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特許7661875エンジン制御装置の製造方法、エンジンシステム、および、エンジンシステムの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】エンジン制御装置の製造方法、エンジンシステム、および、エンジンシステムの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/40 20060101AFI20250408BHJP
   F02D 43/00 20060101ALI20250408BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20250408BHJP
   F02D 15/00 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
F02D41/40
F02D43/00 301J
F02D45/00 368S
F02D45/00 364
F02D15/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021200923
(22)【出願日】2021-12-10
(65)【公開番号】P2023086416
(43)【公開日】2023-06-22
【審査請求日】2024-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 圭介
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-314342(JP,A)
【文献】特開2005-048621(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0108843(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00-45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気筒を有するディーゼルエンジンを制御するエンジン制御装置の製造方法であって、
前記エンジン制御装置は、記憶部を備え、
前記製造方法は、
前記ディーゼルエンジンの各気筒の圧縮比を特定するステップと、
特定した前記圧縮比を用いて各気筒の最大筒内圧を算出するステップと、
算出した前記最大筒内圧のうち最も大きいものと各気筒の最大筒内圧との差である余裕代を算出するステップと、
算出した各気筒の前記余裕代の分、各気筒の筒内圧を増加させるための、燃料の噴射時期の通常制御マップで示される噴射時期を進角するオフセット量を特定するステップと、
前記ディーゼルエンジンの負荷が小さいときと比較して大きいときに、進角する前記オフセット量が小さくならないように、前記通常制御マップで示される噴射時期を、特定した前記オフセット量の分、進角するよう制御するプログラムを前記記憶部に記憶させるステップとを含
前記プログラムは、前記ディーゼルエンジンの負荷が所定負荷未満では前記通常制御マップで示される噴射時期で制御する一方、前記ディーゼルエンジンの負荷が前記所定負荷以上では前記オフセット量の分、前記通常制御マップで示される噴射時期を進角するよう制御するプログラムである、エンジン制御装置の製造方法。
【請求項2】
前記所定負荷は、前記オフセット量の分、噴射時期を進角させた場合の、前記ディーゼルエンジンが発生する騒音に関する影響に基づいて予め定められる、請求項に記載のエンジン制御装置の製造方法。
【請求項3】
前記プログラムは、前記通常制御マップで示される噴射時期を、前記ディーゼルエンジンの負荷に応じて段階的に前記オフセット量の反映割合を増やして、進角するよう制御するプログラムである、請求項1に記載のエンジン制御装置の製造方法。
【請求項4】
前記プログラムは、前記通常制御マップで示される噴射時期を、前記ディーゼルエンジンの負荷に応じて単調増加で前記オフセット量の反映割合を増やして、進角するよう制御するプログラムである、請求項1に記載のエンジン制御装置の製造方法。
【請求項5】
複数の気筒を有するディーゼルエンジンを制御するエンジン制御装置の製造方法であって、
前記エンジン制御装置は、記憶部を備え、
前記製造方法は、
前記ディーゼルエンジンの各気筒の圧縮比を特定するステップと、
特定した前記圧縮比を用いて各気筒の最大筒内圧を算出するステップと、
算出した前記最大筒内圧のうち最も大きいものと各気筒の最大筒内圧との差である余裕代を算出するステップと、
算出した各気筒の前記余裕代の分、各気筒の筒内圧を増加させるための、燃料の噴射時期の通常制御マップで示される噴射時期を進角するオフセット量を特定するステップと、
前記ディーゼルエンジンの負荷が小さいときと比較して大きいときに、進角する前記オフセット量が小さくならないように、前記通常制御マップで示される噴射時期を、特定した前記オフセット量の分、進角するよう制御するプログラムを前記記憶部に記憶させるステップとを含み、
前記プログラムは、前記通常制御マップで示される噴射時期を、前記ディーゼルエンジンの負荷に応じて段階的に前記オフセット量の反映割合を増やして、進角するよう制御するプログラムである、エンジン制御装置の製造方法。
