(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】搬送制御装置、および搬送制御装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B65G 43/02 20060101AFI20250408BHJP
【FI】
B65G43/02 D
(21)【出願番号】P 2022037469
(22)【出願日】2022-03-10
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003643
【氏名又は名称】株式会社ダイフク
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】辻本 和史
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-169491(JP,A)
【文献】特開2010-068588(JP,A)
【文献】特開2011-221687(JP,A)
【文献】特開2010-257363(JP,A)
【文献】特開2016-062441(JP,A)
【文献】実開平06-030771(JP,U)
【文献】中国実用新案第211619130(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/00-43/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置を含む物品搬送設備において前記搬送装置が物品を搬送するときに計測される1または複数種類の計測データを取得する取得部と、
前記取得された計測データと前記計測データ毎に設定された閾値とを比較する比較部と、
前記計測データの少なくとも1種類が、前記閾値を超える場合、または、
前記計測データの少なくとも1種類が、前記閾値以下であり、前記閾値との差が所定値以内となる場合、前記搬送装置の加速度および減速度の少なくとも一方を低下させるように制御する制御部と、を備え
、
前記制御部は、前記計測データのピーク値の前記閾値に対する比率に応じて前記低下の度合を決定する、搬送制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記搬送装置が停止状態から定速移動状態に至る区間における前記加速度を低下させるように制御する、請求項1に記載の搬送制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記搬送装置が定速移動状態から停止状態に至る区間における前記減速度を低下させるように制御する、請求項1または2に記載の搬送制御装置。
【請求項4】
搬送装置を含む物品搬送設備において前記搬送装置が物品を搬送するときに計測される1または複数種類の計測データを取得する取得部と、
前記取得された計測データと前記計測データ毎に設定された閾値とを比較する比較部と、
前記計測データの少なくとも1種類が、前記閾値を超える場合、または、前記計測データの少なくとも1種類が、前記閾値以下であり、前記閾値との差が所定値以内となる場合、前記搬送装置の加速度および減速度の少なくとも一方を低下させるように制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記計測データのピーク値を所定割合だけ下げるように前記低下の度合を決定する
、搬送制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記取得された計測データの少なくとも1種類が前記閾値を超える場合、さらに、前記搬送装置の定速移動時の速度を低下させる、請求項1~
4のいずれか1項に記載の搬送制御装置。
【請求項6】
搬送装置を含む物品搬送設備において前記搬送装置が物品を搬送するときに計測される1または複数種類の計測データを取得する取得部と、
前記取得された計測データと前記計測データ毎に設定された閾値とを比較する比較部と、
前記計測データの少なくとも1種類が、前記閾値を超える場合、または、前記計測データの少なくとも1種類が、前記閾値以下であり、前記閾値との差が所定値以内となる場合、前記搬送装置の加速度および減速度の少なくとも一方を低下させるように制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記取得された計測データの少なくとも1種類が前記閾値を超える場合、さらに、前記搬送装置の定速移動時の速度を低下させ、
前記制御部は、前記計測データのピーク値の前記閾値に対する比率に応じて前記速度の低下の度合を決定する
、搬送制御装置。
【請求項7】
搬送装置を含む物品搬送設備において前記搬送装置が物品を搬送するときに計測される1または複数種類の計測データを取得する取得部と、
前記取得された計測データと前記計測データ毎に設定された閾値とを比較する比較部と、
前記計測データの少なくとも1種類が、前記閾値を超える場合、または、前記計測データの少なくとも1種類が、前記閾値以下であり、前記閾値との差が所定値以内となる場合、前記搬送装置の加速度および減速度の少なくとも一方を低下させるように制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記取得された計測データの少なくとも1種類が前記閾値を超える場合、さらに、前記搬送装置の定速移動時の速度を低下させ、
前記制御部は、前記計測データのピーク値を所定割合だけ下げるように前記速度の低下の度合を決定する
、搬送制御装置。
【請求項8】
前記計測データは、
前記計測データの計測対象または前記計測対象の近傍の振動を示すデータ、
前記計測対象に供給される電流を示すデータ、
前記計測対象または前記計測対象の近傍の温度を示すデータ、および、
前記計測対象の近傍で集音された音を示すデータ
の少なくとも何れかの種類を含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載の搬送制御装置。
【請求項9】
前記計測データの前記計測対象は、
前記搬送装置の搬送経路に設けられた、モータ、減速機、ドライブシャフト回転部、レール、ガイドローラ、およびチェン、並びに、
前記搬送装置のホイール、
の少なくとも何れかである、請求項
8に記載の搬送制御装置。
【請求項10】
搬送装置を含む物品搬送設備において前記搬送装置が物品を搬送するときに計測された1または複数種類の計測データを取得する取得ステップと、
前記取得された計測データと、前記計測データ毎に設定された閾値とを比較する比較ステップと、
前記計測データの少なくとも1種類が、前記閾値を超える場合、または、
前記計測データの少なくとも1種類が、前記閾値以下であり、前記閾値との差が所定値以内となる場合、前記搬送装置の加速度および減速度の少なくとも一方を低下させるように制御する制御ステップと、を含
み、
