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特許7662212自動車の緊急脱出装置による乗員の緊急脱出方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-04-07
(45)【発行日】2025-04-15
(54)【発明の名称】自動車の緊急脱出装置による乗員の緊急脱出方法
(51)【国際特許分類】
   A62B 99/00 20090101AFI20250408BHJP
【FI】
A62B99/00 C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2023010948
(22)【出願日】2023-01-27
(62)【分割の表示】P 2021080115の分割
【原出願日】2021-05-11
(65)【公開番号】P2023054815
(43)【公開日】2023-04-14
【審査請求日】2023-01-27
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2021009936
(32)【優先日】2021-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】500398289
【氏名又は名称】吉田 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英夫
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】倉橋 紀夫
【審判官】八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-113618号公報(JP,A)
【文献】登録実用新案第3101202(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 35/00 - 99/00
B60R 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合わせガラスを装備した自動車にシートベルト切断装置と破砕具を備えた緊急脱出装置を設け、前記合わせガラスを前席ドア側に配置し、前記シートベルト切断装置によってシートベルトを切断し、乗員の身体の拘束を解除して破砕具を使用可能にし、該破砕具を介し車室側から合わせガラスの所定域を破砕し、該破砕部を介し合わせガラスまたはその周辺に乗員の脱出スペースを形成し、該脱出スペースを介し乗員を車外へ脱出可能にする、自動車の緊急脱出装置による乗員の緊急脱出方法において、前記シートベルト切断装置はシートベルト導入溝の奥部にシートベルトカッターを備え、シートベルト導入溝にシートベルトを挿入し、これをシートベルトカッターで切断するとともに、緊急脱出装置の内部にインパクトチップを連結したチップホルダーを配置し、インパクトチップの尖端部を弾性部材を介して合わせガラスの車室側の強化ガラス板に衝突かつ破砕可能に付勢する一方、前記脱出装置の内側に略逆L字形状の一対のレバーを対向配置し、その中間部を回動可能に連結し、前記レバーを握持し、その回動変位を介してレバーの連結部を移動可能に設け、インパクトチップの突出後、レバーの握持を解除し、弾性部材を介してレバーを原位置に復帰移動させ、インパクトチップを原位置に復帰移動させて、レバーとインパクトチップをリセット可能にし、レバーの反復使用を実行可能にする一方、合わせガラスはその上端部周縁をガラス保持枠による拘束から解除可能に設け、緊急脱出作業は、破砕具によって合わせガラスの一部域を破砕し、合わせガラスの押圧および押し曲げ作業を含み、前記破砕具は、合わせガラスの下部の所定域を車室側から破砕可能な構成部を備え、前記破砕は合わせガラスの下部の複数個所を連続的に破砕し、該破砕を介し破砕域ないし破砕部の強度を低下させ、該破砕域より離間する合わせガラスの上方位置を外側へ押圧し、該押圧を介し前記破砕域を支点にてこの作用によって合わせガラスを車室側から外側へ押し曲げ、該合わせガラスの押し曲げ変位によって、合わせガラスの上端部周縁をガラス保持枠から離脱させ、合わせガラスの上端部周縁とガラス保持枠との間に乗員の脱出スペースを形成し、該脱出スペースの車室側に乗員を臨ませ、該乗員を車外に脱出させることを特徴とする自動車の緊急脱出装置による乗員の緊急脱出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば合わせガラス(Laminated Glass)を装備した自動車が水没し、ま
たは交通事故等によって車内に乗員(運転者および同乗者を含む)が閉じ込められた際、車内に装備した自動車の緊急脱出装置を使用して、乗員を安全で速やかに車内から脱出できるようにした自動車の緊急脱出装置による乗員の緊急脱出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、豪雨によって道路が冠水したり川が氾濫する等して、水没した車内に乗員が閉じ込められてしまう事案が増えている。
そのような場合、シートベルトを速やかに切断して乗員の身体の拘束を解放し、ドアガラスを破砕して車外へ脱出させる必要がある。
このような目的に適う緊急脱出装置として、出願人は種々の装置を開発し、既に提案している。
【0003】
例えば、二酸化炭素を充填した消火ガスボンベを破封装置に装填し、該破封装置の側部にシートベルト導入溝を設け、該導入溝にシートベルトカッターを配置し、シートベルト導入溝にシートベルトを導入してシートベルトカッターを切断可能にするとともに、装填した消火ガスボンベの底部にハンマー部材を取付け、該ハンマー部材の尖端部をドアガラスに打ち付けて破砕し、室内から脱出後に破封装置の頭部を操作して消火ガスボンベを破封し、その消火ガスを自動車の火元に噴射して消火するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0004】
また、握持可能な筒状の緊急脱出用具の一端に、シートベルト導入溝とシートベルトカッターを備え、この他端にハンマー部を設けて、シートベルト導入溝に挿入したシートベルトをシートベルトカッターで切断し、ハンマー部の尖端部をドアガラスに打ち付けて破砕し、車外へ脱出するようにしたものがある(特許文献2参照)。
【0005】
ところで、近時、静粛性向上を目的に、ドアガラスに合わせガラスを採用した自動車が出現してきている。前記合わせガラスは2枚の単板ガラスと、その間に接着した合成樹脂製の中間膜(Interlayer)とからなり、薄厚で強靭な性質を備えている。
このような合わせガラスを使用した自動車の緊急時に、前述の脱出装置を使用すると、合わせガラスを破砕することができず、乗員が車内から脱出できなくなるという問題の発生が懸念されていた。
【0006】
そこで、このような問題を解決するものとして、一対の強化ガラスの間に中間膜を介在して接合した車両用合わせガラスにおいて、中間膜に被打撃領域を設け、被打撃領域に少なくとも一方を破砕可能な円錐形または多角錐状の金属、セラミックス等の被打撃部材を設けて、先ず室内側の強化ガラスの被打撃領域をハンマー等によって打撃し、表面のクラックを内部に到達させて、強化ガラスの全体にクラックを自走させて破壊させる。
