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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】インバータ一体型電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20250408BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20250408BHJP
   H02K 11/33 20160101ALI20250408BHJP
   H02K 5/10 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
H02K5/22
H02M7/48 Z
H02K11/33
H02K5/10 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022046922
(22)【出願日】2022-03-23
(65)【公開番号】P2023140877
(43)【公開日】2023-10-05
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】堂尻 敬資
【審査官】谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/208445(WO,A1)
【文献】中国実用新案第219477100(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
H02M 7/48
H02K 11/33
H02K 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを収容するモータハウジングと、
前記モータを駆動するインバータを収容し、前記モータハウジングに結合固定されるインバータハウジングと、
前記インバータと前記モータとを電気的に接続する金属端子と、
を有するインバータ一体型電動機であって、
前記モータハウジング及び前記インバータハウジングには、互いに近づくように突出し、前記金属端子が挿通される端子挿通孔を備えた突出部が各々設けられ、
前記突出部は、前記端子挿通孔を取り囲むシール構造を有し、
前記モータハウジング及び前記インバータハウジングの一方には、前記突出部よりもさらに突出して前記突出部の一部を取り囲む主突条ガイド部が設けられるとともに、前記モータハウジング及び前記インバータハウジングの他方には、前記主突条ガイド部の一部を取り囲む副突条ガイド部が設けられ、
前記モータハウジングと前記インバータハウジングとの間に侵入した水分は、前記主突条ガイド部及び前記副突条ガイド部によりガイドされ、前記シール構造周りでの滞留が抑制されるようになっていることを特徴とするインバータ一体型電動機。
【請求項2】
前記モータハウジング及び前記インバータハウジングの他方には、前記主突条ガイド部に対向する凹条ガイド部が設けられている請求項1に記載のインバータ一体型電動機。
【請求項3】
前記モータハウジング及び前記インバータハウジングの他方には、前記副突条ガイド部の一部を構成するガイド溝が設けられ、
前記モータハウジングと前記インバータハウジングとの間に侵入した水分は、前記ガイド溝によりガイドされ、前記シール構造周りでの滞留が抑制されるようになっている請求項2に記載のインバータ一体型電動機。
【請求項4】
前記モータハウジング及び前記インバータハウジングには、互いに近づくように突出し、前記モータ及び前記インバータを冷却する冷却水が流れる冷却水路を備えた水路用突出部が各々設けられ、
前記水路用突出部は、前記冷却水路を取り囲む水路用シール構造を有し、
前記モータハウジング及び前記インバータハウジングの一方には、前記水路用突出部よりもさらに突出して前記水路用突出部の一部を取り囲む水路用主突条ガイド部が設けられるとともに、前記モータハウジング及び前記インバータハウジングの他方には、前記水路用主突条ガイド部の一部を取り囲む水路用副突条ガイド部が設けられ、
前記モータハウジングと前記インバータハウジングとの間に侵入した水分は、前記水路用主突条ガイド部及び前記水路用副突条ガイド部によりガイドされ、前記水路用シール構造周りでの滞留が抑制されるようになっている請求項1~請求項3の何れか一項に記載のインバータ一体型電動機。
【請求項5】
