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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】はんだ付け装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/03 20060101AFI20250408BHJP
   B23K 3/02 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
B23K3/03 B
B23K3/02 F
B23K3/02 R
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021156774
(22)【出願日】2021-09-27
(65)【公開番号】P2023047700
(43)【公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-11-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】木内 隼人
(72)【発明者】
【氏名】古本 敦司
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】盛 昭夫
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-166097(JP,A)
【文献】特開2015-166098(JP,A)
【文献】国際公開第2016/114263(WO,A1)
【文献】実開昭57-016270(JP,U)
【文献】特開2003-205366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/00 - 3/08、31/02、33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ(H)を溶融する溶融部(11)と、
前記溶融部の外側に設けられており、前記溶融部を加熱する加熱部(12)と、
前記溶融部の外面を前記加熱部の内面に押し当てる押当部(14)と、
前記押当部が前記溶融部に与えている押圧力を検知する押圧力検知部(18)と、
を備えるはんだ付け装置。
【請求項2】
前記加熱部は、発熱線(12C)の密度が所定密度よりも低いサブ発熱部(12B)を有し、
前記押当部は、前記サブ発熱部に設けられている請求項1に記載のはんだ付け装置。
【請求項3】
前記押当部は、前記溶融部の温度を検知する温度検知部(16)を備える請求項1または2に記載のはんだ付け装置。
【請求項4】
前記押当部が前記溶融部の外面を前記加熱部の内面に押し当てている押当状態を維持する維持部(17)を備える請求項1から3の何れか1項に記載のはんだ付け装置。
【請求項5】
前記加熱部は、発熱線(12C)の密度が所定密度よりも高いメイン発熱部(12A)を有し、
前記溶融部および前記加熱部の長手方向において、前記メイン発熱部の長さは、前記溶融部のうち前記加熱部内に挿入されている部分の長さよりも短い請求項1から4の何れか1項に記載のはんだ付け装置。
【請求項6】
前記メイン発熱部のうち発熱量が最も高い最高発熱領域(12R)は、前記溶融部の先端部側に設けられている請求項5に記載のはんだ付け装置。
【請求項7】
前記溶融部は、前記押当部によって押圧される押圧面部(11A)を備える請求項1から6の何れか1項に記載のはんだ付け装置。
【請求項8】
前記溶融部は、前記押当部によって押圧される押圧凹部(11B)を備える請求項1から6の何れか1項に記載のはんだ付け装置。
【請求項9】
前記溶融部の外面と前記加熱部の内面とが接触する接触面(S)は、前記溶融部および前記加熱部の長手方向に対して傾斜している請求項1から8の何れか1項に記載のはんだ付け装置。
【請求項10】
前記押当部を冷却する冷却部(19)を備える請求項1からの何れか1項に記載のはんだ付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、はんだ付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、はんだ付け装置においては、はんだを溶融するための構成要素として、筒状の鏝、いわゆる「スリーブ」を備えた構成が考えられている。この種のはんだ付け装置は、スリーブの外側にヒータを備えている。そして、ヒータによってスリーブを加熱することにより、スリーブ内に供給されたはんだを溶融する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5184359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来構成においては、スリーブとヒータとの間に、例えば寸法誤差などによって隙間が生じてしまう場合がある。このような場合には、ヒータが発生する熱をスリーブに効率良く伝達することができなくなり、ひいては、スリーブにおけるはんだの溶融を効率良く行うことができなくなる。
