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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】熱プレス成形装置及び熱プレス成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/34 20060101AFI20250408BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20250408BHJP
   B29C 33/30 20060101ALI20250408BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20250408BHJP
   B29C 43/32 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
B29C33/34
B29C33/02
B29C33/30
B29C43/36
B29C43/32
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021208575
(22)【出願日】2021-12-22
(65)【公開番号】P2023093138
(43)【公開日】2023-07-04
【審査請求日】2024-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 善記
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-112827(JP,A)
【文献】特開2010-222221(JP,A)
【文献】特開2007-131489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/34
B29C 33/02
B29C 33/30
B29C 43/36
B29C 43/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料を含むワークを熱プレス成形する装置であって、
固定型と、
前記固定型に対して上下方向において接離可能に構成された可動型と、
前記固定型及び前記可動型のうち下方に位置する下型の上に載置可能に構成されるとともに前記下型の上とは別の場所に搬送可能に構成された入れ子型と、を備え、
前記固定型及び前記可動型の内部には、冷媒が流通可能に構成された冷却回路がそれぞれ設けられており、
前記入れ子型は、下入れ子と、前記下入れ子の上方に配置される上入れ子と、を有しており、
前記下入れ子の上面には、前記ワークを成形する下側成形面が設けられており、
前記上入れ子の下面には、前記ワークを成形する上側成形面が設けられている、
熱プレス成形装置。
【請求項2】
前記入れ子型は、前記入れ子型に対してプレス荷重が作用していない状態において、前記上入れ子を前記下入れ子から上方に離れた位置に保持する保持部を備える、
請求項1に記載の熱プレス成形装置。
【請求項3】
前記保持部は、前記下入れ子に対して前記上入れ子を上方に向けて付勢する付勢部材である、
請求項2に記載の熱プレス成形装置。
【請求項4】
前記入れ子型は、前記下入れ子に対して前記上入れ子を上下方向に移動可能に支持するシャフトを備えており、
前記付勢部材は、前記シャフトの外周を覆うばねである、
請求項3に記載の熱プレス成形装置。
【請求項5】
前記下型は、下型本体と、前記下型本体の上面に開口する複数のピン穴と、前記ピン穴の各々に挿入される複数のクッションピンと、前記クッションピンの各々を上方に向けて付勢する複数の付勢部材と、を有しており、
前記クッションピンに対してプレス荷重が作用していない状態において、前記クッションピンが前記上面から突出しており、前記クッションピンに対してプレス荷重が作用することで前記クッションピンが前記ピン穴の内部に進入するように構成されており、
前記入れ子型は、前記クッションピンに対してプレス荷重が作用していない状態において前記クッションピンの各々にのみ当接している、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱プレス成形装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の熱プレス成形装置を用いて前記ワークを熱プレス成形する方法であって、
