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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/21 20160101AFI20250408BHJP
   H02P 6/15 20160101ALI20250408BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
H02P6/21
H02P6/15
F01N3/08 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022025719
(22)【出願日】2022-02-22
(65)【公開番号】P2023122183
(43)【公開日】2023-09-01
【審査請求日】2024-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】田處 恵大
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-024284(JP,A)
【文献】特開2013-183632(JP,A)
【文献】特開2006-033946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/21
H02P 6/15
F01N 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素配管の圧力制御を行うためのポンプモータ(2)と、
前記ポンプモータの回転数を検出する回転数検出部(10,16,17)と、
前記ポンプモータの駆動をPWM(Pulse Width Modulation)制御する制御部(3、3A~3D)とを備え、
前記制御部は、前記回転数を目標回転数に到達させるように前記ポンプモータの強制転流処理を行う前に、前記ポンプモータの回転動作を確認するテスト期間を有しており、
前記テスト期間において、テスト駆動デューティ比のPWM信号により前記ポンプモータを駆動した際に検出される前記ポンプモータの回転数と、前記テスト駆動デューティ比のPWM信号に対応する基準回転数とを比較し、その比較結果に応じて前記強制転流処理時に設定するPWM信号の強制転流デューティ比を補正する電子制御装置。
【請求項2】
前記制御部(3A)は、前記テスト期間に検出される前記ポンプモータの回転数と前記基準回転数との比に応じて、前記強制転流デューティ比を補正する請求項1記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記制御部(3C)は、基準デューティ比から所定の補正定数を減算した値に前記比を乗じた結果に対し、所定の補正定数を加算して前記強制転流デューティ比を補正する請求項記載の電子制御装置
【請求項4】
前記制御部(3B)は、前記テスト期間における電源電圧と前記強制転流処理時における電源電圧とを比較した結果にも応じて、前記強制転流デューティ比を補正する請求項1から3の何れか一項に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記制御部(3D)は、前記テスト期間において前記テスト駆動デューティ比を複数の値に変化させて、各テスト駆動デューティ比に対応するポンプモータの回転数を検出すると、それらの回転数の値に応じて前記強制転流デューティ比を補正するか否かを決定する請求項1記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記強制転流デューティ比を補正する際には、複数のテスト駆動デューティ比とそれらに対応する回転数との関係から線形補間を行った結果に基づいて、前記強制転流デューティ比を決定する請求項5記載の電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素配管の圧力制御を行うためのポンプモータを制御する電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の排気ガス等に適用される尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムについては、浄化性能の向上を図るため、起動から短時間で配管圧力を上昇させて尿素水を噴射できる状態にすることが求められている。そのためには、尿素水を圧送するポンプ用のモータを、短時間、高回転数で起動させることが重要であり、起動直後から定格回転数に近い回転数でモータを駆動させることが理想である。
【0003】