【請求項6】
複数の気筒を有するディーゼルエンジンを制御するエンジン制御装置の製造方法であって、
前記エンジン制御装置は、記憶部を備え、
前記製造方法は、
前記ディーゼルエンジンの各気筒の圧縮比を特定するステップと、
特定した前記圧縮比を用いて各気筒の最大筒内圧を算出するステップと、
算出した前記最大筒内圧のうち最も大きいものと各気筒の最大筒内圧との差である余裕代を算出するステップと、
算出した各気筒の前記余裕代の分、各気筒の筒内圧を増加させるための、燃料の噴射時期の通常制御マップで示される噴射時期を進角するオフセット量を特定するステップと、
前記ディーゼルエンジンの負荷が小さいときと比較して大きいときに、進角する前記オフセット量が小さくならないように、前記通常制御マップで示される噴射時期を、特定した前記オフセット量の分、進角するよう制御するプログラムを前記記憶部に記憶させるステップとを含み、
前記プログラムは、前記通常制御マップで示される噴射時期を、前記ディーゼルエンジンの負荷に応じて単調増加で前記オフセット量の反映割合を増やして、進角するよう制御するプログラムである、エンジン制御装置の製造方法。
【請求項7】
複数の気筒を有するディーゼルエンジンと、制御部および記憶部を備え前記ディーゼルエンジンを制御する制御装置とを含むエンジンシステムであって、
前記記憶部は、前記ディーゼルエンジンの負荷が小さいときと比較して大きいときに、進角するオフセット量が小さくならないように、燃料の噴射時期の通常制御マップで示される噴射時期を、オフセット量の分、進角するよう制御するプログラムを予め記憶し、
前記オフセット量は、各気筒の余裕代の分、各気筒の筒内圧を増加させるための、前記通常制御マップで示される噴射時期を進角する量であり、
前記余裕代は、各気筒の最大筒内圧のうち最も大きいものと各気筒の最大筒内圧との差であり、
前記最大筒内圧は、各気筒の圧縮比を用いて算出され、
前記圧縮比は、各気筒ごとに特定され、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記プログラムにしたがって、
前記ディーゼルエンジンの負荷が小さいときと比較して大きいか否かを判断し、
前記ディーゼルエンジンの負荷が小さいときと比較して大きいと判断したときに、前記オフセット量が小さくならないように、前記通常制御マップで示される噴射時期を、前記オフセット量の分、進角するよう制御
前記ディーゼルエンジンの負荷が所定負荷未満では前記通常制御マップで示される噴射時期で制御する一方、前記ディーゼルエンジンの負荷が前記所定負荷以上では前記オフセット量の分、前記通常制御マップで示される噴射時期を進角するよう制御する、エンジンシステム。
【請求項8】
複数の気筒を有するディーゼルエンジンと、制御部および記憶部を備え前記ディーゼルエンジンを制御する制御装置とを含むエンジンシステムの制御方法であって、
前記記憶部は、前記ディーゼルエンジンの負荷が小さいときと比較して大きいときに、進角するオフセット量が小さくならないように、燃料の噴射時期の通常制御マップで示される噴射時期を、オフセット量の分、進角するよう制御するプログラムを予め記憶し、
前記オフセット量は、各気筒の余裕代の分、各気筒の筒内圧を増加させるための、前記通常制御マップで示される噴射時期を進角する量であり、
前記余裕代は、各気筒の最大筒内圧のうち最も大きいものと各気筒の最大筒内圧との差であり、
前記最大筒内圧は、各気筒の圧縮比を用いて算出され、
前記圧縮比は、各気筒ごとに特定され、
前記制御方法は、前記記憶部に記憶された前記プログラムにしたがって、
前記制御部が、前記ディーゼルエンジンの負荷が小さいときと比較して大きいか否かを判断するステップと、
前記制御部が、前記ディーゼルエンジンの負荷が小さいときと比較して大きいと判断したときに、前記オフセット量が小さくならないように、前記通常制御マップで示される噴射時期を、前記オフセット量の分、進角するよう制御するステップと
前記ディーゼルエンジンの負荷が所定負荷未満では前記通常制御マップで示される噴射時期で制御する一方、前記ディーゼルエンジンの負荷が前記所定負荷以上では前記オフセット量の分、前記通常制御マップで示される噴射時期を進角するよう制御するステップとを含む、エンジンシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、エンジン制御装置の製造方法、エンジンシステム、および、エンジンシステムの制御方法に関し、特に、複数の気筒を有するディーゼルエンジンを制御するエンジン制御装置の製造方法、複数の気筒を有するディーゼルエンジンと、制御部と記憶部とを備えディーゼルエンジンを制御する制御装置とを含むエンジンシステム、および、当該エンジンシステムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多気筒のエンジンの気筒ごとの圧縮比のばらつきが生じる場合に、気筒ごとの圧縮比を決定する因子に応じてエンジンの制御条件を個別補正する制御方法があった(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-303191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の方法では、すべての制御範囲において、エンジンの制御条件を個別補正するので、個別補正による影響が少ない制御範囲において、必要性の少ない制御をしてしまうといった問題があった。
