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特許7662147皮膚及び/又は粘膜のハリを増大させるためのネフェリウム・ラッパセウム(Nephelium lappaceum)抽出物の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】皮膚及び/又は粘膜のハリを増大させるためのネフェリウム・ラッパセウム(Nephelium lappaceum)抽出物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20250408BHJP
   A61K 36/77 20060101ALI20250408BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20250408BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250408BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20250408BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20250408BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/77
A61P17/00
A61P43/00 105
A61Q19/00
A61Q19/08
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019559749
(86)(22)【出願日】2018-05-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 FR2018051095
(87)【国際公開番号】W WO2018203000
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-04-19
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】1753987
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】500226948
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ビューティ ケア ソリューションズ フランス エスエーエス
【氏名又は名称原語表記】BASF Beauty Care Solutions France S.A.S.
【住所又は居所原語表記】32 rue Saint Jean de Dieu, F-69007 Lyon, France
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】バルデー,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ボネット,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】エシャルド,アナベル
(72)【発明者】
【氏名】ペレティエ,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ヴォーゲルゲサング,ボリス
【合議体】
【審判長】瀬良 聡機
【審判官】阪野 誠司
【審判官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-145730(JP,A)
【文献】Tonymoly, South Korea, Skin Toner, ID#1349524,Mintel GNPD [online], 2010年6月, [検索日:2022年1月20日], Internet <URL:https://WWW.portal.mintel.com>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99、A61Q 1/00-90/00、A61K 36/00-36/9068、A61P 1/00-43/00、Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚のハリ及び/又は弾性を増大させるための、ネフェリウム・ラッパセウム(Nephelium lappaceum)抽出物を含む局所使用のための化粧品組成物であって、前記抽出物は葉の抽出物であり、前記抽出物は前記化粧品組成物の総重量に対して1×10-4重量%~3重量%濃度で前記化粧品組成物中に存在する、化粧品組成物。
【請求項2】
前記皮膚の弾性を増大させるための、請求項1に記載の化粧品組成物。
【請求項3】
前記皮膚のハリを増大させるための、請求項1に記載の化粧品組成物。
【請求項4】
I型及び/又はV型コラーゲン遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増大させるための、請求項1又は3のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【請求項5】
ィブリリン-1の遺伝子の発現及び/又はタンパク質の発現を増大させるための、請求項1又は2に記載の化粧品組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの許容される化粧品賦形剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の化粧品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容及び皮膚科学の分野、特に皮膚及び/又は粘膜のハリ及び/又は弾性を増大させるためのネフェリウム・ラッパセウム(Nephelium lappaceum)植物の抽出物の新規な美容的及び/又は皮膚科学的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲンは、脊椎動物の組織中に大量に存在する細胞外マトリックス(ECM)の主要な構成タンパク質である。コラーゲンは、線維性コラーゲンを含む、29の異なる要素のスーパーファミリーの一部である。I型コラーゲンは、これらの最もよく知られた例であるが、V型コラーゲンも線維性コラーゲンである。V型コラーゲンは、I型コラーゲンと同じ組織内に見られ、これらの2つの型のコラーゲンで構成される異種線維のアセンブリを支援することが知られている。したがって、それらは、構造の維持を確保し、組織に機械的強度を与える。したがって、それらは、真皮のレベルでこれらの組織のハリ、それにより皮膚のハリに貢献する。
【0003】
組織、特に真皮及び表皮の固有の老化中、コラーゲンの発現が減少し、これらの組織の弛緩を誘発し、その結果、皮膚の色調及びハリの喪失を引き起こす。UV放射、汚染又はタバコなどの攻撃的な環境因子を含む様々な外因性因子も皮膚及び/又は粘膜のハリの喪失の原因となる。他の固有の因子もコラーゲン線維の崩壊及びハリの減少、特にホルモンの変動並びに皮膚及び/又は粘膜の張力の変化(急激な体重増加又は減少)の原因となり得る。
【0004】
フィブリリン-1は、その一部として、真皮のECMの構成要素である線維芽細胞によって合成されるタンパク質でもある。フィブリリン-1は、エラスチンからなる弾性線維の形成に関与する。
【0005】
コラーゲンと同様に、このタンパク質の発現は、皮膚の老化中並びに/又は他の内因性因子、特にホルモン因子及び外因性因子、特に環境因子を減少させ、弾性組織の弛緩を誘発する。
【0006】
別のタンパク質は、弾性線維であるLOX-L(リシルオキシダーゼ様)の形成に関与する。この酵素は、トロポエラスチンの架橋を可能にし、次いでこれがミクロフィブリルに堆積する。コラーゲン及びフィブリリン-1のように、その発現は、皮膚及び粘膜で時間とともに減少する。
【0007】
最後に、ECMの特定の合成を調節するCYR61(システインリッチな血管新生誘導物質61)タンパク質:弾性繊維の構成要素であるフィブリン-5又は他に弾性繊維に関連するECMの糖タンパク質であるエミリン-1を挙げ得る。弾性繊維の形成及び正しい配置は、上記のタンパク質の発現レベルに依存する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、これらのタンパク質、コラーゲンI、コラーゲンV、フィブリリン-1、CYR61、エミリン-1、フィブリン-5及びLOX-Lは、美容及び皮膚科学の分野において好ましいターゲットであり、この分野では、ハリ及び/又は弾性の損失に対処するために常に代替の有効成分が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
特に驚くべき方法において、本発明者らは、ネフェリウム・ラッパセウム(Nephelium lappaceum)植物の抽出物が、皮膚及び/又は粘膜において、特にI型及び/又はV型コラーゲン遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増大させることにより、皮膚及び/又は粘膜のハリを増大させるだけでなく、特にフィブリリン-1、LOX-L、フィブリン-5及びエミリン-1遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増大させることにより、皮膚及び/又は粘膜の弾性を増大させる特性を有することを見出した。
【0010】
