(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】プロジェクター
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20250408BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20250408BHJP
【FI】
F21S2/00 330
F21S2/00 300
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2021182478
(22)【出願日】2021-11-09
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 将人
(72)【発明者】
【氏名】松岡 陽一
(72)【発明者】
【氏名】西村 駿哉
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-134314(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03584634(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発する光源と、
投影用の柄を有する柄プレートと、
前記光源から発せられた光を集めて前記柄プレートに送る集光レンズを含む第1のレンズ部品と、
前記柄プレートの柄を投影するための投影レンズを含む第2のレンズ部品と、
を備え、
前記第1のレンズ部品と前記第2のレンズ部品が、前記柄プレートを内部に密閉するように挟み込んで固定し、
前記柄プレートは、前記柄の少なくとも一部に、焦点の合った投影画像において解像されない、前記投影レンズの分解能を超えるほど微細な微細部を含み、
前記微細部が、前記投影画像において、前記柄の光透過部により形成される部分の明度と前記柄の光遮蔽部により形成される部分の明度との間の明度を表現する、
プロジェクター。
【請求項2】
光を発する光源と、
投影用の柄を有する柄プレートと、
前記光源から発せられた光を集めて前記柄プレートに送る集光レンズ、及び第1の開口面を有する第1の枠部を含み、前記第1の枠部の、前記第1の開口面と対向する面に前記集光レンズが位置する第1のレンズ部品と、
前記柄プレートの柄を投影するための投影レンズ、及び第2の開口面を有する第2の枠部を含み、前記第2の枠部の、前記第2の開口面と対向する面内に前記投影レンズが位置する第2のレンズ部品と、
を備え、
前記第1の枠部の前記第1の開口面の縁である端面と前記第2の枠部の前記第2の開口面の縁である端面が、密着した状態で接着されることにより、前記第1のレンズ部品及び前記第2のレンズ部品内の空間に前記柄プレートが収容されるとともに、前記空間が密閉さ
れ、
前記柄プレートが、前記第1の枠部の前記空間の隅から張り出した部分と前記第2の枠部の前記空間の隅から張り出した部分によって挟まれて固定された、
プロジェクター。
【請求項3】
前記柄プレートが、透明基板と、前記透明基板上の、前記柄を構成するパターンを有する不透明膜とを有し、
前記不透明膜の最小幅が10μm未満である、
請求項2に記載のプロジェクター。
【請求項4】
前記柄プレートは、前記柄の少なくとも一部に、焦点の合った投影画像において解像されない、前記投影レンズの分解能を超えるほど微細な微細部を含み、
前記微細部が、前記投影画像において、前記柄の光透過部により形成される部分の明度と前記柄の光遮蔽部により形成される部分の明度との間の明度を表現する、
請求項2に記載のプロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクター、特に車両室内で用いられるプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源から出射された光を集光する集光レンズと、集光レンズで集光された光を部分的に通す遮光部材と、遮光部材を通過した光を投影して照射パターンを形成する投影レンズと、を備えた車両用灯具が知られている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用灯具においては、集光レンズとフィルタと投影レンズとが筐体に収容され、それぞれ筐体の有する集光レンズ溝、フィルタ溝、投影レンズ溝に嵌め入れられて固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の車両用灯具においては、集光レンズとフィルタと投影レンズとがそれぞれ筐体によって位置を固定されるため、集光レンズとフィルタと投影レンズの相対的な位置決め精度が悪く、投影される画像が不鮮明になるおそれがある。また、集光レンズ溝内の集光レンズと筐体との隙間や、投影レンズ溝内の投影レンズと筐体との隙間を通って、外部からフィルタが設置された空間に塵などの異物が侵入し、投影される画像に異物が映り込むおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、鮮明で、かつ異物の映り込みの抑えられた画像を投影することのできるプロジェクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]~[3]のプロジェクターを提供する。
【0008】
