(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】積層不織布および衛生材料
(51)【国際特許分類】
D04H 1/4374 20120101AFI20250408BHJP
D04H 1/4391 20120101ALI20250408BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20250408BHJP
D04H 3/018 20120101ALI20250408BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20250408BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20250408BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20250408BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20250408BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
D04H1/4374
D04H1/4391
D04H3/16
D04H3/018
B32B5/02 C
B32B5/26
A41D13/11 Z
A61F13/511 300
A62B18/02
(21)【出願番号】P 2021513472
(86)(22)【出願日】2021-01-18
(86)【国際出願番号】 JP2021001466
(87)【国際公開番号】W WO2021153312
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2020012293
(32)【優先日】2020-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】森岡 英樹
(72)【発明者】
【氏名】梶原 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】船津 義嗣
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/159421(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/027493(WO,A1)
【文献】特開平01-192803(JP,A)
【文献】特開平09-076656(JP,A)
【文献】特開平09-085872(JP,A)
【文献】特開2016-089291(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00-18/04
B32B 1/00-43/00
A41D 13/11
A61F 13/511
A62B 18/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)と第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)とが、それぞれ少なくとも1層積層された積層不織布であって、第1の熱可塑性樹脂繊維の断面は複数の凸状部を有し、かつ、前記断面のローバル度が5%以上である異形断面であり、第1の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Daに対する第2の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Dbの比(Db/Da)が1.0以上であり、さらに、前記不織布層(B)が少なくとも一方の最表層
であり、衛生材料の肌面側に積層されてなる、
衛生材料用積層不織布。
【請求項2】
前記積層不織布の少なくとも一方の表面から測定された吸水速度が20秒以下である、請求項1に記載の
衛生材料用積層不織布。
【請求項3】
少なくとも一部が請求項1または2に記載の
衛生材料用積層不織布で構成されてなる、衛生材料。
【請求項4】
トップシートが請求項1または2に記載の
衛生材料用積層不織布で構成されてなる、おむつ。
【請求項5】
内面層が請求項1または2に記載の
衛生材料用積層不織布で構成されてなる、マスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水速乾性に優れ、特に衛生材料用途に好適な異断面積層不織布およびこれを使用した衛生材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に紙おむつや生理用ナプキン、マスク等の衛生材料は、尿や汗などの水分を素早く取り除き、部材表面をドライに保つことにより、人体にとって快適な衛生材料となる。
【0003】
このため、直接肌に触れる表面部材は、水分を素早く吸収する「吸水性」と吸収した水分を最表面層から移行させ、表面をドライな状態にする「速乾性」の両立が必要である。
【0004】
従来、この表面部材には、親水化処理を施した各種不織布が広く使用されてきた。これらは、最表面層から内層の不織布や吸収体へ水分を誘導できるが、最表面層に水分が残存しやすく、「速乾性」に劣るものであった。
【0005】