本発明による抽出物は、ネフェリウム・ラッパセウム(Nephelium lappaceum)植物の抽出物である。この樹木は、ランブータンとしても知られており、東南アジア、特にマレーシア及びインドネシアで見られる。これは、高さ10~20メートルの樹木であり、大量の果実が実る。この食用果実は、その感覚刺激特性について知られており、それは、多くの量の糖、ビタミンC及び鉄分を含有する。根又は乾燥した葉の煎出物は、熱に対処するためにも使用されてきた。
【0011】
本発明による抽出物が調製される植物は、ベトナムに由来する。
【0012】
本発明による抽出物は、コラーゲンの幾つかの型:I型及びV型コラーゲンに効果的であるという利点を有する。そのため、この抽出物は、I型コラーゲン遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増大せることにより、皮膚及び/又は粘膜のハリを増大させるとともに、更にV型コラーゲンなどの他のECM成分の発現を増大させるか又はCYR61発現を減少させることができる。本発明による抽出物の更なる別の利点は、フィブリリン-1だけでなく、LOX-L、フィブリン-5及びエミリン-1遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増大させることにより、皮膚及び/又は粘膜の弾性を増大させ得ることである。そのため、この抽出物は、完全な化粧品及び/又は皮膚科学的成分を作製することにより、ECMタンパク質の幾つかの型を標的とすることを可能にする。
【0013】
本発明による抽出物は、容易に配合することができ、容易に工業規模で製造することができる成分であるという利点も有する。本発明による抽出物は、皮膚及び粘膜にとって局所的に許容される有効成分であり、アレルギーのリスクがない。
【0014】
引き締め効果があり、N.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物を含む、10種の植物抽出物を含む市販のボディジェルが記載されている。しかし、ハリに対して活性がある成分は、カプサイシンを含むコショウ抽出物であり、特にハリ、抗セルライト活性及びスリム化活性から選択されるハリに対する活性は、N.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物に関連していない。
【0015】
韓国特許出願公開第20060007083号明細書は、皮膚美白剤として使用される、N.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物を含む化粧品組成物について記載している。
【0016】
国際公開第2008/066370号パンフレットは、エタノールを含む様々な溶媒での抽出により調製された植物の抽出物の遊離基捕捉剤活性について記載している。同様に、特開2002-145730号公報は、N.ラッパセウム(N.lappaceum)植物の種子の保湿作用及び抗酸化作用を含む幾つかの作用を記載している。
【0017】
Lourith et al.(2017,Anais da Academia Brasileira de Ciencias,89,577-589)は、抗コラゲナーゼ活性を有するとしてレイシ(Litchi chinensis)果皮及びN.ラッパセウム(N.lappaceum)の抽出物を更に記載している。しかし、この文献のいずれの箇所にも、皮膚のハリを増大させるか又は特にI型若しくはV型コラーゲンの発現を増加させるためのN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の使用は記載されていない。また、N.ラッパセウム(N.lappaceum)の葉の抽出物についての記載もない。加えて、この文献は、N.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の代わりに、老化防止化粧品製品におけるレイシ抽出物の優先的な使用について言及している。
【0018】
最後に、韓国特許出願公開第20090056521号明細書は、しわ防止作用を有し、メタロプロテイナーゼ(MMP)、特にMMP-1によるコラーゲンの分解抑制を可能にする、皮膚用化粧品組成物におけるN.ラッパセウム(N.lappaceum)及びライチ・チネンシス(Litchi chinensis)の抽出物について記載している。しかし、N.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物、特に葉の抽出物を使用したI型又はV型コラーゲンタンパク質及び/又は遺伝子の発現を増大させる効果は、この先行技術に記載されていない。また、この特許出願では、この抽出物を使用して皮膚のハリを増大させる効果の記載もない。更に、それには、コラーゲン分解の原因となるプロテイナーゼを阻害する効果が説明されているが、特にI型又はV型コラーゲンの発現の増大ではない。したがって、本出願人の知見によれば、皮膚及び/若しくは粘膜において皮膚及び/若しくは粘膜のハリ若しくは弾性を増大させるため、又はI型及びV型コラーゲン、フィブリン-1、エミリン-1、LOX-L及び/若しくはフィブリリンの発現を増大させ、且つ/又はCYR61の発現を減少させるためのN.ラッパセウム(N.lappaceum)植物の抽出物の使用について、いずれの文献にも記載されていない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
したがって、第1の主題によれば、本発明は、皮膚及び/又は粘膜のハリを増大させるためのN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の美容的使用に関する。
【0020】
第2の主題によれば、本発明は、皮膚及び/又は粘膜の弾性を増大させるためのN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の美容的使用に関する。本発明の目的では、実際、ハリに対する有効性と、皮膚及び/又は粘膜の弾性に対する有効性とが区別される。ハリは、細胞外マトリックスの密度に密接に関係しており、特にコラーゲン発現に限定されない。弾性は、フィブリリン-1、LOX-L、フィブリン-5及びエミリン-1タンパク質が関与する弾性線維の形成及び集合に関係している。
【0021】
本発明の目的では、用語「美容的使用」は、非治療的使用、すなわち健康で非病理学的な皮膚又は粘膜の領域の全部又は一部に適用することを意図する。表現「健康な皮膚及び/又は健康な粘膜の領域」は、本発明による抽出物が適用される皮膚及び/又は粘膜の領域を意味することを意図し、これは、皮膚科医によって「非病理学的」と呼ばれる、すなわち感染、瘢痕、皮膚疾患若しくは障害、例えばカンジダ症、とびひ、乾癬、湿疹、にきび若しくは皮膚炎など、又は創傷若しくは傷害並びに/或いは他の皮膚病を有さないものである。
【0022】
本発明による抽出物は、ハリ及び/又は弾性の増大が望まれる身体及び/又は顔の皮膚の全部又は一部、好ましくは脚、大腿、腕、胃、バスト、首、顔の全部又は一部、好ましくは頬、額、あご、唇、唇の周りの領域、目の周りの領域、顔の「T」ゾーンに適用され得る。本発明の目的では、皮膚は、頭皮を含む。
【0023】
本発明の目的では、用語「コラーゲン」は、皮膚及び/又は粘膜に存在するI型、III型、IV型、V型、VI型、VII型、XII型、XII型I、XIV型、XVI型、XVII型、XVIII型、XXIV型及び/又はXXIX型コラーゲンを意味することを意図する。好ましくは、本発明によれば、コラーゲンは、I型及び/又はV型コラーゲン、更により好ましくはI型コラーゲンである。
【0024】
更に、用語「フィブリリン」は、皮膚及び/又は粘膜に存在するフィブリリン-1、フィブリリン-2及び/又はフィブリリン-3、好ましくはフィブリリン-1を意味することを意図する。
【0025】
本発明によるN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物は、局所的に許容される成分である。用語「局所的に許容される」は、局所適用に好適な成分を意味することを意図し、これは、皮膚及び/又は粘膜に対して非毒性、非刺激性であり、アレルギー反応を誘発せず、化学的に不安定でない。本発明による抽出物は、経口又は局所的に使用され得る。有利には、本発明による抽出物は、局所的に使用される。用語「局所的に」は、皮膚及び/又は粘膜の表面上に成分を直接局所適用すること及び/又は噴霧することを意味することを意図する。
【0026】
用語「粘膜」は、眼粘膜、膣粘膜、尿性器粘膜、肛門粘膜、鼻粘膜並びに/又は口腔、口唇及び/若しくは歯肉粘膜;好ましくは、口唇及び/若しくは口腔粘膜を意味することを意図する。
【0027】
本発明の目的では、用語「皮膚及び/又は粘膜のハリを増大させる」は、本発明によるN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下において、少なくとも1%、好ましくは少なくとも3%、より有利には少なくとも5%の皮膚及び/又は粘膜のハリの増大を意味することを意図する。本発明の1つの有利な実施形態において、それは、インビボで好ましくはヒトの顔の皮膚上において測定される増大である。更により好ましくは、このヒトの顔の皮膚のハリの増大は、クリームの総重量に対して0.1重量%の量で好ましくは存在するN.ラッパセウム(N.lappaceum)の葉の抽出物を含むクリームの適用後に測定される。或いは、葉の抽出物は、クリームの総重量に対して2重量%の量で存在する。この場合、これは、実施例1e)に記載されている条件下において臨界未満条件下の水中で調製された抽出物である。
