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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】ダンパ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/139 20060101AFI20250408BHJP
   F16F 15/137 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
F16F15/139 C
F16F15/137 A
F16F15/139 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022059089
(22)【出願日】2022-03-31
(65)【公開番号】P2023150141
(43)【公開日】2023-10-16
【審査請求日】2024-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【弁理士】
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】江端 勝
(72)【発明者】
【氏名】末▲崎▼ 紘章
(72)【発明者】
【氏名】棟田 健市
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-28522(JP,A)
【文献】特開2021-28521(JP,A)
【文献】特開昭60-211129(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0032364(US,A1)
【文献】特開昭64-21225(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19805219(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/139
F16F 15/137
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸周りに回転する第1プレート、及び前記第1プレートに対向して配置され前記回転軸周りに前記第1プレートと一体回転する第2プレート、を少なくとも有する第1回転体と、
前記回転軸周りに前記第1回転体に対し相対回転する第2回転体と、
前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性連結させる弾性機構部と、
径方向に延在して前記弾性機構部に当接する径方向延在部と、軸方向に延在し前記第1回転体及び前記第2回転体のいずれか一方に少なくとも部分的に収容される軸方向延在部と、を有し、前記軸方向において、前記第1プレートと前記第2回転体との間の第1収容空間及び前記第2プレートと前記第2回転体との間の第2収容空間のいずれか一方にのみ配されるコントロールプレートと、
前記第1回転体と前記コントロールプレートとの間に配され、前記第1回転体及び前記コントロールプレートの少なくともいずれか一方に対して摺動して第1摺動トルクを発生させ、第1開口部を有し、該第1開口部を囲む内周面において前記第2回転体の外周面により回転可能に支持される、第1摺動部と、
前記第2回転体と前記コントロールプレートとの間に配され、前記第2回転体及び前記コントロールプレートの少なくともいずれか一方に対して摺動して第2摺動トルクを発生させる第2摺動部と、
を具備し、
前記第1回転体と前記第2回転体とが相対回転する場合に、前記第1摺動トルク及び前記第2摺動トルクを発生させるダンパ装置。
【請求項2】
前記第1摺動トルク及び前記第2摺動トルクの一方は、他方よりも大きいトルクであり、前記第2回転体が前記第1回転体に対して反時計回り方向に相対回転する場合に発生する、請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記弾性機構部は、第1弾性部材と、前記第1弾性部材を両側から挟んで支持する一対のシート部材と、を含み、
前記径方向延在部は、前記第1弾性部材、又は、前記一対のシート部材のいずれか一方に当接する、請求項1又は2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記第1摺動部は、前記第1回転体又は前記径方向延在部に対して摺動する第1摺動面と、前記第1摺動面を前記第1回転体又は前記径方向延在部に近づく方向に付勢する第2弾性部材と、を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のダンパ装置。
【請求項5】
前記第2摺動部は、前記第2回転体又は前記径方向延在部に対して摺動する第2摺動面と、前記第2摺動面を前記第2回転体又は前記径方向延在部に近づく方向に付勢する第3弾性部材と、を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のダンパ装置。
【請求項6】
前記第1摺動部及び前記第2摺動部は、前記コントロールプレートと一体的に形成されて前記コントロールプレートの一部として機能し、
前記径方向延在部は、前記第1回転体に対して直接摺動し、且つ、前記第2回転体に対して直接摺動する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のダンパ装置。
【請求項7】
前記第1収容空間及び前記第2収容空間のうち前記コントロールプレートが配される空間とは異なる側の空間に、前記第1回転体に対して摺動する第1の面、及び前記第2回転体に対して摺動する第2の面の少なくともいずれか一方を有するスラスト部材をさらに具備する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のダンパ装置。
【請求項8】
前記スラスト部材は、前記第2の面を前記第2回転体に近づく方向に付勢する第4弾性部材を有する、請求項7に記載のダンパ装置。
【請求項9】
前記スラスト部材が、第2開口部を有し、該第2開口部を囲む内周面において前記第2回転体の外周面により回転可能に支持され、
前記第1開口部及び前記第2開口部のうちトランスミッション側に位置する一方の開口部を囲む内周面と前記第2回転体の外周面との間に設けられた隙間が、前記第1開口部及び前記第2開口部のうち他方の開口部を囲む内周面と前記第2回転体の外周面との間に設けられた隙間よりも小さい、請求項7又は8に記載のダンパ装置。
【請求項10】
前記第1収容空間及び前記第2収容空間のうち前記コントロールプレートが配される空間とは異なる側の空間に、前記第1回転体に対して摺動する第1の面及び前記第2回転体に対して摺動する第2の面の少なくともいずれか一方を有するスラスト部材をさらに具備し、
前記第1摺動部及び前記スラスト部材のうち、トランスミッション側に位置する一方がブッシュとして形成される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のダンパ装置。
【請求項11】
前記第1摺動部が、前記コントロールプレートに対向する位置において、
前記コントロールプレートに当接する第1頂部と、
該第1頂部に接続され、前記第1摺動部の回転軸から離れる方向に向かって延在し、前記コントロールプレートから離れる方向に傾斜する、第1傾斜面と、
前記第1頂部に接続され、前記回転軸に近づく方向に向かって延在し、前記コントロールプレートから離れる方向に傾斜する、第2傾斜面と、
を有する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のダンパ装置。
【請求項12】
前記スラスト部材が、前記第2回転体に対向する位置において、
前記第2回転体に当接する第2頂部と、
該第2頂部に接続され、前記スラスト部材の回転軸から離れる方向に向かって延在し、前記第2回転体から離れる方向に傾斜する、第3傾斜面と、
前記第2頂部に接続され、前記スラスト部材の回転軸に近づく方向に向かって延在し、前記第2回転体から離れる方向に傾斜する、第4傾斜面と、
を有する、請求項7乃至10のいずれか一項に記載のダンパ装置。
【請求項13】
前記第2摺動部が、前記第2回転体に対向する位置において、
前記第2回転体に当接する第3頂部と、
該第3頂部に接続され、前記第2摺動部の回転軸から離れる方向に向かって延在し、前記第2回転体から離れる方向に傾斜する、第5傾斜面と、
前記第3頂部に接続され、前記第2摺動部の回転軸に近づく方向に向かって延在し、前記第2回転体から離れる方向に傾斜する、第6傾斜面と、
を有する、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願において開示された技術は、ダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等において、エンジン等の駆動源と変速機との間のトルク伝達経路上には、当該駆動源から当該変速機に向けて伝達されるトルクの振動を吸収するダンパ装置が設けられており、ダンパ装置は例えばクラッチ装置に組み込まれている。
【0003】
ダンパ装置の一般的な構成としては、互いに相対回転可能な入力部材としてのディスクプレートと出力部材としてのハブとの間に、コイルスプリングを介在させて、コイルスプリングの弾性変形を利用してトルク変動を吸収して減衰させる技術が知られている。また、コイルスプリングの弾性変形に加えて、ディスクプレートとハブとの間の相対回転に基づく摺動トルク(ヒステリシストルク)を発生させて、当該トルク変動をさらに吸収させる技術が知られている。
【0004】
例えば特許文献1には、動力伝達の入力側としての第一の回転部材(特許文献1における参照符号1)、動力伝達の出力側としての第二の回転部材(特許文献1における参照符号2)、2つのコントロールプレート(特許文献1における参照符号31及び32)、第一の摺動トルクを発生させる第一の摺動部材(特許文献1における参照符号6及び7)、第一の摺動トルクよりも大きな第二の摺動トルクを発生させる第二の摺動部材(特許文献1における参照符号8及び9)、及びコーンスプリングが用いられる弾性部材57、等を主な構成要素とするダンパ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6471486号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のダンパ装置においては、軸方向における第一の回転部材と第二の回転部材の間に、2つのコントロールプレートが収容されているため、部品点数が多く、ダンパ装置の軸長が大きくなってしまい、車両等への搭載に課題がある。
【0007】
そこで、様々な実施形態により、軸長がコンパクトなダンパ装置を提供する。また、様々なバリエーションのヒステリシストルクを安定して発生させることが可能なダンパ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様に係るダンパ装置は、回転軸周りに回転する第1プレート、及び前記第1プレートに対向して配置され前記回転軸周りに前記第1プレートと一体回転する第2プレート、を少なくとも有する第1回転体と、前記回転軸周りに前記第1回転体に対し相対回転する第2回転体と、前記第1回転体と前記第2回転体とを回転方向に弾性連結させる弾性機構部と、径方向に延在して前記弾性機構部に当接する径方向延在部と、軸方向に延在し前記第1回転体及び前記第2回転体のいずれか一方に少なくとも部分的に収容される軸方向延在部と、を有し、前記軸方向において、前記第1プレートと前記第2回転体との間の第1収容空間及び前記第2プレートと前記第2回転体との間の第2収容空間のいずれか一方にのみ配されるコントロールプレートと、前記第1回転体と前記コントロールプレートとの間に配され、前記第1回転体及び前記コントロールプレートの少なくともいずれか一方に対して摺動して第1摺動トルクを発生させ、第1開口部を有し、該第1開口部を囲む内周面において前記第2回転体の外周面により回転可能に支持される、第1摺動部と、前記第2回転体と前記コントロールプレートとの間に配され、前記第2回転体及び前記コントロールプレートの少なくともいずれか一方に対して摺動して第2摺動トルクを発生させる第2摺動部と、を具備し、前記第1回転体と前記第2回転体とが相対回転する場合に、前記第1摺動トルク及び前記第2摺動トルクを発生させる。
【0009】
この構成によれば、コントロールプレートを1つにすることで部品点数を減らし、軸長がコンパクトなダンパ装置を提供することが可能となる。さらに、第1摺動部の第2回転体に対する組付性を向上させることも可能となる。
【0010】
また、一態様に係る前記ダンパ装置において、前記第1摺動トルク及び前記第2摺動トルクの一方は、他方よりも大きいトルクであり、前記第2回転体が前記第1回転体に対して反時計回り方向に相対回転する場合にのみ発生する。
【0011】
この構成とすることによって、一態様に係るダンパ装置は、前記第1回転体と前記第2回転体とが相対回転する場合には小さなヒステリシストルク(第1摺動トルク及び第2摺動トルクのうちの小さい方のトルク)を常に発生させつつ、前記第1回転体と前記第2回転体とが所定方向に相対回転する特別な場合においては、大きなヒステリシストルク(第1摺動トルク及び第2摺動トルクのうちの大きい方のトルク)を発生させることができる。この際、当該特別な場合にのみ発生する第1摺動トルク又は第2摺動トルクを、他方よりも大きいトルクが発生するように設定しておくことで、「大きなヒステリシストルク」の大きさをさらに増大させておくことも可能となる。このように、一態様に係るダンパ装置は、様々なバリエーションのヒステリシストルクを発生させることが可能となる。なお、前述の「大きなヒステリシストルク」は、例えば、車両等(特にハイブリッド車両)のエンジン始動時に発生する比較的大きな振動や騒音を抑制させる場合に用いることができる。
【0012】
また、一態様に係るダンパ装置において、前記弾性機構部は、第1弾性部材と、前記第1弾性部材を両側から挟んで支持する一対のシート部材と、を含み、前記径方向延在部は、前記第1弾性部材、又は、前記一対のシート部材のいずれか一方に当接する。
【0013】
この構成とすることによって、前記径方向延在部が確実に前記弾性機構部に当接することができ、その結果、一態様に係るダンパ装置が効率的に前記第1摺動トルク及び前記第2摺動トルクを発生させることが可能となる。
【0014】
また、一態様に係る前記ダンパ装置において、前記第1摺動部は、前記第1回転体又は前記径方向延在部に対して摺動する第1摺動面と、前記第1摺動面を前記第1回転体又は前記径方向延在部に近づく方向に付勢する第2弾性部材と、を含む。
【0015】
この構成とすることによって、一態様に係るダンパ装置は、確実且つ効率的に前記第1摺動トルクを発生させることが可能となる。
【0016】
また、一態様に係る前記ダンパ装置において、前記第2摺動部は、前記第2回転体又は前記径方向延在部に対して摺動する第2摺動面と、前記第2摺動面を前記第2回転体又は前記径方向延在部に近づく方向に付勢する第3弾性部材と、を含む。
【0017】
この構成とすることによって、一態様に係るダンパ装置は、確実且つ効率的に前記第2摺動トルクを発生させることが可能となる。
【0018】
また、一態様に係る前記ダンパ装置において、前記第1摺動部及び前記第2摺動部は、前記コントロールプレートと一体的に形成されて前記コントロールプレートの一部として機能し、前記径方向延在部は、前記第1回転体に対して直接摺動し、且つ、前記第2回転体に対して直接摺動する。
【0019】
この構成とすることによって、一態様に係るダンパ装置は、前記コントロールプレート、前記第1摺動部、及び前記第2摺動部を一体物とすることにより、部品点数をさらに削減することが可能となる。
【0020】
また、一態様に係る前記ダンパ装置において、前記第1収容空間及び前記第2収容空間のうち前記コントロールプレートが配される空間とは異なる側の空間に、前記第1回転体に対して摺動する第1の面、及び前記第2回転体に対して摺動する第2の面の少なくともいずれか一方を有するスラスト部材をさらに具備する。
【0021】
この構成とすることによって、一態様に係るダンパ装置は、前記第1の面及び前記第2の面に基づいて、さらに追加的にヒステリシストルクを発生させることができる。
【0022】
また、一態様に係る前記ダンパ装置において、前記スラスト部材は、前記第2の面を前記第2回転体に近づく方向に付勢する第4弾性部材を有する。
【0023】
この構成とすることによって、一態様に係るダンパ装置は、前述の追加的なヒステリシストルクを確実且つ効率的に発生させることが可能となる。
【0024】