前記下型の上とは別の場所で、前記下側成形面上に前記ワークを載置した状態で前記ワーク及び前記入れ子型を加熱する加熱工程と、
前記下型の上に前記入れ子型を載置する載置工程と、
前記固定型に近づくように前記可動型を移動させることで前記入れ子型をプレスすると同時に、前記入れ子型の熱を前記固定型及び前記可動型に移動させることで前記入れ子型及び前記ワークを冷却する型締め冷却工程と、
前記固定型から離れるように前記可動型を移動させる型開き工程と、
前記下型から前記入れ子型を取り出す取り出し工程と、
を備える、
熱プレス成形方法。
【請求項7】
樹脂材料を含むワークを熱プレス成形する装置であって、
固定型と、
前記固定型に対して上下方向において接離可能に構成された可動型と、
前記固定型及び前記可動型のうち下方に位置する下型の上に載置可能に構成された入れ子型と、を備え、
前記固定型及び前記可動型の内部には、冷媒が流通可能に構成された冷却回路がそれぞれ設けられており、
前記入れ子型は、下入れ子と、前記下入れ子の上方に配置される上入れ子と、を有しており、
前記下入れ子の上面には、前記ワークを成形する下側成形面が設けられており、
前記上入れ子の下面には、前記ワークを成形する上側成形面が設けられており、
前記入れ子型は、前記入れ子型に対してプレス荷重が作用していない状態において、前記上入れ子を前記下入れ子から上方に離れた位置に保持する保持部を備え、
前記保持部は、前記下入れ子に対して前記上入れ子を上方に向けて付勢する付勢部材であり、
前記入れ子型は、前記下入れ子に対して前記上入れ子を上下方向に移動可能に支持するシャフトを備えており、
前記付勢部材は、前記シャフトの外周を覆うばねである、
熱プレス成形装置。
【請求項8】
樹脂材料を含むワークを熱プレス成形する装置であって、
固定型と、
前記固定型に対して上下方向において接離可能に構成された可動型と、
前記固定型及び前記可動型のうち下方に位置する下型の上に載置可能に構成された入れ子型と、を備え、
前記固定型及び前記可動型の内部には、冷媒が流通可能に構成された冷却回路がそれぞれ設けられており、
前記入れ子型は、下入れ子と、前記下入れ子の上方に配置される上入れ子と、を有しており、
前記下入れ子の上面には、前記ワークを成形する下側成形面が設けられており、
前記上入れ子の下面には、前記ワークを成形する上側成形面が設けられており、
前記下型は、下型本体と、前記下型本体の上面に開口する複数のピン穴と、前記ピン穴の各々に挿入される複数のクッションピンと、前記クッションピンの各々を上方に向けて付勢する複数の付勢部材と、を有しており、
前記クッションピンに対してプレス荷重が作用していない状態において、前記クッションピンが前記上面から突出しており、前記クッションピンに対してプレス荷重が作用することで前記クッションピンが前記ピン穴の内部に進入するように構成されており、
前記入れ子型は、前記クッションピンに対してプレス荷重が作用していない状態において前記クッションピンの各々にのみ当接している、
熱プレス成形装置。
【請求項9】
樹脂材料を含むワークを熱プレス成形する熱プレス成形装置を用いて前記ワークを熱プレス成形する方法であって、
前記熱プレス成形装置は、
固定型と、
前記固定型に対して上下方向において接離可能に構成された可動型と、
前記固定型及び前記可動型のうち下方に位置する下型の上に載置可能に構成された入れ子型と、を備え、
前記固定型及び前記可動型の内部には、冷媒が流通可能に構成された冷却回路がそれぞれ設けられており、
前記入れ子型は、下入れ子と、前記下入れ子の上方に配置される上入れ子と、を有しており、
前記下入れ子の上面には、前記ワークを成形する下側成形面が設けられており、
前記上入れ子の下面には、前記ワークを成形する上側成形面が設けられており、
前記下型の上とは別の場所で、前記下側成形面上に前記ワークを載置した状態で前記ワーク及び前記入れ子型を加熱する加熱工程と、
前記下型の上に前記入れ子型を載置する載置工程と、
前記固定型に近づくように前記可動型を移動させることで前記入れ子型をプレスすると同時に、前記入れ子型の熱を前記固定型及び前記可動型に移動させることで前記入れ子型及び前記ワークを冷却する型締め冷却工程と、
前記固定型から離れるように前記可動型を移動させる型開き工程と、
前記下型から前記入れ子型を取り出す取り出し工程と、
を備える、
