(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】排泄識別装置
(51)【国際特許分類】
A61F 5/44 20060101AFI20250408BHJP
G01N 33/497 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
A61F5/44 S
G01N33/497 D
(21)【出願番号】P 2021169384
(22)【出願日】2021-10-15
【審査請求日】2024-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】水谷 学世
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 誉久
(72)【発明者】
【氏名】白木 正孝
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 泰斗
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/192476(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/117691(WO,A1)
【文献】特開2018-143362(JP,A)
【文献】特開2007-167264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/44
G01N 33/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有臭ガスを検出する第一センサと、
無臭ガスを検出する第二センサと、
前記第一センサ及び前記第二センサに接続され、前記第一センサの検出結果と前記第二センサの検出結果とに基づいて排泄物が屁であるか否かを判定する処理部と、
を備
え、
前記処理部は、
前記第一センサによって前記有臭ガスが検出され、かつ、前記第二センサによって前記無臭ガスが検出されない場合には前記排泄物を便と判定し、
前記第一センサによって前記有臭ガスが検出され、かつ、前記第二センサによって前記無臭ガスが検出された場合には前記排泄物を屁と判定する、
排泄識別装置。
【請求項2】
前記有臭ガスは、アセトン及び硫化水素の少なくとも一方を含む、
請求項
1に記載の排泄識別装置。
【請求項3】
前記無臭ガスは、メタン、窒素、二酸化炭素、希ガス、酸素及び水素の少なくとも1つを含む、
請求項1又は2に記載の排泄識別装置。
【請求項4】
前記第一センサの検出結果と、前記第二センサの検出結果と、前記処理部の判定結果と、前記判定結果の正誤情報とを関連付けて記憶する記憶装置と通信する通信部を備える、
請求項1~
3の何れか一項に記載の排泄識別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排泄識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、排泄検出センサを開示する。この排泄検出センサは、臭いセンサが検出する臭いの強さの時間的変化量から、排泄物が屁であるか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、臭いセンサが検出する臭いの強さの時間的変化量は、生体の状態及び環境によって変化する。このため、特許文献1に開示される排泄検出センサでは、臭いの強さの時間的変化量に対して適切な閾値を設定することが困難であり、排泄物が屁であるか否かを正確に識別できないおそれがある。本開示は、排泄物が屁であるか否かをより正確に識別できる排泄識別装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る排泄識別装置は、有臭ガスを検出する第一センサと、無臭ガスを検出する第二センサと、第一センサ及び第二センサに接続される処理部とを備える。処理部は、第一センサの検出結果と、第二センサの検出結果とに基づいて排泄物が屁であるか否かを判定する。
【0006】
この排泄識別装置では、有臭ガスの検出結果と無臭ガスの検出結果とに基づいて、排泄物が屁であるか否かが判定される。排泄物から発生するガスは、有臭ガスを主成分とするのに対し、屁は無臭ガスと有臭ガスとを含む。排泄する生体の状態及び排泄時の環境の変化は、臭いの強さの時間的変化量に影響を与えるものの、ガス種の判定には影響を与えにくい。このため、排泄識別装置は、臭いの強さの時間的変化量に基づいて排泄物が判定される場合と比べて、排泄物が屁であるか否かをより正確に識別できる。
【0007】