また、一態様に係る前記ダンパ装置において、前記スラスト部材が、第2開口部を有し、該第2開口部を囲む内周面において前記第2回転体の外周面により回転可能に支持され、前記第1開口部及び前記第2開口部のうちトランスミッション側に位置する一方の開口部を囲む内周面と前記第2回転体の外周面との間に設けられた隙間が、前記第1開口部及び前記第2開口部のうち他方の開口部を囲む内周面と前記第2回転体の外周面との間に設けられた隙間よりも小さい。
【0025】
この構成とすることによって、一態様に係るダンパ装置は、第2回転体が駆動軸に対して傾斜する角度を、ひいては、第2回転体に支持される第1摺動部が傾斜する角度、又は、第2回転体に支持されるスラスト部材が傾斜する角度を、小さく抑えることができるので、第1摺動部によるコントロールプレートに対する摺動、又は、スラスト部材による第2回転体に対する摺動が、本来意図されていたものに比べて変化する可能性を抑えることができる。
【0026】
また、一態様に係る前記ダンパ装置において、前記第1収容空間及び前記第2収容空間のうち前記コントロールプレートが配される空間とは異なる側の空間に、前記第1回転体に対して摺動する第1の面及び前記第2回転体に対して摺動する第2の面の少なくともいずれか一方を有するスラスト部材をさらに具備し、前記第1摺動部及び前記スラスト部材のうち、トランスミッション側に位置する一方がブッシュとして形成される。
【0027】
この構成とすることによって、一態様に係るダンパ装置は、第2回転体が駆動軸Zに対して傾斜する事態を、簡単かつ効果的に抑えることができる。
【0028】
また、一態様に係る前記ダンパ装置において、前記第1摺動部が、前記コントロールプレートに対向する位置において、前記コントロールプレートに当接する第1頂部と、該第1頂部に接続され、前記第1摺動部の回転軸から離れる方向に向かって延在し、前記コントロールプレートから離れる方向に傾斜する、第1傾斜面と、前記第1頂部に接続され、前記回転軸に近づく方向に向かって延在し、前記コントロールプレートから離れる方向に傾斜する、第2傾斜面と、を有する。
【0029】
この構成とすることによって、一態様に係るダンパ装置は、仮に、第2回転体が駆動軸に対して傾斜した場合であっても、第1摺動部がコントロールプレートに対して第1頂部において当接して摺動するので、第1摺動面部とコントロールプレートとの間において当接する部分の面積が変化することを抑えることができる。これにより、一態様に係るダンパ装置は、第1摺動トルクの大きさが変化することを抑えることができる。
【0030】
また、一態様に係るダンパ装置において、前記スラスト部材が、前記第2回転体に対向する位置において、前記第2回転体に当接する第2頂部と、該第2頂部に接続され、前記スラスト部材の回転軸から離れる方向に向かって延在し、前記第2回転体から離れる方向に傾斜する、第3傾斜面と、前記第2頂部に接続され、前記スラスト部材の回転軸に近づく方向に向かって延在し、前記第2回転体から離れる方向に傾斜する、第4傾斜面と、
を有する。
【0031】
この構成とすることによって、一態様に係るダンパ装置にあっては、仮に第2回転体が駆動軸に対して傾斜した場合であっても、スラスト部材は、依然として、第2回転体におけるスラスト部材に対向する面に対して第2頂部において当接して摺動するので、スラスト部材と第2回転体の間において当接する部分の面積は大きく変化しない。これにより、一態様に係るダンパ装置は、第3摺動トルクの大きさが変化することを抑えることができる。
【0032】
また、一態様に係るダンパ装置において、前記第2摺動部が、前記第2回転体に対向する位置において、前記第2回転体に当接する第3頂部と、該第3頂部に接続され、前記第2摺動部の回転軸から離れる方向に向かって延在し、前記第2回転体から離れる方向に傾斜する、第5傾斜面と、前記第3頂部に接続され、前記第2摺動部の回転軸に近づく方向に向かって延在し、前記第2回転体から離れる方向に傾斜する、第6傾斜面と、を有する。
【0033】
この構成とすることによって、一態様に係るダンパ装置にあっては、仮に第2回転体が駆動軸に対して傾斜した場合であっても、第2摺動部は、依然として、第2回転体における第2摺動部に対向する面に対して第3頂部において当接して摺動するので、第2摺動部と第2回転体との間において当接する部分の面積は大きく変化しない。これにより、一態様に係るダンパ装置は、第3摺動トルクの大きさが変化することを抑えることができる。
【発明の効果】
【0034】
様々な実施形態によれば、軸長がコンパクトなダンパ装置を提供することができる。また、様々なバリエーションのヒステリシストルクを安定して発生させることが可能なダンパ装置をも提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】一実施形態に係るダンパ装置の構成を模式的に示す概略上面図である。
図2図1に示したダンパ装置から、一部の構成要素の記載が省略された構成を模式的に示す概略上面図である。
図3A図1に示したダンパ装置の構成をX-X線から見て模式的に示す概略断面図である。
図3B図3Aに示したダンパ装置の一部分を拡大して模式的に示す概略断面図である。
図3C図3Bに示したダンパ装置の一部の構成を拡大して模式的に示す概略断面図である。
図4】一実施形態に係るダンパ装置の構成を、各構成要素に分解して示す概略斜視図である。
図5】一実施形態に係るダンパ装置のコントロールプレートを拡大して示す概略斜視図である。
図6】一実施形態に係わるダンパ装置において、図2の点線で囲った領域のみを拡大して模式的に示す概略図である。
図7A】一実施形態に係るダンパ装置において、第1回転体と第2回転体とが相対回転していない状態を模式的に示す概略上面図である。
図7B】一実施形態に係るダンパ装置において、第1回転体に対し第2回転体が正側に捩れ角θ1°相対回転している状態を模式的に示す概略上面図である。
図7C】一実施形態に係るダンパ装置において、第1回転体に対し第2回転体が正側に捩れ角θ2°相対回転している状態を模式的に示す概略上面図である。
図7D】一実施形態に係るダンパ装置において、第1回転体に対し第2回転体が負側に捩れ角θ3°相対回転している状態を模式的に示す概略上面図である。
図7E】一実施形態に係るダンパ装置において、第1回転体に対し第2回転体が負側に捩れ角θ4°相対回転している状態を模式的に示す概略上面図である。
図7F】一実施形態に係るダンパ装置において、図7Eの状態から第1回転体に対する第2回転体の相対回転が解消される途中の状態を模式的に示す概略上面図である。
図8】一実施形態に係るダンパ装置における捩り特性を模式的に示す概略特性図である。
図9】第2実施形態に係るダンパ装置の構成を模式的に示す概略断面図である。
図10】第3実施形態に係るダンパ装置の構成を模式的に示す概略断面図である。
図11】第4実施形態に係るダンパ装置の構成を模式的に示す概略断面図である。
図12】第5実施形態に係るダンパ装置の構成を模式的に示す概略断面図である。
図13】第6実施形態に係るダンパ装置の構成を模式的に示す概略断面図である。
図14】第6実施形態に係るダンパ装置において、ディスクプレートとコントロールプレートとの関係を拡大して模式的に示す概略図である。
図15】第7実施形態に係るダンパ装置の構成を模式的に示す概略断面図である。
図16】第8実施形態に係るダンパ装置の構成を模式的に示す概略断面図である。
図17】第9実施形態に係るダンパ装置の構成を模式的に示す概略断面図である。
図18】第10実施形態に係るダンパ装置の構成を模式的に示す概略断面図である。
図19】一実施形態に係るダンパ装置の構成を模式的に示す概略断面図である。
図20図19に示したダンパ装置の一部の構成を拡大して模式的に示す概略断面図である。
図21】一実施形態に係るダンパ装置の構成を模式的に示す概略断面図である。
図22】一実施形態に係るダンパ装置において、第1回転体と第2回転体とが相対回転していない状態を模式的に示す概略上面図である。
図23】一実施形態に係るダンパ装置における捩り特性を模式的に示す概略特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面を参照して様々な実施形態を説明する。なお、図面において共通した構成要件には同一の参照符号が付されている。また、或る図面に表現された構成要素が、説明の便宜上、別の図面においては省略されていることがある点に留意されたい。さらにまた、添付した図面が必ずしも正確な縮尺で記載されている訳ではないということに注意されたい。
【0037】
1.ダンパ装置の構成
一実施形態に係るダンパ装置の全体構成の概要について、図1乃至図6を参照しつつ説明する。図1は、一実施形態に係るダンパ装置1の構成を模式的に示す概略上面図である。図2は、図1に示したダンパ装置1から、一部の構成要素の記載が省略された構成を模式的に示す概略上面図である。図3Aは、図1に示したダンパ装置1の構成をX-X線から見て模式的に示す概略断面図である。図3Bは、図3Aに示したダンパ装置1の一部分を拡大して模式的に示す概略断面図である。図3Cは、図3Bに示したダンパ装置1の一部の構成を拡大して模式的に示す概略断面図である。図4は、一実施形態に係るダンパ装置1の構成を、各構成要素に分解して示す概略斜視図である。図5は、一実施形態に係るダンパ装置1のコントロールプレート300を拡大して示す概略斜視図である。図6は、一実施形態に係わるダンパ装置1において、図2の点線で囲った領域のみを拡大して模式的に示す概略図である。なお、図6においては、便宜上、後述する弾性機構部400における一対のシート部材420は示されておらず、また、各構成要素の当接関係(例えば、弾性機構部400とディスクプレート100、弾性機構部400とハブ200)が正確に示されていない点に留意されたい。
【0038】
一実施形態に係るダンパ装置1は、エンジンやモータ等の駆動源(図示せず)と変速機(トランスミッション)等の動力伝達経路上に設けられ、当該駆動源からの動力がフライホイール2を介して伝達されて、当該動力を変速機(トランスミッション)等へと伝達(出力)するものである(図3A参照)。
【0039】
ダンパ装置1は、トルク振動を吸収して減衰させるものである。このダンパ装置1は、図1乃至図5に示すように、主に、フライホイール2から動力が伝達される第1回転体としてのディスクプレート100、第2回転体としてのハブ200、コントロールプレート300、弾性機構部400、スラスト部材500、第1摺動部600、及び第2摺動部700を含む。なお、本明細書において軸方向とは、回転軸Oと平行に延びる方向を意味し、径方向とは、回転軸Oに直交する方向を意味し、周方向とは、回転軸Oの周りを周回する方向を意味するものとする。
【0040】
なお、フライホイール2は、駆動源に接続される駆動軸Zにボルト3によって固定される環状の板部材である。
【0041】
また、駆動軸Zからフライホイール2に伝達される動力は、図3Aに示すように、フライホイール2にボルト4で固定され、フライホイール2と一体回転するカバープレート10及び第1の摩擦材20を介してディスクプレート100へと伝達される。なお、カバープレート10にはプレッシャープレート30が固定されており、カバープレート10及びプレッシャープレート30は一体回転するように構成される。フライホイール2には、さらに、カバープレート10とともにサポートプレート11がボルト4によって固定されており、当該サポートプレート11は、皿ばね40を支持している。皿ばね40は、プレッシャープレート30を、第2の摩擦材21を介して、後述するディスクプレート100におけるライニングプレート101に押し付けるように付勢して、カバープレート10とともに、フライホイール2に伝達される動力をディスクプレート100(ライニングプレート101)に伝達している。
【0042】
なお、サポートプレート11、プレッシャープレート30、及び皿ばね40は、捩り方向のトルク変動をダンパ装置1が吸収しきれなくなった場合に、すべりを発生させる(カバープレート10及びプレッシャープレート30からディスクプレート100への動力伝達を遮断する)リミッタとして機能することができる。なお、当該リミッタにおいては、従来から公知の構造を組合せてもよい。
【0043】
1-1.ディスクプレート100
ダンパ装置1において、動力伝達経路上、最も上流側に配される第1回転体としてのディスクプレート100には、前述のとおり、エンジンやモータ等の駆動源からの動力がフライホイール2を介して伝達される。ディスクプレート100は、例えば、金属材料により形成され、図1乃至図4に示すように、後述する第2回転体としてのハブ200等を挟んで、回転軸Oの周りにおいて回転可能に設けられている。ディスクプレート100は、ハブ200の軸方向両側に設けられる一対の略円盤状の板部材としての第1プレート100A及び第2プレート100Bを含む(第2プレート100Bは軸方向において第1プレート100Aに対向して配置される)。第1プレート100Aと第2プレート100Bは、図3A及び図4に示すように、軸方向において対称の形状を有し、両者の軸方向における位置を適宜調整可能な略円環状のライニングプレート101を間に介在させて、外周付近において複数のリベット120により結合されて一体回転可能に設けられている。
【0044】
なお、エンジンやモータ等の駆動源からの動力は、ライニングプレート101に設けられる第1の摩擦材20及び第2の摩擦材21を介してカバープレート10及びプレッシャープレート30からライニングプレート101に伝達されると、リベット120付近において、ライニングプレート101から第1プレート100A及び第2プレート100Bへと伝達される。
【0045】
第1プレート100A及び第2プレート100Bは、相互に協働して、図1及び図2に示すように、領域I乃至IVのそれぞれに対応付けて、後述する弾性機構部400を収容する収容領域(図1に示す例では、4つの収容領域を示す)を形成するように、軸方向に膨らんだ形状を有する。各収容領域は、ディスクプレート100の周方向に沿って延びる弾性機構部400における第1弾性部材410、及び一対のシート部材420(シート部材420A及びシート部材420B)を収容するために、ディスクプレート100の周方向に沿って略直線状又は略円弧状に延びている。なお、領域I乃至IVとは、ダンパ装置1を上面からみて、図1に示すように、各々が略90度の扇形を有する4つの各領域を指すものとする。
【0046】
図1を参照して具体的に説明すると、第1プレート100A及び第2プレート100Bは、領域I乃至IVに対応付けて、それぞれ、周方向に沿って延びる第1収容領域102a、第2収容領域102b、第3収容領域102c、及び第4収容領域102dを形成している。なお、ハブ200には、後述するとおり、これら第1収容領域102a、第2収容領域102b、第3収容領域102c、及び第4収容領域102dに対応する窓孔206a、206b、206c、及び206dが各領域に設けられている。
【0047】
領域IVに着目すると、図1に示すように、第1プレート100A及び第2プレート100Bは、第4収容領域102dを囲む側壁として、一端面(第4の一端面)104dとこれに対向する他端面(第4の他端面)104dとを含む。これら第4の一端面104d及び第4の他端面104dは、一例として、ディスクプレート100の軸方向に沿って延びる。
【0048】
同様に、領域Iに着目すると、第1プレート100A及び第2プレート100Bは、第1収容領域102aを囲む側壁として、一端面(第1の一端面)104aとこれに対向する他端面(第1の他端面)104aとを含み、領域IIに着目すると、第1プレート100A及び第2プレート100Bは、第2収容領域102bを囲む側壁として、一端面(第2の一端面)104bとこれに対向する他端面(第2の他端面)104bとを含み、領域IIIに着目すると、第1プレート100A及び第2プレート100Bは、第3収容領域102cを囲む側壁として、一端面(第3の一端面)104cとこれに対向する他端面(第3の他端面)104cとを含む。これらの側壁は、後述する弾性機構部400に当接(係合)している。
【0049】
ディスクプレート100におけるライニングプレート101は、図3Aに示すように、ハブ200と同じ軸位置に(径方向に一直線上に)配置される。したがって、ライニングプレート101における各領域I乃至IVには、図2及び図4に示すように、ハブ200の周方向の移動(相対回転)を許容する切欠き105が設けられる。また、当該切欠き105の外縁部は、ハブ200の過度な相対回転を規制する規制部106として機能している。
【0050】
また、第1プレート100Aの内面110Aは、後述する第1摺動部600の一部を構成しうる第2弾性部材604を支持することができる。なお、後述するように、第1摺動部600が第2プレート100Bとハブ200との間に設けられる場合においては、第2プレート100Bの内面110Bが、第2弾性部材604を支持することができる。
【0051】
その他、第1プレート100A及び第2プレート100Bの詳細については、適宜後述する。
