(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】サービス管理装置、サービス管理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0207 20230101AFI20250408BHJP
【FI】
G06Q30/0207 350
G06Q30/0207
(21)【出願番号】P 2023570520
(86)(22)【出願日】2021-12-27
(86)【国際出願番号】 JP2021048597
(87)【国際公開番号】W WO2023127030
(87)【国際公開日】2023-07-06
【審査請求日】2024-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】井上 智紀
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-106403(JP,A)
【文献】特開2002-366672(JP,A)
【文献】特開2021-111847(JP,A)
【文献】特開2021-051585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の事業主体のそれぞれが提供するサービスの利用履歴と、提供可能なインセンティブサービスとを紐づけるルールを記憶する記憶手段と、
利用者の、前記複数の事業主体それぞれの前記サービスの利用履歴を取得すると、前記ルールを用いて、当該利用者に提供可能なインセンティブサービスを特定し、特定した前記インセンティブサービスに関する処理を実行するサービス処理手段と、
を備え
、
前記サービスにトークンが設定されており、
前記サービスのトークンを発行して利用者に割り当て、前記サービスの提供が終了すると前記利用者に発行された前記トークンの割り当てを解除する、トークン処理手段をさらに備え、
前記トークン処理手段は、前記利用者に発行した前記トークンの識別情報と、前記サービスの識別情報と、当該利用者の識別情報と、当該トークンの発行日時とを紐付けてトークン利用履歴情報として記憶装置に記憶し、
前記サービス処理手段は、前記記憶装置に記憶された前記トークン利用履歴情報を用いて、前記利用者別に前記サービスの利用履歴を特定する、サービス管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のサービス管理装置において、
前記記憶装置は、ブロックチェーンネットワーク上の複数のノードであり、
前記トークン処理手段は、前記複数のノードのうち、いずれか1つに前記トークン利用履歴情報を記憶し、
前記サービス処理手段は、前記複数のノードに記憶される前記トークン利用履歴情報を集約し、前記利用者別に前記サービスの利用履歴を特定する、サービス管理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のサービス管理装置において、
前記トークン利用履歴情報は、さらに、交通機関の乗降車駅、購入した物品の商品コード、購入金額、およびサービスを利用した位置情報のうち少なくとも1つを含む、サービス管理装置。
【請求項4】
請求項1
から3のいずれか一項に記載のサービス管理装置において、
前記サービスは、交通機関の利用、物品の購買、及び宿泊施設の利用のうち少なくとも2つを含む、サービス管理装置。
【請求項5】
請求項1
から4のいずれか一項に記載のサービス管理装置において、
前記インセンティブサービスは、前記利用者への所定の価値の付与であり、
前記サービス処理手段は、前記利用者への前記価値の付与を実行する、サービス管理装置。
【請求項6】
請求項
5に記載のサービス管理装置において、
前記所定の価値は仮想通貨で定義されている、サービス管理装置。
【請求項7】
請求項
6に記載のサービス管理装置において、
前記トークンはNFT(Non-Fungible Token)である、サービス管理装置。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか一項に記載のサービス管理装置において、
複数の前記ルールの中から、少なくとも一つのルールを選択する選択手段をさらに備え、
前記サービス処理手段は、選択された前記ルールを用いる、サービス管理装置。
【請求項9】
サービス管理装置が、
複数の事業主体のそれぞれが提供するサービスの利用履歴と、提供可能なインセンティブサービスとを紐づけるルールを記憶手段に記憶し、
利用者の、前記複数の事業主体それぞれの前記サービスの利用履歴を取得すると、前記ルールを用いて、当該利用者に提供可能なインセンティブサービスを特定し、特定した前記インセンティブサービスに関する処理を実行
し、
前記サービスにトークンが設定されており、
前記サービス管理装置が、さらに、
前記サービスのトークンを発行して利用者に割り当て、前記サービスの提供が終了すると前記利用者に発行された前記トークンの割り当てを解除し、
前記利用者に発行した前記トークンの識別情報と、前記サービスの識別情報と、当該利用者の識別情報と、当該トークンの発行日時とを紐付けてトークン利用履歴情報として記憶装置に記憶し、
前記処理を実行する際、前記記憶装置に記憶された前記トークン利用履歴情報を用いて、前記利用者別に前記サービスの利用履歴を特定する、サービス管理方法。
【請求項10】
コンピュータに、
複数の事業主体のそれぞれが提供するサービスの利用履歴と、提供可能なインセンティブサービスとを紐づけるルールを記憶手段に記憶する手順、
利用者の、前記複数の事業主体それぞれの前記サービスの利用履歴を取得すると、前記ルールを用いて、当該利用者に提供可能なインセンティブサービスを特定し、特定した前記インセンティブサービスに関する処理を実行する手順、を実行させ
、
前記サービスにトークンが設定されており、
前記コンピュータに、さらに、
前記サービスのトークンを発行して利用者に割り当て、前記サービスの提供が終了すると前記利用者に発行された前記トークンの割り当てを解除する手順を実行させ、
前記解除する手順において、前記利用者に発行した前記トークンの識別情報と、前記サービスの識別情報と、当該利用者の識別情報と、当該トークンの発行日時とを紐付けてトークン利用履歴情報として記憶装置に記憶し、
前記処理を実行する手順において、前記記憶装置に記憶された前記トークン利用履歴情報を用いて、前記利用者別に前記サービスの利用履歴を特定する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サービス管理装置、サービス管理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
サービスの利用を促進する技術の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1の装置は、所定のサービスにおける利用者の利用履歴であって、所定の集計期間における利用履歴と、少なくとも一部が集計期間と重複する取引期間における利用履歴とを取得する取得部と、利用者に対して提供される特典として、取引期間におけるサービスの利用履歴に基づく特典であって、集計期間における利用履歴に応じて異なる特典を決定する決定部とを備えている。
