(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】積層電池の製造方法および積層電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20250408BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20250408BHJP
H01G 11/54 20130101ALI20250408BHJP
H01G 11/80 20130101ALI20250408BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20250408BHJP
H01M 6/02 20060101ALI20250408BHJP
H01M 50/627 20210101ALI20250408BHJP
H01M 50/636 20210101ALI20250408BHJP
H01M 50/664 20210101ALI20250408BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20250408BHJP
H01M 10/0585 20100101ALN20250408BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01G11/12
H01G11/54
H01G11/80
H01G11/84
H01M6/02 Z
H01M50/627
H01M50/636
H01M50/664
H01M10/052
H01M10/0585
(21)【出願番号】P 2022203535
(22)【出願日】2022-12-20
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】大倉 才昇
(72)【発明者】
【氏名】寺西 正
(72)【発明者】
【氏名】森 秀人
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-186804(JP,A)
【文献】特開2007-323882(JP,A)
【文献】特開2009-048970(JP,A)
【文献】特開2009-295595(JP,A)
【文献】特開2015-122211(JP,A)
【文献】特開2017-134987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00 -10/39
H01M 6/00 - 6/48
H01G 11/00 -11/86
H01M 50/60 -50/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
z軸方向に積層された複数の電極を含む電極積層体を準備する準備工程と、
前記電極積層体の側面に、注液口を有する樹脂製の注液枠を配置する配置工程と、
前記注液枠の前記注液口から前記電極積層体の内部に電解液を注液する注液工程と、
前記注液工程後に、前記z軸方向に直交するx軸方向を法線方向とする前記注液枠の面に、樹脂層Aを有する第1部材を配置することにより、前記注液口を封止する第1封止工程と、
前記第1封止工程後に、充電およびエージングの少なくとも一方を施す電池処理工程と、
前記電池処理工程後に、前記第1部材に、前記注液口と連通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
樹脂層Bおよび金属層を有する第2部材を用い、前記x軸方向を法線方向とする前記第1部材の面に、前記第2部材における前記樹脂層Bを配置することによって、前記貫通孔を被覆しつつ、前記注液口を封止する第2封止工程と、を有する、積層電池の製造方法。
【請求項2】
前記第1部材および前記第2部材は、フィルム状である、請求項1に記載の積層電池の製造方法。
【請求項3】
前記第1部材が、前記樹脂層Aとして、複数の樹脂層を有する、請求項1に記載の積層電池の製造方法。
【請求項4】
前記第2部材が、前記金属層の前記樹脂層Bとは反対側に、樹脂層Cを有する、請求項1に記載の積層電池の製造方法。
【請求項5】
前記電極積層体は、集電体と、前記集電体の一方の面に配置された正極層と、前記集電体の他方の面に配置された負極層とを有するバイポーラ電極を含む、請求項1に記載の積層電池の製造方法。
【請求項6】
z軸方向に積層された複数の電極を含む電極積層体と、
前記電極積層体の側面に配置され、前記電極積層体の内部に電解液を供給するための注液口を有する、樹脂製の注液枠と、
前記z軸方向に直交するx軸方向を法線方向とする、前記注液枠の前記電極積層体とは反対側の面に配置された第1部材と、
前記x軸方向を法線方向とする、前記第1部材の前記注液枠とは反対側の面に配置された第2部材と、を有し、
前記第1部材は、樹脂層Aを有し、かつ、前記注液口を被覆しつつ、前記注液口に連通する貫通孔を有し、
前記第2部材は、前記第1部材側から順に、樹脂層Bおよび金属層を有し、かつ、前記貫通孔を被覆しつつ、前記注液口を封止している、積層電池。
【請求項7】
前記第1部材および前記第2部材は、フィルム状である、請求項6に記載の積層電池。
【請求項8】
前記第1部材が、前記樹脂層Aとして、複数の樹脂層を有する、請求項6に記載の積層電池。
【請求項9】
前記第2部材が、前記金属層の前記樹脂層Bとは反対側に、樹脂層Cを有する、請求項6に記載の積層電池。
【請求項10】
前記電極積層体は、集電体と、前記集電体の一方の面に配置された正極層と、前記集電体の他方の面に配置された負極層とを有するバイポーラ電極を含む、請求項6に記載の積層電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層電池の製造方法および積層電池に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電極を有する電極積層体の周囲を、樹脂体で封止する技術が知られている。例えば、特許文献1には、正極と負極の組み合わせの直列構成が少なくとも1以上存在し、検知タブを有するバイポーラ構造の電池において、電池要素の外部が少なくとも1以上の樹脂群によって被覆されていることを特徴とするバイポーラ電池が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、電池ケースの一対の幅広面を両側から挟み込み、その挟み込み方向に上記電池ケースを押圧する拘束状態で、上記充電工程、ガス抜き工程及びエージング工程を実行することを特徴とする二次電池の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献3には、複数のバイポーラ電極の各電極板の周縁部に枠体が接合された積層体を、積層方向において隣り合う枠体の間に、一端が枠内まで延びるとともに他端が枠外において入れ子保持部で保持された入れ子を介在させた状態で、積層体と入れ子保持部との間を樹脂で充填する工程を有する蓄電装置の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-005163号公報