しかしながら、温度変化等によりモータや尿素水の特性が変化すると、PWM制御を行う際に同一のデューティ比でモータを駆動しても、モータの回転数が変化してしまう。そのため、回転数が高くなるモータ・尿素水特性の条件では、強制転流時の過回転がモータの定格回転数を上回ってしまうおそれがある。その事態を回避するには、起動直後の目標回転数を定格回転数よりも低い回転数にしなければならず、起動から高回転数に到達するまでの時間が長くなってしまう。一方で、回転数が低くなるようなモータ・尿素水特性の条件では、強制転流時に回転数が目標回転数まで上昇せず、目標回転数に到達する時間が長くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-48328号公報
【文献】特開2008-148379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1,2は、何れもモータの起動を短時間で行うため技術である。特許文献1に開示されている手法では、インバータ回路のデューティ差分は補正できるが、モータや尿素水の特性変化による変動については補正できない。また、特許文献2に開示されているように、強制転流時の電流制限レベルを上昇させて電流を多く流す手法を用いれば、高回転数で起動させることができる。しかしながら、上記の高回転数になるモータ・尿素水特性では定格回転数を超えてしまうため、電流制限を高回転数になるモータ・尿素水特性に合わせて設定しなければならず、定格回転数に近い目標回転数では目標回転数に到達するまでの時間を短縮することができない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、モータや尿素水の特性に合わせてポンプモータを極力短い時間で起動できる電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の電子制御装置によれば、制御部は、尿素配管の圧力制御を行うためのポンプモータの駆動をPWM制御し、ポンプモータの回転数を目標回転数に到達させるように強制転流処理を行う。
【0008】
そして制御部は、強制転流処理を行う前のテスト期間において、テスト駆動デューティ比のPWM信号によりポンプモータを駆動した際に検出される回転数と、前記テスト駆動デューティ比のPWM信号に対応する基準回転数とを比較し、その比較結果に応じて強制転流処理時に設定するPWM信号の強制転流デューティ比を補正する。このように構成すれば、テスト期間において、検出されるポンプモータの回転数に応じて強制転流デューティ比を適切に補正できるので、ポンプモータの起動を極力短時間で、且つ定格回転数を超えないように行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態であり、ポンプモータの始動制御処理の内容を示すフローチャート
図2】強制転流デューティ補正処理の内容を示すフローチャート
図3】ポンプモータの始動制御を示すタイミングチャート
図4】強制転流デューティ比を補正しない場合の図3相当図
図5】電子制御装置の構成を示す図
図6】第2実施形態であり、強制転流デューティ補正処理の内容を示すフローチャート
図7】第3実施形態であり、強制転流デューティ補正処理の内容を示すフローチャート
図8】ポンプモータの始動制御を示すタイミングチャート
図9】第4実施形態であり、強制転流デューティ補正処理の内容を示すフローチャート
図10】モータの特性が理想的である場合の回転数と駆動デューティ比との関係を示す図
図11】実際のモータの特性に対応する図10相当図
図12】強制転流デューティ比を補正する手順を説明する図(その1)
図13】強制転流デューティ比を補正する手順を説明する図(その2)
図14】強制転流デューティ比を補正する手順を説明する図(その3)
図15】第5実施形態であり、ポンプモータの始動制御を示すタイミングチャート
図16】強制転流デューティ補正処理の内容を示すフローチャート
図17】線形補間により強制転流デューティ比を補正する処理を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図5に示すように、本実施形態の電子制御装置1は、三相ブラシレスDCモータ2の駆動をPWM(Pulse Width Modulation)制御する。モータ2は、車両の排気ガスに適用される尿素SCRシステムにおいて、尿素配管の圧力制御を行うためのポンプモータである。電子制御装置1は、マイクロコンピュータ;マイコン3、制御IC4及びインバータ回路5を備えている。インバータ回路5は、スイッチング素子であるNチャネルMOSFET6を三相ブリッジ接続して構成されている。電源側の3個のFET6Hがハイサイドスイッチであり、グランド側の3個のFET6Lがローサイドスイッチである。
