(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】排気浄化システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/36 20060101AFI20250408BHJP
【FI】
F01N3/36 C
F01N3/36 B
(21)【出願番号】P 2022004465
(22)【出願日】2022-01-14
【審査請求日】2024-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 壮
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-275666(JP,A)
【文献】特開2020-109289(JP,A)
【文献】特開2020-020314(JP,A)
【文献】特開2018-135788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00、 3/02、 3/04- 3/38、
9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気管内に反応液を噴射して、噴射した前記反応液と排気ガスとを混合させて後処理装置に流入させて前記排気ガスを浄化する排気浄化システムであって、
前記排気浄化システムは、
前記排気ガスの流れる方向と交わる方向に向けて前記反応液を噴射する噴射弁と、
前記噴射弁から噴射された前記反応液を衝突させる衝突面を有する分散装置と、
前記噴射弁から噴射する前記反応液の圧力である噴射圧を調整する噴射圧調整装置と、
前記後処理装置と、
前記噴射弁と前記噴射圧調整装置を制御する制御装置と、
を有しており、
前記制御装置は、
前記内燃機関の運転状態に基づいて前記排気ガスの流量である排気ガス流量を取得する排気ガス流量取得部と、
前記排気ガス流量取得部にて取得した前記排気ガス流量に応じて前記噴射圧調整装置を制御する噴射圧調整部と、
を有して
おり、
前記噴射圧調整装置は、
前記内燃機関に燃料を噴射するインジェクタに供給する燃料を所定圧力で蓄えるコモンレールから前記噴射弁へ燃料を導く燃料配管と、
前記噴射弁に繋がる前記燃料配管内における燃料の圧力を調整する圧力調整バルブと、
を有しており、
前記制御装置は、
前記排気ガス流量取得部にて取得した前記排気ガス流量に応じた目標噴射圧を取得する目標噴射圧取得部を有しており、
前記噴射圧調整部にて、前記噴射圧が前記目標噴射圧取得部にて取得した目標噴射圧となるように前記圧力調整バルブを駆動する、
排気浄化システム。
【請求項2】
内燃機関の排気管内に反応液を噴射して、噴射した前記反応液と排気ガスとを混合させて後処理装置に流入させて前記排気ガスを浄化する排気浄化システムであって、
前記排気浄化システムは、
前記排気ガスの流れる方向と交わる方向に向けて前記反応液を噴射する噴射弁と、
前記噴射弁から噴射された前記反応液を衝突させる衝突面を有する分散装置と、
前記噴射弁から噴射する前記反応液の圧力である噴射圧を調整する噴射圧調整装置と、
前記後処理装置と、
前記噴射弁と前記噴射圧調整装置を制御する制御装置と、
を有しており、
前記制御装置は、
前記内燃機関の運転状態に基づいて前記排気ガスの流量である排気ガス流量を取得する排気ガス流量取得部と、
前記排気ガス流量取得部にて取得した前記排気ガス流量に応じて前記噴射圧調整装置を制御する噴射圧調整部と、
を有しており、
前記制御装置は、
前記排気ガス流量取得部にて取得した前記排気ガス流量に応じた目標噴射圧を取得する目標噴射圧取得部を有しており、
前記噴射圧調整部にて、前記噴射圧が前記目標噴射圧取得部にて取得した目標噴射圧となるように
前記噴射圧調整装置を駆動
し、
前記反応液は、燃料であり、
前記目標噴射圧は、
前記排気ガス流量が多くなるほど高い値に設定されており、かつ、前記排気ガスの温度が高くなるほど高い値に設定されている、
