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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】ギヤ及びステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/06 20060101AFI20250408BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
F16H55/06
B62D5/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023563440
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2021043359
(87)【国際公開番号】W WO2023095279
(87)【国際公開日】2023-06-01
【審査請求日】2024-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】菊地 新
(72)【発明者】
【氏名】奥村 幸司
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-61004(JP,A)
【文献】特開2001-304379(JP,A)
【文献】特開2001-336611(JP,A)
【文献】特開2003-139219(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102012102775(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/06
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状に形成された樹脂製のスリーブと、
前記スリーブの外周部を覆うようにインサート成形した、周方向に均等な間隔で並ぶ複数のギヤ歯を有する樹脂製の歯部と、を備え、
前記スリーブは、
周方向に均等な間隔で外周面に並ぶ複数の凸部と、
前記凸部よりも径方向内側の位置で、周方向に均等な間隔で並ぶ複数のリブ部とを備え、
前記凸部における周方向での第一設置箇所数と、前記リブ部における周方向での第二設置箇所数とは、同数であり、かつ前記ギヤ歯における周方向での第三設置箇所数の整数倍である
ギヤ。
【請求項2】
前記第一設置箇所数と、前記第二設置箇所数とは、前記第三設置箇所数と一致している
請求項1に記載のギヤ。
【請求項3】
前記複数の凸部において周方向の間に存在する凹部の周方向での中心線は、前記リブ部において周方向の幅内に収められている
請求項1または2に記載のギヤ。
【請求項4】
前記凹部の周方向での中心線は、前記リブ部の周方向での中心線に一致している
請求項3に記載のギヤ。
【請求項5】
前記複数のリブ部は、前記スリーブの一方の主面に設けられた複数の第一リブ部と、前記スリーブの他方の主面に設けられた複数の第二リブ部とを含み、
前記複数の第一リブの周方向の間に存在する第一穴部と、前記複数の第二リブの周方向の間に存在する第二穴部との軸方向の間の位置に、前記ギヤ歯の軸方向における中心線が配置されている
請求項1~4のいずれか一項に記載のギヤ。
【請求項6】
前記第一穴部と、前記第二穴部との軸方向の間の中心線と、前記ギヤ歯の軸方向における中心線とが一致している
請求項5に記載のギヤ。
【請求項7】
操舵部材の操舵に基づいて駆動される電動モータと、
請求項1~6のいずれか一項に記載のギヤを含み、前記電動モータの出力回転を前記ギヤによって減速して操舵機構に伝達する減速機とを備えるステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤ及びステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のステアリング装置に備わる減速機においては、ウォームと、ウォームと噛み合うウォームホイールとしてのギヤとを有したものが知られている。