(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】酸素生成システム
(51)【国際特許分類】
C25B 1/04 20210101AFI20250408BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20250408BHJP
F02M 21/02 20060101ALI20250408BHJP
F02M 25/12 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
C25B1/04
C25B9/00 A
F02M21/02 G
F02M25/12 D
F02M25/12 B
(21)【出願番号】P 2023203690
(22)【出願日】2023-12-01
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 毅
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-74020(JP,A)
【文献】特開昭61-295206(JP,A)
【文献】特開2022-172655(JP,A)
【文献】特開2023-051061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/00- 9/77
C25B 13/00-15/08
F02M 21/02
F02M 25/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源を冷却するための冷却水が流れる冷却水路と、
前記冷却水路を流れる冷却水と熱交換をすることにより熱を発生する第1熱発生器と、
前記第1熱発生器が発生した熱により水から水蒸気を生成し、前記水蒸気を冷却することにより蒸留水を生成する生成部と、
前記生成部が生成した蒸留水を電気分解して、水素及び酸素を生成する電解部と、
を有する酸素生成システム。
【請求項2】
前記冷却水路は、前記駆動源と前記第1熱発生器とを繋げており、前記駆動源と前記第1熱発生器との間で冷却水を循環させる、
請求項1に記載の酸素生成システム。
【請求項3】
前記冷却水路における前記駆動源の下流側から分岐し、前記冷却水路における前記駆動源の上流側に合流する第1分岐流路と、
前記冷却水路から前記第1分岐流路に冷却水を向かわせるか否かを切り替える第1切替弁と、
を有し、
前記第1熱発生器は、前記第1分岐流路において冷却水と熱交換をする、
請求項1に記載の酸素生成システム。
【請求項4】
前記第1熱発生器の温度が閾値未満の場合、前記冷却水路から前記第1分岐流路に冷却水を向かわせるように前記第1切替弁を切り替える熱制御部を有する、
請求項3に記載の酸素生成システム。
【請求項5】
前記冷却水路における前記駆動源の下流側から分岐し、前記冷却水路における前記駆動源の上流側に合流する第2分岐流路と、
前記冷却水路から前記第2分岐流路に冷却水を向かわせるか否かを切り替える第2切替弁と、
を有し、
前記第1熱発生器は、前記第2分岐流路において前記駆動源の排気流路を流れる排気と熱交換をした冷却水と、熱交換をする、
請求項1に記載の酸素生成システム。
【請求項6】
前記第1熱発生器の温度が閾値未満の場合、前記冷却水路から前記第2分岐流路に冷却水を向かわせるように前記第2切替弁を切り替える熱制御部を有する、
請求項5に記載の酸素生成システム。
【請求項7】
電力を供給されて熱を発生する第2熱発生器と、
前記第2熱発生器に電力を供給する蓄電装置と、
前記第1熱発生器の温度が閾値未満かつ前記蓄電装置の蓄電量が所定の蓄電量以上である場合に、前記蓄電装置から前記第2熱発生器に電力を供給させる熱制御部と、を有し、
前記生成部は、前記第1熱発生器及び前記第2熱発生器が発生した熱により、水から水蒸気を生成する、
請求項1に記載の酸素生成システム。
【請求項8】
水蒸気を生成するための水を収容するタンクを有し、
前記生成部は、前記タンクに収容された水に含まれる不純物の濃度が所定の濃度以上である場合に、前記タンクから排水させる、