前記制御ステップでは、前記計測データのピーク値の前記閾値に対する比率に応じて前記低下の度合を決定する、搬送制御装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物品搬送設備における搬送装置の搬送速度を制御する搬送制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
製品の生産ラインを構成する物品搬送設備は、生産が停滞しないよう、予定外に停止することなく高稼働で運転することが求められる。よって、上記物品搬送設備は、故障等の異常の傾向が見受けられるときであっても、可能な限り異常の発生を抑制することによって、計画停止期間に至るまで運転を継続することが望ましい。
【0003】
特許文献1には、駆動モータの負荷が高くなった場合にコンベアを強制的に停止させる保護装置が採用されたコンベアが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術は、駆動モータの負荷が高くなった場合にコンベアを強制的に停止させる技術であり、コンベアの運転を継続させるための技術ではない。
【0006】
本発明の一態様は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、異常の傾向が見受けられる物品搬送設備を継続運転させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る搬送制御装置は、搬送装置を含む物品搬送設備において前記搬送装置が物品を搬送するときに計測される1または複数種類の計測データを取得する取得部と、前記取得された計測データと前記計測データ毎に設定された閾値とを比較する比較部と、前記計測データの少なくとも1種類が、前記閾値を超える場合、または、前記閾値との差が所定値以内となる場合、前記搬送装置の加速度および減速度の少なくとも一方を低下させるように制御する制御部と、を備える。
【0008】
また、本開示の一態様に係る搬送制御装置の制御方法は、搬送装置を含む物品搬送設備において前記搬送装置が物品を搬送するときに計測された1または複数種類の計測データを取得する取得ステップと、前記取得された計測データと、前記計測データ毎に設定された閾値とを比較する比較ステップと、前記計測データの少なくとも1種類が、前記閾値を超える場合、または、前記閾値との差が所定値以内となる場合、前記搬送装置の加速度および減速度の少なくとも一方を低下させるように制御する制御ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
搬送装置の加減速時に物品搬送設備にかかる負荷を減少させることができる。これにより、負荷減少前と比較して、物品搬送設備が異常に至る時期を先に延ばすことができ、その結果、物品搬送設備の運転を継続することできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態の前提となるフリクション駆動式の物品搬送設備の例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態の前提となるチェン駆動式の物品搬送設備の例を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る搬送制御装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】フリクション駆動式の物品搬送設備を簡略化して示した図である。
【
図6】
図4の領域Bに示す台車に取り付けられたホイールとレールとの関係を示す図である。
【
図7】チェン駆動式の物品搬送設備を簡略化して示した図である。
【
図8】物品搬送設備の別の例における台車の構成を示す図である。
【
図16】搬送制御装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔概要〕
本実施形態に係る搬送制御装置10は、自動車製造工場等に設けられる車体等の搬送対象物である物品を搬送するコンベヤ等を含む物品搬送設備1の搬送制御を行うものである。搬送制御装置10が搬送の制御を行う設備は、コンベヤ等を用いて物品を搬送する設備であれば、どのようなものであってもよい。なお、本実施形態では搬送装置4として台車を用いて物品の搬送を行う例を挙げて説明する。
【0012】
まず、
図1および
図2を参照して、本実施形態に係る搬送制御装置10が制御対象とする物品搬送設備1の例を説明する。
図1は、物品搬送設備1として、フリクション駆動式のコンベヤで物品を搬送する設備を示す。
図2は、チェン駆動式のコンベヤで物品を搬送する設備を示す。
【0013】
〔フリクション駆動式〕
上述したように、
図1は、物品搬送設備1の例であり、フリクション駆動式の搬送設備511を示す。搬送設備511は、下部案内用レール514に沿って、各台車515(
図4の台車23に相当)のロードバー(図示せず)に作用して台車515を走行させる複数の走行装置531が配置されている。なお、走行装置531の1台は必ず、下部案内用レール514に案内される台車515のロードバーに作用するように配置されている。各走行装置531は、ロードバーの被動側面を左右両側から挟む摩擦駆動輪532(
図5のドライブローラ24に相当)とバックアップローラ533(
図5のバックアップローラ21に相当)、および摩擦駆動輪532を駆動するモータ(図示せず)から構成され、摩擦駆動輪532とバックアップローラ533とは、ロードバーの移動経路、すなわち搬送ラインpに対し略直角水平方向に横動可能に支持されると共にバネ(図示せず)によりロードバー側へ付勢され、摩擦駆動輪532がロードバーの被動側面に確実に圧接するように構成されている。また走行装置531毎に、台車515の在席(有り無し)を、ロードバーの有無により検出する磁気センサからなる在席検出器536が設けられている。
【0014】
〔チェン駆動式〕
上述したように、
図2は、物品搬送設備1の例であり、チェン駆動式の搬送設備610の一例を示す。搬送設備610では、搬送用走行体(図示せず)の循環走行経路中に、駆動チェン624(
図7のチェン30に相当)を備えたチェン駆動区間630と、摩擦駆動区間631とが設定されている。摩擦駆動区間631における駆動方式は上述した
図1の搬送設備511と同様である。摩擦駆動区間631には、ロードバー(図示せず)の全長より長くない間隔で、摩擦駆動手段632が搬送用走行体の走行経路に沿って配設されている。摩擦駆動手段632は、摩擦駆動輪と、この摩擦駆動輪を回転駆動する減速機付きモータ、及び摩擦駆動輪を搬送用走行体のロードバーにおける摩擦駆動面の片側に圧接させるための付勢手段から構成されている。チェン駆動区間630に沿って回動するように掛張される駆動チェン624は、チェン駆動区間630の終端から始端に至る戻り経路部645において、駆動手段646(
図7の駆動装置28に相当)によって駆動されると共に、適度な張力を維持するようにテークアップ手段647によって緊張される。又、チェン駆動区間630内には、定停止位置648a,648bが設定される。