最表面層に水分が残存しにくく、「速乾性」に優れた表面部材にするため、特許文献1では、丸断面の細繊度繊維からなるウェブ層(肌面側)と、異形断面の太繊度繊維からなるウェブ層とを積層させた不織布が提案されている。また、特許文献2では、繊維密度が異なるシートを積層させ、繊維密度の低いシートを肌触れる表面層としたシートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-31137号公報
【文献】特開平1-20844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、肌面側の細繊度繊維からなるウェブ層が緻密な構造となるため、透液性が低下し、水分を迅速に吸収することができず、「吸水性」を得ることが困難である。さらに、細繊度側の緻密な繊維間空隙に水分が残存しやすく、「速乾性」を得ることが困難である。
【0008】
一方、特許文献2に記載された技術では、繊維密度ごとで異なる毛細管効果の差により、最表面層に吸収した水分を一定量、第2層(肌面と逆の層)に誘導することが可能である。しかしながら、第2層においては、シート面方向への液拡散性能が乏しいことから、第2層への水分の移行は限定的な効果となり、「速乾性」は不十分なものであった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、衛材用不織布を用いた部材内の快適性を保つために十分な吸水速度を有し、かつ速乾性を有する積層不織布を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、積層不織布において、特定の異形断面繊維からなる不織布層と特定サイズの繊維からなる不織布層とを特定の構成で積層させることによって、衛材用不織布として用いるのに十分な吸水速乾性を有する、積層不織布が得られるという知見を得た。
【0011】
本発明の積層不織布は、第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)と第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)とが、それぞれ少なくとも1層積層された積層不織布であって、第1の熱可塑性樹脂繊維の断面は複数の凸状部を有し、かつ、前記断面のローバル度が5.0%以上である異形断面であり、第1の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Daに対する第2の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Dbの比(Db/Da)が1.0以上であり、さらに、前記不織布層(B)が少なくとも一方の最表層に積層されてなる。
【0012】
また、本発明の衛生材料は、少なくとも一部が前記の積層不織布から構成されてなる。
【0013】
さらに、本発明のおむつは、トップシートが前記積層不織布で構成されてなる。
【0014】
加えて、本発明のマスクは、内面層が前記積層不織布で構成されてなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の積層不織布は、衛材用不織布として用いるのに十分な吸水速度と、吸水速乾性を有する。本発明の積層不織布を、衛生材料の少なくとも一部として使用することにより、優れた吸水性と優れた速乾性を有する衛生材料を得ることができる。
【0016】
本発明の積層不織布は、紙おむつ、生理用ナプキン、ガーゼ、包帯、マスク、手袋、絆創膏等の衛生材料の一部として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の積層不織布の不織布層(A)を構成する第一の熱可塑性樹脂繊維の断面の一例であり、複数の凸状部を有する繊維断面を説明するための図である。
【
図2】本発明の積層不織布の不織布層(A)を構成する第一の熱可塑性樹脂繊維の断面の一例であり、繊維断面におけるローバル度を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の積層不織布は、第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)と第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)とが、それぞれ少なくとも1層積層された積層不織布であって、第1の熱可塑性樹脂繊維の断面は複数の凸状部を有し、かつ、前記断面のローバル度が5.0%以上である異形断面であり、第1の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Daに対する第2の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Dbの比(Db/Da)が1.0以上であり、さらに、前記不織布層(B)が少なくとも一方の最表層に積層されてなる。以下に、その構成要素について詳細に説明する。
【0019】
[熱可塑性樹脂繊維]
本発明の積層不織布は、第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)と第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)とからなる。
【0020】
これらの第1の熱可塑性樹脂繊維、第2の熱可塑性樹脂繊維において、「熱可塑性樹脂繊維」とは、熱可塑性樹脂からなる繊維のことを指す。このような熱可塑性樹脂は1種類であってもよいし、複数の熱可塑性樹脂からなるものであってもよい。