【0005】
この開示は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、エンジンの圧縮比のばらつきに起因する性能の悪化を必要性に応じて改善することが可能な、エンジン制御装置の製造方法、エンジンシステム、および、エンジンシステムの制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この開示に係るエンジン制御装置の製造方法は、複数の気筒を有するディーゼルエンジンを制御するエンジン制御装置の製造方法である。エンジン制御装置は、記憶部を備える。製造方法は、ディーゼルエンジンの各気筒の圧縮比を特定するステップと、特定した圧縮比を用いて各気筒の最大筒内圧を算出するステップと、算出した最大筒内圧のうち最も大きいものと各気筒の最大筒内圧との差である余裕代を算出するステップと、算出した各気筒の余裕代の分、各気筒の筒内圧を増加させるための、燃料の噴射時期の通常制御マップで示される噴射時期を進角するオフセット量を特定するステップと、ディーゼルエンジンの負荷が小さいときと比較して大きいときに、進角するオフセット量が小さくならないように、通常制御マップで示される噴射時期を、特定したオフセット量の分、進角するよう制御するプログラムを記憶部に記憶させるステップとを含む。
【0007】
好ましくは、プログラムは、ディーゼルエンジンの負荷が所定負荷以上であるときに、通常制御マップで示される噴射時期を、特定したオフセット量の分、進角するよう制御するプログラムである。さらに好ましくは、所定負荷は、オフセット量の分、噴射時期を進角させた場合の、ディーゼルエンジンが発生する騒音に関する影響に基づいて予め定められる。
【0008】
好ましくは、プログラムは、通常制御マップで示される噴射時期を、ディーゼルエンジンの負荷に応じて段階的にオフセット量の反映割合を増やして、進角するよう制御するプログラムである。
【0009】
好ましくは、プログラムは、通常制御マップで示される噴射時期を、ディーゼルエンジンの負荷に応じて単調増加でオフセット量の反映割合を増やして、進角するよう制御するプログラムである。
【0010】
この開示の他の局面によれば、エンジンシステムは、複数の気筒を有するディーゼルエンジンと、制御部および記憶部を備えディーゼルエンジンを制御する制御装置とを含むエンジンシステムである。記憶部は、ディーゼルエンジンの負荷が小さいときと比較して大きいときに、進角するオフセット量が小さくならないように、燃料の噴射時期の通常制御マップで示される噴射時期を、オフセット量の分、進角するよう制御するプログラムを予め記憶する。オフセット量は、各気筒の余裕代の分、各気筒の筒内圧を増加させるための、通常制御マップで示される噴射時期を進角する量である。余裕代は、各気筒の最大筒内圧のうち最も大きいものと各気筒の最大筒内圧との差である。最大筒内圧は、各気筒の圧縮比を用いて算出される。圧縮比は、各気筒ごとに特定される。制御部は、記憶部に記憶されたプログラムにしたがって、ディーゼルエンジンの負荷が小さいときと比較して大きいか否かを判断し、ディーゼルエンジンの負荷が小さいときと比較して大きいと判断したときに、オフセット量が小さくならないように、通常制御マップで示される噴射時期を、オフセット量の分、進角するよう制御する。
【0011】
この開示のさらに他の局面によれば、エンジンシステムの制御方法は、複数の気筒を有するディーゼルエンジンと、制御部および記憶部を備えディーゼルエンジンを制御する制御装置とを含むエンジンシステムの制御方法である。記憶部は、ディーゼルエンジンの負荷が小さいときと比較して大きいときに、進角するオフセット量が小さくならないように、燃料の噴射時期の通常制御マップで示される噴射時期を、オフセット量の分、進角するよう制御するプログラムを予め記憶する。オフセット量は、各気筒の余裕代の分、各気筒の筒内圧を増加させるための、通常制御マップで示される噴射時期を進角する量である。余裕代は、各気筒の最大筒内圧のうち最も大きいものと各気筒の最大筒内圧との差である。最大筒内圧は、各気筒の圧縮比を用いて算出される。圧縮比は、各気筒ごとに特定される。制御方法は、記憶部に記憶されたプログラムにしたがって、制御部が、ディーゼルエンジンの負荷が小さいときと比較して大きいか否かを判断するステップと、制御部が、ディーゼルエンジンの負荷が小さいときと比較して大きいと判断したときに、オフセット量が小さくならないように、通常制御マップで示される噴射時期を、オフセット量の分、進角するよう制御するステップとを含む。
【発明の効果】
【0012】