このようなギヤにおいては、円盤状の樹脂製のスリーブと、そのスリーブの外周部を全周にわたって覆い、複数のギヤ歯を有する樹脂製の歯部とが一体成形されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-82860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ギヤを製造する際には、強化樹脂材料からなるスリーブを先に成形し、その後、当該スリーブをインサートした状態で、非強化樹脂材料で歯部を成形する。このとき、ギヤ歯の精度を高めるために、金型内の保圧を高くする必要がある。しかしながら、保圧を高くしようとすると、溶融樹脂によってスリーブが加熱されてしまい、スリーブの剛性が低下し、熱収縮でスリーブの一部に微小変形が生じる場合がある。この変形は、結果的にギヤの精度(噛合振れ)を低下させてしまう。
【0005】
本発明の目的は、ギヤの精度の低下を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るギヤは、円盤状に形成された樹脂製のスリーブと、前記スリーブの外周部を覆い、周方向に均等な間隔で並ぶ複数のギヤ歯を有する樹脂製の歯部と、を備え、前記スリーブは、周方向に均等な間隔で外周面に並ぶ複数の凸部と、前記凸部よりも径方向内側の位置で、周方向に均等な間隔で並ぶ複数のリブ部とを備え、前記凸部における周方向での第一設置箇所数と、前記リブ部における周方向での第二設置箇所数とは、同数であり、かつ前記ギヤ歯における周方向での第三設置箇所数の整数倍である。
【0007】
また、本発明の一態様に係るステアリング装置は、操舵部材の操舵に基づいて駆動される電動モータと、上記ギヤを含み、前記電動モータの出力回転を前記ギヤによって減速して操舵機構に伝達する減速機とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ギヤの精度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係るステアリング装置の概略図である。
図2】実施の形態に係るギヤを正面側から見た斜視図である。
図3】実施の形態に係るギヤの正面側の平面図である。
図4】実施の形態に係るギヤの背面側の平面図である。
図5】実施の形態に係るスリーブの一部を正面側から見た部分正面図である。
図6】実施の形態に係る歯部及びスリーブの一部をX軸方向から見た部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
図面は、本発明を示すために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0012】
また、以下の説明及び図面中において、ギヤの軸方向をY軸方向と定義する。X軸方向はY軸方向に直交する方向であり、Z軸方向はY軸方向及びX軸方向の双方に直交する方向である。また、以下の説明において、例えば、X軸プラス方向とは、X軸の矢印方向側を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対側を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。さらに、平行、直交及び一致などの、相対的な方向、姿勢または位置を示す表現は、厳密には、その方向、姿勢または位置ではない場合も含む。例えば、2つの直線が一致している、とは、当該2つの直線が完全に一致していることを意味するだけでなく、実質的に一致していること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。
【0013】
[ステアリング装置]
図1は、実施の形態に係るステアリング装置1の概略図である。図1に示すように、ステアリング装置1は、電動式パワーステアリング装置であって、操舵機構6及び転舵機構4を含み、運転者のステアリングホイール2(操舵部材)の操舵(ステアリング操作)に基づき、転舵輪3を転舵させる。操舵機構6は、運転者のステアリング操作を補助するアシスト機構5を備えている。
【0014】
操舵機構6は、入力シャフト8、出力シャフト9、インターミディエイトシャフト7及びピニオンシャフト15を有している。入力シャフト8は、ステアリングホイール2に連結されている。出力シャフト9は、トーションバー10を介して入力シャフト8に連結されている。インターミディエイトシャフト7は、自在継手を介して、ピニオン15aを有するピニオンシャフト15に連結されている。
【0015】
