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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10D 64/62 20250101AFI20250408BHJP
   H01L 21/288 20060101ALI20250408BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20250408BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20250408BHJP
   H01L 23/522 20060101ALI20250408BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20250408BHJP
   H10D 64/01 20250101ALI20250408BHJP
【FI】
H10D64/62 R
H01L21/288 E
H01L21/88 J
H01L21/88 R
H10D64/01 B
H10D64/62 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023557634
(86)(22)【出願日】2022-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2022032927
(87)【国際公開番号】W WO2023079824
(87)【国際公開日】2023-05-11
【審査請求日】2023-12-07
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2021/040596
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西澤 弘一郎
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-157883(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145815(WO,A1)
【文献】特開2011-044546(JP,A)
【文献】特開2018-200952(JP,A)
【文献】特開2016-156039(JP,A)
【文献】特開2008-069389(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/28-21/288
H01L 21/3205-21/321
H01L 21/44-21/445
H01L 21/768
H01L 23/52
H01L 23/522-23/532
H10D 64/00-64/68
C23C 18/00-18/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaAsで形成された半導体基板と、
前記半導体基板の上にNi-Pからなる合金で形成された第一のバリア層と、
前記第一のバリア層の上にCoを含む合金またはCoで形成された第二のバリア層と、
前記第二のバリア層の上に形成されたメタル層と
を備え、
前記第一のバリア層Ni濃度が80at%以下の結晶性の膜である半導体装置。
【請求項2】
前記第一のバリア層と前記第二のバリア層との間に、
触媒活性のある金属を含む拡散防止層を備える請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板と前記第一のバリア層との間に、
触媒活性のある金属を析出させた析出層を備える請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
GaAsで形成された半導体基板の上に触媒活性のある金属を析出させた析出層を形成する工程と、
前記析出層の上にNi-Pからなる合金で形成された第一のバリア層をめっき法で形成する工程と、
前記第一のバリア層の上にCoを含む合金またはCoで形成された第二のバリア層をめっき法で形成する工程と、
前記第二のバリア層の上にメタル層を形成する工程と、
前記第一のバリア層のNi濃度が80at%以下になるまで熱処理を実施する工程と