【文献】特開2010-021104号公報
【文献】特開2019-016459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数の電極がz軸方向(厚さ方向)に積層された電極積層体を有する積層電池を製造する際に、各発電単位の内部空間に電解液を注入する。この場合、設計上の制約から、各内部空間に電解液を供給するための複数の注液口を設けた樹脂製の注液枠を、電極積層体の側面に沿って配置する場合がある。電解液の注液後には、注液枠の注液口は封止する必要がある。ここで、金属層を有する封止部材を注液口上に配置し、溶着封止することにより、バリア性が得られ、電池内部に水分等の混入を抑制できると考えられる。しかしながら、この封止後の充電処理およびエージング処理等の電池処理において、電極積層体の内圧が上昇し、注液口を有する注液枠が破損し、電解液の漏れ等が発生し、構造信頼性が低下する場合がある。
【0007】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、構造信頼性が高い積層電池を製造できる積層電池の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]
z軸方向に積層された複数の電極を含む電極積層体を準備する準備工程と、
上記電極積層体の側面に、注液口を有する樹脂製の注液枠を配置する配置工程と、
上記注液枠の上記注液口から上記電極積層体の内部に電解液を注液する注液工程と、
上記注液工程後に、上記z軸方向に直交するx軸方向を法線方向とする上記注液枠の面に、樹脂層Aを有する第1部材を配置することにより、上記注液口を封止する第1封止工程と、
上記第1封止工程後に、充電およびエージングの少なくとも一方を施す電池処理工程と、
上記電池処理工程後に、上記第1部材に、上記注液口と連通する貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
樹脂層Bおよび金属層を有する第2部材を用い、上記x軸方向を法線方向とする上記第1部材の面に、上記第2部材における上記樹脂層Bを配置することによって、上記貫通孔を被覆しつつ、上記注液口を封止する第2封止工程と、を有する、積層電池の製造方法。
【0009】
[2]
上記第1部材および上記第2部材は、フィルム状である、[1]に記載の積層電池の製造方法。
【0010】
[3]
上記第1部材が、上記樹脂層Aとして、複数の樹脂層を有する、[1]または[2]に記載の積層電池の製造方法。
【0011】
[4]
上記第2部材が、上記金属層の上記樹脂層Bとは反対側に、樹脂層Cを有する、[1]から[3]までのいずれかに記載の積層電池の製造方法。
【0012】
[5]
上記電極積層体は、集電体と、上記集電体の一方の面に配置された正極層と、上記集電体の他方の面に配置された負極層とを有するバイポーラ電極を含む、[1]から[4]までのいずれかに記載の積層電池の製造方法。
【0013】
[6]
z軸方向に積層された複数の電極を含む電極積層体と、
上記電極積層体の側面に配置され、上記電極積層体の内部に電解液を供給するための注液口を有する、樹脂製の注液枠と、
上記z軸方向に直交するx軸方向を法線方向とする、上記注液枠の上記電極積層体とは反対側の面に配置された第1部材と、
上記x軸方向を法線方向とする、上記第1部材の上記注液枠とは反対側の面に配置された第2部材と、を有し、
上記第1部材は、樹脂層Aを有し、かつ、上記注液口を被覆しつつ、上記注液口に連通する貫通孔を有し、
上記第2部材は、上記第1部材側から順に、樹脂層Bおよび金属層を有し、かつ、上記貫通孔を被覆しつつ、上記注液口を封止している、積層電池。
【0014】
[7]
上記第1部材および上記第2部材は、フィルム状である、[6]に記載の積層電池。
【0015】
[8]
上記第1部材が、上記樹脂層Aとして、複数の樹脂層を有する、[6]または[7]に記載の積層電池。
【0016】
[9]
上記第2部材が、上記金属層の上記樹脂層Bとは反対側に、樹脂層Cを有する、[6]から[8]までのいずれかに記載の積層電池。
【0017】
[10]
上記電極積層体は、集電体と、上記集電体の一方の面に配置された正極層と、上記集電体の他方の面に配置された負極層とを有するバイポーラ電極を含む、[6]から[9]までのいずれかに記載の積層電池。
【発明の効果】
【0018】
本開示における積層電池の製造方法は、構造信頼性が高い積層電池を製造できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本開示における積層電池の製造方法を例示する概略断面図である。
【
図2】本開示における電極積層体を例示する概略断面図である。
【
図3】本開示における注液枠を例示する概略斜視図である。
【
図4】本開示における注液枠を配置した電極積層体を例示する概略断面図である。
【
図5】本開示における仮封止積層体を例示する概略断面図である。
【
図6】本開示における積層電池の製造方法の電極積層体準備工程を例示する概略断面図である。
【
図7】本開示における積層電池の製造方法の注液枠配置工程を例示する概略断面図である。
【
図8】本開示における積層電池の製造方法の注液枠配置工程を例示する概略断面図である。
【
図9】金属層を有する封止部材で注液枠を直接溶着封止した積層電池を例示する概略断面図である。
【