転舵機構4は、ラックシャフト16及びタイロッド17を有している。ラックシャフト16は、ピニオン15aに噛み合ったラック16aを有している。タイロッド17は、一端がラックシャフト16に連結されて、他端が転舵輪3に連結されている。
【0016】
運転者のステアリングホイール2の操作に応じて、ステアリングホイール2が回転すると、入力シャフト8、出力シャフト9及びインターミディエイトシャフト7を介して、ピニオンシャフト15が回転する。ピニオンシャフト15の回転は、転舵機構4により、ラックシャフト16の軸方向の往復運動に変換される。ラックシャフト16の軸方向の往復運動により、転舵輪3の転舵角が変化する。
【0017】
アシスト機構5は、トルクセンサ11と、ECU(Electronic Control Unit)12、電動モータ19及び減速機20を含む。減速機20は、ウォーム21と、ウォーム21と噛み合うウォームホイールとして構成されたギヤ22と、ウォーム21及びギヤ22を収容するハウジング23とを含む。ウォーム21は、電動モータ19の回転軸(図示せず)に連結されている。ギヤ22は、出力シャフト9に一体回転可能に連結されている。
【0018】
運転者の操舵に伴ってステアリングホイール2が回転すると、トルクセンサ11は、入力シャフト8と出力シャフト9との間の捩れ量を検出する。ECU12は、トルクセンサ11により検出された捩れ量から得られる操舵トルクTや、車速センサ13によって検出された車速V等に基づいてアシストトルクを決定する。電動モータ19は、ECU12により駆動制御される。このようにステアリングホイール2の操舵に基づいて駆動された電動モータ19は、ウォーム21に出力回転を伝達してウォーム21を回転させる。すると、ウォーム21と噛み合ったギヤ22がウォーム21よりも低速で回転し、ギヤ22及び出力シャフト9が一体回転する。このように、減速機20は、電動モータ19の出力回転をギヤ22によって減速し、アシストトルクとして操舵機構6の出力シャフト9に伝達する。これにより、運転者によるステアリングホイール2のステアリング操作が補助される。
【0019】
[ギヤ]
次にギヤ22について詳細に説明する。図2は実施の形態に係るギヤ22を正面側から見た斜視図である。図3は実施の形態に係るギヤ22の正面側の平面図である。図4は実施の形態に係るギヤ22の背面側の平面図である。図3及び図4では、ギヤ22に備わるスリーブ26の外形線は破線で示している。
【0020】
図2図4に示すように、ギヤ22は、円盤状に形成されている。上述したように、Y軸方向がギヤ22の軸方向であり、ギヤ22の厚さ方向とも言える。ギヤ22の中心軸Cは、ギヤ22の円中心を通ってY軸方向に延びている。Y軸マイナス方向をギヤ22の正面側とし、Y軸プラス方向をギヤ22の背面側とする。
【0021】
ギヤ22は、円中心にY軸方向に沿って貫通した円形状の貫通孔221を有している。この貫通孔221に出力シャフト9が圧入されることによって、ギヤ22は、出力シャフト9に一体回転自在に連結される。ギヤ22の外周面の全域には、ウォーム21と噛み合う複数のギヤ歯31が、ギヤ22の周方向に等間隔で並んで形成されている。ここで、周方向において各ギヤ歯31の設置箇所を第三設置箇所と称す。第三設置箇所は、周方向において均等な間隔で並んでいる。本実施の形態では、第三設置箇所の総数(第三設置箇所数N)が41個である場合を例示している。各第三設置箇所においては、1つのギヤ歯31があればよい。しかし、一つの第三設置箇所には、軸方向(Y軸方向)で2つ以上のギヤ歯31が並んでいてもよい。
【0022】
隣り合うギヤ歯31の隙間は、ギヤ22の外周部をY軸方向に切り欠く溝状に形成されている。ギヤ歯31がウォーム21と噛み合った状態でウォーム21が回転すると、ギヤ22が周方向に回転する。
【0023】
ギヤ22は、カラー24と、歯部25と、スリーブ26とを有している。カラー24は、中心軸Cと一致した中心軸を有する円筒状の金属部材である。ギヤ22の貫通孔221は、カラー24の内周面によって区画されている。歯部25は、複数のギヤ歯31を構成する、例えば非強化樹脂からなる樹脂部材である。歯部25は円環状に形成されており、スリーブ26の外周部262を全周にわたって連続的に覆っている。歯部25の外周面には、複数のギヤ歯31が形成されている。
【0024】