排気浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気管内に反応液を噴射して、噴射した反応液と排気ガスとを混合させて後処理装置に流入させて排気ガスを浄化する排気浄化システムに関する。
【0002】
従来、触媒の活性化促進、あるいは、微粒子捕集フィルタの再生のため排気ガス温度を上昇させる場合に、排気管に設けた噴射弁から排気管内に燃料を噴射し、酸化触媒にて反応させることが知られている。燃料噴射に際しては、排気ガス中に燃料を一様に分散したうえで酸化触媒に流入させることが望ましい。そこで、酸化触媒の上流側に分散装置を設け、分散装置に向けて噴射弁から燃料を噴射し、噴射した燃料を分散装置に衝突させることで燃料を微粒化させるとともに分散させている(特許文献1参照)。
【0003】
排気管内を流れる排気ガスの流量は、常に一定ではなく、内燃機関の負荷によって変動する。そのため、噴射弁から噴射した燃料を分散装置に確実に当てるには、噴孔を分散装置に向けて狙いを定めるだけでは足らず、噴孔から射出され空中を飛んでいく燃料が排気ガスに流され得ることも考慮する必要がある。例えば分散装置を排気ガスの下流側に向けて長くすれば、射出された燃料が排気ガスに流されても、分散装置に燃料を確実に当てることができる。あるいは、噴射弁の噴射圧を高くして射出中の燃料の貫徹力を高めれば、排気ガスに流されるのを抑制できるので、分散装置に燃料を確実に当てることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、分散装置を必要以上に大きくしてしまうと、その分だけ排気系の圧力損失が増加し、燃費悪化や最大出力の低下を招くので好ましくない。一方、噴射弁の噴射圧を高くすると、例えば排気ガスの流量が少ない場合、分散装置に衝突して跳ね返った燃料が燃料噴射弁に付着してデポジットとなり、噴孔詰まりを起こす場合があるので好ましくない。
【0006】
本発明は、排気管内に配置した分散装置に向けて噴射弁から反応液を噴射して分散させる排気浄化システムにおいて、噴射弁の噴孔詰まりを起こさず、かつ、分散装置の大きさを必要最小限とすることができる排気浄化システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの特徴によると、排気浄化システムは、内燃機関の排気管内に反応液を噴射して、噴射した前記反応液と排気ガスとを混合させて後処理装置に流入させて前記排気ガスを浄化する排気浄化システムであって、前記排気浄化システムは、前記排気ガスの流れる方向と交わる方向に向けて前記反応液を噴射する噴射弁と、前記噴射弁から噴射された前記反応液を衝突させる衝突面を有する分散装置と、前記噴射弁から噴射する前記反応液の圧力である噴射圧を調整する噴射圧調整装置と、前記後処理装置と、前記噴射弁と前記噴射圧調整装置を制御する制御装置と、を有しており、前記制御装置は、前記内燃機関の運転状態に基づいて前記排気ガスの流量である排気ガス流量を取得する排気ガス流量取得部と、前記排気ガス流量取得部にて取得した前記排気ガス流量に応じて前記噴射圧調整装置を制御する噴射圧調整部と、を有している。
【0008】
これによれば、排気ガスの流量の変化に応じて、噴射弁の噴射圧が調整される。そのため、例えば、排気ガス流量が少ない場合には、燃料の跳ね返りによる噴孔詰まりの防止を重視し、噴射圧を下げ、噴孔から射出され空中を飛んでいく燃料のスピードを比較的遅くする。これにより、分散装置で跳ね返って微粒化された粒子状の燃料は、噴射弁まで到達する運動エネルギーを有さず、粒子状の燃料が噴射弁に付着することはない。しかも、射出中の燃料の貫徹力が弱まったところで、そもそも排気ガス流量が少ないので、射出された燃料の衝突点が当初狙った位置から大きくずれることはない。また、例えば、排気ガス流量が多い場合には、衝突点のずれ防止を重視し、噴射圧を上げて燃料の貫徹力を高め、噴孔から射出され空中を飛んでいくスピードを比較的速くする。これにより燃料の衝突点が当初狙った位置から大きくずれることはない。しかも、分散装置で跳ね返って微粒化された粒子状の燃料は、スピードが落ちて貫徹力が弱まり排気ガスに流されるため、分散装置で跳ね返った粒子状の燃料が燃料噴射弁に付着することもない。そして、排気ガス流量の変化に関わらず、燃料の衝突点が当初狙った位置から大きくずれることもない。したがって、噴射弁の噴孔詰まりを起こさず、かつ、分散装置の大きさを必要最小限とすることができる。