【0021】
本発明に係る熱可塑性樹脂繊維に用いられる熱可塑性樹脂の例としては、「ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート」等の芳香族ポリエステル系ポリマーおよびその共重合体、「ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシブチレート-ポリヒドロキシバリレート共重合体、ポリカプロラクトン」等の脂肪族ポリエステル系ポリマーおよびその共重合体、「ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド10、ポリアミド12、ポリアミド6-12」等の脂肪族ポリアミド系ポリマーおよびその共重合体、「ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン」等のポリオレフィン系ポリマーおよびその共重合体、エチレン単位を25モル%から70モル%含有する水不溶性のエチレン-ビニルアルコール共重合体系ポリマー、ポリスチレン系、ポリジエン系、塩素系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、フッ素系のエラストマー系ポリマー等である。熱可塑性樹脂は、これらの中から選んで用いることができる。また、上記のポリマーにおいては、酸化チタン、シリカ、酸化バリウムなどの無機質、カーボンブラック、染料や顔料などの着色剤、難燃剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、あるいは紫外線吸収剤などの各種添加剤をポリマー中に含んでいてもよい。
【0022】
本発明に係る熱可塑性樹脂繊維に用いられる熱可塑性樹脂では、その少なくとも一部が、脂肪酸アミド化合物が含有されていることが好ましい。脂肪酸アミド化合物の含有量は、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上とすることにより、脂肪酸アミド化合物が繊維表面において滑剤として作用するため、触感に優れた積層不織布とすることができる。なお、本発明における脂肪酸アミド化合物の含有量の上限は特に制限されないが、コストや生産性の観点から5.0質量%以下が好ましい。
【0023】
本発明において、熱可塑性樹脂に含有される脂肪酸アミド化合物の含有量は、好ましくは、0.5~5.0質量%、より好ましくは0.7質量%~5.0質量%、さらに好ましくは1.0質量%~5.0質量%である。
【0024】
本発明に係る熱可塑性樹脂繊維に用いられる熱可塑性樹脂は、前記の脂肪酸アミド化合物を含有する場合において、脂肪酸アミド化合物の炭素数が15以上50以下であることが好ましい。炭素数が15以上50以下の脂肪酸アミド化合物としては、飽和脂肪酸モノアミド化合物、飽和脂肪酸ジアミド化合物、不飽和脂肪酸モノアミド化合物、および不飽和脂肪酸ジアミド化合物などが挙げられる。本発明における炭素数とは、分子中に含まれる炭素数を意味する。脂肪酸アミド化合物は、具体的には、パルミチン酸アミド、パルミトレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エライジン酸アミド、バクセン酸アミド、リノール酸アミド、リノレン酸アミド、ピノレン酸アミド、エレオステアリン酸アミド、ステアリドン酸アミド、ボセオペンタエン酸アミド、アラキジン酸アミド、ガドレイン酸アミド、エイコセン酸アミド、エイコサジエン酸アミド、ミード酸アミド、エイコサトリエン酸アミド、アラキドン酸アミド、エイコサテトラエン酸アミド、エイコサペンタエン酸アミド、ヘンイコシル酸アミド、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、ドコサジエン酸アミド、アドレン酸アミド、オズボンド酸アミド、イワシ酸アミド、ドコサヘキサエン酸アミド、リグノセリン酸アミド、ネルボン酸アミド、テトラコサペンタエン酸アミド、ニシン酸アミド、セロチン酸アミド、モンタン酸アミド、メリシン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンヒドロキシステアリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、ジステアリルセバシン酸アミド、およびヘキサメチレンビスオレイン酸アミドなどが挙げられ、これらを複数組み合わせて用いることができる。脂肪酸アミド化合物の炭素数を好ましくは15以上、より好ましくは23以上、さらに好ましくは30以上とすることにより、脂肪酸アミド化合物が過度に繊維表面に析出することを抑制し、紡糸性と加工安定性に優れ、高い生産性を保持することができる。また、脂肪酸アミド化合物の炭素数を好ましくは50以下、より好ましくは45以下、さらに好ましくは42以下とすることにより、脂肪酸アミド化合物が適度に繊維表面に析出するため、触感に優れた積層不織布となる。脂肪酸アミド化合物の炭素数は、好ましくは、15~50、より好ましくは23~45、さらに好ましくは30~42である。
【0025】
第1の熱可塑性樹脂繊維と第2の熱可塑性樹脂繊維は、構成する熱可塑性樹脂が同一であっても、異なっていてもよい。
【0026】
[第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)]