スリーブ26は、カラー24に対して同軸状で外嵌された部材である。スリーブ26は、円盤状に形成されており、全体が樹脂により形成された樹脂部材である。より具体的には、スリーブ26は、例えばガラス繊維が混合された強化樹脂により形成されている。
【0025】
スリーブ26は、径方向における最も内側に位置する内周部261と、径方向における最も外側に位置する外周部262と、内周部261と外周部262との間に配置され、当該内周部261と外周部262とを連結する連結部263とを一体的に備えている。
【0026】
内周部261は、中心軸Cと一致した中心軸を有する円環状に形成されている。内周部261の内周面には、カラー24が嵌合している。外周部262は、円環状に形成され、内周部261と同軸状に配置されている。外周部262の外周面には、径方向外方に向けて突出する複数の凸部264が、外周部262の周方向に等間隔で並んで形成されている。図3及び図4では、複数の凸部264は破線で図示されている。ここで、隣り合う一対の凸部264間を凹部265と称す。このため、凹部265は、外周部262の外周面に複数設けられている。複数の凹部265は、外周部262の周方向に等間隔で並んで配列されている。
【0027】
周方向において各凸部264の設置箇所を第一設置箇所と称す。第一設置箇所は、周方向において均等な間隔で並んでいる。本実施の形態では、第一設置箇所の総数(第一設置箇所数L)が41個である場合を例示している。各第一設置箇所においては、1つの凸部264があればよい。しかし、一つの第一設置箇所には、軸方向(Y軸方向)で2つ以上の凸部264が並んでいてもよい。
【0028】
連結部263は、内周部261と外周部262とを全周にわたって連続的に連結するように、内周部261と外周部262との間に配置された円環状の部位である。連結部263には、複数のリブ部270が周方向に均等な間隔で並んでいる。連結部263は、外周部262よりも径方向内側の部位であるため、複数のリブ部270は、複数の凸部264よりも径方向内側に配置されている。
【0029】
具体的には、図3に示すように、連結部263において正面側の第一主面263aには、複数のリブ部270の一部である複数の第一リブ部271が周方向に均等な間隔で並んでいる。この複数の第一リブ部271の周方向の間は第一穴部281である。つまり、複数の第一リブ部271と複数の第一穴部281は、周方向に交互に並んで配置されている。各第一穴部281は、平面視(Y軸方向視)において同形状であり、径方向に長尺な長穴である。
【0030】
一方、図4に示すように、連結部263において背面側の第二主面263bには、複数のリブ部270の一部である複数の第二リブ部272が周方向に均等な間隔で並んでいる。この複数の第二リブ部272の周方向の間は第二穴部282である。つまり、複数の第二リブ部272と複数の第二穴部282は、周方向に交互に並んで配置されている。第二穴部282と第一穴部281とはスリーブ26を軽量化するための肉抜き穴である。
【0031】
各第二穴部282は、平面視(Y軸方向視)において各第一穴部281と同形状である。また、各第二穴部282は、各第一穴部281に対応する位置に配置されている。このため、各第二リブ部272においても、各第一リブ部271と同形状であり、各第一リブ部271に対応する位置に配置されていると言える。つまり、対応する第一リブ部271と第二リブ部272との設置箇所は同位置となっている。この設置箇所を第二設置箇所と称す。第二設置箇所は、周方向において均等な間隔で並んでいる。各第二設置箇所においては、第一リブ部271と第二リブ部272とが一組あればよい。本実施の形態では、第二設置箇所の総数(第二設置箇所数M)が41個である場合を例示している。つまり、第一設置箇所数Lと、第二設置箇所数Mと、第三設置箇所数Nとが一致している。
【0032】
製造時においては、先に成形されたスリーブ26が金型内に配置された状態で、歯部25となる溶融樹脂が金型内に充填される。このとき、溶融樹脂からの熱と金型内の保圧とにより、スリーブ26の剛性が低下し微小変形する部位が生じうる。ここで、第一設置箇所数Lと、第二設置箇所数Mとが一致していることと、金型内では一定の保圧が付与されていることから、各凸部264と各リブ部270とにおいては微小変形する箇所を周方向で同期した位置に発生させることができる。さらに、歯部25においても各ギヤ歯31の第三設置箇所数Nが、第一設置箇所数L及び第二設置箇所数Mに一致しているために、スリーブ26の微小変形した各箇所と、各ギヤ歯31とが周方向に同期した位置となる。このため、スリーブ26の微小変形した各箇所を起因として、各ギヤ歯31にも微小な変形が生じたとしても、各ギヤ歯31の変形箇所も概ね同位置に発生することとなる。各ギヤ歯31において異なる箇所が変形していると、噛み合い周期と異なる変動を発生させたり、回転周期にうねりを発生させたりしてしまうが、本態様のように、各ギヤ歯31の変形箇所が概ね同位置であれば、これらの不具合を抑制できる。
