター1の挙動が、手動作業モード制御下におけるトラクター1の挙動と定性的に同様となり、違和感なく自動操舵と手動操舵を共存させることができる。また、操舵時間に応じて元の直進走行経路74を任意にずらした直進走行経路74’に修正することができる。
【0047】
さらに、操舵装置9を所定の操舵量(例えば、180度)以上操舵すると、自動直進モード制御を終了または中断し、手動作業モード制御に移行しても良い。これにより、自動直進モード制御を特別な操作により終了させなくても、操舵装置9の操作だけでトラクター1を旋回させることができる。
【0048】
このようにすることによって、手動作業モード制御の場合と同じ感覚で、自動直進モード制御の場合の直進経路の修正が可能となる。
【0049】
なお、上述されたように、本発明の構成は、ソフトウェア的に実現されてもよいし、ハードウェア的に実現されてもよい。
【0050】
また、本発明に関連した発明のプログラムは、上述された本発明に関連した発明の制御方法の全部または一部のステップ(または工程、動作および作用など)の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、コンピュータと協働して動作するプログラムである。
【0051】
また、本発明に関連した発明の記録媒体は、上述された本発明に関連した発明の制御方法の全部または一部のステップ(または工程、動作および作用など)の全部または一部の動作をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録した記録媒体であり、読取られたプログラムがコンピュータと協働して利用されるコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
【0052】
なお、上述された「一部のステップ(または工程、動作および作用など)」は、それらの複数のステップの内の一つまたはいくつかのステップを意味する。
【0053】
また、上述された「ステップ(または工程、動作および作用など)の動作」は、上述されたステップの全部または一部の動作を意味する。
【0054】
また、本発明に関連した発明のプログラムの一利用形態は、インターネット、光、電波または音波などのような伝送媒体の中を伝送され、コンピュータにより読取られ、コンピュータと協働して動作するという形態であってもよい。
【0055】
また、記録媒体としては、ROM(Read Only Memory)などが含まれる。
【0056】
また、コンピュータは、CPU(Central Processing Unit)などのような純然たるハードウェアに限らず、ファームウェア、OS(Operating System)、そしてさらに周辺機器を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、手手動走行作業と、自動直進作業に関する制御変更の操作感覚を同質化し、製造上もコスト上も改良された、作業車両の走行制御機構を提供することが出来、トラクターなど農業用作業機に最適である。
【符号の説明】
【0058】
1 トラクター
2 走行車体
3 車体フレーム
4,5 前輪、後輪
7 操縦部
8 操縦席
9 ステアリングホイール(操舵装置)
10 ミッションケース
30 測位装置(車体位置検出装置)
20 方位センサ
40 走行制御部
40a エンジンECU
40b 走行系ECU
40c 記録部
40d 走行経路設定手段
40e 走行モード制御
40f 作業モード制御
40g 自動操舵モード制御
40h 車速演算手段
40i タイマー
40k 走行停止判断手段
40m 経過時間算出手段
40n 走行距離算出手段
50 圃場
50a 主要範囲領域
50b 枕地領域
51 畔
52 出入り口
53 路上
60 モード切替スイッチ
61 自動操舵入り切りスイッチ
62 A、B点設定手段
70 操舵センサ
71 走行駆動装置
72 前輪駆動アクチュエータ
73 前輪角センサ
74、74’、74’’直進走行経路
E エンジン
S GNSS
Vs 速度センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9