熱プレス成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱プレス成形装置及び熱プレス成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、成型素材を加熱プレスするプレス成型金型及びこれを用いたプレス成型方法が開示されている。成型素材は、例えば炭素繊維の織物などの補強材繊維と、樹脂材料とを含む複合材料である。
【0003】
プレス成型金型は、固定金型、可動金型、及び金型入り駒を備えている。固定金型及び可動金型には、それぞれ冷却通路が内蔵されている。金型入り駒は、可動金型の上方に弾性体を介して設けられた第一入り駒と、固定金型の下方に弾性体を介して設けられた第二入り駒とを備えている。第一入り駒には、成型素材を賦形する凹状の転写成型部が設けられている。第二入り駒には、成型素材を賦形する凸状の転写成型部が設けられている。また、第一入り駒及び第二入り駒には、それぞれ電熱ヒータが内蔵されている。
【0004】
特許文献1に開示されているプレス成型方法では、まず、電熱ヒータに通電することで第一入り駒及び第二入り駒を加熱する。その後、第一入り駒と第二入り駒との間に成型素材を載置する。これにより、成型素材が加熱されることで成型素材を構成する樹脂材料の流動性が高められる。次に、可動型が固定型に向けて移動することで、第一入り駒及び第二入り駒によって成型素材が加圧される。これにより、成型素材が転写成型部に倣った形状に成型される。その後、固定金型及び可動金型の冷却通路内に冷却媒体を流入させることで、金型入り駒の熱が各金型へと伝達される。これにより、第一入り駒と第二入り駒との間に配置された成型素材が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5826243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載のプレス成型金型及びこれを用いたプレス成型方法の場合、プレス成型金型において金型入り駒の加熱及び冷却の双方を行う必要がある。そのため、1つのプレス成型金型によって複数の成型素材を順次プレス成型する場合には、金型入り駒の加熱及び冷却に時間を要するため、生産性が低いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための熱プレス成形装置は、樹脂材料を含むワークを熱プレス成形する装置であって、固定型と、前記固定型に対して上下方向において接離可能に構成された可動型と、前記固定型及び前記可動型のうち下方に位置する下型の上に載置可能に構成された入れ子型と、を備える。前記固定型及び前記可動型の内部には、冷媒が流通可能に構成された冷却回路がそれぞれ設けられており、前記入れ子型は、下入れ子と、前記下入れ子の上方に配置される上入れ子と、を有しており、前記下入れ子の上面には、前記ワークを成形する下側成形面が設けられており、前記上入れ子の下面には、前記ワークを成形する上側成形面が設けられている。
【0008】
同構成によれば、入れ子型ごとワークを予め加熱した後に下型の上に載置することができる。このため、加熱されたワークのみを下型の上に移動させてプレスをする場合に比べて、ワークの放熱を抑制できるので、プレスされる際のワークを高温に保つことができる。これにより、ワークを構成する樹脂材料の流動性が高められるため、ワークの成形性が向上する。
【0009】
また、冷却回路内に冷媒を流通させることによって固定型及び可動型、並びに入れ子型を介してワークが冷却される。これにより、ワークの冷却を速やかに行うことができる。
ここで、上記構成によれば、下型の上とは別の場所で、入れ子型及びワークを予め加熱しておくことができるので、下型の上でワークを加熱しなくて済む。また、固定型及び可動型を冷却できるため、入れ子型からの受熱によって固定型及び可動型が高温となることを抑制できる。これにより、固定型及び可動型の冷却に要する時間を短縮できるため、次のワークを熱プレス成形するまでの時間を短縮できる。したがって、熱プレス成形の生産性が向上する。
【0010】
上記熱プレス成形装置において、前記入れ子型は、前記入れ子型に対してプレス荷重が作用していない状態において、前記上入れ子を前記下入れ子から上方に離れた位置に保持する保持部を備えることが好ましい。
【0011】
同構成によれば、入れ子型に対してプレス荷重が作用していない状態において、保持部によって、上入れ子が下入れ子から上方に離れた位置に保持される。このため、下入れ子の下側成形面の上にワークを容易に載置できる。
【0012】
上記熱プレス成形装置において、前記保持部は、前記下入れ子に対して前記上入れ子を上方に向けて付勢する付勢部材であることが好ましい。