本発明の積層伸縮不織布に係る不織布層(A)は、前記の第1の熱可塑性樹脂繊維からなり、この第1の熱可塑性樹脂繊維の断面は複数の凸状部を有する。
【0027】
ここで言う、繊維の断面が複数の凸状部を有するとは、以下に説明する断面形状のことであり、
図1を用いて説明する。
【0028】
図1には、複数の凸状部を有する繊維断面の一例を示している。この繊維断面において、断面の輪郭(C1)上のある2点(S11、S12)を通る直線であって、S11とS12との2点間の線分が輪郭(C1)の中を通らない線(例えば、L11)を少なくとも2本引くことができる断面形状を意味する。
【0029】
上記のような断面形状は、複数の凸部を有する繊維断面である。このような繊維断面とすることで、繊維側面に繊維軸方向に連続した溝が形成されることとなる。複数の凸部を有する繊維断面が、本発明の効果を発揮するための肝となる要素の一つである。すなわち、この様な繊維を不織布とした場合には、繊維側面の溝部分が通液パスとなるため、これまで困難であった不織布面方向への水分を拡散が可能となる。このため、本発明の積層不織布では、面方向へ水分を拡散できる不織布層(A)を含むことで、吸水速度および表面層からの液移行を格段に向上させることができる。
【0030】
この面方向への水分拡散効果を顕著なものとするためには、繊維断面の凸部の形態が重要であり、繊維断面のローバル度が5.0%以上である異形断面であることも重要である。
【0031】
繊維断面のローバル度とは、以下に説明する手法にて測定されるものであり、
図2を用いて詳細に説明する。
【0032】
図2には、本発明の積層不織布に係る不織布層(A)を構成する繊維の断面の一例を示している。
【0033】
まず、不織布層(A)を構成する繊維の横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で1本の単繊維が観察できる倍率として画像を撮影する。撮影された繊維断面画像を用いて、同一断面内で断面の輪郭(
図2のC2)上のある2点(
図2のS21、S22)を通る直線であって、S21とS22との2点間の線分が輪郭(C2)の中を通らない線(例えば、
図2のL21)を引き、点S21とS22間の距離a(単位はμm)を測定する。次に、直線(L21)に平行で、かつ、輪郭(C2)のうち点S21と点22の間において交点(V21)が1点しかない線(例えば、L22)を引く。そして、この直線(L21)と直線(L22)との間の距離b(単位はμm)を測定する。さらに、aに対するbの比の百分率(b/a×100、単位は%)を求めた。これと同様の動作を、異なる20本の繊維に対して行った結果の単純な数平均を求め、小数点第2位を四捨五入した値が本発明で言うローバル度である。
【0034】
ローバル度は値が高い程、繊維側面に深い溝を有することを示している。ローバル度が高い程、不織布とした際の面方向への水分拡散効果が高くなることから、ローバル度は10.0%以上がより好ましい範囲として挙げられる。製造時の摩擦による凸部の剥離を抑制し、品位良く本発明の積層不織布を得るために、ローバル度は、60%以下であることがより好ましい。さらにより好ましくは、ローバル度は、10~60%である。
【0035】
本発明の不織布層(A)を構成する第1の熱可塑性樹脂繊維は、断面に複数の凸状部を有し、かつ、前記断面のローバル度が5.0%以上である。本発明の不織布層(A)を構成する第1の熱可塑性樹脂からなる繊維は、凸部の形状や繊維1本当たりの凸部の個数は限定されない。
【0036】
繊維側面の溝による不織布面方向への水分拡散効果を十分に作用させる観点から、不織布層(A)を構成する第1の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径は、1.0~25.0μmであることが好ましい。さらに、不織布層を緻密化することで、毛細管効果による吸水性能を向上できるという観点から、第1の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径は20.0μm以下であることがより好ましい。不織布層(A)を構成する第1の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径は、さらにより好ましくは、1.0~20.0μmである。
【0037】
平均単繊維直径は、以下のようにして求める。
【0038】
前述した、繊維断面のローバル度を測定するために撮影した画像を用い、画像解析ソフト(三谷商事社製「WinROOF2015」など)を用いて、単繊維の断面輪郭が形成する面積Afを計測し、この面積Afと同一の面積となる真円の直径を算出する。これを同一の不織布層から任意に抽出した単繊維20本について測定し、単純な数平均を求め、単位をμmとして、小数点第2位を四捨五入した値が本発明で言う平均単繊維直径である。
【0039】
[第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)]
本発明の積層伸縮不織布に係る不織布層(B)は、前記の熱可塑性樹脂繊維から構成される。本発明の不織布層(B)を構成する熱可塑性樹脂繊維は、単成分繊維または複合繊維のいずれであってもよい。
【0040】
繊維断面の形状は、本発明の効果を損ねない限り、自由に選択できる。好ましい繊維断面形状は、丸断面である。繊維断面を丸断面とすることで、不織布層(B)の繊維間空隙を拡張することができ、透液性が向上する。