【0033】
次に、スリーブ26における各凹部265と、各リブ部270(各第一リブ部271及び各第二リブ部272)との位置関係について説明する。前述したように、各第一リブ部271と、各第二リブ部272とは同形状であり、互いに対応する位置に配置されているため、第一リブ部271を例示して説明し、第二リブ部272については省略する。また、一つの凹部265と、一つの第一リブ部271との位置関係を例示して説明するが、他の凹部265と、他の第一リブ部271との位置関係においても同様である。
【0034】
図5は、実施の形態に係るスリーブ26の一部を正面側から見た部分正面図である。図5に示すように、凹部265の周方向における中心線C1(一点鎖線で図示)は、第一リブ部271の周方向での中心線C2(二点鎖線で図示)に一致している。具体的には、中心線C1は、凹部265の周方向の幅H1の二等分線であり、中心軸Cを通過する直線である。同様に、中心線C2は、第一リブ部271の周方向の幅H2の二等分線であり、中心軸Cを通過する直線である。これにより、各第一リブ部271における径方向の剛性を極力均一化することが可能である。これは、各第二リブ部272においても同様である。
【0035】
また、第一リブ部271の周方向の幅H2は、凹部265の周方向の幅H1よりも大きくすることが好ましい。この場合、第一リブ部271の周方向における剛性を高めることが可能である。これは、各第二リブ部272においても同様である。
【0036】
次に、歯部25とスリーブ26との位置関係について説明する。図6は、実施の形態に係る歯部25及びスリーブ26の一部をX軸方向から見た部分断面図である。図6では、一組の第一穴部281及び第二穴部282と、当該組に対応する1つのギヤ歯31との位置関係を図示しているが、他の組の第一穴部281及び第二穴部282と、その他の組に対応する他のギヤ歯31との位置関係についても同様である。図6に示すように、組となる第一穴部281と、第二穴部282との軸方向(Y軸方向)の間の中心線C3(二点鎖線で図示)は、ギヤ歯31の軸方向における中心線C4(一点鎖線で図示)に対して一致している。具体的には、中心線C3は、第一穴部281の底部と、第二穴部282の底部との間におけるY軸方向の長さH3の二等分線であり、Z軸方向に平行な直線である。同様に、中心線C4は、ギヤ歯31のY軸方向の長さH4の二等分線であり、Z軸方向に平行な直線である。これにより、第一リブ部271及び第二リブ部272の軸方向の傾倒を極力抑制することが可能である。
【0037】
[効果等]
以上のように、本実施の形態に係るギヤによれば、第一設置箇所数Lと、第二設置箇所数Mと、第三設置箇所数Nとが一致しているので、製造時にスリーブ26の微小変形した各箇所と、各ギヤ歯31とが周方向に同期した位置となる。このため、スリーブ26の微小変形した各箇所を起因として各ギヤ歯31にも微小な変形が生じたとしても、各ギヤ歯31の変形箇所も概ね同位置に発生させることができる。これにより、噛み合い周期と異なる変動や、回転周期に対するうねりを抑制することができ、結果的にギヤ22の精度の低下を抑制することができる。
【0038】
凹部265の周方向での中心線C1は、リブ部270(第一リブ部271、第二リブ部272)の周方向での中心線C2に一致しているので、各リブ部270における径方向の剛性を極力均一化することが可能である。これにより、スリーブ26において微小変形する箇所を少なくすることができる。したがって、ギヤ22の精度の低下をより抑制することが可能である。
【0039】
第一穴部281と第二穴部282との軸方向の間の中心線C3と、ギヤ歯31の軸方向の中心線C4とが一致しているので、第一リブ部271及び第二リブ部272の軸方向の傾倒を極力抑制することが可能である。これにより、回転周期に対するうねりを抑えることができ、ギヤ22の精度の低下をより抑制することが可能である。