【0003】
また、特許文献2には、カードの利用実績に応じた利用可能なサービス情報を顧客所有の携帯情報端末を利用して提供することにより、サービスの情報の管理と顧客獲得や販売促進のためのサービスを可能にするシステムが記載されている。
【0004】
また、特許文献3には、商品またはサービスの販売を促進するために、商品またはサービスの購入時に利用可能なクーポンを携帯端末に表示させる情報提供装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-120843号公報
【文献】特開2004-227417号公報
【文献】特開2016-71649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献に記載された技術においては、ある特定のサービスの提供に関連してそのサービスの利用を促進するための技術が記載されている。いずれの文献にも、複数の異なる事業主体が提供するサービスを自由に組み合わせ、その利用条件に応じてインセンティブを利用者に付与することで、各サービスの利用を促進するという発想はない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、異なる複数の事業主体が提供するサービスを自由に組み合わせて利用者のサービス利用を促進することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の各側面では、上述した課題を解決するために、それぞれ以下の構成を採用する。
【0009】
第一の側面は、サービス管理装置に関する。
第一の側面に係るサービス管理装置は、
複数の事業主体のそれぞれが提供するサービスの利用履歴と、提供可能なインセンティブサービスとを紐づけるルールを記憶する記憶手段と、
利用者の、前記複数の事業主体それぞれの前記サービスの利用履歴を取得すると、前記ルールを用いて、当該利用者に提供可能なインセンティブサービスを特定し、特定した前記インセンティブサービスに関する処理を実行するサービス処理手段と、を有する。
【0010】
第二の側面は、少なくとも1つのコンピュータにより実行されるサービス管理方法に関する。
第二の側面に係るサービス管理方法は、
サービス管理装置が、
複数の事業主体のそれぞれが提供するサービスの利用履歴と、提供可能なインセンティブサービスとを紐づけるルールを記憶手段に記憶し、
利用者の、前記複数の事業主体それぞれの前記サービスの利用履歴を取得すると、前記ルールを用いて、当該利用者に提供可能なインセンティブサービスを特定し、特定した前記インセンティブサービスに関する処理を実行する、ことを含む。
【0011】
なお、本発明の他の側面としては、上記第二の側面の方法を少なくとも1つのコンピュータに実行させるプログラムであってもよいし、このようなプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体であってもよい。この記録媒体は、非一時的な有形の媒体を含む。
このコンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されたとき、コンピュータに、サービス管理装置上で、そのサービス管理方法を実施させるコンピュータプログラムコードを含む。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0013】
また、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【0014】
また、本発明の方法およびコンピュータプログラムには複数の手順を順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の手順を実行する順番を限定するものではない。このため、本発明の方法およびコンピュータプログラムを実施するときには、その複数の手順の順番は内容的に支障のない範囲で変更することができる。
【0015】
さらに、本発明の方法およびコンピュータプログラムの複数の手順は個々に相違するタイミングで実行されることに限定されない。このため、ある手順の実行中に他の手順が発生すること、ある手順の実行タイミングと他の手順の実行タイミングとの一部ないし全部が重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0016】
上記各側面によれば、異なる複数の事業主体が提供するサービスを自由に組み合わせて利用者のサービス利用を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係るサービス管理システムのシステム構成を概念的に示す図である。
【
図2】
図1に示すサービス管理システムを構成する各コンピュータのハードウェア構成を例示するブロック図である。
【
図3】実施形態のサービス管理装置の論理的な構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】実施形態のサービス管理装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図5】実施形態のサービス管理システムのシステム構成を概念的に示す図である。
【
図6】実施形態のサービス管理装置の論理的な構成を示す機能ブロック図である。
【
図8】複数のノードに記録されるトークンのトークン利用履歴情報を説明するための図である。
【
図9】実施形態のサービス管理装置のトークン処理部の動作例を示すフローチャートである。
【
図10】実施形態のサービス管理装置のサービス処理部による精算処理の動作例を示すフローチャートである。
【
図11】実施形態のサービス管理装置の構成を論理的に示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、以下の各図において、本発明の本質に関わらない部分の構成については省略してあり、図示されていない。
【0019】
実施形態において「取得」とは、自装置が他の装置や記憶媒体に格納されているデータまたは情報を取りに行くこと(能動的な取得)、および、自装置に他の装置から出力されるデータまたは情報を入力すること(受動的な取得)の少なくとも一方を含む。能動的な取得の例は、他の装置にリクエストまたは問い合わせしてその返信を受信すること、及び、他の装置や記憶媒体にアクセスして読み出すこと等がある。また、受動的な取得の例は、配信(または、送信、プッシュ通知等)される情報を受信すること等がある。さらに、「取得」とは、受信したデータまたは情報の中から選択して取得すること、または、配信されたデータまたは情報を選択して受信することであってもよい。
【0020】
(第1実施形態)
<システム概要>
図1は、本発明の実施の形態に係るサービス管理システム1のシステム構成を概念的に示す図である。