【0005】
そこで、加熱部が発生する熱を溶融部に効率良く伝達できるようにしたはんだ付け装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るはんだ付け装置10は、はんだHを溶融する溶融部11と、前記溶融部の外側に設けられており、前記溶融部を加熱する加熱部12と、前記溶融部の外面を前記加熱部の内面に押し当てる押当部14と、を備える。
【0007】
本開示に係るはんだ付け装置によれば、押当部によって溶融部の外面を加熱部の内面に押し当てて密着させることができる。これにより、加熱部が発生する熱を溶融部に効率良く伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係るはんだ付け装置の構成例を概略的に示す図
図2】第2実施形態に係るスリーブおよびその周辺部分の構成例を概略的に示す横断面図
図3】第3実施形態に係るスリーブおよびその周辺部分の構成例を概略的に示す横断面図
図4】第4実施形態に係るスリーブおよびヒータの構成例を概略的に示す縦断面図
図5】第5実施形態に係るはんだ付け装置の構成例を概略的に示す図
図6】第6実施形態に係るはんだ付け装置の構成例を概略的に示す図
図7】変形実施形態に係る押当ピンおよびその周辺部分の構成例を拡大して概略的に示す横断面図
図8】変形実施形態に係るスリーブおよびヒータの構成例を概略的に示す図
図9】変形実施形態に係るスリーブおよびヒータの構成例を概略的に示す横断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、はんだ付け装置に係る複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1に例示するはんだ付け装置10は、例えばプリント基板100のスルーホール101に設けられたランド102内に電子部品の端子110をはんだ付けする装置である。この場合、はんだ付け装置10は、筒状のスリーブ11によりはんだを溶解させてはんだ付けする、いわゆる「スリーブはんだ付け装置」として構成されている。
【0011】
はんだ付け装置10は、スリーブ11、ヒータ12、はんだ供給部13、押当ピン14などを有するスリーブユニット15を備えている。はんだ付け装置10は、プリント基板100に対し、スリーブユニット15を鉛直方向および水平方向に移動させる図示しない移動機構を備えている。
【0012】
スリーブ11は、溶融部の一例である。スリーブ11は、例えば窒化アルミニウムや炭化ケイ素などを原料とするセラミックなどで構成されており、鉛直方向に長い長尺な円筒状に形成されている。スリーブ11の内部は中空状となっている。セラミックで構成されるスリーブ11は、はんだが付着しにくい非付着性を有している。なお、ここでいう非付着性とは、好ましくは、スリーブ11にはんだが全く付着しないことを意図するものであるが、若干量のはんだがスリーブ11に付着することを許容するものである。即ち、非付着性を有するスリーブ11は、若干量のはんだが付着する可能性があるものの、基本的には、はんだが付着しない性質あるいははんだが付着し難い性質を有するものである。また、スリーブ11は、高い熱伝導性を有している。スリーブ11を形成する材料は、熱伝導率が極力高い材料で形成することが好ましく、例えば窒化アルミニウムや炭化ケイ素とは異なる材料であってもよい。
【0013】
ヒータ12は、加熱部の一例である。ヒータ12は、スリーブ11と同様に、鉛直方向に長い長尺な円筒状に形成されている。ヒータ12の内部は中空状となっている。ヒータ12は、スリーブ11の外側に設けられている。この場合、ヒータ12は、スリーブ11の外周面を外側から覆うようにして配置されている。また、スリーブ11の長さは、ヒータ12の長さよりも短くなっている。なお、スリーブ11の長さは、ヒータ12の長さよりも長くしてもよいし、ヒータ12の長さと概ね或いは完全に同じ長さとしてもよい。そして、スリーブ11の先端部である下端部は、ヒータ12の先端部である下端部よりも下方に突出している。なお、ヒータ12の先端部からのスリーブ11の先端部の突出量は、適宜変更して実施することができる。
【0014】