前記主突条ガイド部と、前記主突条ガイド部と対向する前記モータハウジング及び前記インバータハウジングのうちの一方のハウジングとの間には、前記突出部を囲む液状ガスケットが設けられている請求項1~請求項4の何れか一項に記載のインバータ一体型電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ一体型電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータハウジングと、インバータハウジングと、金属端子とを備えるインバータ一体型電動機が開示されている。モータハウジングは、モータを収容している。インバータハウジングは、モータを駆動するインバータを収容している。インバータハウジングは、モータハウジングに固定されている。金属端子は、インバータとモータとを電気的に接続している。モータハウジング及びインバータハウジングには、金属端子が挿通される端子挿通孔が各々設けられている。モータハウジングとインバータハウジングとの間には、シール部材が配置されている。シール部材は、端子挿通孔内への水分の侵入を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-165423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インバータ一体型電動機では、端子挿通孔への水分の侵入をより抑制できる構成が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するためのインバータ一体型電動機は、モータを収容するモータハウジングと、前記モータを駆動するインバータを収容し、前記モータハウジングに結合固定されるインバータハウジングと、前記インバータと前記モータとを電気的に接続する金属端子と、を有するインバータ一体型電動機であって、前記モータハウジング及び前記インバータハウジングには、互いに近づくように突出し、前記金属端子が挿通される端子挿通孔を備えた突出部が各々設けられ、前記突出部は、前記端子挿通孔を取り囲むシール構造を有し、前記モータハウジング及び前記インバータハウジングの一方には、前記突出部よりもさらに突出して前記突出部の一部を取り囲む主突条ガイド部が設けられるとともに、前記モータハウジング及び前記インバータハウジングの他方には、前記主突条ガイド部の一部を取り囲む副突条ガイド部が設けられ、前記モータハウジングと前記インバータハウジングとの間に侵入した水分は、前記主突条ガイド部及び前記副突条ガイド部によりガイドされ、前記シール構造周りでの滞留が抑制されるようになっていることを要旨とする。
【0006】
端子挿通孔のシール構造の周りには、主突条ガイド部及び副突条ガイド部が二重に設けられている。このため、モータハウジングとインバータハウジングとの間に侵入した水分は、主突条ガイド部及び副突条ガイド部が障壁になることによって、シール構造まで到達しにくくなる。また、モータハウジングとインバータハウジングとの間に侵入した水分は、主突条ガイド部及び副突条ガイド部によりガイドされることによって、シール構造周りでの滞留が抑制されるようになっている。よって、端子挿通孔への水分の侵入をより抑制できる。
【0007】
上記インバータ一体型電動機において、前記モータハウジング及び前記インバータハウジングの他方には、前記主突条ガイド部に対向する凹条ガイド部が設けられていてもよい。
【0008】
主突条ガイド部と凹条ガイド部とは、ラビリンス構造を形成する。このため、モータハウジングとインバータハウジングとの間に侵入した水分は、ラビリンス構造によって、シール構造までより到達しにくくなる。よって、端子挿通孔への水分の侵入をさらに抑制できる。
【0009】
上記インバータ一体型電動機において、前記モータハウジング及び前記インバータハウジングの他方には、前記副突条ガイド部の一部を構成するガイド溝が設けられ、前記モータハウジングと前記インバータハウジングとの間に侵入した水分は、前記ガイド溝によりガイドされ、前記シール構造周りでの滞留が抑制されるようになっていてもよい。
【0010】
モータハウジングとインバータハウジングとの間に侵入した水分は、副突条ガイド部を伝って副突条ガイド部の内側に侵入することがある。副突条ガイド部の内側に侵入した水分は、副突条ガイド部の一部を構成するガイド溝に入る。このため、モータハウジングとインバータハウジングとの間に侵入した水分は、ガイド溝によってガイドされることによって、シール構造周りでの滞留が抑制されるようになっている。よって、端子挿通孔への水分の侵入をさらに抑制できる。
【0011】
上記インバータ一体型電動機において、前記モータハウジング及び前記インバータハウジングには、互いに近づくように突出し、前記モータ及び前記インバータを冷却する冷却水が流れる冷却水路を備えた水路用突出部が各々設けられ、前記水路用突出部は、前記冷却水路を取り囲む水路用シール構造を有し、前記モータハウジング及び前記インバータハウジングの一方には、前記水路用突出部よりもさらに突出して前記水路用突出部の一部を取り囲む水路用主突条ガイド部が設けられるとともに、前記モータハウジング及び前記インバータハウジングの他方には、前記水路用主突条ガイド部の一部を取り囲む水路用副突条ガイド部が設けられ、前記モータハウジングと前記インバータハウジングとの間に侵入した水分は、前記水路用主突条ガイド部及び前記水路用副突条ガイド部によりガイドされ、前記水路用シール構造周りでの滞留が抑制されるようになっていてもよい。
