(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】表示体及び表示方法
(51)【国際特許分類】
B42D 25/342 20140101AFI20250408BHJP
B42D 25/351 20140101ALI20250408BHJP
B41M 3/14 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
B42D25/342
B42D25/351
B41M3/14
(21)【出願番号】P 2021566916
(86)(22)【出願日】2020-11-18
(86)【国際出願番号】 JP2020042929
(87)【国際公開番号】W WO2021131414
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-11-01
(31)【優先権主張番号】P 2019236260
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】井ノ口 雅美
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大介
(72)【発明者】
【氏名】耳田 尚道
【審査官】金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-513816(JP,A)
【文献】特開2010-113120(JP,A)
【文献】特開2014-046667(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0149775(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/342
B42D 25/351
B41M 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2部分を含み、前記第1及び第2部分が互いから離間した第1状態と、前記第1及び第2部分が重なり合った第2状態との間で変形可能であり、
前記第1部分は、第1方向に伸びた形状を各々が有し、前記第1方向と交差する第2方向へ交互に且つ規則的に配列した第1及び第2領域を含み、前記第1領域の各々は、光偏向性を有した光偏向構造が設けられた光透過性領域であり、前記第2領域の各々は、平坦な前面及び平坦な背面を有している透明領域であり、
前記第2部分には、前記第1状態において前記第1部分を介することなしに観察した場合に識別が不可能又は困難であり、前記第2状態において前記第1部分を介して観察した場合に識別が可能又は容易な潜像が記録され、
前記光偏向構造はレンチキュラを含ん
だ表示体。
【請求項2】
第1及び第2部分を含み、前記第1及び第2部分が互いから離間した第1状態と、前記第1及び第2部分が重なり合った第2状態との間で変形可能であり、
前記第1部分は、第1方向に伸びた形状を各々が有し、前記第1方向と交差する第2方向へ交互に且つ規則的に配列した第1及び第2領域を含み、前記第1領域の各々は、光偏向性を有した光偏向構造が設けられた光透過性領域であり、前記第2領域の各々は、平坦な前面及び平坦な背面を有している透明領域であり、
前記第2部分には、前記第1状態において前記第1部分を介することなしに観察した場合に識別が不可能又は困難であり、前記第2状態において前記第1部分を介して観察した場合に識別が可能又は容易な潜像が記録され、
前記光偏向構造は、ランダムに配置された複数の凹部又は凸部を含ん
だ表示体。
【請求項3】
前記前面及び前記背面は互いに平行である請求項
1又は2に記載の表示体。
【請求項4】
第1及び第2部分を含み、前記第1及び第2部分が互いから離間した第1状態と、前記第1及び第2部分が重なり合った第2状態との間で変形可能であり、
前記第1部分は、第1方向に伸びた形状を各々が有し、前記第1方向と交差する第2方向へ交互に且つ規則的に配列した第1及び第2領域を含み、前記第1領域の各々は、光偏向性を有した光偏向構造が設けられた光透過性領域であり、前記第2領域の各々は、平坦な前面及び平坦な背面を有している透明領域であり、
前記第2部分には、前記第1状態において前記第1部分を介することなしに観察した場合に識別が不可能又は困難であり、前記第2状態において前記第1部分を介して観察した場合に識別が可能又は容易な潜像が記録され、
前記第1部分は、平坦な第1主面と、その裏面である第2主面とを有し、前記第2主面には、前記第1方向に伸びた形状を各々が有し、前記第2方向へ規則的に配列した複数の突出部が設けられ、
前記複数の突出部の各々の表面は、前記第1方向に伸びた形状を各々が有し、前記第2方向へ配列した第1光散乱面及び第1平坦面を含み、前記第1平坦面及び前記第1光散乱面は向きが互いに異なり、
前記第1部分のうち前記第1光散乱面に対応した領域は前記第1領域の少なくとも一部であり、前記第1部分のうち前記第1平坦面に対応した領域は前記第2領域の少なくとも一部であ
る表示体。
【請求項5】
第1及び第2部分を含み、前記第1及び第2部分が互いから離間した第1状態と、前記第1及び第2部分が重なり合った第2状態との間で変形可能であり、
前記第1部分は、透明材料からなり、平坦な第1主面と、その裏面である第2主面とを有し、前記第2主面には、前記第2主面に平行な第1方向に伸びた形状を各々が有し、前記第2主面に平行であり且つ前記第1方向と交差する第2方向へ規則的に配列した複数の突出部が設けられ、前記複数の突出部の各々の表面は、前記第1方向へ伸びた形状を各々が有し、前記第2方向へ配列した第1光散乱面及び第1平坦面を含み、前記第1平坦面及び前記第1光散乱面は向きが互いに異なり、
前記第2部分には、前記第1状態において前記第1部分を介することなしに観察した場合に識別が不可能又は困難であり、前記第2状態において前記第1部分を介して観察した場合に識別が可能又は容易な潜像が記録された表示体。
【請求項6】
前記第1方向及び前記第2方向に平行な平面に対して前記第1平坦面が成す角度は、前記平面に対して前記第1光散乱面が成す角度と等しい請求項
4又は5に記載の表示体。
【請求項7】
前記第1方向及び前記第2方向に平行な平面に対して前記第1平坦面が成す角度は、前記平面に対して前記第1光散乱面が成す角度とは異なっている請求項
4又は5に記載の表示体。
【請求項8】
前記複数の突出部の各々は、1つの側面が前記第1方向及び前記第2方向に平行であり且つ高さ方向が前記第1方向に平行な三角柱であり、前記第1平坦面は前記三角柱の他の側面であり、前記第1光散乱面は前記三角柱の残りの側面である請求項
4乃至7の何れか1項に記載の表示体。
【請求項9】
前記複数の突出部の各々は、1つの側面が前記第1方向及び前記第2方向に平行であり且つ高さ方向が前記第1方向に平行な四角柱であり、前記第1平坦面は前記四角柱の他の側面であり、前記第1光散乱面は前記四角柱の更に他の側面である請求項
4乃至7の何れか1項に記載の表示体。
【請求項10】
前記複数の突出部の隣り合った各2つは互いから離間しており、前記第2主面は、前記複数の突出部の隣り合った各2つの間に第2平坦面を有する請求項4乃至9の何れか1項に記載の表示体。
【請求項11】
前記複数の突出部の隣り合った各2つは互いから離間しており、前記第2主面は、前記複数の突出部の隣り合った各2つの間に第2光散乱面を有する請求項
4乃至9の何れか1項に記載の表示体。
【請求項12】
ポリマーからなるキャリアを含んだ請求項
1乃至11の何れか1項に記載の表示体。
【請求項13】
第1及び第2部分を含み、前記第1及び第2部分が互いから離間した第1状態と、前記第1及び第2部分が重なり合った第2状態との間で変形可能であり、
前記第1部分は、第1方向に伸びた形状を各々が有し、前記第1方向と交差する第2方向へ交互に且つ規則的に配列した第1及び第2領域を含み、前記第1領域の各々は、光偏向性を有した光偏向構造が設けられた光透過性領域であり、前記第2領域の各々は、平坦な前面及び平坦な背面を有している透明領域であり、
前記第2部分には、前記第1状態において前記第1部分を介することなしに観察した場合に識別が不可能又は困難であり、前記第2状態において前記第1部分を介して観察した場合に識別が可能又は容易な潜像が記録され、
前記第2部分は、幅方向へ規則的に配列した複数の帯状領域で構成され、前記潜像は前記複数の帯状領域に記録されてい
る表示体。
【請求項14】
前記第2部分は、互いに隣接した第1及び第2表示部を含み、前記複数の帯状領域の1以上は、第1乃至第4サブ領域を各々が含み、前記複数の帯状領域の前記1以上の各々において、前記第1及び第2サブ領域の各々は第1色を表示し、前記第3及び第4サブ領域の各々は、前記第1色とは異なる第2色を表示し、前記第1及び第3サブ領域は、前記第1表示部で前記幅方向に配列し、前記第2及び第4サブ領域は、前記第2表示部で前記幅方向に配列し、前記第1及び第2サブ領域は、前記幅方向における位置が異なっている請求項
13に記載の表示体。
【請求項15】
前記第2部分は、互いに隣接した第1及び第2表示部を含み、前記複数の帯状領域の1以上は、第1乃至第6サブ領域を各々が含み、前記複数の帯状領域の前記1以上の各々において、前記第1及び第2サブ領域の各々は第1色を表示し、前記第3及び第4サブ領域の各々は、前記第1色とは異なる第2色を表示し、前記第5及び第6サブ領域の各々は、前記第1及び第2色とは異なる第3色を表示し、前記第1、第3及び第5サブ領域は、前記第1表示部で前記幅方向に配列し、前記第2、第4及び第6サブ領域は、前記第2表示部で前記幅方向に配列し、前記第1及び第2サブ領域は、前記幅方向における位置が異なり、前記第3及び第4サブ領域は、前記幅方向における位置が異なり、前記第5及び第6サブ領域は、前記幅方向における位置が異なっている請求項
13に記載の表示体。
【請求項16】
前記複数の帯状領域の前記1以上の各々において、前記第1、第3及び第5サブ領域の各々は、前記第2、第4及び第6サブ領域の何れとも前記幅方向における位置が異なる請求項
15に記載の表示体。
【請求項17】
前記複数の帯状領域の前記1以上の各々において、前記第1及び第4サブ領域は、前記幅方向における位置が等しく、前記第2及び第5サブ領域は、前記幅方向における位置が等しく、前記第3及び第6サブ領域は、前記幅方向における位置が等しい請求項
15に記載の表示体。
【請求項18】
前記表示体は長方形状を有し、前記第2方向及び前記幅方向は、前記表示体の長辺に対して、双方が平行であるか又は双方が垂直である請求項
14乃至17の何れか1項に記載の表示体。
【請求項19】
前記表示体は長方形状を有し、前記第2方向及び前記幅方向は、前記表示体の長辺に対して、双方が傾いている請求項
14乃至17の何れか1項に記載の表示体。
【請求項20】
前記表示体はシート又はフィルム状であり、前記第1状態は前記表示体を展開した状態であり、前記第2状態は前記表示体を折るか又は曲げた状態である請求項
1乃至19の何れか1項に記載の表示体。
【請求項21】
前記表示体は長方形状を有し、前記第1及び第2部分は、前記表示体を一方の短辺に沿った縁と他方の短辺に沿った縁とが重なるように折るか又は曲げた場合に、前記第2状態となるように配置されている請求項