請求項1に記載の酸素生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン下流の排気流路、又はエンジンにオゾンを供給するシステムが知られている。特許文献1に記載の排気浄化システムは、水を電気分解して生成した酸素からオゾンを生成し、当該オゾンを排気流路に供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水に含まれる不純物による電極の腐食やガスの発生を抑制するために、酸素の生成に用いる水として、不純物の含有量が微少である純水を使用することが望ましい。しかしながら、純水は、水道水のような不純物の含有量が多い水よりも、費用がかさんだり入手が困難であったりするという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、不純物による影響を抑制しつつ、純水よりも不純物が多い水を使用して酸素を生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る酸素生成システムは、駆動源を冷却するための冷却水が流れる冷却水路と、前記冷却水路を流れる冷却水と熱交換をすることにより熱を発生する第1熱発生器と、前記第1熱発生器が発生した熱により水から水蒸気を生成し、前記水蒸気を冷却することにより蒸留水を生成する生成部と、前記生成部が生成した蒸留水を電気分解して、水素及び酸素を生成する電解部と、を有する。
【0007】
前記冷却水路は、前記駆動源と前記第1熱発生器とを繋げており、前記駆動源と前記第1熱発生器との間で冷却水を循環させてもよい。
【0008】
前記冷却水路における前記駆動源の下流側から分岐し、前記冷却水路における前記駆動源の上流側に合流する第1分岐流路と、前記冷却水路から前記第1分岐流路に冷却水を向かわせるか否かを切り替える第1切替弁と、を有し、前記第1熱発生器は、前記第1分岐流路において冷却水と熱交換をしてもよい。
【0009】
前記第1熱発生器の温度が閾値未満の場合、前記冷却水路から前記第1分岐流路に冷却水を向かわせるように前記第1切替弁を切り替える熱制御部を有してもよい。
【0010】
前記冷却水路における前記駆動源の下流側から分岐し、前記冷却水路における前記駆動源の上流側に合流する第2分岐流路と、前記冷却水路から前記第2分岐流路に冷却水を向かわせるか否かを切り替える第2切替弁と、を有し、前記第1熱発生器は、前記第2分岐流路において前記駆動源の排気流路を流れる排気と熱交換をした冷却水と、熱交換をしてもよい。
【0011】
前記第1熱発生器の温度が閾値未満の場合、前記冷却水路から前記第2分岐流路に冷却水を向かわせるように前記第2切替弁を切り替える熱制御部を有してもよい。
【0012】
電力を供給されて熱を発生する第2熱発生器と、前記第2熱発生器に電力を供給する蓄電装置と、前記第1熱発生器の温度が閾値未満かつ前記蓄電装置の蓄電量が所定の蓄電量以上である場合に、前記蓄電装置から前記第2熱発生器に電力を供給させる熱制御部と、を有し、前記生成部は、前記第1熱発生器及び前記第2熱発生器が発生した熱により、水から水蒸気を生成してもよい。
【0013】
水蒸気を生成するための水を収容するタンクを有し、前記生成部は、前記タンクに収容された水に含まれる不純物の濃度が所定の濃度以上である場合に、前記タンクから排水させてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、不純物による影響を抑制しつつ、純水よりも不純物が多い水を使用して酸素を生成するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る酸素生成システムSの概要を説明するための図である。
【
図3】冷却水を第1熱発生器41に向かわせるか否かを切り替える動作を説明するための図である。
【
図4】冷却水と排気とを熱交換させる動作を説明するための図である。
【
図5】第2変形例に係る酸素生成システムSにおける処理シーケンスの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<酸素生成システムSの概要>
図1は、本実施形態に係る酸素生成システムSの概要を説明するための図である。
図1に示す酸素生成システムSは、電解部10、オゾン生成部20、オゾン供給部21、水素供給部22、エンジン30、ラジエータ31、蓄電装置32、報知装置33及び蒸留水生成装置40を備える。酸素生成システムSは、エンジン30に供給するオゾンを生成するための酸素を、純水よりも不純物を多く含む水から生成するシステムである。純水よりも不純物を多く含む水は、例えば、水道水である。一例として、不純物は、カルシウム、マグネシウム等のミネラル、水を消毒する際に用いられた塩素、浄水過程で用いられたアルミニウムである。酸素生成システムSは、例えば、車両、船舶又は発電所に設けられる。
【0017】