前記ハンマー等による打撃力は、被打撃領域に伝達されて中間膜が厚さ方向に圧縮され、被打撃部材の鋭利部が中間膜から突出して、他方の強化ガラスの表面に衝突し、該強化ガラスの表面にクラックが発生してガラス内部に到達させ、ガラス内部にクラックを自走させて内側の強化ガラスを破壊し、一対の強化ガラスを同時に破壊するようにしたものがある(特許文献3参照)。
【0007】
しかし、前記車両用合わせガラスは、中間膜に被打撃部材と被打撃領域の形成を要し、これらの構成と製造が複雑になり、また合わせガラスが結果的に破砕し易くなって、ガラスの強度が却って低下するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5148623号公報
【文献】特許第6811122号公報
【文献】特開2020-172404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はこのような問題を解決し、例えば合わせガラス(Laminated Glass)を装備
した自動車が水没し、または交通事故等によって車内に乗員(運転者および同乗者を含む)が閉じ込められた際、車内に装備した自動車の緊急脱出装置を使用して、乗員を安全で速やかに車内から脱出できるようにした自動車の緊急脱出装置による乗員の緊急脱出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、合わせガラスを装備した自動車にシートベルト切断装置と破砕具を備えた緊急脱出装置を設け、前記合わせガラスを前席ドア側に配置し、前記シートベルト切断装置によってシートベルトを切断し、乗員の身体の拘束を解除して破砕具を使用可能にし、該破砕具を介し車室側から合わせガラスの所定域を破砕し、該破砕部を介し合わせガラスまたはその周辺に乗員の脱出スペースを形成し、該脱出スペースを介し乗員を車外へ脱出可能にする、自動車の緊急脱出装置による乗員の緊急脱出方法において、前記シートベルト切断装置はシートベルト導入溝の奥部にシートベルトカッターを備え、シートベルト導入溝にシートベルトを挿入し、これをシートベルトカッターで切断するとともに、前記脱出装置の内部にインパクトチップを連結したチップホルダーを配置し、インパクトチップの尖端部を弾性部材を介して合わせガラスの車室側の強化ガラス板に衝突かつ破砕可能に付勢する一方、前記脱出装置の内側に略逆L字形状の一対のレバーを対向配置し、その中間部を回動可能に連結し、前記レバーを握持し、その回動変位を介してレバーの連結部を移動可能に設け、インパクトチップの突出後、レバーの握持を解除し、弾性部材を介してレバーを原位置に復帰移動させ、インパクトチップを原位置に復帰移動させて、レバーとインパクトチップをリセット可能にし、レバーの反復使用を実行可能にする一方、合わせガラスはその上端部周縁をガラス保持枠による拘束から解除可能に設け、緊脱出作業は、破砕具によって合わせガラスの一部域を破砕し、合わせガラスを押圧および押し曲げる作業を含み、前記破砕具は、合わせガラスの下部の所定域を車室側から破砕可能な構成部を備え、前記破砕は合わせガラスの下部の複数個所を連続的に破砕し、該破砕を介し破砕域ないし破砕部の強度を低下させ、該破砕域より離間する合わせガラスの上方位置を外側へ押圧し、該押圧を介し前記破砕域を支点にてこの作用によって合わせガラスを車室側から外側へ押し曲げ、該合わせガラスの押し曲げ変位によって、合わせガラスの上端部周縁をガラス保持枠から離脱させ、該合わせガラスの上端部周縁とガラス保持枠との間に脱出スペースを形成し、該脱出スペースの車室側に乗員を臨ませ、該乗員を前記スペースを介して出して脱出させ、ドアガラスに合わせガラスを採用した自動車が例えば水没したり、交通事故等によって乗員が車内に閉じ込められた際、緊急脱出装置の破砕具によって合わせガラスの一部域を破砕することで、合わせガラス全域の破砕を要することなく、速やかに広い脱出スペースを形成し、該脱出スペースから乗員を安全かつ速やかに脱出させるとともに、緊急脱出装置の簡便な使用を促し、かつレバーの反復使用を実現し、緊急脱出装置によって乗員の広い脱出スペースを迅速かつ容易に形成し、乗員を安全かつ速やかに脱出させるようにしている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明は、合わせガラスを装備した自動車にシートベルト切断装置と破砕具を備えた緊急脱出装置を設け、前記合わせガラスを前席ドア側に配置し、シートベルト切断装置はシートベルト導入溝の奥部にシートベルトカッターを備え、シートベルト導入溝にシートベルトを挿入し、これをシートベルトカッターで切断するとともに、前記脱出装置の内部にインパクトチップを連結したチップホルダーを配置し、インパクトチップの尖端部を弾性部材を介して合わせガラスの車室側の強化ガラス板に衝突かつ破砕可能に付勢する一方、前記脱出装置の内側に略逆L字形状の一対のレバーを対向配置し、その中間部を回動可能に連結し、前記レバーを握持し、その回動変位を介してレバーの連結部を移動可能に設け、インパクトチップの突出後、レバーの握持を解除し、弾性部材を介してレバーを原位置に復帰移動させ、インパクトチップを原位置に復帰移動させて、レバーとインパクトチップをリセット可能にし、レバーの反復使用を実行可能にする一方、合わせガラスはその上端部周縁をガラス保持枠による拘束から解除可能に設け、前記緊急脱出作業は、破砕具によって合わせガラスの一部域を破砕し、合わせガラスを押圧および押し曲げる作業を含み、前記破砕具は、合わせガラスの下部の所定域を車室側から穿孔し、破砕可能な構成部を備え、前記破砕は合わせガラスの下部の複数個所を連続的に破砕し、該破砕を介し破砕域ないし破砕部の強度を低下させ、該破砕域より離間する合わせガラスの上方位置を外側へ押圧し、該押圧を介し前記破砕域を支点にてこの作用によって合わせガラスを車室側から外側へ押し曲げ、該合わせガラスの押し曲げ変位によって、合わせガラスの上端部周縁をガラス保持枠から離脱させ、該合わせガラスの上端部周縁とガラス保持枠との間に脱出スペースを形成し、該脱出スペースの車室側に乗員を臨ませ、該乗員を車外へ脱出 させ、ドアガラスに合わせガラスを採用した自動車が例えば水没したり、交通事故等によって乗員が車内に閉じ込められた際、緊急脱出装置の破砕具によって合わせガラスの一部域を破砕することで、合わせガラス全域の破砕を要することなく、速やかに広い脱出スペースを形成し、該脱出スペースから乗員を安全かつ速やかに脱出させるとともに、緊急脱出装置の簡便な使用を促し、かつレバーの反復使用を実現し、緊急脱出装置によって乗員の広い脱出スペースを迅速かつ容易に形成し、乗員を安全かつ速やかに脱出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置の第1実施形態を示す正面図で、合わせガラスの破砕前の状況を示している。