20に記載の表示体。
【請求項22】
前記表示体は冊子体である請求項
1乃至19の何れか1項に記載の表示体。
【請求項23】
前記第2部分には、前記潜像が印刷として記録されている請求項
1乃至22の何れか1項に記載の表示体。
【請求項24】
請求項
1乃至23の何れか1項に記載の表示体を前記第2状態とすることを含む表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリマー又は紙からなるキャリア上に印刷層を設けてなる有価証券、例えば、銀行券、株券、商品券、及びチケットには、偽造対策が講じられている。
【0003】
例えば、偽造防止の目的で、偽造又は模造が困難な光学素子をポリマーキャリア上に形成するか、又は、そのような光学素子をポリマーキャリアに貼り付けることがある。この光学素子としては、例えば、ホログラムや蛍光体を含んだものがある。
【0004】
また、この光学素子としては、金属薄膜に凹凸構造を万線状に形成したものもある(特許文献1参照)。そのような光学素子は、観察角度を変化させた場合に凹凸構造が形成する濃淡や輝きが変化する所謂オパール効果を有している。
【0005】
有価証券の偽造防止には、印刷を利用することもある。
例えば、キャリアが紙からなる場合、透かし印刷を用いることがある(特許文献2参照)。透かし印刷は、透明インキを使用して用紙への印刷を行い、印刷部と非印刷部とに透過率の相違を生じさせるものである。透かし印刷を行った用紙を光にかざすと、文字や絵柄などの印刷に対応した濃淡が表示される。
【0006】
透かし印刷が開発される前は、透かしは、用紙の抄造時に形成する他はなく、偽造防止に高い効果を有していた。しかしながら、透明インキを使用した透かし印刷の開発が進み、透かしの形成は容易に行えるようになった。それ故、透かしだけで高い偽造防止効果を得ることは困難となっている。
【0007】
万線で、潜像を記録することもある。万線は、印刷で形成できる。即ち、或る部分と他の部分とで線状部の配列の位相を1/2ピッチずらした万線を、キャリアに印刷する。上記2つの部分は、この印刷物を肉眼で観察した場合には互いから区別することは不可能であるか又は困難である。この万線に、これと線状部の幅及びそれらの配列のピッチが等しい万線を透明フィルムに設けられたフィルタを重ねると、モアレ効果により、上記2つの部分を互いから区別可能となる。
【0008】
また、この偽造防止効果を高めるに、線状部のピッチ、幅及び形状を不均一とした変形万線を使うことも提案されている(特許文献1参照)。
【0009】
但し、万線を利用した偽造防止技術では、検証具、即ち、万線を透明フィルムに設けてなる上記のフィルタなしでは、真偽判定を行うことができない。
【0010】
万線を利用した偽造防止技術として、有価証券だけで真偽判定を可能とすること、即ち、検証具を事前に準備する必要なしに真偽判定を可能とすることが提案されている(特許文献3参照)。この提案は、有価証券の一部に、万線で潜像を記録し、他の部分に上記のフィルタとしての機能を付与するというものである。これら部分が重なり合うように有価証券を折ることにより、潜像は顕像化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】日本国特開2004-174880号公報
【文献】日本国特開2000-290571号公報
【文献】日本国特開2014-223731号公報
【発明の概要】
【0012】
上記のフィルタにおいて、万線は遮光フィルタとなる。それ故、上記の技術では、潜像を顕像化してなる顕像を明るく表示することは難しい。
そこで、本発明は、顕像を明るく表示することが可能な技術を提供することを目的とする。
【0013】
本発明の一側面によると、第1及び第2部分を含み、前記第1及び第2部分が互いから離間した第1状態と、前記第1及び第2部分が重なり合った第2状態との間で変形可能であり、前記第1部分は、第1方向に伸びた形状を各々が有し、前記第1方向と交差する第2方向へ交互に且つ規則的に配列した第1及び第2領域を含み、光偏向性を有した光偏向構造が設けられた光透過性領域であり、前記第2領域の各々は、平坦な前面及び平坦な背面を有している透明領域であり、前記第2部分には、前記第1状態において前記第1部分を介することなしに観察した場合に識別が不可能又は困難であり、前記第2状態において前記第1部分を介して観察した場合に識別が可能又は容易な潜像が記録された表示体が提供される。
【0014】
第1領域の各々には、光偏向性を有した光偏向構造が設けられている。例えば、第1領域の各々は、光散乱性を有しているか又はレンチキュラとして機能する。そのような第1領域の各々は、光散乱性又は光拡散性を有している。他方、第2領域の各々は、透明層の一部であって、平坦な前面及び平坦な背面を有している領域である。即ち、第2領域の各々は、光散乱性又は光拡散性を有していない透明領域である。従って、例えば、第1部分の背面側に鏡面反射体を設置し、これを斜め前方から照明した場合、第2領域は、正反射光を観察可能な角度に、第1領域と比較してより高い強度の光を射出する。
【0015】
それ故、表示体を第2状態とした場合、例えば、第2領域が形成している周期構造と第2部分に設けられた周期構造との干渉に起因してモアレを生じるか、又は、第2部分が第1領域によって部分的に隠蔽される。その結果、第1状態において観察者が第1部分を介することなしに観察した場合に認識する画像とは異なる画像が表示される。即ち、第1状態において第1部分を介することなしに観察した場合に識別が不可能又は困難であった潜像の識別が可能又は容易になる。換言すれば、潜像が顕像化する。
【0016】
また、この表示体では、第1領域が隠蔽フィルタに相当する。第1領域の各々は、光透過性を有している。それ故、この表示体は、第2状態において、顕像を明るく表示することが可能である。つまり、第1領域は、その背面の絵柄を隠蔽する一方で、照明光を透過できる。
【0017】
本発明の他の側面によると、前記光偏向構造はレンチキュラを含んだ上記側面に係る表示体が提供される。或いは、本発明の更に他の側面によると、前記光偏向構造は、ランダム又は疑似ランダムに配置された複数の凹部又は凸部を含んだ上記側面に係る表示体が提供される。光偏向構造は、上述した機能を有していれば、どのようなものであってもよい。上記の構造はレリーフ構造であるため、転写を利用した製造に適している。
【0018】
本発明の更に他の側面によると、前記前面及び前記背面は互いに平行である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。後の記載から分かるように、前記前面及び前記背面は、互いに平行であってもよく、向きが異なっていてもよい。なお、或る面と他の面とで向きが異なっていることは、それら面の法線方向が異なっていることを意味する。
【0019】
或いは、本発明の更に他の側面によると、前記第1部分は、平坦な第1主面と、その裏面である第2主面とを有し、前記第2主面には、前記第1方向に伸びた形状を各々が有し、前記第2方向へ規則的に配列した複数の突出部が設けられ、前記複数の突出部の各々の表面は、前記第1方向に伸びた形状を各々が有し、前記第2方向へ配列した第1光散乱面及び第1平坦面を含み、前記第1平坦面及び前記第1光散乱面は向きが互いに異なり、前記第1部分のうち前記第1光散乱面に対応した領域は前記第1領域の少なくとも一部であり、前記第1部分のうち前記第1平坦面に対応した領域は前記第2領域の少なくとも一部である上記側面に係る表示体が提供される。
【0020】
或いは、本発明の更に他の側面によると、第1及び第2部分を含み、前記第1及び第2部分が互いから離間した第1状態と、前記第1及び第2部分が重なり合った第2状態との間で変形可能であり、前記第1部分は、透明材料からなり、平坦な第1主面と、その裏面である第2主面とを有し、前記第2主面には、前記主面に平行な第1方向に伸びた形状を各々が有し、前記第2主面に平行であり且つ前記第1方向と交差する第2方向へ規則的に配列した複数の突出部が設けられ、前記複数の突出部の各々の表面は、前記第1方向へ伸びた形状を各々が有し、前記第2方向へ配列した第1光散乱面及び第1平坦面を含み、前記第1平坦面及び前記第1光散乱面は向きが互いに異なり、前記第2部分には、前記第1状態において前記第1部分を介することなしに観察した場合に識別が不可能又は困難であり、前記第2状態において前記第1部分を介して観察した場合に識別が可能又は容易な潜像が記録された表示体が提供される。
【0021】
上記の構成を採用した表示体は、第2状態において前記第1部分を介して潜像を観察しながら、例えば第1方向に平行な軸の周りで表示体を傾けると、潜像の識別し易さが変化する。例えば、傾き角が第1角度である場合に潜像の識別を不可能又は困難とし、傾き角が第1角度とは異なる第2角度である場合に潜像の識別を可能又は容易とすることができる。即ち、上記の構成を採用すると、より複雑な表示が可能になる。
【0022】
本発明の更に他の側面によると、前記第1方向及び前記第2方向に平行な平面に対して前記第1平坦面が成す角度は、前記平面に対して前記第1光散乱面が成す角度と等しい上記側面の何れかに係る表示体が提供される。或いは、本発明の更に他の側面によると、前記第1方向及び前記第2方向に平行な平面に対して前記第1平坦面が成す角度は、前記平面に対して前記第1光散乱面が成す角度とは異なっている上記側面の何れかに係る表示体が提供される。これら角度を調整することにより、第2状態において前記第1部分を介して潜像を観察した場合に、潜像の識別が不可能又は困難な傾き角の範囲や、潜像の識別が可能又は容易な傾き角の範囲を変化させることができる。
【0023】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の突出部の各々は、1つの側面が前記第1方向及び前記第2方向に平行であり且つ高さ方向が前記第1方向に平行な三角柱であり、前記第1平坦面は前記三角柱の他の側面であり、前記第1光散乱面は前記三角柱の残りの側面である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。或いは、本発明の更に他の側面によると、前記複数の突出部の各々は、1つの側面が前記第1方向及び前記第2方向に平行であり且つ高さ方向が前記第1方向に平行な四角柱であり、前記第1平坦面は前記四角柱の他の側面であり、前記第1光散乱面は前記四角柱の更に他の側面である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0024】
上記のように、複数の突出部の各々は、例えば、1つの側面が第1方向及び第2方向に平行であり且つ高さ方向が第1方向に平行な多角柱である。この場合、第1平坦面は多角柱の他の側面であり、第1光散乱面は多角の更に他の側面である。