電解部10は、電源11、U字管14及び蒸留水タンク15を有する。電解部10は、蒸留水生成装置40が有する生成部44が生成した蒸留水を電気分解して、水素及び酸素を生成する装置である。生成部44の詳細は後述する。電源11は、バッテリ、太陽光発電システム又は回生エネルギシステムから供給された電力を使用して、U字管14に挿入された、電源11の陰極12と陽極13との間に電圧を印加する。U字管14は、蒸留水タンク15から供給された蒸留水を酸素と水素とに電気分解するための電解槽である。U字管14においては、電源11が陰極12と陽極13との間に電圧を印加することにより、陰極12から水素が生成され、陽極13から酸素が生成される。蒸留水タンク15は、蒸留水生成装置40が生成した蒸留水を貯蔵するタンクであり、残量センサ151を有する。残量センサ151は、蒸留水タンク15の底面と蒸留水タンク15が貯蔵する蒸留水の液面との距離(高さ)を検出するためのセンサである。
【0018】
オゾン生成部20は、電解部10が生成した酸素からオゾンを生成する。オゾン生成部20は、例えば、第1管路81を介してU字管14の陽極部142から取得した酸素に紫外線を照射することにより、酸素からオゾンを生成する。オゾン供給部21は、オゾン生成部20が生成したオゾンを、第2管路82を介して取得し、吸気路80に供給する。水素供給部22は、第3管路83を介してU字管14の陰極部141から取得した水素を吸気路80に供給する。
【0019】
エンジン30は、燃料と吸気(空気)との混合気を燃焼及び膨張させて動力を発生させる内燃機関である。燃料は、例えば、ガソリン、軽油又は天然ガスである。エンジン30は、吸気路80に供給されたオゾン及び水素を含む空気を吸気路80から取り込むことにより、燃料の燃焼性を高めたり、燃料の燃料効率を向上させたりすることができる。
【0020】
ラジエータ31は、エンジン30を冷却するための冷却水が流れる冷却水路90の循環方向D1において、エンジン30及び蒸留水生成装置40の下流側に設けられており、エンジン30を通過した冷却水を冷却する。ラジエータ31は、例えば、風を流入させるためのファンが設けられており、流入した風と冷却水とを熱交換させることで冷却水を冷却する。
【0021】
冷却水路90は、エンジン30と、蒸留水生成装置40が有する第1熱発生器41と、を繋げており、エンジン30と第1熱発生器41との間で冷却水を循環させる水路である。冷却水路90において冷却水が循環方向D1に流れることで、エンジン30により昇温された冷却水は、第1熱発生器41との熱交換により冷却された後に、ラジエータ31に流入した風との熱交換でさらに冷却される。冷却水路90がこのように配置されることで、酸素生成システムSは、エンジン30により昇温された冷却水の熱を、ラジエータ31に流入した風と冷却水とが熱交換をする前に、第1熱発生器41で有効に活用することができる。第1熱発生器41の詳細は後述する。
【0022】
蓄電装置32は、例えば、バッテリである。蓄電装置32は、蒸留水生成装置40が有する第2熱発生器42に電力を供給する。第2熱発生器42の詳細は後述する。報知装置33は、酸素生成システムSが設けられた車両、船舶又は発電所の操作者に、酸素生成システムSの状態を報知するための装置である。報知装置33は、例えば、酸素生成システムSの状態を示す画像をディスプレイ(不図示)に表示させたり、当該状態を示す音をスピーカ(不図示)から出音させたりすることにより、操作者に当該状態を報知する。
【0023】
蒸留水生成装置40は、第1熱発生器41、第2熱発生器42、水タンク43、生成部44、ドレインタンク45及び制御装置46を有する。第1熱発生器41は、冷却水路90を流れる冷却水と熱交換をすることにより熱を発生する装置である。第1熱発生器41には、第1熱発生器41の温度を測定するための温度センサ411が設けられている。第2熱発生器42は、蓄電装置32から電力を供給されて熱を発生する装置である。水タンク43は、酸素生成システムSの外部から供給された、純水より不純物を多く含む水道水等の水を貯蔵するタンクであり、残量センサ431を有する。残量センサ431は、水タンク43の底面と水タンク43に収容された水の液面との距離を検出するためのセンサである。
【0024】
生成部44は、第1収容タンク441、第2収容タンク442、冷却部443及び不純物センサ444を有する。生成部44は、水タンク43から供給された水から蒸留水を生成し、蒸留水タンク15に供給する装置である。生成部44は、例えば、第1熱発生器41及び第2熱発生器42が発生した熱により水から水蒸気を生成し、水蒸気を冷却することにより蒸留水を生成する。
【0025】
第1収容タンク441及び第2収容タンク442は、水タンク43から供給された、水蒸気を生成するための水を収容するタンクである。第1収容タンク441は、残量センサ445を有し、第2収容タンク442は、残量センサ446を有する。残量センサ445は、第1収容タンク441の底面と第1収容タンク441に収容された水の液面との距離を検出するためのセンサである。残量センサ446は、第2収容タンク442の底面と第2収容タンク442に収容された水の液面との距離を検出するためのセンサである。