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第一のバリア層と前記第二のバリア層との間に、
触媒活性のある金属を含む拡散防止層を形成する工程を備える請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記拡散防止層が蒸着法またはスパッタ法で形成される請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体基板とメタル層との間にバリア層を設ける技術が開示されている。バリア層は、メタル層の材料が半導体基板へ拡散することを防止するために設けられる。また拡散を防止する性能が高いバリア層としてCo合金系膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015-145815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしCo合金膜を200℃以上等の高温環境下で長時間保持すると、一部のCoが半導体基板側に拡散するため、Co合金膜中に空隙が形成される。その結果Co合金膜が劣化し、メタル層の半導体基板への拡散を防止する性能が低下する問題がある。
【0005】
本開示は上述の問題を解決するためになされたもので、メタル層の材料を半導体基板へ拡散させない半導体装置を提供することを第一の目的とする。また、メタル層の材料を半導体基板へ拡散させない半導体装置の製造方法を提供することを第二の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第一の態様は、GaAsで形成された半導体基板と、半導体基板の上にNi-Pからなる合金で形成された第一のバリア層と、第一のバリア層の上にCoを含む合金またはCoで形成された第二のバリア層と、第二のバリア層の上に形成されたメタル層と、を備え、第一のバリア層Ni濃度が80at%以下の結晶性の膜である半導体装置であることが好ましい。
【0007】
また本開示の第二の態様は、GaAsで形成された半導体基板上に触媒活性のある金属を析出させた析出層を形成する工程と、析出層の上にNi-Pからなる合金で形成された第一のバリア層をめっき法で形成する工程と、第一のバリア層の上にCoを含む合金またはCoで形成された第二のバリア層をめっき法で形成する工程と、第二のバリア層の上にメタル層を形成する工程と、第一のバリア層のNi濃度が80at%以下になるまで熱処理を実施する工程と、を備える半導体装置の製造方法であることが好ましい。

【発明の効果】
【0008】
本開示の第一及び第二の態様によれば、メタル層の材料を半導体基板へ拡散させない半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態1に係る半導体装置の断面図である。
図2】長時間の熱処理前後のCo合金膜を備えるサンプルの断面図である。
図3】長時間の熱処理前後のNi合金膜を備えるサンプルの断面図である。
図4】熱処理後のNi合金膜を備えるサンプルの断面図である。
図5】熱処理後のCo合金膜を備えるサンプルの断面図である。
図6】Si基板上に積層したNi合金膜とCo合金膜を、使用環境で維持する前後の断面図である。
図7】GaAs基板上に積層したNi合金膜とCo合金膜の、熱処理前後の断面図である。
図8】ビア構造上にPVD法でCu拡散バリア膜を形成した場合の断面図である。
図9】ビア構造上にめっき法でCu拡散バリア層を形成した場合の断面図である。
図10図9に示す構造を作製するための、表面側エレメントの作成工程を示す断面図である。
図11図9に示す構造を作製するための、支持基板貼り付け工程を示す断面図である。
図12図9に示す構造を作製するための、基板薄板化の工程を示す断面図である。
図13図9に示す構造を作製するための、ビア加工工程を示す断面図である。
図14図9に示す構造を作製するための、Ni合金膜の形成工程を示す断面図である。
図15図9に示す構造を作製するための、Co合金膜の形成工程を示す断面図である。
図16図9に示す構造を作製するための、Cu膜の形成工程を示す断面図である。
図17】本開示の実施の形態2に係る半導体装置の断面図である。
図18】本開示の実施の形態3に係る半導体装置の断面図である。