この開示によれば、ディーゼルエンジンの負荷が小さいときと比較して大きいときに、進角されるオフセット量が小さくならないように、通常制御マップで示される噴射時期が、特定されたオフセット量の分、進角されることによって、進角された気筒の最大筒内圧は、各気筒の最大筒内圧のうち最も大きいものとの差の分、増加される。その結果、ディーゼルエンジンの圧縮比のばらつきに起因する性能の悪化を必要性に応じて改善することが可能な、エンジン制御装置の製造方法、エンジンシステム、および、エンジンシステムの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態に係る冷却装置を備えるエンジンの概略構成を示す図である。
図2】この実施の形態におけるエンジンを制御するプログラムの一部を製造する方法の概略の流れを示すフローチャートである。
図3】この実施の形態のピストンの突き出し量を説明するための図である。
図4】この実施の形態における圧縮比の実際の値の一例を示すグラフである。
図5】この実施の形態における最大筒内圧の実際の値の一例を示すグラフである。
図6】この実施の形態におけるエンジンの燃料の噴射時期と筒内圧との関係を示すグラフである。
図7】この実施の形態におけるエンジンの燃料の噴射時期と出力との関係を示すグラフである。
図8】この実施の形態において製造されたECUによるエンジンの制御を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号が付されている。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返されない。
【0015】
図1は、本実施の形態に係る冷却装置を備えるエンジン1の概略構成を示す図である。エンジン1は、図1には代表的に1つのシリンダの断面が概略的に示されるが、本実施の形態のエンジン1は、複数のシリンダを備え、具体的には、直列6気筒エンジンである。また、エンジン1は、ディーゼルエンジンである。
【0016】
エンジン1は、シリンダヘッド2とシリンダブロック3とを含む。シリンダヘッド2の各シリンダに対応する部分には、燃焼室4内に燃料を噴射するインジェクタ(燃料噴射弁)5が設けられている。インジェクタ5は図示しないコモンレールに接続されており、コモンレールに貯留された高圧燃料がインジェクタ5に常時供給されている。
【0017】
シリンダヘッド2には、燃焼室4内に空気を吸入するための吸気通路がインテークマニホールド8を介して接続されている。また、シリンダヘッド2には、燃焼後の排気ガスを排出するための排気通路がエキゾーストマニホールド10を介して接続されている。燃焼室4とインテークマニホールド8との間は、吸気バルブ11によって開閉される。燃焼室4とエキゾーストマニホールド10との間は、排気バルブ12によって開閉される。
【0018】
シリンダブロック3の内部には、ピストン26が往復運動可能に収容されている。ピストン26は、クランクシャフト27にコンロッド28を介して連結されている。シリンダブロック3とシリンダヘッド2との間には、両者を組合わせるときに、ヘッドガスケット6が挟み込まれる。ヘッドガスケット6の厚さは、エンジン1の組み立て時に、ピストン26が行程のうち最も上(シリンダヘッド2に最も近い位置、クランクシャフト27から最も遠い位置)に位置する上死点において、ピストン26の上端(シリンダヘッド2に最も近い部分)が、シリンダヘッド2の下面(シリンダブロック3に近い側の面)に当たらないような厚さに定められる。
【0019】
エンジン1は、電子制御ユニット(ECU)40をさらに備える。ECU40は、所定のプログラムおよび所定のデータを記憶するメモリ42と、メモリ42に記憶された所定のプログラムを実行しエンジン1を制御するCPU(Central Processing Unit)41とを含む。ECU40には、各種センサから、アクセル開度Acc、エンジン回転速度Ne等が与えられる。
【0020】
ECU40は、アクセル開度Accおよびエンジン回転速度Neを取得し、所定の処理を行ない、インジェクタ5を制御することで、燃焼室4内への燃料の噴射を制御する。
【0021】
以上のような構成において、エンジン1の気筒ごとの圧縮比のばらつきが生じる場合に、気筒ごとの圧縮比を決定する因子に応じてエンジン1の制御条件を個別補正する場合、すべての制御範囲において、エンジン1の制御条件を個別補正すると、個別補正による影響が少ない制御範囲において、必要性の少ない制御をしてしまう。
【0022】
そこで、ECU40の製造方法は、複数の気筒を有するエンジン1を制御する制御装置の製造方法である。ECU40は、記憶部を備える。製造方法は、ディーゼルエンジンの各気筒の圧縮比を特定するステップと、特定した圧縮比を用いて各気筒の最大筒内圧を算出するステップと、算出した最大筒内圧のうち最も大きいものと各気筒の最大筒内圧との差である余裕代を算出するステップと、算出した各気筒の余裕代の分、各気筒の筒内圧を増加させるための、燃料の噴射時期の通常制御マップで示される噴射時期を進角するオフセット量を特定するステップと、ディーゼルエンジンの負荷が小さいときと比較して大きいときに、進角するオフセット量が小さくならないように、通常制御マップで示される噴射時期を、特定したオフセット量の分、進角するよう制御するプログラムを記憶部に記憶させるステップとを含む。
【0023】