【0025】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の突出部の隣り合った各2つは互いから離間しており、前記第2主面は、前記複数の突出部の隣り合った各2つの間に第2平坦面を有する上記側面の何れかに係る表示体が提供される。或いは、本発明の更に他の側面によると、前記複数の突出部の隣り合った各2つは互いから離間しており、前記第2主面は、前記複数の突出部の隣り合った各2つの間に第2光散乱面を有する上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0026】
複数の突出部の隣り合った各2つは、互いに接していてもよい。複数の突出部の隣り合った各2つが互いから離間している場合、上記の通り、第2主面は、複数の突出部の隣り合った各2つの間に、第2平坦面を有していてもよく、第2光散乱面を有していてもよい。
【0027】
本発明の更に他の側面によると、ポリマーからなるキャリアを含んだ上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
ポリマーからなるキャリアは、成形が容易であり、また、可撓性を付与することも容易である。
【0028】
本発明の更に他の側面によると、前記第1若しくは第2領域又は前記突出部は、40乃至1000μmの範囲内の周期で配列している上記側面の何れかに係る表示体が提供される。この周期は、50乃至1000μmの範囲内であってもよい。
【0029】
本発明の更に他の側面によると、前記第2部分は、幅方向へ規則的に配列した複数の帯状領域で構成され、前記潜像は前記複数の帯状領域に記録されている上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
【0030】
本発明の更に他の側面によると、前記第2部分は、互いに隣接した第1及び第2表示部を含み、前記複数の帯状領域の1以上は、第1乃至第4サブ領域を各々が含み、前記複数の帯状領域の前記1以上の各々において、前記第1及び第2サブ領域の各々は第1色を表示し、前記第3及び第4サブ領域の各々は、前記第1色とは異なる第2色を表示し、前記第1及び第3サブ領域は、前記第1表示部で前記幅方向に配列し、前記第2及び第4サブ領域は、前記第2表示部で前記幅方向に配列し、前記第1及び第2サブ領域は、前記幅方向における位置が異なっている上記側面に係る表示体が提供される。
【0031】
或いは、本発明の更に他の側面によると、前記第2部分は、互いに隣接した第1及び第2表示部を含み、前記複数の帯状領域の1以上は、第1乃至第6サブ領域を各々が含み、前記複数の帯状領域の前記1以上の各々において、前記第1及び第2サブ領域の各々は第1色を表示し、前記第3及び第4サブ領域の各々は、前記第1色とは異なる第2色を表示し、前記第5及び第6サブ領域の各々は、前記第1及び第2色とは異なる第3色を表示し、前記第1、第3及び第5サブ領域は、前記第1表示部で前記幅方向に配列し、前記第2、第4及び第6サブ領域は、前記第2表示部で前記幅方向に配列し、前記第1及び第2サブ領域は、前記幅方向における位置が異なり、前記第3及び第4サブ領域は、前記幅方向における位置が異なり、前記第5及び第6サブ領域は、前記幅方向における位置が異なっている上記側面に係る表示体が提供される。
【0032】
これら構成によると、例えば、第1及び第2表示部を、第1状態において肉眼で観察した場合には互いから区別不可能であり、第2状態において肉眼で観察した場合には互いから区別可能とすることができる。即ち、第1及び第2表示部の一方に対応した潜像を記録することができる。
【0033】
本発明の更に他の側面によると、前記複数の帯状領域の前記1以上の各々において、前記第1、第3及び第5サブ領域の各々は、前記第2、第4及び第6サブ領域の何れとも前記幅方向における位置が異なる上記側面に係る表示体が提供される。
【0034】
或いは、本発明の更に他の側面によると、前記複数の帯状領域の前記1以上の各々において、前記第1及び第4サブ領域は、前記幅方向における位置が等しく、前記第2及び第5サブ領域は、前記幅方向における位置が等しく、前記第3及び第6サブ領域は、前記幅方向における位置が等しい上記側面に係る表示体が提供される。
このように、サブ領域には、様々な配置が可能である。
【0035】
本発明の更に他の側面によると、前記第1又は第2領域は第1周期P1で配列し、前記複数の帯状領域は第2周期P2で配列し、前記第1周期P1と前記第2周期P2との比P1/P2は整数である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。この構成は、上述した潜像を顕像化するのに適している。
【0036】
或いは、本発明の更に他の側面によると、前記第1又は第2領域は第1周期P1で配列し、前記複数の帯状領域は第2周期で配列し、前記第1周期P1と前記第2周期P2との比P1/P2は整数からずれている上記側面の何れかに係る表示体が提供される。この構成は、第2状態において、帯状領域と第1及び第2領域との組み合わせが、例えば、各帯状領域に記録された画像を上記幅方向へ伸張してなる画像と同じ形状を有する画像を表示するのに適している。また、この構成は、上述した潜像を顕像化するのに適している。この構成を採用した場合、第1周期P1と第2周期P2との差と第2周期P2との比(P1-P2)/P2は、-0.25乃至-0.10の範囲内とすることができる。さらには、0.10乃至0.25の範囲内としてもよい。
【0037】
本発明の更に他の側面によると、前記表示体は長方形状を有し、前記第2方向及び前記幅方向は、前記表示体の長辺に対して、双方が平行であるか又は双方が垂直である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。或いは、本発明の更に他の側面によると、前記表示体は長方形状を有し、前記第2方向及び前記幅方向は、前記表示体の長辺に対して、双方が傾いている上記側面の何れかに係る表示体が提供される。表示体が長方形状を有している場合、これら構成の何れを採用してもよい。
【0038】
本発明の更に他の側面によると、前記表示体はシート又はフィルム状であり、前記第1状態は前記表示体を展開した状態であり、前記第2状態は前記表示体を折るか又は曲げた状態である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
表示体の形状に制限はないが、シート又はフィルム状である場合には、その応用の範囲が広い。例えば、シート又はフィルム状の表示体は、銀行券、株券、商品券、及びチケットなどの有価証券として利用することができる。そして、表示体がシート又はフィルム状である場合、これを折るか又は曲げるといった簡単な動作により、潜像を顕像化することができる。
【0039】
本発明の更に他の側面によると、前記表示体は長方形状を有し、前記第1及び第2部分は、前記表示体を一方の短辺に沿った縁と他方の短辺に沿った縁とが重なるように折るか又は曲げた場合に、前記第2状態となるように配置されている上記側面に係る表示体が提供される。
このような配置によると、表示体を第1部分から第2部分へ変形させる際に、第1及び第2部分を互いに対して高い精度で及び容易に位置合わせすることができる。
【0040】
或いは、本発明の更に他の側面によると、前記表示体は冊子体である上記側面の何れかに係る表示体が提供される。
表示体が冊子体である場合も、その応用の範囲が広い。冊子体としての表示体は、例えば、パスポート又は預金通帳などの通帳として利用することができる。表示体が冊子体である場合、例えば、第1部分は、冊子体を閉じた状態において重なり合う2つの頁部の一方又はその一部であり、第2部分は、それら頁部又はその一部である。ここで、「頁部」は、冊子体を構成しているシートのうち、表側の1頁と裏側の1頁とに対応した部分である。即ち、「頁部」は、冊子体を構成しているシートのうち、一方の面に1頁が割り当てられ、他方の面に別の1頁が割り当てられる部分である。例えば、冊子体が2つ折りされたシートを含んでいる場合、そのシートのうち折り目で区分された2つの部分の各々が「頁部」である。第1状態は、例えば、第1部分を含んだ頁部と第2部分を含んだ頁部とが互いから離間するように冊子体を開いた状態である。第2状態は、例えば、第1部分を含んだ頁部が露出し且つ第2部分を含んだ頁の上に位置するように冊子体を開いた状態である。この構成によると、頁をめくるといった簡単な動作により、潜像を顕像化することができる。
【0041】
本発明の更に他の側面によると、前記第2部分には、前記潜像が印刷として記録されている上記側面の何れかに係る表示体が提供される。潜像は、印刷以外の手法によって記録してもよいが、印刷によると潜像の形成が容易である。
【0042】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る表示体を前記第2状態とすることを含む表示方法が提供される。この方法によると、検証具を別途準備する必要がない。また、第2状態において、顕像を明るく表示することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る表示体が第1状態にあるときに呈する構造を概略的に示す平面図。
【
図2】
図1の表示体が含んでいる第1部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【
図3】第1部分に
図2に示す構造を採用した表示体の製造に使用可能なエンボスシリンダの一例を概略的に示す断面図。
【
図4】
図3に示すエンボスシリンダの製造に使用するマザープレートの一製造工程を概略的に示す断面図。
【
図5】
図3に示すエンボスシリンダの製造に使用するマザープレートの他の製造工程を概略的に示す断面図。
【
図6】
図1に示す表示体が含んでいる第1部分に採用可能な構造の他の例を概略的に示す断面図。
【
図7】第1部分に
図6に示す構造を採用した表示体の製造に使用可能なエンボスシリンダの一例を概略的に示す断面図。
【
図8】
図7に示すエンボスシリンダの製造に使用するマザープレートの一製造工程を概略的に示す断面図。
【
図9】
図1に示す表示体の第2部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【
図10】
図1の表示体が第2状態にあるときに呈する構造を概略的に示す平面図。
【
図13】第1部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
【
図14】第2部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
【
図16】第1及び第2部分にそれぞれ
図13及び
図14の構造を採用した表示体が第1状態で表示する画像の一例を概略的に示す平面図。
【
図17】第1及び第2部分にそれぞれ
図13及び
図14の構造を採用した表示体が第2状態で表示する画像の一例を概略的に示す平面図。
【
図18】本発明の第2実施形態に係る表示体において、第1部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
【
図19】本発明の第2実施形態に係る表示体において、第2部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