【0052】
1-2.ハブ200
第2回転体としてのハブ200は、ダンパ装置1における出力部材として機能し、例えば金属材料により形成され、全体として略円板状の形状を有し、第1プレート100A及び第2プレート100Bに挟まれて、回転軸Oの周りにディスクプレート100(第1プレート100A及び第2プレート100B)に対して相対回転可能に設けられる。また、ハブ200は、図3A及び図4に示すように、略円筒状の円筒部202に形成された貫通孔203に、変速機(トランスミッション)の入力軸(図示せず)を挿通させて当該入力軸とスプライン結合することができる。また、ハブ200は、円筒部202から径方向外側に延びる円板部205が設けられる。
【0053】
円板部205には、前述のとおり、第1収容領域102a、第2収容領域102b、第3収容領域102c、及び第4収容領域102dに対応する窓孔206a、206b、206c、及び206dが等間隔に設けられている。ハブ200に設けられるこれらの窓孔206a乃至206dは、後述する弾性機構部400に対応して設けられる。つまり、各窓孔206a乃至206dには、弾性機構部400が収容される。
【0054】
また、領域Iに対応付けて、窓孔206aは、図2に示すように、一端側の係合部(第1の一端側の係合部)206aとこれに対向する他端側の係合部(第1の他端側の係合部)206aとを有して、弾性機構部400と当接(係合)している。同様に、領域IIに対応付けて、窓孔206bは、一端側の係合部(第2の一端側の係合部)206bと、これに対向する他端側の係合部(第2の他端側の係合部)206bとを有して弾性機構部400と当接(係合)している。また、領域IIIに対応付けて、窓孔206cは、一端側の係合部(第3の一端側の係合部)206cと、これに対向する他端側の係合部(第3の他端側の係合部)206cとを有して弾性機構部400と当接(係合)している。また、領域IVに対応付けて、窓孔206dは、一端側の係合部(第4の一端側の係合部)206dと、これに対向する他端側の係合部(第4の他端側の係合部)206dとを有して弾性機構部400と当接(係合)している。
【0055】
なお、窓孔206a乃至206dの各々が「弾性機構部400に当接する」とは、後述する第1弾性部材410、又は一対のシート部材420に当接することを意味する。
【0056】
円板部205の径方向端部には、領域I乃至IVに対応付けて、突起部207a、207b、207c、及び207dが設けられている。突起部207a乃至207dは、ハブ200がディスクプレート100に対して相対回転することができるよう、ライニングプレート101に設けられる切欠き105内に収容される。また、突起部207a乃至207dは、ハブ200が所定捩り角相対回転すると、当該切欠き105の外縁部である規制部106に当接して、ハブ200の過度な相対回転が規制される。
【0057】
また、前述の各窓孔206a、206b、206c、及び206dの径方向内側には、図2乃至図4に示すように、後述するコントロールプレート300の軸方向延在部303a乃至303dを受入れる溝部208a、208b、208c、及び208dが設けられている。なお、各溝部208a乃至208dは、一実施形態のダンパ装置1においては、各窓孔206a乃至206dに連続して(一体的に)設けられているが、これに限定されず、円板部205の任意の部分に設けられてもよい。
【0058】
1-3.コントロールプレート300
コントロールプレート300は、例えばばね鋼等の金属材料で形成され、全体として略円環状の形状を有する。コントロールプレート300は、一態様に係るダンパ装置1において、1つのみ設けられ、軸方向において、第1プレート100Aとハブ200との間の第1収容空間100x、及び、第2プレート100Bとハブ200との間の第2収容空間100yのいずれか一方にのみ配される。図3Aにおいては、コントロールプレート300が第1収容空間100xに配される一例が示されている。
【0059】
コントロールプレート300は、図2乃至図5に示すように、略円環状に設けられる主部301と、主部301から径方向に延在して後述する弾性機構部400に当接する径方向延在部302と、軸方向に延在しハブ200に少なくとも部分的に収容される(第1回転体100に部分的に収容される場合については後述する)軸方向延在部303と、を主に有する。径方向延在部302は、前述の領域I乃至IVのそれぞれに対応するように、領域Iに径方向延在部302a、領域IIに径方向延在部302b、領域IIIに径方向延在部302c、領域IVに径方向延在部302dが設けられている。同様に、軸方向延在部303も、前述の領域I乃至IVのそれぞれに対応するように、領域Iに軸方向延在部303a、領域IIに軸方向延在部303b、領域IIIに軸方向延在部303c、領域IVに軸方向延在部303dが設けられている。
【0060】
径方向延在部302a乃至302dは、図2等に示すように、領域I乃至IVに対応付けて設けられており、径方向延在部302aは、第1収容領域102a(窓孔206a)に収容される第1弾性部材410(又は、一対のシート部材420を構成するシート部材420A及びシート部材420Bのいずれか一方)に当接するように設けられ、径方向延在部302bは、第2収容領域102b(窓孔206b)に収容される第1弾性部材410(又は、一対のシート部材420を構成するシート部材420A及びシート部材420Bのいずれか一方)に当接するように設けられ、径方向延在部302cは、第3収容領域102c(窓孔206c)に収容される第1弾性部材410(又は、一対のシート部材420を構成するシート部材420A及びシート部材420Bのいずれか一方)に当接するように設けられ、径方向延在部302dは、第4収容領域102d(窓孔206d)に収容される第1弾性部材410(又は、一対のシート部材420を構成するシート部材420A及びシート部材420Bのいずれか一方)に当接するように設けられる。
【0061】
径方向延在部302a乃至302dの径方向に延在する長さは、弾性機構部400(第1弾性体400、又は、一対のシート部材420を構成するシート部材420A及びシート部材420Bのいずれか一方)に対して十分な接触面積が確保できるように構成される限り、特に制限はない。
【0062】
なお、以下、一実施形態として、径方向延在部302が、領域I乃至IVにそれぞれ対応付けて、合計4つの径方向延在部302a、302b、302c、302dを有する場合について説明する。しかし、径方向延在部302は、径方向延在部302a、302b、302c、302dのうちのいずれか1個乃至3個の径方向延在部のみを有することも可能である。このように、径方向延在部302がいずれか1個乃至3個の径方向延在部のみを有する実施形態については、当業者であれば、残りの径方向延在部が存在しないものとして以下の説明を読むことにより、容易に理解することができよう。例えば、径方向延在部302が径方向延在部302a、302cのみを有する実施形態については、当業者であれば、残りの径方向延在部302b、302dが存在しないものとして以下の説明を読むことにより、容易に理解することができよう。
【0063】
コントロールプレート300が、図3Aに示すように、第1収容空間100xに配される場合、径方向延在部302a乃至302dは、軸方向において、第1プレート100A及びハブ200の両方に対向する。したがって、径方向延在部302a乃至302dは、第1プレート100Aとコントロールプレート300との間に配置される後述の第1摺動部600に摺接して第1摺動トルクを発生させる面を有する。
【0064】
軸方向延在部303a乃至303dは、図2乃至図6に示すように、領域I乃至IVに対応付けて設けられており、軸方向延在部303aは窓孔206aの径方向内側に設けられる溝部208aに収容され、軸方向延在部303bは窓孔206bの径方向内側に設けられる溝部208bに収容され、軸方向延在部303cは窓孔206cの径方向内側に設けられる溝部208cに収容され、軸方向延在部303dは窓孔206dに径方向内側に設けられる溝部208dに収容されるように設けられている。
【0065】
軸方向延在部303aは、図6に示すように、溝部208aを画定する壁部208wに近接する位置(少なくとも溝部208aの中心位置から外れた位置)に収容される。軸方向延在部303b、軸方向延在部303c、及び軸方向延在部303dも、対応する溝部208b、208c、及び208dにおいて、軸方向延在部303aと同様の位置に収容される。
【0066】
ここで、軸方向延在部303a乃至303dは、対応する溝部208a乃至208dにおいて、ハブ200と何らかの手段で係合又は嵌合されているわけではなく、所定の場合にのみ、ハブ200とコントロールプレート300とが一体的に回転することができるように構成されている。したがって、コントロールプレート300とハブ200とは、常に一体的に回転するものではない。
【0067】
ここで、前述の「所定の場合」について説明する。例えば、ハブ200がディスクプレート100に対して所定方向(図1及び図2においては、例えばL方向(反時計回り方向))に所定捩り角以上相対回転すると、軸方向延在部303a乃至303dは、溝部208aを画定する壁部208wに各々当接する。これにより、ハブ200がディスクプレート100に対して所定方向(図1及び図2においては、例えばL方向(反時計回り方向))に所定捩り角以上相対回転する場合に限り、コントロールプレート300はハブ200と一体的に、ディスクプレート100に対して所定方向(図1及び図2におけるL方向)に相対回転することとなる。これにより、径方向延在302aは、後述の第1摺動部600の摺動面(第1摺動面)602aに摺接して第1摺動トルクを発生させることが可能となる。同様に、径方向延在部302b乃至302dも、第1摺動部600の第1摺動面602aに摺接して第1摺動トルクを発生させることが可能となる。なお、コントロールプレート300とハブ200とが一体的に回転することができるメカニズムについては後述でも詳述する。
【0068】
他方、前述のコントロールプレート300がハブ200と一体的に回転する上記以外の場合においては、基本的に、ハブ200がコントロールプレート300に対して相対回転する関係となる。この場合においては、ハブ200とコントロールプレート300との間に配される後述の第2摺動部700が、ハブ200に対して摺動し、又はコントロールプレート300に対して摺動することで、第2摺動トルクを発生させることができる。
【0069】
径方向延在部302a乃至302dにおける第1摺動部600の第1摺動面602aと摺接する面には、第1摺動トルクの大きさを増大(又は減少)させるために、一般的に知られる摩擦材が別途適用されるか、又は、所定の表面処理が施されることが好ましい。これにより、第1摺動トルクの大きさを所望の大きさに調整することが可能となる。
【0070】
また、後述の第2摺動部700がコントロールプレート300に対して摺動することで第2摺動トルクを発生させる場合においては、径方向延在部302a乃至302dにおける第2摺動部700と摺接する面(第1摺動部600の第1摺動面602aと摺接する面とは軸方向において反対側の面)には、第2摺動トルクの大きさを増大(又は減少)させるために、一般的に知られる摩擦材が別途適用されるか、又は、所定の表面処理が施されることが好ましい。
【0071】
ところで、図1乃至図6に示される一実施形態に係るダンパ装置1においては、前述の「所定の場合」においてのみ発生する第1摺動トルクは、第2摺動トルクよりも大きいトルクとなるように、前述した摩擦材、表面処理等を介して、適宜設定される。
【0072】
1-4.弾性機構部400
弾性機構部400は、図1乃至図4図6に示すように、各領域I乃至IVにおいて、第1弾性部材410と、第1弾性部材410を両側から挟んで支持する一対のシート部材420(シート部材420A及びシート部材420B)から、主に構成されるが、一対のシート部材420を省略して構成されてもよい。なお、図1乃至図4に示すように、各領域I乃至IVにおいて、1つの第1弾性部材410が配置されてもよいが、2つ以上の第1弾性部材410が直列的に配置するように構成してもよい。
【0073】
第1弾性部材410は、一例として、一般的に知られるコイルスプリングを用いることができる。また、シート部材420A及びシート部材420Bは、両側から第1弾性部材410を挟んで支持しうる構造である限り、それらの形態、構造等は特に限定されず、例えば公知のものを用いることができる。
【0074】
図1乃至図4に示す実施形態では、一例として、ディスクプレート100には、4つの収容領域、すなわち、第1収容領域102a、第2収容領域102b、第3収容領域102c、及び第4収容領域102d(これらに対応して、ハブ200にも前述のとおり窓孔206a、206b、206c、及び206dが設けられている)が形成されるので、これら4つの収容領域の各々に、つまり各領域I乃至IVに対応付けて、1つの第1弾性部材410と一対のシート部材420(シート部材420A及びシート部材420B)が収容される。
【0075】
ここで、領域Iに着目すると、図1及び図2に示すように、シート部材420Aは、ディスクプレート100(第1プレート100A及び第2プレート100B)における第1の一端面104a、及びハブ200に設けられる第1の一端側の係合部206aと、各々係合する。また、シート部材420Bは、ディスクプレート100(第1プレート100A及び第2プレート100B)における第1の他端面104a、及びハブ200に設けられる第1の他端側の係合部206aと、各々係合する。領域II乃至IVにおいても同様に、一対のシート部材420を構成するシート部材420A及びシート部材420Bは、ディスクプレート100及びハブ200に係合している。
【0076】
なお、前述のとおり、コントロールプレート300における径方向延在302a乃至302dは、図2等に示すように、各領域I乃至IVにおいて、各々が第1弾性部材410(又は、一対のシート部材420を構成するシート部材420A及びシート部材420Bのいずれか一方)に当接するように設けられている。
【0077】
以上の構成により、弾性機構部400は、ディスクプレート100とハブ200とを、回転方向に弾性連結させることが可能となっている。つまり、エンジンやモータ等の駆動源からの動力が、ディスクプレート100、弾性機構部400、及びハブ200の順に伝達された上で、ディスクプレート100とハブ200とが互いに相対回転すると、弾性機構部400の第1弾性部材410が圧縮変形させられることでトルク変動を吸収する。
【0078】
1-5.スラスト部材500
スラスト部材500は、前述の第1収容空間100x及び第2収容空間100yのうち、コントロールプレート300が配される空間とは異なる側の空間に配される。つまり、図1乃至図6に係る一実施形態においては、コントロールプレート300は、第1収容空間100xに配されるため、スラスト部材500は第1収容空間100xではなく第2収容空間100yに配されている。なお、コントロールプレート300が第2収容空間100yに配される場合においては、スラスト部材500は第1収容空間100xに配されることとなる。
【0079】
第2収容空間100yに配される一実施形態において、スラスト部材500は、図3Aに示すように、第2プレート100Bとハブ200との間に配される。スラスト部材500は、ハブ200の円筒部202を貫通する開口部(第2開口部)500aを有することができる。これにより、スラスト部材500は、開口部500aを囲む内周面においてハブ200の円筒部202の外周面により回転可能に支持される。スラスト部材500は、例えば樹脂材料により形成され、略円筒状の嵌合部501と、全体として略円環状又は略円筒状の主部502とを有する。
【0080】
図3Aに示すように、嵌合部501は、一例として、第2プレート100Bに設けられる嵌合孔112に対応し、当該第2嵌合孔112に嵌合(係合)されうる。これにより、スラスト部材500は、第2プレート100B(ディスクプレート100)と一体化され、ディスクプレート100と回転軸O周りに一体回転する。なお、嵌合部501は、第2プレート100Bに設けられる嵌合孔112に嵌合されず、例えば、ハブ200に別途設けられる別の嵌合孔(図示せず)に嵌合して、ハブ200と回転軸O周りに一体回転してもよい。又は、嵌合部501は、第2プレート100B及びハブ200のいずれにも嵌合しない構成としてもよい。
【0081】
主部502は、図3Aに示すように、第2プレート100Bに対して摺動可能な第1の面502xと、ハブ200に対して摺動可能な第2の面502yと、を有する。これにより、主部502は、第2プレート100Bに対して、及び/又は、ハブ200に対して摺動して、前述の第1摺動トルク及び第2摺動トルクとは異なる摺動トルク(第3摺動トルク)を発生させることができる。