図10】本開示における積層電池を例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示における実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示す各図は、模式的に示したものであり、各部の大きさ、形状は、理解を容易にするために、適宜誇張している。また、本明細書において、ある部材に対して他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」または「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上または直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方または下方に、別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0021】
A.積層電池の製造方法
図1は、本開示における積層電池の製造方法を例示する概略断面図である。まず、
図1(a)に示すように、z軸方向に積層された複数の電極Eを含む電極積層体を準備する(準備工程)。
図1(a)に示すように、通常、電極積層体10の側面SSには、電極積層体10の内部に通じる連通孔Oが形成されている。次に、
図1(b)に示すように、電極積層体10の側面SSに、電極積層体10の内部に電解液を注液するための複数の注液口Pを有する、樹脂製の注液枠20を配置する(配置工程)。次に、注液枠20の注液口Pから電極積層体の内部に電解液(不図示)を注液する(注液工程)。注液工程後に、
図1(c)に示すように、z軸方向に直交するx軸方向を法線方向とする、注液枠20の電極積層体10とは反対側の面20Sに、樹脂層A(樹脂層31)を有する第1部材30を配置することにより、注液枠20の注液口Pを封止する(第1封止工程)。これにより、仮封止積層体50が得られる。
【0022】
第1封止工程後に、
図1(d)に示すように、仮封止積層体50に対して、充電およびエージングの少なくとも一方を施す(電池処理工程)。この際、電極積層体10の内部でガスが発生して仮封止積層体50の内圧が上昇する。電池処理工程後に、
図1(e)に示すように、第1部材30に、注液口Pと連通する貫通孔Qを形成する(貫通孔形成工程)。これにより、仮封止積層体50の密閉状態が解かれ、上昇した内部圧力が下がる。貫通孔形成工程後に、
図1(f)に示すように、樹脂層B(樹脂層41)および金属層42を有する第2部材40を用い、x軸方向を法線方向とする、第1部材30の注液枠20とは反対側の面30Sに、第2部材40における樹脂層B(樹脂層41)を配置することによって、貫通孔Qを被覆しつつ、注液口Pを封止する(第2封止工程)。これにより、積層電池100が得られる。
【0023】
上述したように、注液枠の注液口を、金属層を有する封止部材を用いて封止することにより、電池内部に水分等の混入を抑制できると考えられる。特に、大型の電池の場合、少量の水分の混入でも、電池全体の劣化につながるため、封止部材は高いバリア性を有することが好ましい。しかしながら、封止後の封止体に、充電およびエージングの少なくとも一方の電池処理を施すと、電極積層体の内部でガスが発生し、封止体の内圧が上昇し、注液枠が破損する場合がある。そのため、電解液の漏れ等が発生し、構造信頼性が低下する場合がある。
【0024】
本開示によれば、電池処理工程(
図1(d))後に、第1部材30に貫通孔Qを設ける貫通孔形成工程(
図1(e))を行うことにより、仮封止積層体50の密閉状態が解かれ、上昇した内部圧力が下がる。その後、第2部材40で第1部材30の貫通孔Qを被覆しつつ、注液枠20の注液口Pを封止する(
図1(f))ことにより、構造信頼性の低下が抑制された積層電池が得られる。
【0025】
また、本開示によれば、第1部材および第2部材の間での剥離を抑制可能な積層電池を製造できる。具体的には、第2封止工程(
図1(f))において第2部材40で第1部材30の貫通孔Qを被覆する際に、第1部材30と第2部材40との間にガスが介在する場合があるが、第1部材30に形成された貫通孔Qによってガスを抜くことができる。ガス溜まりが存在すると、市場で高温に曝された際に、第1部材および第2部材間で剥離が生じる。
【0026】
さらに、本開示によれば、短絡を抑制可能な積層電池を製造できる。
図9に、注液枠の注液口を、金属層を有する封止部材で直接封止した積層電池の概略断面図を示す。ここで、封止部材40は、一般的に、樹脂層B(樹脂層41)および金属層42を有する。この場合、溶着封止条件が過剰になると、樹脂層B(樹脂層41)に含まれる樹脂が溶融して流動し、金属層42が露出する場合がある。露出した金属層42(点線枠内)が、異なる電位を持つ電解液に直接接すると、短絡が生じる場合がある。特に、溶着封止を減圧下で行う場合には、電池内部の圧力が負圧になるため、溶着強度を確保するために溶着封止条件が過剰になる場合がある。一方、本開示によれば、
図1に示すように、注液枠20と第2部材40との間に、第1部材30が配置されることにより、第2部材40として金属層を有する封止部材を使用し、金属層42が露出してしまった場合にも、隣接する注液口までの距離があるため、短絡を抑制することができる。
【0027】
また、本開示によれば、第1部材に貫通孔が形成されていることにより、第2封止工程における溶着封止条件を緩和できる。
【0028】
1.準備工程
本工程は、z軸方向に積層された複数の電極を含む電極積層体を準備する工程である(
図1(a))。
図2は、本開示における電極積層体を例示する概略断面図である。
図2に示すように、電極積層体10は、z軸方向に積層された複数の電極Eを含む。電極は、集電体と、上記集電体の少なくとも一方の面上に配置された電極層(正極層または負極層)とを有する。
【0029】
図2に示すように、電極積層体10は、電極Eとして、集電体1と、集電体1の一方の面上に配置された正極層2と、集電体1の他方の面上に配置された負極層3と、を有するバイポーラ電極BPを有していてもよい。本開示における電極積層体は、バイポーラ電極BPを1つのみ有していてもよく、2以上有していてもよい。一方、本開示における電極積層体は、z軸方向に積層された複数の電極Eを含むものであれば特に限定されず、バイポーラ電極を有しなくてもよい。
【0030】
本開示における電極積層体は、z軸方向において、バイポーラ電極を複数備え、複数のバイポーラ電極において、隣り合うバイポーラ電極の間に、それぞれセパレータが配置されていてもよい。