サービス管理システム1は、異なる複数の事業主体が提供するサービスの利用者への提供を管理する。サービス管理システム1は、複数の事業主体(図中、事業者50と示す)がそれぞれ提供するサービスのサービス利用履歴210を記憶する記憶装置と、複数の事業者50のサービス利用履歴210を管理するサービス管理装置100と、を含む。
【0021】
サービス管理装置100の機能は、例えば、分散ネットワーク上で動作する分散型アプリケーション(dApps:Decentralized Applications)によって実現される。ただし、サービス管理装置100は、これに限定されず、クラウド上で動作する少なくとも一つのサーバによってその機能が実現されてもよい。
また、サービス管理装置100は、所謂オプティマイザやアグリゲータなどの組織が管理するコンピュータであってもよい。
【0022】
異なる複数の事業者50がそれぞれ提供するサービスを自由に組み合わせて利用者に提供するメニューを作成し、メニューに含まれる複数のサービスの利用を条件として利用者にインセンティブを付与するルール220を作成することができる。このルール220は、個々のサービスを提供する事業者50以外の別の事業主体(代理店、地方自治体、イベント企画会社など)が作成してもよい。
【0023】
ルール220の作成は、事業主体の操作端末(後述するコンピュータ1000)上で作成することができてよい。
【0024】
また、詳細については後述する実施形態で説明するが、サービス利用履歴210およびルール220は、ブロックチェーンネットワーク10上のノード20(
図1には図示されない)に格納される。サービス管理装置100は、ブロックチェーンネットワーク10上の各ノード20に記憶されるサービス利用履歴210を参照する。
【0025】
<ハードウェア構成例>
サービス管理システム1を構成する複数のノード20、およびサービス管理装置100は、それぞれ少なくとも一つのコンピュータにより実現される。また、利用者のユーザ端末30は、スマートフォン、タブレット端末、またはウエアラブル端末などであり、これらもコンピュータにより実現される。また、上記したように、事業主体の操作端末は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末などであり、これらもコンピュータにより実現される。
【0026】
図2は、
図1に示すサービス管理システム1を構成する各コンピュータ1000のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【0027】
コンピュータ1000は、バス1010、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、入出力インタフェース1050、およびネットワークインタフェース1060を有する。
【0028】
バス1010は、プロセッサ1020、メモリ1030、ストレージデバイス1040、入出力インタフェース1050、およびネットワークインタフェース1060が、相互にデータを送受信するためのデータ伝送路である。ただし、プロセッサ1020などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0029】
プロセッサ1020は、CPU(Central Processing Unit) やGPU(Graphics Processing Unit)などで実現されるプロセッサである。
【0030】
メモリ1030は、RAM(Random Access Memory)などで実現される主記憶装置である。
【0031】
ストレージデバイス1040は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカード、又はROM(Read Only Memory)などで実現される補助記憶装置である。ストレージデバイス1040はサービス管理システム1のサービス管理装置100の各機能(例えば、後述する
図3のサービス処理部102、
図6のトークン処理部110、および
図11の選択部120等)を実現するプログラムモジュールを記憶している。プロセッサ1020がこれら各プログラムモジュールをメモリ1030上に読み込んで実行することで、そのプログラムモジュールに対応する各機能が実現される。また、ストレージデバイス1040は、サービス管理装置100が使用する各種情報を記憶する記憶部(不図示)としても機能する。また、ノード20の記憶手段もストレージデバイス1040により実現されてもよい。
【0032】
プログラムモジュールは、記録媒体に記録されてもよい。プログラムモジュールを記録する記録媒体は、非一時的な有形のコンピュータ1000が使用可能な媒体を含み、その媒体に、コンピュータ1000(プロセッサ1020)が読み取り可能なプログラムコードが埋め込まれてよい。
【0033】
入出力インタフェース1050は、コンピュータ1000と各種入出力機器とを接続するためのインタフェースである。
【0034】
ネットワークインタフェース1060は、コンピュータ1000を通信ネットワークに接続するためのインタフェースである。この通信ネットワークは、例えばLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)である。ネットワークインタフェース1060が通信ネットワークに接続する方法は、無線接続であってもよいし、有線接続であってもよい。ただし、ネットワークインタフェース1060は用いられないことも有る。
【0035】
そして、コンピュータ1000は、入出力インタフェース1050またはネットワークインタフェース1060を介して、図示されない必要な機器(例えば、カメラ、ディスプレイ、操作部、タッチパネルなど)に接続する。あるいは、コンピュータ1000は、入出力インタフェース1050またはネットワークインタフェース1060を介して、図示されない任意の機器(例えば、自動改札機、ICカードリーダなど)と通信する。
【0036】
サービス管理システム1は、サービス管理装置100を構成する複数のコンピュータ1000により実現されてもよい。
【0037】
後述する
図3、
図6、および
図11に示す各実施形態のサービス管理装置100の各構成要素は、
図2のコンピュータ1000のハードウェアとソフトウェアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置にはいろいろな変形例があることは、当業者には理解されるところである。各実施形態のサービス管理装置100を示す機能ブロック図は、ハードウェア単位の構成ではなく、論理的な機能単位のブロックを示している。
【0038】
<機能構成例>
図3は、本実施形態のサービス管理装置100の論理的な構成を示す機能ブロック図である。
サービス管理装置100は、サービス処理部102を備える。