【0015】
〔搬送制御装置10の要部構成〕
次に、
図3を参照して、搬送制御装置10について説明する。
図3は、搬送制御装置10の要部構成を示す機能ブロック図である。搬送制御装置10は、台車23を含む物品搬送設備において台車23で物品を搬送するときに計測される1または複数種類の計測データを取得し、取得した計測データを用いて台車23の加速度および減速度の少なくとも一方を制御するものである。
図3に示すように、搬送制御装置10は、取得部11、比較部12および制御部13を含む。
【0016】
搬送制御装置10は、搬送装置4の移動を制御する。搬送装置4は、搬送制御装置10による指令に従って、加速、定速移動、減速、および停止を行うことにより、物品を所望の位置に搬送させるものである。物品の搬送は、繰り返し行われてよく、この場合、加速、定速移動、減速、および停止が繰り返し行われる。
【0017】
取得部11は、物品搬送設備1に含まれる搬送装置4が物品を搬送するときに計測される計測データを取得するものである。計測データの例としては、以下のものが挙げられる。なお、本明細書において、「近傍」とは「隣接位置」および「近接位置」の意味を含むものとする。
・振動データ:計測対象2または計測対象2の近傍の振動を示すデータ。
・電流データ:計測対象2に供給される電流を示すデータ。
・温度データ:計測対象2または計測対象2の近傍の温度を示すデータ。
・音データ:計測対象2の近傍で集音された音を示すデータ。
【0018】
振動データは、計測対象2またはその近傍に振動計(例えば、加速度センサ)を設置することにより得ることができる。電流データは、計測対象2に供給される電流を電流計で計測することにより得ることができる。電流が供給される計測対象2の典型例はモータ25である。温度データは、計測対象2またはその近傍に温度計を設置することにより得ることができる。音データは、計測対象2またはその近傍に集音装置(マイク)を設置することにより得ることができる。以下では、振動計、電流計、温度計、集音装置を総称してセンサ3とも呼ぶ。
【0019】
取得部11は、計測対象2またはその近傍に設置されたセンサ3により得られた各計測データを取得する。
【0020】
比較部12は、取得部11を介して取得した計測データと予め設定された閾値との比較を行う。
【0021】
制御部13は、計測データの少なくとも1種類が、閾値を超える場合、または、閾値との差が所定値以内となる場合、搬送装置4の加速度および減速度の少なくとも一方を低下させるように制御する。
【0022】
制御部13は、搬送装置4が停止状態から定速移動状態に至る区間(以下では、加速区間とも称する)における加速度を低下させるように制御してもよい。
【0023】
また、制御部13は、搬送装置4が定速移動状態から停止状態に至る区間(以下では、減速区間とも称する)における減速度を低下させるように制御してもよい。
【0024】
また、制御部13は、計測データのピーク値の閾値に対する比率に応じて加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。
【0025】
また、制御部13は、計測データのピーク値を所定割合だけ下げるように(例えば、ピーク値が20%減少するように)加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。
【0026】
制御部13は、計測データの少なくとも1種類が閾値を超える場合、さらに、搬送装置4の定速移動時の速度を低下させてもよい。
【0027】
制御部13、計測データのピーク値の閾値に対する比率に応じて速度の低下の度合を決定してもよい。
【0028】
制御部13は、計測データのピーク値を所定割合だけ下げるように(例えば、ピーク値が20%減少するように)速度の低下の度合を決定してもよい。
【0029】
〔計測対象2の例〕
次に、
図4~
図8を参照して、計測対象2の例について説明する。計測対象2としては、搬送装置4の搬送経路に設けられた、レール22、ホイール231、モータ25、減速機26、ドライブシャフト回転部27、チェン30、ガイドローラ33が挙げられる。
【0030】
図4~
図6に、レール22、ホイール231、モータ25、減速機26、ドライブシャフト回転部27の例を示す。
【0031】
図4は、フリクション駆動式の物品搬送設備1を簡略化して示した図である。また、
図5は
図4の領域Aの詳細を示す図である。
図6は、
図4の領域Bに示す台車23に取り付けられたホイール231とレール22との関係を示す図である。
【0032】
図4に示す物品搬送設備1では、台車23に備え付けられたロードバー232が、ドライブローラ24によって駆動されることにより、台車23がレール22上を移動する構成となっている。
図5に示すように、ドライブローラ24は、モータ25の回転が減速機26に伝わり、減速機26の回転に伴いドライブシャフト回転部27が回転することにより、回転する。ドライブローラ24が回転することにより、摩擦力によりロードバー232が移動し、台車23が移動する。バックアップローラ21は、ドライブローラ24と対になって、ロードバー232を挟むように設置されており、ドライブローラ24とバックアップローラ21とでロードバー232を挟むことにより、台車23を安定して移動させることができるようになっている。
【0033】
また、
図5に示すように、モータ25またはモータ25の近傍にセンサ3が設置されていてよい。同様に、減速機26または減速機26の近傍にセンサ3が設置されていてよい。モータ25またはモータ25の近傍に設置されたセンサ3は、振動、電流、温度、音をそれぞれ検出する複数のセンサを含んでいてもよい。また、減速機26または減速機26の近傍に設置されたセンサ3は、振動、温度、音をそれぞれ検出する複数のセンサを含んでいてもよい。
【0034】
また、
図6に示すように、台車23のホイール231が、レール22上を走ることにより、台車23が移動可能になっている。台車23のホイール231とレール22とは、直接、接触しており、何れかに不具合があれば、後述するように、接触に伴う騒音等が発生する構造である。
【0035】
図7にチェン30の例を示す。
図7は、チェン駆動式の物品搬送設備1を簡略化して示した図である。
図7に示す物品搬送設備1では、駆動装置28が回転することによりチェン30が駆動され、これにより、台車29が移動する構成になっている。
【0036】
図8に、物品搬送設備の別の例における台車31の構成を示す。
図8の81は、台車31を上から見た状態を示し、82は、台車31を進行方向側、または進行方向と反対側から見た状態を示す。
図8の81に示すように、本例では、台車31の両側に台車31を挟むように設けられた2つの壁状のサイドガイド32が設けられ、このサイドガイド32によって、台車31の搬送経路が形成される。そして、台車31は、ガイドローラ33および走行車輪34を備え、走行車輪34によって移動するとともに、