【0082】
主部502の第2の面502yには、図3Bに示すように、略円環状に延びる切り欠き502zが形成され得る。このような切り欠き502zが設けられる場合には、この切り欠き502zの大きさを調節することにより、第2の面502yにおけるハブ200に対して摺動する面積、ひいては、第3摺動トルクの大きさを調節することができる。
【0083】
なお、図1乃至図6に示される一実施形態に係るダンパ装置1においては、後述するとおり、第1摺動部600の第2弾性部材604が、板部602をコントロールプレート300に近づく方向(図3A及び図3Bにおいては、紙面左方向)に付勢している。この際、当該付勢に係わる反力が、第2弾性部材604から第1プレート100Aに伝達されることで、第1プレート100Aがコントロールプレート300から離れる方向(図3A及び図3Bにおいては、紙面右方向)に若干付勢される。これに連動して、リベット120を介して第1プレート100Aと一体化される第2プレート100Bも、コントロールプレート300に近づく方向(図3A及び図3Bにおいては、紙面右方向)に若干付勢される。これにより、スラスト部材500の第2の面502yがハブ200に押し付けられて、前述の第3摺動トルクが発生することとなる。
【0084】
この第3摺動トルクは、ディスクプレート100とハブ200とが相対回転する際に常に発生するものであり、ダンパ装置1において、「小さなヒステリシストルク」を構成する際、及び、「大きなヒステリシストルク」を構成する際、のいずれにも用いることができる。なお、図1乃至図6に示される一実施形態に係るダンパ装置1において「小さなヒステリシストルク」とは、前述した第2摺動トルクと第3摺動トルクとの合算トルクを意味し、「大きなヒステリシストルク」とは、前述した第1摺動トルクと第3摺動トルクとの合算トルクを意味する。
【0085】
1-6.第1摺動部600
第1摺動部600は、一実施形態においては、ディスクプレート100(第1プレート100A)とコントロールプレート300との間に配され、コントロールプレート300の径方向延在部302(径方向延在部302a乃至302d)に対して摺動して第1摺動トルクを発生させる。
【0086】
図3A図3B及び図4に示すように、一実施形態に係る第1摺動部600は、コントロールプレート300の径方向延在部302(径方向延在部302a乃至302d)に対して摺動する第1摺動面602aを有する略円環状の板部602と、板部602の第1摺動面602aをコントロールプレート300の径方向延在部302に近づく方向(図3A及び図3Bにおいては、紙面左方向)に付勢する第2弾性部材604と、を有することができる。
【0087】
板部602は、図4に示すように、ハブ200の円筒部202を貫通する開口部(第1開口部)602Aを有することができる。これにより、板部602は、開口部602Aを囲む内周面においてハブ200の円筒部202の外周面により回転可能に支持される。一実施形態では、板部602は、ブッシュとして形成され得る。これにより、板部602は、簡単かつ確実に、ハブ200により回転可能に支持されるので、板部602のハブ200に対する組付性を向上させることができる。さらに、ブッシュとして形成される板部602は、ハブ200が駆動軸Zに対して傾斜することを抑えることができる。
【0088】
板部602は、図3Cに例示されるように、第1摺動面602aにおいて、コントロールプレート300の径方向延在部302に当接する第1頂部602aと、第1頂部602aに接続される第1傾斜面602aと、第1頂部602aに接続される第2傾斜面602aと、を有することができる。第1傾斜面602aは、第1頂部602aを基準として、第1摺動部600の回転軸(すなわち、回転軸O)から離れる方向(図3Cにおいて上方向)に向かって延在し、コントロールプレート300から離れる方向(図3Cにおいて右方向)に傾斜することができる。第2傾斜面602aは、第1頂部602aを基準として、第1摺動部600の回転軸(すなわち、回転軸O)に近づく方向(図3Cにおいて下方向)に向かって延在し、コントロールプレート300から離れる方向(図3Cにおいて右方向)に傾斜することができる。これにより、第1摺動部600は、コントロールプレート300の径方向延在部302に対して、第1摺動面602aにおける第1頂部602aにおいて当接して摺動することができる。
【0089】
さらに、板部602は、図4に示すように、略円環状を呈する第1係合部602Bと、板部602の外周縁付近に設けられた第2係合部602Cと、を有することができる。第1係合部602Bは、その外周面において、径方向に突出する複数の凸部602Bを有することができる。このような第1係合部602Bは、第1プレート100Aに形成された穴108に挿入され係合することができる。第2係合部602Cは、周方向において距離をおいて配置され軸方向に突出する複数の凸部602Cを有することができる。これら複数の凸部602Cは、第1プレート100Aに形成された図示しない凹部に挿入され係合することができる。これにより、第1摺動部600は、ディスクプレート100と一体的に回転することができるように構成されている。
【0090】
第2弾性部材604は、その開口部604aに板部602の第1係合部602Bを挿通させることにより、第1係合部602Bにより支持される。このような第2弾性部材604は、一方の面において第1プレート100Aに当接し、他方の面において板部602に当接する。これにより、第2弾性部材604は、板部602をコントロールプレート300に向かって付勢することができる。
【0091】
このような構成を有することにより、第1摺動部600は、コントロールプレート300がディスクプレート100に対して相対回転する際に、第1摺動面602aの第1頂部602aが径方向延在部302に押し付けられて第1摺動トルクを発生させることができる。
【0092】
板部602は、例えば樹脂材料、3d遷移金属を含む化合物により構成される金属材料等から形成され得る。第1摺動面602aは、径方向延在部302との摺動により発生させる第1摺動トルクの大きさを増大(又は減少)させるために、一般的に知られる摩擦材が別途適用されるか、又は、所定の表面処理が施されることが好ましい。これにより、第1摺動トルクの大きさを所望の大きさに調整することが可能となる。
【0093】
第2弾性部材604は、一般的に知られる皿ばねを用いることができるが、これに限定されない。第2弾性部材604は、第1プレート100Aに支持されつつ、前述のとおり、板部602の第1摺動面602aをコントロールプレート300の径方向延在部302に近づく方向(図3A及び図3Bにおいては、紙面左方向)に付勢する。一方、当該付勢に係わる反力が、第2弾性部材604から第1プレート100Aに伝達される。
【0094】
1-7.第2摺動部700
図3Aを参照すると、第2摺動部700は、一実施形態においては、コントロールプレート300とハブ200との間に配され、少なくともハブ200に対して摺動して第2摺動トルクを発生させる。
【0095】
一実施形態において、第2摺動部700は、全体として略円環状の形状を呈し、ハブ200に対して摺動可能な第2摺動面702aを有する。したがって、前述した「所定の場合」以外の場合においては、第2摺動部700はハブ200に対して相対回転することとなり、第2摺動面702aがハブ200に対して摺動することで第2摺動トルクを発生させる。
【0096】
ところで、前述した第1摺動部600の第2弾性部材604によって、第1摺動部600の板部602がコントロールプレート300に近づく方向に付勢されることに連動して、コントロールプレート300はハブ200に近づく方向に付勢される。さらに、付勢されたコントロールプレート300は、第2摺動部700をハブ200に近づく方向に付勢することとなる。これにより、第2摺動部700の第2摺動面702aはハブ200に押し付けられることで、第2摺動トルクが確実に発生することとなる。つまり、第2弾性部材604の付勢力は、板部602、コントロールプレート300、及び第2摺動部700へと順次伝達される。
【0097】
なお、第2摺動部700は、コントロールプレート300に対して摺動して第2摺動トルクを発生させうる第2摺動面702bを有していてもよい。コントロールプレート300と第2摺動部700とが相対回転可能な構成となっていれば、第2摺動面702bとコントロールプレート300の径方向延在部302とが摺動して、第2摺動トルクを発生させることが可能となる。
【0098】
第2摺動部700は、一実施形態においては、コントロールプレート300に係合してコントロールプレート300と一体回転するように構成してもよいし、コントロールプレート300及びハブ200のいずれにも係合しない構成としてもよいし、例えば、第1プレート100Aに係合するように構成してもよい。
【0099】
第2摺動面702a及び702bには、他の摺動面と同様、一般的に知られる摩擦材が別途適用されるか、又は、所定の表面処理が施されることが好ましい。
【0100】
1-8.第1摺動部600とスラスト部材500との関係について
一般的なダンパ装置にあっては、何らの措置も施さない場合には、通常、入力側の回転中心と出力側の回転中心との間にずれが生ずる可能性、別言すれば、駆動軸Zの回転中心と変速機(トランスミッション)の入力軸の回転中心との間にずれが生ずる可能性がある。このようなずれは、例えば、第1に、変速機の入力軸とダンパ装置1とを組み付ける局面において生じる可能性のあるものであり、第2に、ダンパ装置1が実際に使用されている状態においてリミッタとして機能する局面において生じる可能性のあるものである。
【0101】
このようなズレが生じた場合には、変速機の入力軸を挿通させたハブ200の回転軸が駆動軸Z(ひいては、駆動軸Zに接続されたディスクプレート100等)に対して傾斜することになる。これに伴って、ハブ200により支持される第1摺動部600(すなわち、板部602の第1摺動面602a)が、駆動軸Zに対して、ひいては、フライホイール2及びフライホイール2に接続されたディスクプレート100に対して、傾斜することになる。この場合、第1摺動部600の第1摺動面602aがコントロールプレート300に対して本来意図されていたとおりに摺動しない可能性がある。一例として、第1摺動部600の第1摺動面602aがコントロールプレート300に当接して摺動する場所が、本来意図されていた場所よりも径方向においてずれる(すなわち、第1摺動面602aによるコントロールプレート300に対する作用半径が、本来意図されていた作用半径に比べて変化する)可能性がある。また、この場合、第1摺動面602aとコントロールプレート300との間において当接して摺動する部分の面積が変化して、第1摺動トルクの大きさが変化する可能性もある。
【0102】
このような第1摺動面602aによるコントロールプレート300に対する摺動の変化を抑えるために、以下のような構成を採用することができる。
【0103】
一実施形態では、変速機の入力軸(シャフト)を回転可能に支持する軸受け(図示しない)は、ダンパ装置1の出力側、すなわち、図3A及び図3Bにおいて、ダンパ装置1の右側に配置され得る(このような軸受けについては、後に参照する図19及び図21において、変速機の入力軸Sを回転可能に支持する軸受けBを参照されたい)。この場合において、第1摺動部600及びスラスト部材500のうち、このような軸受け(換言すれば、変速機)に対してより近くに配置されるのは、第1摺動部600である。すなわち、上記軸受けと第1摺動部600との間の距離は、上記軸受けとスラスト部材500との間の距離よりも小さい。
【0104】
一実施形態では、(上記軸受けに対してより近くに配置される)第1摺動部600の板部602に形成された開口部(第1開口部)602Aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間(図3Bに示す隙間G)が、(上記軸受けに対してより遠くに配置される)スラスト部材500に形成された開口部(第2開口部)500aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間(図3Bに示す隙間G)より小さくなるように、形成され得る。これにより、ハブ200が駆動軸Zに対して傾斜する角度を、ひいては、ハブ200に支持される第1摺動部600の第1摺動面600aがコントロールプレート300に対して傾斜する角度を、(G>Gの場合に比べて)小さく抑えることができる。この結果、第1摺動面602aによるコントロールプレート300に対する作用半径が、本来意図されていた作用半径に比べて変化する可能性を抑えることができる。
【0105】
さらに、一実施形態では、上述したように、第1摺動部600は、コントロールプレート300の径方向延在部302に対して、第1摺動面602aにおける第1頂部602aにおいて当接して摺動することができる。これにより、仮にハブ200が駆動軸Zに対して傾斜した場合であっても、第1摺動面602aは、依然として、コントロールプレート300に対して第1頂部602aにおいて当接して摺動するので、第1摺動面602aとコントロールプレート300との間において当接する部分の面積は大きく変化しない。この結果、第1摺動トルクの大きさが変化することが抑えられる。
【0106】
さらにまた、一実施形態では、上述したように、第1摺動部600の板部602は、ブッシュとして形成され得る。これにより、板部602は、ハブ200が駆動軸Zに対して傾斜する事態、すなわち、第1摺動面602aによるコントロールプレート300に対する作用半径が本来意図されていた作用半径に比べて変化する事態を、簡単かつ効果的に抑えることができる。
【0107】
2.ダンパ装置の動作
次に、上記構成を有するダンパ装置1の動作について、図7A乃至図7F、及び図8を参照して説明する。図7Aは、一実施形態に係るダンパ装置1において、第1回転体(ディスクプレート100)と第2回転体(ハブ200)とが相対回転していない状態を模式的に示す概略上面図である。図7Bは、一実施形態に係るダンパ装置1において、第1回転体(ディスクプレート100)に対し第2回転体(ハブ200)が正側に捩れ角θ1°相対回転している状態を模式的に示す概略上面図である。図7Cは、一実施形態に係るダンパ装置1において、第1回転体(ディスクプレート100)に対し第2回転体(ハブ200)が正側に捩れ角θ2°相対回転している状態を模式的に示す概略上面図である。図7Dは、一実施形態に係るダンパ装置1において、第1回転体(ディスクプレート100)に対し第2回転体(ハブ200)が負側に捩れ角θ3°相対回転している状態を模式的に示す概略上面図である。図7Eは、一実施形態に係るダンパ装置1において、第1回転体(ディスクプレート100)に対し第2回転体(ハブ200)が負側に捩れ角θ4°相対回転している状態を模式的に示す概略上面図である。図7Fは、一実施形態に係るダンパ装置1において、図7Eの状態から第1回転体(ディスクプレート100)に対する第2回転体(ハブ200)の相対回転が解消される途中の状態を模式的に示す概略上面図である。図8は、一実施形態に係るダンパ装置1における捩り特性を模式的に示す概略特性図である。なお、図7A乃至図7Fにおいては、便宜上、弾性機構部400において、一対のシート部材420(シート部材420A及びシート部材420B)の記載は省略されている。
【0108】
図7Aは、エンジンやモータ等の駆動源からの動力がダンパ装置1に伝達されているものの、ディスクプレート100とハブ200との間に相対回転が発生していない状態を示している(捩れ角0°)。この場合においては、前述した第1摺動トルク、第2摺動トルク、及び第3摺動トルクのいずれも発生していない。
【0109】
なお、図7Aに示すディスクプレート100とハブ200との間に相対回転が発生していない状態においては、コントロールプレート300における軸方向延在部303a乃至303dは、対応するハブ200における溝部208a乃至208d内において、溝部208a乃至208dを画定する壁部208wに近接する位置に収容されている。つまり、軸方向延在部303aと壁部208wとの間、軸方向延在部303bと壁部208wとの間、軸方向延在部303cと壁部208wとの間、及び、軸方向延在部303dと壁部208wとの間には、同じ距離の隙間が形成されており、軸方向延在部303a乃至303dは、各々壁部208wと当接していない。
【0110】