同構成によれば、入れ子型に対してプレス荷重が作用していない状態において、付勢部材によって下入れ子に対して上入れ子が上方に向けて付勢されることで、上入れ子を下入れ子から上方に離れた位置に保持できる。また、入れ子型に対してプレス荷重が作用すると、付勢部材が圧縮されることで上入れ子が下入れ子に近づくように移動することで、下側成形面と上側成形面とによってワークがプレスされる。したがって、保持部を簡単な構成で具現化できる。
【0013】
上記熱プレス成形装置において、前記入れ子型は、前記下入れ子に対して前記上入れ子を上下方向に移動可能に支持するシャフトを備えており、前記付勢部材は、前記シャフトの外周を覆うばねであることが好ましい。
【0014】
同構成によれば、入れ子型がプレスされる際に、下入れ子に対する上入れ子の上下方向における移動がシャフトによって支持されるため、上入れ子がシャフトの軸線方向、すなわち上下方向に対して直交する方向に移動することを抑制できる。したがって、下側成形面と上側成形面とを的確に位置合わせすることができる。
【0015】
また、付勢部材としてのばねがシャフトの外周を覆うように設けられる。このため、入れ子型において付勢部材をコンパクトに配置できる。
上記熱プレス成形装置において、前記下型は、下型本体と、前記下型本体の上面に開口する複数のピン穴と、前記ピン穴の各々に挿入される複数のクッションピンと、前記クッションピンの各々を上方に向けて付勢する複数の付勢部材と、を有しており、前記クッションピンに対してプレス荷重が作用していない状態において、前記クッションピンが前記上面から突出しており、前記クッションピンに対してプレス荷重が作用することで前記クッションピンが前記ピン穴の内部に進入するように構成されており、前記入れ子型は、前記クッションピンに対してプレス荷重が作用していない状態において前記クッションピンの各々にのみ当接していることが好ましい。
【0016】
同構成によれば、ワークを含む入れ子型が下型の上に載置された状態において、入れ子型は、クッションピンの各々にのみ当接する。すなわち、入れ子型は、下型本体から上方に浮いた状態となる。このため、入れ子型から下型本体への熱の移動が抑制される。これにより、プレスされる際のワークを一層高温に保つことができる。
【0017】
また、クッションピンに対してプレス荷重が作用すると、クッションピンがピン穴の内部に進入するようになるため、入れ子型が下型本体に接触するようになる。これにより、入れ子型から下型本体への熱の移動が促進されることでワークの冷却を一層速やかに行うことができる。
【0018】
上記課題を解決するための熱プレス成形方法は、前記熱プレス成形装置を用いて前記ワークを熱プレス成形する方法であって、前記下型の上とは別の場所で、前記下側成形面上に前記ワークを載置した状態で前記ワーク及び前記入れ子型を加熱する加熱工程と、前記下型の上に前記入れ子型を載置する載置工程と、前記固定型に近づくように前記可動型を移動させることで前記入れ子型をプレスすると同時に、前記入れ子型の熱を前記固定型及び前記可動型に移動させることで前記入れ子型及び前記ワークを冷却する型締め冷却工程と、前記固定型から離れるように前記可動型を移動させる型開き工程と、前記下型から前記入れ子型を取り出す取り出し工程と、を備える。
【0019】
同方法によれば、加熱工程において、下型の上とは別の場所で、下側成形面上にワークを載置した状態でワーク及び入れ子型が加熱される。続いて、載置工程において、下型の上に入れ子型が載置される。続いて、型締め冷却工程において、固定型に近づくように可動型を移動させることで入れ子型がプレスされると同時に、入れ子型の熱を固定型及び可動型に移動させることで入れ子型及びワークが冷却される。続いて、型開き工程において、固定型から離れるように可動型が移動する。続いて、取り出し工程において、下型から入れ子型が取り出される。
【0020】
ここで、上記方法によれば、入れ子型ごとワークが予め加熱された後に下型の上に載置される。このため、加熱されたワークのみを下型の上に移動させてプレスをする場合に比べて、ワークの放熱を抑制できるので、プレスされる際のワークを高温に保つことができる。これにより、ワークを構成する樹脂材料の流動性が高められるため、ワークの成形性が向上する。
【0021】
また、冷却回路内に冷媒を流通させることによって固定型及び可動型、並びに入れ子型を介してワークが冷却される。これにより、ワークの冷却を速やかに行うことができる。