図8の82に示すように、ガイドローラ33がサイドガイド32に接触することによって、搬送経路を正確に移動する。
【0037】
なお、台車31は単体で運用されてもよく、複数の台車31が連結された状態で運用されてもよい。また、台車31は公知の手段で外部から駆動されてもよく、台車31自身が駆動源を備えてもよい。
【0038】
〔計測データ例〕
〔電流データ〕
次に、計測データの例を挙げて、制御部13における制御の内容について説明する。まず、計測データが、モータ25に供給される電流データであり、減速機26に異常がある場合の例について、
図9を参照しながら説明する。
図9は、モータ25に供給される電流データの変化の一例を示す図である。
【0039】
図9の801に示すように、物品搬送設備1が正常に運転されている場合、搬送装置4は、搬送制御装置10による速度指令に従い、例えば、停止状態である時刻t11から加速を始め、時刻t12の時点で定速移動状態となり、時刻t13から減速を始め、時刻t14で停止状態に至る。このとき、モータ25へ供給される電流は、
図9の801に示すように、(1)加速に伴い急峻に大きくなり最大値に至り、(2)定速移動に至ると最大値より小さい値で略一定となり、(3)減速に伴い急峻に小さくなり、(4)停止に伴い初期値に戻る。
【0040】
図9の801に示すように、正常運転時において、モータ25へ供給される電流は、加速時に閾値Th11を上回ることはなく、また、定速移動時に閾値Th12を上回ることはないから、物品搬送設備1の故障等の異常を招来し得るものではない。
【0041】
しかし、何らかの異常(例えば、減速機26のオイル漏れ)が発生したことにより、
図9の802に示すように、モータ25へ供給される電流が、加速時に閾値Th11を超えたり、定速移動時に閾値Th12を超えたりすることがある。オイル漏れ等により減速機26内部の抵抗が増すと、搬送装置4を移動させるにあたり、正常運転時より多くの電流を要するためである。この状態で物品搬送設備1の運転を継続すると、物品搬送設備1の故障等の異常を招来し得る。
【0042】
そこで、制御部13は、モータ25へ供給される電流が、加速時に閾値Th11を下回るように、または定速移動時に閾値Th12を下回るように、搬送装置4の加速度および減速度の少なくとも何れかを低下させる制御を行う。制御部13による制御後の例を
図9の803に示す。
図9の803に示すように、制御部13は、加速区間(時刻t31から時刻t32まで)における搬送装置4の加速度を、
図9の801に示した加速区間(時刻t11から時刻t12まで)における搬送装置4の加速度より低下させる。また、制御部13は、減速区間(時刻t33から時刻t34まで)における搬送装置4の減速度を、
図9の801に示した減速区間(時刻t13から時刻t14まで)における搬送装置4の減速度より低下させる。これらにより、搬送装置4の加減速時に物品搬送設備1にかかる負荷を減少させることができる。
【0043】
制御部13は、加速区間における搬送装置4の加速度および減速区間における搬送装置4の減速度の両方を低下させてもよいし、加速区間における搬送装置4の加速度のみを低下させてもよいし、減速区間における搬送装置4の減速度のみを低下させてもよい。なお、減速度を低下させることにより、振動の減少、発生する音の低下が見込まれ、物品搬送設備1にかかる負荷を減少させることができる。これにより、物品搬送設備1が異常に至る時期を先に延ばすことができ、運転を継続することができる。
【0044】
搬送装置4の加速度または減速度の低下の度合を決定する方法は限定されるものではなく、種々の方法が考えられる。例えば、制御部13は、電流のピーク値の閾値に対する比率に応じて加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。具体的には、
図9の802に示す異常時の電流のピーク値PAの閾値Th11に対する比率に応じて加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。
【0045】
また例えば、制御部13は、電流のピーク値を所定割合だけ下げるように加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。具体的には、
図9の802に示す異常時の電流のピーク値PAが所定割合だけ下がるように加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。
【0046】
また、搬送装置4の加速度または減速度を低下させることに加えて、制御部13は、搬送装置4の定速移動時の速度を低下させてもよい。具体的には、制御部13は、
図9の803に示した定速移動区間(時刻t32から時刻t33まで)における搬送装置4の速度を、
図9の801に示した定速移動区間(時刻t12から時刻t13まで)における搬送装置4の速度より低下させてもよい。
【0047】
制御部13は、搬送装置4の定速移動時の速度を低下させる場合に、ピーク値PAの閾値Th11に対する比率に応じて速度の低下の度合を決定してもよい。また、制御部13は、ピーク値PAが所定割合だけ下がるように速度の低下の度合を決定してもよい。
【0048】
〔温度データ〕
次に、計測データが、温度データである場合の例について、
図10を参照しながら説明する。
図10は、計測対象2の温度データの変化の一例を示す図である。
図10には、計測対象2として、モータ25、減速機26、ドライブシャフト回転部27、チェン30を駆動する駆動装置28、ホイール231の軸部の温度データの変化の一例を示す。
【0049】
図10に示すように、正常運転時(時刻t41以前)における計測対象2の温度は、閾値Th21よりも小さい値で略一定であるから、物品搬送設備1の故障等の異常を招来し得るものではない。
【0050】
しかし、何らかの異常が発生したことにより、
図10に示すように、計測対象2の温度が閾値Th21を超えることがある。異常の例としては、計測対象2がモータ25、減速機26であれば、オイル漏れ、計測対象2が、ドライブシャフト回転部27、チェン30を駆動する駆動装置28、ホイール231の軸部であれば、回転箇所におけるグリス切れ等が挙げられる。オイル漏れ、グリス切れ等により計測対象2内部の抵抗が増すと、それに伴い温度が上昇する。これにより、上述したように、計測対象2の温度が閾値Th21を超えることがある。
【0051】
図10に示す例では、時刻t41の時点から温度が閾値Th21を超えている。この状態で物品搬送設備1の運転を継続すると、物品搬送設備1の故障等の異常を招来し得る。
【0052】
そこで、制御部13は、搬送装置4の加速度および減速度の少なくとも一方を低下させる。搬送装置4の加速度および減速度の少なくとも一方を低下させることにより、物品搬送設備1にかかる負担を下げることができ、計測対象2の温度を閾値Th21以下とすることができる。