次に、図7Bは、図7Aの状態から、ディスクプレート100とハブ200との間に相対回転が発生して、正側にθ1°の捩れが発生した場合を示している。ここで、正側とは、例えば、ディスクプレート100に対してハブ200が相対的にR方向(図7Bにおいては、時計回り方向)に回転(移動)する場合を指す。この場合、ハブ200は、第1弾性部材410を撓ませながらディスクプレート100に対して相対回転する。また、捩れ角0°乃至θ1°においては、軸方向延在部303a乃至303dと、各々に対応する壁部208wとの間の隙間の距離が次第に広がるため、両者(軸方向延在部303と壁部208w)は依然として当接していない。したがって、コントロールプレート300は、ディスクプレート100に対するハブ200の相対回転に影響されることなく、ディスクプレート100に対して相対回転しない。一方、コントロールプレート300は、ハブ200に対して相対回転することとなる(ハブ200が、コントロールプレート300に対して相対回転することとなる)。
【0111】
この場合(図7Aの状態~図7Bの状態)においては、図3Aを参照しつつ前述にて説明したとおり、ディスクプレート100と一体回転するスラスト部材500における第2の面502yとハブ200(円板部205)との摺動により、前述の第3摺動トルクが発生する。また、ハブ200とコントロールプレート300との相対回転に基づいて、第2摺動部700の第2摺動面702aがハブ200(円板部205)に対して摺動することで第2摺動トルクが発生する。なお、前述のとおり、第2摺動部700がコントロールプレート300に対して相対回転可能となっている場合においては、第2摺動部700の摺動面702bと、コントロールプレート300の径方向延在部302(径方向延在部302a乃至302d)との摺動により、前述の第2摺動トルクを発生させてもよい。
【0112】
以上の通り、図7Aの状態~図7Bの状態においては、第3摺動トルクと第2摺動トルクの合算トルクがヒステリシストルクとして発生し、この場合のヒステリシストルクは、「小さなヒステリシストルク」に相当する。
【0113】
次に、図7Cは、図7Bの状態から、ディスクプレート100に対するハブ200の相対回転がさらに進み、正側にθ2°の捩れが発生した場合を示している。この場合、ハブ200は、第1弾性部材410をさらに撓ませながらディスクプレート100に対して相対回転する。また、θ2°の捩れ角において、ハブ200における突起部207a乃至207dはライニングプレート101に設けられる規制部106に各々当接する。これにより、ハブ200はθ2°以上正側に相対回転することが規制されるためθ2°の捩れ角は正側の最大捩れ角と捉えることができる。
【0114】
なお、捩れ角θ1°乃至θ2°においては、軸方向延在部303a乃至303dと、これらに対応する壁部208wとの間の隙間の距離がさらに広がるため、両者は依然として当接することはない。したがって、コントロールプレート300は、ディスクプレート100に対するハブ200の相対回転に影響されることなく、ディスクプレート100に対して相対回転しない。一方、コントロールプレート300は、ハブ200に対して相対回転することとなる(ハブ200が、コントロールプレート300に対して相対回転することとなる)。
【0115】
この場合(図7Bの状態~図7Cの状態)においても、図7Aの状態~図7Bの状態へと遷移する場合と同様、第3摺動トルク、及び第2摺動トルクが発生する。したがって、図7Bの状態~図7Cの状態においても、「小さなヒステリシストルク」が発生することとなる。
【0116】
次に、図7Dは、図7Aの状態から、ディスクプレート100とハブ200との間に相対回転が発生して、負側にθ3°の捩れが発生した場合を示している。ここで、負側とは、例えば、ディスクプレート100に対してハブ200が相対的にL方向(図7Dにおいては、反時計回り方向)に回転(移動)する場合を指す。この場合、ハブ200は、第1弾性部材410を撓ませながらディスクプレート100に対して相対回転する。また、捩れ角0°乃至θ3°においては、軸方向延在部303a乃至303dと、これらに対応する壁部208wとの間の隙間の距離が次第に小さくなり、捩れ角θ3°において両者は当接する(当該隙間が存在しなくなる)。したがって、コントロールプレート300は、捩れ角0°乃至θ3°においては、ディスクプレート100に対するハブ200の相対回転に影響されることなく、ディスクプレート100に対してまだ相対回転しない。一方、コントロールプレート300は、ハブ200に対して相対回転することとなる(ハブ200が、コントロールプレート300に対して相対回転することとなる)。
【0117】
ところで、コントロールプレート300の径方向延在部302a乃至302dは、各領域I乃至IVにおいて基本的に弾性機構部400と当接している。例えば、ディスクプレート100に対してハブ200が相対回転していない場合(図7Aの状態)、及びディスクプレート100に対してハブ200が正側で相対回転する場合(図7B及び図7Cの状態)においては、径方向延在部302a乃至302dは弾性機構部400に常に当接している。しかし、捩れ角が0°乃至θ3°に向かうにつれて、この当接関係は順次解消される。つまり、捩れ角0°乃至θ3°において、コントロールプレート300の径方向延在部302a乃至302dと第1弾性部材410(弾性機構部400)との間には隙間が形成され、その隙間の距離(大きさ)は順次大きくなる。これは、前述のとおり、軸方向延在部303a乃至303dと壁部208wとの間の隙間が存在しなくなることに連動している。
【0118】
この場合(図7Aの状態~図7Dの状態)においても、図7Aの状態~図7Bの状態へと遷移する場合と同様、前述の第3摺動トルク、及び第2摺動トルクが発生する。したがって、図7Aの状態~図7Dの状態においても、「小さなヒステリシストルク」が発生することとなる。
【0119】
次に、図7Eは、図7Dの状態から、ディスクプレート100に対するハブ200の相対回転がさらに進み、負側にθ4°の捩れが発生した場合を示している。この場合、ハブ200は、第1弾性部材410をさらに撓ませながらディスクプレート100に対して相対回転する。また、θ4°の捩れ角において、ハブ200における突起部207a乃至207dはライニングプレート101に設けられる規制部106に各々当接する。これにより、ハブ200はθ4°以上負側に相対回転することが規制されるためθ4°の捩れ角は負側の最大捩れ角と捉えることができる。この場合において、コントロールプレート300の径方向延在部302a乃至302dと弾性機構部400(第1弾性部材410)との間には、図7Dの状態において形成された隙間が、依然として形成され続けている。
【0120】
なお、捩れ角θ3°乃至θ4°においては、軸方向延在部303a乃至303dと、これらに対応する壁部208wとが当接している。したがって、コントロールプレート300(軸方向延在部303a乃至303d)は、ハブ200(壁部208wに案内されて、ディスクプレート100に対してハブ200とともに(ハブ200と一体的に)L方向に相対回転する。
【0121】
この場合(図7Dの状態~図7Eの状態)においても、ディスクプレート100とハブ200とは相対回転しているため、図7Aの状態~図7Bの状態へと遷移する場合と同様、前述の第3摺動トルクが発生する。この場合は、ディスクプレート100に対してコントロールプレート300も相対回転するため、前述したとおり、第1摺動部600の第1摺動面602aとコントロールプレート300の径方向延在部302(径方向延在部302a乃至302d)との間において、前述の第1摺動トルクが発生する。なお、この場合においては、ハブ200とコントロールプレート300とが一体回転するため、第2摺動トルクは発生しない。また、この場合に発生する第1摺動トルクは、第2摺動トルクよりも大きなトルクになるように予め設定されているものとする。かかる設定に関しては、前述したいずれかの方法により、第1摺動トルクを発生させる第1摺動面602a、及び径方向延在部302a乃至302dの摩擦係数を適宜調整するものとする。
【0122】
以上より、図7Dの状態~図7Eの状態においては、第3摺動トルクと第1摺動トルクの合算トルクがヒステリシストルクとして発生し、この場合のヒステリシストルクは、「大きなヒステリシストルク」に相当する。
【0123】
次に、図7Fは、図7Eの状態から、ディスクプレート100に対するハブ200の相対回転が解消されつつあり、負側において最大捩れ角θ4°から捩れ角0°に向かって遷移する過程途中の状態を示している。この場合、ハブ200は、第1弾性部材410の撓みを次第に解消させながら捩れ角0°に向かって相対的にR方向に移動する。つまり、図7Fの状態における捩れ角は、例えば、θ3°とθ4°の間の捩れ角ということができる。
【0124】
この場合においては、まずハブ200が捩れ角θ4°からR方向に相対的に移動(L方向への相対回転を解消するように移動)すると、軸方向延在部303a乃至303dと、これらに対応する壁部208wとの当接関係が解消され、再び両者間に隙間が順次形成される。つまり、コントロールプレート300のR方向への回転(ディスクプレート100に対する相対回転)はハブ200によって案内されえない。したがって、ディスクプレート100に対するハブ200の負側の相対回転の解消タイミングと、ディスクプレート100に対するコントロールプレート300の負側の相対回転の解消タイミングとの間には、わずかに時間差が生じる。
【0125】
ハブ200が、コントロールプレート300に先だって(コントロールプレート300を案内することなく)捩れ角θ4°から負側の相対回転を解消すべくR方向に所定角度(例えば、当該所定角度をα°とする)相対的に移動すると、図7D(及び図7E)の状態において形成されていた、コントロールプレート300の径方向延在部302a乃至302dの各々と弾性機構部400との間の各々の隙間が次第に小さくなり、最終的に消滅する。これにより、コントロールプレート300の径方向延在部302a乃至302dと弾性機構部400とは再び当接することとなる。この状態において、弾性機構部400は未だ撓んだ状態であるため、弾性機構部400は、コントロールプレート300をR方向に押圧(付勢)する。これにより、コントロールプレート300は、弾性機構部400の撓みによる付勢力に基づいて、ディスクプレート100に対して、今度はR方向に相対回転することとなる。
【0126】
以上の流れをさらに説明すれば、捩れ角θ4°乃至θ4-α°までは、ハブ200のみがディスクプレート100に対してR方向に相対回転するため、図7Aの状態~図7Bの状態へと遷移する場合と同様、第3摺動トルク及び第2摺動トルクが発生する。つまり、「小さなヒステリシストルク」が発生することとなる。一方、θ4-α°乃至0°までは、ハブ200だけでなくコントロールプレート300もディスクプレート100に対してR方向に相対回転するため、図7Dの状態~図7Eの状態へと遷移する場合と同様、第3摺動トルク及び第1摺動トルクが発生する。つまり、「大きなヒステリシストルク」が発生することとなる。
【0127】
以上、図7A乃至図7Fを参照して説明したダンパ装置1の動作の流れに基づけば、当該ダンパ装置1の捩り特性は、図8のように示される。
【0128】
ところで、前述のとおり説明した負側においてのみ発生する「大きなヒステリシストルク」、つまり第1摺動トルク及び第3摺動トルクが合算されたヒステリシストルクは、例えば、ハイブリッド車両において、エンジンが停止しモータのみで車両が駆動されている状態において、何らかの条件でエンジンが始動する際に発生するトルク変動を吸収する際に好適に用いられる。また、前述のとおり、正側においては、「小さなヒステリシストルク」つまり第2摺動トルク及び第3摺動トルクが合算されたヒステリシストルクを発生させることができる。このように、一実施形態に係るダンパ装置1は、コントロールプレート300を1枚に集約することで、ダンパ装置1の軸長をコンパクトなものとしつつ、正側では比較的小さなヒステリシストルクを、負側では比較的大きなヒステリシストルクを発生させることができ、様々なバリエーションのヒステリシストルクを安定して発生させることが可能となっている。また、一実施形態に係るダンパ装置1は、第1摺動トルクの発生を、第1摺動部600を介してコントロールプレート300の径方向延在部302上に集約しているので、コントロールプレート300の形状、構造、強度等の観点からの設計が比較的容易なものとすることができる。
【0129】
3.変形例
3-1.第2実施形態
次に、第2実施形態に係るダンパ装置1の構成について、図9を参照して説明する。図9は、第2実施形態に係るダンパ装置1の構成を模式的に示す概略断面図である。なお、図9は、第2実施形態に係るダンパ装置1が、一実施形態に係るダンパ装置1に対して以下の異なる構成を有する旨を簡易的に説明するためのものであり、領域Iに係る箇所に着目する図である。したがって、図3A等に係る一実施形態に係るダンパ装置1と図9に係る第2実施形態に係るダンパ装置1とで共通する構成要素について、便宜上、図9にて若干の相違があるように表現されている箇所もあるが、以下の異なる構成以外については、特段の説明がない限り、両実施形態に係る各構成要素の形状等は共通するものと理解されたい。
【0130】
第2実施形態に係るダンパ装置1は、前述した一実施形態に係るダンパ装置1と概ね同様の構成であるが、スラスト部材500及び第1摺動部600の構成が前述の一実施形態とは異なる。なお、第2実施形態に係るダンパ装置1において、一実施形態に係るダンパ装置1と同一の構成については、その詳細な説明を省略する。
【0131】
第2実施形態に係るダンパ装置1におけるスラスト部材500は、前述した略円筒状の嵌合部501と略円環状の主部502とからなる一体構成物に加えて、さらに、当該一体構成物をハブ200に近づく方向(図9においては、紙面右方向)に付勢する第4弾性部材505をさらに有する。第4弾性部材505は、一般的に知られる皿ばねを用いることができるが、これに限定されない。
【0132】
他方、第2実施形態に係るダンパ装置1における第1摺動部600は、一実施形態においては構成要素となっていた第2弾性部材604を有さず、板部602のみで構成される。
【0133】
第2実施形態に係るダンパ装置1は、上記の構成とすることにより、スラスト部材500の第2の面502yが、第4弾性部材505の付勢力によってハブ200(円板部205)に押し付けられる。これにより、ディスクプレート100とハブ200とが相対回転する際に、確実且つ効率的に前述の第3摺動トルクを発生させることが可能となる。
【0134】
他方、第4弾性部材505が、第2の面502yをハブ200に近づく方向に付勢することに連動して、当該付勢に係る反力が、第4弾性部材505から第2プレート100Bに伝達される。これにより、第2プレート100Bがハブ200から離れる方向(図9においては、紙面左方向)に若干付勢される。これに連動して、リベット120を介して第2プレート100Bと一体化される第1プレート100Aも、コントロールプレート300に近づく方向(図9においては、紙面左方向)に若干付勢される。この第1プレート100Aに伝達される付勢力は、一実施形態に係る第2弾性部材604による付勢力に代替されうる。したがって、第2実施形態に係るダンパ装置1における第1摺動部600は、一実施形態においては構成要素となっていた第2弾性部材604を省略しても、第1摺動部600の第1摺動面602aとコントロールプレート300の径方向延在部302との間において、第1摺動トルクを発生させることが可能となる。
【0135】
なお、図9においては、省略されているが、板部602は、図3Cを参照して上述したように、第1摺動面602aにおいて、コントロールプレート300の径方向延在部302に当接する第1頂部602aと、第1頂部602aに接続される第1傾斜面602aと、第1頂部602aに接続される第2傾斜面602aと、を有することができる。
【0136】
また、図3Bを参照して上述したように、板部602に形成された開口部(第1開口部)602Aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間Gが、スラスト部材500に形成された開口部(第2開口部)500aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間Gより小さくなるように、形成され得る。
【0137】
3-2.第3実施形態
次に、第3実施形態に係るダンパ装置1の構成について、図10を参照して説明する。図10は、第3実施形態に係るダンパ装置1の構成を模式的に示す概略断面図である。なお、図10は、第3実施形態に係るダンパ装置1が、一実施形態に係るダンパ装置1に対して以下の異なる構成を有する旨を簡易的に説明するためのものであり、領域Iに係る箇所に着目する図である。したがって、図3A等に係る一実施形態に係るダンパ装置1と図10に係る第3実施形態に係るダンパ装置1とで共通する構成要素について、便宜上、図10にて若干の相違があるように表現されている箇所もあるが、以下の異なる構成以外については、特段の説明がない限り、両実施形態に係る各構成要素の形状等は共通するものと理解されたい。
【0138】