【0012】
冷却水路のシール構造の周りには、水路用主突条ガイド部及び水路用副突条ガイド部が二重に設けられている。このため、モータハウジングとインバータハウジングとの間に侵入した水分は、水路用主突条ガイド部及び水路用副突条ガイド部が障壁になることによって、シール構造まで到達しにくくなる。また、モータハウジングとインバータハウジングとの間に侵入した水分は、水路用主突条ガイド部及び水路用副突条ガイド部によりガイドされることによって、シール構造周りでの滞留が抑制されるようになっている。よって、冷却水路への水分の侵入を抑制できる。
【0013】
上記インバータ一体型電動機において、前記主突条ガイド部と、前記主突条ガイド部と対向する前記モータハウジング及び前記インバータハウジングのうちの一方のハウジングとの間には、前記突出部を囲む液状ガスケットが設けられていてもよい。
【0014】
液状ガスケットによって、主突条ガイド部の内側への水分の侵入が抑制される。よって、端子挿通孔への水分の侵入をさらに抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、端子挿通孔内への水分の侵入をより抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態のインバータ一体型電動機の模式図である。
図2】第1実施形態のインバータ一体型電動機の部分断面図である。
図3】インバータハウジングの側面図である。
図4】モータハウジングの側面図である。
図5】ガイド部の位置を説明するためのモータハウジングの側面図である。
図6】変更例のインバータ一体型電動機の部分断面図である。
図7】変更例のインバータ一体型電動機の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、インバータ一体型電動機を具体化した一実施形態を図1図5にしたがって説明する。
図1に示すように、インバータ一体型電動機10は、モータハウジング11と、インバータハウジング12と、モータ13と、インバータ14と、金属端子15とを備えている。モータハウジング11は、モータ13を収容している。インバータハウジング12は、インバータ14を収容している。インバータハウジング12は、モータハウジング11に結合固定されている。インバータ14は、モータ13を駆動する。金属端子15は、インバータ14とモータ13とを電気的に接続している。金属端子15は、例えば、レゾルバ線やバスバである。インバータ一体型電動機10の内部には、モータ13及びインバータ14を冷却するための冷却水Wが流れる。インバータ一体型電動機10は、モータハウジング11とインバータハウジング12とが水平方向に並ぶように車両に搭載される。
【0018】
<インバータハウジング>
図2に示すように、インバータハウジング12は、モータハウジング11と対向するインバータ側対向面12aを有している。インバータ側対向面12aは、水平方向に対して垂直な面である。
【0019】
インバータハウジング12は、インバータ側対向面12aからモータハウジング11に向けて突出する突出部としてのインバータ側突出部21を有している。本実施形態のインバータ側突出部21は、略円柱状である。インバータ側突出部21は、インバータ側貫通孔21aを有している。インバータ側突出部21は、先端面21bから凹む環状のシール溝21cを有している。
【0020】
本実施形態のインバータハウジング12は、3つのインバータ側突出部21を有している。第1のインバータ側突出部21のインバータ側貫通孔21aは、金属端子15であるレゾルバ線が挿通される端子挿通孔である。第2のインバータ側突出部21のインバータ側貫通孔21aは、金属端子15であるバスバが挿通される端子挿通孔である。第3のインバータ側突出部21のインバータ側貫通孔21aは、冷却水Wが流れる冷却水路である。したがって、第3のインバータ側突出部21は、水路用突出部である。
【0021】
インバータハウジング12は、インバータ側対向面12aからモータハウジング11に向けて突出する主突条ガイド部22を有している。本実施形態のインバータハウジング12は、3つの主突条ガイド部22を有している。インバータ側対向面12aからの主突条ガイド部22の突出量は、インバータ側対向面12aからのインバータ側突出部21の突出量よりも多い。したがって、主突条ガイド部22は、インバータ側突出部21よりもさらに突出している。