【0028】
本発明の1つの有利な実施形態において、クリームを55~65歳の30人に女性母集団の顔の半分に適用し、N.ラッパセウム(N.lappaceum)の葉の抽出物を含まないプラシーボクリームの同じ条件下での適用と比較して、ハリの増大の測定を、前記クリームを毎日適用した28日後及び56日後に行う。
【0029】
ハリのインビボでの測定は、当業者に公知の従来の方法に従い、特にキュートメーター(cutometer)、Tonoderm(商標)、dermaTOPと組み合わされたDynaSKIN(登録商標)で測定することにより、又はSkinFibroMeter(Delfin)と称する装置を用いて実施され得る。本発明の1つの特に有利な実施形態において、SkinFibroMeterの圧力変形を受けた皮膚の体積の分布を測定することにより、ハリを評価し、皮膚の生体力学的特性を評価できるようにする。
【0030】
皮膚及び/又は粘膜の「弾性を増大させること」という用語は、本発明による抽出物の存在下においてインビボで測定された弾性の、抽出物の不在下で検出された弾性と比較した少なくとも2%、有利には少なくとも4%、より有利には少なくとも6%の増大を意味することも意図する。本発明の1つの好ましい実施形態において、この測定は、ヒトの顔の皮膚上で実施される。更により好ましくは、ヒトの顔の皮膚の弾性の増大は、クリームの総重量に対して1重量%の量で有利に存在するN.ラッパセウム(N.lappaceum)の葉の抽出物を含むクリームの存在下で測定される。或いは、葉の抽出物は、クリームの総重量に対して2重量%の量で存在する。この場合、これは、実施例1e)に記載されている条件下において臨界未満条件下の水中で調製された抽出物である。
【0031】
本発明の1つの有利な実施形態において、クリームを55~65歳の30人の女性母集団の顔の半分に適用し、N.ラッパセウム(N.lappaceum)の葉の抽出物を含まないプラシーボクリームの同じ条件下での適用と比較して、弾性の測定を、前記クリームを毎日適用した28日後及び56日後に行う。
【0032】
弾性の測定は、バリストメーター(ballistometer)、コルネオメーター(corneometer)又はキュートメーターを使用して実施され得る。1つの有利な実施形態において、弾性の測定は、吸引を受ける皮膚の機械的歪みを測定するための技術であるキュートメトリー(cutometry)により測定される。
【0033】
フリンジ投影と呼ばれる方法により、インビボでのしわの測定が可能になる。したがって、本発明に関連して、「しわを減少させること」という用語は、本発明による抽出物の存在下での小じわの、抽出物の不在下で測定された小じわのレベルと比較した少なくとも0.5%、好ましくは少なくとも1%、より好ましくは少なくとも2%の減少を意味することを意図する。本発明の1つの好ましい実施形態において、この測定は、ヒトの顔の皮膚上で実施される。更により好ましくは、ヒトの顔の皮膚の小じわの減少は、クリームの総重量に対して1重量%の量で有利に存在するN.ラッパセウム(N.lappaceum)の葉の抽出物を含むクリームの存在下で測定される。或いは、葉の抽出物は、クリームの総重量に対して2重量%の量で存在する。この場合、これは、実施例1e)に記載されている条件下において臨界未満条件下の水中で調製された抽出物である。
【0034】
本発明の1つの有利な実施形態において、クリームを55~65歳の30人の女性母集団の顔の半分に適用し、N.ラッパセウム(N.lappaceum)の葉の抽出物を含まないプラシーボクリームの同じ条件下での適用と比較して、小じわの測定を、前記クリームを毎日適用した28日後及び56日後に行う。
【0035】
本発明の1つの有利な実施形態において、N.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物は、L.チネンシス(L.chinensis)植物の抽出物と組み合わされない。特に、本発明による抽出物は、好ましくは、L.チネンシス(L.chinensis)果実の抽出物と組み合わされない。
【0036】
同様に、本発明による抽出物は、好ましくは、カプサイシン(CAS番号404-86-4、モル質量305.418g/mol)又はそれを含む植物抽出物と組み合わされない。特に、本発明による抽出物は、カプサイシンを含むトウガラシ(Capsicum)属の植物種の果実抽出物と組み合わされない。
【0037】
したがって、本発明の目的は、I型コラーゲン、V型コラーゲン、エミリン-1、フィブリン-5及びフィブリリン、好ましくはフィブリリン-1及び/若しくはLOX-L遺伝子及び/若しくはタンパク質の発現を増大させることにより、且つ/又はCYR61の発現を減少させることにより、皮膚及び/又は粘膜のハリ及び/又は弾性を増大させるためのN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の美容的使用である。
【0038】
特に、したがって、本発明の主題は、I型及び/若しくはV型コラーゲン遺伝子及び/若しくはタンパク質の発現を増大させることにより、且つ/又はCYR61の発現を減少させることにより、皮膚及び/又は粘膜のハリを増大させるためのN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の美容的使用である。本発明の別の特定の主題は、エミリン-1、フィブリン-5、フィブリリン、好ましくはフィブリリン-1及び/又はLOX-L遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増大させることにより、皮膚及び/又は粘膜の弾性を増大させるためのN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の美容的使用である。
【0039】
本発明に関連して、用語「遺伝子の増加」は、目的のタンパク質をコードするmRNAの増加を意味することを意図する。
【0040】
本発明の目的では、表現「コラーゲン遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増大させること」は、本発明によるN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下でのコラーゲンタンパク質及び/又は遺伝子の発現が、抽出物の不在下で検出されたコラーゲンタンパク質及び/又は遺伝子の発現と比較して少なくとも4%、好ましくは少なくとも20%、更により好ましくは少なくとも50%、有利には少なくとも100%、非常に有利には少なくとも400%増大することを意味することを意図する。
【0041】
本発明の1つの有利な実施形態において、コラーゲンの発現は、I型及び/又はV型コラーゲン、より好ましくはI型コラーゲンタンパク質の発現である。好ましくは、前記発現は、正常と記載される、すなわち非病理学的なヒト線維芽細胞において、より好ましくは本発明によるN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下において、有利には抽出物1a)又は抽出物1e)の存在下において測定される。
【0042】
好ましくは、I型及び/又はV型コラーゲンタンパク質の発現は、実施例2で記載されている条件下で抗コラーゲン抗体を用いて、免疫組織化学的技術を使用して測定される。
【0043】
本発明の特に1つの有利な実施形態において、N.ラッパセウム(N.lappaceum)の葉の抽出物は、I型及び/又はV型、好ましくはI型、コラーゲン遺伝子及び/又はタンパク質の発現、好ましくはタンパク質の発現を増大させることにより、皮膚及び/又は粘膜のハリを増大させるために使用される。
【0044】
本発明の代替的な実施形態において、N.ラッパセウム(N.lappaceum)の葉の抽出物は、CYR61遺伝子及び/又はタンパク質の発現、好ましくはタンパク質の発現を減少させることにより、皮膚及び/又は粘膜のハリを増大させるために使用される。
【0045】
表現「CYR61遺伝子及び/又はタンパク質の発現を減少させること」は、本発明によるN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下での遺伝子及び/又はタンパク質の発現が、抽出物の不在下で検出されたCYR61タンパク質及び/又は遺伝子の発現レベルと比較して少なくとも4%、好ましくは少なくとも15%、より好ましくは少なくとも30%減少することを意味することを意図する。
【0046】
1つの有利な実施形態において、減少は、有利には、正常、すなわち非病理学的なヒト線維芽細胞で測定された、より好ましくは本発明によるN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下で測定された、非常に有利には実施例5に記載された条件下の抽出物1a)又は1e)の存在下で測定されたCYR61タンパク質の減少である。
【0047】