【0026】
第1収容タンク441及び第2収容タンク442それぞれは、所定の量以上の水を収容するように水量が調整される。所定の量は、例えば、収容可能な水の量に応じて、第1収容タンク441及び第2収容タンク442それぞれにおいて定められている。例えば、第1収容タンク441は、残量センサ445に基づく水の残量が所定の量未満である場合、第4管路84に設けられた第1ポンプ71を介して水タンク43から水を供給される。同様に、第2収容タンク442は、残量センサ446に基づく水の残量が所定の量未満である場合、第4管路84に設けられた第1ポンプ71を介して水タンク43から水を供給される。
【0027】
第1収容タンク441においては、第1熱発生器41が発生した熱が、水タンク43から供給された水を加熱することで、当該水が水蒸気に変わる。第2収容タンク442においては、第2熱発生器42が発生した熱が、水タンク43から供給された水を加熱することで、当該水が水蒸気に変わる。なお、第1収容タンク441は、冷却水路90の冷却水と熱交換をすることにより第1収容タンク441を昇温させ、第1収容タンク441が水タンク43から供給された水と熱交換をすることにより、当該水を水蒸気に変えてもよい。すなわち、第1収容タンク441においては、第1熱発生器41を介さずに、冷却水路90を流れる冷却水の熱が水タンク43から供給された水を加熱するように設けられてもよい。この場合、温度センサ411は、第1収容タンク441に収容された水の温度を検出するためのセンサであってもよい。
【0028】
第1収容タンク441及び第2収容タンク442それぞれにおいて生成された水蒸気は、第5管路85を介して冷却部443に供給される。第5管路85においては第2ポンプ72が設けられており、第2ポンプ72が水蒸気を移送することで、第1収容タンク441及び第2収容タンク442それぞれにおいて生成された水蒸気は、冷却部443に供給される。
【0029】
冷却部443は、第1収容タンク441及び第2収容タンク442の少なくともいずれかにおいて生成された水蒸気を冷却して蒸留水を生成するための装置である。冷却部443は、例えば、第1収容タンク441及び第2収容タンク442の少なくともいずれかで生成され、滞留する水蒸気を、外気温を超えない温度(いわゆる、常温)に冷却して蒸留水を生成する。冷却部443は、生成した蒸留水を蒸留水タンク15に供給する。
【0030】
上記のように蒸留水生成装置40が蒸留水を生成して蒸留水タンク15に供給することで、電解部10は、水タンク43が貯蔵する水よりも不純物が少ない蒸留水を電気分解して水素及び酸素を生成できる。その結果、不純物による陰極12及び陽極13の腐食とガスの発生とを抑制したり、酸素生成システムSの操作者が純水を用意するための手間を削減したりすることができる。
【0031】
不純物センサ444は、第1収容タンク441に収容された水に含まれる不純物の濃度を計測するためのセンサである。ドレインタンク45は、第1収容タンク441及び第2収容タンク442が排水した水を収容する排水タンクである。制御装置46は、第1熱発生器41及び第2熱発生器42に発生させる熱の熱量と第1収容タンク441及び第2収容タンク442に収容された水の水量とを制御するための処理を実行する。制御装置46は、電子部品を含む筐体を有していてもよく、電子部品が実装されたプリント基板であってもよい。
以下、制御装置46の構成及び動作を詳細に説明する。
【0032】
<制御装置46の構成>
図2は、制御装置46の構成を示す図である。制御装置46は、記憶部47及び制御部48を有する。制御部48は、取得部481、熱制御部482及び報知部483を有する。
【0033】
記憶部47は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部47は、制御部48が実行するプログラムを記憶している。記憶部47は、第1熱発生器41及び第2熱発生器42に発生させる熱の熱量と第1収容タンク441及び第2収容タンク442に収容された水の水量とを制御するための各種の情報を記憶している。
【0034】
制御部48は、例えば、CPU(Central Processing Unit)又はECU(Electronic Control Unit)等のプロセッサである。制御部48は、記憶部47に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部481、熱制御部482及び報知部483として機能する。なお、制御部48は、1つのプロセッサで構成されていてもよいし、複数のプロセッサ又は1以上のプロセッサと電子回路との組み合わせにより構成されていてもよい。