【0022】
図3に示すように、主突条ガイド部22は、インバータ側突出部21の一部を囲んでいる。3つの主突条ガイド部22のうちの1つは、水路用突出部の一部を取り囲む水路用主突条ガイド部である。
【0023】
本実施形態の主突条ガイド部22は、略矩形状である。主突条ガイド部22は、第1~第4構成部22a~22dを有している。第1構成部22a及び第2構成部22bは、重力方向に沿って延びている。第1構成部22a及び第2構成部22bは、水平方向においてインバータ側突出部21の両側に位置している。第3構成部22cは、重力方向においてインバータ側突出部21よりも上側に位置している。第3構成部22cは、第1構成部22aの上端部と第2構成部22bの上端部とを接続している。第4構成部22dは、重力方向においてインバータ側突出部21よりも下側に位置している。第4構成部22dは、第2構成部22bの下端部と繋がっている。第4構成部22dは、第1構成部22aの下端部とは繋がっていない。第1構成部22aと第4構成部22dとの間には、隙間S1が設けられている。第3構成部22c及び第4構成部22dはそれぞれ、水平方向に対して傾斜している。第3構成部22c及び第4構成部22dはそれぞれ、第1構成部22aに近付くにつれて重力方向下方に向かうように傾斜している。
【0024】
インバータハウジング12は、インバータ側対向面12aから凹むインバータ側溝23を有している。インバータ側溝23は、主突条ガイド部22の一部を構成している。詳しくは、インバータ側溝23は、主突条ガイド部22の第4構成部22dの下面の一部を構成している。インバータ側溝23は、主突条ガイド部22の第4構成部22dに沿って延びている。つまり、インバータ側溝23は、主突条ガイド部22の第1構成部22aに近付くにつれて重力方向下方に向かうように傾斜している。
【0025】
<モータハウジング>
図2に示すように、モータハウジング11は、インバータハウジング12と対向するモータ側対向面11aを有している。モータ側対向面11aは、水平方向に対して垂直な面である。
【0026】
モータハウジング11は、モータ側対向面11aからインバータハウジング12に向けて突出する突出部としてのモータ側突出部31を有している。本実施形態のモータ側突出部31は、略円柱状である。モータ側突出部31は、モータ側貫通孔31aを有している。
【0027】
本実施形態のモータハウジング11は、3つのモータ側突出部31を有している。第1のモータ側突出部31のモータ側貫通孔31aは、金属端子15であるレゾルバ線が挿通される端子挿通孔である。第2のモータ側突出部31のモータ側貫通孔31aは、金属端子15であるバスバが挿通される端子挿通孔である。第3のモータ側突出部31のモータ側貫通孔31aは、冷却水Wが流れる冷却水路である。したがって、第3のモータ側突出部31は、水路用突出部である。
【0028】
モータハウジング11は、モータ側対向面11aからインバータハウジング12に向けて突出する副突条ガイド部32を有している。本実施形態のモータハウジング11は、3つの副突条ガイド部32を有している。モータ側対向面11aからの副突条ガイド部32の突出量は、モータ側対向面11aからのモータ側突出部31の突出量よりも多い。したがって、副突条ガイド部32は、モータ側突出部31よりもさらに突出している。
【0029】
図4に示すように、副突条ガイド部32は、モータ側突出部31の一部を囲んでいる。3つの副突条ガイド部32のうちの1つは、水路用突出部の一部を取り囲む水路用副突条ガイド部である。
【0030】
本実施形態の副突条ガイド部32は、略矩形状である。副突条ガイド部32は、第1~第4部位32a~32dを有している。第1部位32a及び第2部位32bは、重力方向に沿って延びている。第1部位32a及び第2部位32bは、水平方向においてモータ側突出部31の両側に位置している。第3部位32cは、重力方向においてモータ側突出部31よりも上側に位置している。第3部位32cは、第1部位32aの上端部と第2部位32bの上端部とを接続している。第4部位32dは、重力方向においてモータ側突出部31よりも下側に位置している。第4部位32dは、第2部位32bの下端部と繋がっている。第4部位32dは、第1部位32aの下端部とは繋がっていない。第1部位32aと第4部位32dとの間には、隙間S2が設けられている。第3部位32c及び第4部位32dはそれぞれ、水平方向に対して傾斜している。第3部位32c及び第4部位32dはそれぞれ、第1部位32aに近付くにつれて重力方向下方に向かうように傾斜している。
【0031】
モータハウジング11は、モータ側対向面11aから凹む凹条ガイド部33を有している。凹条ガイド部33は、モータ側突出部31を囲んでいる。凹条ガイド部33の外縁は、矩形状である。