ここで、上記方法によれば、下型の上とは別の場所で、入れ子型及びワークを予め加熱しておくことができる。また、固定型及び可動型を冷却できるため、入れ子型からの受熱によって固定型及び可動型が高温となることを抑制できる。これにより、固定型及び可動型の冷却に要する時間を短縮できるため、次のワークを熱プレス成形するまでの時間を短縮できる。したがって、熱プレス成形の生産性が向上する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、熱プレス成形の生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、一実施形態に係る熱プレス成形装置及び熱プレス成形方法の加熱工程を示す正面図である。
図2図2は、同実施形態に係る熱プレス成形方法の載置工程を示す正面図である。
図3図3は、同実施形態に係る熱プレス成形方法の型締め冷却工程を示す正面図である。
図4図4は、同実施形態に係る熱プレス成形方法の型開き工程を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1図4を参照して、一実施形態について説明する。
熱プレス成形装置(以下、成形装置50)は、樹脂材料を含むワーク60を熱プレス成形する装置である。本実施形態のワーク60は、樹脂材料と炭素材料とを含む複合材料である。本実施形態の成形装置50は、ワーク60を熱プレス成形することにより燃料電池のセルを構成するセパレータを製造する際に用いられる。
【0025】
図1に示すように、成形装置50は、下型10、上型20、入れ子型30、及びホットプレート40を備えている。
<下型10>
図1に示すように、下型10は、固定型であり、台座部11と、ホルダ12と、冷却回路13と、クッションピン14と、ばね15とを備えている。
【0026】
台座部11の上面には、ホルダ12が設けられている。台座部11及びホルダ12の内部には、冷媒が流通可能に構成された冷却回路13が設けられている。
下型10の外部には、冷却回路13を流通する冷媒との間で熱交換を行う熱交換器17が接続されている。
【0027】
ホルダ12の上面には、複数のピン穴16が開口している。本実施形態では、4つのピン穴16が、ホルダ12の上面上の仮想長方形の4つの角に位置するように設けられている。
【0028】
ピン穴16には、クッションピン14が挿入されている。ピン穴16の底面とクッションピン14との間には、ばね15が設けられている。ばね15の両端は、ピン穴16の底面とクッションピン14とにそれぞれ固定されている。
【0029】
台座部11、ホルダ12、クッションピン14、及びばね15は、いずれも金属製である。
図1に示すように、クッションピン14に対してプレス荷重が作用していない状態では、クッションピン14はホルダ12の上面から突出している。
【0030】
図3に示すように、クッションピン14に対してプレス荷重が作用することで、クッションピン14がピン穴16の内部に進入するように構成されている。
<入れ子型30>
図1に示すように、入れ子型30は、下入れ子33と、上入れ子31と、シャフト35と、ばね37とを備えている。
【0031】
下入れ子33は、矩形板状である。
下入れ子33の上面の内周部には、同上面の外周部よりも下方に窪んでいる下側成形面34が設けられている。下側成形面34は、複数の凹部34aを有する。
【0032】
下入れ子33の上面の4つの角部には、上下方向Zに延在するシャフト35が設けられている。シャフト35は、下入れ子33に固定されている。
下入れ子33の上方には、上入れ子31が設けられている。
【0033】
上入れ子31は、下入れ子33と同様な矩形板状である。上入れ子31の4つの角部には、上入れ子31を上下方向Zに貫通するとともにシャフト35が挿通される挿通孔36が設けられている。上入れ子31は、シャフト35によって下入れ子33に対して上下方向Zに移動可能に支持されている。
【0034】
シャフト35の外周は、ばね37により覆われている。ばね37は、例えばコイルスプリングである。
入れ子型30にプレス荷重が作用していない状態では、ばね37によって、上入れ子31は下入れ子33から上方に離れた位置に保持されている。
【0035】
上入れ子31の下面には、下側成形面34に対向する上側成形面32が設けられている。上側成形面32は、上入れ子31の下面の外周部よりも下方に突出している。上側成形面32は、複数の突条32aを有する。
【0036】
下入れ子33、上入れ子31、シャフト35、及びばね37は、いずれも金属製である。