以下、制御部48により実現される各部の構成を説明する。
【0035】
取得部481は、蒸留水タンク15に貯蔵された蒸留水の残量と、第1熱発生器41の温度と、第1収容タンク441に収容された水に含まれる不純物の濃度と、蓄電装置32が蓄電している電気の残量と、を取得する。取得部481は、残量センサ151が検出した、蒸留水タンク15の底面と蒸留水タンク15が貯蔵する蒸留水の液面との距離(高さ)を取得し、当該距離に基づいて蒸留水タンク15に収容された蒸留水の残量を特定することにより、蒸留水タンク15の残量を取得する。取得部481は、例えば、温度センサ411が測定した第1熱発生器41の温度と、不純物センサ444が測定した不純物の濃度と、蓄電装置32から取得した蓄電装置32の電力の残量と、を取得する。
【0036】
取得部481は、残量センサ445が検出した、第1収容タンク441の底面と第1収容タンク441に収容された水の液面との距離を取得し、当該距離に基づいて第1収容タンク441が収容している水の残量を特定してもよい。取得部481は、残量センサ446が検出した、第2収容タンク442の底面と第2収容タンク442に収容された水の液面との距離を取得し、当該距離に基づいて第2収容タンク442が収容している水の残量を特定してもよい。
【0037】
取得部481は、残量センサ431が検出した、水タンク43の底面と水タンク43に収容された水の液面との距離を取得し、当該距離に基づいて水タンク43が収容している水の残量を特定してもよい。取得部481は、例えば、上記の各種の情報を所定の周期で取得する。所定の周期は、例えば、1秒未満の固定値であり、記憶部47に記憶されている。
【0038】
熱制御部482は、第1熱発生器41及び第2熱発生器42が発生する熱の量と、第1収容タンク441及び第2収容タンク442が収容した水の量と、を制御することにより、冷却部443に蒸留水を生成させる。熱制御部482は、例えば、取得部481が取得した、第1収容タンク441が収容している水の量が所定の量未満である場合に、第1ポンプ71を駆動させることにより、水タンク43から第1収容タンク441に水を供給する。熱制御部482は、例えば、取得部481が取得した、第2収容タンク442が収容している水の量が所定の量未満である場合に、第1ポンプ71を駆動させることにより、水タンク43から第2収容タンク442に水を供給する。所定の量は、例えば、第1収容タンク441又は第2収容タンク442が収容可能な水の量の20%であり、記憶部47に記憶されている。
【0039】
熱制御部482は、例えば、第1熱発生器41の温度が閾値未満かつ蓄電装置32の蓄電量が所定の蓄電量以上である場合に、蓄電装置32から第2熱発生器42に電力を供給させる。閾値は、第1収容タンク441が収容した水が水蒸気に変化する温度であり、例えば、100度である。所定の蓄電量は、第2収容タンク442が収容可能な水の量のうち、所定の量(20%)を水蒸気に変化させるための電力量である。熱制御部482がこのように動作することで、蒸留水生成装置40は、第1熱発生器41の温度が低下した場合に、第1熱発生器41及び第2熱発生器42を併用して蒸留水を生成できる。その結果、蒸留水生成装置40は、例えば、エンジン30の始動時のように冷却水の温度が低温である場合であってもバッテリに蓄電された電気を併用して蒸留水を生成できる。
【0040】
一方、熱制御部482は、第1熱発生器41の温度が閾値以上又は蓄電装置32の蓄電量が所定の蓄電量未満である場合は、蓄電装置32から第2熱発生器42に電力を供給させない。すなわち、熱制御部482は、第1熱発生器41及び第2熱発生器42を併用せず、第1熱発生器41のみを用いて蒸留水を生成させる。熱制御部482がこのように動作することで、蒸留水生成装置40は、不要な電力を用いずに蒸留水を生成できる。
【0041】
ところで、第1収容タンク441及び第2収容タンク442においては、蒸留水を生成すると不純物が残留するため、不純物の生成量が多いほど不純物の濃度が高くなる。そこで、熱制御部482は、第1収容タンク441に収容された水に含まれる不純物の濃度が所定の濃度以上である場合に、生成部44に、第1収容タンク441及び第2収容タンク442から排水させる。所定の濃度は、不純物に起因したガスの発生が起きる蓋然性が高いと考え得る濃度であり、記憶部47に記憶されている。
【0042】