【0032】
モータハウジング11は、モータ側対向面11aから凹むガイド溝としてのモータ側溝34を有している。モータ側溝34は、副突条ガイド部32の一部を構成している。詳しくは、モータ側溝34は、副突条ガイド部32の第3部位32cの下面の一部を構成している。モータ側溝34は、副突条ガイド部32の第3部位32cに沿って延びている。つまり、モータ側溝34は、副突条ガイド部32の第1部位32aに近付くにつれて重力方向下方に向かうように傾斜している。
【0033】
<インバータハウジングとモータハウジングとの関係>
図2に示すように、モータハウジング11とインバータハウジング12とは、モータ側対向面11aとインバータ側対向面12aとが互いに対向するように配置されている。モータ側突出部31とインバータ側突出部21とは、互いに近付くようにモータハウジング11又はインバータハウジング12から突出している。モータ側突出部31の先端面31bとインバータ側突出部21の先端面21bとは、当接している。モータ側貫通孔31aとインバータ側貫通孔21aとは、連通している。
【0034】
モータ側突出部31とインバータ側突出部21との間には、環状のシール部材16が配置されている。シール部材16は、例えば、Oリングである。シール部材16は、インバータ側突出部21のシール溝21cに配置されている。シール部材16は、シール溝21cを区画する面に密接するとともに、モータ側突出部31の先端面31bと密接している。シール部材16は、モータ側突出部31とインバータ側突出部21との間をシールしている。3つの突出部21,31のうち、端子挿通孔としての貫通孔21a,31aを有する2つの突出部21,31は、端子挿通孔を取り囲むシール構造を有している。3つの突出部21,31のうち、冷却水路としての貫通孔21a,31aを有する突出部21,31は、冷却水路を取り囲む水路用シール構造を有している。
【0035】
図2及び図5に示すように、主突条ガイド部22は、突出部21,31の一部を囲んでいる。主突条ガイド部22の先端部は、凹条ガイド部33と対向している。副突条ガイド部32は、主突条ガイド部22の一部を取り囲んでいる。つまり、インバータ側突出部21及びモータ側突出部31は、主突条ガイド部22及び副突条ガイド部32の2つのガイド部によって囲まれている。モータ側対向面11aにおける副突条ガイド部32よりも外側に位置する部分と、インバータ側対向面12aとの間には隙間が設けられている。
【0036】
[本実施形態の作用]
本実施形態の作用を説明する。
モータハウジング11及びインバータハウジング12には、互いに近づくように突出する突出部21,31が各々設けられている。突出部21,31は、貫通孔21a,31aを有している。突出部21,31は、貫通孔21a,31aを取り囲むシール構造を有している。インバータハウジング12には、インバータ側突出部21よりもさらに突出するとともに、インバータ側突出部21の一部を取り囲む主突条ガイド部22が設けられている。モータハウジング11には、主突条ガイド部22の一部を取り囲む副突条ガイド部32が設けられている。つまり、貫通孔21a,31aのシール構造の周りには、主突条ガイド部22及び副突条ガイド部32が二重に設けられている。
【0037】
このため、モータハウジング11とインバータハウジング12との間に侵入した水分は、最外周に位置する副突条ガイド部32が障壁になることによって、シール構造に向かって流れにくくなる。また、副突条ガイド部32を超えて副突条ガイド部32の内側に水分が侵入したとしても、副突条ガイド部32の内側には、主突条ガイド部22が設けられている。このため、副突条ガイド部32の内側に侵入した水分は、主突条ガイド部22が障壁になることによって、シール構造に向かって流れにくくなる。このようにモータハウジング11とインバータハウジング12との間に侵入した水分は、主突条ガイド部22及び副突条ガイド部32が二重の障壁になることによって、シール構造まで到達しにくくなる。
【0038】
また、モータハウジング11とインバータハウジング12との間に侵入した水分は、主突条ガイド部22及び副突条ガイド部32によってガイドされることによって、シール構造周りで滞留しないようになっている。以下では、主突条ガイド部22及び副突条ガイド部32による水分のガイドについて詳述する。
【0039】
まず、インバータ一体型電動機10の上方からモータハウジング11とインバータハウジング12との間に侵入した水分の流れについて説明する。