まず、複数の事業主体のそれぞれが提供するサービスの利用履歴210と、提供可能なインセンティブサービスとを紐づけるルール220は、ノード20に記憶される。サービス利用履歴210は、各事業者50が提供するサービスを利用者が利用する都度、ノード20に記録される。また、ルール220には、サービスの利用条件に応じたインセンティブの付与条件が事業者50などによって定義されている。上記したように、ルール220は、サービスを提供している事業者50以外の他の事業者50によって定義されてもよい。
【0039】
本実施形態では、サービス利用履歴210とルール220はそれぞれブロックチェーンネットワーク10上の複数のノード20に格納されている。そのため、当該サービスを提供する事業者50以外の者が外部の操作端末(
図2のコンピュータ1000により実現される)を用いて、ルール220を定義してノード20に格納してもよい。
【0040】
例えば、ルール220は、事業者50の操作端末を用いて、所定のプログラミング言語で記述することで定義できる。例えば、ルール220は、ディスカウントロジック、およびインセンティブロジックを含む。また、ルール220の設定用のアプリケーションが提供されてもよい。当該アプリケーションを事業者50の操作端末で起動し、利用条件に設定するサービスの選択と、利用条件の指定、インセンティブの種類および付与手段の指定などを受け付ける各種ユーザインタフェースを含む画面をオペレータが操作することで、ルール220を作成できてもよい。
【0041】
作成されたルール220は、ブロックチェーンネットワーク10上のノード20に格納される。複数のルール220は、サービス一覧として例えば、ウェブサイト上などに公開することで利用者に提示してよい。詳細については、後述する第3実施形態で説明する。
【0042】
サービス利用履歴210は、利用者を識別する識別情報(ユーザID)と、利用したサービスを識別する識別情報(サービスID)と、当該サービスを利用した日時情報とを少なくとも含む。
【0043】
サービス処理部102は、複数のノード20に格納されているうちの少なくとも一つのルール220を取得する。さらに、サービス処理部102は、複数のノード20に格納されているサービス利用履歴210のうち、利用者に関するサービス利用履歴210を、例えば、当該利用者のユーザIDを検索キーとして抽出して取得する。
【0044】
ルール220は、例えば、交通機関の利用、物品の購買、宿泊施設の利用のうち少なくとも2つのサービスを組み合わせて作成することができる。ルール220には、対象となるサービスのサービスIDと、ディスカウントロジックまたはインセンティブロジックと、が含まれる。また、ルール220には、当該ルール220が適用される期間を条件として含んでもよい。あるいは、ルール220には、当該ルール220の適用対象となる利用者の属性(例えば、学生、シニア、子連れ家族、性別など)などを条件として含んでもよい。ルール220の具体例については実施例で後述する。
【0045】
サービス処理部102は、利用者の、複数の事業者50それぞれのサービスの利用履歴210を取得すると、ルール220を用いて、当該利用者に提供可能なインセンティブサービスを特定し、特定したインセンティブサービスに関する処理を実行する。
【0046】
インセンティブサービスに関する処理とは、利用者への所定の価値の付与であり、例えば、料金のディスカウント、キャッシュバック、ポイント付与、クーポン配布などを電子的に行う処理である。サービス処理部102は、利用者への価値の付与を実行する。例えば、クーポン配布であれば、サービス処理部102は、利用者のユーザ端末30のウォレット40にデジタルクーポンを登録する。その他の処理については、後述する第2実施形態で詳細に説明する。
【0047】
<動作例>
図4は、本実施形態のサービス管理装置100の動作例を示すフローチャートである。
まず、サービス処理部102は、特定の利用期間における、列車Aの乗車、ホテルBの宿泊、および店舗Cでの購買を条件として、1000円分のクーポンが付与されることが定義されているルールaを取得する(ステップS101)。ルール220の取得については、後述する第3実施形態で詳細に説明する。
【0048】
サービス処理部102は、利用者の特定利用期間におけるサービス利用履歴210を参照し、ルールaに定義されている各条件を満たすか否かを判定する。具体的には、サービス処理部102は、まず、利用者の特定利用期間におけるサービス利用履歴210を参照し、列車Aへの乗車が確認できた場合(ステップS103のYES)、ステップS105に進む。列車Aへの乗車が確認できなかった場合(ステップS103のNO)、本処理を終了する。
【0049】
つぎに、サービス処理部102は、利用者の特定利用期間におけるサービス利用履歴210を参照し、ホテルBの宿泊を確認できた場合(ステップS105のYES)、ステップS107に進む。ホテルBの宿泊が確認できなかった場合(ステップS105のNO)、本処理を終了する。つぎに、サービス処理部102は、利用者の特定利用期間におけるサービス利用履歴210を参照し、店舗Cでの購買を確認できた場合(ステップS107のYES)、ステップS109に進む。店舗Cでの購買を確認できなかった場合(ステップS107のNO)、本処理を終了する。
【0050】
ただし、ステップS103~ステップS107の実行順序はこれに限定されない。例えば、各ステップの判定処理を並行して行い、判定結果の論理積をとり、全ての判定結果がYESであった場合に、ステップS109を実行してもよい。
【0051】
ステップS109では、サービス処理部102は、ルールaに定義されているインセンティブの付与、ここでは1000円分のクーポンの配布を行う。具体的には、例えば、1000円分のデジタルクーポンを利用者のユーザ端末30のウォレット40に登録する。
【0052】
以上説明したように、本実施形態において、複数の事業主体のそれぞれが提供するサービスの利用履歴と、提供可能なインセンティブサービスとを紐づけるルール220がノード20に格納されており、サービス処理部102は、利用者の、複数の事業主体それぞれのサービスのサービス利用履歴210を取得すると、ルール220を用いて、当該利用者に提供可能なインセンティブサービスを特定し、特定したインセンティブサービスに関する処理を実行する。このように、本実施形態によれば、異なる複数の事業主体が提供するサービスを自由に組み合わせてルール220としてインセンティブの付与情報とともに利用者に提示することができるので、利用者のサービス利用を促進することができる。
【0053】
サービスを提供する複数の事業者50は、インセンティブの付与に関する利用者の利用履歴を管理したり、インセンティブの付与に関する処理を実行したりする必要がないので、効率がよい。一方、サービスを提供する複数の事業者50は、利用者のサービス利用に関するサービス利用履歴210を取得することができるので、将来のサービスの企画や販売に当該情報を利用することができる。
【0054】
(第2実施形態)
図5は、本実施形態のサービス管理システム1のシステム構成を概念的に示す図である。本実施形態では、サービスの利用管理にトークンを用いる構成を有する点以外は上記実施形態と同様である。