熱制御部482は、例えば、取得部481が不純物センサ444から取得した不純物の濃度が所定の濃度以上である場合、生成部44に、第1収容タンク441及び第2収容タンク442からドレインタンク45に排水させる。熱制御部482がこのように動作することで、蒸留水生成装置40は、第1収容タンク441及び第2収容タンク442に収容された水に含まれる不純物の濃度を所定の濃度未満に抑えることができる。その結果、第1収容タンク441及び第2収容タンク442の内部で不純物に起因したガスの発生を抑えることができるため、蒸留水生成装置40は、蒸留水を安全に生成することができる。
【0043】
報知部483は、酸素生成システムSの状態を示す状態情報を報知装置33に通知することにより、報知装置33から、酸素生成システムSが設けられた車両、船舶又は発電所の操作者に、酸素生成システムSの状態を報知させる。報知部483は、蒸留水タンク15に貯蔵された蒸留水の残量、水タンク43に貯蔵された水の残量、第1収容タンク441に収容された水の残量、及び第2収容タンク442に収容された水の残量のうち少なくともいずれかを取得部481から取得する。報知部483は、取得した残量を示す状態情報を報知装置33に通知することにより、報知装置33に残量を示す画像を表示させる。
【0044】
報知部483は、水タンク43に貯蔵された水の残量が所定の第1残量(例えば、20%)未満である場合は、水タンク43に加水を促すための第1音を報知装置33に出音させてもよい。報知部483がこのように動作することで、報知部483は、酸素生成システムSが設けられた車両、船舶又は発電所の操作者に、蒸留水を生成するための水が不足する可能性があることを知らせることができる。
【0045】
報知部483は、例えば、熱制御部482が蓄電装置32から第2熱発生器42に電力を供給させているか否かを示す情報を熱制御部482から取得する。報知部483は、蓄電装置32が第2熱発生器42に電力を供給していることを特定した場合は、報知装置33に、蒸留水生成装置40が第2熱発生器42を用いて蒸留水を生成していることを示す画像を表示させる。
【0046】
報知部483は、蒸留水タンク15が貯蔵している蒸留水の量が所定の第1量(例えば、80%)以上であり、且つ蒸留水生成装置40が蒸留水を生成していることを特定した場合は、酸素生成システムSの故障を示す第2音を報知装置33に出音させてもよい。報知部483は、収容タンク441が収容している水の量が所定の第2量(例えば、20%)未満であり、且つ蒸留水生成装置40が蒸留水を生成していることを特定した場合は、酸素生成システムSの故障を示す第3音を報知装置33に出音させてもよい。報知部483が上記のように動作することで、報知部483は、酸素生成システムSが設けられた車両、船舶又は発電所の操作者に、酸素生成システムSが蒸留水を生成している状態、又は酸素生成システムSの異常を知らせることができる。
【0047】
<第1変形例>
以上の説明においては、冷却水路90がエンジン30、第1熱発生器41及ラジエータ31を繋げており、エンジン30、第1熱発生器41及びラジエータ31の間で冷却水が循環する動作を例示したが、これに限らない。酸素生成システムSは、冷却水を第1熱発生器41に向かわせるか否かを切り替えてもよい。
【0048】
図3は、冷却水を第1熱発生器41に向かわせるか否かを切り替える動作を説明するための図である。
図3に示す酸素生成システムSは、第1分岐流路91と第1切替弁92とを有する点、及び冷却水路90が第1熱発生器41を繋げずに、エンジン30とラジエータ31との間で冷却水を循環させる点で
図1に示す酸素生成システムSと異なり、他の点において同じである。第1分岐流路91は、冷却水路90におけるエンジン30の下流側から分岐し、冷却水路90におけるエンジン30の上流側に合流する流路である。第1切替弁92は、冷却水路90から第1分岐流路91に冷却水を向かわせるか否かを切り替える切替弁である。
図3に示すように、第1熱発生器41は、第1分岐流路91において冷却水と熱交換をする。酸素生成システムSがこのように構成されることで、酸素生成システムSは、第1熱発生器41を用いて蒸留水を生成するか否かを制御できる。
【0049】
図3において、熱制御部482は、例えば、第1熱発生器41の温度が閾値未満の場合、冷却水路90から第1分岐流路91に冷却水を向かわせるように第1切替弁92を切り替える。熱制御部482は、例えば、取得部481が温度センサ411から取得した第1熱発生器41の温度が閾値未満の場合、第1切替弁92を切り替えることにより、冷却水路90の冷却水を第1分岐流路91に向かわせる。熱制御部482がこのように動作することで、酸素生成システムSは、第1熱発生器41に適切な熱量を与えることができる。