インバータ一体型電動機10の上方からモータハウジング11とインバータハウジング12との間に侵入した水分は、副突条ガイド部32の第3部位32cの上面に乗る。第3部位32cは、水平方向に対して傾斜している。このため、第3部位32cの上面に乗った水分は、第1部位32aに向かって移動した後、第1部位32aの外面を伝って重力方向下方に流れる。
【0040】
インバータ一体型電動機10の上方からモータハウジング11とインバータハウジング12との間に侵入した水分の一部は、インバータ側対向面12aと副突条ガイド部32の第3部位32cの先端部との間から副突条ガイド部32の内側に侵入することがある。
【0041】
副突条ガイド部32の第3部位32cの先端部から伝って副突条ガイド部32の内側に侵入した水分は、モータ側溝34に入る。モータ側溝34は、水平方向に対して傾斜している。このため、モータ側溝34に入った水分は、副突条ガイド部32の第1部位32aに向かって移動する。そして、モータ側溝34の端部まで移動した水分は、第1部位32aの内面を伝って重力方向下方に流れた後、副突条ガイド部32の隙間S2から副突条ガイド部32の外側に排出される。
【0042】
インバータ側対向面12aと副突条ガイド部32の第3部位32cの先端部との隙間から副突条ガイド部32の内側に侵入した水分は、主突条ガイド部22の第3構成部22cの上面に乗る。第3構成部22cは、水平方向に対して傾斜している。このため、第3構成部22cの上面に乗った水分は、主突条ガイド部22の第1構成部22aに向かって移動した後、第1構成部22aの外面を伝って重力方向下方に流れる。そして、第1構成部22aの外面を伝って流れた水分は、副突条ガイド部32の隙間S2から副突条ガイド部32の外側に排出される。
【0043】
さらに、副突条ガイド部32の内側に侵入した水分の一部は、主突条ガイド部22の第3構成部22cと凹条ガイド部33との間から、主突条ガイド部22の内側に侵入することがある。主突条ガイド部22の内側に侵入した水分は、突出部21,31の上面に乗る。突出部21,31は円柱状である。このため、突出部21,31の上面に乗った水分は、突出部21,31の外周面に沿って重力方向下方に流れる。そして、突出部21,31の下面まで到達した水分は、主突条ガイド部22の第4構成部22dに垂れ落ちる。第4構成部22dは、水平方向に対して傾斜している。このため、第4構成部22dに垂れ落ちた水分は、第1構成部22aに向かって流れた後、主突条ガイド部22の隙間S1から主突条ガイド部22の外側に排出される。主突条ガイド部22の外側に排出された水分は、さらに副突条ガイド部32の隙間S2から副突条ガイド部32の外側に排出される。
【0044】
次に、インバータ一体型電動機10の側方からモータハウジング11とインバータハウジング12との間に侵入した水分の流れについて説明する。
インバータ一体型電動機10の側方からモータハウジング11とインバータハウジング12との間に侵入した水分は、副突条ガイド部32の第1部位32aの外面又は第2部位32bの外面に接触する。第1部位32a及び第2部位32bは、重力方向に沿って延びている。このため、第1部位32a又は第2部位32bに接触した水分は、第1部位32a又は第2部位32bを伝って重力方向下方に流れる。
【0045】
インバータ一体型電動機10の側方からモータハウジング11とインバータハウジング12との間に侵入した水分の一部は、副突条ガイド部32の第1部位32a及び第2部位32bを超えて副突条ガイド部32の内側に侵入することがある。副突条ガイド部32の内側に侵入した水分は、主突条ガイド部22の第1構成部22a又は第2構成部22bの外面に接触する。第1構成部22a及び第2構成部22bは、重力方向に沿って延びている。このため、第1構成部22a又は第2構成部22bに接触した水分は、第1構成部22a又は第2構成部22bの外面を伝って重力方向下方に流れる。
【0046】
第1構成部22aの下端部まで流れた水分は、主突条ガイド部22の隙間S1から副突条ガイド部32の外側に排出される。一方、第2構成部22bの下端部まで流れた水分は、インバータ側溝23に入る。インバータ側溝23は、水平方向に対して傾斜している。このため、インバータ側溝23に入った水分は、主突条ガイド部22の第1構成部22aに向かって移動した後、副突条ガイド部32の隙間S2から副突条ガイド部32の外側に排出される。
【0047】
さらに、副突条ガイド部32の内側に侵入した水分の一部は、主突条ガイド部22の第1構成部22a又は第2構成部22bを超えて主突条ガイド部22の内側に侵入することがある。なお、主突条ガイド部22の内側に侵入した水分は、突出部21,31の外周面に接触した後、突出部21,31の外周面に沿って重力方向下方に流れる。なお、この後の水分の流れについては上述しているため、説明を省略する。
【0048】
[本実施形態の効果]
本実施形態の効果を説明する。