また、ヒータ12は、メイン発熱部12Aおよびサブ発熱部12Bを有している。メイン発熱部12Aは、ヒータ12のうち、通電することによって発熱する発熱線12Cの密度が所定密度よりも高い部分であり、発熱線12Cによる発熱が積極的に行われる部分である。メイン発熱部12Aにおいては、発熱線12Cが極力緻密に且つ極力均一に配線されており、発熱線12Cによる発熱効率が高くなっている。メイン発熱部12Aにおいては、例えば、発熱線12C間が相互に接触している。一方、サブ発熱部12Bは、ヒータ12のうち、通電することによって発熱する発熱線12Cの密度が所定密度よりも低い部分であり、発熱線12Cによる発熱が積極的に行われない部分である。サブ発熱部12Bにおいては、発熱線12Cがメイン発熱部12Aほど緻密に且つ均一に配線されておらず、発熱線12Cによる発熱効率が低くなっている。サブ発熱部12Bにおいては、例えば、発熱線12C間が離間している。また、メイン発熱部12Aにおける発熱線12Cの密度は、サブ発熱部12Bにおける発熱線12Cの密度よりも高く、換言すれば、サブ発熱部12Bにおける発熱線12Cの密度は、メイン発熱部12Aにおける発熱線12Cの密度よりも低くなっている。なお、上述した所定密度は、適宜変更して設定することができる。
【0015】
また、スリーブ11およびヒータ12の長手方向において、メイン発熱部12Aの長さは、スリーブ11のうちヒータ12内に挿入されている部分の長さよりも短くなっている。また、メイン発熱部12Aのうち発熱量が最も高い最高発熱領域12Rは、ヒータ12の先端部側、換言すれば、スリーブ11の先端部側に対応する部位に設けられている。この場合、最高発熱領域12Rは、スリーブ11の先端側の部分、この場合、スリーブ11のうちヒータ12内に挿入されている部分の下端部から上方に所定距離Dの範囲内に設けられている。
【0016】
なお、所定距離Dは、適宜変更して設定することができ、少なくともスリーブ11全体の長さの1/3程度の長さ以下の長さとすることが好ましい。また、所定距離Dは、例えば、少なくともスリーブ11全体の長さの1/2程度の長さ以下の長さであってもよい。また、最高発熱領域12Rは、一般的に、メイン発熱部12Aの長手方向における中央部あるいは中央部付近に形成される傾向がある。但し、最高発熱領域12Rは、例えば、発熱線12Cの発熱性能、配置態様、密度などといった条件によっては、メイン発熱部12Aの長手方向における端部側に形成される場合もある。
【0017】
ヒータ12は、図示しない制御装置によってオンされると、特にメイン発熱部12Aにおいて発熱してスリーブ11を加熱する。また、メイン発熱部12Aから発生する熱は、サブ発熱部12Bにも伝播し、また、サブ発熱部12Bにおいても発熱線12Cによって熱が発生することから、当該サブ発熱部12Bにおいても、スリーブ11の加熱が行われる。スリーブ11の加熱による変質などを考慮すると、ヒータ12の出力は、例えば600度以下に設定することが好ましい。なお、スリーブ11の耐熱性などの性質によっては、ヒータ12の出力は、600度を超える温度に設定することも許容される。
【0018】
はんだ供給部13は、図示しない長尺な糸状のはんだを、図示しないカッタによって所定長さに切断して、はんだ片Hを形成する。そして、はんだ供給部13が形成するはんだ片Hは、円筒状のスリーブ11の内部に落下する。これにより、はんだ供給部13からスリーブ11の内部にはんだ片Hが供給される。そして、スリーブ11の内部に供給されたはんだ片Hは、ヒータ12によって加熱されている当該スリーブ11の内周面に接触することにより溶融する。これにより、プリント基板100のランド102内に挿入されている電子部品の端子110が、溶融したはんだ片Hによってはんだ付けされる。なお、ヒータ12の内部において、スリーブ11の上部には、鉛直方向に長い長尺な円筒状のガイドパイプ11Gが設けられている。ガイドパイプ11Gの内径および外径は、スリーブ11の内径および外径と概ね或いは完全に同じ寸法となっている。ガイドパイプ11Gは、はんだ供給部13から供給されるはんだ片Hをスリーブ11内に向かうように案内する。
【0019】
押当ピン14は、押当部の一例であり、スリーブ11およびヒータ12の長手方向に直交する方向に沿って直線状に延びている。押当ピン14は、ヒータ12のうちのサブ発熱部12Bを径方向に貫通して、その先端部によってスリーブ11の外周面を押圧する。これにより、押当ピン14は、当該押当ピン14とは反対側において、スリーブ11の外面をヒータ12の内面に押し当てる。
【0020】
なお、押当ピン14は、熱伝導率が極力低い材料で形成することが好ましく、少なくとも、スリーブ11よりも熱伝導率が低い材料で構成するとよい。また、押当ピン14は、耐熱性が極力高い材料で形成することが好ましい。押当ピン14を形成する材料としては、例えばジルコニアなどが考えられる。但し、押当ピン14を形成する材料は、ジルコニアに限られるものではない。
【0021】
また、押当ピン14は、この場合、中空状の長尺な円筒状に形成されている。そして、押当ピン14は、その内部に温度検知センサー16を備えている。温度検知センサー16は、温度検知部の一例であり、例えば、周知の熱電対などによって構成されている。温度検知センサー16は、押当ピン14の先端部内に配置されており、スリーブ11の温度を検知可能に構成されている。