【0050】
熱制御部482は、取得部481が取得した、蒸留水タンク15が貯蔵する蒸留水の残量が所定の残量未満である場合、冷却水路90から第1分岐流路91に冷却水を向かわせるように第1切替弁92を切り替えてもよい。所定の残量は、例えば、蒸留水タンク15が貯蔵可能な蒸留水の量の80%であり、記憶部47に記憶されている。熱制御部482がこのように動作することで、蒸留水生成装置40は、生成した蒸留水を蒸留水タンク15が貯蔵できない状態を防ぐとともに、生成した蒸留水を蒸留水タンク15が貯蔵可能なタイミングで供給することができる。
【0051】
報知部483は、例えば、熱制御部482が第1切替弁92を切り替えた状態を示す情報を熱制御部482から取得し、冷却水路90を流れる冷却水が第1分岐流路91を流れているか否かを特定する。報知部483は、冷却水が第1分岐流路91を流れていることを特定した場合は、報知装置33に、蒸留水生成装置40が蒸留水を生成していることを示す画像を表示させる。
【0052】
<第2変形例>
以上の説明においては、エンジン30と熱交換をした冷却水が第1熱発生器41と熱交換をする動作を例示したが、これに限らない。酸素生成システムSは、エンジン30と冷却水との熱交換に加えて、排気路86を流れる排気と冷却水とを熱交換させてもよい。
【0053】
図4は、冷却水と排気とを熱交換させる動作を説明するための図である。
図4に示す酸素生成システムSは、第2分岐流路93と第2切替弁94と熱交換器34とを有する点で
図3に示す酸素生成システムSと異なり、他の点において同じである。第2分岐流路93は、冷却水路90におけるエンジン30の下流側から分岐し、冷却水路90におけるエンジン30の上流側に合流する流路である。第2切替弁94は、冷却水路90から第2分岐流路93に冷却水を向かわせるか否かを切り替える切替弁である。熱交換器34は、冷却水路90を流れる冷却水と排気路86を流れる排気とを熱交換する熱交換器である。
【0054】
図4に示すように、第1熱発生器41は、熱制御部482が第2分岐流路93に冷却水を向かわせるように第2切替弁94を切り替えた場合、第2分岐流路93においてエンジン30の排気路86を流れる排気と熱交換をした冷却水と、熱交換をする。酸素生成システムSがこのように構成されることで、酸素生成システムSは、第1熱発生器41をさらに加熱することができる。さらに、排気路86に設けられた浄化装置(不図示)が捕集した微粒子を燃焼する場合、熱制御部482が第2分岐流路93に冷却水を向かわせないようにすることができるため、排気路86を流れる排気温度を上昇させて微粒子を燃焼させやすくできる。
【0055】
さらに、熱制御部482は、第1熱発生器41の温度が閾値未満の場合、冷却水路90から第2分岐流路93に冷却水を向かわせるように第2切替弁94を切り替えてもよい。熱制御部482がこのように動作することで、酸素生成システムSは、エンジン30と熱交換をした冷却水が第1熱発生器41に与える熱量が不足している場合に、排気路86を流れる排気の熱を第1熱発生器41にさらに与えることができる。その結果、蒸留水生成装置40は、第1熱発生器41に与える熱量が不足する確率を下げることができるため、蒸留水を生成しやすくなる。
【0056】
報知部483は、例えば、熱制御部482が第2切替弁94を切り替えた状態を示す情報を熱制御部482から取得し、冷却水路90を流れる冷却水が第2分岐流路93を流れているか否かを特定する。報知部483は、冷却水が第2分岐流路93を流れていることを特定した場合は、報知装置33に、蒸留水生成装置40が、排気路86を流れる排気の熱を利用して蒸留水を生成していることを示す画像を表示させる。
【0057】
<酸素生成システムSにおける処理シーケンス>
図5は、第2変形例に係る酸素生成システムSにおける処理シーケンスの例を示す図である。
図5に示す処理シーケンスは、
図4に示す酸素生成システムSにおいて、蒸留水生成装置40に蒸留水を生成させる処理を示すシーケンスである。
【0058】
熱制御部482は、取得部481が取得した、蒸留水タンク15が貯蔵している蒸留水の残量が所定の残量未満であるか否かを判定する(S11)。蒸留水の残量が所定の残量以上である場合(S11のNO)、熱制御部482は、S11の処理を繰り返す。蒸留水の残量が所定の残量未満である場合(S11のYES)、熱制御部482は、取得部481が取得した第1熱発生器41の温度が閾値未満であるか否かを判定する(S12)。第1熱発生器41の温度が閾値以上である場合(S12のNO)、熱制御部482は、S11の処理に戻る。第1熱発生器41の温度が閾値未満である場合(S12のYES)、熱制御部482は、第1切替弁92を切り替えることにより(S13)、冷却水路90から第1分岐流路91に冷却水を向かわせる。