【0011】
電源VBとFET6Hのドレインとの間には抵抗素子7が接続されており、電源VBは、抵抗素子8を介してマイコン3の入力端子に接続されている。その入力端子とグランドとの間には、抵抗素子9及びコンデンサ10が並列に接続されている。マイコン3は、電源VBの電圧を、抵抗素子8及び9で分圧した値で検出する。また、FET6Lのソースとグランドとの間には抵抗素子11が接続されており、抵抗素子11の両端は、それぞれ抵抗素子12,13を介してマイコン3の入力端子に接続されている。それら入力端子の間には、コンデンサ14が接続されている。マイコン3は、抵抗素子11の端子電圧を検出することで、インバータ回路5に通電される電流を検出する。
【0012】
制御部に相当するマイコン3は、制御IC4にU,V,W各相の電圧指令値を入力し、制御IC4は、それらの電圧指令値を搬送波信号の電圧と比較することで各相のPWM信号を生成する。PWM信号は、各FET6のゲートに入力される。
【0013】
インバータ回路5の各相出力端子は、電子制御装置1のU,V,W相端子を介して、モータ2の一端が共通に接続されている各相コイル15U,15V,15Wの他端にそれぞれ接続されている。上記のU,V,W相端子は、制御IC4の入力端子にそれぞれ接続されている。また、インバータ回路5には、抵抗素子16及び17の直列回路が並列に接続されており、それらの共通接続点は、制御IC4の入力端子に接続されている。制御IC4は、モータ2の各相端子電圧と、抵抗素子16及び17により分圧された電源VBの中点電圧とを比較することで、モータ2のロータ位置信号をマイコン3に入力する。マイコン3は、入力されるロータ位置信号に基づいてモータ2を位置センサレス制御する。
【0014】
マイコン3には、図示しない尿素水タンクの温度を検出する温度センサ18のセンサ信号が入力されている。マイコン3は、モータ2や尿素配管、尿素タンク等を加熱するために配置されているヒータ19への通電を制御する。
【0015】
次に、本実施形態の作用について説明する。図1に示すように、マイコン3は、尿素ポンプモータ2の始動判定を開始すると(S1)、尿素水の温度が0℃以下の場合は(S2;Yes)ヒータ19に通電して解凍制御を行い(S3)、0℃より高い場合は(No)、モータ2を回転させてその動作を事前に確認するためのテスティングを実施する(S4)。テスト期間に相当するテスティングでは、テスト用に設定したテスト駆動デューティ比のPWM信号を出力してモータ2を回転させる。
【0016】
次に、テスティング時に検出されたモータ2の回転数と異常判定回転数とを比較する(S5)。異常判定回転数は、モータ2が凍結等により正常に回転しないことを判定するために設定される回転数である。異常判定回転数未満であれば(No)解凍制御回数の判定を行い(S6)、異常判定回転数以上であれば(Yes)異常判定電流の判定(S8)を行う。ステップS6において、解凍制御を実施した回数が2回以下であれば再度解凍制御(S3)を実施し、3回であればモータ異常と判定して(S7)制御を終了する。
【0017】
ステップS8では、テスティング時に検出されたモータ電流と異常判定電流値と比較し、異常判定電流値より大きければ(No)ステップS7に移行し、異常判定電流値以下であれば(Yes)強制転流時のデューティ比を補正する処理を行う(S9)。
【0018】
それから、補正された強制転流デューティ比でモータを強制転流させモータを起動させると(S10)回転数フィードバック制御に移行し、ポンプが脱調しないようにモータ2を駆動するPWMデューティを連続的に変化させながら目標回転数になるように制御する(S11)。そして、目標回転数に到達した直後は、モータ2を高回転で回転させて圧力を急速に上昇させ、圧力が上がってきたら回転数を低下させ、目標圧力となるように回転数を調節し、以降は圧力が保持されるように回転数を制御する(S12)。
【0019】
図2に示すように、ステップS9における強制転流デューティ補正処理では、テスティング時に検出されたモータ2の回転数と、テスト駆動デューティ比に対応した基準回転数を1.05倍した値とを比較し(S21)、1.05倍値以上であれば(Yes)強制転流デューティ比を予め定めた基準デューティ比よりも小さい値に補正し(S22)、1.05倍値より小さい場合は(No)基準回転数を0.95倍した値と比較する(S23)。0.95倍値より小さい場合は強制転流デューティ比を基準デューティ比よりも大きい値に補正し(S24)、0.95倍以下であれば強制転流デューティ比を基準デューティ比と同じ値に設定する(S25)。
【0020】