図2前記実施形態におけるガラス破砕装置の角軸部を示す正面図である。
図3前記実施形態のガラス破砕装置の角軸部と、スプリングボックスを分解して示す正面図である。
図4図3の左側面図である。
図5図3の左側面図で、開口部を90°回転して示している。
【0013】
図6前記第1実施形態に適用したチップホルダーにインパクトチップを取付けた状況を示している。
図7前記第1実施形態に適用した外側ケースの平面図である。
図8前記第1実施形態に適用したレバーの正面図で、枢支孔と枢支ピンの位置関係を示している。
図9前記第1実施形態に適用したレバーのシャンク部の一部を示す断面図である
図10前記第1実施形態における合わせガラスを使用した前席ドアの一部を示す正面図である。
【0014】
図11前記第1実施形態に適用したガラス破砕装置による合わせガラスの破砕状況を示す断面図で、(a)はガラス押し当て板を合わせガラスの内側面に配置した破砕直前の状況を示している。(b)はガラス破砕装置の作動状況のうち、インパクトチップが内側の強化ガラスに衝突し、クラックが発生する状況を示している。(c)はガラス破砕装置の作動状況のうち、インパクトチップが中間膜に到達した状況を示している。(d)はガラス破砕装置の作動状況のうち、インパクトチップが外側の強化ガラスに到達し、クラックが発生した状況を示している。(e)はガラス破砕装置の作動状況のうち、インパクトチップが外側の強化ガラスを突き抜けて貫通した状況を示している。
【0015】
図12】合わせガラスの一部域を破砕後、外側へ押し出して変位させ、脱出スペースを形成している状況を示している。
図13】本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置の第2実施形態を示す正面図で、合わせガラスの破砕前の状況を示している。
図14前記第2実施形態に適用した角軸部の正面図である。
図15前記第2実施形態に適用したスプリングボックスの正面図である。
図16前記第2実施形態に適用したチップホルダーにインパクトチップを取付けた状況を示す正面図である。
【0016】
図17前記第2実施形態に適用した緊急脱出装置の端部を示す正面図である。
図18】本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置の第3実施形態の要部を示す断面図で、スパイラル刃を設けた破砕ビットの装着状況と、該破砕ビットの合わせガラスに対する衝突前の状況を示し、破砕ビット内の皿バネが伸長している。
図19前記第3実施形態における破砕ビットの合わせガラス内への進入状況を示す断面図である。
図20前記第3実施形態における破砕ビットを示す断面図で、破砕ビットが合わせガラスに衝突している状況を示し、内側の皿バネが押し縮められている。
【0017】
図21本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置の第4実施形態に適用した、角錐形状の破砕ビットによる合わせガラスの破砕状況を示す説明図で、破砕時にガラス粒子・粉末を分散排除している状況を示している。
図22本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置の第5実施形態に適用した緊急脱出装置を示す正面図で、ガラス押し当て板の周囲に照明筒を設けている。
図23】本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置の第6実施形態を消火器具に適用した破砕装置を示す正面図で、消火器具に装填した二酸化炭素ガスボンベの底部に破砕ビットを取付けている。
図24前記第6実施形態の要部を拡大して示す断面図である。
図25前記第6実施形態に適用した破砕ビットを拡大して示す斜視図である。
図26前記第6実施形態に適用した破砕ビットの正面図である。
【0018】
図27図26の平面図である。
図28図26の右側面図である。
図29図26の底面図である。
図30】本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置の第7実施形態を緊急脱出装置に適用した破砕装置を示す斜視図である。
図31前記第7実施形態を適用した破砕装置の縦断面図で、上下を反転して図示している。
図32前記第7実施形態を適用した破砕装置による合わせガラスの破砕状況を拡大して示す断面図で、保護カバーが折れ曲がり破砕ビットが表出している。
【0019】
図33本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置の第8実施形態を消火器具に適用した破砕装置を示す正面図で、消火器具に装填した二酸化炭素ガスボンベの底部に破砕ビットを取付けている。
図34前記第8実施形態の要部を拡大して示す断面図である。
図35本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置の第9実施形態に適用した破砕ビットを拡大して示す斜視図である
図36前記第9実施形態に適用した破砕ビットの正面図である。
図37図36の平面図である。
図38図36の右側面図である。
図39図36の底面図である。
【0020】
図40前記第9実施形態を適用した緊急脱出装置の破砕装置を示す斜視図で、その一端に破砕ビットを取付けている。
図41図40の縦断面図で、上下を反転して示している。
図42本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置の第10実施形態を消火器具に適用した破砕装置を示す正面図で、消火器具に装填した二酸化炭素ガスボンベの底部に破砕ビットを取付けている。
図43前記第10実施形態の要部を拡大して示す断面図である。
図44前記第10実施形態に適用した破砕ビットの斜視図である。
【0021】
図45前記第10実施形態に適用した破砕ビットの正面図である。
図46図45の平面図である。
図47図45の右側面図である。
図48図45の底面図である。
図49】本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置の第11実施形態を緊急脱出装置に適用した破砕装置を示す斜視図で、その一端に破砕ビットを取付けている。
図50図49の縦断面図で、上下を反転して図示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置として、合わせガラスを採用した自動車の前席ドアの内側に緊急脱出装置を備えた図示の実施形態について説明すると、図1乃至図12において1は緊急脱出装置で、長さ約17cm、外径約4cmの円筒状の脱出装置本体2を備え、該本体2は一端にシートベルト切断装置3を備え、他端にガラス破砕装置4を備えている。
【0023】
前記シートベルト切断装置3は略円筒状に形成され、内部の中空部を脱出装置本体2の先端部にピン連結して装着し、その基端側にシートベルト導入溝5を開口している。前記シートベルト導入溝5のガイド面は斜状に形成され、その奥部にシートベルトカッター6が斜状に配置され、導入したシートベルトBを切断可能にしている。