【0009】
本発明の他の特徴によると、排気浄化システムにおいて、前記噴射圧調整装置は、前記噴射弁に前記反応液を圧送する圧送ポンプを有しており、前記制御装置は、前記排気ガス流量取得部にて取得した前記排気ガス流量に応じた目標噴射圧を取得する目標噴射圧取得部を有しており、前記噴射圧調整部にて、前記噴射圧が前記目標噴射圧取得部にて取得した目標噴射圧となるように前記圧送ポンプを駆動する。
【0010】
これによれば、本発明に係る排気浄化システム専用の圧送ポンプを設けて燃圧を制御するので、噴射弁の噴射圧を精度よく目標噴射圧に近付けることができる。
【0011】
本発明の他の特徴によると、排気浄化システムにおいて、前記噴射圧調整装置は、前記内燃機関に燃料を噴射するインジェクタに供給する燃料を所定圧力で蓄えるコモンレールから前記噴射弁へ燃料を導く燃料配管と、前記噴射弁に繋がる前記燃料配管内における燃料の圧力を調整する圧力調整バルブと、を有しており、前記制御装置は、前記排気ガス流量取得部にて取得した前記排気ガス流量に応じた目標噴射圧を取得する目標噴射圧取得部を有しており、前記噴射圧調整部にて、前記噴射圧が前記目標噴射圧取得部にて取得した目標噴射圧となるように前記圧力調整バルブを駆動する。
【0012】
これによれば、本発明に係る排気浄化システム専用の圧送ポンプを設置するスペースを設ける必要がなく既存のコモンレールにて燃料噴射弁に燃料を供給するため、圧送ポンプを設置する場合と比較して、噴射圧調整装置の小型化を図ることができる。
【0013】
本発明の他の特徴によると、排気浄化システムにおいて、前記目標噴射圧は、前記排気ガス流量が多くなるほど高い値に設定されており、かつ、前記排気ガスの温度が高くなるほど高い値に設定されている。
【0014】
これによれば、噴孔から射出された燃料が、排気ガスの流量や温度にかかわらず、排気ガスに流されることなく、かつ、分散装置の衝突面に衝突する前に気化することなく、燃料が確実に衝突面に到達し、燃料の微粒化や排気ガス中への分散を発生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の排気浄化システムを備えた内燃機関システムの全体構成を示す図である。
【
図2】[噴射圧調整処理]の処理手順の例を説明するフローチャートである。
【
図3】排気ガス流量・目標噴射圧特性の例を説明する図である。
【
図4】目標噴射圧・ポンプ回転数特性の例を説明する図である。
【
図5】排気ガス流量が少ない時に射出された燃料と、分散板に衝突して微粒化された燃料を説明する図である。
【
図6】排気ガス流量が多い時に射出された燃料と、分散板に衝突して微粒化された燃料を説明する図である。
【
図7】他の実施形態に係る[噴射圧調整処理]の処理手順の例を説明するフローチャートである。
【
図8】他の実施形態に係る排気浄化システムを備えた内燃機関システムの全体構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
●[内燃機関システム10の全体構成(
図1)]
図1を用いて、本発明に係る排気浄化システム1を備えた内燃機関システム10の全体構成について説明する。
図1は、本発明の排気浄化システム1を備えた内燃機関システム10の全体構成を示す図である。なお
図1における内燃機関11は、例えばディーゼルエンジンであり、内燃機関11からは、粒子状物質(PM:Particulate Matter)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を含む排気ガスが排出される。以下、
図1に示す内燃機関システム10を、吸気側から排気側に向かって順に説明する。
【0017】