図4は、テスティング時にモータ2の動作確認のみを行い、強制転流デューティ補正処理を行わない場合を想定した始動制御のタイミングチャートである。テスティング時に検出された回転数の高低に関わらず、予め設定した強制転流デューティ比、つまり基準デューティ比でポンプモータを強制転流させるので、テスティング時の回転数が高くなったポンプ・尿素水特性の場合は、モータの定格回転数を超える過回転が発生する。また、テスティング時の回転数が低くなったポンプ・尿素水特性の場合は強制転流では、目標回転数までモータの回転数が上昇せずデューティ遷移の時間が長くなり、目標回転数到達時間が長くなる。
【0021】
図3は、強制転流デューティ補正処理を行った場合の始動制御のタイミングチャートである。テスティングを開始するとモータ2が回転するが、モータ2や尿素水の特性に応じて、同じ駆動デューティ比でも、実線で示す基準回転数と同等の回転数になる場合、破線で示す基準回転数よりも回転数が高くなる場合、一点鎖線で示す基準回転数よりも回転数が低くなる場合に分かれる。
【0022】
このときの回転数の値と基準回転数を比較し、例えば基準回転数の±5%以内であれば同等とすると、強制転流デューティ比を、基準とするデューティ比と同じ値、基準回転数より高い場合は基準デューティ比より小さい値、基準回転数より低い場合は基準デューティ比より大きい値に補正する。
【0023】
その後、補正された強制転流デューティでモータを強制転流させると、テスティング回転数でデューティを補正したことで、モータや尿素水の特性に関わらず目標回転数との誤差を小さく抑えることができる。強制転流の後、回転数フィードバック制御を開始し、目標回転数に到達するように駆動デューティを連続的に変化させるデューティ遷移処理を行い、目標回転数に到達した後は圧力昇圧・保持制御に移行する。強制転流での目標回転数との誤差を小さく抑えることで、目標回転数に到達する時間が短縮されている。
【0024】
以上のように本実施形態によれば、電子制御装置1において、マイコン3は、尿素配管の圧力制御を行うためのポンプモータ2の駆動をPWM制御して圧力制御を開始する前に、ポンプモータ2の回転動作を確認するテスティングを行う。その後に、モータ2の回転数を、前記圧力制御を行う際の目標回転数に到達させるように強制転流処理を行う。
【0025】
そしてマイコン3は、テスティングにおいて、テスト駆動デューティ比のPWM信号によりポンプモータ2を駆動した際に検出される回転数と、テスト駆動デューティ比のPWM信号に対応する基準回転数とを比較し、その比較結果に応じ強制転流デューティ比を補正する。このように構成すれば、テスティングで検出されるポンプモータ2の回転数に応じて強制転流デューティ比を適切に補正できるので、ポンプモータ2の回転数を目標回転数に到達させるまでの時間を極力短くすると共に、定格回転数を超えないように制御することが可能になる。
【0026】
(第2実施形態)
以下、第1実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、異なる部分について説明する。図6に示すように、第2実施形態ではマイコン3Aが、強制転流デューティ補正処理において、ステップS21及びS23で「Yes」と判断すると、強制転流デューティ比を、基準デューティ比に、基準回転数とテスティング時に検出された回転数との比を乗じたものに設定する(S26)。
【0027】
モータ2や尿素水の特性に応じた駆動条件が同一の場合、PWM制御におけるデューティ比とモータ2の回転数との間には、線形の相関関係がある。したがって、第2実施形態のように補正することで、強制転流時における回転数の変動を抑制できる。
【0028】
(第3実施形態)
図7に示すように、第3実施形態ではマイコン3Bが、強制転流デューティ補正処理において、ステップS21及びS23で「Yes」と判断すると、強制転流デューティ比を、基準デューティ比に、回転数の差分に応じた回転数補正項を乗じると共に、テスティング時に検出された電源電圧と、強制転流時に検出された電源電圧を乗じた値に補正する(S27)。そして、ステップS23で「No」と判断すると、強制転流デューティ比を、基準デューティ比に、テスティング時に検出された電源電圧と強制転流時に検出された電源電圧との比を乗じた値に補正する(S28)。
【0029】
図8は、第3実施形態におけるモータ2の回転数と電源電圧に応じた補正を行う場合の始動制御のタイミングチャートを示す。テスティング時に検出された回転数が同一でも、その後の強制転流時に一点鎖線で示すように電源電圧が低下した際に、電源電圧が一定の場合と同じ強制転流デューティ比で強制転流させると、強制転流時の回転数が低下してしまう。したがって、電源電圧が低下している場合は強制転流デューティ比が大きくなるように補正し、電源電圧が上昇している場合は強制転流デューティが小さくなるように補正することで、電源電圧が変動した場合も強制転流時の回転数の変動を抑えることができる。