【0024】
前記脱出装置本体2は、略U字形断面の一対の外側ケース7,7を備え、該外側ケース7,7を対向して連結し、その内側の矩形スペースにガラス破砕装置4の角軸部8を収容している。
すなわち、外側ケース7の内側には横長矩形の凹溝9が形成され、その側方に細長のレバー収容溝10が形成されている。
【0025】
前記角軸部8の中間部の対向位置に略L字形のピン係合溝11が形成され、該ピン係合溝11の周面と他側面の先端部の対向位置に矩形の開口窓が形成され、当該周面の他端部の対向位置に略台形の後述する係合突起が突設されている。
前記角軸部8の内部に段付きの角孔14が形成され、該角孔14の先端部側に第1スプリング15が収容され、その端末部が前記ピン係合溝11の屈曲部に配置されている。
【0026】
前記角孔14の後端部にスプリングボックス16が摺動可能に挿入され、該ボックス16の周面の先端部の対向位置にピン切換溝17が形成され、該切換溝17は横長平行四辺形に形成され、その内側にガイドピン18が移動可能に収容されている。
前記ピン切換溝17の後部側の切換辺17aは緩やかな斜辺に形成され、該切換辺17aに移動したガイドピン18を上方へ移動して、上方へ変位可能にしている。
【0027】
前記スプリングボックス16内に段付き孔19が形成され、該段付き孔19に第1スプリング15よりも強力な第2スプリング20が収容され、該スプリング20が前記角軸部8の後退変位に押圧されて弾性を蓄積可能にされている。
【0028】
前記ピン係合溝11とピン切換溝17には、角軸部8の外側から前記ガイドピン18が挿入され、該ガイドピン18を介して角軸部8とスプリングボックス16を連結し、角軸部8内にスプリングボックス16を押し込んで掛け止めている。
前記第1スプリング15内に、角軸状のチップホルダー21が移動可能に挿入され、該ホルダー21の先端に破砕具として、尖端部22aを有する高硬度の板状のインパクトチップ22がピン23を介して固定されている。
【0029】
前記角軸部8の先端部に、厚肉の矩形板状のガラス押し当て板24が突設され、該押し当て板24の端面に縦長矩形の開口部25が形成され、該開口部25から前記インパクトチップ22を出没可能にしている。
前記外側ケース7の各レバー収容溝10に、レバー26の枢支部27が前後方向に移動可能に収容され、該枢支部27に二つの枢支孔28,29が離間して形成されている。
【0030】
前記レバー26は肉厚の鋼板をプレス加工して略逆L字形に形成され、その上端部に枢支部27を下向きに鋭角に屈曲して形成している。
前記レバー収容溝10に二つの枢支ピン30,31が離間して配置され、該枢支ピン30,31に前記枢支孔28,29が順次係合可能に配置され、常時は枢支孔28に枢支ピン30が係合している。
【0031】
前記レバー26の上部にテーパ状の係合部32が形成され、該係合部32が角軸部8の後端部に突設した板状の係合突起34に係合可能に配置され、常時は第2スプリング20によって前方へ押圧される角軸部8の変位により、枢支ピン30が枢支孔28に係合可能に付勢されている。
前記レバー26は、係合部32からシャンク33が斜め下方に延設され、該シャンク33,33の間に板状のシャンクホルダ34がビス止めされている。
【0032】
前記前席ドア35は、例えば図10のように周囲をガラス保持枠であるサッシュ36~38と、ベルトラインフレーム39で仕切られ、それらの間をモータ41を備えた昇降装置42によって、合わせガラス40が直下の収納部(図示略)から昇降可能に設けられている。したがって、合わせガラス40は前席の側方に配置され、その上端部周縁は密着固定されていない。
【0033】
図10,12において、35aは後述の破砕部46aから上方へ離間する合わせガラス40のスペースを外側へ押圧可能な押圧部、35bは破砕部46aから上方へ離間する合わせガラス40のスペースを、車室側から外側へ押し曲げ可能な押し曲げ部、37aは合わせガラス40上端部周縁がガラス保持枠37から離脱可能な離脱部、46aは合わせガラス40の下部に設けられた破砕具による一または複数の破砕からなる破砕部ないし破砕域で、これらによって、自動車の緊急脱出装置ないし緊急脱出装置の使用時における脱出スペース形成するようにしている。
【0034】
前記合わせガラス40は、室内外に無機ガラス製の強化ガラス板43,44が配置され、それらの間に熱可塑性樹脂製の中間膜45が配置されている。
実施形態では、強化ガラス板43,44の厚さは、0.5mm以上2.3mm以下のものが使用され、可及的には室内側の強化ガラス板44を、室外側の強化ガラス板43よりも薄厚にすることが、車両の安全性と軽量化に望ましい。
また、中間膜45の厚さは、0.2mm以上2.3mm以下のものが使用され、可及的には0.3mm以上1.5mm以下のものを使用して、軽量で取扱い易くすることが望ましい。
【0035】
図中、46は合わせガラス40の下部に、ベルトラインフレーム39に沿って緊急脱出装置1により複数形成した穿孔痕ないし貫通痕、47はガラス押し当て板24の開口部25に被着した薄厚のゴム板製の保護シートで、合わせガラス40の破砕時に発生した微小な破砕片の開口部25内への侵入を防止し、内部の作動不良を未然に防止可能にしている。
48は、合わせガラス40の一定の破砕後、該ガラス40を外側へ押し出して形成した乗員の脱出スペースである。
【0036】
このように構成した本発明を使用に好適な自動車の緊急脱出装置は、脱出装置本体2の一端にシートベルト切断装置3を備え、他端にガラス破砕装置4を備え、これらの製作を要する。
このうち、シートベルト切断装置3を合成樹脂によって略円筒状に形成し、内部の中空部を脱出装置本体2の先端部に装着してピン連結する。
実施形態のシートベルト切断装置3は、シートベルト導入溝5を中心に軸方向に沿って二つ割り可能に構成し、それぞれの成形品を接合してピン連結し、製作を簡便にしている
【0037】
前記シートベルト切断装置3の基端側にシートベルト導入溝5を開口し、該導入溝5のガイド面を斜状に形成し、その奥部にシートベルトカッター6を斜状に配置し、導入したシートベルトBを切断可能にしている。
【0038】
前記脱出装置本体2は、合成樹脂製の角軸状のガラス破砕装置4と、該破砕装置4の後端部に摺動可能に挿入するスプリングボックス16と、破砕装置4の外側に装着する一組の外側ケース7,7と、外側ケース7,7に装着する一組のレバー26とを備えている。
【0039】
このうち、ガラス破砕装置4は先端部に厚肉の矩形板状のガラス押し当て板24を突設し、その端面に矩形の開口部25を形成し、角軸部8の内部に角孔14を形成し、該角孔14の内部に第1スプリング15と、チップホルダー21を収容する。
前記チップホルダー21は鋼材を角軸に形成し、その先端に高硬度の板状のインパクトチップ22を鋲結し、また後端部のピン孔Pにガイドピン18を挿入し、チップホルダー21とスプリングボックス16を連結する。
【0040】
前記角軸部8の中間部の対向位置に、角孔14に連通する略L字形状のピン係合溝11を形成し、後端部に台形板状の係合突起34を突出成形する。