【0022】
また、はんだ付け装置10は、さらに、位置決め部17を備えている。位置決め部17は、維持部の一例であり、押当ピン14がスリーブ11の外面をヒータ12の内面に押し当てている押当状態を維持する。
【0023】
即ち、位置決め部17は、押当ピン14をスリーブ11側に付勢する図示しない付勢機構部を備えている。図示しない付勢機構部は、例えば、押当ピン14をスリーブ11側に付勢する伸縮可能なスプリングなどを備えている。また、位置決め部17は、スリーブ11側への押当ピン14の移動量を調整する図示しない調整機構部を備えている。図示しない調整機構部は、例えば、押当ピン14を移動させるためのカム構造部などを備えている。また、位置決め部17は、押当ピン14の移動をロックするロック機構部を備えている。図示しないロック機構部は、例えば、押当ピン14の移動を規制するロックピンなどを備えている。
【0024】
位置決め部17は、押当ピン14がスリーブ11の外面をヒータ12の内面に押し当てている押当状態において、押当ピン14の移動をロックする。つまり、位置決め部17は、押当ピン14がスリーブ11の外面をヒータ12の内面に押し当てている押当状態において、当該押当ピン14を、その移動位置において位置決めする。これにより、位置決め部17は、押当ピン14がスリーブ11の外面をヒータ12の内面に押し当てている押当状態を維持する。
【0025】
上述したはんだ付け装置10について、ヒータ12の通電、はんだ供給部13の駆動、スリーブユニット15の駆動、位置決め部17の駆動などといった各部の駆動を含むはんだ付け装置10の動作全般は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されている図示しない制御装置によって行われるようになっている。
【0026】
以上に例示したはんだ付け装置10によれば、押当ピン14によって、スリーブ11の外面をヒータ12の内面に押し当てるように構成されている。この構成例によれば、スリーブ11の外面をヒータ12の内面に殆ど或いは完全に隙間を生じさせることなく密着させることができる。これにより、ヒータ12が発生する熱をスリーブ11に効率良く伝達することが可能となり、ひいては、スリーブ11におけるはんだの溶融を効率良く行うことが可能となる。
【0027】
また、はんだ付け装置10によれば、押当ピン14は、ヒータ12のうち、発熱線12Cが設けられていないサブ発熱部12Bに設けられている。この構成例によれば、ヒータ12のうち発熱の主体となるメイン発熱部12Aに極力影響を与えることなく押当ピン14を設けることができる。よって、押当ピン14を備えることに伴い、ヒータ12の発熱性能が損なわれてしまうことを回避することができる。
【0028】
また、はんだ付け装置10によれば、押当ピン14は、スリーブ11の温度を検知可能である温度検知センサー16を備えている。この構成例によれば、スリーブ11の加熱状況を精度良く監視することができる。また、スリーブ11の加熱状況に応じて、ヒータ12の出力を精度良く調整することができる。なお、温度検知センサー16は、熱電対に限られるものではなく、温度を検知可能なものであれば、熱電対以外のもので構成されていてもよい。また、温度検知センサー16は、スリーブ11の温度を検知可能であれば、押当ピン14に設けられていなくてもよい。また、温度検知センサー16は押当ピン14に必ずしも内蔵する必要はない。そのため、例えば、押当ピン14による押圧力を確保するために必要な構成に要するコストや、温度検知センサー16の交換に伴い発生するコストなどを勘案し、ヒータ12に別途貫通孔を設け、その貫通孔を通して温度検知センサー16でスリーブ11の温度を測定するようにしてもよい。また、例えばプリント基板100側にスペースを確保できる場合には、スリーブ11の先端部付近に温度検知センサー16を設けることも有効である。
【0029】
また、はんだ付け装置10によれば、位置決め部17は、押当ピン14がスリーブ11の外面をヒータ12の内面に押し当てている押当状態を維持する。この構成例によれば、スリーブ11の外面がヒータ12の内面に押し当てられている状態を安定して維持することができる。これにより、ヒータ12が発生する熱をスリーブ11に効率良く伝達できる状態、ひいては、スリーブ11におけるはんだの溶融を効率良く行うことができる状態を安定して維持することができる。また、スリーブ11のうち押当ピン14とは反対側の部分、つまり、押当ピン14に押圧されることによってヒータ12の内面に押し当てられる部分を最高発熱領域12Rあるいはその近傍部分に一致させるように構成するとよい。これにより、ヒータ12からスリーブ11への熱伝導効率を一層高めることができる。なお、押当ピン14に要求される必要要件は、少なくとも、スリーブ11をヒータ12の内面に押し当てる押圧力を確保する機能、ヒータ12に対しスリーブ11が徐々に降下することを抑制する機能、ヒータ12内にスリーブ11を挿入する際に必要な隙間、いわゆる挿入代を確保する機能、である。押当ピン14は、少なくとも、これらの機能を有するのであれば、その構成を適宜変更して実施することができる。