【0031】
図2に示す電極積層体10は、電極Eとして、バイポーラ電極BP
1、バイポーラ電極BP
2、正極側端部電極CA、および、負極側端部電極ANを有する。バイポーラ電極BP
1は、集電体1aの一方の面に配置された正極層2aと、集電体1aの他方の面に配置された負極層3aと、を有する。バイポーラ電極BP
2は、集電体1bの一方の面に配置された正極層2bと、集電体1bの他方の面に配置された負極層3bと、を有する。正極側端部電極CAは、集電体1と、集電体1の一方の面上に配置された正極層2と、を有する。負極側端部電極ANは、集電体1と、集電体1の一方の面上に配置された負極層3と、を有する。
【0032】
図2に示すように、電極積層体10は、z軸方向に積層された、複数の発電単位U(U
1、U
2、U
3)を有していてもよい。発電単位Uは、正極層2と、負極層3と、正極層2および負極層3の間に配置されたセパレータ4と、を有する。
図2に示すように、複数の発電単位U(U
1、U
2、U
3)は、互いに、直接接続されていてもよい。また、特に図示しないが、複数の発電単位は、互いに、並列接続されていてもよい。複数の発電単位は、互いに電解液が流通しないように、それぞれ独立している。
図2において、複数の発電単位U(U
1、U
2、U
3)は、互いに電解液が流通しないように、それぞれ独立している。また、複数の発電単位U(U
1、U
2、U
3)は、それぞれ、内部空間V(V
1、V
2、V
3)を有する。例えば、発電単位U
1と発電単位U
2とは、集電体1および樹脂部材5によって区画され、互いに独立している。
【0033】
1つの発電単位は、2つのバイポーラ電極を用いて構成されていてもよい。
図2において、電極積層体10は、z軸方向において、バイポーラ電極BP
1およびバイポーラ電極BP
2を有する。隣り合うバイポーラ電極BP
1およびバイポーラ電極BP
2の間に、セパレータ4が配置されている。発電単位U
2は、バイポーラ電極BP
2における正極層2と、バイポーラ電極BP
1における負極層3と、それらの間に配置されたセパレータ4と、から構成されている。一方、発電単位U
1は、バイポーラ電極BP
1における正極層2と、負極側端部電極ANにおける負極層3と、それらの間に配置されたセパレータ4と、から構成されている。また、発電単位U
3は、バイポーラ電極BP
2における負極層3と、正極側端部電極CAにおける正極層2と、それらの間に配置されたセパレータ4と、から構成されている。
【0034】
複数の発電単位には、通常、それぞれ、連通孔が形成される。
図2に示すように、連通孔Oは、例えば、z軸方向に直交するx軸方向に樹脂部材5を貫通するように形成されており、発電単位Uの内部空間Vおよび後述する注液枠20の注液口Pと連通していることが好ましい。
【0035】
本開示における電極積層体は、複数の集電体の外縁に沿って配置された樹脂部材を有していてもよい。例えば
図2において、集電体1の外縁に沿って、樹脂部材5が配置されている。電極積層体10をz軸方向から見た場合に、樹脂部材5は、電解液の漏れを防止する部材であり、通常、集電体1の外縁全周に配置されている。樹脂部材を構成する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が挙げられる。本開示における樹脂部材は、通常、
図2に示すように、発電単位U(U
1、U
2、U
3)の内部空間V(V
1、V
2、V
3)および後述する注液枠20の注液口Pと連通する連通孔Oを有する。連通孔Oは、x軸方向に延在し、樹脂部材5を貫通していることが好ましい。また、樹脂部材5は、通常、複数の連通孔Oを有する。
【0036】
電極積層体の平面視形状(z軸方向から見た形状)は、特に限定されないが、例えば、正方形、長方形等の四角形が挙げられる。電極積層体の平面視形状における1辺の長さは、例えば30cm以上であり、50cm以上であってもよく、100cm以上であってもよい。一方、上記1辺の長さは、例えば200cm以下である。また、電極積層体の平面視形状が長方形である場合、短辺の長さが、上記範囲にあることが好ましい。また、長方形において、短辺に対する長辺の長さ(アスペクト比)は、1.0より大きく、1.2以上であってもよい。一方、上記アスペクト比は、例えば、3.0以下である。
【0037】
電極積層体の作製方法は、特に限定されない。
図6は、本開示における電極積層体の作製方法を例示する概略断面図(分解図)である。
図6(a)に示すように、バイポーラ電極BP
1およびバイポーラ電極BP
2を準備する。バイポーラ電極BP
1は、集電体1aの一方の面に配置された正極層2aと、集電体1aの他方の面に配置された負極層3aと、を有する。
【0038】
さらに、バイポーラ電極BP
1は、集電体1aの外縁に沿って配置された樹脂枠51aを有する。バイポーラ電極BP
1をz軸方向から見た場合に、樹脂枠51aは、通常、集電体1aの外縁全周に沿って配置される。例えば、集電体1aの外縁形状が四角形である場合、その四角形の外縁全周に沿って、樹脂枠51aが配置される。また、
図6に示すように、樹脂枠51aは、集電体1aの一方の主面αの一部と、集電体1aの他方の主面βの一部と、集電体1aの外縁を構成する側面γの全体と、を覆うことが好ましい。
【0039】
図6(a)に示すように、バイポーラ電極BP
2は、集電体1bの一方の面に配置された正極層2bと、集電体1bの他方の面に配置された負極層3bと、を有する。さらに、バイポーラ電極BP
2は、集電体1bの外縁に沿って配置された樹脂枠51bを有する。バイポーラ電極BP
2の詳細については、上述したバイポーラ電極BP
1の詳細と同様である。
【0040】
図6(a)に示すように、バイポーラ電極BP
1における負極層3aと、バイポーラ電極BP
2における正極層2bとを、セパレータ4を介して、対向させる。この際、セパレータ4の外縁の少なくとも一部が、樹脂枠51aおよび樹脂枠51bの間に配置される。また、
図6(a)に示すように、バイポーラ電極BP
1における樹脂枠51aと、バイポーラ電極BP
2における樹脂枠51bとの間に、入れ子6および樹脂枠(スペーサ)51cを配置する。
【0041】
図6(b)に示すように、バイポーラ電極BP
1、バイポーラ電極BP
2、セパレータ4および入れ子6を配置し、次に、バイポーラ電極BP