【0041】
透液性の観点から、不織布層(B)を構成する第2の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径は、3.0~30.0μmであることが好ましい。さらに、衛生材料として使用した場合、表面触感を良好にできるという観点から、第2の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径は25.0μm以下であることがより好ましく、さらに好ましくは、3.0~25.0μmである。
【0042】
[不織布層(A)および不織布層(B)の平均単繊維直径]
本発明の積層不織布は、不織布層(A)を構成する第1の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Daに対する、不織布層(B)を構成する第2の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Dbの比(Db/Da、以下、単に平均単繊維直径比と略することがある)が1.0以上である。
【0043】
不織布層(A)、不織布層(B)を構成する繊維の横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で1本の単繊維が観察できる倍率として画像を撮影し、不織布層(A)を構成する第1の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Daと、不織布層(B)を構成する第2の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Dbを測定した。平均単繊維直径比は、不織布層(A)を構成する第1の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Daと、不織布層(B)を構成する第2の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Dbの比(Db/Da)であり、小数点第2位を四捨五入した値である。
【0044】
一般に、不織布においては、構成する繊維の平均単繊維直径に応じて、繊維同士が織りなす空隙サイズが変化する。このため、平均単繊維直径が異なる不織布層を重ねた場合には繊維間空隙サイズが異なる不織布層が積層されることとなり、水分が付着した場合には、毛細管効果の差により、太い繊維からなる不織布層に吸収された水分を、素早く細い繊維からなる不織布層に移行させることができる。
【0045】
この毛細管効果が作用し、良好な吸水性能を得るため、平均単繊維直径の比(Db/Da)は1.0以上であり、1.2以上とすることが好ましい。
【0046】
[積層不織布]
本発明の積層不織布は、前記の不織布層(A)と不織布層(B)とが、それぞれ少なくとも1層積層された積層不織布であって、前記不織布層(B)が少なくとも一方の最表層に積層されてなる。
【0047】
平均単繊維直径が大きく、不織布層内の繊維間空隙が大きくなる不織布層(B)を最表層に積層させることで、不織布層(B)側に水分が付着した場合には、速やかに不織布層(A)に水分が移行されるため、不織布層(B)側の最表面では速乾性を得ることができる。
【0048】
本発明の積層不織布は、少なくとも一方の表面から測定された吸水速度が20秒以下であることが好ましい。
【0049】
吸水速度は、JIS L1907:2010「繊維製品の吸水性試験方法」の「7.1.1 滴下法」に基づき測定されるものである。積層不織布に水滴を1滴滴下し、吸収されて表面の鏡面反射が消失するまでの時間を測定し、これを異なる10箇所で測定した値の単純平均を算出し、単位を秒として、小数点第1位を四捨五入した値を、吸水速度とする。
【0050】
吸水速度が20秒以下であることは、表面に付着した水分を取り除く性能が良好であることを示す。吸水速度は、より好ましくは、10秒以下である。
【0051】
本発明の積層不織布の目付は、10~100g/m2とすることが好ましい。
【0052】
目付を、好ましくは10g/m2以上、より好ましくは13g/m2以上、さらに好ましくは15g/m2以上とすることにより、実用に供し得る機械的強度の積層不織布を得ることができる。一方、目付を、好ましくは100g/m2以下、より好ましくは50g/m2以下とすることにより、衛生材料用の不織布としての使用に適した適度な柔軟性を有する積層不織布とすることができる。本発明の積層不織布の目付は、好ましくは、13~50g/m2である。
【0053】
積層不織布の目付(g/m2)は、JIS L1913:2010「一般不織布試験方法」の「6.2 単位面積当たりの質量」に基づき、20cm×25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3枚採取し、標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、その平均値から算出する1m2当たりの質量を指す。
【0054】
本発明の積層不織布は、これらの不織布層(A)と不織布層(B)とが一体化していることが好ましい。ここでいう一体化とは、これらの層が繊維同士の交絡、接着剤等の成分による固定、それぞれの層を構成する熱可塑性樹脂同士の融着によって接合しているものである。
【0055】