吸入空気流量検出装置9aは、例えば吸気流量センサであり、内燃機関11の吸気通路13に設けられて内燃機関11が吸入した空気の流量に応じた検出信号を制御装置4に出力する。アクセル開度検出装置9b(例えば、アクセル開度センサ)は、運転者が操作するアクセルの開度(すなわち、運転者の要求負荷)に応じた検出信号を制御装置4に出力する。回転検出装置9cは、例えば回転センサであり、内燃機関11のクランクシャフトの回転数(すなわち、エンジン回転数)に応じた検出信号を制御装置4に出力する。
【0018】
内燃機関11は複数のシリンダ(気筒)を有しており、インジェクタ12a~12dが、それぞれのシリンダに設けられている。インジェクタ12a~12dには、コモンレール7と燃料配管7a~7dを介して燃料が供給されており、インジェクタ12a~12dは、制御装置4からの制御信号によって駆動され、それぞれのシリンダ内に燃料を噴射する。コモンレール7には、燃料圧力検出手段7eが設けられており、燃料ポンプ7fによって目標燃料圧力に調整された燃料が充填されている。燃料ポンプ7fは、燃料タンク7gに蓄えられた燃料7hを吸い上げてコモンレール7に圧送している。制御装置4は、燃料圧力検出手段7eを用いて検出した燃料圧力が目標燃料圧力に近づくように燃料ポンプ7fを制御する。
【0019】
内燃機関11の排気ガスは、内燃機関11に接続された排気管5に排気される。排気ガスは、内燃機関11から下流側に向かって、排気管5a、一体型酸化触媒8、排気管5b、選択式還元触媒16、排気管5cの順に流れる。
【0020】
排気管5には、上流側から、制御装置4から駆動される噴射弁2と、分散装置3と、排気温度検出装置9dが設けられている。噴射弁2は、排気管5aにおいて、排気ガスの流れる方向と交わる方向に向けて燃料(反応液)を噴射するように設けられている。噴射弁2は、制御装置4から駆動されて、酸化触媒8aよりも上流側に設けられた分散装置3へ向けて、排気ガス中で燃料を噴射する。噴射弁2は、燃料供給管2b、圧送ポンプ6を介して燃料タンク7gに繋がっており、燃料タンク7gから燃料が供給される。圧送ポンプ6は、燃料供給管2bを介して噴射弁2に燃料を圧送する。噴射弁2には、燃圧センサ2aが設けられており、噴射弁2に供給される燃料の圧力を検出し、燃料の圧力に応じた検出信号を制御装置4に出力する。
【0021】
分散装置3は、排気管5aにおいて、酸化触媒8aよりも上流側に設けられている。分散装置3は、噴射弁2から噴射されて衝突した燃料を微粒化し、排気ガス中に分散して排気ガスと混合させる。分散装置3は、噴射弁2から噴射された燃料を衝突させる衝突面3aを有している。
【0022】
一体型酸化触媒8は、酸化触媒8a(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)、排気温度検出装置9e、粒子状物質除去フィルタであるDPF8c(DPF:Diesel Particulate Filter)、差圧センサ9hを有している。
【0023】
酸化触媒8aは、セラミック製の円柱状等に形成されたセル状筒体からなり、その軸方向には多数の貫通孔が形成され、それぞれの貫通孔の内面に白金(Pt)等の貴金属触媒がコーティングされている。酸化触媒8aは、所定の温度下で多数の貫通孔に排気ガスを通すことにより、排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等が酸化されて、除去される。
【0024】
粒子状物質除去フィルタ(以下、「DPF」という。)8cは、セラミックス材料等からなる多孔質な部材によって円柱状等に形成されている。多孔質のDPF8cは、流入する排気ガスを通すことで粒子状物質(PM)を捕集して、排気ガスから粒子状物質(PM)を除去する。DPF8cに粒子状物質(PM)が堆積するにつれ、DPF8cが排気ガスを通しにくくなり、捕集機能が低下する。
【0025】
排気温度検出装置9dは、例えば排気温度センサであり、酸化触媒8aの上流側の排気ガスの温度に応じた検出信号を制御装置4に出力する。排気温度検出装置9eは、例えば排気温度センサであり、酸化触媒8aの下流側(かつDPF8cの上流側)の排気ガスの温度に応じた検出信号を制御装置4に出力する。
【0026】