第3実施形態に係るダンパ装置1は、前述した一実施形態に係るダンパ装置1と概ね同様の構成であるが、第1摺動部600及び第2摺動部700の構成が前述の一実施形態とは異なる。なお、第3実施形態に係るダンパ装置1において、一実施形態に係るダンパ装置1と同一の構成については、その詳細な説明を省略する。
【0139】
第3実施形態に係るダンパ装置1における第2摺動部700は、略円環状の形状を呈する第2摺動面702a(及び702b)を有する一体構造物に加えて、さらに、当該一体構成物をハブ200に近づく方向(図10においては、紙面左方向)に付勢する第3弾性部材705をさらに有する。第3弾性部材705は、一般的に知られる皿ばねを用いることができるが、これに限定されない。
【0140】
他方、第3実施形態に係るダンパ装置1における第1摺動部600は、一実施形態においては構成要素となっていた第2弾性部材604を有さず、板部602のみで構成される。
【0141】
第3実施形態に係るダンパ装置1は、上記の構成とすることにより、第2摺動部700の第2摺動面702aが、第3弾性部材705の付勢力によってハブ200(円板部205)に押し付けられる。これにより、ディスクプレート100とハブ200とが相対回転し、且つハブ200がコントロールプレート300に対して(コントロールプレート300がハブ200に対して)相対回転する際に、確実且つ効率的に前述の第2摺動トルクを発生させることが可能となる。
【0142】
他方、第3弾性部材705が、第2摺動面702aをハブ200に押し付けられる方向に付勢することに連動して、当該付勢に係る反力が、第3弾性部材705からコントロールプレート300に伝達される。これにより、コントロールプレート300が第1プレート100Aに近づく方向(図10においては、紙面右方向)に若干付勢される。これにより、第3実施形態に係わるダンパ装置1では、コントロールプレート300の径方向延在部302が第1摺動部600の第1摺動面602aに押し付けられることにより、第1摺動トルクを確実且つ効率的に発生させることが可能となる。この構成においては、コントロールプレート300が第1プレート100Aに近づく方向に付勢されるため、一実施形態において構成要素となっていた第2弾性部材604を省略しても、第1摺動部600の第1摺動面602aとコントロールプレート300の径方向延在部302との間において、第1摺動トルクを発生させることが可能となる。
【0143】
なお、図10においては、省略されているが、板部602は、図3Cを参照して上述したように、第1摺動面602aにおいて、コントロールプレート300の径方向延在部302に当接する第1頂部602aと、第1頂部602aに接続される第1傾斜面602aと、第1頂部602aに接続される第2傾斜面602aと、を有することができる。
【0144】
また、図3Bを参照して上述したように、板部602に形成された開口部(第1開口部)602Aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間Gが、スラスト部材500に形成された開口部(第2開口部)500aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間Gより小さくなるように、形成され得る。
【0145】
3-3.第4実施形態
次に、第4実施形態に係るダンパ装置1の構成について、図11を参照して説明する。図11は、第4実施形態に係るダンパ装置1の構成を模式的に示す概略断面図である。なお、図11は、第4実施形態に係るダンパ装置1が、一実施形態に係るダンパ装置1に対して以下の異なる構成を有する旨を簡易的に説明するためのものであり、領域Iに係る箇所に着目する図である。したがって、図3A等に係る一実施形態に係るダンパ装置1と図11に係る第4実施形態に係るダンパ装置1とで共通する構成要素について、便宜上、図11にて若干の相違があるように表現されている箇所もあるが、基本的に、以下の異なる構成以外については、両実施形態に係る各構成要素の形状等は共通するものと理解されたい。
【0146】
第4実施形態に係るダンパ装置1は、前述した一実施形態に係るダンパ装置1と概ね同様の構成であるが、第1摺動部600の構成が前述の一実施形態とは異なる。なお、第4実施形態に係るダンパ装置1において、一実施形態に係るダンパ装置1と同一の構成については、その詳細な説明を省略する。
【0147】
第4実施形態に係るダンパ装置1における第1摺動部600は、板部602と第2弾性部材604x(一実施形態においては第2弾性部材604)とで構成される点に関しては一実施形態と同様であるが、第2弾性部材604xは、板部602をコントロールプレート300に近づく方向(図11においては、紙面左方向)ではなく、第1プレート100Aに近づく方向(図11においては、紙面右方向)に付勢している。また、第4実施形態に係わるダンパ装置1の第1摺動部600は、一実施形態とは異なり、コントロールプレート300に係合(例えば、板部602がコントロールプレート300の径方向延在部302に係合)するように構成されている。したがって、第1摺動部600は、コントロールプレート300と一体回転することができる。なお、第2弾性部材604xは、一実施形態に係る第2弾性部材604と同じものを用いることができる。
【0148】
第4実施形態に係るダンパ装置1は、上記の構成とすることにより、コントロールプレート300とディスクプレート100とが相対回転する際(つまり、前述の「所定の場合」)に、第1摺動部600の第1摺動面602aが第1プレート100Aの内面110Aに押し付けられることで、第1摺動面602aと第1プレート100Aの内面110Aとの間において第1摺動トルクを確実且つ効率的に発生させることが可能となる。なお、一実施形態においては、図3Aに示すように、板部602におけるコントロールプレート300に対向する面を第1摺動面602aと称した。一方、この第4実施形態においては、図11に示すように、板部602における第1プレート100Aに対向する面を第1摺動面602aと称する。したがって、第1摺動面602aとは、第1摺動部600において、第1摺動トルクを発生させる面と理解されたい。
【0149】
他方、第2弾性部材604xが、第1摺動面602aを第1プレート100Aに近づく方向に付勢することに連動して、当該付勢に係る反力が、第2弾性部材604xからコントロールプレート300に伝達される。これにより、コントロールプレート300は、ハブ200に近づく方向(図11においては、紙面左方向)に若干付勢される。これにより、第4実施形態に係わるダンパ装置1では、第2摺動部700の第2摺動面702aが、第2弾性部材604xの付勢力に連動する反力によってハブ200(円板部205)に押し付けられる。したがって、ハブ200とコントロールプレート300とが相対回転する際に、第2摺動トルクを確実且つ効率的に発生させることが可能となる。
【0150】
なお、図11においては、省略されているが、板部602は、図3Cを参照して上述したように、第1摺動面602aにおいて、第1プレート100Aに当接する第1頂部602aと、第1頂部602aに接続され、回転軸Oから離れる方向に向かって延在し、第1プレート100Aから離れる方向に傾斜する第1傾斜面602aと、第1頂部602aに接続され、回転軸Oに近づく方向に向かって延在し、第1プレート100Aから離れる方向に傾斜する第2傾斜面602aと、を有することができる。
【0151】
また、図3Bを参照して上述したように、板部602に形成された開口部(第1開口部)602Aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間Gが、スラスト部材500に形成された開口部(第2開口部)500aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間Gより小さくなるように、形成され得る。
【0152】
3-4.第5実施形態
次に、第5実施形態に係るダンパ装置1の構成について、図12を参照して説明する。図12は、第5実施形態に係るダンパ装置1の構成を模式的に示す概略断面図である。なお、図12は、第5実施形態に係るダンパ装置1が、一実施形態に係るダンパ装置1に対して以下の異なる構成を有する旨を簡易的に説明するためのものであり、領域Iに係る箇所に着目する図である。したがって、図3A等に係る一実施形態に係るダンパ装置1と図12に係る第5実施形態に係るダンパ装置1とで共通する構成要素について、便宜上、図12にて若干の相違があるように表現されている箇所もあるが、基本的に、以下の異なる構成以外については、両実施形態に係る各構成要素の形状等は共通するものと理解されたい。
【0153】
第5実施形態に係るダンパ装置1は、前述した一実施形態に係るダンパ装置1と概ね同様の構成であるが、スラスト部材500、第1摺動部600、及び第2摺動部700の構成が前述の一実施形態とは異なる。なお、第5実施形態に係るダンパ装置1において、一実施形態に係るダンパ装置1と同一の構成については、その詳細な説明を省略する。
【0154】
第5実施形態に係るダンパ装置1におけるスラスト部材500は、第2実施形態と同様に、前述した略円筒状の嵌合部501と略円環状の主部502とからなる一体構成物に加えて、さらに、当該一体構成物をハブ200に近づく方向(図12においては、紙面右方向)に付勢する第4弾性部材505をさらに有する。第4弾性部材505は、一般的に知られる皿ばねを用いることができるが、これに限定されない。
【0155】
さらに、第5実施形態に係るダンパ装置1においては、第1摺動部600及び第2摺動部700が、コントロールプレート300と一体的に形成されている。つまり、コントロールプレート300、第1摺動部600、及び第2摺動部700が一つの一体構造物として形成されている。このように形成された一体構造物は、第1摺動部600の機能及び第2摺動部700の機能を兼ね備えたコントロールプレート300x(便宜上、この第5実施形態におけるコントロールプレートを「コントロールプレート300x」と称するものとする)と捉えることができる。
【0156】
したがって、第5実施形態に係るコントロールプレート300xは、第1プレート100Aの内面110Aに対して直接摺動して第1摺動トルクを発生する第1摺動面602aと、ハブ200(円板部205)に対して直接摺動して第2摺動トルクを発生する第2摺動面702aとを、径方向延在部302上に有することができる。
【0157】
第5実施形態に係るダンパ装置1は、上記の構成とすることにより、スラスト部材500の第2の面502yが、第4弾性部材505の付勢力によってハブ200(円板部205)に押し付けられる。これにより、ディスクプレート100とハブ200とが相対回転する際に、確実且つ効率的に前述の第3摺動トルクを発生させることが可能となる。
【0158】
他方、第4弾性部材505が、第2の面502yをハブ200に近づく方向に付勢することに連動して、当該付勢に係る反力が、第4弾性部材505から第2プレート100Bに伝達される。これにより、第2プレート100Bがハブ200から離れる方向(図12においては、紙面左方向)に若干付勢される。これに連動して、リベット120を介して第1プレート100Bと一体化される第1プレート100Aも、コントロールプレート300に近づく方向(図12においては、紙面左方向)に若干付勢される。これにより、第1プレート100Aの内面110Aが、コントロールプレート300xの第1摺動面602aに押し付けられる。これにより、ディスクプレート100とコントロールプレート300xとが相対回転する際に、コントロールプレート300xの第1摺動面602aと1プレート100Aの内面110Aとの間で、確実且つ効率的に第1摺動トルクを発生させることができる。
【0159】
また、第1プレート100Aの内面110Aが、コントロールプレート300xの第1摺動面602aに押し付けられることに連動して、コントロールプレート300xの第2摺動面702aがハブ200(円板部205)に押し付けられる。これにより、コントロールプレート300xとハブ200とが相対回転する際に、コントロールプレート300xの第2摺動面702aとハブ200との間で、確実且つ効率的に第2摺動トルクを発生させることができる。
【0160】
なお、図12においては、省略されているが、コントロールプレート300xは、図3Cを参照して上述したように、第1摺動面602aにおいて、第1プレート100Aに当接する第1頂部602aと、第1頂部602aに接続され、回転軸Oから離れる方向に向かって延在し、第1プレート100Aから離れる方向に傾斜する第1傾斜面602aと、第1頂部602aに接続され、回転軸Oに近づく方向に向かって延在し、第1プレート100Aから離れる方向に傾斜する第2傾斜面602aと、を有することができる。
【0161】
また、図3Bを参照して上述したように、コントロールプレート300xに形成された開口部(第1開口部)602Aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間Gが、スラスト部材500に形成された開口部(第2開口部)500aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間Gより小さくなるように、形成され得る。
【0162】
3-5.第6実施形態
次に、第6実施形態に係るダンパ装置1の構成について、図13及び図14を参照して説明する。図13は、第6実施形態に係るダンパ装置1の構成を模式的に示す概略断面図である。図14は、第6実施形態に係るダンパ装置1において、ディスクプレート100とコントロールプレート300との関係を拡大して模式的に示す概略図である。なお、図13は、第6実施形態に係るダンパ装置1が、一実施形態に係るダンパ装置1に対して以下の異なる構成を有する旨を簡易的に説明するためのものであり、領域Iに係る箇所に着目する図である。したがって、図3A等に係る一実施形態に係るダンパ装置1と図13に係る第6実施形態に係るダンパ装置1とで共通する構成要素について、便宜上、図13にて若干の相違があるように表現されている箇所もあるが、基本的に、以下の異なる構成以外については、両実施形態に係る各構成要素の形状等は共通するものと理解されたい。
【0163】
第6実施形態に係るダンパ装置1は、前述した一実施形態に係るダンパ装置1と概ね同様の構成であるが、ディスクプレート100、ハブ200、コントロールプレート300、第1摺動部600、及び第2摺動部700の構成が前述の一実施形態とは異なる。なお、第6実施形態に係るダンパ装置1において、一実施形態に係るダンパ装置1と同一の構成については、その詳細な説明を省略する。
【0164】
第6実施形態に係るダンパ装置1におけるコントロールプレート300は、一実施形態とは異なり、その軸方向延在部303a乃至303dの各々が、ハブ200の溝部208a乃至208dに収容されるのではなく、ディスクプレート100に収容されるように構成される。具体的には、第6実施形態に係るダンパ装置1の第1プレート100Aには、図14に示すように、各領域I乃至IVに対応付けて、軸方向延在部303a乃至303dを収容する収容溝部130(収容溝部130a乃至130d)が設けられている。この収容溝部130a乃至130dは、一実施形態の溝部208a乃至208dがハブ200の窓孔206a乃至206dに連続的に設けられていたのと同様に、第1プレート100Aに設けられる第1収容領域102a、第2収容領域102b、第3収容領域102c、及び第4収容領域102dの径方向内側に一体的に設けられてもよいし、独立的に第1プレート100A上に設けられていてもよい。なお、図14においては、収容溝部130aが、第1収容領域102aと独立的に設けられる一例が示されている。
【0165】
第6実施形態において、コントロールプレート300の軸方向延在部303a乃至303dは、図14に示すように、収容溝部130a乃至130dを画定する壁部130wに近接する位置に所定の距離の隙間を形成して収容される。これは、一実施形態において、軸方向延在部303a乃至303dが壁部208wに近接する位置に収容されたことに対応する。
【0166】
一方、第6実施形態に係るダンパ装置1におけるハブ200の溝部208a乃至208dは、コントロールプレート300の軸方向延在部303a乃至303dを収容する機能が不要となることから省略されうる。他方、図13に示すように、ハブ200には、第2摺動部700が係合する係合孔210が別途形成される。これにより、第2摺動部700がハブ200に係合されて、第2摺動部700がハブ200と一体回転することができるように構成される。
【0167】
第6実施形態に係るダンパ装置1における第1摺動部600は、基本的に一実施形態と同様の構成ではあるが、回転軸Oに近い位置に配されている。
【0168】