前記スプリングボックス16を角管状に樹脂成形し、その前端部にピン切換溝17を形成し、該ピン切換溝17を横長平行四辺形に形成し、その内側にガイドピン18を移動可能に収容する。
【0041】
前記ピン切換溝17の後部側の切換辺17aを緩やかな斜辺に形成し、レバー26の回動操作による合わせガラス40の破砕開始直前に、ガイドピン18を切換辺17aに乗り上げ、該ガイドピン18を上方へ移動し屈曲部から脱出させて、ピン係合溝11に合流させ、ガイドピン18を直線状のピン係合溝11に沿って移動可能にする。
【0042】
前記スプリングボックス16に第2スプリング20を収容し、該スプリング20の前端のピン切換溝17にガイドピン18を角軸部8の外側から挿入し、スプリングボックス16と角軸部8を連結する。
この結果、第2スプリング20に蓄勢された弾性をチップホルダー21に一気に伝達し、先端のインパクトチップ22を開口部25から突出可能にする。
【0043】
前記外側ケース7の内部に段付きの角孔14を形成し、該角孔14に角軸部8とスプリングボックス16の一部を収容可能にし、その外側にレバー収容溝10を貫通形成し、該レバー収容溝10に二つの枢支ピン30,31を離間して配置可能にする。
【0044】
前記レバー26は、肉厚の鋼板をプレス加工して略逆L字形に形成し、その上端部に枢支部27を下向きに鋭角に屈曲して形成する。
前記レバー26の上部にテーパ状の係合部32を形成し、該係合部32を角軸部8の後端部に突設した板状の係合突起34に係合可能に配置する。
【0045】
こうして製作したレバー26,26を外側ケース7,7のレバー収容溝10,10に挿入し、枢支孔28,28を枢支ピン30,30に係合する。また、係合部32,32を角軸部8の両側の係合突起34,34に係合し、シャンク33,33を下方に突出配置し、該シャンク33,33の間に板状のシャンクホルダ34をビス止めする。
【0046】
こうして組み立てた自動車の緊急脱出装置は図1のようで、ガラス破砕装置4の一端にシートベルト切断装置3が配置され、他端にガラス破砕装置4が配置され、外側ケース7からシャンク33が斜め下方に突出して配置されている。
この場合、角軸部8の中間部のピン係合溝11と、角軸部8内に挿入されたスプリングボックス16のピン切換溝17の位置が一部重合し、この重合部のピン係合溝11の屈曲部にガイドピン18が挿入され、角軸部8とスプリングボックス16がピン連結される。
【0047】
その際、スプリングボックス16を角軸部8側へ若干移動して、第1スプリング15を押し縮め、その弾性を係合突起34,34を介してレバー26,26に作用させ、該レバー26,26を係合突起34,34を支点に反時計方向へ回動し、枢支孔28を枢支ピン30に押し付ける。この状況は図1のようである。
【0048】
このような自動車の緊急脱出装置を使用する場合は、レバー26を握持して係合突起34を支点に反時計方向へ回動操作する。
このようにすると、角軸部8が第1スプリング15を押し縮めながらシートベルト切断装置3側へ移動し、これにガイドピン18が同動してピン切換溝17の後部側へ移動する
また、角軸部8の移動に伴って、スプリングボックス16内の第2スプリング20が押し縮められ、第1および第2スプリング15,20の弾性が蓄積されていく。
【0049】
この後、レバー26を更に同方向へ回動すると、レバー26の枢支部27が上動し、枢支孔28が枢支ピン30から後退して係合を解除し、代わりに枢支孔29が枢支ピン31に係合する。
この結果、係合突起34を支点にしたレバー26の回動半径が増加し、その分レバー26の操作力が軽減されて容易になり、ガイドピン18がピン切換溝17の切換辺17aの基部へ移動して、切換辺17aを上り始める。
【0050】
こうしてガイドピン18が切換辺17aに沿って次第に上方へ移動し、ピン係合溝11の屈曲部から引き出されて直線部へ移動すると、第1および第2スプリング15,20の弾性の制止作用が解除され、それらの弾性の合力がガイドピン18を介してチップホルダー21に作用する。
このため、チップホルダー21が角軸部8内を先端部側へ移動し、インパクトチップ22が保護シート47を突き破って開口部25から突出し、合わせガラス40の内側の強化ガラス44を破砕可能にする。
【0051】
このようにして組み立てた緊急脱出装置1は、各構成部材の構成が簡単で、大半の構成部材が合成樹脂によって成形されているから、軽量で容易かつ安価に製作し得るとともに、合わせガラス40の実際の破砕作業の労力の負担が軽減される。また、緊急脱出装置1は小形軽量であるから、該緊急脱出装置1を車室内の前席付近の適宜位置に保管し得る。
【0052】
次に、緊急脱出装置1を使用して自動車の前席の側方に配置した合わせガラス40を破砕する場合は、緊急脱出装置1を保持して先ずシートベルト切断装置3を操作し、そのシートベルト導入溝4にシートベルトBを挿入して、シートベルトBの側端部をシートベルトカッター6で切断し、シートベルトBによる身体の拘束を解除する。
【0053】
この後、ガラス破砕装置4の角軸部8の先端の押し当て板24を、合わせガラス40の内側下部の強化ガラス44面に押し付けて保持する。このようにすると、保護シート47の摩擦によって押し当て板24の定位置維持が容易になる。
この状況下では緊急脱出装置1は未操作であるから、インパクトチップ22は静止位置に置かれ、その尖端部22aが強化ガラス44面から離間して位置している。この状況は図11(a)のようである。
【0054】
この場合、合わせガラスに対する実際の作業位置は、乗員の体格、乗車位置、車室状況に応じて選択可能である。
例えば乗員の体格、乗車位置に応じて緊急作業位置を、合わせガラスの下部若しくは中間位置、または上部位置に選択し、また車室が例えば上下左右に傾斜し、更には搭載用品の散乱状態を考慮して、無理のない姿勢で作業を行なう。
そして、破砕作業によって合わせガラスの破砕部の強度が低下したところで、その離間位置、例えば作業位置の上部位置、若しくは下部位置、または中間位置を外側へ押圧し、合わせガラスを外側へ押し出すようにして、脱出スペース48を合理的に形成する。
その際、実施形態では、合わせガラス40を前席の側方に配置しているから、合わせガラス40をフロントガラスに配置する場合に比べて、破砕具による破砕作業を容易かつ速やかに行える。
【0055】
このような緊急作業時、緊急脱出装置1を操作すると、インパクトチップ22が保護シート47を突き破って開口部25から突出し、合わせガラス40の内側の強化ガラス44に衝突する。
このため、強化ガラス44にクラックが形成されて周辺に伝播し、強化ガラス44が破壊される。この状況は図11(b)のようである。
この場合、インパクトチップ22の断面は縦長矩形でコンパクトであるから、強化ガラス44に対する衝撃力や摩擦力が小さく、これに要する第1および第2スプリング15,20の弾性を軽減し得る。
【0056】
その際、強化ガラス44の破壊によって発生した微小な破砕片は、保護シート47によって角軸部8内への侵入を阻止され、インパクトチップ22やチップホルダー21への噛み込みを防止して、円滑な作動を維持する。