図19】本開示の実施の形態4に係る半導体装置の断面図である。
図20】Niめっき膜のピンホールを示す断面図である。
図21】本開示の実施の形態5に係る半導体装置の断面図である。
図22】本開示の実施の形態5に係る、Niめっき膜のピンホール修復効果を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1
図1は、本開示の実施の形態1に係る半導体装置10の断面図である。半導体装置10は、GaAsで形成された半導体基板12を備えている。半導体基板12の上には、Niバリア層14が形成されている。Niバリア層14は、Ni又はNiを含む合金で形成されている。Niを含む合金とは、例えばNi-Pである。ここで、Ni-Pは、NiとPの合金を示し、以後同様にハイフンを用いて合金を表すものとする。Niバリア層14の上には、Coバリア層16が形成されている。Coバリア層16は、Co又はCoを含む合金で形成されている。Coバリア層16の上には、Cuで形成されたメタル層18が形成されている。
【0011】
図2は、長時間の熱処理前後のCo合金膜を備えるサンプルの断面図である。図2左の図は、GaAsで形成された半導体基板12と、Cuで形成されたメタル層18の間に、Coを含む合金で形成されたCoバリア層16を設けたサンプルの断面図である。図2右の図は、このサンプルを、270℃で1000時間熱処理した後の断面図である。図2右の図から、熱処理を行うと半導体基板12とCoバリア層16が反応し、二層の間にCo拡散層20が形成されることが分かる。また、このとき、Coバリア層16には空隙が形成されている。つまり、Coバリア層16中のCoが半導体基板12側に拡散している。同時に、拡散した分だけCoが減少したことでCoバリア層が空隙化したため、Cuの拡散経路が増加している。その結果、Coバリア層16の拡散バリア性は低下する。
【0012】
図3は、長時間の熱処理前後のNi合金膜を備えるサンプルの断面図である。図3左の図は、GaAsで形成された半導体基板12と、Cuで形成されたメタル層18の間に、Niを含む合金で形成されたNiバリア層14を設けたサンプルの断面図である。図3右の図は、このサンプルを、270℃で1000時間熱処理した後の断面図である。図3右の図から、熱処理を行うと半導体基板12とNiバリア層14が反応し、二層の間にNi拡散層22が形成されることが分かる。しかし、図2右の図のCoバリア層16とは異なり、Niバリア層14には空隙が形成されていない。つまり、Niバリア層14中のNiが半導体基板12側に拡散した場合、Niバリア層の空隙化は起こらず、Cuの拡散経路は増加しない。その結果、Niバリア層14の拡散バリア性は低下しない。
【0013】
図4は、熱処理後のNi合金膜を備えるサンプルの断面図である。ここでは、GaAsで形成された半導体基板12と、Cuで形成されたメタル層18の間に、Ni-Pで形成されたバリア層24を設けたサンプルを、270℃で3時間熱処理した後の状態を示している。この際、バリア層24と半導体基板12の界面に、Ni-Ga-As膜26が生じていることが分かる。
【0014】
図5は、熱処理後のCo合金膜を備えるサンプルの断面図である。ここでは、GaAsで形成された半導体基板12と、Cuで形成されたメタル層18の間に、Co-W-Pで形成されたバリア層28を設けたサンプルを、270℃で3時間熱処理した後の状態を示している。この際、バリア層28と半導体基板12の界面に明確な反応層は生じていないことが分かる。図4図5の比較により、NiがCoより半導体基板との反応性が高い、すなわち密着性が良いことが分かる。
【0015】
半導体装置10では、半導体基板12の上にNiバリア層14を形成し、更にその上にCoバリア層16を形成している。この半導体装置10を熱処理した場合、半導体基板12と接しているNiバリア層14は、空隙を形成しない。また、Coバリア層16も、半導体基板12と接していないため、空隙を形成しない。Coバリア層が劣化せず、Niバリア層自体もCu拡散バリア効果を持つことから、メタル層の材料を半導体基板へ拡散させない半導体装置の提供が可能となる。また、半導体基板12との界面がNiバリア層14であることから、電極の密着性が良くなる効果も期待できる。
【0016】