図10に示す例では、時刻t42以降、温度が閾値Th21以下となっている。これにより、搬送装置4の加減速時に物品搬送設備1にかかる負荷を減少させることができる。
【0053】
搬送装置4の加速度または減速度の低下の度合を決定する方法は限定されるものではなく、種々の方法が考えられる。例えば、制御部13は、温度の閾値に対する比率に応じて加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。具体的には、
図10に示す異常時の温度PBの閾値Th21に対する比率に応じて加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。
【0054】
また、制御部13は、温度を所定割合だけ下げるように加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。具体的には、
図10に示す異常時の温度PBが所定割合だけ下がるように加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。
【0055】
制御部13は、加速区間における搬送装置4の加速度および減速区間における搬送装置4の減速度の両方を低下させてもよいし、加速区間における搬送装置4の加速度のみを低下させてもよいし、減速区間における搬送装置4の減速度のみを低下させてもよい。また、搬送装置4の加速度または減速度を低下させることに加えて、制御部13は、搬送装置4の定速移動時の速度を低下させてもよい。
【0056】
制御部13は、搬送装置4の定速移動時の速度を低下させる場合に、異常時の温度PBの閾値Th21に対する比率に応じて速度の低下の度合を決定してもよい。また、制御部13は、異常時の温度PBが所定割合だけ下がるように速度の低下の度合を決定してもよい。
【0057】
〔振動データ〕
次に、計測データが、振動データである場合の例について、
図11および
図12を参照しながら説明する。
図11および
図12は、振動データの変化の一例を示す図である。
図11には、計測対象2として、ガイドローラ33、ドライブシャフト回転部27、レール22、ホイール231の振動データの変化の例を示す。
図12には、計測対象2として、モータ25、減速機26、チェン30、ドライブシャフト回転部27、レール22、ホイール231の振動データの変化の例を示す。なお、振動センサ(加速度センサ)は3軸(X軸、Y軸、Z軸)の加速度を測定している。ここでは、X軸を搬送方向、Y軸を横方向、Z軸を縦方向とする。
図11および
図12には、X軸とY軸とに生じる振動の波形を示す。また、チェン30の振動データは、チェン30を駆動する駆動装置28、チェン30を支持する支持部材(図示せず)を介して計測してもよい。
【0058】
〔周期的に振動が発生する場合〕
何らかの異常が発生した場合、周期的に振動が発生することがある。例えば、サイドガイド32(
図8参照)の一部に変形等の何らかの抵抗が発生した場合、ガイドローラ33がその抵抗に接触する度に、振動が発生する。同様に、ドライブシャフト回転部27の一部に変形等の何らかの抵抗が発生すれば、ドライブシャフト回転部27が回転する度に振動が発生する。また、レール22の一部に変形等の何らかの抵抗が発生すれば、当該レール22上をホイール231が通過する度に、振動が発生する。また、ホイール231の一部に変形等の何らかの抵抗が発生すれば、ホイール231が回転する度に、振動が発生する。このように、一部に変形等の何らかの抵抗が発生した場合、周期的に振動が発生することになる。
【0059】
周期的に振動が発生するような異常時においては、例えば
図11の1001に示すように、時刻t51A、t52A、t53A、t54A、t55A、t56Aの時点をそれぞれ過ぎたところから振動が閾値Th31を超え、かつ、時刻t51B、t52B、t53B、t54B、t55B、t56Bの時点で閾値Th32を下回る。この状態で物品搬送設備1の運転を継続すると、物品搬送設備1の故障等の異常を招来し得る。
【0060】
そこで、制御部13は、計測対象2に発生する振動が閾値Th31以下かつ閾値Th32以上に収まるように、搬送装置4の加速度および減速度の少なくとも一方を低下させる制御を行う。制御部13による制御後の例を
図11の1002に示す。
図11の1002に示す例では、振動の上側のピークである時刻t61A、t62A、t63A、t64A、t65A、t66Aの各時点において、振動が閾値Th31以下であり、かつ、振動の下側のピークである時刻t61B、t62B、t63B、t64B、t65B、t66Bの各時点において、閾値Th32以上となっている。これにより、搬送装置4の加減速時に物品搬送設備1にかかる負荷を減少させることができる。
【0061】
搬送装置4の加速度または減速度の低下の度合を決定する方法は限定されるものではなく、種々の方法が考えられる。例えば、制御部13は、振動の閾値に対する比率に応じて加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。具体的には、
図11の1001に示す異常時の振動のピーク値PCの閾値Th31に対する比率に応じて加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。また、ピーク値PCではなく、ピーク値PDの閾値Th32に対する比率に応じて加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。
【0062】
また、制御部13は、温度を所定割合だけ下げるように加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。具体的には、
図11の1001に示す異常時の振動のピーク値PCが所定割合だけ下がるように加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。また、ピーク値PCではなく、ピーク値PDが所定割合だけ下がるように加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。
【0063】
ピーク値PCが下がるように、搬送装置4の加速度および減速度の制御を行えば、振動の振幅は全体的に小さくなるので、下側のピーク値PDも閾値Th32を下回ることは無くなる。同様に、ピーク値PDが下がるように、搬送装置4の加速度および減速度の制御を行えば、振動の振幅は全体的に小さくなるので、上側のピーク値PCも閾値Th31を上回ることは無くなる。
【0064】
制御部13は、加速区間における搬送装置4の加速度および減速区間における搬送装置4の減速度の両方を低下させてもよいし、加速区間における搬送装置4の加速度のみを低下させてもよいし、は減速区間における搬送装置4の減速度のみを低下させてもよい。
【0065】
また、制御部13は、搬送装置4の加速度または減速度を低下させることに加えて、搬送装置4の定速移動時の速度を低下させてもよい。
【0066】