(1)モータハウジング11及びインバータハウジング12には、互いに近づくように突出する突出部21,31が各々設けられている。突出部21,31は、金属端子15が挿通される端子挿通孔としての貫通孔21a,31aを有している。突出部21,31は、貫通孔21a,31aを取り囲むシール構造を有している。インバータハウジング12には、インバータ側突出部21よりもさらに突出するとともに、インバータ側突出部21の一部を取り囲む主突条ガイド部22が設けられている。モータハウジング11には、主突条ガイド部22の一部を取り囲む副突条ガイド部32が設けられている。つまり、貫通孔21a,31aのシール構造の周りには、主突条ガイド部22及び副突条ガイド部32が二重に設けられている。このため、モータハウジング11とインバータハウジング12との間に侵入した水分は、主突条ガイド部22及び副突条ガイド部32が障壁になることによって、シール構造まで到達しにくくなる。また、モータハウジング11とインバータハウジング12との間に侵入した水分は、主突条ガイド部22及び副突条ガイド部32によりガイドされることによって、シール構造周りでの滞留が抑制されるようになっている。よって、端子挿通孔である貫通孔21a,31aへの水分の侵入をより抑制できる。
【0049】
(2)モータハウジング11には、主突条ガイド部22と対向する凹条ガイド部33が設けられている。主突条ガイド部22と凹条ガイド部33とは、ラビリンス構造を形成している。このため、モータハウジング11とインバータハウジング12との間に侵入した水分は、ラビリンス構造によって、シール構造までより到達しにくくなる。よって、貫通孔21a,31aへの水分の侵入をさらに抑制できる。
【0050】
(3)モータハウジング11とインバータハウジング12との間に侵入した水分は、副突条ガイド部32を伝って副突条ガイド部32の内側に侵入することがある。副突条ガイド部32の内側に侵入した水分は、副突条ガイド部32の一部を構成するモータ側溝34に入る。このため、モータハウジング11とインバータハウジング12との間に侵入した水分は、モータ側溝34によってガイドされることによって、シール構造周りでの滞留が抑制されるようになっている。よって、貫通孔21a,31aへの水分の侵入をさらに抑制できる。
【0051】
(4)モータハウジング11及びインバータハウジング12には、互いに近づくように突出する突出部21,31が各々設けられている。突出部21,31は、冷却水Wが流れる冷却水路としての貫通孔21a,31aを有している。突出部21,31は、貫通孔21a,31aを取り囲むシール構造を有している。インバータハウジング12には、インバータ側突出部21よりもさらに突出するとともに、インバータ側突出部21の一部を取り囲む主突条ガイド部22が設けられている。モータハウジング11には、主突条ガイド部22の一部を取り囲む副突条ガイド部32が設けられている。つまり、貫通孔21a,31aのシール構造の周りには、主突条ガイド部22及び副突条ガイド部32が二重に設けられている。このため、モータハウジング11とインバータハウジング12との間に侵入した水分は、主突条ガイド部22及び副突条ガイド部32が障壁になることによって、シール構造まで到達しにくくなる。また、モータハウジング11とインバータハウジング12との間に侵入した水分は、主突条ガイド部22及び副突条ガイド部32によりガイドされることによって、シール構造周りでの滞留が抑制されるようになっている。よって、冷却水路である貫通孔21a,31aへの水分の侵入を抑制できる。
【0052】
(5)主突条ガイド部22は、インバータ側突出部21よりもさらに突出している。このため、主突条ガイド部22は、インバータ側突出部21とモータ側突出部31との接続箇所を囲むことができる。同様に、副突条ガイド部32は、モータ側突出部31よりもさらに突出している。このため、副突条ガイド部32は、インバータ側突出部21とモータ側突出部31との接続箇所を囲むことができる。よって、インバータ側突出部21とモータ側突出部31との接続箇所への水の侵入をより抑制できる。
【0053】
(6)モータハウジング11とインバータハウジング12との間に侵入した水分は、主突条ガイド部22及び副突条ガイド部32によりガイドされることによって、シール構造周りでの滞留が抑制されるようになっている。よって、シール構造周りが水分によって腐食することが抑制される。この場合、モータハウジング11及びインバータハウジング12の耐腐食性を向上させるために行っていたアルマイト処理を省略することができる。
【0054】
[変更例]
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0055】