図6は、Si基板上に積層したNi合金膜とCo合金膜を、使用環境で維持する前後の断面図である。図6左の図では、Siで形成された半導体基板40の上に、Ni-Pで形成されたバリア層24が形成されている。バリア層24の上には、Co-Pで形成されたCo合金層42が形成されている。Co合金層42の上には、Cuで形成されたメタル層18が形成されている。なお、バリア層24及びCo合金層42は、例えば無電解めっきにより形成される。
【0017】
図6右の図は、図6左の図のサンプルを使用環境で維持した後の状態を示す。このとき、バリア層24及びCo合金層42は、界面で相互拡散し、Ni-Co-Pで形成された拡散層44を形成する。すなわち、拡散バリア効果の高いCo合金層42が減少するため、Cuのバリア性が低下する。
【0018】
なお、ここで言う使用環境は、例えば100~200℃程度の環境である。トランジスタエレメントを有する半導体チップは、信号増幅を行い、信号に比例した電流を微小領域に流す。その結果、動作時に100~200℃程度まで温度が上昇する。さらに、こうした半導体チップは、一般的に10E5~10E7時間程度のライフを要求される。そのため、構成するバリア層24等も、この環境下で劣化しにくい特性が求められる。
【0019】
図7は、GaAs基板上に積層したNi合金膜とCo合金膜の、熱処理前後の断面図である。図7左の図では、GaAsで形成された半導体基板12の上に、Ni-Pで形成されたバリア層24が形成されている。バリア層24の上には、Co-Pで形成されたCo合金層42が形成されている。Co合金層42の上には、Cuで形成されたメタル層18が形成されている。なお、バリア層24及びCo合金層42は、例えば無電解めっきにより形成される。
【0020】
図7右の図は、図7左の図のサンプルを熱処理した後の状態を示す。このとき、バリア層24のNiが、半導体基板12側に拡散し、Ni-Ga-As膜26が形成される。
【0021】
Ni-Ga-As膜26の形成により、Niが減少するため、バリア層24のP濃度が上昇する。めっきで形成されたバリア層24は非晶質であるが、Ni濃度が80at%以下である場合、この組成変化に伴い結晶性の膜に変化する。より具体的には、Ni12、Ni及びNiP等が結晶化し、より安定な状態となる。その結果、バリア層24とCo合金層42の相互拡散が抑制される。すなわち、拡散バリア効果の高いCo合金層42が減少しないため、Cuのバリア性が維持される。
【0022】
バリア層24は、例えばP濃度2at%から16at%で成膜される。この場合、熱処理後のバリア層24のP濃度は、20at%から40at%に増加する。
【0023】
なお、この熱処理は、例えばエージング処理である。半導体チップの製造過程では、トランジスタ特性または形成した電極などの密着性を安定させるため、100℃以上で数分~数時間程度のエージング処理を行うことがある。半導体基板がGaAsで形成される場合、エージング処理のような比較的短期間の処理によっても、Cuのバリア性を維持できる。
【0024】
以上の通り、半導体基板がGaAsで形成される場合、その上にNi合金膜及びCo合金膜を積層することで、Cuのバリア性を維持できる。すなわち、半導体装置10の構成により、メタル層の材料を半導体基板へ拡散させない半導体装置を提供できる。
【0025】
これ以降、GaAs半導体デバイスのグランドとなる裏面電極に、Cu電極を用いる場合を例として、半導体装置10の製造方法を説明する。このデバイスは、例えば、マイクロ波モノリシックIC等に使用される。
【0026】
製造方法の説明に先立ち、比較対象としてビア構造へ膜形成した際の既存の問題点を述べる。図8は、ビア構造上にPVD法でCu拡散バリア膜を形成した場合の断面図である。ビア構造は、半導体基板の表面と裏面を、電気接続するための貫通電極構造である。このビア構造に、拡散バリア膜を成膜する方法として、PVD法が知られている。PVD法は、そのメカニズムの都合上、平面部と、平面部に対して垂直な垂直部への成膜量が異なる。具体的には、垂直部への成膜量が、平面部への成膜量の1/10程度まで薄くなる。つまり、ビア構造上にPVD法で成膜したバリア層30は、膜が一部薄くなり、そこからCuが半導体基板に拡散するリスクが増加する。
【0027】