【0055】
トークン80は、利用者に提供されるサービス毎に少なくとも一つ発行される。例えば、ユーザ端末30には、利用するサービスのトークン80を登録するアプリケーション(例えば、ウォレット40)が予めインストールされる。ウォレット40には、サービスに関連する支払いに利用する所定の価値が事前に使用可能に登録される。所定の価値は、仮想通貨で定義されている。仮想通貨は特に限定されないが、例えば、ビットコインやイーサリアムといった仮想通貨などである。
【0056】
利用者は、ウォレット40を用いて、事前に資産価値を仮想通貨でデポジットプール230にデポジットしておく。デポジットされた仮想通貨は、サービス利用時に支払う代金の決済処理に使用される。
【0057】
トークン80は、例えば、NFT(Non-Fungible Token)である。ブロックチェーンネットワーク10上のノード20に、サービスの利用毎に、サービスに対応するトークン80の利用履歴が記録される。
【0058】
図6は、本実施形態のサービス管理装置100の論理的な構成を示す機能ブロック図である。サービス管理装置100は、
図3のサービス管理装置100の構成に加え、さらに、トークン処理部110を有している。
トークン処理部110は、サービスのトークン80を発行して利用者に割り当て、サービスの提供が終了すると利用者に発行されたトークン80の割り当てを解除する。
サービス処理部102は、トークン80の利用履歴を用いて、利用者別にサービスの利用履歴を特定する。
【0059】
利用者に発行されたトークン80は、利用者のユーザ端末30のウォレット40に登録される。トークン80は、サービス毎に発行され、例えば、列車の乗車チケットやホテルの宿泊チケットとしてウォレット40に登録される。また、店舗での物品の購買サービスの利用については、事前にデポジットされている仮想通貨決済の利用サービスに対するトークン80が発行され、ウォレット40に登録されてもよい。
【0060】
トークン処理部110は、利用者に発行されたトークン80に対応するサービスの利用毎に、利用されたトークン80の識別情報(トークンID)と、そのサービスの利用日時とをノード20に記録する。例えば、列車に乗車したとき、列車から降車したとき、ホテルにチェックインしたとき、ホテルからチェックアウトしたとき、および店舗で商品の購買に仮想通貨決済を利用したときなどの日時情報が、トークン80の利用履歴としてノード20にそれぞれ記録される。
【0061】
図7は、トークン80のデータ構造の例を示す図である。トークン80の利用毎に記録されるトークン利用履歴情報240の例である。トークン利用履歴情報240は、少なくともトークンIDと、ユーザIDと、利用日時とを関連付けて含む。
図7(a)では、利用者が列車に乗車したときの日時情報が、トークンIDとユーザIDに紐付けられてノード20に格納されている。
図7(b)では、利用者が列車を降車したときの日時情報が、トークンIDとユーザIDに紐付けられてノード20に格納されている。
図7(c)では、利用者が宿泊するホテルにチェックインしたときの日時情報が、トークンIDとユーザIDに紐付けられてノード20に格納されている。
図7(d)では、利用者が店舗で商品を購買したときの日時情報が、トークンIDとユーザIDに紐付けられてノード20に格納されている。
【0062】
トークン処理部110は、トークン80を発行する際、トークン80のトークンIDには、当該トークン80を発行した利用者のユーザIDと、当該トークン80により利用可能なサービスのサービスIDが紐付けられ、サービス利用履歴210に記憶される。よって、トークン処理部110は、ノード20に記録されているサービス利用履歴210から、トークン80のトークンIDをキーとして対応するサービスIDを検索することで、当該トークン80によって利用されるサービスを特定することができる。
【0063】
なお、
図7の例では、トークン80を利用する都度、トークン80のトークンIDをトークン利用履歴情報240に記録しているが、他の例では、トークン処理部110は、トークン利用履歴情報240に、トークン80で利用可能なサービスのサービスIDを記録してもよい。つまり、トークン処理部110は、トークン80のトークンIDおよびトークン80が提供するサービスのサービスIDのうち少なくとも一方を、ユーザID、および利用日時に紐付けてトークン利用履歴情報240に記録する。
【0064】
ウォレット40に登録されたトークン80の利用時のトークン80のトークンIDの取得方法は様々考えられる。例えば、駅の自動改札機、ならびに、宿泊施設または店舗の非接触ICカードリーダなどとユーザ端末30がNFC(Near Field Communication)などの近距離無線通信で通信することで、ウォレット40に登録されたトークン80を利用したときに、ウォレット40により、ノード20にトークン利用履歴情報240が記録される。
【0065】
トークン80のトークンIDの他の取得方法としては、例えば、トークン80が提供するサービスに関する情報(トークンIDまたはサービスID)およびユーザIDを含む二次元コード(例えば、QR(Quick Response)コード(登録商標))をユーザ端末30のディスプレイに表示させ、宿泊施設または店舗のバーコードリーダ等で読み取ることで、ウォレット40に登録されたトークン80を利用できてもよい。
【0066】
ユーザIDは、例えば、ウォレット40の利用登録のユーザ識別情報でもよいし、仮想通貨の利用登録のユーザ識別情報でもよく、特に限定されない。ただし、ユーザIDの取得は予め利用者の承諾を得ているものとする。
【0067】
トークン利用履歴情報240には、利用者のユーザIDが含まれるので、サービス処理部102は、ユーザIDをキーとして抽出することで、利用者のサービス利用履歴210を取得することができる。また、トークン利用履歴情報240には、当該サービスの利用日時が含まれるので、サービス処理部102は、ルール220に定義されている利用期間における利用者のサービス利用履歴210を特定することができる。
【0068】
さらに、トークン利用履歴情報240には、サービスに対応するトークンIDが含まれるので、各事業者50のサービス利用履歴210は、サービスIDをキーとしてルール220に定義されているサービスの利用に関する情報を抽出することができる。
【0069】
また、
図5において、複数のノード20に分散して記録されたトークン80の利用状況を示すトークン利用履歴情報240を、サービスIDをキーとして抽出すると、事業者50が提供するサービス別のサービス利用履歴210が取得できる。
【0070】
図8は、複数のノード20に、各利用者に割り当てられたトークン80の情報が記録される様子を示している。
【0071】