<上型20>
図1に示すように、下型10の上方には、上型20が設けられている。上型20は、下型10に対して上下方向Zに接離可能に構成されている可動型であり、台座部21と、ホルダ22と、冷却回路23と、クッションピン24と、ばね25とを備えている。
【0037】
台座部21の下面には、ホルダ22が設けられている。台座部21及びホルダ22の内部には、冷媒が流通可能に構成された冷却回路23が設けられている。
上型20の外部には、冷却回路23を流通する冷媒との間で熱交換を行う熱交換器27が接続されている。
【0038】
ホルダ22の下面には、複数のピン穴26が開口している。本実施形態では、4つのピン穴26が、下型10の4つのピン穴16に対応する位置にそれぞれ設けられている。
ピン穴26には、クッションピン24が挿入されている。ピン穴26の底面とクッションピン24との間には、ばね25が設けられている。ばね25の両端は、ピン穴26の底面とクッションピン24とにそれぞれ固定されている。
【0039】
ホルダ22には、上型20が入れ子型30にプレス荷重を加える際に、挿通孔36を通過して上入れ子31の上面から突出したシャフト35を収容するシャフト穴28が設けられている。
【0040】
台座部21、ホルダ22、クッションピン24、及びばね25は、いずれも金属製である。
図1に示すように、クッションピン24に対してプレス荷重が作用していない状態では、クッションピン24はホルダ22の下面から突出している。
【0041】
図3に示すように、クッションピン24に対してプレス荷重が作用することで、クッションピン24がピン穴26の内部に進入するように構成されている。
<ホットプレート40>
図1に示すように、下型10の隣には、ワーク60及び入れ子型30を加熱する通電加熱式のホットプレート40が設けられている。
【0042】
次に、本実施形態の成形装置50を用いて燃料電池のカーボンセパレータを製造する手順について説明する。
まず、図1に示すように、下入れ子33の下側成形面34上にワーク60を載置する。このとき、上入れ子31は、ばね37によって下入れ子33から上方に離れた位置に保持されている。
【0043】
そして、ワーク60を入れ子型30ごとホットプレート40上に載置して加熱する(加熱工程)。
続いて、図2に示すように、搬送装置(図示略)によって、加熱された入れ子型30を搬送して下型10の上に載置する(載置工程)。このとき、下入れ子33は、下型10のクッションピン24の各々にのみ当接している。また、上型20は、上入れ子31よりも上方に位置しており、上入れ子31に接触していない。
【0044】
続いて、図3に示すように、上型20を下型10に近づけるように下方に移動させることで入れ子型30をプレスする。入れ子型30にプレス荷重が作用すると、クッションピン14,24がそれぞれピン穴16,26の内部に進入する。クッションピン14,24がピン穴16,26に収容されると同時に、下型10のホルダ12の上面及び上型20のホルダ22の下面がそれぞれ下入れ子33及び上入れ子31に接触する。上入れ子31は、上型20に押圧されることでシャフト35に沿って下方へ移動する。上入れ子31が下方に移動することに伴って、シャフト35が上入れ子31の上面から突出するとともに上型20のシャフト穴28に収容される。さらに、上入れ子31が下方へ移動することで、上側成形面32の突条32aがワーク60に接触する。さらに、上入れ子31が下方へ移動することで、下側成形面34の凹部34aに上側成形面32の突条32aが入り込むようにワーク60が押圧されて成形される。
【0045】
また、ホルダ12,22内部には、冷却回路13,23が設けられているので、ホルダ12,22は、加熱された入れ子型30及びワーク60よりも温度が低い。したがって、プレス荷重によってホルダ12の上面及びホルダ22の下面がそれぞれ下入れ子33及び上入れ子31に接触することで、入れ子型30及びワーク60の熱がホルダ12,22へ移動する(型締め冷却工程)。
【0046】
続いて、図4に示すように、下型10から離れるように上型20を上方に移動させる(型開き工程)。このとき、ばね37の復元力によって上入れ子31が下入れ子33から上方に自動的に離間する。
【0047】
続いて、図4の矢印で示すように、搬送装置(図示略)によって、下型10から入れ子型30を取り出す(取り出し工程)。
なお、台座部11及びホルダ12が本発明に係る下型本体に相当する。また、ばね15が、本発明に係る付勢部材、より詳しくは、下型10のクッションピン14を付勢する付勢部材に相当する。また、ばね37が、本発明に係る保持部に相当する。