【0057】
この後、インパクトチップ22が合わせガラス40の内側へ更に移動し、中間膜45に達すると、比較的柔軟な中間膜45が速やかに破壊される。この状況は図11(c)のようである。
中間膜45の破壊後、インパクトチップ22は外側の強化ガラス43へ移動し、該ガラス43に侵入してクラックを形成し、これを周辺に伝播して強化ガラス43を破壊する。この状況は図11(d)のようである。
【0058】
こうして、インパクトチップ22が合わせガラス40を突き抜けると、合わせガラス40にはインパクトチップ22の断面と略同形の縦長矩形の穿孔痕46が貫通形成される。この状況は図11(e)のようである。
【0059】
このようにして合わせガラス40の1箇所の穿孔終了後、レバー26の握持を解除する
このようにすると、レバー26が第1および第2スプリング15,20の弾性によって原位置に復帰し、またチップホルダー21が角軸部8内に引き戻され、更にインパクトチップ22が角軸部8内の原位置に復帰して、図1の状態にリセットされる。
【0060】
この後、緊急脱出装置1の押し当て板24を穿孔痕46に近接する別の位置へ移動し、前述と同様な穿孔操作を行なって別の穿孔痕46を形成する。以後、この操作を繰り返して後述する脱出スペース48の形成に十分な破砕域を形成していく。
この場合、本発明の使用による乗員の脱出方法は、合わせガラス40の全域を破砕することなく、その一部、実施形態では合わせガラス40の下部域の一部を破砕すれば良いから、合わせガラス40の全域を破砕する場合に比べて、破砕に要する労力の負担が軽減され、該破砕を合理的かつ速やかに行える。
【0061】
こうして合わせガラス40の破砕域を増加していくと、破砕部の強度が次第に低下していく。
そこで、この破砕部から離間する合わせガラス40の上方位置を車室から外側へ押圧すると、てこの作用によって残存する中間膜45の柔軟性により、合わせガラス40は破砕されずに容易に外側へ押し曲げられる。
そして、この押し曲げ位置と、合わせガラスの取付け部である保持枠のサッシュ36~38の区画スペースとの間に、乗員の脱出が可能な脱出スペース48を形成し、該脱出スペース48から乗員の脱出が可能になる。この状況は図12のようである。
【0062】
この場合、前述のように合わせガラスに対する実際の作業位置は、乗員の体格、乗車位置、車室状況に応じて選択され、無理のない姿勢で作業が行われ、合わせガラスの作業位置の強度が低下し、また緊急作業の衝撃と押し曲げ変位によって合わせガラス40の上端部周縁が周辺のガラス保持枠から離脱し、その拘束が緩慢になったところで、その離間位置、例えば作業位置の上部位置、若しくは下部位置、または中間位置を外側へ押圧し、合わせガラスを外側へ押し出して脱出スペースを形成する。
【0063】
このように本発明の緊急脱出装置による乗員の緊急脱出方法は、合わせガラスを採用した自動車において、合わせガラスを前席の側方に配置し、合わせガラスの上端部周縁をガラス保持枠による拘束から解除可能にしているから、破砕具によって合わせガラスの一部域を破砕し、かつこの破砕を合わせガラスの下部の複数個所を破砕するだけで良く、合わせガラス全域を破砕する場合に比べ、破砕作業を合理的かつ速やかに行える。
そして、破砕域ないし破砕部の強度を低下させたところで、破砕域より離間する合わせガラスの上方位置を外側へ押圧し、該押圧を介し前記破砕域を支点にてこの作用によって合わせガラスを車室側から外側へ押し曲げる。
【0064】
こうして、合わせガラスの外側変位を介し、合わせガラスの上端部周縁をガラス保持枠から離脱させ、合わせガラスの上端部周縁とガラス保持枠との間に脱出スペース48を形成する。
前記脱出スペース48は、合わせガラスの粘り強さを利用して形成され、しかも合わせガラス全域の破砕法に比べ、破砕片の露出がなく安全で広い脱出スペース48を確実かつ速やかに形成できる。
【0065】
図13乃至図50本発明の使用に好適な自働車の緊急脱出装置の他の実施形態を示し、前述の実施形態と対応する構成部分に同一の符号を用いている。このうち、図13乃至図17は本発明の第2実施形態を示し、この実施形態は角軸部8の両端部に、シートベルト切断装置3とガラス破砕装置4とを配置し、角軸部8の内部に第1および第2スプリング15,20を収容している。
【0066】
この実施形態の構成と作用は前述の実施形態と実質的に同一で、ガイドピン18を介してスプリングボックス16を角軸部8に連結し、該角軸部8内にスプリングボックス16を押し込んで、内部の第2スプリング20を押し縮め、また第1スプリング15を押し縮めて、それらの弾性を蓄積可能にしている。
【0067】
前記ガイドピン18をピン係合溝11とピン切換溝17に挿入し、該ガイドピン18を常時はピン係合溝11の屈曲部に位置付け、これをスプリングボックス16の移動に同動させて切換辺17a上を移動させ、屈曲部から直線状の溝へ移動可能にしている。
その際、第1および第2スプリング15,20の弾性の合力をガイドピン18に作用し、これをチップホルダー21に作用させて、チップホルダ21を突出作動させ、インパクトチップ22を開口部25から突出可能にしている。
【0068】
この実施形態はレバー26を略L字形状に形成し、その一端をピン50を介して角軸部8に回動可能に連結し、レバー26の基端部26aをスプリングボックス16の端部に係合可能に配置して、チップホルダー21を簡潔に構成し、これを安価かつ合理的に製作し得るようにして、その量産化を図るようにしている。
【0069】
図18乃至図20は本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置の第3の実施形態を示し、この実施形態は合わせガラス40の破砕装置として、破砕具22であるインパクトチップ22を合わせガラス40に衝突させて穿孔する代わりに、高硬度の破砕ビット51を破砕具22としてシリンダ52に回転可能に設けて、合わせガラス40を破砕ないし穿孔可能にしている。
【0070】
前記破砕ビット51は、円筒面に複数のスパイラル刃51aを設けて破砕力を強化しており、前記シリンダ52の端部にキャップ53を取付け、破砕ビット51の基部のフランジ54とキャップ53との間に皿バネ55を伸縮可能に配置し、皿バネ55の弾性による伸縮作動によって、合わせガラス40に打ち込んだ際の破砕ビット51に揺動回転運動を与え、合わせガラス40の表面を破砕ないし穿孔可能にしている。
【0071】
この場合、破砕ビット51の揺動回転運動を長時間作動させるために、該ビット51に車両用電源で駆動可能なモータを連係することも可能である。
また、フランジ54の背後に約4MPaの二酸化炭素を充填したガスボンベ(図示略)を配置し、該ガスボンベのシール板(図示略)を所定時期に破封して、二酸化炭素をスパイラル刃51aへ噴出可能にし、破砕ビット51の回転力を増強して破砕能力を向上することも可能である。
【0072】