【0030】
(第4実施形態)
図9に示すように、第4実施形態ではマイコン3Cが、強制転流デューティ補正処理において、ステップS21及びS23で「Yes」と判断すると、強制転流デューティ比を、基準デューティ比から補正定数を減算した値に対して、基準回転数とテスティングに検出された回転数との比を乗じ、その値に補正定数を加えた値で強制転流デューティを補正する(S29)。
【0031】
図10及び図11は、モータを駆動するPWM信号のデューティ比とモータ回転数との関係の一例である。図10に示す損失のない理想的特性のモータでは、駆動デューティ比と回転数との関係が比例関係になるが、図11に示す実際のモータでは、駆動デューティ比と回転数との関係が、線形関係にはなるが完全な比例関係にはならない。そのため、駆動デューティ比と回転数との関係を線形回帰することで得られる関数の定数項の値を補完定数として設定し、強制転流デューティの補正で補正定数を考慮した計算を行うことで補正の精度を向上させることができる。
【0032】
例えば図12に示すように、デューティ比とモータ回転数との関係が一次関数となる場合に、切片に相当する値を補正定数として減じることで、図13に示すように、両者の関係が比例関係となる。この状態で、テスティング時に得られた回転数から強制転流デューティ比を補正する。補正後に、図14に示すように、減じた補正定数を加算して実際の強制転流デューティ比を決定する。
【0033】
以上のように第4実施形態によれば、強制転流デューティ比の補正を行う際に、デューティ比とモータ回転数との関係が一次関数となる場合の、切片に相当する値を補正定数として減じて補正を行い、補正後にその補正定数を加算した結果で実際の強制転流デューティ比を決定するようにした。これにより、補正を容易に行うことができる。
【0034】
(第5実施形態)
図15に示すように、第5実施形態ではマイコン3Dが、テスティングにおいて、テスト駆動デューティ比を例えば小から大に変化させて回転数1,2を得る。テスト駆動デューティ比の小、大に応じて、基準回転数1,2が定まる。そして、図16に示すステップS31では、テスティング回転数時の回転数1が基準回転数1の1.05倍値以下で、且つテスティング回転数時の回転数2が基準回転数2の1.05倍値以下か否かを判断する。ここで「Yes」と判断するとステップS33に移行し、テスティング回転数時の回転数1が基準回転数1の0.95倍値以上で、且つテスティング回転数時の回転数2が基準回転数2の0.95倍値以上か否かを判断する。ここで「Yes」と判断すると、ステップS25に移行する。
【0035】
ステップS31又はS33で「No」と判断すると、強制転流デューティ比を、以下のように補正する(S32)。尚、「テスティングデューティ比」はテスト駆動デューティ比である。
(強制転流デューティ比)=(目標回転数-テスティング回転数2)
×{(テスティングデューティ比2)-(テスティングデューティ比1)}
/{(テスティング回転数2)-(テスティング回転数1)
+(テスティングデューティ比2)}
【0036】
すなわち、図17に示すように、テスティングデューティ比1、2に対応するテスティング回転数1、2を得ることで、目標回転数に対応する強制転流デューティ比を、線形補間により算出する。
【0037】
以上のように第5実施形態によれば、マイコン3Dは、テスティング時においてテスト駆動デューティ比を複数の値に変化させて、各テスト駆動デューティ比に対応するポンプモータの回転数を検出すると、それらの回転数の値に応じて強制転流デューティ比を補正するか否かを決定する。そして、強制転流デューティ比を補正する際には、複数のテスト駆動デューティ比とそれらに対応する回転数との関係から線形補間を行った結果に基づいて、強制転流デューティ比を決定する。これにより、強制転流デューティ比の補正を高い精度で行うことができる。
【0038】
(その他の実施形態)
ステップS2及びS3の処理は、必要に応じて行えば良い。
第3実施形態における電源電圧の比に応じた補正を、第4、第5実施形態に適用しても良い。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0039】
図面中、1は電子制御装置、2はポンプモータ、3はマイクロコンピュータ、4は制御ICを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17