上記したように、ブロックチェーンネットワーク10の各ノード20には、利用者に割り当てられたトークン80のトークンIDと、ユーザIDと、利用日時とが都度記録され、蓄積される。ある一人の利用者の各サービス利用の記録、例えば、列車の乗車と降車、ホテルのチェックイン、チェックアウト、店舗での商品購買の決済などのサービス利用の記録は、異なるノード20に別々に記録されてもよい。複数のノード20に分散して記録されたトークン80の利用記録、つまり、各種サービスの利用記録は、サービス管理装置100により統合的に管理される。このため、サービス処理部102は、各トークン80の利用履歴、つまり、サービスの利用履歴を特定することができる。
【0072】
本実施形態では、ブロックチェーンネットワーク10上にトークン80の履歴を記録することができるので、例えば、異なる事業者50が提供するサービスの利用記録であっても、サービス管理システム1の仕組みを導入すれば、サービス管理システム1で一括して管理することが可能になる。例えば、異なる事業者50を跨いでサービスの利用状況を管理することが可能になる。そのため、異なる事業者50間で企画されたタイアップキャンペーンなどで、特定の交通機関の利用と宿泊施設の利用と、特定の店舗での購買を条件として、サービス利用の料金をディスカウントするなどのインセンティブの付与をルール220に定義することができる。
【0073】
なお、トークン80に紐付けて記録される情報は、
図7の例以外にも考えられる。例えば、列車の乗車チケットの乗車日時や降車日時に加え、乗車駅や降車駅を示す情報をトークン80に紐付けて記録してもよい。あるいは、商品購買日時に加え、特定の商品を購入した場合、当該商品の商品コードや購入金額を示す情報をトークン80に紐付けて記録してもよい。あるいは、サービスを利用したときの利用者の位置情報をユーザ端末30の位置取得機能を利用して取得し、利用位置情報をトークン80に紐付けて記録してもよい。つまり、トークン利用履歴情報240は、トークンID、ユーザID、および利用日時に加え、さらに、乗降車駅、購入商品コード、購入金額、およびサービス利用位置情報などの少なくともいずれか一つを含んでもよい。
【0074】
<動作例>
図9は、本実施形態のサービス管理装置100のトークン処理部110の動作例を示すフローチャートである。
まず、トークン処理部110は、利用者が利用するサービスの選択を受け付けると、当該サービスの利用に関するトークン80を発行し、利用者のユーザ端末30のウォレット40に登録する(ステップS201)。
【0075】
トークン処理部110は、利用者に発行したトークン80のトークンIDと、サービスのサービスIDと、利用者のユーザIDと、トークン80の発行日時と、を紐付けてトークン利用履歴情報240に記憶する。
【0076】
そして、利用者によるサービスの利用を検出すると(ステップS203のYES)、トークン処理部110は、ブロックチェーンネットワーク10上のノード20に格納されているトークン80の利用に関する情報を記録する(ステップS205)。
【0077】
利用者によるサービスの利用の検出は、例えば、ユーザ端末30のウォレット40を用いた自動改札機への入場または退場記録により検出できる。あるいは、ユーザ端末30のウォレット40を用いた空港での航空券のチェックイン機へのチェックイン操作の受け付けにより検出できる。あるいは、宿泊施設でのチェックインまたはチェックアウト時に、ウォレット40を用いたトークン80の利用(二次元バーコードの読み取りなど)により検出できる。あるいは、店舗においてウォレット40を利用した商品の購買時の電子決済処理により検出できる。
【0078】
具体的には、トークン利用履歴情報240として、トークン80のトークンID、利用者のユーザID、および、利用日時が少なくともブロックチェーンネットワーク10上のノード20に記録される。
【0079】
そして、サービスの利用終了を検出すると(ステップS207のYES)、トークン処理部110は、利用者に割り当てられていたトークン80を解除する(ステップS209)。サービスの利用終了の検出方法は、サービス毎に異なってよい。例えば、列車の乗車チケットに対応するトークン80の場合、当該列車に乗車後、ユーザ端末30のウォレット40を用いた降車時の自動改札機での退場記録を受け付けたときに、当該トークン80の利用の終了を検出してもよい。
【0080】
宿泊施設の利用サービスのトークン80の場合、当該宿泊施設のチェックアウト時にウォレット40を用いた利用終了(二次元バーコードの読み取りなど)の受け付けにより検出してもよい。あるいは、店舗における商品の購買に関するトークン80については、例えば、トークン80に利用期限を設けておき、利用期限の超過を検出することで、サービスの利用終了を検出してもよい。あるいは、利用者本人がウォレット40を操作して当該トークン80を削除することで当該トークン80の利用の終了を検出してもよい。
【0081】
利用者への割り当てが解除されたトークン80は、当該利用者のユーザ端末30のウォレット40から削除される。または、利用済みトークン80としてウォレット40に記録されてもよい。
【0082】
サービスの利用履歴は、トークン80の利用の都度、ノード20に記録される。複数のノード20に分散して記録された各サービスのトークン80の記録を、サービス管理装置100は集約し、利用者別のトークン利用履歴情報240、あるいは、サービス別のサービス利用履歴210として抽出して管理することができる。つまり、サービス利用履歴210およびトークン利用履歴情報240は、分散して複数のノード20に都度記録されたトークン80の利用記録から、各事業者50が提供するサービス別、および利用者別にそれぞれ抽出したものである。
【0083】
なお、
図9のフローチャートでは、3つの処理、すなわち、トークン80の発行処理(ステップS201)と、サービス利用時処理(ステップS203~ステップS205)と、サービス利用終了時処理(ステップS207~ステップS209)と、を含んでいる。
図9は説明上、3つの処理を順番に実行するように示しているが、各処理は、それぞれ個別に実行可能であり、
図9のフローチャートのように、必ずしも順番に実行する必要はない。
【0084】
次に、このようにして記録されたサービス利用履歴210(トークン利用履歴情報240)を利用して、サービス処理部102は、利用者が利用したサービスの利用に対する代金の支払いに関する価値の精算処理およびインセンティブの付与に伴う価値の精算処理を行う。
【0085】
図10は、本実施形態のサービス管理装置100のサービス処理部102による精算処理の動作例を示すフローチャートである。
まず、サービス処理部102は、利用者のユーザ端末30のウォレット40への、利用者の仮想通貨のデポジットを受け付ける(ステップS231)。受け付けた仮想通貨は、デポジットプール230に格納される。
【0086】
そして、ウォレット40を用いたサービスの利用が検出されると、サービス処理部102は、当該サービスの利用に関する料金を特定する(ステップS233)。各サービスの利用に関する料金については、サービスを提供している事業者50が提示している料金を用いてもよいし、サービス利用を受け付けたときに、サービスを提供している事業者50に利用料を問い合わせてその時点でのサービス対価の価値に関する情報を取得してもよい。