【0048】
本実施形態の作用効果について説明する。
(1)成形装置50は、固定型である下型10と、下型10に対して上下方向Zにおいて接離可能な上型20と、下型10の上に載置可能な入れ子型30とを備えている。下型10及び上型20の内部には、冷却回路13,23が設けられている。入れ子型30は、下入れ子33と、下入れ子33の上方に載置される上入れ子31とを有している。下入れ子33の上面には、ワーク60を成形する下側成形面34が設けられており、上入れ子31の下面には、ワーク60を成形する上側成形面32が設けられている。
【0049】
こうした構成によれば、入れ子型30ごとワーク60を予め加熱した後に下型10の上に載置することができる。このため、加熱されたワーク60のみを下型10の上に移動させてプレスをする場合に比べて、ワーク60の放熱を抑制できるので、プレスされる際のワーク60を高温に保つことができる。これにより、ワーク60を構成する樹脂材料の流動性が高められるため、ワーク60の成形性が向上する。
【0050】
また、冷却回路13,23内に冷媒を流通させることによって下型10及び上型20、並びに入れ子型30を介してワーク60が冷却される。これにより、ワーク60の冷却を速やかに行うことができる。
【0051】
ここで、上記構成によれば、下型10の上とは別の場所で入れ子型30及びワーク60を予め加熱しておくことができる。また、下型10及び上型20を冷却できるため、入れ子型30からの受熱によって下型10及び上型20が高温となることを抑制できる。これにより、下型10及び上型20型の冷却に要する時間を短縮できるため、次のワーク60を熱プレス成形するまでの時間を短縮できる。したがって、生産性が向上する。
【0052】
(2)入れ子型30は、入れ子型30に対してプレス荷重が作用していない状態において、上入れ子31を下入れ子33から上方に離れた位置に保持する保持部を備えている。
こうした構成によれば、入れ子型30に対してプレス荷重が作用していない状態において、保持部によって、上入れ子31が下入れ子33から上方に離れた位置に保持される。このため、下入れ子33の下側成形面34の上にワーク60を容易に載置できる。
【0053】
(3)上述した保持部は、下入れ子33に対して上入れ子31を上方に向けて付勢するばね37である。
こうした構成によれば、入れ子型30に対してプレス荷重が作用していない状態において、ばね37によって下入れ子33に対して上入れ子31が上方に向けて付勢されることで、上入れ子31を下入れ子33から上方に離れた位置に保持できる。また、入れ子型30に対してプレス荷重が作用すると、ばね37が圧縮されることで上入れ子31が下入れ子33に近づくように移動することで、下側成形面34と上側成形面32とによってワーク60がプレスされる。したがって、上述した保持部を簡単な構成で具現化できる。
【0054】
(4)入れ子型30は、下入れ子33に対して上入れ子31を上下方向Zに移動可能に支持するシャフト35を備えている。また、シャフト35の外周は、ばね37に覆われている。
【0055】
こうした構成によれば、入れ子型30がプレスされる際に、下入れ子33に対する上入れ子31の上下方向Zにおける移動がシャフト35によって支持されるため、上入れ子31が上下方向Zに対して直交する方向に移動することを抑制できる。したがって、下側成形面34と上側成形面32とを的確に位置合わせすることができる。
【0056】
また、ばね37がシャフト35の外周を覆うように設けられる。このため、入れ子型30においてばね37をコンパクトに配置できる。
(5)下型10は、台座部11と、ホルダ12と、ホルダ12の上面に開口する四つのピン穴16と、ピン穴16の各々に挿入される四つのクッションピン14と、クッションピン14の各々を上方に向けて付勢する四つのばね15とを有している。クッションピン14に対してプレス荷重が作用していない状態において、クッションピン14がホルダ12の上面から突出しており、クッションピン14に対してプレス荷重が作用することでクッションピン14がピン穴16の内部に進入する。また、入れ子型30は、クッションピン14に対してプレス荷重が作用していない状態において、クッションピン14の各々にのみ当接している。
【0057】