加えて、表現「フィブリリン遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増大させること」は、本発明によるN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下でのフィブリリンタンパク質及び/又は遺伝子の発現が、抽出物の不在下で検出されたフィブリリンタンパク質及び/又は遺伝子の発現レベルと比較して少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも100%、有利には少なくとも150%、非常に有利には少なくとも200%増大することを意味することを意図する。1つの有利な実施形態において、これは、有利には、正常、すなわち非病理学的なヒト線維芽細胞で測定された、より好ましくはN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下で測定された、有利には実施例4に記載された条件下の抽出物1a)又は抽出物1e)の存在下で測定されたフィブリリン-1タンパク質の発現の増大の問題である。
【0048】
したがって、本発明によれば、N.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物は、フィブリリンの発現、有利にはフィブリリン-1の発現を増大させることにより、皮膚及び/又は粘膜の弾性を増大させるために使用される。
【0049】
本発明の代替的な実施形態において、N.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物は、LOX-L遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増大させることにより、皮膚及び/又は粘膜の弾性を増大させるために使用される。本発明の目的では、表現「LOX-L遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増大させること」は、本発明によるN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下でのLOX-L遺伝子及び/又はタンパク質の発現が、抽出物の不在下で検出されたLOX-Lタンパク質及び/又は遺伝子の発現レベルと比較して少なくとも2%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、非常に好ましくは少なくとも15%増大することを意味することを意図する。1つの有利な実施形態において、増大は、有利には、正常、すなわち非病理学的なヒト線維芽細胞で測定された、より好ましくは本発明によるN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下で測定された、非常に有利には抽出物1a)又は1e)の存在下で測定されたLOX-Lタンパク質の発現の増大である。
【0050】
本発明の別の代替的な実施形態において、抽出物は、フィブリン-5遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増大させることにより、皮膚及び/又は粘膜の弾性を増大させる。本発明の目的では、表現「フィブリン-5遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増大させること」は、本発明によるN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下でのフィブリン-5遺伝子及び/又はタンパク質の発現が、抽出物の不在下で検出されたフィブリン-5タンパク質及び/又は遺伝子の発現レベルと比較して少なくとも2%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、非常に好ましくは少なくとも15%増大することを意味することを意図する。1つの有利な実施形態において、増大は、有利には、正常、すなわち非病理学的なヒト線維芽細胞で測定された、より好ましくは本発明によるN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下で測定された、非常に有利には抽出物1a)又は1e)の存在下で測定されたフィブリン-5タンパク質の発現の増大である。
【0051】
本発明の更なる別の代替的な実施形態において、抽出物は、エミリン-1遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増大させることにより、皮膚及び/又は粘膜の弾性を増大させる。本発明の目的では、表現「エミリン-1遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増大させること」は、本発明によるN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下でのエミリン-1遺伝子及び/又はタンパク質の発現が、抽出物の不在下で検出されたエミリン-1タンパク質及び/又は遺伝子の発現レベルと比較して少なくとも2%、好ましくは少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%、非常に好ましくは少なくとも15%増大することを意味することを意図する。1つの有利な実施形態において、増大は、有利には、正常、すなわち非病理学的なヒト線維芽細胞で測定された、より好ましくは本発明によるN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下で測定された、非常に有利には抽出物1a)又は1e)の存在下で測定されたエミリン-1タンパク質の発現の増大である。
【0052】
したがって、本発明の主題は、フィブリリン-1、LOX-L、フィブリン-5及び/又はエミリン-1遺伝子及び/又はタンパク質の発現を増大させることにより、皮膚及び/又は粘膜の弾性を増大させるためのN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の美容的使用である。本発明の1つの有利な実施形態において、N.ラッパセウム(N.lappaceum)の葉、及び/又は枝、及び/又は樹皮、及び/又は茎、及び/又は種子、好ましくは葉の抽出物は、フィブリリン-1、LOX-L、フィブリン-5及び/又はエミリン-1遺伝子及び/又はタンパク質の発現、好ましくはフィブリリン-1遺伝子及び/タンパク質の発現、より好ましくはフィブリリン-1タンパク質の発現を増大させるために使用され、皮膚及び/又は粘膜の弾性を増大させる。
【0053】
抽出物は、樹皮、葉、枝、茎、全果実、果実の果肉、種子、果皮、根から選択されるN.ラッパセウム(N.lappaceum)植物の全部又は一部であり得る。好ましくは、本発明によれば、抽出物は、葉、及び/又は種子、及び/又は果肉、及び/又は枝の抽出物である。より好ましくは、抽出物は、葉の抽出物である。問題の植物全体又は植物の一部は、好ましくは、抽出前に乾燥及び/又は粉砕される。
【0054】
本発明の目的では、用語「果肉」は、果皮を含まず、且つ種子を含まない果実を意味することを意図する。用語「果皮」は、果物の包みを意味することを意図し、殻とも呼ばれる。用語「樹皮」は、樹木及び/又は枝の樹皮を意味することも意図する。したがって、用語「枝」は、木質部及び樹皮を意味することを意図する。用語「種子」は、果肉を含まない種子を意味することを意図する。
【0055】
抽出物は、ミキサーを使用して、超音波粉砕を含む粉砕により、浸軟、熱煎出から選択される当業者に公知の様々な抽出方法によって得ることができるか、又は他に抽出物は、臨界未満条件下での水中抽出により得ることができる。好ましくは、抽出は、浸軟によって実施される。特に1つの有利な実施形態において、抽出は、臨界未満条件下の水中で実施される。有利には、抽出は、超臨界状態(CO)下で実施されない。
【0056】
抽出は、周囲温度、すなわち20℃の温度を含む4℃~300℃の範囲の温度で実施され得る。本発明の1つの好ましい実施形態において、抽出は、60℃~90℃、好ましくは70℃~85℃、より好ましくは80℃の温度で実施される。
【0057】
本発明の1つの代替的な実施形態において、抽出は、4℃~25℃、より好ましくは4℃~20℃の温度、より有利には周囲温度、すなわち20℃で実施される。
【0058】
本発明の更なる別の代替的な実施形態において、抽出は、100℃~374℃、有利には120℃~250℃の範囲、より有利には120℃の温度において臨界未満条件下の水中で実施される。抽出は、単一の所定の温度又は連続して上昇する温度で実行され得る。本発明の1つの有利な実施形態において、抽出は、120℃、140℃及び160℃の3つの上昇する温度で連続的に実施される。
【0059】
用語「臨界未満条件」下の抽出は、100℃超の温度及び221bar未満の圧力の条件下における水の存在下での抽出を意味することを意図し、水が液体状態のままであるが、周囲温度での粘度及び表面張力よりも低い粘度及び表面張力を有し、その誘電率を増大させる。
【0060】
したがって、抽出圧力は、有利には圧力抽出オートクレーブにおいて150bar~250bar、好ましくは200~221barである。
【0061】
抽出は、30分~24時間、好ましくは30分~12時間、より好ましくは1時間~5時間、より有利には1時間~2時間にわたって実施することができる。非常に有利には、抽出は、1時間実施される。
【0062】
本発明による抽出物は、溶媒又は溶媒混合物、好ましくはプロトン性極性溶媒、有利には水、アルコール、グリコール、ポリオール、99/1~1/99(w/w)の水/アルコール、水/グリコール若しくは水/ポリオール混合物(例えば、エタノール、グリセロール及び/若しくはブチレングリコール並びに/又は他のグリコール、例えばキシリトール及び/若しくはプロパンジオールと混合された水など)、有利には単独の溶媒としての水中で抽出することにより得ることができる。したがって、1つの特定の実施形態において、抽出物は、単独の溶媒としての水中で調製される葉の抽出物である。