【0059】
熱制御部482は、熱制御部482が冷却水路90から第1分岐流路91に冷却水を向かわせた後に、取得部481が取得した第1熱発生器41の温度が閾値未満であるか否かを判定する(S14)。第1熱発生器41の温度が閾値以上である場合(S14のNO)、酸素生成システムSは、処理を終了し、冷却水路90から第1分岐流路91に冷却水を向かわせた状態で蒸留水生成装置40に蒸留水を生成させる。第1熱発生器41の温度が閾値未満である場合(S14のYES)、熱制御部482は、第2切替弁94を切り替えることにより(S15)、冷却水路90から第2分岐流路93に冷却水を向かわせる。
【0060】
熱制御部482は、熱制御部482が冷却水路90から第2分岐流路93に冷却水を向かわせた後に、取得部481が取得した第1熱発生器41の温度が閾値未満であるか否かを判定する(S16)。第1熱発生器41の温度が閾値以上である場合(S16のNO)、酸素生成システムSは、処理を終了し、冷却水路90から第1分岐流路91及び第2分岐流路93に冷却水を向かわせた状態で蒸留水生成装置40に蒸留水を生成させる。第1熱発生器41の温度が閾値未満である場合(S16のYES)、熱制御部482は、蓄電装置32の蓄電量が所定の蓄電量以上であるか否かを判定する(S17)。
【0061】
蓄電装置32の蓄電量が所定の蓄電量未満である場合(S17のNO)、酸素生成システムSは、処理を終了し、冷却水路90から第1分岐流路91及び第2分岐流路93に冷却水を向かわせた状態で蒸留水生成装置40に蒸留水を生成させる。蓄電装置32の蓄電量が所定の蓄電量以上である場合(S17のYES)、熱制御部482は、蓄電装置32から第2熱発生器42に電力を供給させ(S18)、第2熱発生器42に熱を発生させることにより、蒸留水生成装置40に蒸留水を生成させる。
【0062】
<酸素生成システムSによる効果>
以上説明したように、酸素生成システムSは、エンジン30を冷却するための冷却水が流れる冷却水路90と、冷却水路90を流れる冷却水と熱交換をすることにより熱を発生する第1熱発生器41と、第1熱発生器41が発生した熱により水から水蒸気を生成し、水蒸気を冷却することにより蒸留水を生成する生成部44と、生成部44が生成した蒸留水を電気分解して、水素及び酸素を生成する電解部10と、を有する。
【0063】
酸素生成システムSがこのように構成されることで、純水よりも不純物を多く含む水から生成した蒸留水を使用して酸素を生成することができる。その結果、水道水等の水よりも不純物が少ない蒸留水を用いて電気分解をすることにより、不純物による電極の腐食やガスの発生を抑制することができる。さらに、ユーザが、純水を入手するために多くの費用を必要としたり、多くの手間をかけたりすることを防ぐことができる。
【0064】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0065】
S 酸素生成システム
10 電解部
11 電源
12 陰極
13 陽極
14 U字管
141 陰極部
142 陽極部
15 蒸留水タンク
151 残量センサ
20 オゾン生成部
21 オゾン供給部
22 水素供給部
30 エンジン
31 ラジエータ
32 蓄電装置
33 報知装置
34 熱交換器
40 蒸留水生成装置
41 第1熱発生器
411 温度センサ
42 第2熱発生器
43 水タンク
431 残量センサ
44 生成部
441 第1収容タンク
442 第2収容タンク
443 冷却部
444 不純物センサ
445 残量センサ
446 残量センサ
45 ドレインタンク
46 制御装置
47 記憶部
48 制御部
481 取得部
482 熱制御部
483 報知部
71 第1ポンプ
72 第2ポンプ
80 吸気路
81 第1管路
82 第2管路
83 第3管路
84 第4管路
85 第5管路
86 排気路
90 冷却水路
91 第1分岐流路
92 第1切替弁
93 第2分岐流路
94 第2切替弁
【要約】
【課題】不純物による影響を抑制しつつ、純水よりも不純物が多い水を使用して酸素を生成する。
【解決手段】酸素生成システムSは、エンジン30を冷却するための冷却水が流れる冷却水路90と、冷却水路90を流れる冷却水と熱交換をすることにより熱を発生する第1熱発生器41と、第1熱発生器41が発生した熱により水から水蒸気を生成し、水蒸気を冷却することにより蒸留水を生成する生成部44と、生成部44が生成した蒸留水を電気分解して、水素及び酸素を生成する電解部10と、を有する。
【選択図】
図1