図21は本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置の第4実施形態を示し、この実施形態は破砕具22である破砕ビット51を角錐形状に形成し、破砕に伴う合わせガラス40のガラス粒子・粉末56を分散排除し、合わせガラス40の粉砕を円滑かつ効率良く行うようにしている。
【0073】
図22前記自動車の緊急脱出装置の第5実施形態を示し、この実施形態は前記ガラス押し当て板24の外側に照明筒57を取付け、ガラス押し当て板24の周囲を明示させて、夜間時における破砕操作を安全かつ確実に実行可能にしている。
前記照明筒57は、内蔵した直流電源(乾電池)によって点滅可能な複数のLEDランプを備え、これらをスイッチ(図示略)によってON・OFF可能にしている。
前記照明筒57は、出願人が既に提案した特許第5757939号に開示したものと実質的に同一である。
【0074】
この他、合わせガラス40の破砕については、前述のインパクト工具による衝突法や回転工具による破砕の他に、例えば圧縮空気や高圧水等の加圧流体の照射や超音波照射、反覆弾性振動による加振法による振動破壊、レーザー若しくはメーザービームまたは電磁波の照射による溶断法、更に鋭利な缶切り状の手動破砕具をサッシュ36、38に沿わせて押切り操作して切断する方法、エアーハンマー等の小形動力器具を用いて合わせガラス40の周囲に連続的に衝撃を与えて破砕する方法、またはチェーンソ(Chain saw)等の回転動力器具を用いて合わせガラス40の周囲を連続的に切断する方法等を採用することも可能である。
【0075】
図23乃至図29は本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置の第6実施形態を示し、この実施形態は合わせガラス40の破砕に好適な新規な破砕装置58を示している。
前記破砕装置58は、自動車に搭載する消火器具に適用したもので、前記消火器具は消火ガスとして小形軽量の二酸化炭素ガスボンベ59(約4MPa)を装填し、該ガスボンベ59を装着した破封装置60の内部に、ガスボンベ59のシール板(図示略)を破封可能な針管(図示略)を設けている。前記消火器具の概要は、出願人が既に提案した日本国特許第5148623号に開示されている。
【0076】
前記破封装置60の側部に、シートベルト導入溝61が斜状に形成されて下方に開口され、このシートベルト導入溝61の上方奥部にシートベルトカッター62が配置され、シートベルト導入溝61に挿入されたシートベルト63を切断可能にしている。
【0077】
図中、64は破封装置60の上端部に設けた破封摘みで、該破封摘み64を側方へ引いて破封摘み64に接続した安全板65を引き外し、該安全板65の空スペースを介し、破封ノブ66を押下げ可能にし、破封ノブ66に連結した破封杆(図示略)の下端の斜管(図示略)を前記シール板に突き刺し、該シール板を破封可能にしている。
【0078】
この結果、ガスボンベ59に充填した二酸化炭素ガスが噴出可能になり、この二酸化炭素ガスをノズル(図示略)から噴出して火元(図示略)へ吹付け可能にしている。
図中、67は破砕封置60の下部に設けた凹状湾曲面の握持部である。
【0079】
前記ガスボンベ59の底部表面に取付用ナット68が溶接して取付けられ、該ナット68の雌ネジ部69に破砕具22として、破砕ビット70を取付けている。
前記破砕ビット70は、耐摩耗性に優れる合金工具鋼(SKD11)によって略鏃(やじり)形状に形成され、その尖端部70aを焼き入れ処理して高硬度に構成している。
【0080】
前記尖端部70aは、略屋根形の小ビット71を背中合わせに配置し、その接合縁を急峻な稜線72で区画し、その頂部73から短い稜線74を派生している。また、稜線74の下端から稜線75,75を二方向に分岐し、更に稜線72の下端から稜線76,76を二方向に分岐している。
【0081】
そして、前記稜線72,74,75,76の間に急峻なテーパ面77を形成し、稜線75,76の一側は垂直に切れ落として垂直面を形成している。
前記尖端部70aの下部に螺軸78が形成され、該螺軸を前記雌ネジ部69に緊締可能にしている。
【0082】
前記破砕ビット70は、尖端部70aを複数のテーパ面によって多面体に形成しているから、従来の円錐または角錐状の尖端部に比べて、自動車用ガラスに対し多様な方向に衝撃力を作用し破砕と穿孔を促すから、能率良くかつ速やかに合わせガラス40を破砕することができる。
【0083】
したがって、破砕ビット70を備えた破砕装置58は合わせガラス40を速やかに破砕することができ、車室から速やかに脱出可能になる。
また、破砕ビット70は螺軸78を雌ネジ部69にねじ込むことで簡単に取付けられるから、従来のように取付軸の周面に環状溝を形成し、該溝に止め輪を嵌着する煩雑な作業を要しない。
【0084】
図30乃至図32は本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置の第7実施形態を示し、この実施形態は合わせガラス40の破砕に好適な新規な破砕装置79を示している。
前記破砕装置79は、自動車に搭載する緊急脱出装置に適用したもので、該脱出装置は自動車のドアポケット(図示略)の内側に立位姿勢で収容されている。前記緊急脱出装置の概要は、出願人が既に提案した日本国特許第6811122号に開示されている。
【0085】
前記緊急脱出装置は略円筒状に形成され、その一端部にシートベルト導入溝61が斜状に形成されて開口され、このシートベルト導入溝61の奥部にシートベルトカッター62が配置され、シートベルト導入溝61に挿入されたシートベルト(図示略)を切断可能にしている。
【0086】
前記緊急脱出装置の他端部に、破砕装置79の要部となる前述の破砕ビット70が取付けられ、該破砕ビット70は、緊急脱出装置の筒体内部に軸方向に配置された支持ロッド80と一体の、ボルト頭部81に形成した雌ネジ部82に、螺軸78を緊締して取付けている。
【0087】
図中、83は支持ロッド80の外側に配置した筒状ガイドで、その上下端部にスペーサ84,85を配置し、このスペーサ84上に支持ロッド80の螺軸に螺着したナット86を配置している。
前記筒状ガイド83の内側に、コイルバネ状のバランスウェイト97が配置され、その重量によって緊急脱出装置の使用時における慣性力を増強し、破砕ビット70の衝撃を増強するようにしている。
【0088】
前記ボルト頭部81の外側に中空筒状のビット押さえ87が配置され、該ビット押さえ87とボルト頭部81の間に、筒状のゴム製の保護カバー88が配置されている。前記保護カバー88は先端部が筒体の外側に突出し、常時は破砕ビット70を囲繞して手指との接触を回避させている。
【0089】
そして、破砕ビット70による合わせガラス40の破砕時に、図32のように保護カバー88の先端部88aを押し曲げ、破砕ビット70の尖端部を表出させて、合わせガラス40の板面に突き当て可能にしている。
図中、89はシートベルト挿入溝61に沿って筒体の周面に軸方向に形成した凸状部、90は筒体の中間部周面に形成した環状溝で、Oリング91が装着され、これらによって緊急脱出装置の筒体の握持を容易にしている。
【0090】