上記のように構成される第6実施形態に係るダンパ装置1は、基本的に、一実施形態と同様に動作することとなる。但し、図7A乃至図7Fを用いて説明した一実施形態に係るコントロールプレート300とハブ200との関係が、第6実施形態においてはコントロールプレート300とディスクプレート100(第1プレート100A)との関係に置換される。
【0169】
具体的に説明すると、前述にて説明した図7B及び図7Cの場合のように、ディスクプレート100とハブ200との間に相対回転が発生して、正側に0°~θ1°~θ2°の捩れが発生した場合を想定する。この場合は、ディスクプレート100に対してハブ200が相対的にR方向(図7Bにおいては、時計回り方向)に回転(移動)する場合を指すが、視点を変えると、ハブ200に対してディスクプレート100が相対的にL方向に回転(移動)することと同義である。この場合、第6実施形態においては、コントロールプレート300の軸方向延在部303a乃至303dと、対応する収容溝部130a乃至130dにおける壁部130wとの間の隙間の距離が次第に大きくなって両者が当接しない関係となる。したがって、コントロールプレート300は、ハブ200に対するディスクプレート100の相対回転に影響されることなく、ハブ200に対して相対回転しない。一方、コントロールプレート300は、ディスクプレート100に対して相対回転することとなる(ディスクプレート100が、コントロールプレート300に対して相対回転することとなる)。したがって、コントロールプレート300の径方向延在部302と、第1摺動部600の第1摺動面602aとの間で第1摺動トルクが発生する。
【0170】
次に、前述にて説明した図7Dの場合のように、ディスクプレート100とハブ200との間に相対回転が発生して、負側に0°~θ3°の捩れが発生した場合を想定する。この場合は、ディスクプレート100に対してハブ200が相対的にL方向(図7Bにおいては、反時計回り方向)に回転(移動)する場合を指すが、視点を変えると、ハブ200に対してディスクプレート100が相対的にR方向に回転(移動)することと同義である。この場合、第6実施形態においては、コントロールプレート300の軸方向延在部303a乃至303dと、対応する収容溝部130a乃至130dにおける壁部130wとの間の隙間の距離が次第に小さくなって、最終的に捩れ角θ3°にて両者が当接する。したがって、捩れ角0°~θ3°においても、軸方向延在部303a乃至303dと壁部130wとの間に隙間が存在するため、コントロールプレート300は、ハブ200に対するディスクプレート100の相対回転に影響されることなく、ハブ200に対して相対回転しない。一方、コントロールプレート300は、ディスクプレート100に対して相対回転することとなる(ディスクプレート100が、コントロールプレート300に対して相対回転することとなる)。したがって、コントロールプレート300の径方向延在部302と、第1摺動部600の第1摺動面602aとの間で第1摺動トルクが発生する。
【0171】
次に、前述にて説明した図7Eの場合のように、ディスクプレート100とハブ200との間に相対回転が発生して、負側にθ3°~θ4°の捩れが発生した場合を想定する。この場合は、ディスクプレート100に対してハブ200が相対的にL方向(図7Bにおいては、反時計回り方向)に回転(移動)する場合を指すが、視点を変えると、ハブ200に対してディスクプレート100が相対的にR方向に回転(移動)することと同義である。この場合、第6実施形態においては、コントロールプレート300の軸方向延在部303a乃至303dと、対応する収容溝部130a乃至130dにおける壁部130wとが当接する。したがって、コントロールプレート300は、ディスクプレート100と一体回転することとなる。これにより、コントロールプレート300はハブ200に対して相対回転することとなり、コントロールプレート300の径方向延在部302a乃至302dと第2摺動部700の第2摺動面702bとの間において第2摺動トルクが発生する。
【0172】
第6実施形態においては、一実施形態とは異なり、第2摺動トルクが第1摺動トルクよりも大きくなるように設定される。
【0173】
また、第6実施形態において、スラスト部材500においては、一実施形態と同様に第3摺動トルクが発生する。これにより、第6実施形態においては、「小さなヒステリシストルク」として第3摺動トルクと第1摺動トルクの合算トルクが用いられ、「大きなヒステリシストルク」として第3摺動トルクと第2摺動トルクの合算トルクが用いられる。
【0174】
なお、図13においては、省略されているが、板部602は、図3Cを参照して上述したように、第1摺動面602aにおいて、コントロールプレート300の径方向延在部302に当接する第1頂部602aと、第1頂部602aに接続される第1傾斜面602aと、第1頂部602aに接続される第2傾斜面602aと、を有することができる。
【0175】
また、図3Bを参照して上述したように、板部602に形成された開口部(第1開口部)602Aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間Gが、スラスト部材500に形成された開口部(第2開口部)500aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間Gより小さくなるように、形成され得る。
【0176】
3-6.第7実施形態
次に、第7実施形態に係るダンパ装置1の構成について、図15を参照して説明する。図15は、第7実施形態に係るダンパ装置1の構成を模式的に示す概略断面図である。なお、図15は、第7実施形態に係るダンパ装置1が、一実施形態に係るダンパ装置1に対して以下の異なる構成を有する旨を簡易的に説明するためのものであり、領域Iに係る箇所に着目する図である。したがって、図3A等に係る一実施形態に係るダンパ装置1と図15に係る第7実施形態に係るダンパ装置1とで共通する構成要素について、便宜上、図15にて若干の相違があるように表現されている箇所もあるが、基本的に、以下の異なる構成以外については、両実施形態に係る各構成要素の形状等は共通するものと理解されたい。
【0177】
第7実施形態に係るダンパ装置1は、前述した一実施形態に係るダンパ装置1と概ね同様の構成であるが、ディスクプレート100、ハブ200、コントロールプレート300、スラスト部材500、第1摺動部600、及び第2摺動部700の構成が前述の一実施形態とは異なる。他方、第7実施形態に係わるダンパ装置1は、前述した第6実施形態に係るダンパ装置1と概ね同様の構成である。したがって、第7実施形態実施形態に係るダンパ装置1において、基本的に第6実施形態に係るダンパ装置1と異なる部分を中心に説明し、他の部分についての詳細な説明を省略する。
【0178】
第7実施形態に係るダンパ装置1におけるスラスト部材500は、第2実施形態と同様、第4弾性部材505が設けられる。これにより、スラスト部材500の第2の面502yが、第4弾性部材505の付勢力によってハブ200(円板部205)に押し付けられることにより、ディスクプレート100とハブ200とが相対回転する際に、確実且つ効率的に前述の第3摺動トルクを発生させることが可能とされている。
【0179】
また、前述の第2実施形態にて説明したとおり、第4弾性部材505の付勢力の反力が
、第2プレート100Bに伝達されることで、第1プレート100Aがコントロールプレート300に近づく方向(図15においては、紙面左方向)に付勢される。これにより、第1プレート100Aは第1摺動部600に押し付けられ、且つコントロールプレート300は第1摺動部600に押し付けられることとなる。つまり、第7実施形態における第1摺動部600は、第2弾性部材604を有さない。これにより、第1プレート100Aと第1摺動部600(第1摺動面602a)との間、及び、第1摺動部600(第1摺動面602a)とコントロールプレート300の径方向延在部302との間において、コントロールプレート300とディスクプレート100とが相対回転する際に第1摺動トルクを発生させることができる。
【0180】
他方、第7実施形態に係るダンパ装置1における第2摺動部700は、第6実施形態とは異なり、コントロールプレート300に係合されて、コントロールプレート300と一体回転できるように構成されている。具体的には、第7実施形態において、第2摺動部700は、コントロールプレート300の径方向延在部302上に設けられる係合孔305に係合(嵌合)するように構成される。この構成とすることにより、第6実施形態と同様、コントロールプレート300とハブ200とが相対回転すると、ハブ200(円板部205)と第2摺動部700の第2摺動面702aとの間において第2摺動トルクを発生させることができる。
【0181】
第7実施形態においては、第6実施形態と同様、第2摺動トルクが第1摺動トルクよりも大きくなるように設定される。また、第7実施形態においては、「小さなヒステリシストルク」として第3摺動トルクと第1摺動トルクの合算トルクが用いられ、「大きなヒステリシストルク」として第3摺動トルクと第2摺動トルクの合算トルクが用いられる。
【0182】
なお、図15においては、省略されているが、板部602は、図3Cを参照して上述したように、第1摺動面602aにおいて、コントロールプレート300の径方向延在部302に当接する第1頂部602aと、第1頂部602aに接続される第1傾斜面602aと、第1頂部602aに接続される第2傾斜面602aと、を有することができる。
【0183】
また、図3Bを参照して上述したように、板部602に形成された開口部(第1開口部)602Aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間Gが、スラスト部材500に形成された開口部(第2開口部)500aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間Gより小さくなるように、形成され得る。
【0184】
3-7.第8実施形態
次に、第8実施形態に係るダンパ装置1の構成について、図16を参照して説明する。図16は、第8実施形態に係るダンパ装置1の構成を模式的に示す概略断面図である。なお、図16は、第8実施形態に係るダンパ装置1が、一実施形態に係るダンパ装置1に対して以下の異なる構成を有する旨を簡易的に説明するためのものであり、領域Iに係る箇所に着目する図である。したがって、図3A等に係る一実施形態に係るダンパ装置1と図16に係る第8実施形態に係るダンパ装置1とで共通する構成要素について、便宜上、図16にて若干の相違があるように表現されている箇所もあるが、基本的に、以下の異なる構成以外については、両実施形態に係る各構成要素の形状等は共通するものと理解されたい。
【0185】
第8実施形態に係るダンパ装置1は、前述した一実施形態に係るダンパ装置1と概ね同様の構成であるが、ディスクプレート100、ハブ200、コントロールプレート300、第1摺動部600、及び第2摺動部700の構成が前述の一実施形態とは異なる。他方、第8実施形態に係わるダンパ装置1は、前述した第6実施形態に係るダンパ装置1と概ね同様の構成である。したがって、第8実施形態に係るダンパ装置1において、基本的に第6実施形態に係るダンパ装置1と異なる部分を中心に説明し、他の部分についての詳細な説明を省略する。
【0186】
第8実施形態に係るダンパ装置1における第2摺動部700は、第3実施形態と同様に、第2摺動面702aをハブ200(円板部205)に押し付ける方向(図16においては紙面左方向)に付勢する第3弾性部材705が設けられる。この際、第2摺動部700は、コントロールプレート300に係合されうる。これにより、コントロールプレート300とハブ200とが相対回転する際に、ハブ200と第2摺動面702aとの間において、確実且つ効率的に第2摺動トルクを発生させることができる。
【0187】
他方、第3弾性部材705の付勢力の反力が、コントロールプレート300に伝達されることで、コントロールプレート300の径方向延在部302が第1摺動部600に押し付けられる(付勢される)。さらに、これに連動して、第1摺動部600が第1プレート100Aに押し付けられる。これにより、コントロールプレート300の径方向延在部302と第1摺動部600(第1摺動面602a)との間、及び、第1摺動部((第1摺動面602a)と第1プレート100Aの内面110Aとの間において、コントロールプレート300とディスクプレート100とが相対回転する際に第1摺動トルクを発生させることができる。
【0188】
さらに、前述の反力に基づいて、第1プレート100Aがコントロールプレート300から離れる方向(図16においては、紙面右方向)に付勢されることにより、リベット120を介して第1プレート100Aに一体化されている第2プレート100Bがハブ200に近づく方向(図16においては、紙面右方向)に付勢される。これにより、スラスト部材500の第1の面502x及び第2の面502yにおいて、前述の第3摺動トルクを確実且つ効率的に発生させることができる。
【0189】
第8実施形態においては、第6実施形態と同様、第2摺動トルクが第1摺動トルクより
も大きくなるように設定される。また、第8実施形態においては、「小さなヒステリシス
トルク」として第3摺動トルクと第1摺動トルクの合算トルクが用いられ、「大きなヒス
テリシストルク」として第3摺動トルクと第2摺動トルクの合算トルクが用いられる。
【0190】
なお、図16においては、省略されているが、板部602は、図3Cを参照して上述したように、第1摺動面602aにおいて、コントロールプレート300の径方向延在部302に当接する第1頂部602aと、第1頂部602aに接続される第1傾斜面602aと、第1頂部602aに接続される第2傾斜面602aと、を有することができる。
【0191】
また、図3Bを参照して上述したように、板部602に形成された開口部(第1開口部)602Aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間Gが、スラスト部材500に形成された開口部(第2開口部)500aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間Gより小さくなるように、形成され得る。
【0192】
3-8.第9実施形態
次に、第9実施形態に係るダンパ装置1の構成について、図17を参照して説明する。図17は、第9実施形態に係るダンパ装置1の構成を模式的に示す概略断面図である。なお、図17は、第9実施形態に係るダンパ装置1が、一実施形態に係るダンパ装置1に対して以下の異なる構成を有する旨を簡易的に説明するためのものであり、領域Iに係る箇所に着目する図である。したがって、図3A等に係る一実施形態に係るダンパ装置1と図17に係る第9実施形態に係るダンパ装置1とで共通する構成要素について、便宜上、図17にて若干の相違があるように表現されている箇所もあるが、基本的に、以下の異なる構成以外については、両実施形態に係る各構成要素の形状等は共通するものと理解されたい。
【0193】
第9実施形態に係るダンパ装置1は、前述した一実施形態に係るダンパ装置1と概ね同様の構成であるが、ディスクプレート100、ハブ200、コントロールプレート300、第1摺動部600、及び第2摺動部700の構成が前述の一実施形態とは異なる。他方、第9実施形態に係わるダンパ装置1は、前述した第7実施形態に係るダンパ装置1と概ね同様の構成である。したがって、第9実施形態実施形態に係るダンパ装置1において、基本的に第7実施形態に係るダンパ装置1と異なる部分を中心に説明し、他の部分についての詳細な説明を省略する。
【0194】
第9実施形態に係るダンパ装置1における第1摺動部600は、第1摺動面602aを第1プレート100Aに近づく方向(図17においては、紙面右方向)に付勢する第2弾性部材604を有する。また、第9実施形態の第1摺動部600は、コントロールプレート300に係合して、コントロールプレート300と一体回転可能とされうる。これにより、コントロールプレート300とディスクプレート100とが相対回転する際に、確実且つ効率的に第1摺動トルクを発生させることができる。
【0195】
また、前述の第2弾性部材604の付勢力により、第1プレート100Aがコントロールプレート300から離れる方向(図17においては、紙面右方向)に付勢される。ここで、リベット120を介して第1プレート100Aに一体化される第2プレート100Bにも当該付勢力が伝達されるため、第2プレート100Bはハブ200に近づく方向(図17においては、紙面右方向)に付勢される。これにより、スラスト部材500の第1の面502x及び第2の面502yにおいて、前述の第3摺動トルクを確実且つ効率的に発生させることができる。
【0196】
第9実施形態においては、第6実施形態と同様、第2摺動トルクが第1摺動トルクよりも大きくなるように設定される。また、第9実施形態においては、「小さなヒステリシストルク」として第3摺動トルクと第1摺動トルクの合算トルクが用いられ、「大きなヒステリシストルク」として第3摺動トルクと第2摺動トルクの合算トルクが用いられる。