【
図21】本発明の第3実施形態に係る表示体において、第2部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
【
図23】本発明の第4実施形態に係る表示体において、第1部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
【
図24】本発明の第4実施形態に係る表示体において、第2部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図。
【
図26】本発明の第5実施形態に係る表示体を概略的に示す部分切開斜視図。
【
図31】本発明の第6実施形態に係る表示体において、第1部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す部分切開斜視図。
【
図33】本発明の第7実施形態に係る表示体において、第1部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【
図34】本発明の第8実施形態に係る表示体において、第1部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【
図35】本発明の第9実施形態に係る表示体において、第1部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【
図36】本発明の第10実施形態に係る表示体を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。なお、同様又は類似した機能を有する要素については、同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0045】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る表示体が第1状態にあるときに呈する構造を概略的に示す平面図である。
【0046】
図1に示す表示体10は、長方形のシート又はフィルムである。図中、X方向は表示体10の長辺に平行な方向であり、Y方向は表示体10の短辺に平行な方向であり、Z方向は表示体10の厚さ方向、即ち、X方向及びY方向に対して垂直な方向である。
【0047】
この表示体10は、キャリア11を含んでいる。キャリア11は、シート又はフィルムとすることができる。キャリア11は、プラスチックシート又はプラスチックフィルムとすることができる。キャリア11の外形は、長方形とすることができる。
【0048】
キャリア11の厚みは、0.05mm以上0.3mm以下の範囲内にあることが好ましい。これより薄い場合は、しわが発生しやすい。これより厚い場合は、折り曲げが困難となる。
【0049】
キャリア11の短辺は、50mm以上100mm以下の範囲内にあることが好ましい。短辺が短いと、絵柄を形成し難い。短辺が長いと、表示体10を持ち運びづらい。
キャリア11の長辺は、125mm以上200mm以下の範囲内にあることが好ましい。この範囲だと折り曲げやすい。
【0050】
キャリア11の縦横比は、1:1.5乃至1:3の範囲内にあることが好ましい。縦横比がこの範囲内にあると、表示体10を折り曲げやすい。
【0051】
キャリア11の材質は、熱可塑性樹脂とすることができる。熱可塑性樹脂は、折り曲げた際に、ワレの欠陥が生じにくい。熱可塑性樹脂の実例は、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル系樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート(PET)、及びポリプロピレン等の光硬化性樹脂;アクリルニトリルスチレン共重合体樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、及びアルキド樹脂等の熱硬化性樹脂;又は、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、及びポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂からなる。
【0052】
或いは、キャリア11は、例えば、ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、これらの混合物、及び、これらの共重合物等の熱硬化性樹脂からなってもよい。
【0053】
或いは、キャリア11は、ウレタンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート、及びエポキシアクリレート等の紫外線硬化樹脂からなってもよい。
【0054】
キャリア11には、第1部分A1と第2部分A2とが設けられている。第1部分A1と第2部分A2とは、キャリア11の短辺に平行であり且つキャリア11を二等分する直線Lに対して対称の位置にある。第1部分A1と第2部分A2とは、表示体10を直線Lの一で二等分して折り曲げた際、短辺側の端部から直線Lまでの距離が1/3以内の位置で重なり合うことが好ましい。
【0055】
図2は、
図1の表示体が含んでいる第1部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。
【0056】
図2に示す第1部分A1は、第1領域R1と第2領域R2とを含んでいる。第1領域R1及び第2領域R2は、第1方向、ここではX方向に伸びた形状を各々が有している。また、第1領域R1及び第2領域R2は、第1方向と交差する第2方向、ここではY方向へ交互に且つ規則的に配列している。
【0057】
第1領域R1の各々は、光散乱性を有している。ここでは、第1領域R1の各々は、一方の表面に、ランダムに配置された凹部又は凸部を有している。第1領域R1の各々は、幅W1を有している。第1領域R1は、Y方向に第1周期P1で配列している。
【0058】
第2領域R2の各々は、平坦な前面及び平坦な背面を有している透明領域である。これら前面及び背面は互いに平行である。第2領域R2の各々は、幅W2を有している。第2領域R2は、Y方向に第1周期P1で配列している。
【0059】
図3は、第1部分に
図2に示す構造を採用した表示体の製造に使用可能なエンボスシリンダの一例を概略的に示す断面図である。なお、
図3には、エンボスシリンダの一部のみを描いている。
【0060】
図3に示すエンボスシリンダ20は、円筒形状を有している金属基材21を有している。金属基材21の円筒面には、第1領域R1の凹部又は凸部に対応して凸部又は凹部が設けられている。
図2のキャリア11は、例えば、このエンボスシリンダ20を用いた転写により製造することができる。
【0061】
図4は、
図3に示すエンボスシリンダの製造に使用するマザープレートの一製造工程を概略的に示す断面図である。
図5は、
図3に示すエンボスシリンダの製造に使用するマザープレートの他の製造工程を概略的に示す断面図である。
【0062】
図3に示すエンボスシリンダ20の製造に使用するマザープレートは、例えば、以下の方法により製造する。
先ず、
図4に示すように、金型基材31の主面に、マスク層32を形成する。マスク層32には、第2領域R2と第1部分A1以外の部分とに対応したパターンが形成されている。
【0063】
マスク層32は、例えば、金型基材31の主面にフォトレジストを塗工し、このフォトレジスト層を部分的に露光し、その後、これを現像することにより得る。或いは、マスク層32は、例えば、金型基材31の主面にインキを印刷することにより形成する。
【0064】
この高精細印刷は、例えば、シルクスクリーン印刷又はグラビアオフセット印刷である。グラビアオフセット印刷によると、他の印刷手法に比べて高い精細度を達成することが容易である。また、高精細印刷として、グラビア印刷、オフセット印刷を適用することもできる。
【0065】
インキを構成するワニス(ビヒクル)としては、例えば、ポリエチレン系樹脂及び塩化ポリプロピレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体、フッ化ビニリデン系樹脂、ポリビニル系アルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、アルキッド系樹脂、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、熱硬化型ポリ(メタ)アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂、マレイン酸樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、アセチルブチルセルロース、及びエチルオキシエチルセルロース等の繊維素系樹脂、塩化ゴム及び環化ゴム等のゴム系樹脂、石油系樹脂、ロジン及びカゼイン等の天然樹脂、アマニ油及び大豆油等の油脂類、並びにその他の樹脂から選ばれる1種又は2種以上の混合物を使用することができる。ワニスは、染料及び顔料等の着色剤、充填剤、安定剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の光安定剤、分散剤、増粘剤、乾燥剤、滑剤、帯電防止剤、架橋剤、並びにその他の添加剤から選ばれる1種又は複数種を任意に含有することができる。インキは、これらを溶剤又は希釈剤等とともに十分に混錬することにより得られる。
【0066】
次に、金型基材31の上記主面を、化学的エッチング又は物理的エッチングする。例えば、上記主面を、化学腐食、電解腐食、きさげ仕上げ、ワイヤブラシ仕上げ、サンドブラスト、又は液体ホーニングする。或いは、例えば、上記主面を電気めっきする。この電気めっきは、分散めっき法とすることができる。
【0067】
その後、上記主面からマスク層32を除去する。以上のようにして、マザープレートを得る。
図3に示すエンボスシリンダ20は、例えば、このマザープレートをシリンダに固定することにより得られる。
【0068】
図6は、
図1に示す表示体が含んでいる第1部分に採用可能な構造の他の例を概略的に示す断面図である。
【0069】
図6に示す第1部分A1では、第1領域R1は、第1領域R1の長さ方向に伸びたレンチキュラとして機能する。これ以外は、
図6に示す第1部分A1は、
図2等を参照しながら説明した第1部分A1と同様である。
【0070】
図7は、第1部分に
図6に示す構造を採用した表示体の製造に使用可能なエンボスシリンダの一例を概略的に示す断面図である。
【0071】
図7に示すエンボスシリンダ20は、金属基材21の円筒面であって第1領域R1に対応した位置に、レンチキュラに対応した凸部が設けられていること以外は、
図3等を参照しながら説明したエンボスシリンダ20と同様である。第1部分A1に
図6の構造を採用したキャリア11は、例えば、このエンボスシリンダ20を用いた転写により製造することができる。
【0072】
図8は、
図7に示すエンボスシリンダの製造に使用するマザープレートの一製造工程を概略的に示す断面図である。