制御部13は、搬送装置4の定速移動時の速度を低下させる場合に、ピーク値PCの閾値Th31に対する比率に応じて速度の低下の度合を決定してもよい。なお、ピーク値PCではなく、ピーク値PDの閾値Th32に対する比率に応じて速度の低下の度合を決定してもよい。また、制御部13は、ピーク値PCが所定割合だけ下がるように速度の低下の度合を決定してもよい。なお、ピーク値PCではなく、ピーク値PDが所定割合だけ下がるように速度の低下の度合を決定してもよい。
【0067】
なお、搬送装置4の加速度および減速度の低下に伴い、搬送装置4の移動が遅くなるため、時刻t61~t66の間隔は、
図11の1001に示した時刻t51~t56の間隔よりも広がっている。
【0068】
〔正常運転時において連続して発生している振動が大きくなる場合〕
また、正常運転時において連続して発生している振動が、何らかの異常が発生した場合に正常運転時より大きくなることがある。例えば、モータ25、減速機26、ドライブシャフト回転部27、チェン30、レール22、ホイール231等は、正常運転時においても連続して多少は振動している。しかし、例えば、モータ25、減速機26、ドライブシャフト回転部27等に接続されたベアリングが摩耗した場合、グリスが切れた場合等は、抵抗が大きくなるため、振動が大きくなり、その状態が連続的に続くことになる。また、モータ25、減速機26、ドライブシャフト回転部27等の振動が大きくなれば、チェン30、レール22、ホイール231等に影響が及び、これらの振動も大きくなり、その状態が続くことになる。
【0069】
図12に、正常運転時において連続して発生している振動が、異常時に大きくなり、その状態が連続する場合の振動データの例を示す。
【0070】
図12に示す例では、時刻t91の時点から振動が閾値Th51および閾値Th52を超える状態が連続している。この状態で物品搬送設備1の運転を継続すると、物品搬送設備1の故障等の異常を招来し得る。
【0071】
そこで、制御部13は、搬送装置4の加速度および減速度の少なくとも一方を低下させる。搬送装置4の加速度および減速度の少なくとも一方を低下させることにより、物品搬送設備1にかかる負担を下げることができ、計測対象2の振動を閾値Th51および閾値Th52以下とすることができる。
図12に示す例では、時刻t92以降、振動が閾値Th51および閾値Th52以下となっている。これにより、搬送装置4の加減速時に物品搬送設備1にかかる負荷を減少させることができる。
【0072】
搬送装置4の加速度または減速度の低下の度合を決定する方法は限定されるものではなく、種々の方法が考えられる。例えば、制御部13は、振動の閾値に対する比率に応じて加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。具体的には、
図12に示す異常時の振動のピーク値PGの閾値Th51に対する比率に応じて加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。また、ピーク値PGではなく、ピーク値PHの閾値Th52に対する比率に応じて加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。
【0073】
また、制御部13は、振動を所定割合だけ下げるように加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。具体的には、
図12に示す異常時の振動のピーク値PGが所定割合だけ下がるように加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。また、ピーク値PGではなく、ピーク値PHが所定割合だけ下がるように加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。
【0074】
制御部13は、加速区間における搬送装置4の加速度および減速区間における搬送装置4の減速度の両方を低下させてもよいし、加速区間における搬送装置4の加速度のみを低下させてもよいし、減速区間における搬送装置4の減速度のみを低下させてもよい。また、搬送装置4の加速度または減速度を低下させることに加えて、制御部13は、搬送装置4の定速移動時の速度を低下させてもよい。
【0075】
制御部13は、搬送装置4の定速移動時の速度を低下させる場合に、異常時の振動のピーク値PGの閾値Th51に対する比率に応じて速度の低下の度合を決定してもよい。なお、ピーク値PGではなく、ピーク値PHの閾値Th52に対する比率に応じて速度の低下の度合を決定してもよい。また、制御部13は、異常時の振動のピーク値PGが所定割合だけ下がるように速度の低下の度合を決定してもよい。なお、ピーク値PGではなく、ピーク値PHが所定割合だけ下がるように速度の低下の度合を決定してもよい。
【0076】
〔音データ〕
次に、計測データが、音データである場合の例について、
図13~
図15を参照しながら説明する。
図13~
図15は、音データの変化の一例を示す図である。
図13および
図14には、計測対象2として、モータ25、減速機26、ドライブシャフト回転部27、レール22、ガイドローラ33、チェン30、ホイール231の音データの変化の例を示す。
図15には、計測対象2として、ドライブシャフト回転部27、レール22、チェン30、ホイール231の音データの変化の例を示す。
【0077】
〔正常運転時において連続して発生している音が大きくなる場合〕
正常運転時において連続して発生している音が、何らかの異常が発生した場合に正常運転時よりも大きくなることがある。例えば、モータ25、減速機26、ドライブシャフト回転部27、チェン30、レール22、ホイール231等は、正常運転時においても連続して多少は音が発生している。しかし、例えば、モータ25、減速機26、ドライブシャフト回転部27等に接続されたベアリングが摩耗した場合、グリスが切れた場合等は、抵抗が大きくなり、正常運転時より大きな音が発生し、その状態が連続的に続くことになる。また、チェン30、レール22、ホイール231等でも、大きな音が発生し、その状態が続くことになる。この状態で物品搬送設備1の運転を継続すると、物品搬送設備1の故障等の異常を招来し得る。この場合、制御部13は、搬送装置4の加速度および減速度の少なくとも一方を低下させて、音の発生を抑制する。
【0078】
図13の1101に、正常運転時の音データの例を示す。
図13の1101に示すように、正常運転時には、音データは、閾値Th41以下かつ閾値Th42以上の音量であるから、物品搬送設備1の故障等の異常を招来し得るものではない。しかし、何らかの異常が発生すると、例えば
図13の1102に示すように、音データは、閾値Th41を超え、閾値Th42を下回る。
図13の1102に示す例では、時刻t71~t82の各時点を過ぎたところから、閾値Th41を上回るか、閾値Th42を下回る状態が発生している。この状態で物品搬送設備1の運転を継続すると、物品搬送設備1の故障等の異常を招来し得る。