1における正極層2a上に、セパレータ層4、負極層3および集電体1を有する負極部材ANを配置し、バイポーラ電極BP
2における負極層3b上に、セパレータ層4、正極層2および集電体1を有する正極部材CAを配置する。その後、樹脂枠51a、51bおよび51cを溶着する。これにより、正極層2b、負極層3aおよびセパレータ4を有する発電単位が形成される。また、樹脂枠51a、51bおよび51cを溶着することで、樹脂部材5が形成される。さらに、入れ子6は、樹脂部材5を貫通するように配置される。このようにして、入れ子が挿入された電極積層体が得られる。
【0042】
2.注液枠配置工程
本工程は、
図1(b)に示すように、電極積層体10の側面SSに、電極積層体の内部に電解液を供給するための注液口Pを有する、樹脂製の注液枠20を配置する工程である。注液枠は、射出成形等の樹脂成形により電極積層体の側面に形成することで配置してもよいし、別部材として準備し、電極積層体の側面に配置してもよい。
【0043】
図2に示すように、電極積層体10の側面SSとは、電極積層体10においてz軸方向に延在する面をいう。また、電極積層体の側面は、通常、z軸方向に対向する、電極積層体の頂面(一方の主面)、および、電極積層体の底面(他方の主面)を結ぶ面である。
【0044】
図1(b)に示すように、注液枠20は、電極積層体10の内部に電解液を供給するための、複数の注液口P(P
1、P
2、P
3)を有することが好ましい。注液口P
1、P
2、P
3は、それぞれ、発電単位U
1、U
2、U
3に対応して配置されている。一方、特に図示しないが、注液枠は、注液口を一つのみ有していてもよい。注液口Pは、z軸方向に直交するx軸方向に、電解液を供給可能な部位である。
【0045】
図3は、本開示における注液枠を例示する概略斜視図である。
図1(b)および
図3に示すように、注液枠20は、通常、各々の注液口Pを区画する隔壁部21を有する。隔壁部21は、例えば、樹脂部材5と溶着している。
図3に示す注液枠20は、z軸方向において複数の注液口Pを有し、y軸方向において複数の注液口Pを有する。また、隔壁部21は、複数の縦壁21zと、複数の横壁21yとを有する。各々の注液口Pは、縦壁21zおよび横壁21yによって、それぞれ区画されている。
【0046】
注液枠を構成する樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。中でも、使用する電解液に対して耐性(耐電解液性)を有する樹脂が好ましい。また、機械的強度および成形性に優れることが好ましい。このような樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。注液枠は、電極積層体の側面に配置される。
図1(b)に示すように、注液枠20は、電極積層体10の少なくとも一つの側面(連通孔Oを有する側面)に配置されていればよい。
【0047】
図4に、本開示における注液枠を配置した電極積層体を例示する概略断面図である。
図4に示すように、注液枠20は、隔壁部21に加え、基部22を有していてもよい。隔壁部21は、例えば、基部22から延在している。基部22は、例えば、樹脂部材5と溶着している。
【0048】
注液枠20の厚さは、例えば、1mm以上であり、20mm以下であり、4mm以上、15mm以下であってもよい。注液枠の厚さとは、
図1(b)に示すように、z軸方向に直交するx軸方向における厚さ(T
20)をいう。
【0049】
図7は、本工程において、射出成形法により注液枠を形成する方法を例示する概略断面図(分解図)である。
図7(a)に示すように、本工程における電極積層体10は、側面SSに、連通孔を形成するための入れ子6を有してもよい。入れ子6は、一端部t1が電極積層体10の内部に位置しており、かつ、他端部t2が電極積層体10の側面SSより外部に突出している。入れ子6は、金型の一部であって、モールド70(母型)に取り付けられ、樹脂成形品を作製するための部材である。
【0050】
次に、
図7(b)に示すように、電極積層体10の側面SSとモールド70の凹部71が形成された面とが対向するように、モールド70の中にインサート品である電極積層体10を配置する。モールド70の凹部71は、入れ子6が挿入される部位である。次に、
図7(c)に示すように、電極積層体10およびモールド70の間に樹脂を供給することで、注液枠(樹脂成形体)20を成形する。なお、
図7(c)では、記載を割愛しているが、注液枠20の成形時には、通常、電極積層体10の上下方向にもモールドが配置される。次に、
図8(a)に示すように、電極積層体10からモールド70を除去する。これにより、各々の注液口Pを区画する隔壁部21、および基部22を含む注液枠20が得られる。次に、
図8(b)に示すように、電極積層体10から入れ子6を除去すると、樹脂部材5に連通孔Oが形成される。
【0051】
3.注液工程
本工程は、注液枠の注液口から電極積層体の内部に電解液を注液する工程である。電解液の供給方法は、特に限定されず、例えば、注液装置を用いた公知の方法が用いられる。
図1(b)に示すように、電解液は、注液口Pに導入され、連通孔Oを介して電極積層体の内部に供給される。その結果、正極層、負極層およびセパレータには、それぞれ、電解液が含浸される。
【0052】
4.第1封止工程
本工程は、
図1(c)に示すように、注液工程後に、z軸方向に直交するx軸方向を法線方向とする注液枠の面20Sに、樹脂層A(樹脂層31)を有する第1部材30を配置することにより、注液枠20の注液口Pを封止して仮封止積層体50を得る工程である。「z軸方向に直交するx軸方向を法線方向とする注液枠の面」とは、注液枠の電極積層体とは反対側の、注液口Pの開口を有する面である。
【0053】
図1(c)に示すように、例えば、所定の温度に加熱したヒートバー60を、第1部材30の注液枠20側とは反対側から押し付けることにより、第1部材30と注液枠20とが溶着し、注液枠20の注液口Pが第1部材30で封止される。なお、溶着封止手段としては、上記方法に限定されず、一般的な加熱手段によって行うことができる。第1封止工程は、真空引きしたチャンバー内において、減圧雰囲気で行うことが好ましい。また、ヒートバーに第1部材が付着することを抑制するために、第1部材とヒートバーとの間に、PETフィルム、ガラスクロス等の付着抑制部材を挟んで溶着封止を行ってもよい。