【0073】
このマザープレートの製造では、例えば、先ず、
図4を参照しながら説明したように、金型基材31の主面上にマスク層32を形成する。次に、この主面を化学的エッチング又は物理的エッチングに供する。その後、金型基材31からマスク層32を除去する。以上のようにして、マザープレートを得る。
【0074】
図9は、
図1に示す表示体の第2部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。
【0075】
図9に示す第2部分A2では、キャリア11上に印刷層12が設けられている。印刷層12は、例えば、インクジェット印刷又はレーザー印刷によって形成する。
【0076】
印刷層12は、複数の万線を形成している。各万線を構成している線は、X方向に平行であり、Y方向に配列している。これら万線は、線状部の幅及び配列のピッチが互いに等しい。隣り合った万線は、線状部の配列の位相がずれている。これら万線は、第1部分を介することなしに肉眼で観察した場合に識別が不可能又は困難な潜像を形成している。
【0077】
ここでは、一例として、印刷層12は、2つの万線を形成しているとする。第2部分A2のうち、これら万線の一方に対応した部分及び他方に対応した部分は、それぞれ、後述する第1表示部DP1及び第2表示部DP2に相当する。また、ここでは、一例として、印刷層12は、黒色インキからなるとする。
【0078】
なお、万線は、印刷層12で形成する代わりに、レーザーエングレービングによって形成してもよい。この場合、キャリア11としては、例えば、感熱発色剤を含んだものを使用してもよい。また、キャリア11が、プラスチックフィルムである場合は、キャリア11のプラスチックを部分的に炭化させ、万線を形成できる。
【0079】
図10は、
図1の表示体が第2状態にあるときに呈する構造を概略的に示す平面図である。
【0080】
図10に示す表示体10は、
図1に示す表示体10を、直線Lの位置を折り目として、二つ折りしたものである。表示体10をこのように折ると、第1部分A1と第2部分A2とが重なり合い、第1部分A1を介して第2部分A2を観察することができる。この状態では、上記の潜像は、識別が可能又は容易になる。即ち、潜像が顕像化する。なお、
図10では、顕像として、文字列「SECURE」が描かれている。
【0081】
潜像が顕像化するメカニズムについて、
図11及び
図12を参照しながら説明する。
図11は、
図10に示す構造の一部を拡大して示す断面図である。
図12は、
図10に示す構造の他の一部を拡大して示す断面図である。
【0082】
図11には、
図10に示す構造のうち、上述した2つの万線の一方に対応した部分を描いている。
図12には、
図10に示す構造のうち、上述した2つの万線の他方に対応した部分を描いている。
【0083】
図11では、第1領域R1は、印刷層12の開口部と向き合い、第2領域R2は、印刷層12が形成している万線と向き合っている。他方、
図12では、第1領域R1は、印刷層12が形成している万線と向き合い、第2領域R2は、印刷層12の開口部と向き合っている。
【0084】
上記の通り、第1領域R1は光散乱性を有しており、第2領域R2は透明領域である。それ故、例えば、
図10乃至
図12に示す構造を、白色の台の上に、第2部分A2が台と第1部分A1との間に位置するように置き、第1部分A1を斜め上方から照明し、正反射光を観察可能な角度で観察した場合、
図12に示す部分は、
図11に示す部分とは異なる色に見える。例えば、
図12に示す部分は、
図11に示す部分と比較して、より明るく見える。このようにして、潜像が顕像化する。
【0085】
また、第1領域R1は、光透過性を有している。それ故、第1領域R1が例えば黒色印刷層を含んでいる場合と比較して、顕像をより明るく表示できる。
【0086】
この顕像化について、
図13乃至
図17を参照しながら、更に説明する。
図13は、第1部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。
図14は、第2部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。
図15は、
図13の第1部分と
図14の第2部分とを重ね合わせた状態を概略的に示す平面図である。
図16は、第1及び第2部分にそれぞれ
図13及び
図14の構造を採用した表示体が第1状態で表示する画像の一例を概略的に示す平面図である。
図17は、第1及び第2部分にそれぞれ
図13及び
図14の構造を採用した表示体が第2状態で表示する画像の一例を概略的に示す平面図である。
【0087】
図13の第1部分A1では、第1領域R1は、各々がY方向に伸び、X方向に配列している。第1領域R1又は第2領域R2は、第1周期P1で配列している。第1領域R1の幅W1と第2領域R2の幅W2との比W1/W2は1/3である。
【0088】
図14の第2部分A2は、Y方向に各々が伸び、X方向に配列した複数の帯状領域BRで構成されている。帯状領域BRは、第2周期P2で配列している。第1周期P1と第2周期P2との比P1/P2は1である。
【0089】
第2部分A2は、互いに隣接した第1表示部DP1及び第2表示部DP2を含んでいる。第1表示部DP1及び第2表示部DP2の一方は潜像を形成している。
【0090】
各帯状領域BRは、X方向とY方向とに配列した複数のセルCを含んでいる。セルCの一部は第1色を表示し、セルCの残りは、第1色とは異なる第2色を表示する。第1色を表示する部分は、上記の印刷層12が設けられている部分に相当する。なお、一例によれば、第1色は黒であり、第2色は白である。第1色及び第2色は、有彩色又は無彩色とすることができる。
【0091】
印刷層12のうち第1色を表示するセルCに対応した各部分は、例えば、円形又は四角形状である。印刷層12のうち第1色を表示するセルCに対応した各部分は、楕円形状又は長方形でもよい。第1色を表示するセルCに対応した部分は、全部又は一部が同形同大でもよく、或いは、全部又は一部が形状、大きさ、またはそれらの双方が異なっていてもよい。また、これら部分の寸法又はセルCの配列のピッチは、例えば、5μm乃至500μmの範囲内にある。このピッチが小さすぎると、即ち、5μmより小さいと、第1部分A1と第2部分A2との位置合わせが難しくなる。このピッチを5μm以上とすれば、第1状態において、第1表示部DP1と第2表示部DP2とを互いから区別することが容易になる。なお、500μm以下であれば、セルCによって表示される画像の劣化を認識し難い。
【0092】
帯状領域BRの1以上は、サブ領域SR1乃至SR4を含んでいる。サブ領域SR1及びSR2は、それぞれ、第1及び第2サブ領域であり、各々が第1色を表示する。サブ領域SR3及びSR4は、それぞれ、第3及び第4サブ領域であり、各々が第2色を表示する。サブ領域SR1及びSR2の幅は、第1領域R1の幅W1と等しい。
【0093】
サブ領域SR1乃至SR4を含んだ各帯状領域BRにおいて、サブ領域SR1及びSR3は、第1表示部DP1で幅方向に配列し、サブ領域SR2及びSR4は、第2表示部DP2で幅方向に配列し、サブ領域SR1及びSR2は、幅方向における位置が異なっている。ここでは、サブ領域SR1及びSR2の幅方向における位置は、第2周期P2の半分だけずれている。このずれは、第1部分A1を介することなしに第2部分A2を肉眼で観察した場合に、第1表示部DP1と第2表示部DP2とを互いから識別することが不可能か又は困難な程度に小さい。
【0094】
帯状領域BRの1以上は、サブ領域SR1及びSR3のみを含んでいてもよい。即ち、帯状領域BRの1以上は、その全体が第1表示部DP1に位置していてもよい。同様に、帯状領域BRの1以上は、サブ領域SR2及びSR4のみを含んでいてもよい。即ち、帯状領域BRの1以上は、その全体が第2表示部DP2に位置していてもよい。
【0095】
図15に示すように、第1部分A1と第2部分A2とを、第1領域R1がサブ領域SR2と向き合うように重ね合わせると、サブ領域SR1及びSR3が第1表示部DP1の位置での表示に及ぼす影響と、サブ領域SR2及びSR4が第2表示部DP2の位置での表示に及ぼす影響とに相違を生じる。その結果、潜像が顕像化する。
【0096】
例えば、第1部分A1を介することなしに第2部分A2を肉眼で観察した場合、
図16に示すように、第1表示部DP1と第2表示部DP2とは、同じ色に見え、互いから区別することが不可能又は困難である。これに対し、第1部分A1を介して第2部分A2を肉眼で観察すると、
図17に示すように、第1表示部DP1と第2表示部DP2とは、異なる色に見える。そのため、容易に双方を互いに区別することが可能となる。
【0097】
帯状領域BRのうち、着色したサブ領域の色は、黒色又は白色でなくてもよい。着色したサブ領域の色は、例えば、シアン、イエロー、及びマゼンタの1以上であってもよい。
【0098】
<第2実施形態>
図18は、本発明の第2実施形態に係る表示体において、第1部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。
図19は、本発明の第2実施形態に係る表示体において、第2部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。
図20は、
図18の第1部分と
図19の第2部分とを重ね合わせた状態を概略的に示す平面図である。
【0099】
図18乃至
図20に示す表示体10、以下の点を除き、第1実施形態において説明した表示体10と同様である。
【0100】
即ち、
図18の第1部分A1では、第1領域R1の幅W1と第2領域R2の幅W2との比W1/W2は1である。
【0101】
また、
図19の第2部分A2では、帯状領域BRの配列の第2周期P2は、第1領域R1又は第2領域R2の配列の第1周期P1とは異なっている。ここでは、第1周期P1と第2周期P2との比P1/P2は1/3である。なお、第2周期P2は、サブ領域SR1a乃至SR1c及びSR3が減法混色による色表示を行い、サブ領域SR2a乃至SR2c及びSR4が減法混色による色表示を行う程度に小さい。
【0102】
帯状領域BRの1以上は、サブ領域SR1a乃至SR1c、SR2a乃至SR2c、SR3及びSR4を含んでいる。サブ領域SR1a及びSR2aの各々は第1色を表示し、サブ領域SR1b及びSR2bの各々は、第1色とは異なる第2色を表示し、サブ領域SR1c及びSR2cの各々は、第1及び第2色とは異なる第3色を表示し、サブ領域SR3及びSR4の各々は、第1乃至第3色とは異なる第4色を表示する。
【0103】
第1表示部DP1において、サブ領域SR1a乃至SR1cは、サブ領域SR3を間に挟んで幅方向に配列している。第2表示部DP2において、サブ領域SR2a乃至SR2cは、サブ領域SR4を間に挟んで幅方向に配列している。サブ領域SR1a乃至SR1c及びSR2a乃至SR2cは、幅方向の寸法が互いに等しい。ここでは、サブ領域SR1a乃至SR1c及びSR2a乃至SR2cの幅は、第1領域R1の幅W1の2/3である。サブ領域SR1a乃至SR1cの配列とサブ領域SR2a乃至SR2cの配列とは、第2周期P2の4/9だけ位相がずれている。