一実施形態によれば、処理部は、第一センサによって有臭ガスが検出され、かつ、第二センサによって無臭ガスが検出されない場合には排泄物を便と判定してもよい。処理部は、第一センサによって有臭ガスが検出され、かつ、第二センサによって無臭ガスが検出された場合には排泄物を屁と判定してもよい。この場合、排泄識別装置は、便と屁とを区別できる。
【0008】
有臭ガスは、アセトン及び硫化水素の少なくとも一方を含んでもよい。無臭ガスは、メタン、窒素、二酸化炭素、希ガス、酸素及び水素の少なくとも1つを含んでもよい。
【0009】
一実施形態によれば、排泄識別装置は、記憶装置と通信する通信部を備えてもよい。記憶装置は、第一センサの検出結果と、第二センサの検出結果と、処理部の判定結果と、判定結果の正誤情報とを関連付けて記憶してもよい。この場合、記憶装置は、第一センサの検出結果と、第二センサの検出結果と、判定結果と、判定結果の正誤情報とが関連付けられたデータベースを構成できる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、排泄物が屁であるか否かを識別できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る排泄識別装置の使用例を示す概要図である。
【
図2】実施形態に係る排泄識別装置の一例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る排泄識別装置が排泄物を屁であるか否か識別する方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4(A)は、第一センサ及び第二センサのそれぞれの検出結果の一例を示すグラフである。
図4(B)は、第一センサ及び第二センサのそれぞれの検出結果の他の例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は繰り返さない。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0013】
排泄識別装置1は、生体に着用可能である。排泄識別装置1は、たとえば、人体に着用可能であり、おむつ等の衛生用品に装着されて使用される。排泄識別装置1は、この衛生用品を使用する生体の排泄を識別する。
図1は、排泄識別装置1が装着されたおむつを人間が着用した、実施形態の一例を示す模式図である。衛生用品は、おむつに限定されない。衛生用品は、下着等の衣類であってもよい。生体は、人間以外の動物であってもよい。
図1では、排泄識別装置1は、おむつの内側に装着される。排泄識別装置1は、おむつの外側に装着されてもよい。排泄識別装置1は、たとえば、屁、尿及び便を排泄物として識別する。
【0014】
図2は、本実施形態に係る排泄識別装置の構成を示す模式図である。排泄識別装置1は、第一センサ10と、第一センサ10に接続されるA/Dコンバータ11を備える。第一センサ10は、有臭ガスを検出する。有臭ガスとは、生体の排泄物又は屁から発生するガスである。有臭ガスは、たとえば、アセトン、硫化水素、アンモニア又はメチルメルカプタンの少なくとも1つを含む。第一センサ10としては、半導体方式のガスセンサ、電気化学方式のガスセンサ、及び水晶振動子方式のガスセンサ等が用いられる。第一センサ10は、検出対象の有臭ガスの濃度を、検出結果として出力する。この検出結果は、第一センサ10に接続されるA/Dコンバータ11に入力される。A/Dコンバータ11は、第一センサ10の検出結果をデジタル信号として出力する。
【0015】
排泄識別装置1は、第二センサ20と、第二センサ20に接続されるA/Dコンバータ21を備える。第二センサ20は、無臭ガスを検出する。無臭ガスは、たとえば、メタン、窒素、二酸化炭素、希ガス、酸素又は水素の少なくとも1つを含む。第二センサ20としては、半導体方式のガスセンサ、電気化学方式のガスセンサ、及び水晶振動子方式のガスセンサ等が用いられる。第二センサ20は、検出対象の無臭ガスの濃度を、検出結果として出力する。この検出結果は、第二センサ20に接続されるA/Dコンバータ21に入力される。A/Dコンバータ21は、第二センサ20の検出結果をデジタル信号として出力する。
【0016】
排泄識別装置1は、第一センサ10及び第二センサ20に接続される処理部30を備える。処理部30は、排泄識別装置1を制御する。処理部30は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサと、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等のメモリとを含むコントローラである。処理部30には、A/Dコンバータ11及びA/Dコンバータ21がそれぞれ接続される。A/Dコンバータ11は、第一センサ10の検出結果をデジタル形式に変換し、処理部30に出力する。A/Dコンバータ21は、第二センサ20の検出結果をデジタル形式に変換し、処理部30に出力する。処理部30は、第一センサ10の検出結果と、第二センサ20の検出結果とに基づいて、排泄物が屁であるか否かを判定する。