【0054】
第1部材は、樹脂層Aを有する。樹脂層Aは、単層の樹脂層であってもよいし、複数の樹脂層を有していてもよい。
図5は、第1部材30が、樹脂層A(樹脂層31)として複数の樹脂層を有する場合の本開示における仮封止積層体を例示する概略断面図である。
図5に示すように、第1部材30は、樹脂層A(樹脂層31)として、上記注液枠20側から、第1樹脂層31a、第2樹脂層31b、および第3樹脂層31cからなる3層構成を有していてもよい。第1樹脂層31aおよび第3樹脂層31cは、それぞれ、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。第1樹脂層31aが熱可塑性樹脂を含むことで、注液枠20と第1部材30との溶着が容易となる。また、第3樹脂層31cが熱可塑性樹脂を含むことで、第1部材30と第2部材40との溶着が容易となる。また、第1樹脂層31aと第3樹脂層31cとの間に第2樹脂層31bを有することにより、第1部材の強度を向上させることができる。
【0055】
第1樹脂層および第3樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂が挙げられる。オレフィン系樹脂とは、オレフィン成分単位を主成分とする樹脂であり、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン、酸変性ポリエチレンおよび酸変性ポリプロピレン等の酸変性ポリオレフィン等が挙げられる。酸変性ポリオレフィンは、酸基が導入されたポリオレフィンである。この酸基の種類は特に限定されないが、無水カルボン酸残基(-CO-O-OC-)が好ましい。酸基はどのような化合物により導入されてもよく、酸基を導入する化合物としては、無水マレイン酸が挙げられる。本開示においては、中でも、酸変性ポリプロピレンが好ましい。十分な注液枠に対する溶着強度を有するため、内圧上昇に耐えることができ、かつ、耐電解液性が高いためである。特に、無水マレイン酸により変性された酸変性ポリプロピレンが好ましい。第1樹脂層および第3樹脂層に含まれる熱可塑性樹脂は、同一種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
【0056】
第2樹脂層に含まれる樹脂としては、電池処理工程での内圧上昇に対する耐圧性に優れる機械的強度が高い樹脂が好ましい。このような樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルが挙げられる。中でも、ポリエチレンナフタレートが好ましい。
【0057】
第1部材は、フィルム状であることが好ましい。特に、単層の樹脂層、または複数の樹脂層からなる樹脂フィルムであることが好ましい。第1部材が樹脂フィルムであることにより、注液枠の注液口を容易に封止できる。
【0058】
第1部材の厚さは、特に限定されず、100μm以上が好ましく、120μm以上がより好ましい。一方、200μm以下が好ましく、180μm以下がより好ましい。第1部材の厚さとは、
図1(c)に示すように、x軸方向における厚さ(T
30)をいう。なお、第1部材が複数層の積層体である場合、上記厚さは、第1部材に含まれる複数層の合計厚さである。
【0059】
第1封止工程における溶着封止条件(加熱温度、押し込み距離、時間等)は特に限定されない。加熱温度は、注液枠20に含まれる樹脂および第1部材の樹脂層A(樹脂層Aが複数の樹脂層を有する場合には、注液枠側に配置された第1樹脂層)に含まれる樹脂の少なくとも一方が軟化または溶解する温度であることが好ましい。例えば、80℃以上、200℃以下であり、100℃以上、180℃以下であってもよい。加熱時間は、例えば、10秒以上、60秒以下であり、20秒以上、60秒以下であってもよい。押込み距離は、例えば、0.2mm以上、1.0mm以下であり、0.5mm以上、0.8mm以下であってもよい。
【0060】
5.電池処理工程
本工程は、第1封止工程後に充電およびエージングの少なくとも一方を施す電池処理工程である。
図1(d)に示すように、仮封止積層体50に対して、充電およびエージングの少なくとも一方の電池処理を行うことにより、仮封止積層体の内圧が上昇する。
充電またはエージングの条件は、特に限定されない。充電処理としては、例えば、一般的なリチウムイオン電池における初期充電を行う場合の操作と同様にして実施することができる。例えばSOC(State of Charge)が50%以上になるまで充電してもよく、SOCが70%以上になるまで充電してもよく、SOCが90%以上になるまで充電してもよい。エージング処理としては、例えば、仮封止積層体を、高温度域に所定時間保持する高温エージング処理が挙げられる。エージング温度は、例えば、35℃以上、85℃以下であり、40℃以上、80℃以下であってもよい。また、エージング時間は、10時間以上、20時間以上であってもよい。
【0061】
6.貫通孔形成工程
本工程は、
図1(e)に示すように、電池処理工程後に、第1部材30に、注液口Pと連通する貫通孔Qを形成する工程である。第1部材に貫通孔を形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、適当な穿孔具(針、パンチ、ドリル等)を用いて孔を開ける方法、第1部材にレーザ等の高エネルギー線を照射して孔を開ける方法等を適宜採用することができる。
【0062】
貫通孔Qは、第1部材30を、x軸方向に貫通していることが好ましい。第1部材30は、複数の貫通孔Qを有することが好ましい。また、x軸方向の平面視において、第1部材30の貫通孔Qは、注液枠20の注液口Pの少なくとも一部と重複していることが好ましい。貫通孔のx軸方向における平面視形状は、特に限定されず、円形、矩形等が挙げられる。
【0063】
7.第2封止工程
本工程は、
図1(f)に示すように、貫通孔形成工程後に、樹脂層B(樹脂層41)および金属層42を有する第2部材40を用い、x軸方向を法線方向とする、第1部材の注液枠とは反対側の面30Sに、第2部材における樹脂層Bを配置することによって、貫通孔Qを被覆しつつ、注液口Pを封止する工程である。
【0064】