差圧センサ9hは、酸化触媒8aの下流側、かつ、DPF8cの上流側の排気圧力(排気管内圧力)と、DPF8cの下流側の排気管内圧力と、の差圧(圧力差)に応じた検出信号を制御装置4に出力する。ここで、差圧(圧力差)は、DPF8cに粒子状物質(PM)が多く堆積すると変化する。制御装置4は、DPF8cに粒子状物質(PM)が多く堆積して、DPF8cが排気ガスを通しにくくなっており、DPF8cに堆積した粒子状物質(PM)を除去してDPF8cを回復(再生)させる必要があるか否かを、差圧センサ9hが出力した検出信号に基づいて推定できる。
【0027】
制御装置4は、DPF8cを回復(再生)させる必要があると推定したら、DPF8cに堆積した粒子状物質(PM)を除去するために、噴射弁2に燃料(反応液)を排気ガス中に噴射させる。噴射弁2から噴射された燃料は、分散装置3の衝突面3aに衝突して飛び散ることで微粒化され、排気ガス中に分散される(
図5、6参照)。排気ガスと燃料の混合気は、一体型酸化触媒8に流入されて、一体型酸化触媒8が有する酸化触媒8aの流入側端面8bへと導かれる。
【0028】
燃料は、酸化触媒8aにて、排気ガス中に残った酸素により酸化される。そして、酸化による発熱により排気ガス温度が上昇し、排気ガスは高温になる。この高温になった排気ガスによりDPF8cの床温が上昇して、床温が所定温度以上(例えば、590[℃]以上)になると、DPF8c内に堆積した粒子状物質(PM)が燃焼焼却されて、DPF8cの捕集機能が回復(再生)される。
【0029】
一体型酸化触媒8は、排気ガス中に噴射された燃料(反応液)と排気ガスが混合された混合気が流入されて、燃料(反応液)と排気ガスを反応させる排気浄化装置の一種である。
【0030】
排気管5bは、DPF8cの下流側に接続されており、排気管5bには、排気温度検出装置9f、NOxセンサ9i、尿素水添加弁14が設けられている。
【0031】
排気温度検出装置9fは、例えば排気温度センサであり、DPF8cの下流側の排気ガスの温度に応じた検出信号を制御装置4に出力する。NOxセンサ9iは、触媒17の上流側の排気ガス中のNOxの濃度に応じた検出信号を制御装置4に出力する。
【0032】
尿素水添加弁(液体添加弁)14は、排気管5bにおいて、分散板15よりも上流側に設けられている。尿素水添加弁14は、制御装置4から駆動されて、選択式還元触媒16よりも上流側に設けられた分散板15へ向けて、排気ガス中で尿素水(反応液)を噴射(吐出、添加)する。尿素水添加弁14は、図示省略の尿素水供給管、尿素水ポンプを介して尿素水タンクに連結され、尿素水タンクから尿素水が供給される。
【0033】
分散板15は、排気管5bにおいて、選択式還元触媒16よりも上流側に設けられている。分散板15は、尿素水添加弁14から噴射された尿素水(反応液)を微粒化し、排気ガス中に分散して排気ガスと混合させる。
【0034】
選択式還元触媒16は、筒状に形成されており、内部に円柱状の触媒17が設けられている。選択式還元触媒16は、排気管5bと排気管5cの間に設けられており、排気ガス中に噴射された尿素水(反応液)と排気ガスが混合された混合気が流入されて、尿素水(反応液)と排気ガスを反応させる排気浄化装置の一種である。
【0035】
微粒状尿素水は、分散板15から触媒17の流入側端面18に到達するとともに、排気ガスの熱によってアンモニアに改質される。触媒17は、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)をアンモニアと反応させて(NOxを還元させて)浄化する触媒である。触媒17にて浄化された排気ガスは、選択式還元触媒16から排気管5cに流入する。
【0036】
排気管5cは、選択式還元触媒16の下流側に接続されており、排気管5cには、排気温度検出装置9g、NOxセンサ9jが設けられている。排気温度検出装置9gは、例えば、排気温度センサであり、選択式還元触媒16の下流側の排気ガスの温度に応じた検出信号を制御装置4に出力する。NOxセンサ9jは、選択式還元触媒16の下流側の排気ガスのNOxの濃度に応じた検出信号を制御装置4に出力する。
【0037】