【0104】
帯状領域BRの1以上は、サブ領域SR1a乃至SR1c及びSR3のみを含んでいてもよい。即ち、帯状領域BRの1以上は、その全体が第1表示部DP1に位置していてもよい。同様に、帯状領域BRの1以上は、サブ領域SR2a乃至SR2c及びSR4のみを含んでいてもよい。即ち、帯状領域BRの1以上は、その全体が第2表示部DP2に位置していてもよい。
【0105】
図20に示すように、これら第1部分A1及び第2部分A2を、第1領域R1がサブ領域SR2a乃至SR2cと向き合うように重ね合わせると、サブ領域SR1a乃至SR1c及びSR3が第1表示部DP1の位置での表示に及ぼす影響と、サブ領域SR2a乃至SR2c及びSR4が第2表示部DP2の位置での表示に及ぼす影響とに相違を生じる。その結果、潜像が顕像化する。
【0106】
<第3実施形態>
図21は、本発明の第3実施形態に係る表示体において、第2部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。
図22は、
図18の第1部分と
図21の第2部分とを重ね合わせた状態を概略的に示す平面図である。
【0107】
図21及び
図22に示す表示体10は、以下の点を除き、第2実施形態において説明した表示体10と同様である。
【0108】
即ち、
図21の第2部分A2において、第1周期P1と第2周期P2との比P1/P2は1/2である。サブ領域SR1a乃至SR1cの配列とサブ領域SR1a及びSR2bの配列とは、第2周期P2の1/3だけ位相がずれている。即ち、サブ領域SR1a乃至SR1c、SR2a乃至SR2c、SR3及びSR4を含んだ帯状領域BRでは、サブ領域SR1a及びSR2bは長さ方向に隣り合い、サブ領域SR1b及びSR2cは長さ方向に隣り合い、サブ領域SR1c及びSR2aは長さ方向に隣り合っている。
【0109】
これら第1部分A1及び第2部分A2を、
図22に示すように重ね合わせると、サブ領域SR1a乃至SR1c及びSR3が第1表示部DP1の位置での表示に及ぼす影響と、サブ領域SR2a乃至SR2c及びSR4が第2表示部DP2の位置での表示に及ぼす影響とに相違を生じる。具体的には、第1表示部DP1の位置での表示には、サブ領域SR1cが及ぼす影響が最も小さくなり、第2表示部DP2の位置での表示には、サブ領域SR2aが及ぼす影響が最も小さくなる。その結果、潜像が顕像化する。
【0110】
<第4実施形態>
図23は、本発明の第4実施形態に係る表示体において、第1部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。
図24は、本発明の第4実施形態に係る表示体において、第2部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す平面図である。
図25は、
図23の第1部分と
図24の第2部分とを重ね合わせた状態を概略的に示す平面図である。
【0111】
図23乃至
図25に示す表示体10は、以下の点を除き、第2実施形態において説明した表示体10と同様である。
【0112】
即ち、
図23の第1部分A1では、第1領域R1及び第2領域R2は、各々がX方向に対して傾いた方向に伸び、それらの幅方向へ交互に配列している。ここでは、一例として、第1領域R1及び第2領域R2の長さ方向は、X方向に対して45°の角度を成しているとする。
【0113】
また、
図24の第2部分A2では、帯状領域BRの長さ方向は、X方向に対して傾いている。ここでは、一例として、帯状領域BRの長さ方向は、X方向に対して45°の角度を成しているとする。
【0114】
そして、サブ領域SR1a乃至SR1cの配列とサブ領域SR2a乃至SR2cの配列とは、第2周期P2の2/9だけ位相がずれている。
【0115】
これら第1部分A1及び第2部分A2を、
図25に示すように重ね合わせると、サブ領域SR1a乃至SR1c及びSR3が第1表示部DP1の位置での表示に及ぼす影響と、サブ領域SR2a乃至SR2c及びSR4が第2表示部DP2の位置での表示に及ぼす影響とに相違を生じる。具体的には、第1表示部DP1及び第2表示部DP2の各々において、サブ領域の配列方向に、第2周期P2よりも長い周期で、色の変化を生じる。この周期が十分に長ければ、第1表示部DP1及び第2表示部DP2の各々における色の変化を、肉眼で確認することができる。また、先の周期が十分に長ければ、第1表示部DP1と第2表示部DP2との境界の位置におけるそれらの色の相違を確認することができる。従って、第1表示部DP1と第2表示部DP2とは、互いから区別可能となる。即ち、潜像が顕像化する。
【0116】
<第5実施形態>
図26は、本発明の第5実施形態に係る表示体を概略的に示す部分切開斜視図である。
図27は、
図26に示す表示体の他の部分切開斜視図である。
【0117】
図26及び
図27に示す表示体10は、以下の点を除き、第1実施形態において説明した表示体10と同様である。
【0118】
即ち、
図26及び
図27の第1部分A1は、平坦な第1主面と、その裏面である第2主面とを有している。第2主面には、第1方向、ここではY方向に伸びた形状を各々が有し、第2方向、ここではX方向へ規則的に配列した複数の突出部PRが設けられている。
【0119】
これら突出部PRの高さは、10μm以上500μm以下とすることが好ましい。また、これら突出部PRの幅は、10μm以上500μm以下とすることが好ましい。その高さを幅で除したアスペクト比は、0.05以上1以下とすることができる。
【0120】
これら突出部を第1主面に垂直な方向から観察した形状、即ち、平面視した形状は、直線又は曲線とすることができる。曲線は、正弦波形状とすることができる。また、これら突出部PRは、平行又は非平行としてもよい。
【0121】
各突出部PRは、1つの側面が第1方向及び第2方向に平行であり且つ高さ方向が第1方向に平行な三角柱である。後述する第2部分領域S2及び第3部分領域S3は、それぞれ、この三角柱の他の側面及び残りの側面である。
【0122】
突出部PRの隣り合った各2つは、互いから離間している。第1部分A1の第2主面のうち、突出部PRの隣り合った各2つの間に位置した領域は、第1方向に伸びた形状を有する第1部分領域S1である。
【0123】
突出部PRの各々の表面は、第1方向に伸びた形状を各々が有し、第2方向へ配列した第2部分領域S2及び第3部分領域S3を含んでいる。第2部分領域S2及び第3部分領域S3は、向きが互いに異なっている。第1方向及び第2方向に平行な平面に対して第2部分領域S2が成す角度は、先の平面に対して第3部分領域S3が成す角度と等しい。
【0124】
ここでは、第2部分領域S2及び第1部分領域S1は、それぞれ、第1光散乱面及び第2光散乱面である。具体的には、第1部分領域S1及び第2部分領域S2の各々は、ランダムに配置された凹部又は凸部を有している。第1部分領域S1及び第2部分領域S2は、第1領域R1を構成している。また、ここでは、第3部分領域S3は、第1平坦面である。第3部分領域S3は、第2領域R2を構成している。第1方向及び第2方向に平行な平面に対して第1平坦面が成す角度は、先の平面に対して第1光散乱面が成す角度と等しい。
【0125】
図26及び
図27の第2部分A2では、印刷層12は、複数の線状部からなる。これら線状部は、幅方向に配列している。印刷層12は、これら線状部の長さ方向、長さ、幅、及び配列のピッチの1以上が互いに異なる複数の領域を含んでいる。これら領域は、第1部分A1及び第2部分A2が互いから離間した第1状態において第1部分A1を介することなしに肉眼で観察した場合に識別が不可能又は困難な潜像を形成している。
【0126】
この潜像は、以下に説明する条件で観察することにより、識別が可能又は容易になる。即ち、潜像が顕像化する。
【0127】
図28は、
図26及び
図27の表示体を観察者が観察している様子を概略的に示す図である。
図29は、
図26及び
図27の表示体が第2状態において表示する画像の一例を示す図である。
図30は、
図26及び
図27の表示体が第2状態において表示する画像の他の例を示す図である。ここでは、第1部分A1及び第2部分A2が重なり合った第2状態では、
図26及び
図27に示すように、突出部PRの長さ方向は、印刷層12を構成している線状部の長さ方向に対して交差しているとする。
【0128】
図28では、表示体10は第2状態にある。また、
図28では、観察者OP1乃至OP3は、突出部PRの長さ方向、ここではY方向に垂直な方向から、第1部分A1を介して第2部分A2を観察している。
【0129】
観察者OP1の観察方向は、第3部分領域S3が第2部分領域S2によって隠れて見えない角度範囲内にある。上記の通り、第1部分領域S1及び第2部分領域S2は光散乱面である。それ故、この観察条件では、第3部分領域S3は表示に寄与せず、第1部分A1の第2主面はその全体が光散乱面として振る舞う。従って、観察者OP1には、
図29に示すように、表示体10は全体が白色の画像を表示しているように見える。
【0130】
観察者OP2の観察方向は、第1部分A1の第2主面に対して略垂直である。この場合、第1部分領域S1、第2部分領域S2及び第3部分領域S3の全てが表示に寄与し得る。上記の通り、第1部分領域S1及び第2部分領域S2は光散乱面であり、第3部分領域S3は平坦面である。それ故、この観察条件では、第1部分A1は、第3部分領域S3に対応した第2領域R2が、第1部分領域S1及び第2部分領域S2に対応した第1領域R1と比較して高い透過率を有するフィルタとしての役割を果たす。その結果、モアレ効果により、観察者OP2による潜像の識別が可能又は容易になる。即ち、
図30に示すように、潜像が顕像化する。
【0131】
観察者OP3の観察方向が第3部分領域S3に対して成す角度は、観察者OP2の観察方向が第3部分領域S3に対して成す角度よりも大きい。この角度を大きくすると、第2部分領域S2の表示への寄与が小さくなり、第3部分領域S3の表示への寄与が大きくなる。それ故、顕像はより鮮明に表示される。
【0132】
<第6実施形態>
図31は、本発明の第6実施形態に係る表示体において、第1部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す部分切開斜視図である。
図32は、
図31に示す構造の他の部分切開斜視図である。
【0133】
図31及び
図32に示す表示体10は、以下の点を除き、第5実施形態において説明した表示体10と同様である。
【0134】
即ち、
図31及び
図32の第1部分A1では、第2部分領域S2は、第1光散乱面である。具体的には、第2部分領域S2は、ランダムに配置された凹部又は凸部を有している。第2部分領域S2は、第1領域R1を構成している。また、第3部分領域S3及び第1部分領域S1は、それぞれ、第1平坦面及び第2平坦面である。第1部分領域S1及び第3部分領域S3は、第2領域R2を構成している。第1方向及び第2方向に平行な平面に対して第1平坦面が成す角度は、先の平面に対して第1光散乱面が成す角度と等しい。