【0063】
特に、抽出物は、水性抽出により得られる。本発明の目的では、「水性抽出により得られる抽出物」は、水溶液の総重量に対して60重量%超、有利には少なくとも70重量%、特に少なくとも80重量%、より詳細には少なくとも90重量%、特に少なくとも95重量%の水を含有し、更により有利にはグリコールを含有せず、特にアルコールを含有せず、特に水のみを含有する水溶液を用いた抽出により得られる抽出物を意味することを意図する。
【0064】
1つの代替的な実施形態において、抽出物は、それぞれの割合が(80、20;w/w)であるプロパンジオールと水との混合物中での抽出により得られる。
【0065】
本発明の別の代替的な実施形態において、更に、抽出は、好ましくは、BASFにより、Plantacare(登録商標)1200UPの名称で販売されているラウリルグルコシド又は他にカプリリル/カプリルグルコシド(Plantacare(登録商標)810UP)から選択される非イオン性界面活性剤、好ましくはカプリリル/カプリルグルコシド(Plantacare(登録商標)810UP)の存在下で実施され得る。非イオン性界面活性剤の重量に対する濃度は、抽出物の総重量に対して0.5重量%~5重量%、有利には0.5重量%~1%であり得、より有利には、それは、1重量%である。
【0066】
抽出物は、溶媒/植物混合物の総重量(w/w)に対して、N.ラッパセウム(N.lappaceum)植物の少なくとも一部分を、0.1重量%~10重量%の量の新鮮な材料又は固形分、好ましくは固形分を抽出することによって得ることができる。好ましくは、抽出物は、溶媒、好ましくは水及び植物からなる混合物の総重量(w/w)に対して1重量%~10重量%、有利には5重量%~10重量%、より有利には10重量%の量の植物の少なくとも一部の固形分を抽出することによって得られる。本発明の1つの特定の実施形態において、抽出物は、溶媒/植物混合物の総重量(w/w)に対して10重量%の量の植物の少なくとも一部から得られ、その後、20%まで濃縮される。好ましくは、次いで、植物の一部は、種子になる。
【0067】
したがって、本発明の1つの有利な実施形態において、抽出物は、80℃の温度において1時間にわたり、実施例1a)に記載されている条件下で葉及び水の総重量に対して10重量%の量のN.ラッパセウム(N.lappaceum)植物の乾燥葉を単独溶媒としての水中で浸軟することによって得られる。次いで、得られる粗抽出物をデカントし、遠心分離にかけ、次いで濾過する。得られる抽出物は、任意選択的に乾燥され得、粉末形態になる。
【0068】
別の実施形態において、抽出物は、80℃の温度において1時間にわたり、実施例1b)に記載されている条件下で葉及び水の総重量に対して5重量%の量のN.ラッパセウム(N.lappaceum)植物の乾燥葉からの浸軟によって得られる。次いで、得られる粗抽出物をデカントし、遠心分離にかけ、次いで濾過する。
【0069】
本発明の更なる別の実施形態において、抽出物は、周囲温度、すなわち20℃の温度において2時間にわたり、実施例1c)に記載されている条件下で枝及び水の総重量に対して10重量%の量のN.ラッパセウム(N.lappaceum)植物の乾燥枝からの浸軟によって得られる。有利には、この場合、抽出は、濃度1重量%のカプリリル/カプリルグルコシド(Plantacare(登録商標)810UP)の存在下で実施される。次いで、得られる粗抽出物をデカントし、遠心分離にかけ、次いで濾過する。
【0070】
本発明の第4の実施形態において、抽出は、80℃の温度において1時間にわたり、実施例1d)に記載されている条件下、プロパンジオール/水混合物(80,20;v/v)中で10重量%の量のN.ラッパセウム(N.lappaceum)の乾燥葉からの浸軟によって実施される。次いで、得られる粗抽出物をデカントし、遠心分離にかけ、次いで濾過する。
【0071】
本発明の第5の実施形態において、抽出は、250℃の温度で250barの圧力下において、実施例1e)に記載されている条件下、圧力抽出オートクレーブ中で10重量%の量のN.ラッパセウム(N.lappaceum)の乾燥葉を臨界未満条件下の水中抽出することによって実施される。次いで、得られる粗抽出物をデカントし、遠心分離にかけ、次いで濾過する。得られる抽出物は、任意選択的に乾燥され得る。
【0072】
本発明の第6の実施形態において、抽出は、80℃の温度において1時間にわたり、実施例1f)に記載されている条件下で果肉及び単独溶媒としての水の総重量に対して10重量%の量の果実果肉の浸軟によって実施される。或いは、果肉の抽出物は、80℃の温度において1時間にわたり、プロパンジオール/水(80,20;v/v)混合物中で10重量%の量の果肉から出発して実施され得る。更なる別の代替的な実施形態において、果肉の抽出は、臨界未満状態下の水中の抽出で実施され得る。次いで、得られる粗抽出物をデカントし、遠心分離にかけ、次いで濾過する。
【0073】
本発明の第7の実施形態において、抽出は、周囲温度、すなわち20℃において2時間にわたり、実施例1g)に記載されている条件下で種子及び単独溶媒としての水の総重量に対して10重量%の量の種子の浸軟によって実施される。或いは、種子の抽出物は、80℃の温度において1時間にわたり、プロパンジオール/水(80,20;v/v)混合物中で10重量%の量の種子から出発して実施され得る。更なる別の代替的な実施形態において、種子の抽出は、臨界未満状態下の水中の抽出により実施され得る。次いで、得られる粗抽出物をデカントし、遠心分離にかけ、次いで濾過する。
【0074】
次いで、本発明により得られ且つ使用される抽出物を遠心分離にかけ、且つ/又は濾過し、且つ/又は蒸留し、可溶性分画、好ましくは水溶性分画を回収し得る。好ましくは、次いで、得られる上清を有利には0.45μmのカットオフ閾値で濾過する。更なる脱色及び/又は脱臭工程を、抽出の任意の段階において、当業者に公知の技術に従って抽出物で実施することができる。特に抽出物を活性炭で脱色させ得る。
【0075】
次いで、溶媒の蒸発若しくは乾燥により、例えば凍結乾燥により、又はマルトデキストリンの存在下で噴霧乾燥することにより、抽出物を濃縮することができる。次いで、抽出物を粉末形態にする。
【0076】
したがって、本発明の1つの好ましい実施形態において、得られる抽出物は、得られる粉末の総重量に対して20重量%~90重量%、好ましくは40重量%~80重量%、より好ましくは70重量%~80重量%の濃度のマルトデキストリンの存在下で噴霧乾燥される。
【0077】
本発明の1つの特定の実施形態において、特に皮膚科学でのその使用について、得られるN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物を滅菌する。
【0078】
抽出物は、化粧品若しくは皮膚科学的成分の形態において、又は少なくとも1つの美容的に若しくは皮膚科学的に許容される賦形剤を含む化粧品若しくは皮膚科学的組成物中において単独で使用することができる。
【0079】
抽出物が化粧品又は皮膚科学的成分の形態で単独で使用される場合、それは、好ましくは、溶媒、特に極性溶媒、例えば水、アルコール、ポリオール、グリコール、例えばペンチレングリコール、及び/若しくはブチレングリコール、及び/若しくはヘキシレングリコール、及び/若しくはカプリリルグリコール又はこれらの混合物、好ましくは水性グリコール混合物、より好ましくはヘキシレングリコール、カプリリルグリコール及びこれらの混合物から選択されるグリコールを含有する水性グリコール混合物中に好ましくは溶解及び/又は希釈される。有利には、得られる抽出物は、ヘキシレングリコールを含有する、特に水溶液の総重量に対して0.1重量%~10重量%のヘキシレングリコール、好ましくは0.5重量%~5重量%のヘキシレングリコールを含有する水溶液中に希釈及び/又は溶解される。有利には、得られる抽出物は、カプリリルグリコールを含有する、特に水溶液の総重量に対して0.01重量%~5重量%のカプリリルグリコール、好ましくは0.1重量%~1重量%のカプリリルグリコールを含有する水溶液中に希釈及び/又は溶解される。特に、本発明によるN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物が溶解する水溶液は、キサンタンガム、特に水溶液の総重量に対して0.01重量%~5重量%のキサンタンガム、より詳細には水溶液の総重量に対して0.1重量%~1重量%のキサンタンガムを含む。
【0080】
有利には、本発明によるN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物が溶解する溶液は、ヘキシレングリコール、カプリリルグリコール及びキサンタンガムを含む。
【0081】
本発明の1つの代替的な実施形態において、抽出物は、化粧品成分の総重量に対して50重量%~85重量%、有利には60重量%~80重量%、より有利には79重量%の濃度のグリセリン、化粧品成分の総重量に対して5重量%~20重量%、有利には10重量%の濃度のバイオプロパンジオール及び水を含む水溶液中に溶解される。
【0082】
抽出物は、少なくとも1つの美容的に許容される賦形剤を更に含む化粧品組成物中にも存在し得る。用語「許容される」は、アレルギー反応を誘発せず、化学的に安定な皮膚に対して非刺激性の化粧品賦形剤又は賦形剤を意味することを意図する。
【0083】