[1]光を発する光源と、投影用の柄を有する柄プレートと、前記光源から発せられた光を集めて前記柄プレートに送る集光レンズを含む第1のレンズ部品と、前記柄プレートの柄を投影するための投影レンズを含む第2のレンズ部品と、を備え、前記第1のレンズ部品と前記第2のレンズ部品が、前記柄プレートを内部に密閉するように挟み込んで固定する、プロジェクター。
[2]前記柄プレートが、透明基板と、前記透明基板上の、前記柄を構成するパターンを有する不透明膜とを有し、前記不透明膜の最小幅が10μm未満である、上記[1]に記載のプロジェクター。
[3]前記柄プレートの前記柄の少なくとも一部に含まれる微細部が、焦点の合った投影画像において解像されず、前記投影画像において、前記柄の光透過部により形成される部分の明度と前記柄の光遮蔽部により形成される部分の明度との間の明度を前記微細部により表現する、上記[1]又は[2]に記載のプロジェクター。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鮮明で、かつ異物の映り込みの抑えられた画像を投影することのできるプロジェクターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1(a)、(b)は、それぞれ本発明の実施の形態に係るプロジェクターを異なる角度から視た斜視図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の実施の形態に係るプロジェクターを光取り出し側から視た側面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に記載された切断線A-Aで切断されたプロジェクターの断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係るプロジェクターの分解斜視図である。
【
図4】
図4(a)~(d)は、第1のレンズ部品、柄プレート、及び第2のレンズ部品を筐体の部品に組み付ける流れを示す斜視図である。
【
図5】
図5(a)は、
図4(d)に示される切断線B-Bで切断された筐体の部品、第1のレンズ部品、及び第2のレンズ部品の断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態に係る柄プレートの一形態の垂直断面図である。
【
図7】
図7(a)は、本発明の実施の形態に係る柄プレート上の柄の一例を示す模式図であり、
図7(b)は、
図7(a)の柄が投影された投影画像を示す模式図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態に係る柄プレートの他の形態の垂直断面図である。
【
図9】
図9は、柄プレートの光遮蔽部が、向かい合う2つの傾斜面を含む突起で構成される場合の、全反射が生じる条件を説明するための模式図である。
【
図10】
図10(a)、(b)、(c)は、それぞれ角度θ
tが90°、140°、40°である柄プレートに進入した光の光路を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施の形態〕
図1(a)、(b)は、それぞれ本発明の実施の形態に係るプロジェクター1を異なる角度から視た斜視図である。
図2(a)は、プロジェクター1を光取り出し側から視た側面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に記載された切断線A-Aで切断されたプロジェクター1の断面図である。
図3は、プロジェクター1の分解斜視図である。
【0012】
プロジェクター1は、主に車両室内で用いられ、例えば、車両内装のサイドパネルやインストルメントパネル、ドアなどに取り付けられ、ドア、フロアマット、天井や、インストルメントパネルやドアトリムなどに含まれる加飾パネルや加飾オーナメントなどに画像を投影する。
【0013】
プロジェクター1は、光を発する光源11と、投影用の柄を有する柄プレート20と、光源11から発せられた光を集めて柄プレート20に送る集光レンズ211を含む第1のレンズ部品21と、柄プレート20の柄を投影するための投影レンズ221を含む第2のレンズ部品22とを備える。プロジェクター1において、第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22は、柄プレート20を第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22の内部に密閉するように挟み込んで固定している。
【0014】
光源11は、LEDチップなどを備えた発光素子である。光源11は、回路基板10に実装されており、回路基板10には、光源11に電力や信号を送るためのコネクター12が接続されている。
【0015】
光源11が実装された回路基板10、第1のレンズ部品21、第2のレンズ部品22、及び柄プレート20は、部品30a、30b、30cで構成される筐体30に収容される。筐体30は、投影レンズ221からの光を取り出すための開口部301と、外部機器のコネクターをコネクター12に接続するための開口部302を有する。筐体30は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ABS樹脂などの樹脂からなる。
【0016】
部品30aと部品30bは、部品30bの両側面に設けられた突起305を部品30aに設けられた孔304にスナップフィットさせることにより固定される。また、部品30aと部品30cは、部品30cの両側面に設けられた突起307を部品30aに設けられた孔306にスナップフィットさせることにより固定される。回路基板10は、部品30aと部品30cに挟まれて固定される。