【0079】
そこで、制御部13は、音データが閾値Th41以下かつ閾値Th42以上に収まるように、搬送装置4の加速度および減速度の少なくとも一方を低下させる制御を行う。制御部13による制御後の例を、
図13の1103、および
図14の1104に示す。
図13の1103および
図14の1104に示すに示す例では、音データは、閾値Th41以下かつ閾値Th42以上となっている。これにより、搬送装置4の加減速時に物品搬送設備1にかかる負荷を減少させることができる。
【0080】
搬送装置4の加速度または減速度の低下の度合を決定する方法は限定されるものではなく、種々の方法が考えられる。例えば、制御部13は、音の閾値に対する比率に応じて加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。具体的には、
図13の1102に示す異常時の音のピーク値PEの閾値Th41に対する比率に応じて加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。また、ピーク値PEではなく、ピーク値PFの閾値Th42に対する比率に応じて加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。
【0081】
また、制御部13は、音のピーク値を所定割合だけ下げるように加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。具体的には、
図13の1102に示す異常時の音のピーク値PEが所定割合だけ下がるように加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。また、ピーク値PEではなく、ピーク値PFが所定割合だけ下がるように加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。
【0082】
ピーク値PEが下がるように、搬送装置4の加速度および減速度の制御を行えば、音の振幅は全体的に小さくなるので、下側のピーク値PFも閾値Th42を下回ることは無くなる。同様に、ピーク値PFが下がるように、搬送装置4の加速度および減速度の制御を行えば、音の振幅は全体的に小さくなるので、上側のピーク値PEも閾値Th41を上回ることは無くなる。
【0083】
制御部13は、加速区間における搬送装置4の加速度および減速区間における搬送装置4の減速度の両方を低下させてもよいし、加速区間における搬送装置4の加速度のみを低下させてもよいし、減速区間における搬送装置4の減速度のみを低下させてもよい。
【0084】
また、制御部13は、搬送装置4の加速度または減速度を低下させることに加えて、搬送装置4の定速移動時の速度を低下させてもよい。
【0085】
制御部13は、搬送装置4の定速移動時の速度を低下させる場合に、ピーク値PEの閾値Th41に対する比率に応じて速度の低下の度合を決定してもよい。また、制御部13は、ピーク値PEが所定割合だけ下がるように速度の低下の度合を決定してもよい。また、ピーク値PEではなく、ピーク値PFが所定割合だけ下がるように速度の低下の度合を決定してもよい。
【0086】
なお、制御部13による制御後における音データの振幅周期は、
図13の1103にFR2として示すように、正常運転時の振幅周期FR1(
図13の1101)と略同一か、または、
図14の1104にFR3として示すように、正常運転時の振幅周期FR1より長くなる。
【0087】
〔周期的に音が発生する場合〕
また、何らかの異常が発生した場合、周期的に大きな音が発生することがある。例えば、サイドガイド32(
図8参照)の一部に変形等の何らかの抵抗が発生した場合、ガイドローラ33がその抵抗に接触する度に、大きな音が発生する。同様に、ドライブシャフト回転部27の一部に変形等の何らかの抵抗が発生すれば、ドライブシャフト回転部27が回転する度に大きな音が発生する。また、レール22の一部に変形等の何らかの抵抗が発生すれば、当該レール22上をホイール231が通過する度に、大きな音が発生する。また、ホイール231の一部に変形等の何らかの抵抗が発生すれば、ホイール231が回転する度に、大きな音が発生する。このように、一部に変形等の何らかの抵抗が発生した場合、周期的に大きな音が発生することになる。
【0088】
周期的に大きな音が発生するような異常時においては、例えば
図15の1501に示すように、時刻t101A、t102A、t103A、t104A、t105A、t106Aの時点をそれぞれ過ぎたところから音が閾値Th61を超え、かつ、時刻t101B、t102B、t103B、t104B、t105B、t106Bの時点で閾値Th62を下回る。この状態で物品搬送設備1の運転を継続すると、物品搬送設備1の故障等の異常を招来し得る。
【0089】
そこで、制御部13は、計測対象2に発生する音が閾値Th61以下かつ閾値Th62以上に収まるように、搬送装置4の加速度および減速度の少なくとも一方を低下させる制御を行う。制御部13による制御後の例を
図15の1502に示す。
図15の1502に示す例では、音の上側のピークである時刻t111A、t112A、t113A、t114A、t115A、t116Aの各時点において、音が閾値Th61以下であり、かつ、音の下側のピークである時刻t111B、t112B、t113B、t114B、t115B、t116Bの各時点において、閾値Th62以上となっている。これにより、搬送装置4の加減速時に物品搬送設備1にかかる負荷を減少させることができる。
【0090】
搬送装置4の加速度または減速度の低下の度合を決定する方法は限定されるものではなく、種々の方法が考えられる。例えば、制御部13は、音の閾値に対する比率に応じて加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。具体的には、
図15の1501に示す異常時の音のピーク値PJの閾値Th61に対する比率に応じて加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。また、ピーク値PJではなく、ピーク値PKの閾値Th62に対する比率に応じて加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。
【0091】
また、制御部13は、温度を所定割合だけ下げるように加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。具体的には、
図15の1501に示す異常時の音のピーク値PJが所定割合だけ下がるように加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。また、ピーク値PJではなく、ピーク値PKが所定割合だけ下がるように加速度または減速度の低下の度合を決定してもよい。
【0092】