【0197】
なお、図17においては、省略されているが、板部602は、図3Cを参照して上述したように、第1摺動面602aにおいて、第1プレート100Aに当接する第1頂部602aと、第1頂部602aに接続され、回転軸Oから離れる方向に向かって延在し、第1プレート100Aから離れる方向に傾斜する第1傾斜面602aと、第1頂部602aに接続され、回転軸Oに近づく方向に向かって延在し、第1プレート100Aから離れる方向に傾斜する第2傾斜面602aと、を有することができる。
【0198】
また、図3Bを参照して上述したように、板部602に形成された開口部(第1開口部)602Aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間Gが、スラスト部材500に形成された開口部(第2開口部)500aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間Gより小さくなるように、形成され得る。
【0199】
3-9.第10実施形態
次に、第10実施形態に係るダンパ装置1の構成について、図18を参照して説明する。図18は、第10実施形態に係るダンパ装置1の構成を模式的に示す概略断面図である。なお、図18は、第10実施形態に係るダンパ装置1が、一実施形態に係るダンパ装置1に対して以下の異なる構成を有する旨を簡易的に説明するためのものであり、領域Iに係る箇所に着目する図である。したがって、図3A等に係る一実施形態に係るダンパ装置1と図18に係る第10実施形態に係るダンパ装置1とで共通する構成要素について、便宜上、図18にて若干の相違があるように表現されている箇所もあるが、基本的に、以下の異なる構成以外については、両実施形態に係る各構成要素の形状等は共通するものと理解されたい。
【0200】
第10実施形態に係るダンパ装置1は、前述した第7実施形態とほぼ同じ構成であるものの、第5実施形態と同様に、第1摺動部600及び第2摺動部700が、コントロールプレート300と一体的に形成されている。つまり、コントロールプレート300、第1摺動部600、及び第2摺動部700が一つの一体構造物として形成されている。このように形成された一体構造物は、第7実施形態に係る第1摺動部600の機能及び第2摺動部700の機能を兼ね備えたコントロールプレート300y(便宜上、この第10実施形態におけるコントロールプレートを「コントロールプレート300y」と称するものとする)と捉えることができる。
【0201】
したがって、第10実施形態に係るコントロールプレート300yは、第1プレート100Aの内面110Aに対して直接摺動して第1摺動トルクを発生する第1摺動面602aと、ハブ200(円板部205)に対して直接摺動して第2摺動トルクを発生する第2摺動面702aとを、径方向延在部302上に有することができる。これにより、第10実施形態に係るダンパ装置1は、第7実施形態に係わるダンパ装置1と同様に動作することができる。
【0202】
第10実施形態においては、第7実施形態と同様、第2摺動トルクが第1摺動トルクよりも大きくなるように設定される。また、第10実施形態においては、「小さなヒステリシストルク」として第3摺動トルクと第1摺動トルクの合算トルクが用いられ、「大きなヒステリシストルク」として第3摺動トルクと第2摺動トルクの合算トルクが用いられる。
【0203】
なお、図18においては、省略されているが、コントロールプレート300yは、図3Cを参照して上述したように、第1摺動面602aにおいて、第1プレート100Aに当接する第1頂部602aと、第1頂部602aに接続され、回転軸Oから離れる方向に向かって延在し、第1プレート100Aから離れる方向に傾斜する第1傾斜面602aと、第1頂部602aに接続され、回転軸Oに近づく方向に向かって延在し、第1プレート100Aから離れる方向に傾斜する第2傾斜面602aと、を有することができる。
【0204】
また、図3Bを参照して上述したように、コントロールプレート300xに形成された開口部(第1開口部)602Aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間Gが、スラスト部材500に形成された開口部(第2開口部)500aを囲む内周面とハブ200の外周面との間に設けられた隙間Gより小さくなるように、形成され得る。
【0205】
3-10.その他
上述した様々な実施形態において、第1摺動部600等が、第1摺動面602aにおいて、コントロールプレート300の径方向延在部302(又は第1プレート100A等)に当接する第1頂部602aと、第1頂部602aに接続される第1傾斜面602aと、第1頂部602aに接続される第2傾斜面602aと、を有することができることについて説明した。これに加えて又はこれに代えて、スラスト部材500及び/又は第2摺動部700が、同様の構成を有することも可能である。
【0206】
その具体例について図19及び図20を参照して説明する。図19は、一実施形態に係るダンパ装置の構成を模式的に示す概略断面図である。図20は、図19に示したダンパ装置の一部の構成を拡大して模式的に示す概略断面図である。
【0207】
図3A等を参照して説明したスラスト部材500の一部の構成を変更した構成要素が、図19及び図20においてスラスト部材500’として示され、図3A等を参照して説明した第2摺動部材700の一部の構成を変更した構成要素が、図19及び図20において第2摺動部材700’として示されている。また、軸受けBにより回転可能に支持される変速機(図示せず)の入力軸Sは、ハブ200(の円筒部202に形成された貫通孔203[図3A参照])に挿入されている。
【0208】
上述したように、駆動軸Z(ひいてはディスクプレート100)の回転中心と変速機(トランスミッション)の入力軸(シャフト)Sの回転中心との間にずれが生じている場合には、このような入力軸Sを挿通させたハブ200の回転軸が駆動軸Z(ひいてはディスクプレート100)に対して傾斜することになる。この結果、ハブ200により支持されるスラスト部材500及び第2摺動部700が、駆動軸Zに対して、ひいては、フライホイール2及びフライホイール2に接続されたディスクプレート100に対して、傾斜することになる。この場合、スラスト部材500の第2の面502y及び第2摺動部700の第2摺動面702aがハブ200に対して本来意図されていたとおりに摺動しない可能性がある。
【0209】
そこで、スラスト部材500’は、図20によく示されるように、第2の面500yにおいて、ハブ200(におけるスラスト部材500’に対向する面200a)に当接する第2頂部502yと、第2頂部502yに接続される第3傾斜面502yと、第2頂部502yに接続される第4傾斜面502yと、を有することができる。第3傾斜面502yは、第2頂部502yを基準として、スラスト部材500の回転軸(すなわち、回転軸O)から離れる方向(図20において上方向)に向かって延在し、ハブ200の面200aから離れる方向(図20において左方向)に傾斜することができる。第4傾斜面502yは、第2頂部502yを基準として、スラスト部材500の回転軸(すなわち、回転軸O)に近づく方向(図20において下方向)に向かって延在し、ハブ200の面200aから離れる方向(図20において左方向)に傾斜することができる。これにより、スラスト部材500’は、ハブ200の面200aに対して、第2頂部502yにおいて当接して摺動することができる。
【0210】
これにより、仮にハブ200が駆動軸Zに対して傾斜した場合であっても、スラスト部材500’は、依然として、ハブ200の面200aに対して第2頂部502yにおいて当接して摺動するので、スラスト部材500’とハブ200との間において当接する部分の面積は大きく変化しない。この結果、第3摺動トルクの大きさが変化することが抑えられる。
【0211】
また、第2摺動部700’は、図20によく示されるように、第2摺動面702aにおいて、ハブ200(における第2摺動部700’に対向する面200b)に当接する第3頂部702aと、第3頂部702aに接続される第5傾斜面702aと、第3頂部702aに接続される第6傾斜面702aと、を有することができる。第5傾斜面702aは、第3頂部702aを基準として、第2摺動部700’の回転軸(すなわち、回転軸O)から離れる方向(図20において上方向)に向かって延在し、ハブ200の面200bから離れる方向(図20において右方向)に傾斜することができる。第6傾斜面702aは、第3頂部702aを基準として、第2摺動部700’の回転軸(すなわち、回転軸O)に近づく方向(図20において下方向)に向かって延在し、ハブ200の面200bから離れる方向(図20において右方向)に傾斜することができる。これにより、第2摺動部700’は、ハブ200の面200bに対して、第3頂部702aにおいて当接して摺動することができる。
【0212】
これにより、仮にハブ200が駆動軸Zに対して傾斜した場合であっても、第2摺動部700’は、依然として、ハブ200の面200bに対して第3頂部702aにおいて当接して摺動するので、第2摺動部700’とハブ200との間において当接する部分の面積は大きく変化しない。この結果、第2摺動トルクの大きさが変化することが抑えられる。
【0213】
また、上記した全ての実施形態では、コントロールプレート300が第1収容空間100xに収容される一例について詳述したが、前述したとおり、コントロールプレート300は第2収容空間100yに収容されてもよい。この場合、全ての実施形態において、第1収容空間100xに配される構成要素と、第2収容空間100yに配される構成要素を相互に入れ替えた構成とすればよい。
【0214】
その具体例について、図21を参照して簡単に説明する。図21は、一実施形態に係るダンパ装置の構成を模式的に示す概略断面図である。図21と先に参照した図3Aとを比較して参照すると、図21に示す第1摺動部600Rは、図3Aに示した第1摺動部600と左右対称の関係をなすように、第1摺動部600を反転させた(ミラーリングした)断面形状を有することができる。同様に、図21に示すスラスト部材500R及び第2摺動部700Rは、それぞれ、図3Aに示したスラスト部材500及び第2摺動部700と左右対称の関係をなすように、スラスト部材500及び第2摺動部700を反転させた(ミラーリングした)断面形状を有することができる。図3Aに示したコントロールプレート300についても同様である。
【0215】
また、このような構成を採用した場合には、(軸受けS又は変速機に対してより近くに配置される)スラスト部材500Rに形成された開口部(第2開口部)500aを囲む内周面とハブ200Rの外周面との間に設けられた隙間が、(軸受けS又は変速機に対してより遠くに配置される)第1摺動部600Rに形成された開口部(第1開口部602A)を囲む内周面とハブ200Rの外周面との間に設けられた隙間より小さくなるように、形成され得る。これにより、ハブ200Rが駆動軸Zに対して傾斜する角度を、ひいては、ハブ200Rに支持されるスラスト部材500Rが傾斜する角度を、小さく抑えることができる。
【0216】
さらにまた、上述した様々な実施形態では、図7A図7Fを参照して、コントロールプレート300の径方向延在部302と弾性機構部400又はシート410とが係合し、コントロールプレート300の軸方向延在部303とハブ200の壁部208とが係合する構成を採用すること等により、ダンパ装置1が、図8に示すような捩り特性を有することを説明した。
【0217】
この点につき、図7A等に示す、コントロールプレート300の径方向延在部302及び軸方向延在部303、並びに、ハブ200の壁部208wの配置を、左右対称となるように反転させた構成を採用することも可能である。例えば、図22に示すように、コントロールパネル300’は、図7Aに示すコントロールパネル300に対して左右対称の関係をなすように、コントロールパネル300を反転させた(ミラーリングした)形状を有することができる。同様に、図7Aに示すハブ200の4つの壁部208wの位置を反転させて(ミラーリングして)、図22に示すように、ハブ200において4つの壁部208w’を配置することができる。このような構成を採用することにより、ダンパ装置1は、図23に示すような捩り特性を有することができる。
【0218】
図23に示す捩り特性を図8に示す捩り特性と比較して説明する。図7A等に示すダンパ装置1にあっては、図7Eを参照して上述したように、ハブ200がディスクプレート100に対して、相対的に負側に、すなわち、L方向(図7A等において反時計回り方向)に、回転した場合に、コントロールプレート300の軸方向延在部303とハブ200の壁部208wとが当接することにより、ハブ200とコントロールプレート300とが一体回転する。これにより、第1摺動部600の第1摺動面602aとコントロールプレート300の径方向延在部302との間に(第2摺動トルクより大きい)第1摺動トルクが発生する。この結果、図7Dの状態から図7Eの状態において、第1摺動トルクと第3摺動トルクとを合算した「大きなヒステリシストルク」が発生する。したがって、図8に示すように、ダンパ装置1は、ハブ200がディスクプレート100に対して相対的に負側に回転した場合に、「大きなヒステリシストルク」を発生させることができる。
【0219】
これに対して、図22に示すダンパ装置1にあっては、ハブ200がディスクプレート100に対して、相対的に正側に、すなわち、R方向(図22において時計回り方向)に、回転した場合に、コントロールプレート300’の軸方向延在部303’(例えば軸方向延在部303a’)とハブ200の壁部208w’とが当接することにより、ハブ200とコントロールプレート300’とが一体回転する。これにより、第1摺動部600の第1摺動面602aとコントロールプレート300’の径方向延在部302(例えば径方向延在部302a’)との間に(第2摺動トルクより大きい)第1摺動トルクが発生する。この結果、第1摺動トルクと第3摺動トルクとを合算した「大きなヒステリシストルク」が発生する。したがって、図23に示すように、ダンパ装置1は、ハブ200がディスクプレート100に対して相対的に正側に回転した場合に、「大きなヒステリシストルク」を発生させることができる。
【0220】
このように、図22に示すダンパ装置1は、図7A等に示すダンパ装置1が有する捩り特性に対して、正負を逆にした、すなわち、ハブ200がディスクプレート100に対して相対的に回転する方向を逆にした、図23に示す捩り特性を有することができる。
【0221】
本開示の利益を有する当業者により容易に理解されるように、上述した様々な例は、矛盾の生じさせない限りにおいて、相互に様々なパターンで適切に組み合わせて用いられ得る。
【0222】
以上、前述の通り、様々な実施形態を例示したが、上記実施形態はあくまで一例であって、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。また、各構成や、形状、大きさ、長さ、幅、厚さ、高さ、数等は適宜変更して実施することができる。また、前述した様々な実施形態は、例えばクラッチディスク等前述のリミッタ機能を必須としない用途向けのダンパ装置に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0223】
1 ダンパ装置
100 第1回転体(ディスクプレート)
100A 第1プレート
100B 第2プレート
100x 第1収容空間
100y 第2収容空間
200 第2回転体(ハブ)
202 円筒部
205 円板部
206a乃至206d 窓孔
208a乃至208d 溝部
208w 壁部
300 コントロールプレート
302a乃至302d 径方向延在部
303a乃至303d 軸方向延在部
400 弾性機構部
410 第1弾性部材
420 一対のシート部材
420A、420B シート部材
500 スラスト部材
500a 第2開口部
502x 第1の面
502y 第2の面
502y 第2頂部
502y 第3傾斜面
502y 第4傾斜面
505 第4弾性部材
600 第1摺動部
602a 第1摺動面
602a 第1頂部
602a 第1傾斜面
602a 第2傾斜面
602A 第1開口部
602B 第1係合部
602C 第2係合部
604 第2弾性部材
700 第2摺動部
702a 第2摺動面
702a 第3頂部
702a 第5傾斜面
702aと 第6傾斜面
705 第3弾性部材
O 回転軸
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図9
図10
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図22
図23