【0030】
また、はんだ付け装置10によれば、ヒータ12は、発熱の主体となるメイン発熱部12Aを有しており、スリーブ11およびヒータ12の長手方向において、そのメイン発熱部12Aの長さは、スリーブ11のうちヒータ12内に挿入されている部分の長さよりも短くなっている。即ち、ヒータ12は、発熱の主体となるメイン発熱部12Aを極力コンパクトに形成した構成となっている。この構成例によれば、メイン発熱部12Aによって消費される電力エネルギーを極力抑制することができる。また、極力コンパクトに形成されたメイン発熱部12Aから集中的にスリーブ11を加熱することができ、加熱効率の向上を図ることができる。
【0031】
また、はんだ付け装置10によれば、メイン発熱部12Aのうち発熱量が最も高い最高発熱領域12Rは、ヒータ12の先端部側、換言すれば、スリーブ11の先端部側に設けられている。この構成例によれば、スリーブ11の先端部、つまり、はんだ片Hが溶融してはんだ付けされる部位にメイン発熱部12Aが発生する熱を効率良く伝達することができ、はんだ片Hの溶融効率の向上を図ることができる。
【0032】
(第2実施形態)
図2に例示するスリーブ11は、押当ピン14によって押圧される押圧面部11Aを備えている。押圧面部11Aは、押当ピン14の長手方向に対して、ほぼ或いは完全に直交する平面となっている。この構成例によれば、押当ピン14がスリーブ11の中心から多少ずれたとしても、スリーブ11を十分に押圧することができる。これにより、押当ピン14によるスリーブ11の押圧を一層安定して行うことができ、ひいては、スリーブ11の外面をヒータ12の内面に一層安定して押し当てることができる。
【0033】
(第3実施形態)
図3に例示するスリーブ11は、押当ピン14によって押圧される押圧凹部11Bを備えている。押圧凹部11Bは、スリーブ11の外周面において、押当ピン14の長手方向に沿って当該押当ピン14とは反対方向に窪む凹部となっている。この構成例によれば、押当ピン14がスリーブ11の中心からずれてしまうことを抑制することができる。これにより、押当ピン14によるスリーブ11の押圧を一層安定して行うことができ、ひいては、スリーブ11の外面をヒータ12の内面に一層安定して押し当てることができる。
【0034】
(第4実施形態)
図4に例示する「パターンA」の構成例によれば、スリーブ11の外面およびヒータ12の内面は、上端側から下端側に向かって径寸法が徐々に大きくなる形状となっている。また、図4に例示する「パターンB」の構成例によれば、スリーブ11の外面およびヒータ12の内面は、上端側から下端側に向かって径寸法が徐々に小さくなる形状となっている。
【0035】
図4に例示する「パターンA」あるいは「パターンB」の構成例によれば、スリーブ11の外面とヒータ12の内面とが接触する接触面Sは、スリーブ11およびヒータ12の長手方向に対して傾斜している構成となっている。この構成例によれば、スリーブ11の外面とヒータ12の内面とが接触する接触面がスリーブ11およびヒータ12の長手方向に沿っている構成例に比べ、スリーブ11の外面とヒータ12の内面との接触面積を増加させることができる。これにより、ヒータ12が発生する熱をスリーブ11に一層伝達しやすくすることができる。
【0036】
(第5実施形態)
図5に例示するはんだ付け装置10は、押当ピン14に押圧力検知センサー18を備えている。押圧力検知センサー18は、押圧力検知部の一例であり、押当ピン14がスリーブ11に与えている押圧力つまり荷重を検知可能に構成されている。この構成例によれば、スリーブ11の押圧状況を精度良く監視することができる。また、スリーブ11の押圧状況に応じて、押当ピン14の移動量を精度良く調整することができる。なお、押圧力検知センサー18は、押圧力を検知可能な周知のセンサー類により構成することができる。また、押圧力検知センサー18は、押当ピン14がスリーブ11に与えている押圧力を検知可能であれば、押当ピン14に設けられていなくてもよい。また、はんだ付け装置10は、押当ピン14の位置を検知する位置検知センサーを備える構成としてもよい。この構成例によれば、位置検知センサーによって検知される押当ピン14の位置に基づいて、当該押当ピン14がスリーブ11をヒータ12の内周面に十分に押し当てているか否か、つまり、十分な押圧力を発揮しているか否かを確認することができる。
【0037】
(第6実施形態)