そこで、ビア構造に対して十分な被覆を確保するため、PVD法の代わりに無電解めっき法で拡散バリア膜を形成する技術がある。図9は、ビア構造上にめっき法でCu拡散バリア層を形成した場合の断面図である。無電解めっき法でNiバリア層14及びCoバリア層16を成膜することにより、平面部から垂直部まで均一な厚さの層を形成できるため、Cuの拡散リスクが低下する。そこで、本実施形態では、このめっき法を用いた製造方法を述べる。
【0028】
まず、GaAs単結晶の半導体基板12の、片側を表面として電気回路を形成する。図10は、図9に示す構造を作製するための、表面側エレメントの作成工程を示す断面図である。図示していないが、この電気回路形成のためのウエハプロセスとして、エピタキシャル成長、金属膜形成、絶縁膜形成、転写パターニング等を繰り返す。この表面の回路形成時に、貫通電極部の対向電極32を形成する。なお、GaAs単結晶の半導体基板12は、直径4インチから8インチの円盤状かつ0.5ミリから0.6ミリ厚の状態で、ウエハプロセスを行う。
【0029】
続いて、支持基板貼り付けを行う。図11は、図9に示す構造を作製するための、支持基板貼り付け工程を示す断面図である。ここでは、基板表面のウエハプロセスが完了した後で、基板の表面側を支持基板36にワックス材34で貼り付ける。なお、ワックス材34の代わりに、テープ材を用いても良い。また、ワックス材34の厚さは、例えば20ミクロンとする。
【0030】
続けて、基板を薄板化する。図12は、図9に示す構造を作製するための、基板薄板化の工程を示す断面図である。ここでは、半導体基板12を支持基板36に貼り付けた状態で、研削及びポリッシュを行い、半導体基板12の厚さを薄くする。薄板化された半導体基板12の厚さは、例えば100ミクロンとする。このように、半導体基板12を薄板化することで、デバイスの放熱性や高周波特性が向上する。
【0031】
続けて、ビア加工を行う。図13は、図9に示す構造を作製するための、ビア加工工程を示す断面図である。ここでは、半導体基板12を貫通する電極を形成するため、まずレジスト材をスピンコーターでウエハに塗布する。次に、転写・現像パターニングにより、レジストを加工部のみ除去する。続けて、ICPドライエッチングによる基板エッチング加工で、ビア38を形成する。ドライエッチングの代わりに、硫酸と過酸化水素水の混合液等を用いたウェットエッチングを用いても良い。続けて、剥離液に浸漬してレジストを除去することで、裏面が露出した半導体基板12を得る。なお、ビアは小さい方がレイアウトの自由度が高く有利だが、小さすぎるとエッチングが進行せず基板を貫通できない。そのため、ビアは、例えば円柱形状かつ直径50ミクロンで形成する。
【0032】
次に、無電解めっき法によりNi合金膜を形成する。図14は、図9に示す構造を作製するための、Ni合金膜の形成工程を示す断面図である。まず、前処理として、親水化処理とアクチベータ処理を行う。例えば、ウエハに酸素プラズマ処理やオゾン処理を実施し、半導体基板12及び対向電極32のビア内表面を親水性に改質する。続けて、Pdイオンを含む無電解めっき反応の活性液に浸漬すると、ガルバニック腐食の効果により、半導体基板12表面が溶解し、Pdが析出する。
【0033】
例えば、Pdイオン濃度は10ppmから100ppm、液温は0℃から50℃、浸漬時間は1分から5分とする。Pd析出量は、少なすぎると続けて成膜するNiめっき膜が形成されず、多すぎると膜同士の密着性が悪化する。しかし、Pd析出のしやすさは半導体の種類によって異なるため、基板の種類に応じて、上記の範囲程度で調整を行う必要がある。
【0034】
前処理完了後、次亜リン酸を主成分とする無電解Niめっき液に浸漬する。例えば、液温を70℃から90℃として処理する。液の循環、ろ過、及び揺動を合わせて行うことで、めっき反応を安定化させられるため、めっき膜を平滑に成膜することができる。その結果、Pdの触媒作用によりNiイオンがNiとなって析出し、同時に液成分のPが共析するため、Ni-Pの合金膜が形成される。ここでは、触媒金属としてPdを例としたが、Au、Ag、Pt、Ni、Sn、Ru等、無電解めっき析出に対して触媒活性のある金属であれば、同様にNi合金膜を得ることができる。
【0035】
なお、ここではめっき法によりNi合金膜を形成しているが、PVD法や蒸着法等それ以外の手段で形成しても良い。その場合、前処理としてPd等の触媒活性のある金属を析出させる工程は不要となる。