【0017】
第1のレンズ部品21は、集光レンズ211と、1つの面が開口した箱状(例えば直方体)の形状を有する枠部212と、第1のレンズ部品21を第2のレンズ部品22及び筐体の部品30bに固定するための固定部215を有する。集光レンズ211は、枠部212の開口面に対向する面内に位置する。第1のレンズ部品21は、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂などの樹脂からなる。
【0018】
第2のレンズ部品22は、投影レンズ221と、1つの面が開口した箱状(例えば直方体)の形状を有する枠部222と、第2のレンズ部品22を第1のレンズ部品21及び筐体の部品30bに固定するための固定部225を有する。投影レンズ221は、枠部222の開口面に対向する面内に位置する。第2のレンズ部品22は、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂などの樹脂からなる。
【0019】
プロジェクター1において、第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22は、枠部212の開口面と枠部222の開口面が向かい合い、枠部212の開口面の縁である端面213と枠部222の開口面の縁である端面223が全周に渡って密着した状態で固定される。これによって、第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22の内側の柄プレート20が含まれる空間が密閉される。なお、密着性を向上させるため、端面213と端面223には磨き処理が施されていることが好ましい。
【0020】
第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22を密着させると、枠部212の内部空間の四隅から内側に張り出した部分214と枠部222の内部空間の四隅から内側に張り出した部分224とが、柄プレート20の四隅を表裏から挟み込んで固定する。
【0021】
図4(a)~(d)は、第1のレンズ部品21、柄プレート20、及び第2のレンズ部品22を筐体30の部品30bに組み付ける流れを示す斜視図である。
【0022】
まず、
図4(a)、(b)に示されるように、第2のレンズ部品22を筐体30の部品30bに組み付ける。枠部222の開口面を上に向けた状態で、固定部225を筐体30の部品30bに嵌め込む。
【0023】
次に、
図4(b)、(c)に示されるように、柄プレート20を第2のレンズ部品22の枠部222の開口面に嵌め込む。柄プレート20を第2のレンズ部品22の枠部222内の部分224に載せるようにして、枠部222の開口面に嵌め込む。
【0024】
次に、
図4(c)、(d)に示されるように、第1のレンズ部品21を筐体の部品30bに組み付ける。枠部212の開口面を下に向けた状態で、固定部215を筐体30の部品30bに嵌め込む。このとき、第2のレンズ部品22の固定部225に設けられた突起226が、第1のレンズ部品21の固定部215に設けられた孔216に嵌め込まれる。また、固定部215が部品30bに嵌め込まれると、固定部215の両側面に設けられた突起217が部品30bに設けられた孔303にスナップフィットする。
【0025】
図5(a)は、
図4(d)に示される切断線B-Bで切断された筐体30の部品30b、第1のレンズ部品21、及び第2のレンズ部品22の断面図である。
【0026】
図5(a)に示されるように、第2のレンズ部品22は、部品30bの内側の底面に設けられた突起308を上方から押し潰して弾性変形させるため、突起308から上向きの反発力を受ける。一方で、第1のレンズ部品21の突起217が孔303に引っ掛かっていることにより、第1のレンズ部品21及び第2のレンズ部品22の上方向への移動は妨げられているため、第1のレンズ部品21及び第2のレンズ部品22は部品30bに固定される。
【0027】
図5(b)は、
図4(d)に示される切断線C-Cで切断された第1のレンズ部品21、第2のレンズ部品22、及び柄プレート20の断面図である。
【0028】
図5(b)に示されるように、枠部212の開口面の縁である端面213と枠部222の開口面の縁である端面223とが密着した状態で、第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22が固定され、第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22の内部の空間が密閉される。また、柄プレート20は、枠部212の内部空間の四隅から内側に張り出した部分214と枠部222の内部空間の四隅から内側に張り出した部分224に挟まれて固定される。
【0029】
プロジェクター1においては、第1のレンズ部品21、第2のレンズ部品22、及び柄プレート20が互いに密着した状態で固定されるため、第1のレンズ部品21に含まれる集光レンズ211、第2のレンズ部品22に含まれる投影レンズ221、及び柄プレート20の相対的な位置決め精度が高い。このため、集光レンズ211、投影レンズ221、及び柄プレート20の相対的な位置ずれにより投影画像が不鮮明になることを抑制できる。
【0030】