○ 主突条ガイド部22は、モータハウジング11に設けられるとともに、副突条ガイド部32及び凹条ガイド部33は、インバータハウジング12に設けられていてもよい。
○ 上記実施形態の主突条ガイド部22は、隙間S1を除いて、突出部21,31のほぼ全周を取り囲んでいたが、主突条ガイド部22が突出部21,31を取り囲む範囲は上記実施形態よりも狭くてもよい。
【0056】
○ 上記実施形態の副突条ガイド部32は、隙間S2を除いて、主突条ガイド部22のほぼ全周を取り囲んでいたが、副突条ガイド部32が主突条ガイド部22を取り囲む範囲は上記実施形態よりも狭くてもよい。
【0057】
○ 2つの突出部21,31が近設されている場合、一方の突出部21,31を取り囲む主突条ガイド部22の一部は、他方の突出部21,31を取り囲む主突条ガイド部22の一部を兼ねていてもよい。
【0058】
○ 2つの突出部21,31が近設されている場合、副突条ガイド部32は、一方の突出部21,31を取り囲む主突条ガイド部22及び他方の突出部21,31を取り囲む主突条ガイド部22の両方を取り囲むように設けられていてもよい。
【0059】
○ インバータ側溝23は省略されてもよい。
○ インバータ側溝23は、主突条ガイド部22の一部を構成していなくてもよい。
○ 凹条ガイド部33は省略されてもよい。この場合、主突条ガイド部22の先端部は、モータハウジング11のモータ側対向面11aと対向する。
【0060】
○ モータ側溝34は省略されてもよい。
○ モータ側溝34は、副突条ガイド部32の一部を構成していなくてもよい。
○ 上記実施形態における主突条ガイド部22及び副突条ガイド部32の形状は一例である。モータハウジング11とインバータハウジング12との間に侵入した水分が、各ガイド部22,32によってガイドされることによって、シール構造周りで滞留しないようになっていれば、各ガイド部22,32の形状は適宜変更されてもよい。
【0061】
○ モータ13及びインバータ14は、冷却水Wによって冷却されなくてもよい。この場合、水路用突出部、水路用主突条ガイド部、及び水路用副突条ガイド部は不要になる。
図6に示すように、モータハウジング11は、モータ側突出部31及びインバータ側突出部21の隙間と、モータハウジング11の外部とを繋ぐ排出通路35を有していてもよい。排出通路35は、第1通路35aと、第2通路35bとから構成されている。第1通路35aは、モータ側突出部31の先端面31bから凹んだ部分である。第1通路35aは、シール部材16を囲んでいる。第1通路35aは、スリット状である。なお、図6では、第1通路35aの幅を誇張して図示している。第2通路35bは、第1通路35aの底面とモータハウジング11の外部とを繋ぐ部分である。第2通路35bは、例えば、モータハウジング11のモータ側対向面11aとは反対側の面11bに開口している。
【0062】
この場合、モータ側突出部31とインバータ側突出部21との間に水分が侵入したとしても、シール部材16に到達する前に第1通路35aに入る。詳しくは、第1通路35aがスリット状であるため、モータ側突出部31とインバータ側突出部21との間に侵入した水分は、毛細管現象によって第1通路35aに入る。第1通路35aに入った水分は、重力によって第2通路35bを流れた後、モータハウジング11の外部に排出される。よって、水分がシール部材16に到達することを抑制できる。その結果、シール部材16の腐食が抑制される。
【0063】
なお、排出通路35は、モータハウジング11の代わりにインバータハウジング12に設けられていてもよいし、モータハウジング11及びインバータハウジング12の両方に設けられていてもよい。
【0064】
図7に示すように、主突条ガイド部22と、主突条ガイド部22と対向するハウジングであるモータハウジング11との間には、突出部21,31を囲む液状ガスケット17が設けられていてもよい。この場合、液状ガスケット17によって、主突条ガイド部22の内側への水分の侵入が抑制される。よって、貫通孔21a,31aへの水分の侵入をさらに抑制できる。なお、液状ガスケット17の代わりにOリングを設けてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…インバータ一体型電動機、11…モータハウジング、12…インバータハウジング、13…モータ、14…インバータ、15…金属端子、17…液状ガスケット、21…突出部としてのインバータ側突出部、21a…端子挿通孔又は冷却水路としての貫通孔、22…主突条ガイド部、31…突出部としてのモータ側突出部、31a…端子挿通孔又は冷却水路としての貫通孔、32…副突条ガイド部、33…凹条ガイド部、34…ガイド溝としてのモータ側溝、W…冷却水。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7