【0017】
図3は、実施形態に係る排泄識別装置1が排泄物を屁であるか否か識別する方法の一例を示すフローチャートである。最初に、排泄識別装置1は、有臭ガスを検出する(ステップS10)。処理部30は、第一センサ10の検出結果を取得する。次に、排泄識別装置1は、無臭ガスを検出する(ステップS20)。処理部30は、第二センサ20の検出結果を取得する。
【0018】
図4(A)は、第一センサ10及び第二センサ20のそれぞれの検出結果の一例を示すグラフである。
図4(B)は、第一センサ及び第二センサのそれぞれの検出結果の他の例を示すグラフである。各グラフの横軸は時間軸を示し、各グラフの縦軸は検出されたガスの濃度を示す。
図4(A)は、第一センサ10によって有臭ガスが検出され、かつ、第二センサ20によって無臭ガスが検出される場合を示す。
図4(B)は、第一センサ10によって有臭ガスが検出され、かつ、第二センサ20によって無臭ガスが検出されない場合を示す。
【0019】
図4(A)に示されるように、第一センサ10が有臭ガスを検出し、かつ、第二センサ20が無臭ガスを検出する場合に、処理部30は排泄物が屁であると判定する(ステップS30)。
図4(B)に示されるように、第一センサ10が有臭ガスを検出し、かつ、第二センサ20が無臭ガスを検出しない場合に、処理部30は排泄物が屁ではないと判定する(ステップS30)。ガスは、たとえば、ガスの濃度が、ガスの種類ごとに定められる閾値を超えた場合に検出される。ガスは、単位時間当たりのガスの濃度の変化量が、ガスの種類ごとに定められる閾値を超えた場合に検出されてもよい。
【0020】
排泄識別装置1は、処理部30が排泄物を屁であるか否か判定した判定結果を送信する。
図2に示されるように、排泄識別装置1は、処理部30に接続される通信部40を備える。処理部30は、判定結果を通信部40に出力する。通信部40は、処理部30から取得した判定結果を、報知装置2に送信する。通信部40は、たとえば、無線通信が可能に構成されており、排泄識別装置1と離間する報知装置2に判定結果を送信する(ステップS40)。
【0021】
報知装置2は、判定結果が排泄物は屁ではないことを示す場合、排泄物が発生したことを介護者等に報知する。報知装置2は、たとえば、ディスプレイなどの表示端末における画面表示によって排泄物の発生を報知してもよい。報知装置2は、たとえば、スピーカなどの音響出力などによって排泄物の発生を報知してもよい。
【0022】
通信部40は、さらに記憶装置3と通信する。通信部40は、第一センサ10の検出結果と、第二センサ20の検出結果と、判定結果とを、記憶装置3に送信する。記憶装置3は、第一センサ10の検出結果と、第二センサ20の検出結果と、判定結果と、当該判定結果の正誤結果とを関連付けて記憶する。記憶装置3は、たとえば、CPUなどの演算部、ROM、RAM、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶部、及び通信部などを有する汎用コンピュータで構成される。記憶装置3は、通信部40から取得した結果を記憶する。記憶装置3は、外部入力手段等から取得した結果を記憶してもよい。
【0023】
記憶装置3は、たとえば、第一センサ10の検出結果と、第二センサ20の検出結果と、判定結果と、当該判定結果の正誤結果とが関連付けられたデータベースを構成する。これにより、外部の学習装置は、記憶装置3のデータベースに基づいて、排泄物が屁であるか否かをより高精度に判定できるように学習できる。排泄識別装置1は、通信部40を介して取得した、学習装置の学習結果に基づいて、排泄物が屁であるか否かを判定してもよい。学習装置は、たとえば、ガスを検出する第一センサ10及び第二センサ20のそれぞれの適切な閾値を学習できる。学習装置は、たとえば、排泄物が屁と屁以外の排泄物の両方を含む場合の第一センサ10の検出結果及び第二センサ20の検出結果に基づいて、排泄物が屁と屁以外の排泄物の両方を含む場合は、排泄物は屁ではないと学習できる。学習結果に基づく判定結果は、報知装置2によって報知されてもよい。
【0024】
学習装置は、たとえば、記憶装置3のデータベースに基づいて、屁ではない排泄物が発生する時間と確率とを予測できるように学習してもよい。排泄識別装置1は、通信部40を介して取得した、学習装置の学習結果に基づいて、屁ではない排泄物の発生を予測してもよい。たとえば、学習装置は、所定回数の屁が連続して検出される場合に、屁ではない排泄物の発生を予測してもよい。屁ではない排泄物の発生の予測は、報知装置2によって報知されてもよい。