また、第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22の内部の空間が密閉されているため、柄プレート20の周囲への塵などの異物の侵入を抑えることができる。このため、投影画像への異物の映り込みを抑制できる。
【0031】
なお、第1のレンズ部品21、第2のレンズ部品22、及び柄プレート20が互いに密着した状態で固定する方法は、上述の部品30bとのスナップフィットを利用した方法に限定されず、例えば、第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22とを接着剤により固定してもよい。
【0032】
図6は、柄プレート20の一形態である柄プレート20aの垂直断面図である。柄プレート20aは、光源11からの光を透過する透明基板201と、光源11からの光を透過しない不透明膜202を含む。不透明膜202は、柄プレート20aの柄を構成する所定の開口パターンを有し、開口部である光透過部203と開口していない部分である光遮蔽部204を有する。
【0033】
プロジェクター1による投影画像は、光透過部203のパターンに対応するパターンを有する明度の高い領域と、光遮蔽部204のパターンに対応するパターンを有する明度の低い領域で構成される。
【0034】
不透明膜202に微細な開口パターンを形成し、柄プレート20aの柄を微細にするためには、ガラスからなる透明基板201上に成膜された金属からなる不透明膜202に、金属エッチングによりパターンを形成することが好ましい。金属膜を蒸着により成膜することにより、非常に薄い(100nm程度)不透明膜202を得ることができ、エッチングにより精度よくパターンを形成することができる。
【0035】
この場合、不透明膜202は、例えば、CrOからなる不透明膜202aとCrからなる不透明膜202bの積層膜からなる。また、例えば、不透明膜202、不透明膜202a、不透明膜202bの厚さは、それぞれ1.1mm、8nm、62nmであり、柄プレート20の平面サイズは8mm×8mmである。
【0036】
ガラスからなる透明基板201上に成膜された金属からなる不透明膜202にパターンを形成する場合、パターンを形成された不透明膜202の最小幅(両側に光透過部203が形成された光遮蔽部204の最小幅)を1μm以上、10μm未満、より細かくは1μm以上、5μm以下とすることも可能である。
【0037】
また、柄プレート20aの柄が投影レンズ221の分解能を超えるほど微細な部分を含む場合は、その微細な部分は焦点の合った投影画像においても解像されなくなる。具体的には、投影画像において、光透過部203によって形成される明度の高い領域と、光遮蔽部204によって形成される明度の低い領域との境界が視認できなくなり、明度の高い領域と明度の低い領域が混ざり合って、それらの明度の間の明度(解像された明度の高い領域の明度より低く、解像された明度の低い領域の明度より高い明度)を有する領域が視認される。
【0038】
すなわち、柄プレート20aの柄に含まれる、焦点の合った投影画像において解像されない微細部を用いて、投影画像において、光透過部203により形成される部分の明度と光遮蔽部204により形成される部分の明度との間の明度を表現することができる。
【0039】
図7(a)は、柄プレート20a上の柄の一例を示す模式図であり、
図7(b)は、
図7(a)の柄が投影された投影画像を示す模式図である。
図7(a)の柄に含まれるラインアンドスペースパターン(左から2つめの三角形及び立方体の上面)とドットパターン(左から3つめの三角形及び立方体の側面)は、投影レンズ221の分解能を超えるほど微細なパターンであり、
図7(b)に示される投影画像において、これらの微細なパターンにより形成される領域は、光透過部203により形成される領域(左から1つめの三角形及び立方体の正面)の白色と、光遮蔽部204により形成される領域(下地部分)の黒色との間の明度の灰色の領域として視認される。このように、
図7(b)の3つの三角形の明度の違いによって示されるようなグラデーション表現や、
図7(b)の立方体で例示されるような立体表現ができる。
【0040】
また、不透明膜202に微細なパターンを形成することができれば、柄プレート20を小型化することができる。投影画像のサイズは、柄プレート20の柄のサイズに光学系による拡大倍率を乗じたものになるため、柄プレート20を小型化することができれば、投影画像のサイズを維持したまま拡大倍率を上げることができる。そのため、柄プレート20と投影レンズ221との距離を小さくして(拡大倍率が上がる)、プロジェクター1を小型化することができる。すなわち、柄プレート20を小型化することにより、投影画像のサイズを維持したままプロジェクター1を小型化することができ、例えば、プロジェクター1の光軸方向の幅W1を35mm以下、光軸方向に直交する方向の幅W2を13mm以下、画角を20°以上とすることができる。
【0041】
図8は、柄プレート20の他の形態である柄プレート20bの垂直断面図である。柄プレート20bは、光源11からの光を透過する透明樹脂からなり、一方の面上に、平面205で構成される光透過部207と、平面に対して傾斜する傾斜面206で構成される光遮蔽部208を有する。
【0042】
光遮蔽部208は、傾斜面206での光の全反射を利用して、光源11からの光を遮蔽する。そのため、傾斜面206の傾斜角度は、柄プレート20bに対して垂直に入射した光が全反射するような角度に設定される。このため、傾斜面206で構成される光遮蔽部208では光が透過しない。例えば、柄プレート20bがポリカーボネート(屈折率1.6)からなる場合は入射角が38.7°以上であるときに全反射が生じ、ポリメチルメタクリレート(屈折率1.5)からなる場合は入射角が41.8°以上であるときに全反射が生じる。