したがって、本発明の主題は、皮膚及び/又は粘膜において、I型及び/若しくはV型コラーゲン、好ましくはI型コラーゲン、LOX-L、フィブリン-5、エミリン-1及び/若しくはフィブリリン、好ましくはフィブリリン-1、遺伝子及び/若しくはタンパク質の発現を増大させることにより、且つ/又はCYR61の発現を減少させることにより、皮膚及び/又は粘膜のハリ及び/又は弾性を増大させるための、化粧品組成物における本発明によるN.ラッパセウム(N.lappaceum)植物の抽出物の使用に関する。
【0084】
本発明によるN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物を含む化粧品組成物は、ハリ及び/又は弾性の増大が望まれる身体及び/又は顔の全部又は一部、好ましくは脚、大腿、腕、胃、バスト、首、顔の全部又は一部、好ましくは頬、額、あご、唇、唇の周りの領域、目の周りの領域、顔の「T」ゾーンに好ましくは局所的に適用され得る。
【0085】
本発明の一実施形態において、抽出物は、組成物の総重量に対して1×10-4重量%~10重量%、好ましくは1×10-4重量%~5重量%、更により好ましくは1×10-3重量%~3重量%濃度で化粧品又は皮膚科学組成物中に存在する。
【0086】
賦形剤は、界面活性剤及び/又は乳化剤、防腐剤、緩衝剤、キレート剤、変性剤、白濁剤、pH調整剤、還元剤、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、フィルム形成ポリマー、充填剤、つや消し剤、光沢剤、顔料、色素、芳香剤並びにこれらの混合物から選択され得る。CTFA(Cosmetic Ingredient Handbook,Second Edition(1992年))は、本発明での使用に好適な様々な化粧品賦形剤を記載している。
【0087】
有利には、賦形剤は、ポリグリセロール、エステル、セルロースポリマー及び誘導体、ラノリン誘導体、リン脂質、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ、サッカロース系安定剤、ビタミンE及びその誘導体、キサンタンガム、天然及び合成ワックス、植物油、トリグリセリド、不けん化化合物、フィトステロール、シリコーン、タンパク質加水分解物、ベタイン、アミンオキシド、植物抽出物、サッカロースエステル、二酸化チタン、グリシン並びにパラベンからなる群から選択され、より好ましくはステアレス-2、ステアレス-21、グリコール-15ステアリルエーテル、セテアリルアルコール、フェノキシエタノール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、ブチレングリコール、カプリリルグリコール、天然トコフェロール、グリセリン、ジヒドロキシセチルリン酸ナトリウム、イソプロピルヒドロキシセチルエーテル、ステアリン酸グリコール、トリイソノナノイン、オクチルココエート、ポリアクリルアミド、イソパラフィン、ラウレス-7、カルボマー、プロピレングリコール、へキシレングリコール、グリセロール、ビサボロール、ジメチコン、水酸化ナトリウム、ジポリヒドロキシステアリン酸PEG30、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド、オクタン酸セテアリル、アジピン酸ジブチル、ブドウ種子油、ホホバ油、硫酸マグネシウム、EDTA、シクロメチコン、キサンタンガム、クエン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ワックス及び鉱物性油、イソステアリン酸イソステアリル、プロピレングリコールジペラルゴネート、イソステアリン酸プロピレングリコール、PEG8、蜜蝋、水素化パーム核油グリセリド、ラノリン油、ゴマ油、乳酸セチル、ラノリンアルコール、ヒマシ油、二酸化チタン、ラクトース、サッカロース、低密度ポリエチレン、等張生理食塩水並びにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0088】
本発明による化粧品組成物は、水性又は油性溶液、クリーム又は水性ジェル又は油性ジェル、特にシャワージェル、ミルク、エマルション、マイクロエマルション又はナノエマルション、特に水中油型、又は油中水型、又は複合型、又はシリコーン系のもの、マスク、セラム、ローション、液体石けん、皮膚科学的な棒状物、軟膏、発泡体、パッチ、無水製品、好ましくは液体、ペースト又は例えばメーキャップパウダー、ペン型若しくはスティックの形態、特にリップスティックの形態の固体であるものから選択され得る。有利には、本発明による化粧品組成物は、クリーム又はセラムである。
【0089】
本発明に従って使用される組成物は、老化防止活性剤などの相補的又は相乗的作用をもたらす化粧品活性成分も含有し得る。これらの中で、真皮の巨大分子の合成を刺激するか若しくはその分解を防ぐ活性剤、ケラチノサイト増殖を刺激する薬剤、鎮静剤、保湿剤又は他に細孔のサイズ及び/若しくは開口部の調節に作用する薬剤を挙げ得る。
【0090】
老化防止活性剤の中で、
- フィブロネクチン合成を刺激する薬剤、特にトウモロコシ抽出物(このような抽出物は、特にBASF Beauty Care Solutions Franceによって名称Deliner(商標)で販売されている)及びSederma社から商標Matrixil(登録商標)で販売されているパルミトイルペンタペプチド、
- コラーゲン線維の形成を刺激する薬剤、例えばBASF Beauty Care Solutions Franceによって名称Dermagenist(商標)で販売されているオリガナム・マヨラナ(Origanum majorana)抽出物など、- 細胞外マトリックス及び/又は上皮基底膜におけるパールカン及びジストログリカンの発現を刺激する薬剤、例えばBASF Beauty Care Solutions Franceによって名称Perlaura(商標)で販売されているポリゴヌム・ビストルタ(Polygonum bistorta)抽出物など、
- 細胞外マトリックス線維芽細胞増殖因子(FGF2)を分解及び/又は変性から保護する薬剤、特にBASF Beauty Care Solutions Franceの名義で出願された特許出願である仏国特許第0654316号明細書に記載されており、BASF Beauty Care Solutions Franceにより、名称Linefactor(商標)で販売されているヒビスクス・アベルモスクス(Hibiscus abelmoscus)抽出物及び/又は線維芽細胞増殖を刺激する薬剤、例えばBASF Beauty Care Solutions Franceによって販売されており、特許出願である欧州特許第1119344B1号明細書(Laboratoires Expanscience)にも記載されている、名称Phytokine(商標)で公知のペプチドを含有する発酵ダイズ抽出物、好ましくはこれらの2種の抽出物の組合せ、
- ラミニン合成を刺激する薬剤、特にバイオテクノロジーによって改変された麦芽の抽出物(このような抽出物は、特にBASF Beauty Care Solutions Franceによって名称Basaline(商標)で販売されている)、
- ヒアルロナン合成酵素2(HAS2)の発現及び/又は活性を刺激する薬剤、例えば特許出願である仏国特許出願公開第2893252号明細書に記載の植物抽出物、特にガランガ(アルピニア・ガランガ(Alpinia galanga))の水性抽出物及びBASF Beauty Care Solutions Franceにより名称Hyalufix(商標)で販売されているもの、
- リシルオキシダーゼ様(LOXL)の合成を刺激する薬剤、例えばゲオフィラ・コルディフォリア(Geophila cordifolia)抽出物及び特許出願である仏国特許第2855968号明細書に記載の抽出物、特にディル抽出物並びにBASF Beauty Care Solutions Franceにより名称Lys’lastine(商標)で販売されているもの、
- 細胞内ATP合成を刺激する薬剤、特に藻類ラミナリア・ディギタータ(Laminaria digitata)の抽出物、
- グリコサミノグリカン合成を刺激する活性剤、例えば乳発酵製品、
- コラーゲンを刺激する活性剤、例えばレチノール及び/又はビタミンC、
- メタロプロテイナーゼ(MMP)、例えばより具体的にはMMP1、2、3及び9を阻害する活性剤、例えばレチノイド及び誘導体、オリゴペプチド及びリポペプチド、リポアミノ酸、BASF Beauty Care Solutions France SASから名称Arganyl(商標)で販売されているアルガニア・スピノサ(Argania spinoso)抽出物、リコペン、イソフラボン、ケルセチン、ケンフェロール及びアピゲニンなど、
- 膨潤剤、特にBASF Beauty Care Solutions Franceによって販売されているヒアルロン酸充填球体(Hyaluronic Filling Spheres(商標))、
- LOXの発現を増大させるための薬剤、例えばBASF Beauty Care Solutions Franceにより、名称LOX-AGE(商標)で販売されているシコリウム・インチブス(Cichorium intybus)抽出物など、