前記破砕装置79は、尖端部に前述の破砕ビット70を備えているから、従来の円錐または角錐状の尖端部を有する破砕装置に比べて、自動車用ガラスに対し多様な方向に衝撃力を作用し破砕と穿孔を促し、能率良くかつ速やかに合わせガラス40を破砕することができる。
したがって、破砕ビット70を備えた破砕装置79は合わせガラス40を速やかに破砕し、車室から速やかに脱出可能になる。
【0091】
図33乃至図39は本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置の第8実施形態を示し、この実施形態は合わせガラス40の破砕に好適な新規な破砕装置92を示している。
前記破砕装置92は、自動車に搭載する消火器具に適用したもので、該消火器具は第6実施形態における消火器具と実質的に同一であるから、共通する構成部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0092】
この実施形態は、前記ガスボンベ59の底部表面に取付用ナット68を溶接して取付け、該ナット68の雌ネジ部69に破砕具22として破砕ビット93を取付けている。
前記破砕ビット93は、耐摩耗性に優れる合金工具鋼(SKD11)によって略半薬研状に形成され、その尖端部93aを焼き入れ処理して高硬度に構成している。
【0093】
すなわち、尖端部93aは、正面形状が略半円形よりも若干長尺で、その円周部の両側を鋭角のテーパ面94に形成し、該テーパ面94の外側に平坦面95を平行に形成して、薄厚軽量化を図っている。
前記尖端部93aの下部に螺軸78が形成され、該螺軸78を前記雌ネジ部69に緊締可能にしている。
【0094】
前記破砕ビット93は、尖端部93aの両側を鋭角のテーパ面94に形成し、その周縁を略円弧状に形成しているから、従来の円錐または角錐状の尖端部に比べて、自動車用ガラスに対し強い衝撃力を広域に作用し、破砕と穿孔を促して能率良くかつ速やかに合わせガラス40を破砕することができる。
したがって、破砕ビット93を備えた破砕装置92は合わせガラス40を速やかに破砕することができ、車室から速やかに脱出することができる。
【0095】
図40および図41は本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置の第9実施形態を示し、この実施形態は合わせガラス40の破砕に好適な新規な破砕装置96を示している。
前記破砕装置96は、自動車に搭載する緊急脱出装置に適用したもので、該脱出装置は自動車のドアポケット(図示略)の内側に立位姿勢で収容されている。前記緊急脱出装置の概要は、第7実施形態における緊急脱出装置と実質的に同一であるから、共通する構成部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0096】
この実施形態の破砕ビット93は、第8実施形態における破砕ビット93と同様で、その尖端部93aの両側を鋭角のテーパ面94に形成し、その周縁を略円弧状に形成しているから、従来の円錐または角錐状の尖端部に比べて、自動車用ガラスに対し強い衝撃力を広域に作用して破砕と穿孔を促すから、能率良くかつ速やかに合わせガラス40を破砕することができる。
したがって、破砕ビット93を備えた破砕装置96は合わせガラス40を速やかに破砕することができ、車室から速やかに脱出することができる。
【0097】
図42乃至図48は本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置の第10実施形態を示し、この実施形態は合わせガラス40の破砕に好適な新規な破砕装置98を示している。 前記破砕装置98は、自動車に搭載する消火器具に適用したもので、該消火器具は第6実施形態における消火器具と実質的に同一であるから、共通する構成部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0098】
この実施形態は、前記ガスボンベ59の底部表面に取付用ナット68を溶接して取付け、該ナット68の雌ネジ部69に破砕具22として、破砕ビット99の雄ネジ部78を緊締して取付けている。
前記破砕ビット99は、耐摩耗性に優れる合金工具鋼(SKD11)によって略家形に形成され、その尖端部99aを焼き入れ処理して高硬度に構成している。
【0099】
前記尖端部99aは、略家形断面の先端にテーパ面100,100を屋根形に交差して形成し、その四方を垂直に切り落として横長矩形の垂直面101と、家形の垂直面102をそれぞれ対向配置している。
前記尖端部99aの下部に螺軸78が形成され、該螺軸78を前記雌ネジ部69に緊締可能にしている。
【0100】
前記破砕ビット99は、尖端部99aの先端を鋭角の複数のテーパ面99と垂直面102に形成し、その周囲を垂直に切り落として横長矩形の垂直面101と、家形の垂直面102に形成しているから、従来の円錐または角錐状の尖端部に比べて、自動車用ガラスに対し強い衝撃力を強力に作用し、破砕と穿孔を促し、能率良くかつ速やかに合わせガラス40を破砕することができる。
したがって、破砕ビット99を備えた破砕装置98は合わせガラス40を速やかに破砕することができ、車室から速やかに脱出することができる。
【0101】
図49および図50は本発明の使用に好適な自動車の緊急脱出装置を示し、この実施形態は合わせガラス40の破砕に好適な新規な破砕装置103を示している。
前記破砕装置103は、自動車に搭載する緊急脱出装置に適用したもので、該脱出装置は自動車のドアポケット(図示略)の内側に立位姿勢で収容されている。この実施形態の緊急脱出装置は、第7実施形態における緊急脱出装置と実質的に同一であるから、共通する構成部分に同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0102】
この実施形態の破砕ビット99は、第10実施形態における破砕ビット99と同様で、その尖端部99aの両側を鋭角のテーパ面100に形成し、その周囲を垂直に切り落として横長矩形の垂直面101と、家形の垂直面102に形成しているから、従来の円錐または角錐状の尖端部に比べて、自動車用ガラスに対し強い衝撃力を広域に作用して破砕と穿孔を促すから、能率良くかつ速やかに合わせガラス40を破砕することができる。
したがって、破砕ビット99を備えた破砕装置103は合わせガラス40を速やかに破砕することができ、車室から速やかに脱出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
このように本発明の自動車の緊急脱出装置による乗員の緊急脱出方法は、例えば合わせガラスを装備した自動車が水没し、または交通事故等によって車内に乗員が閉じ込められた際、車内に装備した自動車の緊急脱出装置を使用して、安全で速やかに車内から乗員を脱出できるようにしたものである。
【符号の説明】
【0104】
1 緊急脱出装置
3 シートベルト切断装置
22 破砕具(インパクトチップ)
37 ガラス保持枠
48 脱出スペース
B シートベルト
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