これにより、エンジン1の負荷が小さいときと比較して大きいときに、進角されるオフセット量が小さくならないように、通常制御マップで示される噴射時期が、特定されたオフセット量の分、進角されることによって、進角された気筒の最大筒内圧は、各気筒の最大筒内圧のうち最も大きいものとの差の分、増加される。その結果、エンジン1の圧縮比のばらつきに起因する性能の悪化を必要性に応じて改善することができる。
【0024】
図2は、この実施の形態におけるエンジン1を制御するプログラムの一部を製造する方法の概略の流れを示すフローチャートである。図2を参照して、製造者は、エンジン1の製造において、シリンダブロック3の各シリンダにピストン26を組込むときに、ピストン26のシリンダブロック3からの突き出し量hを測定する(ステップS11)。
【0025】
図3は、この実施の形態のピストン26の突き出し量を説明するための図である。図3を参照して、ピストン26の突き出し量hは、上死点において、ピストン26の上端が、シリンダブロック3の上面から突き出す長さである。
【0026】
この突き出し量hは、ピストン26、コンロッド28、および、クランクシャフト27の寸法がシリンダごとに公差の範囲内で異なるため、シリンダ(気筒)ごとに異なる値となり得る。この突き出し量がステップS11で測定される。
【0027】
図2に戻って、製造者は、ステップS11で測定した突き出し量hを用いて各シリンダの圧縮比を算出する(ステップS12)。圧縮比は、燃焼室4の容積が最も大きくなるときの容積を、最も小さくなるときの容積で割った値である。ピストンのくぼみの容積も燃焼室4の容積に含まれる。また、圧縮比の算出においては、シリンダヘッド2とシリンダブロック3との間に挟み込まれるヘッドガスケット6の厚さも考慮される。
【0028】
図4は、この実施の形態における圧縮比の実際の値の一例を示すグラフである。図4を参照して、この実施の形態における、エンジン1の圧縮比の設計値(標準値)は、各部品の設計図上の寸法から算出される値である。ここでは、圧縮比の設計値は、最も左のSTDの棒グラフおよび圧縮比15.3を示す細い実線と圧縮比15.4を示す細い実線との間の太い破線で示される値である。
【0029】
エンジン1の圧縮比の設計上限値は、各部品の設計図上の寸法の公差の最大値または最小値から算出される値である。ここでは、設計上限値は、圧縮比15.5を示す細い実線と圧縮比15.6を示す細い実線との間の太い実線で示される値である。
【0030】
エンジン1の圧縮比の設計上限値は、各部品の設計図上の寸法の公差の最大値または最小値から算出される値である。ここでは、設計上限値は、圧縮比15.2を示す線とほぼ重なっている太い実線で示される値である。
【0031】
第1番から第6番までの各シリンダについて、ステップS12で算出された圧縮比の値は、それぞれ、図4のSTDの棒グラフの右側の♯1から♯6までの棒グラフで示される値である。ここでは、第1番のシリンダの圧縮比が、第1番から第6番の全シリンダの圧縮比のうちの最大値となっている。この最大値は、圧縮比15.5を示す線とほぼ重なる細い破線で示される。
【0032】
図2に戻って、製造者は、ステップS12で算出した各シリンダの圧縮比から、それぞれ、各シリンダの最大筒内圧を算出する(ステップS13)。圧縮比以外のエンジン1の運転条件を同じとした場合、圧縮比が大きい程、ほぼ比例して、最大筒内圧は高くなる。エンジン1の最も負荷の高い運転条件としたときの様々な圧縮比の値と最大筒内圧との関係は、設計時におけるシミュレーションまたは実測によって予め特定される。この関係を用いて、各シリンダについて、圧縮比から最大筒内圧が算出される。
【0033】
図5は、この実施の形態における最大筒内圧の実際の値の一例を示すグラフである。図5を参照して、最大筒内圧の設計値は、各部の寸法の設計値および圧縮比の設計値などから特定される値である。ここでは、最大筒内圧の設計値は、最大筒内圧15.5(MPa)を示す細い実線と最大筒内圧16.0を示す細い実線との間の太い破線で示される値である。
【0034】
最大筒内圧の設計上限値は、各部品の設計図上の寸法の公差の最大値または最小値および圧縮比の設計上限値または設計下限値から特定される値である。ここでは、最大筒内圧の設計上限値は、最大筒内圧16.0(MPa)を示す細い実線と最大筒内圧16.5を示す細い実線との間の太い実線で示される値である。
【0035】
第1番から第6番までの各シリンダについて、ステップS13で算出された最大筒内圧の値は、それぞれ、図5の♯1から♯6までの棒グラフで示される値である。ここでは、第1番のシリンダの最大筒内圧が、第1番から第6番の全シリンダの最大筒内圧のうちの最大値となっている。この最大値は、最大筒内圧16.0(MPa)を示す細い実線と最大筒内圧16.5を示す細い実線との間の細い破線で示される値である。
【0036】
図2に戻って、製造者は、ステップS13で算出した最大筒内圧から各シリンダの最大筒内圧の余裕代を算出する(ステップS14)。
【0037】
図5を再び参照して、ここでは、第1番のシリンダの最大筒内圧が最大値であるので、第1番のシリンダの最大筒内圧に対する各シリンダの最大筒内圧の差である余裕代が算出される。
【0038】
図2に戻って、製造者は、ステップS14で算出した余裕代を使い切れる進角のオフセット量を、各エンジン回転速度Neごとに算出する(ステップS15)。
【0039】