図6に例示するはんだ付け装置10は、押当ピン14を冷却する冷却部19を備えている。この構成例によれば、ヒータ12が発生する熱によって押当ピン14が過剰に高温となってしまうことを抑制することができる。また、押当ピン14が過剰に高温となってしまうことを抑制することにより、温度検知センサー16が検知する温度に、押当ピン14の温度が影響してしまうことを抑制することができ、スリーブ11の温度を一層精度良く検知することが可能となる。なお、冷却部19は、押当ピン14を冷却可能なものであれば適宜適用することができ、例えば、水冷式の冷却装置であってもよいし、空冷式の冷却装置であってもよいし、周知のヒートポンプ機構を構成するエバポレータであってもよいし、吸熱材や冷却材などであってもよい。
【0038】
また、冷却部19は、押当ピン14に接触していてもよいし、接触していなくてもよい。冷却部19が押当ピン14に接触している構成例によれば、押当ピン14を冷却部19によって直接的に冷却することができ、冷却効率の向上を図ることができる。また、冷却部19が押当ピン14に接触していない構成例によれば、押当ピン14を冷却部19によって間接的に冷却することができ、十分な冷却効果を得ることができる。また、冷却部19が押当ピン14に接触していない構成においては、冷却部19と押当ピン14との間は、隙間つまり空間であってもよいし、例えば、金属板などといった冷熱を伝達しやすい部材が介在されていてもよい。
【0039】
(その他の実施形態)
なお、本開示に係るはんだ付け装置は、上述した複数の実施形態に限られず、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や拡張を行うことができる。例えば、はんだ付け装置は、上述した複数の実施形態を適宜選択して組み合わせた構成としてもよい。
【0040】
また、図7に例示するように、押当ピン14の先端部は、スリーブ11の外周面に沿うように円弧状に窪んだ構成としてもよい。この構成例によれば、押当ピン14の先端部をスリーブ11の外周面に一層密着させることができ、スリーブ11の外周面を一層確実に押圧することができる。また、押当ピン14の先端部がスリーブ11の外周面を押圧する際の面積を確保することができ、その面圧を低減することができる。これにより、押当ピン14の先端部によってスリーブ11の外周面が破損などしてしまうことを抑制する効果を期待できる。
【0041】
また、図8に例示するように、ヒータ12は、2つのヒータ構成部品12D,12Eに分割された構成であってもよい。この構成例によれば、2つのヒータ構成部品12D,12Eによって、2方向から挟むようにしてスリーブ11を固定することができる。なお、ヒータ12は、3つ以上の複数のヒータ構成部品に分割された構成としてもよい。この構成例によれば、3つ以上の複数のヒータ構成部品によって、3方以上の複数の方向からスリーブ11を固定することができる。
【0042】
また、図9に例示するように、スリーブ11の外周面の径寸法L1およびヒータ12の内周面の径寸法L2のうち少なくとも何れか一方を適宜調整するようにしてもよい。この場合、スリーブ11の外周面の径寸法L1がヒータ12の内周面の径寸法L2に対して相対的に短くなるように、スリーブ11の外周面の径寸法L1およびヒータ12の内周面の径寸法L2のうち少なくとも何れか一方を調整するとよい。これにより、スリーブ11の外面をヒータ12の内面に一層確実に接触させることが可能となる。
【0043】
また、位置決め部17が有する図示しない付勢機構部は、伸縮可能なスプリングを備える構成に限られるものではなく、例えば、板ばね、ばね付きのねじ、シリンダーなど、押当ピン14をスリーブ11側に付勢可能なものであれば適宜適用することができる。
【0044】
また、溶融部の形状や大きさなどは、適宜変更して実施することができる。即ち、溶融部の形状は、円形の筒状の限られるものではなく、例えば三角形、四角形、五角形などの多角形などであってもよいし、例えばプリント基板100上におけるランド102や実装部品の配置態様に応じた複雑な形状であってもよい。また、加熱部の形状や大きさなどは、溶融部の形状や大きさなどに応じて、適宜変更して実施することができる。
【0045】
なお、本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0046】
図面中、10ははんだ付け装置、11はスリーブ(溶融部)、11Aは押圧面部、11Bは押圧凹部、12はヒータ(加熱部)、12Aはメイン発熱部、12Bはサブ発熱部、12Cは発熱線、12Rは最高発熱領域、14は押当ピン(押当部)、16は温度検知センサー(温度検知部)、17は位置決め部(維持部)、18は押圧力検知センサー(押圧力検知部)、19は冷却部、Sは接触面、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9