- コラーゲン脱糖化を増大及び/又はI型コラーゲンの発現を増大させるための薬剤、例えばBASF Beauty Care Solutions Franceにより、名称CollRepair(商標)で販売されているサルビア・ミルティオリザ(Salvia miltiorrhiza)の抽出物とナイアシンアミドとの組み合わせなど、- ルミカン及びコラーゲン合成を刺激する薬剤、例えばBASF Beauty Care Solutions Franceによって名称Dermican(商標)で販売されており、特許出願である国際公開第2005/120554号パンフレットに記載されている、合成アセチルGln Asp Val Hisテトラペプチドなど、
- エラスチン及びコラーゲンを保護する及び刺激するための薬剤、例えばBASF Beauty Care Solutions Franceにより、名称Elestan(商標)で販売されているマニルカラ・ムルチネルビス(Manilkara multinervis)の葉の抽出物及びBASF Beauty Care Solutions Franceにより、Eperuline(商標)という名称で販売されているエピルア・ファルカータ(Eperua falcata)の根の抽出物など、
- 特にメラニン合成を阻害することによって作用する色素沈着防止剤、例えばBASF Beauty Care Solutions Franceにより、名称Actiwhite(商標)で販売されているピスム・サティウム(Pisum sativum)抽出物とスクロースジラウレートとの相乗的複合体又はBASF Beauty Care Solutions Franceにより、名称Radianskin(商標)で販売されているヒドロキシフェノキシプロピオン酸など、
- 皮膚のハリ及び弾性を刺激する薬剤、例えば本出願人により、名称Collalift(登録商標)18で販売されているカヤ・セネガレンシス(Khaya senegalensis)抽出物など
が挙げられる。
【0091】
本発明による組成物において好ましくは使用される、ケラチノサイト増殖を刺激する薬剤は、特にレチノイド、例えばレチノール及びパルミチン酸レチニルを含めたそのエステル並びにフロログルシノールを含む。ケラチノサイト分化を刺激する薬剤は、例えば、ミネラル、例えばカルシウム及びリグナン、例えばセコイソラリシレシノール並びにBASF Beauty Care Solutions Franceから名称Neurobiox(商標)で販売されているアキレア・ミレフォリウム(Achillea millefollium)抽出物を含む。
【0092】
本発明による組成物において好ましくは使用される鎮静剤として、五員環トリテルペン、ウルソール酸及びその塩、オレアノール酸及びその塩、ベツリン酸及びその塩、サリチル酸塩、特にサリチル酸亜鉛、ビサボロール、アラントイン、不飽和オメガ-3油、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、インドメタシン及びベタメタゾン、抗炎症活性剤、特に特許出願である仏国特許第2847267号明細書に記載のもの、特にBASF Beauty Care Solutions France SASによって名称Inhipase(登録商標)で販売されているプエラリア・ロバタ(Pueraria lobata)の根の抽出物、テオブロマ・カカオ(Theobroma cacao)抽出物を挙げることができる。
【0093】
孔径及び/若しくはこれらの開口部の調節並びに/又は皮脂産生に作用する薬剤のうち、BASF Beauty Care Solutions Franceにより、名称LOX-AGE(商標)で販売されているシコリウム・インチブス(Cichorium intybus)抽出物又は名称Mat XS(商標)Clinicalで販売されている合成サルコシン及び/又はBASF Beauty Care Solutions Franceの名義の特許出願である国際公開第2010/063674号パンフレットに記載されており、名称MAT XS(商標)Brightで販売されているオルトシホン・スタミネウス(オルトシホン・スタミネウス)を例として挙げ得る。
【0094】
本発明による組成物において好ましくは使用される保湿剤は、プルラン、ヒアルロン酸ナトリウム及びアルギン酸ナトリウムの組み合わせ、例えばBASF Beauty Care Solutions Franceにより、名称PatcHO(商標)で販売されているものを挙げ得る。
【0095】
本発明の別の主題は、皮膚及び/又は粘膜のハリ及び/又は弾性を増大させるために、本発明による抽出物又はそれを含む化粧品組成物を局所的に又は経口的に、好ましくは局所的に適用することを含む美容的ケア方法にも関する。
【0096】
したがって、本発明による美容的ケア方法は、皮膚及び/又は粘膜のハリを増大させるために、皮膚及び/又は粘膜において、I型及び/若しくはV型コラーゲン、好ましくはI型コラーゲン、遺伝子及び/若しくはタンパク質の発現を増大させ、且つ/又はCYR61の発現を減少させるためのものである。
【0097】
本発明の別の主題は、皮膚及び/又は粘膜において、フィブリリン、好ましくはフィブリリン-1、LOX-L、フィブリン-5及び/又はエミリン-1、より好ましくはフィブリリン-1、遺伝子及び/又はタンパク質の発現、有利にはタンパク質の発現を増大させることにより、皮膚及び/又は粘膜の弾性を増大させるための、本発明によるN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物又はそれを含む化粧品組成物を局所又は経口適用、好ましくは局所適用することを含む美容的ケア方法に関する。
【0098】
本発明の一実施形態において、方法は、ハリ及び/又は弾性の増大が望まれる身体及び/又は顔の皮膚の全部又は一部、好ましくは脚、大腿、腕、胃、バスト、首、顔の全部又は一部、好ましくは頬、額、あご、唇、唇の周りの領域、目の周りの領域、顔の「T」ゾーンに本発明による抽出物又はそれを含む化粧品組成物を局所適用することを含む。
【0099】
最後に、本発明の別の主題は、コラーゲン、好ましくはI型コラーゲンタンパク質及び/若しくは遺伝子の発現の損失並びに/又は酒さ若しくは毛細血管拡張症などの皮膚及び/若しくは粘膜のハリの病的損失を伴う病的状態の予防及び/若しくは治療における、局所的又は経口的な、好ましくは局所的な、単独での又はそれを含む医薬品組成物、好ましくは皮膚科学的組成物でのその使用のためのN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物に関する。
【0100】
最後に、本発明の別の主題は、フィブリリン、好ましくはI型フィブリリン、タンパク質及び/若しくは遺伝子の発現の損失並びに/又は日光弾性症、皮膚弛緩疾患及び/若しくは妊娠線などの皮膚及び/若しくは粘膜の弾性の病的損失を伴う病的状態の予防及び/若しくは治療における、局所的又は経口的な、好ましくは局所的な、単独での又はそれを含む医薬品組成物、好ましくは皮膚科学的組成物でのその使用のためのN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物に関する。
【0101】
本発明の一実施形態において、抽出物は、組成物の総重量に対して1×10-4重量%~10重量%、好ましくは1×10-4重量%~5重量%、更により好ましくは1×10-3重量%~3重量%の濃度で少なくとも1つの皮膚科学的又は薬学的に許容される賦形剤を更に含む皮膚科学又は医薬品組成物中に含まれる。
【0102】
本発明の説明を参照する実施例を以下に示す。これらの実施例は、例証目的で提示されるものであり、決して本発明の範囲を限定するものではない。実施例の各々は、一般的な範囲を有する。実施例は、本発明の不可欠な部分であり、実施例を含む全体としての説明からの先行技術から新規であると思われる特徴は、本発明の不可欠な部分である。
【実施例
【0103】
実施例1:本発明による様々なN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の調製
実施例1a)80℃の温度において1時間にわたり、葉及び単独溶媒としての水の総重量に対して10重量%の量のN.ラッパセウム(N.lappaceum)植物の乾燥葉を単独溶媒としての水中で浸軟することによって抽出物を得た。粗抽出物をデカントし、遠心分離にかけ、次いで濾過した。次いで、続いてこの抽出物を乾燥させ得る。
【0104】
実施例1b)80℃の温度において1時間にわたり、乾燥葉及び単独溶媒としての水の総重量に対して5重量%の量のN.ラッパセウム(N.lappaceum)植物の葉から出発する浸軟によって抽出物を得た。粗抽出物を遠心分離にかけ、次いで濾過した。
【0105】
実施例1c)周囲温度、すなわち20℃の温度において2時間にわたり、1重量%の濃度のカプリリル/カプリルグルコシド(Plantacare(登録商標)810UP)の存在下で枝及び単独溶媒としての水の総重量に対して10重量%の量のN.ラッパセウム(N.lappaceum)植物の乾燥枝から出発する浸軟によって抽出物を得た。粗抽出物をデカントし、遠心分離にかけ、次いで濾過した。
【0106】
次いで、実施例1a)~1c)で得られた抽出物を溶媒蒸発によって濃縮し、マルトデキストリンの存在下で噴霧乾燥により乾燥させた。これらの抽出物は、粉末形態である。
【0107】
実施例1d)80℃の温度において1時間にわたり、プロパンジオール/水混合物(80,20;w/w)中で10重量%の量のN.ラッパセウム(N.lappaceum)の乾燥葉から出発する浸軟によって抽出を実施した。粗抽出物をデカントし、遠心分離にかけ、次いで濾過した。
【0108】