こうした構成によれば、ワーク60を含む入れ子型30が下型10の上に載置された状態において、入れ子型30は、クッションピン14の各々にのみ当接する。すなわち、入れ子型30は、ホルダ12から上方に浮いた状態となる。このため、入れ子型30からホルダ12及び台座部11への熱の移動が抑制される。これにより、プレスされる際のワーク60を一層高温に保つことができる。
【0058】
また、クッションピン14に対してプレス荷重が作用すると、クッションピン14がピン穴16の内部に進入するようになるため、入れ子型30がホルダ12に接触するようになる。これにより、入れ子型30からホルダ12及び台座部11への熱の移動が促進されることでワーク60の冷却を一層速やかに行うことができる。
【0059】
(6)成形装置50を用いてワーク60を熱プレス成形する方法は、下型10の上とは別の場所で、下側成形面34上にワーク60を載置した状態でワーク60及び入れ子型30をホットプレート40で加熱する加熱工程と、下型10の上に入れ子型30を載置する載置工程と、下型10に近づくように上型20を移動させることで入れ子型30をプレスすると同時に、入れ子型30の熱を下型10及び上型20に移動させることで入れ子型30及びワーク60を冷却する型締め冷却工程と、下型10から離れるように上型20を移動させる型開き工程と、下型10から入れ子型30を取り出す取り出し工程とを備える。
【0060】
こうした方法によれば、入れ子型30ごとワーク60が予め加熱された後に下型10の上に載置される。このため、加熱されたワーク60のみを下型10の上に移動させてプレスをする場合に比べて、ワーク60の放熱を抑制できるので、プレスされる際のワーク60を高温に保つことができる。これにより、ワーク60を構成する樹脂材料の流動性が高められるため、ワーク60の成形性が向上する。
【0061】
また、冷却回路13,23内に冷媒を流通させることによって下型10及び上型20、並びに入れ子型30を介してワーク60が冷却される。これにより、ワーク60の冷却を速やかに行うことができる。
【0062】
ここで、上記方法によれば、下型10の上とは別の場所で、入れ子型30及びワーク60を予め加熱しておくことができる。また、下型10及び上型20を冷却できるため、入れ子型30からの受熱によって下型10及び上型20が高温となることを抑制できる。これにより、下型10及び上型20の冷却に要する時間を短縮できるため、次のワーク60を熱プレス成形するまでの時間を短縮できる。したがって、熱プレス成形の生産性が向上する。
【0063】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0064】
・クッションピン14の数を適宜変更することができる。
・クッションピン14,24、ばね15,25、及びピン穴16,26を省略することもできる。
【0065】
・ばね37は、シャフト35の外周を覆うものに限定されず、シャフト35とは異なる位置に設けられていてもよい。
・シャフト35を省略し、ばね37のみを設けるようにしてもよい。
【0066】
・付勢部材は、金属製のばね37に限定されず、耐熱性のゴムなどによって構成することもできる。
・保持部は、付勢部材に限定されない。保持部としては、入れ子型30に対してプレス荷重が作用していない状態において、上入れ子31を下入れ子33から上方に離れた位置に保持するものであればよく、ヒンジ機構などによって構成することもできる。
【0067】
・保持部を省略してもよい。この場合、加熱工程において下入れ子33の下側成形面34上にワーク60を載置する際に、入れ子型30とは別の装置によって上入れ子31を下入れ子33から上方に離れた位置に保持すればよい。
【0068】
・上記実施形態では、下型10を固定型とし、上型20を可動型としたが、下型10を可動型とし、上型20を固定型とすることもできる。
・成形装置50は、燃料電池のセパレータを製造するものに限定されない。要するに、樹脂材料を含むワーク60を熱プレス成形するものであればよい。
【符号の説明】
【0069】
10…下型
11…台座部(下型本体)
12…ホルダ(下型本体)
13…冷却回路
14…クッションピン
15…ばね(付勢部材)
16…ピン穴
17…熱交換器
20…上型
21…台座部
22…ホルダ
23…冷却回路
24…クッションピン
25…ばね(付勢部材)
26…ピン穴
27…熱交換器
28…シャフト穴
30…入れ子型
31…上入れ子
32…上側成形面
32a…突条
33…下入れ子
34…下側成形面
34a…凹部
35…シャフト
36…挿通孔
37…ばね(保持部)
40…ホットプレート
50…成形装置
60…ワーク
図1
図2
図3
図4