【0040】
ステアリング装置1に用いられるギヤ22においては、上記したように精度の低下が抑制されているので、ステアリング装置1の動作を安定させることが可能である。
【0041】
[その他]
以上、本発明に係るギヤ及びステアリング装置について、上記実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。
【0042】
例えば、上記実施の形態では、第一設置箇所数Lと、第二設置箇所数Mとは、第三設置箇所数Nと一致している場合を例示した。しかしながら、第一設置箇所数Lと、第二設置箇所数Mとは、同数であり、かつ第三設置箇所数Nの整数倍であればよい。例えば、第一設置箇所数Lと、第二設置箇所数Mとのそれぞれが、第三設置箇所数NのQ倍(QはNの整数)以上であったとしても、スリーブ26の微小変形した各箇所を起因とした各ギヤ歯31の変形箇所をある程度近似した位置に発生させることができる。つまり、この場合においても、ギヤの精度の低下を抑制することができる。
【0043】
上記実施の形態では、凹部265の中心線C1が、リブ部270の中心線C2に一致している場合を例示した。しかしながら、凹部265の中心線C1は、リブ部270において周方向の幅内に収められていればよい。この場合においても、各リブ部270における径方向の剛性をある程度均一化することが可能である。
【0044】
上記実施の形態では、第一穴部281と第二穴部282との軸方向の間の中心線C3と、ギヤ歯31の中心線C4とが一致している場合を例示した。しかしながら、ギヤ歯31の中心線C4は、第一穴部281と第二穴部282との軸方向の間の位置に配置されていればよい。この場合においても、第一リブ部271及び第二リブ部272の軸方向の傾倒をある程度抑制することが可能である。
【0045】
また、上記実施の形態では、組となる第一穴部281と第二穴部282とがそれぞれ有底状である場合を例示した。しかしながら、組となる第一穴部281と第二穴部282とは互いの底部が軸方向に貫通していてもよい。これによりギヤ22をより軽量化することが可能である。
【0046】
また、上記実施の形態では、連結部263の第一主面263aに複数の第一リブ部271が設けられ、第二主面263bに複数の第二リブ部272が設けられている場合を例示した。しかしながら、連結部においては第一主面及び第二主面の一方のみに、複数のリブ部が設けられていてもよい。
【0047】
また、上記実施の形態では、ギヤ22を出力シャフト9に一体回転可能に連結するために、ギヤ22のカラー24の貫通孔221に出力シャフト9を圧入する場合を例示した。しかしながら、カラーの内周面と出力シャフトの外周面とにセレーションを設けて、カラーと出力シャフトとをセレーション嵌合してもよい。また、ギヤでは、カラーが省略されてもよい。この場合、スリーブが出力シャフトに直接連結される。
【0048】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で実施の形態及び変形例における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、減速機に用いられるギヤに対して適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1…ステアリング装置 2…ステアリングホイール 3…転舵輪 4…転舵機構 5…アシスト機構 6…操舵機構 7…インターミディエイトシャフト 8…入力シャフト 9…出力シャフト 10…トーションバー 11…トルクセンサ 12…ECU 13…車速センサ 15…ピニオンシャフト 15a…ピニオン 16…ラックシャフト 16a…ラック 17…タイロッド 19…電動モータ 20…減速機 21…ウォーム 22…ギヤ 23…ハウジング 24…カラー 25…歯部 26…スリーブ 31…ギヤ歯 221…貫通孔 261…内周部 262…外周部 263…連結部 263a…第一主面 263b…第二主面 264…凸部 265…凹部 270…リブ部 271…第一リブ部 272…第二リブ部 281…第一穴部 282…第二穴部 C…中心軸 C1、C2、C3、C4…中心線 H1、H2…幅 H3、H4…長さ T…操舵トルク V…車速
図1
図2
図3
図4
図5
図6