【0036】
次に、無電解めっき法によりCo合金膜を形成する。図15は、図9に示す構造を作製するための、Co合金膜の形成工程を示す断面図である。ここでは、ウエハを無電解Niめっき液から取り出して水洗した後、濡れたままの状態で無電解Coめっき液に浸漬する。これにより、Niバリア層14に連続して、Coバリア層16を形成する。例えば次亜リン酸を主成分とする無電解Coめっき液を用いて、液温70℃から90℃で処理する。液の循環、ろ過、及び揺動を合わせて行うことで、めっき反応を安定化させられるため、めっき膜を平滑に成膜することができる。
【0037】
なお、Niバリア層14形成後にスピン乾燥プロセスを経て表面が乾燥した場合は、表面親水性が失われているため、めっき液浸漬前に親水化処理を実施する。また、Co析出反応が始動しにくい場合は、無電解Coめっき前にアクチベータ処理を追加することで、安定化させることができる。
【0038】
続けて、電気めっき法によりCuめっきを行う。図16は、図9に示す構造を作製するための、Cu膜の形成工程を示す断面図である。硫酸Cuめっき液にウエハとCu板を浸漬し、ウエハの外周をカソード、Cu板をアノードとして通電させることで、供給した電気量に比例したメタル層18を形成できる。液温は、例えば30℃とする。また、添加剤の調整によってビア38内に選択的に膜成長をさせることで、内部をCuで充填したビア38を製造することもできる。これにより、半導体装置の放熱性や電気特性を向上させることができる。
【0039】
なお、Cuめっき形成の際、電気めっき法の代わりに無電解めっき法を用いても良い。無電解めっき法の場合も、添加剤の調整によって、Cu充填したビア38を製造することができる。また、Cuめっきの表面酸化を防止するため、後処理に無電解めっき法行っても良いし、電気めっき法でNiめっき、Pdめっき、Auめっきを順次行っても良い。これにより、ダイボンドやワイヤボンドの密着性を向上させられる。
【0040】
膜厚は、例えばNiバリア層14を0.5ミクロン、Coバリア層16を0.5ミクロン、メタル層18を3ミクロンとしても良い。無電解Niめっき及び無電解Coめっきは、めっき反応開始が面内でばらつくことがあり、膜厚が薄い場合膜に形成不良が発生するため、最低でも0.2ミクロンの膜厚で成膜する。また、Niバリア層14とCoバリア層16は、合計膜厚が2ミクロンを超えると残留応力により界面が剥離するため、合計膜厚が2ミクロンより薄くなるよう成膜する。メタル層18の膜厚は、ビア内に流れる最大電流に合わせて設計する必要がある。
【0041】
最後に、支持基板36を除去する。まず、支持基板36と半導体装置を、ホットプレートによって100℃で1分以上加熱し、ワックス材34を溶解する。そして、相互を基板面に対して平行にスライドさせ、支持基板36を除去する。その後、50℃に加熱したアセトンに10分浸漬し、表面のワックス材34を除去する。この際、温度や浸漬時間が長いほど、除去性が高くなる。
【0042】
本実施形態の半導体基板12はGaAsで形成されているが、金属膜形成後の熱履歴等による相互作用は単結晶の半導体基板で類似しているため、他の半導体材料で形成されていても良い。他の材料とは例えばInP、GaN、SiC、SiGe等の化合物半導体やSiである。これは、以下の実施の形態に係る半導体装置と半導体装置の製造方法にも応用できる。また、本開示は、ICデバイス等の裏面電極に用途を限定するものではなく、半導体基板上に金属成膜を行う技術全般に対して有効である。以下の実施の形態に係る半導体装置とその製造方法については、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0043】
実施の形態2
図17は、本開示の実施の形態2に係る半導体装置の断面図である。半導体装置50は、Niバリア層14とCoバリア層16の間に、Pdを備える拡散防止層52を形成する点が、実施の形態1と異なる。Co合金とNi合金を連続成長する際、使用環境によってはNiとCoが相互拡散してバリア性が低下する場合がある。そのため、拡散防止層52を間に形成し、相互拡散を防止する。
【0044】