本発明の積層不織布は、吸水性をより高くすることを目的として、親水剤を付与しても良い。
【0056】
[衛生材料]
本発明の衛生材料は、少なくとも一部が前記の積層不織布から構成されるものである。本発明の衛生材料は、優れた吸水性と優れた速乾性を有する。本発明の衛生材料は、医療・介護など健康に関わる目的で使用される、主に使い捨ての物品である。本発明の衛生材料は、紙おむつ、生理用ナプキン、ガーゼ、包帯、マスク、手袋、絆創膏等が挙げられ、その構成部材、例えば、紙おむつのトップシート、バックシート、サイドギャザー等も含まれる。中でも、以下の態様が好適な態様として挙げられる。
【0057】
本発明の衛生材料の第1の好適な実施態様は、トップシートが前記の積層不織布で構成されてなる、おむつである。特に前記の積層不織布を、不織布層(B)がおむつのトップシートの肌面側として設置されるように用いた場合には、排泄された尿を素早く吸収し、不織布層(A)に迅速に液が移行されるため、積層不織布の表面をドライに保つことができる。
【0058】
本発明の衛生材料の第2の好適な実施態様は、内面層が前記の積層不織布で構成されてなる、マスクである。本発明でいう内面層とは、口を覆う面体のうち、最も口側に設置される層のことを指す。前記の積層不織布を、不織布層(B)が肌面側として設置されるように用いた場合には、汗や呼気が結露し、肌面側に水分が付着しても、積層不織布内部にすぐに吸収され、肌面をドライに保つことができるため、着用した際の不快感がなく、好ましい使用用途として挙げられる。
【0059】
[積層不織布の製造方法]
次に、本発明の積層不織布を製造する好ましい態様を、具体的に説明する。
【0060】
本発明の積層不織布を構成する不織布層(A)および不織布層(B)の製造法は、スパンボンド法、メルトブロー法、短繊維カード法などの公知の製造法から選ぶことができる。
【0061】
中でも、スパンボンド法は生産性に優れるため、好ましい手法として挙げられる。
【0062】
以下、スパンボンド法に基づいて本発明の積層不織布を製造する好ましい様態を説明するが、これに限定されるものではない。
【0063】
スパンボンド法とは、原料である熱可塑性樹脂を溶融し、紡糸口金から紡糸した後、冷却固化して得られた糸条に対し、エジェクターで牽引し延伸して、移動するネット上に捕集して不織繊維ウェブ化した後、熱接着する工程を要する不織布の製造方法である。
【0064】
スパンボンド法において、用いられる紡糸口金やエジェクターの形状は、丸形や矩形等種々のものを採用することができる。中でも、圧縮エアの使用量が比較的少なく、糸条同士の融着や擦過が起こりにくいという観点から、矩形口金と矩形エジェクターの組み合わせを用いることが好ましい。
【0065】
さらに、紡糸口金に具備されたポリマー吐出の形状を変化させることで、繊維断面の形状を制御することができるため、本発明の積層不織布における不織布層(A)の製造に好ましい。
【0066】
本発明の積層不織布を製造する場合、紡糸温度は、(原料である熱可塑性樹脂の融解温度+10℃)以上(原料である熱可塑性樹脂の融解温度+100℃)以下とすることが好ましい。紡糸温度を上記範囲内とすることにより、安定した溶融状態とし、優れた紡糸安定性を得ることができる。
【0067】
紡出された糸条は、次に冷却される。紡出された糸条を冷却する方法としては、例えば、冷風を強制的に糸条に吹き付ける方法、糸条周りの雰囲気温度で自然冷却する方法、および紡糸口金とエジェクター間の距離を調整する方法等が挙げられ、またはこれらの方法を組み合わせる方法を採用することができる。また、冷却条件は、紡糸口金の単孔あたりの吐出量、紡糸する温度および雰囲気温度等を考慮して適宜調整することができる。
【0068】
次に、冷却固化された糸条は、エジェクターから噴射される圧縮エアによって牽引され、延伸される。
【0069】
本発明の積層不織布では、不織布層(A)および不織布層(B)を構成する繊維の平均単繊維直径の制御が重要である。
【0070】
繊維の平均単繊維直径は、紡糸口金の吐出孔当たりの吐出量と牽引速度、すなわち紡糸速度によって決定される。このため、所望の平均単繊維直径に応じて、吐出量と紡糸速度を決定することが好ましい。
【0071】
紡糸速度は、2000m/分以上であることが好ましく、より好ましくは3000m/分以上である。紡糸速度を2000m/分以上とすることにより、高い生産性を有することになり、また繊維の配向結晶化が進み高い強度の長繊維を得ることができる。
【0072】
このように牽引により延伸された長繊維糸条は、移動するネットに捕集されることでシート化された後に、熱接着する工程に供される。
【0073】
本発明の積層不織布は、不織布層(A)と不織布層(B)をそれぞれ少なくとも1層積層することにより得られる積層不織布である。2つの不織布層を積層する方法としては、例えば、上記のとおり捕集ネット上にスパンボンド法により第1の熱可塑性樹脂繊維を捕集して得た不織布層の上に、スパンボンド法により第2の熱可塑性樹脂繊維を捕集して得た不織布層をインラインで連続的に捕集し、積層一体化する方法、別々に得た不織布層(A)および不織布層(B)をオフラインで重ね合わせ、熱圧着などにより積層一体化する方法などを採用することができる。中でも、捕集ネット上にスパンボンド法により第1の熱可塑性樹脂繊維を捕集して得た不織布層の上に、スパンボンド法により第2の熱可塑性樹脂繊維を捕集して得た不織布層をインラインで連続的に捕集、熱接着により積層一体化する方法が、生産性に優れているので、好ましい。