【0135】
この表示体10を使用すること以外は、
図28を参照しながら同様の条件下で観察を行った場合、表示体10は、以下に説明する画像を表示する。
【0136】
観察者OP3の観察方向は、第2部分領域S2に対して略平行である。そして、ここでは、第3部分領域S3及び第1部分領域S1は、それぞれ、第1平坦面及び第2平坦面である。それ故、この観察条件では、第2部分領域S2は表示に殆ど寄与せず、第1部分A1はその全体が透明であるが如く振る舞う。従って、観察者OP3には、印刷層12が表示する画像がそのまま見える。
【0137】
観察者OP2の観察方向は、第1部分A1の第2主面に対して略垂直である。この場合、第1部分領域S1、第2部分領域S2及び第3部分領域S3の全てが表示に寄与し得る。上記の通り、第1部分領域S1及び第3部分領域S3は平坦面であり、第2部分領域S2は光散乱面である。それ故、この観察条件では、第1部分A1は、第1部分領域S1及び第3部分領域S3に対応した第2領域R2が、第2部分領域S2に対応した第1領域R1と比較して高い透過率を有するフィルタとしての役割を果たす。その結果、モアレ効果により、観察者OP2による潜像の識別が可能又は容易になる。
【0138】
観察者OP1の観察方向が第2部分領域S2に対して成す角度は、観察者OP2の観察方向が第2部分領域S2に対して成す角度よりも大きい。この角度を大きくすると、第3部分領域S3の表示への寄与が小さくなり、第2部分領域S2の表示への寄与が大きくなる。それ故、顕像はより鮮明に表示される。
【0139】
<第7実施形態>
図33は、本発明の第8実施形態に係る表示体において、第1部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。
【0140】
図33に示す表示体10は、以下の点を除き、第5実施形態において説明した表示体10と同様である。
【0141】
即ち、
図33の第1部分A1では、第1方向及び第2方向に平行な平面に対して第2部分領域S2が成す角度は、先の平面に対して第3部分領域S3が成す角度とは異なっている。具体的には、先の平面に対して第2部分領域S2が成す角度は、先の平面に対して第3部分領域S3が成す角度と比較してより小さい。なお、第2部分領域S2は第1平坦面であり、第3部分領域S3は第1光散乱領域であり、第1部分領域S1は第2光散乱面である。
【0142】
この構造を採用すると、
図26及び
図27を参照しながら説明した構造を採用した場合と比較して、
図29を参照しながら説明した白色画像が観察される角度範囲はより大きくなる。また、この構造を採用すると、
図26及び
図27を参照しながら説明した構造を採用した場合と比較して、
図30を参照しながら説明した顕像が観察される角度範囲はより小さくなる。
【0143】
なお、第1方向及び第2方向に平行な平面に対して第2部分領域S2が成す角度を、先の平面に対して第3部分領域S3が成す角度と比較してより大きくした構造を採用した場合、
図26及び
図27を参照しながら説明した構造を採用した場合と比較して、
図29を参照しながら説明した白色画像が観察される角度範囲はより小さくなる。また、この構造を採用すると、
図26及び
図27を参照しながら説明した構造を採用した場合と比較して、
図30を参照しながら説明した顕像が観察される角度範囲はより大きくなる。
【0144】
<第8実施形態>
図34は、本発明の第8実施形態に係る表示体において、第1部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。
【0145】
図34示す表示体10は、以下の点を除き、第5実施形態において説明した表示体10と同様である。
【0146】
即ち、
図34の第1部分A1では、突出部PRの各々は、1つの側面が第1方向及び第2方向に平行であり且つ高さ方向が第1方向に平行な四角柱である。ここでは、各四角柱の高さ方向に垂直な断面は直角四角形である。各四角柱の第2方向に垂直な2つの側面、即ち、突出部PRの2つの側面は、第2部分領域S2及び第3部分領域S3である。また、各四角柱の第2方向に平行な側面の1つ、即ち、突出部PRの上面は、第4部分領域S4である。
【0147】
第4部分領域S4及び第1部分領域S1は、それぞれ、第1光散乱面及び第2光散乱面である。具体的には、第1部分領域S1及び第4部分領域S4は、ランダムに配置された凹部又は凸部を有している。第1部分領域S1及び第4部分領域S4は、第1領域R1を構成している。また、第2部分領域S2及び第3部分領域S3は、それぞれ、第1平坦面及び第2平坦面である。第2部分領域S2及び第3部分領域S3は、第2領域R2を構成している。
【0148】
この表示体10を使用すること以外は、
図28を参照しながら同様の条件下で観察を行った場合、表示体10は、以下に説明する画像を表示する。
【0149】
観察者OP2の観察方向は、第2部分領域S2及び第3部分領域S3に対して略平行である。そして、ここでは、第4部分領域S4及び第1部分領域S1は、それぞれ、第1光散乱面及び第2光散乱面である。それ故、この観察条件では、第2部分領域S2及び第3部分領域S3は表示に殆ど寄与せず、第1部分A1はその全体が光散乱層であるが如く振る舞う。従って、観察者OP2には、
図29を参照しながら説明した白色画像が見える。
【0150】
観察者OP1の観察方向は、第2部分領域S2に対して斜めである。この場合、第1部分A1は、第2部分領域S2に対応した領域が、その他の領域と比較して高い透過率を有するフィルタとしての役割を果たす。その結果、モアレ効果により、観察者OP1による潜像の識別が可能又は容易になる。
【0151】
観察者OP3の観察方向は、第3部分領域S3に対して斜めである。この場合、第1部分A1は、第3部分領域S3に対応した領域が、その他の領域と比較して高い透過率を有するフィルタとしての役割を果たす。その結果、モアレ効果により、観察者OP3による潜像の識別が可能又は容易になる。
【0152】
<第9実施形態>
図35は、本発明の第9実施形態に係る表示体において、第1部分に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。
【0153】
図35示す表示体10は、以下の点を除き、第5実施形態において説明した表示体10と同様である。
【0154】
即ち、
図35の第1部分A1では、突出部PRの各々は、1つの側面が第1方向及び第2方向に平行であり且つ高さ方向が第1方向に平行な四角柱である。ここでは、各四角柱の高さ方向に垂直な断面は、上底が突出部PRの上面に相当し、下底が突出部PRの底面に相当する台形である。台形の脚に相当する各四角柱の2つの側面、即ち、突出部PRの2つの側面は、第2部分領域S2及び第3部分領域S3である。また、台形の上底に相当する各四角柱の側面、即ち、突出部PRの上面は、第4部分領域S4である。
【0155】
第2部分領域S2と第4部分領域S4との組み合わせは第1光散乱面であり、第1部分領域S1は第2光散乱面である。具体的には、第1部分領域S1、第2部分領域S2及び第4部分領域S4は、ランダムに配置された凹部又は凸部を有している。第1部分領域S1、第2部分領域S2及び第4部分領域S4は、第1領域R1を構成している。また、第3部分領域S3は、第1平坦面である。第3部分領域S3は、第2領域R2を構成している。
【0156】
この表示体10を使用すること以外は、
図28を参照しながら同様の条件下で観察を行った場合、表示体10は、以下に説明する画像を表示する。
【0157】
観察者OP1の観察方向では、第3部分領域S3は表示に殆ど寄与せず、第1部分A1はその全体が光散乱層であるが如く振る舞う。従って、観察者OP3には、
図29を参照しながら説明した白色画像が見える。
【0158】
観察者OP2の観察方向では、第3部分領域S3は表示へ僅かに寄与し得る。それ故、この観察条件では、第1部分A1は、第3部分領域S3に対応した第2領域R2が、第1部分領域S1、第2部分領域S2及び第4部分領域S4に対応した第1領域R1と比較して高い透過率を有するフィルタとしての役割を果たす。その結果、モアレ効果により、観察者OP2による潜像の識別が可能又は容易になる。
【0159】
観察者OP3の観察方向が第3部分領域S3に対して成す角度は、観察者OP2の観察方向が第3部分領域S3に対して成す角度よりも大きい。この角度を大きくすると、第3部分領域S3の表示への寄与が大きくなる。それ故、顕像はより鮮明に表示される。
【0160】
<第10実施形態>
図36は、本発明の第10実施形態に係る表示体を概略的に示す平面図である。なお、
図17には、冊子体を開いた状態で描いている。
【0161】
図36に示す表示体10は、冊子体である。ここでは、表示体10は、パスポートである。表示体10は、他の物品、例えば、預金通帳などの通帳であってもよい。
【0162】
表示体10は、1以上のシート10Aと表紙10Bとを含んでいる。ここでは、一例として、表示体10が含んでいるシート10Aの数は2以上であるとする。
【0163】
シート10Aは、互いに重ねられている。シート10Aの各々は、略長方形状を有している。より具体的には、シート10Aの各々の形状は、角が丸い長方形である。シート10Aの束は、その一対の短辺の中間の位置で二つ折りされている。シート10Aのうち、折り目で区分された2つの部分の各々は、一方の面に1頁が割り当てられ、他方の面に別の1頁が割り当てられる頁部である。
【0164】
表紙10Bは、二つ折りされている。表紙10Bとシート10Aの束とは、それらの折り目の位置が一致し、且つ、表示体10を閉じた状態でシート10Aの束が表紙10Bによって挟まれるように重ね合わされている。表紙10Bとシート10Aの束とは、それらの折り目の位置で綴じ合わせなどによって一体化されている。
【0165】
シート10Aの1つは、一方の頁部に第1部分A1を含んでいる。シート10Aのうち、表示体10を閉じた場合に第1部分A1を含んだ頁部と接する頁部を含んでいるものは、その頁部に第2部分A2を含んでいる。即ち、第1部分A1は、表示体10を閉じた状態で隣接する一対の頁部の一方に含まれており、第2部分A2は、それら頁部の他方に含まれている。第1部分A1及び第2部分A2は、表示体10を閉じた状態で重なり合うように配置されている。第1部分A1及び第2部分A2は、それぞれ、第1乃至第9実施形態に係る表示体10の第1部分A1及び第2部分A2と同様の構造を有している。
【0166】
第1部分A1及び第2部分A2は、それぞれ、隣り合った一対のシート10Aの一方と他方とに設けられていてもよい。或いは、第1部分A1及び第2部分A2は、同一のシート10Aに設けられていてもよい。或いは、第2部分A2を表紙10Bの裏面に設け、第1部分A1は、表示体10を閉じた場合に第2部分A2と隣接するシート10Aに設けてもよい。ここでは、一例として、第1部分A1及び第2部分A2は、それぞれ、隣り合った一対のシート10Aの一方と他方とに設けられていることとする。
【0167】