Pdを備える拡散防止層52は、例えば無電解めっき法で形成する。無電解Niめっき液からウエハを取り出して水洗した後、濡れたままの状態で無電解Pdめっき液に浸漬することで、Pdめっき膜を形成する。
【0045】
拡散防止層52の膜厚は、例えば0.01ミクロンとする。0.1ミクロンより厚い場合は、Niバリア層14との境界で剥離するため、0.1ミクロン以下に設計する。また、0.01ミクロン未満では析出が安定しないため、0.01ミクロン以上に設計する。
【0046】
拡散防止層52はPdで形成されているが、相互拡散を防止できれば他の材料を用いても良い。例えば、Au、Ag、Pt、Sn、Ru等、無電解めっき析出に対して触媒活性がある金属を用いても良い。
【0047】
実施の形態3
図18は、本開示の実施の形態3に係る半導体装置の断面図である。半導体装置100は、半導体基板12の上にPdを析出させて析出層102を形成する点と、Ni合金膜及びCo合金膜を無電解めっき法で形成する点が、実施の形態1と異なる。すなわち、半導体装置100は、析出層102の上に、Niめっきバリア層104を形成する。さらに、Niめっきバリア層104の上に、Coめっきバリア層106を形成する。無電解めっき法を用いることで、ビア構造のような凹凸形状に対しても、均一なバリア層を形成することができる。
【0048】
ここで、析出層102は、Niめっきバリア層104を形成する際に必須の工程である。析出層102はPdで形成されているが、触媒活性のある金属であれば他の材料を用いても良い。なお本実施形態は、図10から図16で示した方法で製造することができる。
【0049】
実施の形態4
図19は、本開示の実施の形態4に係る半導体装置の断面図である。半導体装置150は、半導体装置100の構成に追加で、Pdを備える拡散防止層52を形成する。拡散防止層52は、NiとCoの相互拡散を防止するため、Niめっきバリア層104とCoめっきバリア層106の間に形成する。拡散防止層52は、相互拡散を防止できればPd以外の材料を用いても良い。例えばAu、Ag、Pt、Sn、Ru等、無電解めっき析出に対して触媒活性がある金属を用いても良い。
【0050】
実施の形態5
本実施形態5の説明に先立ち、比較対象として既存の問題であるピンホール形成時の製造過程を説明する。図20は、Niめっき膜のピンホールを示す断面図である。異物や汚れ等によって形成不良が起こると、Niめっきバリア層104の形成時に、図20のようにピンホール204が形成されることがある。この状態でCoめっきバリア層106を続けて成膜すると、膜成長の核がないため、ピンホール部分には膜を形成できない。その結果、メタル層18の形成時も、ピンホールが修復されないまま残ってしまう。本実施形態は、上述の課題を解決する。
【0051】
図21は、本開示の実施の形態5に係る半導体装置の断面図である。半導体装置200は、半導体装置100の構成に追加で、Pdを備える拡散防止層202を、蒸着またはスパッタ法により形成する。拡散防止層202は、NiとCoの相互拡散を防止するため、Niめっきバリア層104とCoめっきバリア層106の間に形成する。拡散防止層202は、相互拡散を防止できればPd以外の材料を用いても良い。例えば、Au、Ag、Pt、Sn、Ru等、無電解めっきの析出に対して触媒活性がある金属を用いても良い。
【0052】
図22は、本開示の実施の形態5に係る、Niめっき膜のピンホール修復効果を示す断面図である。ここでは、ピンホール204が形成されているNiめっきバリア層104に続けて、拡散防止層202を蒸着またはスパッタ法で形成している。蒸着及びスパッタ法はめっき法と異なり、下地膜に依存せずに膜を形成するため、拡散防止層202がピンホール204上にも形成される。これに続けてCoめっきバリア層106を成膜すると、膜成長の核があるため、ピンホール部分にも膜を形成できる。その結果、メタル層18にピンホールは残らず、バリア層に形成され得たピンホールも修復される。すなわち、バリア層のバリア性低下も防ぐことができる。
【符号の説明】
【0053】
10、50、100、150、200 半導体装置
12、40 半導体基板
18 メタル層
24、28、30 バリア層
52、202 拡散防止層
102 析出層
104、106 バリア層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22