【0074】
本発明の積層不織布を熱接着により積層一体化する方法としては、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻(凹凸部)が施された熱エンボスロール、片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻(凹凸部)が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロール、および上下一対のフラット(平滑)ロールの組み合わせからなる熱カレンダーロールなど、各種ロールにより熱接着する方法や、ホーンの超音波振動により熱溶着させる超音波接着などの熱圧着による方法を採用することができる。
【0075】
熱圧着により本発明の積層不織布を製造した場合には、複数の不織布層が十分に接着されることで、積層不織布の機械強度が増すため、好ましい。
【0076】
一方で、本発明の積層不織布を熱接着により積層一体化する方法として、熱風を吹き付ける手法である、いわゆるエアスルー法も挙げることができる。
【0077】
このエアスルー法で本発明の積層不織布を製造した場合には、嵩高く、風合いに優れるため、好ましい。
【0078】
本発明の積層不織布では、少なくとも一方の表層に不織布層(B)が積層されていれば良く、その層の数や組合せについては、目的に応じて任意の構成を採用することができる。
【実施例】
【0079】
次に、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、各物性の測定において、特段の記載がないものは、前述の方法に基づいて測定を行ったものである。
【0080】
(1) 繊維断面のローバル度
ネット上に捕集した不織繊維ウェブからランダムに単繊維サンプル採取し、繊維の横断面を日立ハイテクノロジーズ社製の走査型電子顕微鏡(SEM)「S-5500」で1本の繊維が観察できる倍率として画像を撮影した。
【0081】
(2) 第1の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Daに対する第2の熱可塑性樹脂繊維の平均単繊維直径Dbの比(Db/Da)
画像解析ソフトとして、三谷商事社製「WinROOF2015」を用いた。
【0082】
(3) 吸水速度
吸水速度は、JIS L1907:2010「繊維製品の吸水性試験方法」の「7.1.1 滴下法」に基づき測定した。積層不織布に水滴を1滴滴下し、吸収されて表面の鏡面反射が消失するまでの時間を測定し、これを異なる10箇所で測定した値の単純平均を算出し、単位を秒として、小数点第1位を四捨五入した。
【0083】
(4) 吸水速乾性
積層不織布において、不織布層(B)の面に水滴を1滴滴下し、1分間経過した後の表面のドライ感について、健康な一般成人(男女15名ずつ計30名)が手で触り、次の3段階で評価した。各不織布について評価結果の平均点を算出し、その積層不織布の肌触りとした。
5: 表面ドライであり、水分を感じない
3: 表面に水分はないが、しっとりしている
1: 表面に水分があり、しっとりしている 。
【0084】
[実施例1]
(不織布層(A))
ポリプロピレン(PP)を押出機で溶融し、六葉断面繊維として、矩形口金から、単孔吐出量が0.56g/分で紡出した。紡出した糸条を、冷却固化した後、矩形エジェクターにおいてエジェクターでの圧力を0.08MPaとした圧縮エアによって、牽引・延伸し、移動するネット上に捕集して不織繊維ウェブを得た。得られたスパンボンド不織布層(A)を構成する繊維の特性は、平均単繊維直径が15.5μmであり、ローバル度は8.8であった。
【0085】
(不織布層(B))
ポリプロピレン(PP)を押出機で溶融し、丸断面繊維として、孔径が0.4mmの矩形口金から、単孔吐出量が0.90g/分で紡出した。紡出した糸条を、冷却固化した後、矩形エジェクターにおいてエジェクターでの圧力を0.10MPaとした圧縮エアによって、牽引・延伸し、移動するネット上に捕集して不織繊維ウェブを得た。得られたスパンボンド不織布層(B)を構成する繊維の特性は、平均単繊維直径が20.4μmであった。
【0086】
(積層不織布)
上記で得られた不織布層(A)の上に直接不織布層(B)を捕集する(表1では積層方法について「インライン」と記載した)ことにより、スパンボンド不織布層-スパンボンド不織布層の2層構造(表1では積層構成について「A/B」と表記した)の積層繊維ウェブを得た。
【0087】
このようにして得られた積層繊維ウェブを、上ロールに正円形の凸部がMDおよびCDの両方向に同じピッチで千鳥配置された金属製エンボスロールを用い、下ロールに金属製フラットロールで構成される上下一対の加熱機構を有するエンボスロールを用いて、線圧が300N/cmで、熱接着温度が125℃の温度で熱接着し、目付が40g/m2の積層不織布を得た。
【0088】
得られた積層不織布について、親水加工を施した後に、平均単繊維直径比、吸水速度、吸水速乾性を評価した。結果を表1に示す。
【0089】
[実施例2]
不織布層Aの繊維断面を三葉断面とした以外は、実施例1と同様にして積層不織布を得た。得られた積層不織布の評価結果を表1に示す。
【0090】
[実施例3]