制御装置4は、CPU41、RAM42、記憶装置43、タイマ44等を有している。制御装置4(CPU41)には、上述した種々の検出手段からの検出信号が入力される。制御装置4(CPU41)は、上述した種々のアクチュエータへの制御信号を出力する。なお、制御装置4の入出力は、上記の検出手段やアクチュエータに限定されるものではない。また、各部の温度や圧力等はセンサを搭載せずに推定計算により算出しても良い。制御装置4は、上記の検出手段を含めた各種の検出手段からの検出信号に基づいて内燃機関11の運転状態を検出し、上記のアクチュエータを含む各種のアクチュエータを制御する。記憶装置43は、例えばFlash-ROM等の記憶装置であり、内燃機関の制御や自己診断等を実行するためのプログラムやデータ等が記憶されている。また制御装置4(CPU41)は、排気ガス流量取得部4a、目標噴射圧取得部4b、噴射圧調整部4c等を有しているが、これらの詳細については後述する。
【0038】
以下、酸化触媒8a(後処理装置に相当)に対して、噴射弁2から燃料(反応液に相当)を分散装置3の衝突面3aに向けて噴射する排気浄化システムの例で説明する。
【0039】
●[第1の実施の形態における制御装置4の処理手順(
図2)]
内燃機関システム10における排気浄化システム1は、噴射弁2と、燃料供給管2bと、分散装置3と、圧送ポンプ6と、燃料タンク7gと、制御装置4とを有しており、分散装置3に燃料を確実に当てるため、以下の処理を実施する。
【0040】
制御装置4(CPU41)は、例えば所定時間間隔(数[ms]~数10[ms]間隔)にて、
図2に示す[噴射圧調整処理]を起動し、ステップS110に処理を進める。
【0041】
ステップS110にて制御装置4は、現在の排気ガス流量を算出し、ステップS120へ処理を進める。なお、制御装置4は、例えば吸入空気流量検出装置9a、アクセル開度検出装置9b、回転検出装置9c、排気温度検出装置9d等からの検出信号に基づいて内燃機関11の運転状態を検出し、運転状態に基づいて排気ガス流量を取得している。
【0042】
ステップS120にて制御装置4は、算出した排気ガス流量に基づいて、目標噴射圧を取得し、ステップS130へ処理を進める。制御装置4の記憶装置43には、
図3に示す排気ガス流量・目標噴射圧特性が記憶されており、制御装置4は、排気ガス流量・目標噴射圧特性と排気ガス流量に基づいて目標噴射圧を取得する。
【0043】
ステップS130にて制御装置4は、取得した目標噴射圧に基づいて、圧送ポンプ6の目標回転数を取得し、ステップS140へ処理を進める。制御装置4の記憶装置43には、
図4に示す目標噴射圧・目標回転数特性が記憶されており、制御装置4は、目標噴射圧・目標回転数特性と目標噴射圧に基づいて目標回転数を取得する。
【0044】
ステップS140にて制御装置4は、取得した目標回転数を圧送ポンプ6に指示し、
図2に示す処理を終了する。なお、上記の処理を行う場合では、燃圧センサ2aを省略してもよい。
【0045】
なおステップS110の処理を実行している制御装置4(CPU41)は、内燃機関の運転状態に基づいて前記排気ガスの流量である排気ガス流量を取得する、排気ガス流量取得部4a(
図1参照)に相当している。
【0046】
また、ステップS120の処理を実行している制御装置4(CPU41)は、排気ガス流量取得部にて取得した排気ガス流量に応じた目標噴射圧を取得する、目標噴射圧取得部4b(
図1参照)に相当している。
【0047】
ステップS140の処理を実行している制御装置4(CPU41)は、燃料噴射弁の噴射圧が目標噴射圧取得部にて取得した目標噴射圧となるように圧送ポンプを駆動する、噴射圧調整部4c(
図1参照)に相当している。
【0048】
●[反応液混合システムの作用・効果(
図5、6)]
図5は、排気ガス流量が少ない時に射出された燃料と、分散板に衝突して微粒化された燃料を説明する図である。