実施例1e)250℃の温度において、250barの圧力下、圧力抽出オートクレーブ中において臨界未満条件下の水中で10重量%の量のN.ラッパセウム(N.lappaceum)の乾燥葉から出発する抽出を実施した。粗抽出物をデカントし、遠心分離にかけ、次いで濾過した。
【0109】
実施例1f)80℃の温度において1時間にわたり、果肉及び水の総重量に対して10重量%の量のN.ラッパセウム(N.lappaceum)の果実果肉から出発する単独溶媒としての水中での浸軟によって抽出を実施した。粗抽出物をデカントし、遠心分離にかけ、次いで濾過した。
【0110】
実施例1g)周囲温度、すなわち20℃において2時間にわたり、種子及び水の総重量に対して10重量%の量の種子を単独溶媒としての水中で浸軟することによって抽出を実施した。粗抽出物をデカントし、遠心分離にかけ、次いで濾過した。
【0111】
実施例1h)80℃の温度において1時間にわたり、枝及び単独溶媒としての水の総重量に対して10重量%の量のN.ラッパセウム(N.lappaceum)植物の乾燥枝から出発する浸軟によって抽出を実施した。粗抽出物をデカントし、遠心分離にかけ、次いで濾過した。
【0112】
実施例2:本発明による様々なN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下でのI型コラーゲン発現の増大
手順:34歳の健康な女性供与者からの「正常な」ヒト線維芽細胞、すなわち病的状態を示さない線維芽細胞を2つの異なる最終濃度の様々なN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下で48時間、合成培地(FGM)中で培養し、次いで細胞培地を除去した。本発明による抽出物を添加しない同じ培養培地を対照(対照)として使用した。得られた細胞層を水酸化アンモニウム溶液で溶解させた。
【0113】
緩衝溶液(PBS)中500ng/mlで使用した抗コラーゲンI抗体で得られた溶解物を用いて、I型コラーゲンを分析した。60分後、40ng/mlで使用される第2の抗体を60分間適用した。洗浄後、暴露溶液を添加し、蛍光を測定した(ENVision、PerkinElmer)。蛍光結果は、N.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物がない同様の細胞培地(対照)で得られた蛍光に関して標準化され、各条件下で得られたDNA量に関連していた。提示された結果は、6つのアッセイ(n=6)の平均値に対応する(SD:標準偏差)。
【0114】
【表1】
【0115】
実施例3)様々なN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下でのV型コラーゲンの発現の増大
手順:34歳の健康な女性供与者からの「正常な」ヒト線維芽細胞、すなわち病的状態を示さない線維芽細胞を異なる最終濃度の様々なN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下で48時間、合成培地(FGM)中で培養し、次いで細胞培地を除去した。本発明による抽出物を添加しない同じ培養培地を対照(対照)として使用した。得られた細胞層を水酸化アンモニウム溶液で溶解させ、次いでV型コラーゲンを、緩衝溶液(PBS)中に1/4000まで希釈した抗コラーゲンV抗体で分析した。60分後、1/25000まで希釈した第2の抗体を60分間適用した。洗浄後、暴露溶液を添加し、蛍光を測定した(ENVision、PerkinElmer)。蛍光結果は、N.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物がない同様の細胞培地(対照)で得られた蛍光に関して標準化され、各条件下で得られたDNA量に関連していた。提示された結果は、3つのアッセイ(n=3)の平均値に対応する(SD:標準偏差)。
【0116】
【表2】
【0117】
実施例4:様々なN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下でのフィブリリン-1発現の増大
手順:34歳の健康な女性供与者からの「正常な」ヒト線維芽細胞、すなわち病的状態を示さない線維芽細胞を2つの異なる最終濃度のN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下で48時間、合成培地(FGM)中で培養し、次いで細胞培地を除去した。抽出物を添加しない同じ培養培地を対照(対照)として使用した。続いて、細胞を採取し、次いで免疫局在を実現するために特定の溶解緩衝液で溶解した(ウェスタンブロット)。タンパク質濃度は、BCA法によって決定した。タンパク質は、抗フィブリリン一次抗体を使用したキャピラリー電気泳動(ProteinSimple、USA)によって同定され、ペルオキシダーゼ結合共役二次抗体を使用して免疫局在化された。結果を、Compassソフトウェア(バージョン2.7.1(ProteinSimple))を用いて定量化した。
【0118】
【表3】
【0119】
実施例5:N.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下でのCYR61タンパク質の発現の減少
手順:34歳の健康な女性供与者からの「正常な」ヒト線維芽細胞、すなわち病的状態を示さない線維芽細胞を異なる最終濃度のN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物の存在下で48時間、合成培地(FGM)中で培養し、次いで細胞培地を除去した。本発明による抽出物を添加しない同じ培養培地を対照(対照)として使用した。次いで、上清を分析用に回収した。タンパク質濃度は、BCAアッセイ(ビシンコニン酸アッセイ)によって決定した。タンパク質の発現をウェスタンブロット(n=4)(SallySue(登録商標)、ProteinSimple(登録商標))によって測定した。対象とするCYR61タンパク質は、キャピラリー電気泳動(1/50まで希釈した抗体AbCam(ab24448))により検出し、次いでセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体及び化学発光基質で見えるようにした。次いで、化学発光シグナルを検出し、定量化した(Compass(登録商標)バージョン2.7.1(ProteinSimple(登録商標)))。
【0120】
結果:
結果は、非処理の線維芽細胞(対照)の上清のCYR61タンパク質の発現レベルに対する相対的な割合として表される。
【0121】
【表4】
【0122】
実施例6:化粧品成分の実施例
示された量は、化粧品成分の全重量に対する重量パーセントである。
【0123】
実施例6a)
N.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物実施例1a)~1e) 1~20%(w/w)
マルトデキストリン 80~99%(w/w)
【0124】
実施例6b)
N.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物実施例1a)~1e) 1%
グリセリン 79%
バイオプロパンジオール 10%
水 10%
【0125】
実施例7:化粧品組成物の実施例
以下の組成物を、特に一緒に混合される様々な相に関して、当業者に公知の方法に従って調製する。
【0126】
化粧品成分は、上記の実施例6に従って調製する。示された量は、組成物の全重量に対する重量パーセントである。
【0127】
7a)
化粧品成分 0.2~0.3
EDTA 0.05
ステアレス-2 2.00
ステアレス-21 2.50
セテアリルアルコール 1.00
プロピルヘプチルカプリレート 15.00
水酸化ナトリウム(溶液中30%) 0.10
フェノキシエタノール、クロルフェネシン、安息香酸、ブチレングリコール、ソルビン酸の混合物(Germazide(商標)PBS) 1.25
ポリアクリレート-X、イソヘキサデカン及びポリソルベート60の混合物(Sepigel(商標)SMS 60) 4.00
水 100までの適量
【0128】
7b)
化粧品成分 0.2~0.3
EDTA 0.05
ステアレス-2 2.00
ステアレス-21 2.50
セテアリルアルコール 1.00
プロピルヘプチルカプリレート 15.00
水酸化ナトリウム(溶液中30%) 0.10
フェノキシエタノール、クロルフェネシン、安息香酸、ブチレングリコール、ソルビン酸の混合物(Germazide(商標)PBS) 1.25
ポリアクリレート-X、イソヘキサデカン及びポリソルベート60の混合物(Sepigel(商標)SMS 60) 4.00
水 100までの適量
【0129】
7c)
本発明による組成物を調製するために、当業者に公知の方法を使用して以下の異なる相A、B、C及びDを一緒に混合する。比率は、%で表される。
【0130】
相A
グリセリルステアレート、PEG-100ステアレート 4.00
ペンタエリスリチルジステアレート 1.50
セテアリルイソノナノエート 3.00
プロピルヘプチルカプリレート 5.00
ココカプリレート 2.00
ジカプリリルカーボネート 3.00
ジメチコン 1.00
【0131】
相B
水 64.43
プロピレングリコール、フェノキシエタノール、クロルフェネシン、メチルパラベン 1.00
グリセリン 1.57
キサンタンガム 0.20
ブチレングリコール 2.00
水酸化ナトリウム、水 0.15
【0132】
相C
カルボマー 0.15
水 10
【0133】
相D
実施例6a)により得られたN.ラッパセウム(N.lappaceum)抽出物 1.00