不織布層Bの製法で単孔吐出量を0.65g/分とした以外は実施例1と同様にして積層不織布を得た。得られた積層不織布の評価結果を表1に示す。
【0091】
[実施例4]
実施例1と同様の方法で不織布層(A)の繊維をコンベア上に捕集し、実施例1と同様の方法で熱接着をし、不織布層(A)を得た。不織布層(B)についても同様に、実施例1と同様の方法で不織布層(B)の繊維をコンベア上に捕集し、実施例1と同様の方法で熱接着をし、不織布層(B)を得た。このようにして得た不織布層(A)および不織布層(B)を積層させ(表1では積層方法について「オフライン」と記載した)、実施例1と同様の方法で熱接着することで積層不織布を得た。得られた積層不織布の評価結果を表1に示す。
【0092】
[実施例5]
不織布層(A)および不織布層(B)に使用するポリマーを、ポリエチレングリコール共重合ポリエチレンテレフタレート(共重合PET、ポリエチレングリコールの共重合率がポリマーの8質量%である)とした。
【0093】
(不織布層(A))
ポリマーを共重合PETとした以外は実施例1と同様にして不織繊維ウェブを得た。得られたスパンボンド不織布層(A)を構成する繊維の特性は、平均単繊維直径が12.5μmであり、ローバル度は22.2であった。
【0094】
(不織布層(B))
ポリマーを共重合PETとした以外は実施例1と同様にして不織繊維ウェブを得た。得られたスパンボンド不織布層(B)を構成する繊維の特性は、平均単繊維直径が16.9μmであった。
【0095】
(積層不織布)
熱接着温度を200℃とした以外は実施例1と同様の方法にて積層不織布を得た。得られた積層不織布の評価結果を表2に示す。
【0096】
[実施例6]
以下に記載する不織布層(C)の上に、実施例1と同様の方法で不織布層(A)を捕集し、さらにその上に不織布層(B)を捕集し、実施例1と同様の方法で熱接着をすることで積層不織布を得た(表2では積層構成について「C/A/B」と表記した)。得られた積層不織布の評価結果を表2に示す。
【0097】
(不織布層(C))
ポリプロピレン(PP)を押出機で溶融し、丸断面繊維として、孔径が0.4mmの矩形口金から、単孔吐出量が0.65g/分で紡出した。紡出した糸条を、冷却固化した後、矩形エジェクターにおいてエジェクターでの圧力を0.10MPaとした圧縮エアによって、牽引・延伸し、移動するネット上に捕集して不織繊維ウェブを得た。得られたスパンボンド不織布層(C)を構成する繊維の特性は、平均単繊維直径が16.0μmであった。
【0098】
[比較例1]
不織布層(A)にて使用する口金の吐出孔形状を丸型とした以外は、実施例1と同様の方法で積層不織布を得た。不織布層(A)の繊維はいずれも丸断面であり、ローバル度を測定することができなかった。得られた積層不織布の評価結果を表2に示す。
【0099】
[比較例2]
不織布層(B)の製法において、単孔吐出量を0.55g/分、エジェクターでの圧力を0.08MPaとした以外は実施例1と同様にして積層不織布を得た。不織布層(B)の繊維は平均単繊維直径が15.0μmであった。得られた積層不織布の評価結果を表2に示す。
【0100】
[比較例3]
以下に記載する不織布層(C)の上に、実施例1と同様の方法で不織布層(B)を捕集、さらにその上に不織布層(A)を捕集した不織繊維ウェブを、実施例1と同様の方法で熱接着することで、積層不織布を得た(表2では積層構成について「A/B/C」と表記した)。得られた積層不織布の評価結果を表2に示す。
【0101】
(不織布層(C))
ポリプロピレン(PP)を押出機で溶融し、丸断面繊維として、孔径が0.4mmの矩形口金から、単孔吐出量が0.55g/分で紡出した。紡出した糸条を、冷却固化した後、矩形エジェクターにおいてエジェクターでの圧力を0.08MPaとした圧縮エアによって、牽引・延伸し、移動するネット上に捕集して不織繊維ウェブを得た。得られたスパンボンド不織布層(C)を構成する繊維の特性は、平均単繊維直径が15.0μmであった。
【0102】
【0103】
【0104】
表1~2に示すとおり、実施例1~6については、吸水速乾性に優れていることが分かる。特に、実施例1および実施例5、実施例6については、吸水速度と吸水速乾性を高いレベルで両立するものであった。一方、比較例1~3については、吸水速乾性が低い結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の積層不織布は、衛材用不織布として用いるのに十分な吸水速度を有し、かつ吸水速乾性を有する。本発明の積層不織布を、衛生材料の少なくとも一部として使用することにより、優れた吸水性と優れた速乾性を有する衛生材料を得ることができる。
【0106】
本発明の積層不織布は、紙おむつ、生理用ナプキン、ガーゼ、包帯、マスク、手袋、絆創膏等の衛生材料の一部として使用することができる。
【符号の説明】
【0107】
C1: 断面の輪郭
L11: 繊維断面において断面の輪郭(C1)上のある2点(S11、S12)を通る直線
S11、S12: 繊維断面において断面の輪郭(C1)上の点
C2: 断面の輪郭
L21: 繊維断面において断面の輪郭(C2)上のある2点(S21、S22)を通る直線
L22: 直線(L21)に平行で、かつ、輪郭(C2)のうち点S21と点22の間において交点(V21)が1点しかない線
S21、S22、V21: 繊維断面において断面の輪郭(C2)上の点
a: 点S21、S22間の距離
b: 直線(L21)と直線(L22)との間の距離