第2部分A2が設けられた頁部には、第3部分A3及び第4部分A4が更に設けられている。第3部分A3は、顔写真が記録された部分である。第4部分A4は、光学文字認識が可能な情報が、例えば、印刷によって記録された部分である。第3部分A3及び第4部分A4が設けられた頁は、所謂、データ頁である。
【0168】
第3部分A3及び第4部分A4は、他の頁部に設けてもよい。例えば、第3部分A3及び第4部分A4は、第1部分A1が設けられた頁部に設けることができる。第3部分A3及び第4部分A4は、表示体10を閉じた場合に表紙10Bと隣接する頁部に設けることが好ましい。
【0169】
第1部分A1が設けられたシート10Aが、基材としてポリマーシートを含んでいる場合、このポリマーシートとしてキャリア11を使用することができる。或いは、第1部分A1が設けられたシート10Aが、基材として紙片を含んでいる場合、紙片に窓を設け、この窓の位置に第1部分A1を設置することができる。
【0170】
同様に、第2部分A2が設けられたシート10Aが、基材としてポリマーシートを含んでいる場合、このポリマーシートとしてキャリア11を使用することができる。或いは、第2部分A2が設けられたシート10Aが、基材として紙片を含んでいる場合、紙片に窓を設け、この窓の位置に第2部分A2を設置することができる。
【0171】
なお、第1部分A1及び第2部分A2の何れも設けられていないシート10Aにおいては、基材として、ポリマーシート及び紙片の何れを使用してもよい。但し、データ頁を含むシート10Aでは、基材としてポリマーシートを使用することが好ましい。
【0172】
シート10Aの何れか、個人情報が記録されるIC(integrated circuit)チップや、このICチップと外部装置との非接触での通信を可能とするアンテナなどを内蔵していてもよい。第1部分A1が設けられた頁部にICチップやアンテナを設置する場合、それらは第1部分A1以外の部分に設置する。また、第2部分A2が設けられた頁部にICチップやアンテナを設置する場合、それらは第2部分A2以外の部分に設置する。
【0173】
この表示体10は、頁をめくることにより、第1部分A1及び第2部分A2が互いから離間した第1状態と、第1部分A1及び第2部分A2が重なり合った第2状態との間で変形可能である。また、この表示体10は、第1状態において第1部分A1を介することなしに第2部分A2を観察することができ、第2状態において第1部分A1を介して第2部分A2を観察することもできる。それ故、この表示体10は、頁をめくるといった簡単な動作により、潜像を顕像化することができる。
【0174】
この表示体10では、上記の潜像は、顕像化することによって、個別情報を表示するものであることが好ましい。個別情報は、この表示体10を他の1以上の表示体から区別可能とする情報である。一例によれば、個別情報は、生年月日及び氏名などの個人情報である。他の例によれば、個別情報は、発行年月日、発行番号及び有効期限などの発行情報である。更に他の例によれば、個別情報は、個人情報と発行情報との組み合わせである。上記の潜像を、顕像化することによって個別情報を表示するものとすることにより、偽造や変造への抑止力が高まる。
【0175】
<変形例>
上述した実施形態には、様々な変形が可能である。
例えば、第3及び第4実施形態では、第1周期P1は、サブ領域の配列方向におけるセルCの寸法の2倍である。第1周期P1は、サブ領域の配列方向におけるセルCの寸法の2倍からずれていてもよい。この場合、セルCのX方向における寸法の2倍と第1周期P1との差は、例えば、セルCのX方向における寸法の2倍に対して±25%の範囲内とする。
【0176】
第1周期P1をセルCのX方向における寸法の2倍からずらすと、顕像の色が、第1表示部DP1及び第2表示部DP2の各々の位置で、サブ領域の配列方向又はX方向に変化する。例えば、顕像の色が、第1表示部DP1及び第2表示部DP2の各々の位置で虹色に見える。
【0177】
この場合、サブ領域SR1a乃至SR1cの配列順序と、サブ領域SR2a乃至SR2cの配列順序とを逆にしてもよい。こうすると、第1表示部DP1の位置における顕像の色変化の順序と、第2表示部DP2の位置における顕像の色変化の順序とが逆になる。従って、顕像はより識別し易くなる。
【0178】
第5乃至第9実施形態において表示体10の第1部分A1について説明した構造を、第1乃至第4実施形態に係る表示体10の第1部分A1に採用してもよい。また、第5乃至第9実施形態において表示体10の第2部分A2について説明した構造を、第1乃至第4実施形態に係る表示体10の第2部分A2に採用してもよい。そのような組み合わせは、第10実施形態に係る表示体10の第1部分A1及び第2部分A2に採用してもよい。
【0179】
本発明の実施形態は、独自の単一の発明を元とした一群の実施形態である。また、本発明の側面は、単一の発明を元とした一群の側面である。従って、上記組合せに限らず、本発明の特徴は組み合わせ可能である。従って、本発明の特徴、構成、側面、及び実施形態は、組み合わせ可能であり、それら組み合わせは協同機能を発現し、相乗的な効果を発揮し得る。
【0180】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明の開示の範囲は、図示又は記載された実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含むことができる。更に、本開示の範囲は、請求項により規定される発明の特徴に限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴、及び、それら特徴のあらゆる組み合わせも含み得る。
【実施例】
【0181】
<表示体の製造>
以下のようにして、第3実施形態において説明した表示体10を製造した。
先ず、キャリア11として、透明フィルム(品名:OHPフィルム(カラーLBP&カラーPPC用)、販売元:コクヨ株式会社、材質:R-PETフィルム、厚さ:0.10mm)を用意した。このキャリア11上に、レーザープリンタ(株式会社沖データ MICROLINE(登録商標)VINCH C931dn)を用いて印刷層12を形成した。このようにして、第2部分A2を形成した。
【0182】
印刷層12には、以下の構造を採用した。即ち、印刷層12のうち、サブ領域SR1a及びSR2aに対応した部分はシアン色とし、サブ領域SR1b及びSR2bに対応した部分はマゼンタ色とし、サブ領域SR1c及びSR2cに対応した部分はイエロー色とした。印刷層12のうちセルCに対応して配列した部分の各々は、X方向における寸法が85μmとなるように形成した。これら部分のX方向における配列のピッチは130μmとした。サブ領域SR1a乃至SR1cの配列のピッチ及びサブ領域SR2a乃至SR2cの配列のピッチは、380μmとした。
【0183】
次に、
図4及び
図5を参照しながら説明した方法により、マザープレートを作製した。ここでは、マスク層32は、グラビアオフセット印刷によって形成した。マスク層32は、互いに平行な線状部が幅方向に配列してなる万線状のパターンに形成した。線状部の配列のピッチは400μmとし、幅は200μmとした。マスク層32を設けた金型基材31には、サンドブラスト処理を施し、金型基材31のマスク層32によって覆われていない部分に凹凸構造を形成した。マスク層32は、溶剤を染み込ませたウエスで拭き取ることにより除去した。
【0184】
このようにして作製したマザープレートをシリンダに嵌め込み、
図3に示すエンボスシリンダ20を得た。このエンボスシリンダ20を用いて、上記のキャリア11に熱エンボスを行ない、第1部分A1を形成した。
【0185】
以上のようにして、表示体10を製造した。ここでは、表示体10の形状は、
図1に示すように長方形状とした。また、第1部分A1と第2部分A2とは、直線Lに対して対称に位置するように形成した。
【0186】
この表示体10を展開した状態で、即ち、第1部分A1を介することなしに、第2部分A2を肉眼で観察した場合、第1表示部DP1と第2表示部DP2とを互いから区別することはできなかった。次に、この表示体10を、直線Lの位置を折り目として、二つ折りし、第1部分A1を介して第2部分A2を肉眼で観察した。その結果、第1表示部DP1と第2表示部DP2とは異なる色に見え、潜像が顕像化した。
【0187】
本開示で用いられる「部分」、「表示部」、「要素」、「領域」、「層」、「基材」、「画素」、「面」、「表示体」、「キャリア」、「物品」、及び「印刷層」という用語によって特定される対象は、物理的存在である。物理的存在は、物質的形態又は物質に囲まれた空間的形態を指すことができる。物理的存在は、その材質、物性、物理量、心理物理量、配置、形状、外形、大きさ、幅、配置の周期、統計量、記録された情報、記録されたデータ、記録されたコード、読み取れる情報、読み取れるデータ、読み取れるコード、能力、性能、外観、色、スペクトル、形成/表示する像、加工方法、検知の方法、検証の方法、及び判定の方法により特徴づけることができる。また、その物理的存在の特徴により、物理的存在は特定の機能を有することができる。特定の機能を有した物理的存在のセットは、それら物理的存在の機能による相乗的効果を発現できる。
【0188】
用語、構成、特徴、側面、及び実施形態を解釈する場合、必要に応じて図面を参照すべきである。図面により、直接的かつ一義的に導き出せる事項は、テキストと同等に補正の根拠となるべきである。
【0189】
本開示および特に請求の範囲で使用される用語は、一般的に、「オープンな」用語として意図される(例えば、「有する」という用語は、「少なくとも有する」と解釈すべきであり、「含む」という用語は「含むがそれに限定されない」などと解釈されるべきである)。更に、請求項に明示的に特定の数が記載されていない場合、特定の数の意図は存在しない。例えば、理解を助けるために、請求の範囲は、「少なくとも1つ」及び「1つ又は複数」の導入句の使用を含み、請求の列挙を導入することができる。しかしながら、そのような語句の使用が、不定冠詞「a」又は「an」による記載を導入した請求項を含む特定の請求項を、その記載だけから、そのような記載を1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではない。「1つ以上」又は「少なくとも1つ」の語句は、「1つ又は1つ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0190】
10…表示体、11…キャリア、12…印刷層、20…エンボスシリンダ、21…金属基材、31…金型基材、32…マスク層、A1…第1部分、A2…第2部分、A3…第3部分、A4…第4部分、BR…帯状領域、C…セル、DP1…第1表示部、DP2…第2表示部、OP1…観察者、OP2…観察者、OP3…観察者、P1…第1周期、P2…第2周期、R1…第1領域、R2…第2領域、S1…第1部分領域、S2…第2部分領域、S3…第3部分領域、S4…第4部分領域、SR1…サブ領域、SR1a…サブ領域、SR1b…サブ領域、SR1c…サブ領域、SR2…サブ領域、SR2a…サブ領域、SR2b…サブ領域、SR2c…サブ領域、SR3…サブ領域、SR4…サブ領域、W1…幅、W2…幅。