【0087】
次に、サービス処理部102は、利用者のサービス利用履歴210を参照し、ルール220に定義されている利用条件に従い、利用者に付与されるインセンティブを特定する(ステップS235)。例えば、ルール220の利用条件が満たされた場合に、10%の利用料金のディスカウントが定義されている場合、サービス処理部102は、ステップS235で特定されたディスカウントを適用し、ステップS233で特定された利用料金から10%の代金を割引した金額で精算処理を行う。具体的には、サービス処理部102は、ステップS231でデポジットされている利用者の仮想通貨から利用料金に相当する価値を精算し、各サービスを提供している事業者50にそれぞれ分配する。
【0088】
本実施形態によれば、トークン処理部110は、サービスのトークン80を発行して利用者に割り当て、サービスの提供が終了すると利用者に発行されたトークン80の割り当てを解除し、サービス処理部102は、トークン80の利用履歴を用いて、利用者別にサービスの利用履歴を特定する。このように、サービスの利用をトークン80で管理することで、複数の異なる事業主体が提供するサービスの利用者による利用状況を効率よく指示してサービス管理装置100で一元管理できる。
【0089】
サービス利用を条件としたインセンティブの付与処理についても、仮想通貨の利用によるサービス利用料金の精算処理により効率よく処理することができる。
【0090】
(第3実施形態)
図11は、本実施形態のサービス管理装置100の構成を論理的に示す機能ブロック図である。本実施形態のサービス管理装置100は、利用者に適用するルール220を選択する構成を有する点以外は、上記したいずれかの実施形態と同様である。
【0091】
本実施形態は、
図6の第2実施形態の構成に、さらに、選択部120を有する。ただし、本実施形態の選択部120は、
図3の第1実施形態の構成と組み合わせてもよい。
選択部120は、複数のルール220の中から、少なくとも一つのルール220を選択する。サービス処理部102は、選択したルール220を用いる。
【0092】
選択部120が利用者に適用するルールを選択する方法は様々考えられ、以下に例示されるがこれらに限定されない。以下の複数を組み合わせてもよい。
(1)サービスのカテゴリ(旅行、スポーツ、観劇など)を選択すると、当該カテゴリに登録されているルール220の一覧を提示(ユーザ端末30のディスプレイに表示)し、利用者の選択を受け付ける。
(2)利用者の属性(性別、年齢、職業、居住地域、趣味など)に基づいて、利用者に最適なルール220を作成して利用者に提案する。ルール220の作成は、事業主体の管理者が作成してもよいし、所定のロジック(アプリケーションなど)により自動的に作成されてもよい。
(3)利用者の属性、利用者が過去に利用したサービスの履歴、および、事前に利用者により興味があるサービスとして登録されたサービスに関する情報などのうち少なくとも一つを機械学習により学習し、利用者に最適なルール220を作成して利用者に提案する。
(4)事業主体が特定の利用者または公に提案する。例えば、事業主体が過去に利用履歴のある利用者のユーザ端末30に通知する、あるいは、一般の広告やダイレクトメールなどで公に報知する。ここで、事業主体は、サービスを提供している事業者50、および、サービスを提供していない事業主体のいずれであってもよい。
【0093】
選択部120によるルール220の選択のタイミングは、サービスの利用後の精算処理の前であってもよいし、サービスの利用前、サービス利用中、あるいは、特定の期間(例えば、キャンペーンへ期間など)であってもよく、特に限定されない。
【0094】
本実施形態によれば、選択部120は、複数のルール220の中から、少なくとも一つのルール220を選択し、サービス処理部102は、選択したルール220を用いる。この構成によれば、様々な事業主体が提供するサービスを自由に組み合わせて、その利用を条件として利用者にインセンティブを付与するインセンティブサービスメニューの中から利用者にあったサービスを利用者に適切に提供することが可能になる。これにより、よりサービスの利用を促進することが可能になる。
【0095】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
例えば、サービス管理システム1が提供する各サービスの利用にあっては、デポジットプール230への利用者の資産のデポジットの残高または過去の実績を条件としてもよい。
例えば、サービス処理部102は、利用者がサービスの利用登録を行う前に、資産価値のデポジットを促す画面をウォレット40上に表示したり、利用者の資産価値の残高が基準を満たしているか否かを判定したりする処理を行う。残高の基準は、例えば、サービス利用に必要な価値以上の価値がデポジットプール230にデポジットされていることである。
【0096】
この構成によれば、サービス利用の対価として必要な価値を予めデポジットさせておくことができるので、サービス利用の対価の価値の回収を確実に行うことが可能になる。
【実施例】
【0097】
以下、複数の異なる事業主体が提供するサービスの組み合わせの例を示す実施例について説明する。
(実施例1)
<地域振興または旅行キャンペーン>
ある特定地域の交通機関や、物産展での商品購入、宿泊施設を利用すると、ディスカウントやキャッシュバックが可能となるインセンティブサービスルールを定義する。
具体的には、下記のルール220が定義される。
(a1)特定のバスに、所定回以上乗車した場合は、(差額分のキャッシュバックを行うなどして)固定料金とする(1日乗車券のようなふるまい)。
(a2)特定の宿泊施設に泊まった場合、近隣の物産展での商品購入の際、所定の金額分相当のトークン80を配布する(地域共通クーポンのようなふるまい)
(a3)所定期間に、遠距離移動となるフライトおよび宿泊施設利用料金を、30%分ディスカウントする。
【0098】
(実施例2)
<スタンプラリーといった巡回系のキャンペーン/イベント>
特定の施設を巡った際に、インセンティブ(NFTや、ファンジブルトークンなど)や、ディスカウントを享受できるインセンティブサービスルールを定義する。
具体的には、下記のルール220が定義される。
(b1)ある特定期間内に、所定の鉄道路線の全駅を巡った場合に、インセンティブが付与される。
(b2)特定地域で指定された、観光名所(温泉施設、神社仏閣など)を全て巡った場合に、インセンティブが付与される。
【0099】
(実施例3)
<交通事業者を跨ったディスカウントサービス>
特定路線、複数事業者に跨って、一定条件を満たす利用、例えば、期間内に一定回数以上の利用があった場合などに、差額分のキャッシュバックを行う等のインセンティブサービスルールを定義する。
具体的には、下記のルール220が定義される。
(c1)所定回以上の鉄道とタクシー利用の併用があった場合は、まとめて差額分のキャッシュバックを行うなどして、固定料金とする(定期券のようなふるまい)。