図1(f)に示すように、第2部材40は、樹脂層B(樹脂層41)および金属層42を有する。また、第2部材40は、金属層42の樹脂層B(樹脂層41)とは反対側に、樹脂層C(樹脂層43)を有することが好ましい。樹脂層Bおよび樹脂層Cは、それぞれ、単層の樹脂層であることが好ましい。
【0065】
上記金属層を構成する金属としては、バリア性を発揮できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、ステンレス、チタン、ニッケル、鉄、銅等の金属またはこれらを含む合金を挙げることができる。金属層の厚さとしては、10μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましい。一方、180μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。
【0066】
樹脂層Bは、熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。樹脂層Bが熱可塑性樹脂を含むことで、第1部材30と第2部材40との溶着が容易となる。樹脂層Bに含まれる熱可塑性樹脂としては、上記第1部材における第1樹脂層および上記第3樹脂層で例示したものと同様のものが挙げられる。中でも、ポリエチレンが好ましい。また、樹脂層Cに含まれる樹脂としては、上記第1部材における第2樹脂層に含まれる樹脂と同様のものが挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0067】
第2部材40は、フィルム状であることが好ましい。第2部材がフィルム状であることにより、第1部材の貫通孔を被覆しつつ、注液枠の注液口を容易に溶着封止できる。
【0068】
第2部材の厚さは、特に限定されず、100μm以上が好ましく、120μm以上がより好ましい。一方、200μm以下が好ましく、180μm以下がより好ましい。第2部材の厚さとは、
図1(f)に示すように、x軸方向における厚さ(T
40)をいう。なお、第2部材が複数層の積層体である場合、上記厚さは、第2部材に含まれる複数層の合計厚さである。第2部材の剛性が向上し、真空封止の際の変形を抑制することができるためである。
【0069】
注液枠を構成する樹脂、第1部材における第1樹脂層および第3樹脂層に含まれる樹脂、および第2部材における樹脂層Bに含まれる樹脂は、同一種類であることが好ましいが、異なる種類であってもよい。異なる種類の場合、上記樹脂のうち溶解度パラメータ(SP値)が最も大きい樹脂と最も小さい樹脂とのSP値の差の絶対値が3以内であることが好ましい。高い溶着性が得られるためである。
【0070】
図1(f)に示すように、例えば、所定の温度に加熱したヒートバー60を、第2部材40の第1部材30側とは反対側から押し付けることにより、第1部材30と第2部材40とが溶着し、第2部材40が貫通孔Qを被覆しつつ、注液口Pを封止する。なお、溶着手段としては、上記方法に限定されず、一般的な加熱手段によって行うことができる。第2封止工程は、真空引きしたチャンバー内において、減圧雰囲気で行うことが好ましい。
【0071】
第2封止工程における溶着封止条件(加熱温度、押し込み距離、時間等)は特に限定されない。加熱温度は、第1部材の樹脂層A(樹脂層Aが複数の樹脂層を有する場合には、第2部材側に配置された第3樹脂層)に含まれる樹脂および第2部材における樹脂層Bに含まれる樹脂のうち少なくとも一方が軟化または溶解する温度であることが好ましい。加熱温度は、例えば、80℃以上、200℃以下であり、100℃以上、180℃以下であってもよい。加熱時間は、例えば、10秒以上、60秒以下であり、20秒以上、60秒以下であってもよい。押込み距離は、例えば、0.2mm以上、3.0mm以下であり、0.5mm以上、2.0mm以下であってもよい。
【0072】
8.積層電池
本開示における積層電池の製造方法に製造される積層電池としては、後述する「B.積層電池」の項に記載する内容と同様である。
【0073】
B.積層電池
図10は、本開示における積層電池を例示する概略断面図である。
図10に示すように、積層電池100は、z軸方向に積層された複数の電極Eを含む電極積層体10を有する。積層電池100は、電極積層体10と、電極積層体10の側面SSに配置され、電極積層体10の内部に電解液を供給するための注液口Pを有する樹脂製の注液枠20と、z軸方向に直交するx軸方向を法線方向とする、注液枠20の電極積層体10とは反対側の面20Sに配置された第1部材30と、x軸方向を法線方向とする、第1部材30の注液枠20とは反対側の面30Sに配置された第2部材40と、を有する。第1部材30は、樹脂層A(樹脂層31)を有し、かつ、注液口Pを被覆しつつ、注液口Pに連通する貫通孔Qを有する。第2部材40は、第1部材30側から順に、樹脂層B(樹脂層41)および金属層42を有し、かつ、貫通孔Qを被覆しつつ、注液口Pを封止している。
図10における電極積層体10は、バイポーラ電極BP1、BP2を有している。
【0074】
本開示における積層電池によれば、第2部材と注液枠との間に、貫通孔を有する第1部材が配置されていることにより、製造過程における電池処理工程での内圧上昇による構造信頼性の低下を抑制できる。
【0075】
また、本開示によれば、
図10に示すように、注液枠20と第2部材40との間に、第1部材30が配置されることにより、第2部材40の金属層42が露出してしまった場合にも、隣接する注液口までの距離があるため、短絡を抑制することができる。
【0076】
さらに、本開示によれば、第1部材が貫通孔を有することにより、第1部材と第2部材との間のガス溜まりが抑制され、第1部材および第2部材の間での剥離を抑制可能な積層電池となる。
【0077】
1.電極積層体
本開示における積層電池は、
図10に示すように、z軸方向に積層された複数の電極Eを含む電極積層体10を有する。電極積層体としては、上記「A.積層電池の製造方法」の項に記載した内容と同様である。また、正極層2、負極層3およびセパレータ4には、それぞれ、電解液が含浸されている。
【0078】
2.注液枠
本開示における積層電池は、
図10に示すように、電極積層体10の側面SSに配置され、電極積層体の内部に電解液を供給するための注液口Pを有する樹脂製の注液枠20を有する。注液枠としては、上記「A.積層電池の製造方法」の項に記載した内容と同様である。
【0079】
3.第1部材