図6は、この実施の形態におけるエンジン1の燃料の噴射時期と筒内圧との関係を示すグラフである。図6を参照して、このグラフは、あるエンジン回転速度Neについてのグラフである。噴射時期は、上死点後(ATDC(After Top Dead Center)という)角度で示される。ATDC角度が負の値であれば、この角度の絶対値は、上死点「前」の角度を示す。
【0040】
図6のグラフで示されるように、噴射時期を示すATDC角度が小さくなる程、つまり、噴射時期を進角する程(噴射時期の進角のオフセット量を大きくする程)、筒内圧が高くなる。他のエンジン回転速度Neにおいても、同様の傾向である。このグラフによって、あるエンジン回転速度Neにおいて、余裕代の分、最大筒内圧を上げるために噴射時期を進角する角度が特定できる。このように、所定回転速度間隔(たとえば、100rpm間隔)のエンジン回転速度ごとに噴射時期を進角する角度を特定しておく。
【0041】
図7は、この実施の形態におけるエンジン1の燃料の噴射時期と出力との関係を示すグラフである。図7を参照して、あるシリンダについて、噴射時期を示すATDC角度が小さくなる程、つまり、噴射時期を進角する程(噴射時期の進角のオフセット量を大きくする程)、当該シリンダの出力は大きくなる。このため、あるシリンダについて、最大筒内圧を余裕代の分、大きくすると、当該シリンダの出力も、大きくなる。
【0042】
図2に戻って、製造者は、エンジン1で指定した負荷以上を使うときには、通常制御マップで示される噴射時期を進角するオフセット量を加算し(オフセット量の加算制御をオンとし)、それ以外(エンジン1で指定した負荷未満を使うとき)は、オフセット量を加算しない(オフセット量の加算制御をオフとする)プログラムを作成し、作成したプログラムを当該エンジン1のECU40のメモリ42に記憶させる。噴射時期の通常制御マップとは、当該エンジン1に対して、通常、用いる噴射時期の制御マップであって、この実施の形態におけるオフセット量の加算制御をしない状態の制御マップである。
【0043】
図8は、この実施の形態において製造されたECU40によるエンジン1の制御を説明するためのグラフである。図8を参照して、このプログラムをECU40に組込んだエンジン1を運転すると、エンジン1の負荷が、時刻tにおいて、指定した負荷を超えると、ECU40は、このプログラムにしたがって、各シリンダについて、オフセット量の加算制御をオンとする。これにより、各シリンダの最大筒内圧が余裕代の分、大きくなり、そのシリンダの出力が大きくなるので、エンジン1の出力が大きくなる。
【0044】
指定した負荷は、オフセット量の分、噴射時期を進角させた場合の、エンジン1が発生する騒音に関する影響に基づいて予め定められる。たとえば、騒音レベルが所定許容値を超えていない状態において、オフセット量の分、噴射時期を進角させた場合に、騒音レベルが所定許容値を超えない負荷と、騒音レベルが所定許容値を超える負荷との境界の負荷を、指定した負荷とする。
【0045】
[変形例]
(1) 前述した実施の形態においては、図2のステップS16および図8で示したように、作成されるプログラムは、エンジン1の負荷が指定した負荷以上であるときに、通常制御マップで示される噴射時期を、オフセット量の分、進角するよう制御するプログラムであることとした。つまり、作成されるプログラムは、たとえば、エンジン1の負荷が最大負荷の90%以上であるときに、オフセット量の100%分、進角するよう制御するプログラムであることとした。
【0046】
しかし、これに限定されず、作成されるプログラムは、エンジン1の負荷が小さいときと比較して大きいときに、進角するオフセット量が小さくならないように、通常制御マップで示される噴射時期を進角するよう制御するプログラムであればよい。たとえば、作成されるプログラムは、通常制御マップで示される制御時期を、エンジン1の負荷に応じて段階的に、オフセット量の反映割合を増やして、進角するよう制御するプログラムであってもよい。つまり、作成されるプログラムは、たとえば、エンジン1の負荷が最大負荷の50%以上であるときに、オフセット量の30%分、進角するよう制御し、最大負荷の75%以上であるときに、オフセット量の60%分、進角するよう制御し、最大負荷の100%以上であるときに、オフセット量の100%分、進角するよう制御するプログラムであることとしてもよい。
【0047】
また、作成されるプログラムは、通常制御マップで示される噴射時期を、エンジン1の負荷に応じて単調増加で、オフセット量の反映割合を増やして、進角するよう制御するプログラムであってもよい。つまり、作成されるプログラムは、たとえば、エンジン1の負荷が最大負荷のx%であるときに、オフセット量の100-x(%)分、進角するよう制御するプログラムであることとしてもよい。
【0048】
(2) 前述した実施の形態においては、図2のステップS16および図8で示したように、指定した負荷が、騒音レベルが所定許容値を超えていない状態において、オフセット量の分、噴射時期を進角させた場合に、騒音レベルが所定許容値を超えない負荷と、騒音レベルが所定許容値を超える負荷との境界の負荷であることとした。しかし、これに限定されず、指定した負荷が、オフセット量の分、噴射時期を進角させた場合に、進角させる前よりも騒音が大きくなったと人が感じる負荷と、進角させる前よりも騒音が大きくなったと感じない負荷との境界の負荷を、指定した負荷とするようにしてもよい。