【0043】
プロジェクター1による投影画像は、光透過部207のパターンに対応するパターンを有する明度の高い領域と、光遮蔽部208のパターンに対応するパターンを有する明度の低い領域で構成される。
【0044】
柄プレート20bは、板状の樹脂成形品に微細加工を施すことに形成される。このため、金属膜の蒸着、フォトリソグラフィによるレジストパターンの形成、エッチングなどの複雑な工程を要する柄プレート20aと比較して、柄プレート20bは安価に形成することができる。
【0045】
光遮蔽部208には、傾斜面206で形成される突起が設けられている。傾斜面206で構成される突起は、例えば、向かい合う2つの傾斜面206によって形成される断面が三角形の線状の突起、又は3つの以上の傾斜面206によって形成される多角錐の突起である。なお、柄プレート20bの成形時の転写性などにより突起の高さが制限される場合(例えば、30μm以下)は、光遮蔽部208の面積を確保するためには高さの低い複数の突起を連続して並べればよい。
【0046】
図9は、柄プレート20bの光遮蔽部208が、向かい合う2つの傾斜面206を含む突起(例えば、向かい合う2つの傾斜面206によって形成される断面が三角形の線状の突起や、四角錐の突起)で構成される場合の、全反射が生じる条件を説明するための模式図である。ここで、柄プレート20bに垂直に進入した光が最初に入射する傾斜面206(傾斜面206aとする)への入射角をθ
1、傾斜面206aで反射された光の次に入射する傾斜面(傾斜面206bとする)への入射角をθ
2、突起の頂点の断面の角度をθ
tとする。
【0047】
柄プレート20bに垂直に進入した光が傾斜面206aで全反射するためには、柄プレート20bがポリカーボネートからなる場合はθ1が38.7°以上である必要があり、この場合、θtは102.6°以下となる。また、柄プレート20bがポリメチルメタクリレートからなる場合はθ1が41.8°以上である必要があり、この場合、θtは96.4°以下となる。
【0048】
さらに、傾斜面206aで全反射した光が傾斜面206bで全反射するためには、柄プレート20bがポリカーボネートからなる場合はθ2が38.7°以上である必要があり、この場合、θtは85.8°以上となる。また、柄プレート20bがポリメチルメタクリレートからなる場合はθ2が41.8°以上である必要があり、この場合、θtは87.9°以上となる。
【0049】
したがって、柄プレート20bがポリカーボネートからなる場合は、光遮蔽部208において効果的に光を遮蔽するために、突起の頂点の断面の角度θtを85.8°以上、102.6°以下に設定することが好ましい。また、柄プレート20bがポリメチルメタクリレートからなる場合は、光遮蔽部208において効果的に光を遮蔽するために、突起の頂点の断面の角度θtを87.9°以上、96.4°以下に設定することが好ましい。
【0050】
図10(a)は、角度θ
tが90°である柄プレート20bに進入した光の光路を示す模式図である。この場合、柄プレート20bに垂直に進入した光は、入射角45°で傾斜面206aに入射して全反射され、その後、入射角45°で傾斜面206bに入射して全反射されて、光源11側に戻る。角度θ
tが90°である突起は、一般的な工具で形成することができるため、角度θ
tの特に好ましい値は90°であるといえる。
【0051】
図10(b)は、角度θ
tが140°である柄プレート20bに進入した光の光路を示す模式図である。この場合、柄プレート20bに垂直に進入した光は、入射角20°で傾斜面206aに入射して、その一部は傾斜面206aで屈折して柄プレート20bを透過してしまう。
【0052】
図10(c)は、角度θ
tが40°である柄プレート20bに進入した光の光路を示す模式図である。この場合、柄プレート20bに垂直に進入した光は、入射角70°で傾斜面206aに入射して全反射されるが、その後、入射角30°で傾斜面206bに入射して、その一部は傾斜面206bで屈折して柄プレート20bを透過してしまう。
【0053】
(実施の形態の効果)
上記の本発明の実施の形態に係るプロジェクター1においては、第1のレンズ部品21、第2のレンズ部品22、及び柄プレート20が互いに密着した状態で固定されるため、第1のレンズ部品21に含まれる集光レンズ211、第2のレンズ部品22に含まれる投影レンズ221、及び柄プレート20の相対的な位置決め精度が高い。このため、集光レンズ211、投影レンズ221、及び柄プレート20の相対的な位置ずれにより投影画像が不鮮明になることを抑制できる。また、第1のレンズ部品21と第2のレンズ部品22の内部の空間が密閉されているため、柄プレート20の周囲への塵などの異物の侵入を抑えることができる。このため、投影画像への異物の映り込みを抑制できる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【0055】
また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0056】
1 プロジェクター
11 光源
20 柄プレート
21 第1のレンズ部品
211 集光レンズ
212 枠部
22 第2のレンズ部品
221 投影レンズ
222 枠部
30 筐体