本開示における第1部材は、
図10に示すように、z軸方向に直交するx軸方向を法線方向とする、注液枠20の電極積層体10とは反対側の面20Sに配置されている。また、第1部材30は、樹脂層A(樹脂層31)を有し、かつ、注液口Pを被覆しつつ、注液口Pに連通する貫通孔Qを有する。第1部材30は、注液枠20と溶着していることが好ましい。第1部材および第1部材における貫通孔としては、上記「A.積層電池の製造方法」の項に記載した内容と同様である。
【0080】
4.第2部材
本開示における積層電池は、
図10に示すように、x軸方向を法線方向とする、第1部材30の注液枠20とは反対側の面30Sに配置された第2部材40を有する。
【0081】
また、第2部材は、第1部材側から順に、樹脂層Bおよび金属層を有し、かつ、貫通孔を被覆しつつ、注液口を封止している。
図1に示すように、第2部材40は、第1部材30の貫通孔Qを被覆しつつ、注液枠20の注液口Pを封止している。第2部材40は、第1部材30と溶着していることが好ましい。第2部材としては、上記「A.積層電池の製造方法」の項に記載した内容と同様である。
【0082】
5.その他
本開示における積層電池は、通常、電極積層体に含浸された電解液を有する。電解液としては、例えば、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の有機電解液を適宜用いることができる。
【0083】
6.積層電池
本開示における積層電池の具体例としては、二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)、電気二重層キャパシタが挙げられる。また、積層電池の用途としては、例えば、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)または電気自動車(BEV)の駆動用電源に用いられることが好ましい。また、本開示における積層電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【実施例】
【0084】
以下、実験例を示し、本開示をさらに説明する。
【0085】
(実験例)
フィルム1~フィルム4を準備し、以下の評価を行った。
フィルム1は、ポリエチレンを含む第1樹脂層(PE層)、ポリエチレンテレフタレートを含む第2樹脂層(PET層)、およびポリエチレンを含む第3樹脂層(PE層)からなる3層構成を有する。
フィルム2は、ポリエチレンを含む第1樹脂層(PE層)、ポリエチレンテレフタレートを含む第2樹脂層(PET層)からなる2層構成を有する。
フィルム3は、酸変性ポリプロピレンを含む第1樹脂層(PPa層)、ポリエチレンナフタレートを含む第2樹脂層(PEN層)、酸変性ポリプロピレンを含む第3樹脂層(PPa層)、酸変性ポリエチレンを含む第4樹脂層(PEa層)からなる4層構成を有し、さらに、第4樹脂層側の表面に、離型PET層を有する。フィルム3の離型PET層を除く厚さは105μmである。
フィルム4は、酸変性ポリプロピレンを含む第1樹脂層(PPa層)、ポリエチレンナフタレートを含む第2樹脂層(PEN層)、および酸変性ポリプロピレンを含む第3樹脂層(PPa層)からなる3層構成を有する、厚さ72μmのフィルムである。
なお、フィルム3およびフィルム4における、酸変性ポリプロピレン、酸変性ポリエチレンは、それぞれ、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリエチレンである。
【0086】
(実験例1):生産性評価
注液枠上に上記フィルム1を配置し、熱板を上から押し付けることにより、注入口を溶着封止した。上述したフィルム1を溶着した直後に、熱板からフィルムが容易に剥離でき、熱板へのフィルムの貼りつきや、樹脂の流動がない場合には評価Aとした。一方、熱板にフィルムが貼りついたり、樹脂が流動した場合を評価Bとした。結果を表1に示す。フィルム1は、PE層に溶融流れが生じた。
【0087】
フィルム2~フィルム4を、フィルム1と同様の方法で評価した。フィルム2は、ポリエチレンを含む第1樹脂層側が注液枠と対向するように配置し、溶着した。フィルム2はPET層により、熱板との溶着が抑制された。フィルム3は、酸変性ポリプロピレンを含む第1樹脂層側が注液枠と対向するように配置し、溶着した。フィルム3は、離型PET層により、熱板との溶着が抑制された。フィルム4は、PETフィルムやガラスクロスを介して溶着することにより、熱板との溶着が抑制された。
【0088】
(実験例2):耐電解液性評価
注液枠上に上記フィルム4を溶着し、注入口を封止した。フィルムを溶着した注液枠に電解液(電解質LiPF6を、EC/DMC/EMC=3/4/3の混合溶媒に1.1Mで溶解させた電解液)を溜め、封をし、65℃で80時間保存した。保存後に耐圧性評価を行い、耐圧値が0.40MPa以上の場合に評価Aとした。
【0089】
【0090】
(実験例3):耐圧性評価
射出成型品である注液枠を用い、注液枠上に上記フィルム4を配置し、熱板を上から押し付けることにより、注入口を溶着封止した。注液枠側を台座に固定し、注液枠のフィルム1とは反対側の下部から圧縮空気を注入した。注液枠の内部圧力を高くしていき、フィルム1が注液枠から剥離するか、破裂するまでの圧力(耐圧値)を計測した(実験例3-1)。また、PET層、金属アルミニウム層およびPE樹脂層をこの順に有するフィルム5を用い、フィルム5のPE層が注液枠に対向するように配置した以外は、上記と同様に耐圧性評価を行った(参考例)。また、フィルム4を用い、注液枠にフィルム4を溶着した後、さらにフィルム5をフィルム4に溶着させた。上記と同様に耐圧性評価を行い、耐圧値を測定した(実験例3-2)。結果を表2に示す。
【0091】
【0092】
フィルム5で直接注液枠を封止した場合(参考例)よりも、フィルム5の下にフィルム4を溶着した場合(実験例3-2)は耐圧強度が低下するものの、内圧上昇に対する十分な耐圧強度が得られることが確認された。
【0093】
本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0094】
1…集電体
2…正極層
3…負極層
4…セパレータ
5…樹脂部材
6…入れ子
10…電極積層体
20…注液枠
30…第1部材
40…第2部材
100…積層電池
O…連通孔
P…注液口
Q…貫通孔