【0049】
(3) 前述した実施の形態においては、多段階噴射については特に触れていないが、多段階噴射の各段階のすべてを同じオフセット量の分、進角するようにしてもよいし、多段階噴射の各段階のうちの最初の段階の噴射(たとえば、パイロット噴射)を含むいずれか少なくとも1つの段階を、オフセット量の分、進角するようにしてもよいし、ダ段階噴射の複数の段階を進角させる場合、異なるオフセット量の分、進角させるようにしてもよい。
【0050】
(4) 前述した開示を、エンジン1のECU40のようなエンジンの制御装置またはこの制御装置で実行されるプログラムの製造方法の開示と捉えることができる。エンジン1、エンジン1のECU40のような制御装置、エンジン1およびECU40を含むエンジンシステムの開示と捉えることができる。エンジン1のECU40のような制御装置によるエンジン1の制御方法の開示と捉えることができる。
【0051】
[まとめ]
(1) 図2で示したように、ECU40の製造方法は、複数のシリンダを有するディーゼルエンジンであるエンジン1を制御するECU40の製造方法である。ECU40は、メモリ42を備える。製造方法は、エンジン1の各シリンダの圧縮比を特定するステップ(たとえば、ステップS11,ステップS12)と、特定した圧縮比を用いて各シリンダの最大筒内圧を算出するステップ(たとえば、ステップS13)と、算出した最大筒内圧のうち最も大きいものと各シリンダの最大筒内圧との差である余裕代を算出するステップ(たとえば、ステップS14)と、算出した各シリンダの余裕代の分、各シリンダの筒内圧を増加させるための、燃料の噴射時期の通常制御マップで示される噴射時期を進角するオフセット量を特定するステップ(たとえば、ステップS15)と、エンジン1の負荷が小さいときと比較して大きいときに、進角するオフセット量が小さくならないように、通常制御マップで示される噴射時期を、特定したオフセット量の分、進角するよう制御するプログラムをメモリ42に記憶させるステップ(たとえば、ステップS16)とを含む。
【0052】
これにより、エンジン1の負荷が小さいときと比較して大きいときに、進角されるオフセット量が小さくならないように、通常制御マップで示される噴射時期が、特定されたオフセット量の分、進角されることによって、進角されたシリンダの最大筒内圧は、各シリンダの最大筒内圧のうち最も大きいものとの差の分、増加される。その結果、エンジン1の圧縮比のばらつきに起因する性能の悪化を必要性に応じて改善することができる。具体的には、エンジン1の負荷が小さいときと比較して大きいときに、エンジン1の出力を増加させることができる。
【0053】
(2) 図2のステップS16および図8で示したように、メモリ42に記憶されるプログラムは、エンジン1の負荷が、指定した負荷以上であるときに、通常制御マップで示される噴射時期を、算出したオフセット量の分、進角するよう制御するプログラムである。
【0054】
これにより、エンジン1の負荷が、指定した負荷以上であるときに、通常制御マップで示される噴射時期が、算出されたオフセット量の分、進角されることによって、進角されたシリンダの最大筒内圧は、各シリンダの最大筒内圧のうち最も大きいものとの差の分、増加される。その結果、エンジン1の圧縮比のばらつきに起因する性能の悪化を必要性に応じて改善することができる。具体的には、エンジン1の負荷が、指定した負荷以上であるときに、進角する場合は、進角しない場合と比較して、エンジン1の出力を増加させることができる。
【0055】
(3) 図2のステップS16および図8で示したように、指定した負荷は、オフセット量の分、噴射時期を進角させた場合の、エンジン1が発生する騒音に関する影響に基づいて予め定められる。
【0056】
これにより、騒音に関する影響を考慮して指定した負荷を定めることができるため、騒音に関する悪影響を減らすことができる。
【0057】
(4) 前述の変形例で示したように、メモリ42に記憶されるプログラムは、通常制御マップで示される噴射時期を、エンジン1の負荷に応じて段階的にオフセット量の反映割合を増やして、進角するよう制御するプログラムであってもよい。
【0058】
これにより、通常制御マップで示される噴射時期が、エンジン1の負荷に応じて段階的にオフセット量の反映割合が増やされて、進角されることによって、進角されたシリンダの最大筒内圧は、各シリンダの最大筒内圧のうち最も大きいものとの差の分を上限として、増加される。その結果、エンジン1の圧縮比のばらつきに起因する性能の悪化を必要性に応じて改善することができる。具体的には、エンジン1の負荷に応じて段階的にエンジン1の出力を増加させることができる。
【0059】
(5) 前述の変形例で示したように、メモリ42に記憶されるプログラムは、通常制御マップで示される噴射時期を、エンジン1の負荷に応じて単調増加でオフセット量の反映割合を増やして、進角するよう制御するプログラムであってもよい。
【0060】