図5に示すように噴射弁2は、先端に例えば2つの噴孔2e、2fを有している。分散装置3は、噴孔2e、2fの下方に位置するように、かつ、衝突面3aが排気ガスの流れ方向と平行となるように、排気管5aに設けられている。噴孔2e、2fからは、燃料F1が排気ガスの流れる方向と交わる方向に射出される。噴孔2e、2fは、分散装置3の衝突面3aに向けられており、それぞれ衝突面3aにおける一点に狙いが定められている。なお、噴孔2e、2fの数は、2つに限られず、1つでも、3つ以上であってもよい。
【0049】
本発明に係る排気浄化システム1によれば、排気管5aを流れる排気ガス流量が少ない場合、それに応じて圧送ポンプ6の回転数が下がる。その結果、噴射弁2の噴射圧も下がる。噴射圧の低い噴射弁2から噴射された燃料F1は、噴孔2e、2fから射出され空中を飛んでいくスピードが比較的遅い。そのため、分散装置3の衝突面3aにて跳ね返って微粒化された燃料は、噴射弁2の噴孔2e、2fまで到達するような運動エネルギーを有さない。例えば一つの粒子状の燃料F2に着目すれば、燃料F2は、噴孔2fに最短距離で到達する方向に跳ね返っているが、その方向の速度がすぐに落ちるため噴孔2fまで届かず、付着することはない。しかも、好都合なことに、射出中の燃料F1の貫徹力(排気ガスの流れに影響を受けずに横切っていく力)については弱いものの、そもそも排気ガス流量が少ないため、燃料F1の衝突点は、分散装置3の衝突面3aにおいて当初狙った位置から大きくずれることはない。
【0050】
図6は、排気ガス流量が多い時に射出された燃料と、分散板に衝突して微粒化された燃料を説明する図である。
図6に示すように排気ガス流量が多い場合、それに応じて圧送ポンプ6の回転数が上がる。その結果、噴射弁2の噴射圧も上がる。噴射圧の高い噴射弁2から噴射された燃料F3は、噴孔2e、2fから射出され空中を飛んでいくスピードが比較的速く、貫徹力が強い。そのため、排気ガスに流されることなく、分散装置3の衝突面3aにおいてほぼ当初の狙い通りの位置に衝突する。しかも、好都合なことに、分散装置3の衝突面3aにて跳ね返って微粒化された粒子状の燃料F4は、スピードが落ちて貫徹力が弱まるため、排気ガスに流される。例えば一つの粒子状の燃料F4に着目すれば、燃料F4は、噴孔2eに最短距離で到達する方向に跳ね返っているが、排気ガスに流されて、噴孔2fに付着することはない。したがって、噴射弁2の噴孔2eまで到達して付着するようなことはない。そして、噴射弁2から射出された燃料は、排気ガス流量の変化に関わらず、衝突面3aにおいてほぼ狙い通りの位置に衝突するため、ずれを考慮して分散装置3を大きくする必要がない。かくして、噴射弁2の噴孔詰まりを起こさず、かつ、分散装置3の大きさを必要最小限とすることができる。
【0051】
ところで、燃料の跳ね返りによる噴孔2e、2f詰まりを防ぐためには、分散装置3を噴孔2e、2fの下方に位置させるのではなく、例えば噴射弁2よりも下流側に設け、これに合わせて噴射弁2の先端も下流側に位置する分散装置3へ向けることも考えられる。これにより、衝突面3aで跳ね返った燃料は、ほぼ下流側に飛び散り、上流側の噴射弁2に向かって飛んでいくようなことはない。しかし、このような噴射弁2の噴孔2e、2fから射出された燃料を受けるには、大きな衝突面3aが必要となってくる。したがって、分散装置3は、できる限り噴孔2e、2fの下方に位置させることが望ましい。
【0052】
本発明の排気浄化システムは、本実施の形態で説明した外観、構成、構造等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、本実施の形態では、噴射圧調整処理としていわゆるオープンループ制御を行うものとして説明したが、燃圧センサ2aを用いて噴射弁2の実際の噴射圧を目標噴射圧に近付けるフィードバック制御を行ってもよい。
図7は、フィードバック制御を行った場合の、他の実施形態に係る[噴射圧調整処理]の処理手順の例を説明するフローチャートである。
【0053】
●[他の実施形態における制御装置4の処理手順(
図7)]
上記の実施形態では燃圧センサ2aを省略してもよいが、本実施形態では燃圧センサ2aが必要とされる。制御装置4(CPU41)は、例えば所定時間間隔(数[ms]~数10[ms]間隔)にて、
図2に示す[噴射圧調整処理]を起動し、ステップS210に処理を進める。