(c2)長距離の電車移動が伴った場合、その到着駅からのバスの往路移動は、料金をディスカウントする。
【0100】
以上、実施形態および実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
なお、本発明において利用者に関する情報を取得、利用する場合は、これを適法に行うものとする。
【0101】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下に限られない。
1. 複数の事業主体のそれぞれが提供するサービスの利用履歴と、提供可能なインセンティブサービスとを紐づけるルールを記憶する記憶手段と、
利用者の、前記複数の事業主体それぞれの前記サービスの利用履歴を取得すると、前記ルールを用いて、当該利用者に提供可能なインセンティブサービスを特定し、特定した前記インセンティブサービスに関する処理を実行するサービス処理手段と、
を備える、サービス管理装置。
2. 1.に記載のサービス管理装置において、
前記サービスは、交通機関の利用、物品の購買、及び宿泊施設の利用のうち少なくとも2つを含む、サービス管理装置。
3. 1.または2.に記載のサービス管理装置において、
前記インセンティブサービスは、前記利用者への所定の価値の付与であり、
前記サービス処理手段は、前記利用者への前記価値の付与を実行する、サービス管理装置。
4. 3.に記載のサービス管理装置において、
前記所定の価値は仮想通貨で定義されている、サービス管理装置。
5. 1.から4.のいずれか一つに記載のサービス管理装置において、
前記サービスにトークンが設定されており、
前記サービスのトークンを発行して利用者に割り当て、前記サービスの提供が終了すると前記利用者に発行された前記トークンの割り当てを解除する、トークン処理手段をさらに備え、
前記サービス処理手段は、前記トークンの利用履歴を用いて、前記利用者別に前記サービスの利用履歴を特定する、サービス管理装置。
6. 5.に記載のサービス管理装置において、
前記トークンはNFT(Non-Fungible Token)である、サービス管理装置。
7. 1.から6.のいずれか一つに記載のサービス管理装置において、
複数の前記ルールの中から、少なくとも一つのルールを選択する選択手段をさらに備え、
前記サービス処理手段は、選択された前記ルールを用いる、サービス管理装置。
【0102】
8. サービス管理装置が、
複数の事業主体のそれぞれが提供するサービスの利用履歴と、提供可能なインセンティブサービスとを紐づけるルールを記憶手段に記憶し、
利用者の、前記複数の事業主体それぞれの前記サービスの利用履歴を取得すると、前記ルールを用いて、当該利用者に提供可能なインセンティブサービスを特定し、特定した前記インセンティブサービスに関する処理を実行する、サービス管理方法。
9. 8.に記載のサービス管理方法において、
前記サービスは、交通機関の利用、物品の購買、及び宿泊施設の利用のうち少なくとも2つを含む、サービス管理方法。
10. 8.または9.に記載のサービス管理方法において、
前記インセンティブサービスは、前記利用者への所定の価値の付与であり、
前記サービス管理装置が、
前記利用者への前記価値の付与を実行する、サービス管理方法。
11. 10.に記載のサービス管理方法において、
前記所定の価値は仮想通貨で定義されている、サービス管理方法。
12. 8.から11.のいずれか一つに記載のサービス管理方法において、
前記サービスにトークンが設定されており、
前記サービス管理装置が、さらに、
前記サービスのトークンを発行して利用者に割り当て、前記サービスの提供が終了すると前記利用者に発行された前記トークンの割り当てを解除し、
前記トークンの利用履歴を用いて、前記利用者別に前記サービスの利用履歴を特定する、サービス管理方法。
13. 12.に記載のサービス管理方法において、
前記トークンはNFT(Non-Fungible Token)である、サービス管理方法。
14. 8.から13.のいずれか一つに記載のサービス管理方法において、
前記サービス管理装置が、さらに、
複数の前記ルールの中から、少なくとも一つのルールを選択し、
選択された前記ルールを用いて、当該利用者に提供可能な前記インセンティブサービスを特定し、特定した前記インセンティブサービスに関する処理を実行する、サービス管理方法。
【0103】
15. コンピュータに、
複数の事業主体のそれぞれが提供するサービスの利用履歴と、提供可能なインセンティブサービスとを紐づけるルールを記憶手段に記憶する手順、
利用者の、前記複数の事業主体それぞれの前記サービスの利用履歴を取得すると、前記ルールを用いて、当該利用者に提供可能なインセンティブサービスを特定し、特定した前記インセンティブサービスに関する処理を実行する手順、を実行させるためのプログラム。
16. 15.に記載のプログラムにおいて、
前記サービスは、交通機関の利用、物品の購買、及び宿泊施設の利用のうち少なくとも2つを含む、プログラム。
17. 15.または16.に記載のプログラムにおいて、
前記インセンティブサービスは、前記利用者への所定の価値の付与であり、
前記利用者への前記価値の付与を実行する手順をコンピュータに実行させるためのプログラム。
18. 17.に記載のプログラムにおいて、
前記所定の価値は仮想通貨で定義されている、プログラム。
19. 15.から18.のいずれか一つに記載のプログラムにおいて、
前記サービスにトークンが設定されており、
前記サービスのトークンを発行して利用者に割り当て、前記サービスの提供が終了すると前記利用者に発行された前記トークンの割り当てを解除する手順、
前記トークンの利用履歴を用いて、前記利用者別に前記サービスの利用履歴を特定する手順、をコンピュータに実行させるためのプログラム。
20. 19.に記載のプログラムにおいて、
前記トークンはNFT(Non-Fungible Token)である、プログラム。
21. 15.から20.のいずれか一つに記載のプログラムにおいて、
複数の前記ルールの中から、少なくとも一つのルールを選択する手順、
選択された前記ルールを用いて、当該利用者に提供可能な前記インセンティブサービスを特定し、特定した前記インセンティブサービスに関する処理を実行する手順、をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0104】
1 サービス管理システム
10 ブロックチェーンネットワーク
20 ノード
30 ユーザ端末
40 ウォレット
50 事業者
80 トークン
100 サービス管理装置
102 サービス処理部
110 トークン処理部
120 選択部
210 サービス利用履歴
220 ルール
230 デポジットプール
240 トークン利用履歴情報
1000 コンピュータ
1010 バス
1020 プロセッサ
1030 メモリ
1040 ストレージデバイス
1050 入出力インタフェース
1060 ネットワークインタフェース