ピーク値PJが下がるように、搬送装置4の加速度および減速度の制御を行えば、音の振幅は全体的に小さくなるので、下側のピーク値PKも閾値Th62を下回ることは無くなる。同様に、ピーク値PKが下がるように、搬送装置4の加速度および減速度の制御を行えば、音の振幅は全体的に小さくなるので、上側のピーク値PJも閾値Th61を上回ることは無くなる。
【0093】
制御部13は、加速区間における搬送装置4の加速度および減速区間における搬送装置4の減速度の両方を低下させてもよいし、加速区間における搬送装置4の加速度のみを低下させてもよいし、減速区間における搬送装置4の減速度のみを低下させてもよい。
【0094】
また、制御部13は、搬送装置4の加速度または減速度を低下させることに加えて、搬送装置4の定速移動時の速度を低下させてもよい。
【0095】
制御部13は、搬送装置4の定速移動時の速度を低下させる場合に、ピーク値PJの閾値Th61に対する比率に応じて速度の低下の度合を決定してもよい。なお、ピーク値PJではなく、ピーク値PKの閾値Th62に対する比率に応じて速度の低下の度合を決定してもよい。また、制御部13は、ピーク値PJが所定割合だけ下がるように速度の低下の度合を決定してもよい。なお、ピーク値PJではなく、ピーク値PKが所定割合だけ下がるように速度の低下の度合を決定してもよい。
【0096】
なお、上記では、或る計測データが閾値を超える場合について説明したが、これに限られるものではない。制御部13は、複数種類の計測データが閾値を超える場合、搬送装置4の加速度および減速度の少なくとも何れかを低下させるものであってもよい。例えば、物品搬送設備1に供給される電流と、減速機26の温度との2つがそれぞれの閾値を超える場合に、制御部13は、搬送装置4の加速度および減速度の少なくとも何れかを低下させるものであってもよい。これにより、故障を招来する可能性がより高い場合に、搬送装置4の制御を行うことができる。
【0097】
また、上記では計測データが閾値を超える場合に、制御部13が搬送装置4の加速度および減速度の少なくとも何れかを低下させる制御を行う構成について説明した。制御部13は、計測データが閾値を超える場合のみでなく、計測データと閾値との差が所定値以内となった場合に、搬送装置4の加速度および減速度の少なくとも何れかを低下させる制御を行ってもよい。例えば、
図9の802に示した例で、電流のピーク値PAが閾値Th11以下であっても閾値Th11との差が所定値以内となった場合、制御部13は、搬送装置4の加速度および減速度の少なくとも何れかを低下させる制御を行ってもよい。これにより、電流値が閾値Th11に達する前に異常を回避することが可能となる。
【0098】
なお、上記で説明した、加速度および減速度の調整は、以下の通りに行ってもよい。制御部13は、計測データのピーク値を常時監視し、ピーク値が閾値を超えると、加速度および減速度の少なくとも何れかを少しだけ低下させる。その後も、ピーク値が閾値を超えるのであれば、さらに、加速度および減速度の少なくとも何れかを少しだけ低下させる。これを繰り返し行い、計測データのピーク値が閾値を超えないところまで、加速度および減速度の少なくとも何れかを少しだけ低下させ続け、計測データのピーク値が閾値を超えなくなったところで、加速度および減速度の調整を終了する。
【0099】
〔処理の流れ〕
次に、
図16を参照して、搬送制御装置10における処理の流れについて説明する。
図16は、搬送制御装置10の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0100】
図16に示すように、まず、搬送制御装置10の取得部11は、物品搬送設備1またはその近傍に設置されたセンサ3から計測データを取得する(S101、取得ステップ)。次に、比較部12は、取得した計測データと閾値と比較し、計測データの少なくとも1種類が、閾値を超える、または、閾値との差が所定値以内となるか否かを判定する(S102、比較ステップ)。
【0101】
そして、計測データが、閾値を超える、または、閾値との差が所定値以内となる場合、制御部13は、搬送装置4の加速度および減速度の少なくも何れかを低下させる制御を行う(S103、制御ステップ)。
【0102】
以上が、搬送制御装置10における処理の流れである。
【0103】
〔まとめ〕
以上のように、本実施形態に係る搬送制御装置10は、搬送装置4を含む物品搬送設備1において搬送装置4が物品を搬送するときに計測される1または複数種類の計測データを取得する取得部11と、取得された計測データと計測データ毎に設定された閾値とを比較する比較部12と、計測データの少なくとも1種類が、閾値を超える場合、または、閾値との差が所定値以内となる場合、搬送装置4の加速度および減速度の少なくとも一方を低下させるように制御する制御部13と、を備える。
【0104】
一般に、搬送装置4の加減速時に物品搬送設備1にかかる機械的抵抗等の負荷は、相対的に高くなることが多い。この種の負荷が物品を搬送する度に繰り返しかかる状態は、物品搬送設備1の故障等の異常を招来し得る。
【0105】
上記の構成によれば、計測データの少なくとも1種類が閾値を超える場合、または、閾値との差が所定値以内となる場合、搬送装置4の加速度および減速度の少なくとも一方を低下させる。よって、搬送装置4の加減速時に物品搬送設備1にかかる負荷を減少させることができる。
【0106】
これにより、負荷減少前と比較して、物品搬送設備1が異常に至る時期を先に延ばすことができ、その結果、物品搬送設備1の運転を継続することできる。
【0107】
〔変形例〕
〔ソフトウェアによる実現例〕
搬送制御装置10(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(取得部11、比較部12、制御部13)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0108】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0109】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0110】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0111】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0112】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 物品搬送設備
2 計測対象
3 センサ
4 搬送装置
10 搬送制御装置
11 取得部
12 比較部
13 制御部
21 バックアップローラ
22 レール
23 台車
231 ホイール
232 ロードバー
24 ドライブローラ
25 モータ
26 減速機
27 ドライブシャフト回転部
28 駆動装置
29 台車
30 チェン
31 台車
32 サイドガイド
33 ガイドローラ
34 走行車輪