【0054】
ステップS210にて制御装置4は、現在の排気ガス流量を算出し、ステップS220へ処理を進める。なお、制御装置4は、例えば吸入空気流量検出装置9a、アクセル開度検出装置9b、回転検出装置9c、排気温度検出装置9d等からの検出信号に基づいて内燃機関11の運転状態を検出し、運転状態に基づいて排気ガス流量を取得している。
【0055】
ステップS220にて制御装置4は、算出した排気ガス流量に基づいて、目標噴射圧を取得し、ステップS230へ処理を進める。制御装置4の記憶装置43には、
図3に示す排気ガス流量・目標噴射圧特性が記憶されており、制御装置4は、排気ガス流量・目標噴射圧特性と排気ガス流量に基づいて目標噴射圧を取得する。
図3に示す排気ガス流量・目標噴射圧特性では、排気ガス流量が多くなるほど、高い値の目標噴射圧が取得される。
【0056】
ステップS230にて制御装置4は、燃圧センサ2aを用いて検出した圧力が、取得した目標噴射圧に近付くように圧送ポンプ6の回転数をフィードバック制御し、
図7に示す処理を終了する。
【0057】
ステップS230の処理を実行している制御装置4(CPU41)は、燃料噴射弁の噴射圧が目標噴射圧取得部にて取得した目標噴射圧となるように圧送ポンプを駆動する、噴射圧調整部4c(
図1参照)に相当している。
【0058】
●[他の実施形態における排気浄化システム21(
図8)]
また、本実施形態において、噴射弁2の噴射圧を調整する噴射圧調整装置として、燃料タンク7g、燃料供給管2b、圧送ポンプ6を有するものとして説明した。しかし、
図8に示すように例えば、噴射圧調整装置として、コモンレール7と、燃料供給管2cと、圧力調整バルブ2dとを有するものであってもよい。燃料供給管2cは、コモンレール7から噴射弁2へ燃料を導く。燃料供給管2cには、圧力調整バルブ2dが設けられており、制御装置4は、圧力調整バルブ2dを駆動することで、噴射弁2に繋がる燃料供給管2c内における燃料の圧力を調整する。
【0059】
この場合、例えば
図7に示す処理を行い、ステップS230の処理にて、燃圧センサ2aを用いて検出した圧力が目標噴射圧に近付くように圧力調整バルブ2dの開度またはPWM制御における所定周期ごとの開時間をフィードバック制御する。
【0060】
また、本実施形態において、本発明に係る排気浄化システムを噴射弁2と分散装置3に適用させたが、尿素水添加弁14(噴射弁に相当)と、分散板15(分散装置に相当)に適用しても良い。この場合、選択式還元触媒16が後処理装置に相当し、尿素水が反応液に相当し、尿素水を圧送する圧送ポンプ(図示省略)を制御する。
【0061】
また、本実施形態において、制御装置4の記憶装置43には、排気ガス流量に基づいて目標噴射圧が取得される排気ガス流量・目標噴射圧特性が記憶され、1つの排気ガス流量に対応する1つの目標噴射圧が取得されるものとして説明した。しかし、排気ガス流量に加え、排気ガス温度も考慮し、排気ガス流量および排気ガス温度の2値に基づいて目標噴射圧が取得されるようにしてもよい。目標噴射圧は、排気ガス流量が多くなるほど高い値に設定されており、かつ、排気ガスの温度が高くなるほど高い値に設定されている。
【符号の説明】
【0062】
1、21 排気浄化システム
2 噴射弁
2a 燃圧センサ
2b、2c 燃料供給管
2d 圧力調整バルブ
2e、2f 噴孔
3 分散装置
3a 衝突面
4 制御装置
4a 排気ガス流量取得部
4b 目標噴射圧取得部
41 CPU
42 RAM
43 記憶装置
44 タイマ
5a~5c 排気管
6 圧送ポンプ
7 コモンレール
7a~7d 燃料配管
7e 燃料圧力検出手段
7f 燃料ポンプ
7g 燃料タンク
7h 燃料
8 一体型酸化触媒
8a 酸化触媒
8b 流入側端面
8c DPF
9a 吸入空気流量検出装置
9b アクセル開度検出装置
9c 回転検出装置
9d~9g 排気温度検出装置
9h 差圧センサ
10 内燃機関システム
11 内燃機関
12a~12d インジェクタ
13 吸気通路
14 尿素水添加弁
15 分散板
16 選択式還元触媒
17 触媒
18 流入側端面