【0025】
学習装置は、排泄物が便(屁ではない排泄物の一例)と判定された時間から一定時間前に測定された、第一センサ10の検出結果と、第二センサ20の検出結果とを学習してもよい。たとえば、学習装置は、第一センサ10が検出する有臭ガスの濃度と、第二センサ20が検出する無臭ガスの濃度とを学習する。学習装置は、排泄物が便と判定された時間から一定時間前の、排泄物が屁と判定された回数を学習してもよい。学習装置は、使用者ごとに学習を行ってもよい。学習装置が使用者ごとに学習を行う場合、学習装置は、使用者に固有の傾向を学習できる。
【0026】
(実施形態のまとめ)
排泄識別装置1では、処理部30は、有臭ガスの検出結果と、無臭ガスの検出結果とに基づいて、排泄物が屁であるか否かを判定する。よって、排泄識別装置1は、排泄物が屁であるか否かを正確に識別できる。臭いセンサが検出する臭いの強さの時間的変化量を用いる場合、便を屁と判定することや、あるいは屁を便と判定する誤検知が起こり得る。このような誤検知は介護者に不要な負担をかける。排泄識別装置1は、便と屁を正確に識別できるため、介護者に必要な時のみ排泄の介助を通知できる。したがって、排泄識別装置1は、介護者の負担を減らすことができる。
【0027】
処理部30は、第一センサ10によって有臭ガスが検出され、かつ、第二センサ20によって無臭ガスが検出されない場合には排泄物を便と判定する。処理部30は、第一センサ10によって有臭ガスが検出され、かつ、第二センサ20によって無臭ガスが検出された場合には排泄物を屁と判定する。この排泄識別装置1は、有臭ガスの検出結果と、無臭ガスの検出結果とに基づいて、排泄物が屁であるか否かを識別できる。
【0028】
排泄識別装置1は、記憶装置3と通信する通信部40を備える。記憶装置3は、第一センサ10の検出結果と、第二センサ20の検出結果と、処理部30の判定結果と、判定結果の正誤情報とを関連付けて記憶する。この場合、記憶装置3は、第一センサ10の検出結果と、第二センサの検出結果20と、判定結果と、判定結果の正誤情報とが関連付けられたデータベースを構成できる。当該データベースによって、排泄物が屁であるか否かをより高精度に判定できるように学習することや、屁ではない排泄物が発生する時間と確率とを予測できるように学習することができる。
【0029】
排泄識別装置1は、生体に着用される。有臭ガス及び無臭ガスは、生体の近傍に拡散する。したがって、生体に着用された排泄識別装置1では、環境の影響は生じがたい。たとえば、排泄識別装置1は、おむつの内側に装着される。有臭ガス及び無臭ガスはおむつの内側で拡散するため、排泄識別装置1は、有臭ガス及び無臭ガスのそれぞれの濃度を正確に測定できる。排泄識別装置1の第一センサ10及び第二センサ20が生体に着用され、処理部30は生体に着用されなくてもよい。排泄識別装置1は、生体に着用される必要はなく、布団又はヘッドなどの寝具に設けられてもよい。
【0030】
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、本開示は上記実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。
【0031】
第一センサ10及び第二センサ20は、別々の部品に限られない。第一センサ10及び第二センサ20は、一つのガスセンサに含まれてもよい。一つのガスセンサが、有臭ガスを検出する機能と、無臭ガスを検出する機能と、を有していればよい。
【0032】
第一センサ10は、臭気を有する複数のガスを検出してもよい。第二センサ20は、臭気を有さない複数のガスを検出してもよい。第一センサ10が複数のガスの少なくとも一部の増加を検出し、かつ、第二センサ20が複数のガスの少なくとも一部の増加を検出する場合に、処理部30は排泄物を屁と判定してもよい。第一センサ10が複数のガスの少なくとも一部の増加を検出し、かつ、第二センサ20がガスの複数の少なくとも一部の増加を検出しない場合に、処理部30は排泄物が屁ではないと判定してもよい。
【0033】
処理部30は、報知装置2に含まれてもよい。たとえば、第一センサ10の検出結果と、第二センサ20の検出結果とは、通信部40を介して離間する処理部30に送信されてもよい。学習装置は、排泄識別装置1に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…排泄識別装置、2…報知装置、3…記憶装置、10…第一センサ、20…第二センサ、30…処理部、40…通信部。