これにより、通常制御マップで示される噴射時期が、エンジン1の負荷に応じて単調増加でオフセット量の反映割合が増やされて、進角されることによって、進角されたシリンダの最大筒内圧は、各シリンダの最大筒内圧のうち最も大きいものとの差の分を上限として、増加される。その結果、エンジン1の圧縮比のばらつきに起因する性能の悪化を必要性に応じて改善することができる。具体的には、エンジン1の負荷に応じて単調増加でエンジン1の出力を増加させることができる。
【0061】
(6) 図1で示したように、エンジンシステムは、複数のシリンダを有するエンジン1と、CPU41およびメモリ42を備えエンジン1を制御するECU40とを含むエンジンシステムである。図2のステップS16で示したように、メモリ42は、エンジン1の負荷が小さいときと比較して大きいときに、進角するオフセット量が小さくならないように、燃料の噴射時期の通常制御マップで示される噴射時期を、オフセット量の分、進角するよう制御するプログラムを予め記憶する。図2のステップS15で示したように、オフセット量は、各シリンダの余裕代の分、各シリンダの筒内圧を増加させるための、通常制御マップで示される噴射時期を進角する量である。図2のステップS14で示したように、余裕代は、各シリンダの最大筒内圧のうち最も大きいものと各シリンダの最大筒内圧との差である。図2のステップS13で示したように、最大筒内圧は、各シリンダの圧縮比を用いて算出される。図2のステップS11,ステップS12で示したように、圧縮比は、各シリンダごとに特定される。図2のステップS16および図8で示したように、CPU41は、メモリ42に記憶されたプログラムにしたがって、エンジン1の負荷が小さいときと比較して大きいか否かを判断し、エンジン1の負荷が小さいときと比較して大きいと判断したときに、オフセット量が小さくならないように、通常制御マップで示される噴射時期を、オフセット量の分、進角するよう制御する。
【0062】
これにより、エンジン1の負荷が小さいときと比較して大きいときに、進角されるオフセット量が小さくならないように、通常制御マップで示される噴射時期が、特定されたオフセット量の分、進角されることによって、進角されたシリンダの最大筒内圧は、各シリンダの最大筒内圧のうち最も大きいものとの差の分、増加される。その結果、エンジン1の圧縮比のばらつきに起因する性能の悪化を必要性に応じて改善することができる。具体的には、エンジン1の負荷が小さいときと比較して大きいときに、エンジン1の出力を増加させることができる。
【0063】
(7) 図1で示したように、エンジンシステムの制御方法は、複数のシリンダを有するエンジン1と、CPU41およびメモリ42を備えエンジン1を制御するECU40とを含むエンジンシステムの制御方法である。図2のステップS16で示したように、メモリ42は、エンジン1の負荷が小さいときと比較して大きいときに、進角するオフセット量が小さくならないように、燃料の噴射時期の通常制御マップで示される噴射時期を、オフセット量の分、進角するよう制御するプログラムを予め記憶する。図2のステップS15で示したように、オフセット量は、各シリンダの余裕代の分、各シリンダの筒内圧を増加させるための、通常制御マップで示される噴射時期を進角する量である。図2のステップS14で示したように、余裕代は、各シリンダの最大筒内圧のうち最も大きいものと各シリンダの最大筒内圧との差である。図2のステップS13で示したように、最大筒内圧は、各シリンダの圧縮比を用いて算出される。図2のステップS11,ステップS12で示したように、圧縮比は、各シリンダごとに特定される。図2のステップS16および図8で示したように、制御方法は、メモリ42に記憶されたプログラムにしたがって、CPU41が、エンジン1の負荷が小さいときと比較して大きいか否かを判断するステップと、CPU41が、エンジン1の負荷が小さいときと比較して大きいと判断したときに、オフセット量が小さくならないように、通常制御マップで示される噴射時期を、オフセット量の分、進角するよう制御するステップとを含む。
【0064】
これにより、エンジン1の負荷が小さいときと比較して大きいときに、進角されるオフセット量が小さくならないように、通常制御マップで示される噴射時期が、特定されたオフセット量の分、進角されることによって、進角されたシリンダの最大筒内圧は、各シリンダの最大筒内圧のうち最も大きいものとの差の分、増加される。その結果、エンジン1の圧縮比のばらつきに起因する性能の悪化を必要性に応じて改善することができる。具体的には、エンジン1の負荷が小さいときと比較して大きいときに、エンジン1の出力を増加させることができる。
【0065】
今回開示された各実施の形態は、適宜組合わせて実施することも予定されている。そして、今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1 エンジン、2 シリンダヘッド、3 シリンダブロック、4 燃焼室、5 インジェクタ、6 ヘッドガスケット、8 インテークマニホールド、10 エキゾーストマニホールド、11 吸気バルブ、12 排気バルブ、26 ピストン、27 クランクシャフト、28 コンロッド、40 ECU、41 CPU、42 メモリ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8